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    タグ:ホラーテラーなつの

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    618:2011/04/07 06:20:26 ID:
    大学もバイトも、何もイベントのない日。昼寝から起きると、時刻は午後五時になろうとしていた。
    携帯を見ると、一通のメールが届いている。知り合いからだ。
    その人とは、大学一年の時にボランティアを通じて知り合った。メールもボランティアメンバー全員に宛てたものだった。
    メールの内容は、『○○公園のソメイヨシノが開花したよ』 というちょっとしたお知らせ。
    大きく拡大した桜の花びらの写真も添えてある。

    四月四日のことだった。
    僕の家の近くには、桜の名所として全国的にもそれなりに有名な公園がある。
    標高二百メートルくらいの小さな山の山頂にある公園で、
    山には桜並木の他に、広いグラウンド、美術館、寺、展望台、また山頂に繋がるロープウェイもあり、
    地元の人はそれら全てをひっくるめて○○公園と呼んでいた。
    休日となると観光客も訪れ、春には花見客が地面に敷くブルーシートで公園中が青くなる。そんなにぎやかな場所だった。
    夕食の食材を買いに行くついでに桜を見に行こう。そう思い立った僕は、簡単に身支度を済ませて原付に跨った。

    「異界」【ホラーテラー】 →続きを読む

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    341:2011/04/02 20:55:16 ID:
    八月。開いた窓から吹きこんでくる風と共に、微かに蝉の鳴き声が聞こえる。時計は午後六時を回ったところ。
    陽はそろそろ沈む準備を始め、ラジオから流れて来る天気予報によれば、今夜も熱帯夜だそうだ。
    僕を含め三人を乗せた軽自動車は、川沿いに伸びる一車線の県道を、下流域から中流域に向かって走っていた。
    運転席にS、助手席に僕、後部座席にK。いつものメンバー。
    ただ、Kの膝の上にはキャンプ用テント一式が入った袋が乗っていて、
    車酔いの常習犯である彼は身体を横にすることも出来ず、先程から苦しそうに頭を若干左右に揺らしている。
    僕らは今日、河原でキャンプをしようという話になっていた。

    Kが持つテントの他にも、車のトランクの中には食料や寝袋、あとウィスキーを中心としたお酒等も入っている。
    夜の川へ蛍を見に行こう。
    言いだしっぺはKだった。何でも、彼は蛍のよく集まる場所を知っているらしい。
    意外に感じる。

    Kはオカルティストで、いつもならこれが『幽霊マンションに行こうぜ』 やら、『某自殺の名所に行こうぜ』となるのだけれど、
    今回はマトモな提案だったからだ。
    「蛍の光を見ながら酒でも飲もうぜ」とKは言った。
    反対する理由は無い。でもそれだと車を運転する人が、つまりSが一人だけ飲めないことになる。
    「お前だけジュースでも良いだろ?」と尋ねるKにSは、「お前が酒の代わりに川の水飲むならな」と返した。
    だったら、不公平のないよう河原で一泊しようという話になった。キャンプ用品はSが実家から調達してくれた。

    「蛍」【ホラーテラー】 →続きを読む

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    672:2011/03/27 17:34:26 ID:
    僕の住む町から、県境を跨いで車で四時間ほど走った先にある小さな街。
    数年前、その街で身元の分からない一人の男の子が保護された。
    調べてみると、男の子は街の人間ではなく、遠く何百キロも離れた他県で行方不明になっていた子供だった。
    その子の証言によると、数日間、見知らぬ女の家に監禁されていたのだという。

    実は同様の事件、――他県で行方不明となった子供がこの街で見つかるという事件――は、
    過去にも四回程起こっており、警察は連続児童誘拐事件とみて捜査をしていた。
    被害にあったのは全員、小学校低学年程の男児。
    けれどもこの事件が特異だったのは、
    発見された男児たちに特に目立った外傷も無く、何かしらの危害を加えられたわけでもない、ということだった。
    親元に身代金が要求された様子もなかった。

    「ノック」【ホラーテラー】 →続きを読む

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    269:2011/02/28 21:32:46 ID:
    小話を一つ。

