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    カテゴリ:オカルト・怖い話・ミステリー > 【師匠シリーズ】

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    209:2008/02/12(火) 00:13:49 ID:
    人形にまつわる話をしよう。

    大学2回生の春だった。
    当時出入りしていた地元のオカルト系フォーラムの常連に、みかっちさんという女性がいた。
    楽しいというか騒がしい人で、オフ会ではいつも中心になってはしゃいでいたのであるが、
    その彼女がある時こう言うのである。

    「今さ、友だちとグループ展やってるんだけど、見に来ない?」

    大学の先輩でもある彼女は、(キャンパスで会ったことはほとんどないが)
    美術コースだということで絵を描くのは知っていたが、まだ作品を見せてもらったことはない。
    「いいですねえ」と言いながら、ふと周囲のざわめきが気になった。
    居酒屋オフ会の真っ只中に、どうして俺だけを誘ってきたのか。
    確かによくオフでも会うが、それほど彼女自身と親しいわけでもない。
    フォーラムの常連グループの末席に加えてもらっているので、自然に会う機会が増えるという程度だ。
    なにか裏があるに違いないと嗅ぎつける。
    追求するとあっさりゲロった。
    「gekoちゃんの彼氏を連れてきて」と言うのだ。

    gekoちゃんとは、その常連グループの中でも大ボス的存在であり、その異様な勘の良さで一目置かれている女性だった。
    その彼氏というのは、俺のオカルト道の師匠でもある変人で、
    そのフォーラムには『レベルが違う』とばかりに、鼻で笑うのみで参加をしたことはなかった。
    もっとも彼は、パソコンなど持っていなかったのであるが。
    その師匠を連れてきてとは、一体どういう魂胆なのか。

    「いやあ、そのグループ展さあ、5日間の契約で場所借りてて、今日で3日目だったんだけど……
     なんか変なんだよね」

    「人形」【師匠シリーズ】 →続きを読む

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    191:2008/02/11(月) 23:40:48 ID:
    大学1回生の秋だった。
    午後の気だるい講義が終わって、ざわつく音のなかノートを鞄に収めていると、同級生である友人が声を掛けてきた。

    「なあ、お前って、なんか怪談とか得意だったよな」
    いきなりだったので驚いたが、条件反射的に頷いてしまった。

    「いや違う、そうじゃなくて、怪談話をするのが得意とかじゃなくて、あ~、なんつったらいいかな」
    友人は冗談じみた笑いを浮かべようとして失敗したような、強張った表情をしていた。

    「……怖いのとか、平気なんだろ?」

    ようやくなにが言いたいのかわかった。彼の周囲で何か変なことがあったらしい。
    だが頷かなかった。平気なわけはない。
    「外で聞く」
    まだ人の残った教室ではあまりしたくない話だ。
    俺はその頃はまだ、できるだけ普通の学生であろうとしていた。

    夕暮れの駐輪場で、自転車にもたれかかるようにして経緯を聞く。
    彼は郊外のマンションに一人で住んでいるのだと言った。
    エレベーター完備の10階建てで、見通しの良い立地場所なのだとか。
    親が弁護士で、仕送りには不自由していないのだそうだ。
    口ぶりから自慢げな雰囲気を嗅ぎ取った俺が、「帰っていい?」と言うと、
    ようやく、そのマンションで気味の悪いことが起こっている、という本題に入った。

    「エレベーターで1階に降りようとしたらさ、箱の現在地の表示ランプが、上の方の階から下がってくるわけよ。
     それで、自分トコの階まで来たら開くと思うじゃない?それが、なんでかそのまま通過するんだよ。
     ちゃんと下向き矢印のボタン押してるのに」

    「エレベーター」【師匠シリーズ】 →続きを読む

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    512:2007/09/26(水) 22:42:57 ID:
    大学1回生の秋だった。
    その頃の僕は、以前から自分にあった霊感が、じわじわと染み出すようにその領域を広げていく感覚を、
    半ば畏れ、また半ばでは、身の震えるような妖しい快感を覚えていた。

    霊感はより強いそれに触れることで、まるで共鳴しあうように研ぎ澄まされるようだ。
    僕とその人の間には、確かにそんな関係性があったのだろう。
    それは、磁石に触れた鉄が着磁するのにも似ている。
    その人はそうして僕を引っ張り上げ、
    また、その不思議な感覚を持て余すことのないように、次々と消化すべき対象を与えてくれた。
    信じられないようなものをたくさん見てきた。
    その中で危険な目にあったことも数知れない。

