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    タグ:風の行方

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    238 : 保育園 前編 : 2012/05/20(日) 16:05:37.87 ID:
    師匠から聞いた話だ。

    土曜日の昼ひなか、僕は繁華街の一角にある公衆電話ボックスの扉を開け、中に入った。
    中折れ式のドアが閉まる時の、皮膚で感じる気圧の変化。それと同時に雑踏のざわざわとした喧騒がふいに遮断され、強制的にどこか孤独な気分にさせられる。
    一人でいることの、そこはかとない不安。
    まして、今自分が密かな心霊スポットと噂される電話ボックスにいるのだという意識が、そのなんとも言えない不安を増幅させる。
    夜の暗闇の中の方がもちろん怖いだろうが、この昼間の密閉空間も十分に気持ち悪い。僕は与えられた使命を果たすべく、緑色の公衆電話の脇に据え付けてあるメモ帳に目をやる。
    メモ帳は肩の部分に穴があけられていて、そこに通した紐で公衆電話の下部にある金具に結び付けられている。
    no title

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    183 : 風の行方  ◆oJUBn2VTGE : 2012/05/11(金) 21:09:55.96 ID:
    師匠から聞いた話だ。


    大学二回生の夏。風の強い日のことだった。
    家にいる時から窓ガラスがしきりにガタガタと揺れていて、嵐にでもなるのかと何度も外を見たが、空は晴れていた。変な天気だな。そう思いながら過ごしていると、加奈子さんという大学の先輩に電話で呼び出された。
    家の外に出たときも顔に強い風が吹き付けてきて、自転車に乗って街を走っている間中、ビュウビュウという音が耳をなぶった。
    街を歩く女性たちのスカートがめくれそうになり、それをきゃあきゃあ言いながら両手で押さえている様子は眼福であったが、地面の上の埃だかなんだかが舞い上がり顔に吹き付けてくるのには閉口した。
    うっぷ、と息が詰まる。
    風向きも、あっちから吹いたり、こっちから吹いたりと、全く定まらない。台風でも近づいてきているのだろうか。しかし新聞では見た覚えがない。天気予報でもそんなことは言っていなかったように思うが……
    そんなことを考えていると、いつの間にか目的の場所にたどり着いていた。
    住宅街の中の小さな公園に古びたベンチが据えられていて、そこにツバの長いキャップを目深に被った女性が片膝を立てて腰掛けていた。
    手にした文庫本を読んでいる。その広げたページが風に煽られて、舌打ちをしながら指で押さえている。
    「お、来たな」
    僕に気がついて加奈子さんは顔を上げた。Tシャツに、薄手のジャケット。そしてホットパンツという涼しげないでたちだった。
    「じゃあ、行こうか」
    薄い文庫本をホットパンツのお尻のポケットにねじ込んで立ち上がる。
    彼女は僕のオカルト道の師匠だった。そして小川調査事務所という興信所で、『オバケ』専門の依頼を受けるバイトをしている。
    今日はその依頼主の所へ行って話を聞いてくるのだという。
    僕もその下請けの下請けのような仕事ばかりしている零細興信所の、アルバイト調査員である師匠の、さらにその下についた助手という、素晴らしい肩書きを持っている。
    あまり役に立った覚えはないが、それでもスズメの涙ほどのバイト代は貰っている。
    no title

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