    季節は春で、僕がまだ小学校にも上がっていなかった頃の話だ。
    その日、僕は家族と一緒に母方の祖父母の家に遊びに来ていた。
    まだ夕飯を食べる前だったから、時刻は午後六時か七時か、その辺りだっただろうか。
    大人たちは居間でおしゃべりをしていて、
    僕はその隣の神棚のある部屋で、従姉で二つ年上のミキちゃんという子とおままごとをして遊んでいた。
    いや、遊ばれていたと言った方が正しいかもしれない。
    ミキちゃん曰く、『近所迷惑なほど泣きわめいているという子供役の人形』を一生懸命あやしながら、
    夫役だった僕は、ふと誰かの視線を感じて背後を振り返った。
    後ろには誰もいない。

    ただ、天井近くの壁には、僕が生まれる前に死んだという曾祖父の遺影が、
    こちらに覆いかぶさるように少し傾けてかけられてあった。
    白黒写真の中からひいおじいちゃんがこちらをじっと見ている。
    何となく居心地の悪さを感じた僕は立ち上がって、
    人形を抱いたままその視線から逃れようと部屋の反対側に移動した。
    けれど移動中も、移動した後も、曾祖父の視線はしっかりと僕を追いかけていた。
    「何してるん?」とミキちゃんが不思議そうに尋ねて来る。
    僕は写真を指差して言った。

    「ひいおじいちゃんがね……、さっきからずっと僕を見てるんよ」

    「遺影」【ホラーテラー】 →続きを読む

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    13:2011/02/10 14:51:16 ID:
    以下は友人のKから聞いた話だ。

    ………………
    季節は夏で、俺は当時小学校の高学年くらいだったと思う。
    家族で父方の親戚の家に泊まりに行った時のことだ。毎年一度はやっている親族の集まりだった。
    夜、酒を飲むばかりの大人たちに退屈していた俺と四つ年上の姉貴は、
    何か面白いものはないかと探し回り、ついに隣の村で祭りをやっているという噂を聞き付けた。
    そしてこれはもう行くしかないと、無理やり親戚のおじさん(下戸)を一人引っ張って、車を出してもらった。
    おじさんの話によれば、その祭りは『やまびこ祭り』 という名前らしい。

    なんでも、その周辺には昔から『やまびこは山の神の返事だ』という言い伝えがあり、
    豊作や雨を願う際、他にも何か願い事がある時には、
    山の頂上付近にある突き出た岩の上から叫ぶ、という風習があった。
    『やまびこ祭り』 という名前はそこから来ているらしく、
    今でも祭りの終盤には子供たちが山に登り、自身の願い事を叫ぶ行事があるそうだ。
    聞けば、おじさんも子供の頃祭りに参加して、叫んだことがあるんだとか。

    「おじさんは、何て叫んだんです?」

    行きの車の中で姉貴が尋ねる。

    「『頭が良くなりますように』 ってな」

    おじさんは「ははは」と笑った。俺と姉貴も遠慮なく笑った。

    「やまびこ」【ホラーテラー】 →続きを読む

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    521:2011/01/09 08:53:18 ID:
    あの夏から約十年が過ぎた。大学二年の冬休みのある日。
    ひょんなことで故郷の街に戻ってきた僕は、友人のSとKと三人であのデパートを訪れていた。
    そのひょんなことと言うのは、冬休みに入る前、大学の学食で三人で昼食を食べていた時のこと。
    Kの提案で、その場でそれぞれ子供時代の不思議な思い出を語ることになり、僕はあの夏デパート屋上での話をした。
    それに思わぬ食いつき方をしたのが、オカルティストのKだった。

    「うおおUFOとかマジかよ!なあ、今度さ、そのデパート行ってみようぜ」

    僕が散々十年以上前の話だし今行っても仕方がないと説明しても、Kは聞く耳も持たなかった。
    「居ないなら居ないで、ショッピング楽しめばいいじゃん。別に誰が損するわけじゃねえし。いいだろ?」
    「うはは」と笑うKの横で、Sがぼそりと「……ガソリン代はどっちか出せよ」と呟いた。こうなればもう止まらない。
    かくして数日後、冬休みに入った僕らは、Sの運転する車に乗って僕の故郷へと出発したのだった。

    僕は県内の大学に進学したのだけれど、実家のある街までは国道なら車で大体三時間はかかる。
    朝の九時頃から車を走らせ、デパートの外観が見えてきたのは陽も昇った正午過ぎだった。
    ちなみに、面倒くさいので実家に寄らなかった。日帰りだし、どうせ年末戻って来るのだし。

    Sが立体駐車場の一階に車を止めた。周りは昼時だと言うのに、繁盛しているとは言えない駐車状況だった。
    おそらく、街の郊外に大手の大規模なショッピングモールが出来たせいだろう。
    昔、このデパートが街の商店街から客を奪ったのと同じことだ。
    駐車場から店内に入る。