    その頃の僕には、その人のやることすべてが面白半分の不謹慎な行動に見えもした。
    しかしまた一方で、時折覗く寂しげな横顔に、
    その不思議な感覚を共有する仲間を求める、孤独な素顔を垣間見ていたような気がする。
    もう会えなくなって、夕暮れの交差点、テレビのブラウン管の前、深夜のコンビニの光の中、
    ふとした時に思い出すその人の顔は、いつも暗く沈んでいる。
    勝手な感傷だとわかってはいても、そんな時僕は、
    何か大事なものをなくしたような、とても悲しい気持ちになるのだった。

    「貯水池の幽霊?」

    さして面白くもなさそうに、胡坐をかいて体を前後左右に揺する。
    それが師匠の癖だった。あまり上品とは言えない。
    師匠と呼び始めたのはいつからだっただろうか。オカルトの道の上では何一つ勝てるものはない。
    しかし、恐れ入ってもいなかった。貶尊あい半ばする微妙な呼称だったと思う。

    「そうです。夕方とか夜中にそこを通ると、時々立ってるんですよ」

    「貯水池」【師匠シリーズ】 →続きを読む

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    458:2007/09/26(水) 20:21:39 ID:
    大学1回生の冬。
    朝っぱらからサークルの部室で、コタツに入ったまま動けなくなり、俺は早々に今日の講義のサボタージュを決め込んでいた。
    何人かが入れ替わり立ち代りコンビニのビニール袋を手に現れては、コタツで暖まったあとに去って行った。
    やがて一人だけになってしまい、俺もやっぱり講義に出ようかなぁと考えては窓の外を眺め、
    その冬空に首をすくめて、もう一度コタツに深く沈みこむのだった。

    うとうとしていたことに気付き、軽くのびをして、そのまま後ろへ倒れ込む。
    その姿勢のまま手を伸ばして、頭の上の方にあるラックをゴソゴソと漁り、
    昔のサークルノートを引っ張り出しては読み耽っていた。
    ふと、ラックの隅に、ノートではない小冊子を見つけた。ズルズルと引き抜く。
    『追跡』という題が表紙についている。
    何かの花を象った、切り絵のようなイラストが添えられているそれは、
    どうやら個人で作った、ホッチキス止めの同人誌のようなものらしい。A4の再生紙で、60ページほどの厚さだ。
    パラパラとめくってみると、中は活字ばかりだった。

    ……真夜中わたしの部屋の上を、巨人がまたいでいきます。
    巨人は重さもなく、匂いもなく、音も出さず、透明でけして目に見えず、手に触れることもできません。
    そして裏の森から、街の明かりがうっすらと光る方へしずしず、しずしずと歩くのです。……

    「追跡」【師匠シリーズ】 →続きを読む

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    454:2007/09/26(水) 20:16:46 ID:
    大学2回生の秋の終わりだった。
    その日は朝から雨が降り続いていて、濡れたアスファルトの表面はもやのように煙っている。
    こんな日には憂鬱になる。気分が沈滞し、思考は深く沈んでいる。
    右手には川があり、白いガードレールの向こうもかすかに煙って見える。
    カッチカッチと車のハザードランプの音だけがやけに大きく響く。それだけが世界のリズムになる。
    すべてがそのリズムで成り立っている。
    俺はもう一度川を見た。

    あのガードレールのこちら側に雨は降り、あちら側にも同じ雨が降りそそいでいる。
    道に落ちる水と、川面に落ちる水。
    見上げれば暗く低い空から、それでも数百メートルの高さをゆっくりと落ち、
    地表においてわずか数センチの違いで運命が分かれている。
    このイメージが妙に可笑しくて、運転席でハンドルに頬杖をついている人に伝えた。
    すると彼はめんどくさそうに口を開く。

    「此岸と彼岸の象徴か。確かにこの世とあの世なんて、たったそれだけの違いだよ。
     けど、地中に染み込んでも川を流れても、いずれは海にたどり着く」
     
    海。
    俺にオカルトを教えた師匠が言うその『海』は、きっと『虚無』と同義なのだろう。
    彼は死後の世界を認めなかった。
    ここでいう死後の世界とは、地獄とか天国とか、そういうこの地上以外の世界のことだ。
    なぜか認めないのかはよくわからない。けれど、頑なにそう信じていたのは確かだった。
    夕暮れにはまだ少し早い。
    俺と師匠は路肩にとめた車の中でずっと待っていた。
    先日、雨の降る日に、師匠はここでなにか面白いものを見たらしい。