    確かに昔ほどの人込みはないけれど、胸にこみあげてくるものがあった。
    実は約十年前、屋上でわんわん泣いたあの日から、僕はこのデパートには近づかない様になっていた。
    母の買い物に付いて行くのも止め、中学生の頃も、高校に上がってからも避け続けた。
    そうして、消えたUFOのことも、そこで出会った女の子のことも、これまで周りの誰にも、親にさえ話したことはなかった。
    何故かと訊かれると、僕にも分からないと言うしかない。

    だから、どうしてその隠してきた話をKとSの二人だけには打ち明けて、
    今自身も十年とちょっとぶりにこのデパートにやって来ているのかも、当然分かっていない。
    強いて言うなら、魔が差したんだろう。

    「UFOと女の子(冬)」【ホラーテラー】 →続きを読む

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    409:2011/01/09 06:43:58 ID:
    そろそろ二十世紀が終わろうかという年の九月のことだった。
    当時まだ十歳にもなっていなかった僕はその夏、一人の宇宙人に出会った。
    僕が住んでいた街の外れには、四階建てのそこそこ大きいデパートがあって、
    そこの屋上は、小さな子供たちが遊べるスペースになっていた。
    百円玉を入れると動き出すクマやパンダの乗り物や、西洋のお城の形をした巨大なジャングルジム、
    クモの巣状に張られたネットの真ん中に、トランポリンが付いている遊具とか。
    とにかく、子供心をくすぐるような場所だった。

    それらいくつかの遊具の中に、銀色のUFOの形をした遊具があった。
    当時はそれがアダムスキー型だということは知らなかった。
    UFOの下部にはやじろべえの様に支柱あって、子供が中に入って動き回るとその重心が移動した方にぐらりと傾くのだ。
    地面からUFO本体までは、大人の背丈ほどの高さがあった。
    中に入るには、等間隔で結び目のついている縄ばしごを上らないといけないので、本当に小さい子は上ってこれない。
    それでいて単調で単純な仕掛けだったから、他の遊具に比べると人気も無く、中に人がいることは滅多に無かった。
    けれど、僕はそんな UFOが大のお気に入りだった。

    当時、たまに母の買い物に付いて行くことがあって、
    その時は100円と消費税分だけ貰って、デパート内の痩せた店員さんが居る駄菓子屋で菓子を買い、
    母が下で買い物をしている間、僕はUFOの中でその菓子を食べながら、一人宇宙人気分を味わったりしていた。

    「UFOと女の子(夏)」【ホラーテラー】 →続きを読む

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    122:2010/11/30 07:56:18 ID:
    大学時代の冬のある日のことだった。
    その日一日の講義が終わってから、僕は友人のSとKと三人で心霊スポット巡りに繰り出していた。
    言いだしっぺはK、車を出すのはS、僕はおまけ。いつものメンバー、いつものシチュエーションだった。
    目的地は、僕らの住む町から幾分遠い場所にある、今は入居者のいない古い集合住宅。
    噂だと、そこには複数の首のない幽霊が出るらしいのだけれど。
    結論から言うと、今回はハズレだった。
    あたりが暗くなってからようやく目的の廃マンションにたどり着いた僕らを迎えてくれたのは、
    色とりどりの落書きと、階段の踊り場で季節外れの花火をするマナーの悪い先客だった。
    久々の大ハズレだ。
    「ああいう奴らってのは決まって、怖い思いしたり祟りに遭ってから、
     『後悔してる。あんなとこ行くんじゃなかった』 とか言うんだ。
     くっそ、馬鹿じゃねーのか。呪われねーかな、あいつら。それか花火で火傷しろ、ヤケド」
    帰りの車の中、いつもなら車酔いでダウンしているはずのKが、後部座席でぶつぶつ愚痴をこぼしている。
    花火をしていた若者たちとは接触自体はなかったのだけれど、Kは彼らの行為に相当おかんむりのようだ。
    「覚悟がねー奴は後で後悔すんだよ。『やっぱり止めとけば良かった』 とか俺だったら死んでも言わねーし。
     逆に、『やっぱそうだよな』 って言うな、うん」
    「知らねーよ……」
    運転しているSが若干うんざりした様に呟いた。
    Kは廃マンションを離れてからずっとこんな感じだ。
    車は郊外、左右を田畑に挟まれた道を走っていた。
    暖房が暑くてウインドウを少しだけ下げる。僅かに開いた隙間から入り込んでくる冷たい空気が気持ちいい。
    けれど、やりすぎると車内が冷える。僕はすぐにウインドウを閉めた。
    確かにKの言うことも分からなくもない。
    僕だって心霊スポットと呼ばれる場所に行くときには、『何が起こっても不思議じゃない』 という意識でもって行く。
    実際、過去にたくさん怖い目にも遭ったし、死ぬかもしれないと思ったことだって一度や二度ある。
    それでも、今日だってKが「首なしマンション行こうぜ」と言うと、ほいほい誘いに乗るのだから、
    『何されたって文句は言わない』 くらいの覚悟は、僕自身持っているつもりなのだろう。

    「言伝(ことづて)」【ホラーテラー】 →続きを読む

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    317:2010/11/16 04:03:48 ID:
    僕の友人にオカルトの類に詳しく、にも拘らずオカルトと聞くと鼻で笑い飛ばす、Sという奴が居る。
    ある日そのSに、「今まで生きてて一番怖い体験は何か」と訊いてみた。
    するとSは読んでいた本から僅かに顔を上げて、いつもの興味無さそうな表情でちらりとこちらを見やり、
    「一番って……、いちいち順位なんて決めてねえよ」と言った。取り付く島も無いとはこのことか。

    「それじゃあ、最近一押しの怖い話とかは?」

    僕は負けじと質問を重ねる。
    Sは僕に向かってハエでも追い払うかのように手を振った。
    それから何か言おうとしたようだが、ふと開きかけた口を閉じて、考える様なそぶりを見せた。
    「……なるほど、怖い話か」とSが呟く。
    その口調に何やらとても嫌な予感がした。

    「一応訊くが、これは相当ヤバい話だ。最後まで聞く覚悟はあるか?」

    そこまで言うか。僕は一瞬迷ったが頷く。

    「そうか」

    ゆっくりと本を閉じ、Sは話し始めた。

    「実際に起こった事件だ。数ヶ月前、近くの街で、一人の女子大生が自殺した。それに関わる話だ」

    以下しばらくSから聞いた話になる。
    ………………
    大学二年の夏だった。今はもう辞めているんだが、当時俺は駅前の居酒屋でバイトをしてた。
    そこで何時だったか、バイト仲間で飲み会をしようって話になった。
    場所は一年上の先輩が住んでるアパート。

    その人は俺がドリンカー(※裏方でお酒を作る人)として色々教わった先輩だった。
    俺らと同じ大学の先輩だ。お前も見たことぐらいはあるだろうな。
    自分で言うのも何だが、無愛想な俺にも普通に接してくれる人だった。八方美人と言えば言い方は悪いが。
    おそらくその先輩からの誘いじゃなかったら、俺は飲み会なんか断ってたと思う。

    「ウジの話」【ホラーテラー】 →続きを読む

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    894:2010/11/06 06:53:27 ID:
    僕の友人にオカルティストで霊感もそこそこ強いKという奴が居る。
    ある日そのKに、「今まで生きてて一番怖かった体験は何か?」と訊いてみた。
    すると、彼は視線を上の方に据えしばらく考えた後、
    「んー……そら、ぐるぐるの時だな」と言った。

    「ぐるぐる?」

    「そー。ぐるぐる」

    以下はKから聞いた話になる。
    …………
    十年くらい前の話だ。
    俺が小学五年生の時、当時通ってた小学校内で妙な噂が流れていた。
    噂は学校からそう遠くない場所にある南中山という山に関してだった。

    『あそこの山には、ぐるぐる様が出るぞ』

    話が広まり出したのは夏休みが明けた九月のことで、噂は火災時の煙の様にまたたく間に校内中に広がった。
    何でも六年生達が夏休み中に南中山で肝試しを行い、そこで何かしら見たという話が出火元らしい。
    多くの噂話や都市伝説がそうであるように、ぐるぐる様に関しても次々にボクも見たアタシも見たと目撃者は増え、
    ぐるぐる様を見た者は呪い殺されるだの、日にちが経つごとに話は膨らんでいった。
    身長は子供大から数メートルまでばらつきがあったし、男か女かも証言者によって分かれた。
    ただ、そんなバラバラな話の中にも共通点があった。

    それは、目でも腕でも頭でも、ぐるぐる様は身体のどこかしらが回転しているという点だ。
    名前が名前だからそこは外せないんだろう。
    あと、ぐるぐる様は黒いらしい。

    「ぐるぐる」【ホラーテラー】 →続きを読む

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