    「雨音」【師匠シリーズ】 →続きを読む

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    909:2007/03/07(水) 19:47:40 ID:
    大学1回生の秋。
    その頃うちの大学には試験休みというものがあって、
    夏休み→前期試験→試験休みという、なんとも中途半端なカリキュラムとなっていた。
    夏休みは我ながらやりすぎと思うほど遊びまくり、実家への帰省もごく短い間だった。
    そこへ降って沸いた試験休みなる微妙な長さの休暇。

    俺はこの休みを、母方の田舎への帰省に使おうと考えた。
    高校生の時に祖母が亡くなって、その時には足を運んだが、まともに逗留するとなると中学生以来か。
    母の兄である伯父も「一度顔を出しなさい」と言っていたのでちょうどいい。
    その計画を試験シーズンの始まったころに、サークルの先輩になんとはなしに話した。
    「すごい田舎ですよ」とその田舎っぷりを語っていたのであるが、
    ふと思い出して、小学生のころにそこで体験した『犬の幽霊』の話をした。

    夜中に赤ん坊の胴体を銜えた犬が家の前を走り、その赤ん坊の首が笑いながら後を追いかけていくという、
    なんとも夢ともうつつともつかない奇妙な体験だった。
    先輩は「ふーん」とあまり興味なさそうに聞いていたが、俺がその田舎の村の名前を出した途端に身を乗り出した。
    「いまなんてった?」
    面食らって復唱すると、先輩は目をギラギラさせて「つれてけ」と言う。
    俺が師匠と呼びオカルトのいろはを教わっているその人の、琴線に触れるものがあったようだ。

    「田舎」【師匠シリーズ】 →続きを読む

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    312:2007/08/23(木) 00:19:32 ID:
    先日、ある店に入ろうとしたときに、自動ドアが開かないということがあった。
    さっき出たばかりのドアなのに、戻ろうとすると反応がない。
    苦笑して別のドアから回り込んで入った。こういうときはえてして別の目撃者がいない。
    ある種、個人的な経験だと自嘲気味に考える。
    そのとき、ふと大学時代のことを思い出した。

    学生のころは、自動ドアが開かないことが日常茶飯事だった。
    一人暮らしの大学生なんてものは、毎日3回以上はコンビニに行くものと相場が決まっている。
    俺もキャンパス近くの学生の街といえる場所に住んでいたために、周辺はコンビニだらけ。
    なにが楽しいのか、朝から晩までことあるごとに、時間を潰しがてら入り浸っていた。

    そんなとき、大学1回生の夏ごろからだろうか、自動ドアが開かないということが多くなった。
    昨日と同じコンビニに、昨日と同じ服を着て入ろうとしているのに、なぜか開かない。
    思わずドア上部のセンサーらしきところを見上げながら、顔を動かしてみる。
    開かない。
    体を前後左右に動かしてみる。
    開かない。
    一度離れて、まるで別人が通りがかったかのようにやり直してみる。
    やっと開いた。
    というようなことがままあったのだった。

    これもまた大学生のつねで、社会のなかで自分がひどく小さい人間に感じられて、
    己の存在意義なんてものに悩み、鬱々としていたりするときにこんなことがあると、
    なにか象徴的な出来事のように思われて少々へこむ。
    ドアの前でどうしようもなく佇む俺の横を、
    コギャルがPHSでバカ話をしながら、あっけなくドアの中へ消えていくのを見ると、
    なんともいえない敗北者の気分になったりする。
    『おまえは人権5級だから自動ドアを使う権利がありません』
    そんなことを言われているような気がする。
    「またドアが開かなかった」という自嘲気味のセリフは、一時の俺の挨拶のようなものになっていた。

    「自動ドア」【師匠シリーズ】 →続きを読む

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    264:2007/08/22(水) 23:08:04 ID:
    大学3回生のころ、俺はダメ学生街道をひたすら突き進んでいた。
    2回生からすでに大学の講義に出なくなりつつあったのだが、
    3年目に入り、まったく大学に足を踏み入れなくなった。

    なにせその春、同じバイトをしていた角南さんという同級生に、
    バイト先にて「履修届けの締め切り昨日までだけど、出した?」と恐る恐る聞かれて、
    その年の留年を早くも知ったというのだから、親不孝にも程があるというものだ。
    では、大学に行かずになにをしていたかというと、
    パチ○コ、麻雀、競馬といったギャンブルに明け暮れては生活費に困窮し、
    食べるために平日休日問わずバイトをするという、情けない生活を送っていたのだった。
    大学のサークルには顔を出していたが、一番仲の良かった先輩が卒業してしまい、自然に足が遠のいていった。
    その先輩は大学院を卒業して、大学図書館の司書におさまっていた。

    この人が俺に道を踏み外させた張本人と言っても過言ないのだが、まさかこんなにまともに就職してしまうとは思わなかった。
    俺が大学に入ってからの2年間、あれだけ一緒に遊び回っていたのに、
    片方が学生でなくなってしまうと急に壁が出来たように感じられて、自然と距離を置くようになった。
    職場の仲間や、ギャンブル仲間・バイト仲間という、それぞれの新しい世界を築いていく中で、
    オカルト好きという子供じみた共通項で、かろうじてつながっているような関係だ。
    思い返すとそのころの彼は、つきあっていた彼女も学部を卒業し県外に就職してしまっていたせいか、
    妙に寂しげに見えたものだった。

    「鋏(はさみ)」【師匠シリーズ】 →続きを読む

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    256:2007/08/22(水) 22:55:24 ID:
    大学2回の冬。
    昼下がりに自転車をこいで幼稚園の前を通りがかった時、見覚えのある後ろ姿が目に入った。
    白のペンキで塗られた背の低い壁のそばに立って、向こう側をじっと見ている。
    住んでいるアパートの近くだったのでまさかとは思ったが、やはり俺のオカルト道の師匠だった。

    子どもたちが園庭で遊んでいる様子を、一心に見つめている20代半ばの男の姿を、いったいどう表現すればいいのか。
    こちらに気づいてないようなので、曲がり角のあたりで自転車を止めたまま様子を伺っていると、
    やがて先生に見つかったようで、「違うんです」と聞こえもしない距離で言い訳をしながらこっちに逃げてきた。
    目があった瞬間、実に見事なバツの悪い顔をして「違うんだ」と言い、
    そしてもう一度「違うんだ」と言いながら、曲がり角の塀の向こうに身を隠した。
    俺もつられてそちらに引っ込む。
    「あの子を見てただけなんだ」
    遠くの園庭を指差しているが、ここからではうまく見えない。
    「あの青いタイヤの所で、地面に絵を描いてる女の子」
    首を伸ばしても、角度的に木やら壁やらが邪魔でさっぱりわからない。
    なにより、なにも違わない。

    「いつから見てたんですか」との問いに、「ん、1ヶ月くらい前から」とあっさり答え、ますます俺の腰を引かせてくれた。
    「そんなにかわいいんですか」

    言葉を選んで聞いたつもりだったが、
    「かわいいかと問われればイエスだが、『そんなに』って頭につけられるとすごく引っ掛かる」
    と、不快そうな顔をする。

    「ともだち」【師匠シリーズ】 →続きを読む

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    450:2007/03/07(水) 23:05:24 ID:
    昨日から降っていた雨が朝がたに止み、道沿いにはキラキラと輝く水溜りがいくつもできていた。
    大学2回生の春。梅雨にはまだ少し早い。
    大気の層を透過してやわらかく降り注ぐ光。
    軽い足どりで歩道を行く。

    陽だまりの中にたたずむようにバス停があり、ふっと息を吐いて木目も鮮やかなベンチに腰を掛ける。
    端の方にすでに一人座っている人がいた。
    一瞬、知っている人のような気がして驚いたが、すぐに別人だとわかり深く座りなおす。
    髪型も全然違う。それにあの人がここにいるはずはないのだから。
    バスを待つ間、あの人に初めて会ったのは今ごろの季節だっただろうかと、ふと思う。
    いや、確かもう梅雨が始まっていたころだった。1年たらず前。
    彼女は別の世界へ通じるドアを開けてくれた人の一人だった。

    そのドアを通して、普通の世界に生きている人間が、何年掛かったって体験できないようなものを見たり、味わったりしてきた。
    もちろんドアなんてただの暗喩だ。けれどそれが、そこにあるもののよう感じていたのも事実だった。
    そのドアのひとつが閉じた。もう開くことはないだろう。
    春が来たころひっそりと仕舞い込まれる冬色の物のように、彼女は去っていった。
    そのことを思うと、ひどく感傷的になる自分がいる。
    結局、気持ちを伝えることはできなかった。
    それが心の深い場所に澱のように溜まり、そして渦巻いている。

    「雨上がり」【師匠シリーズ】 →続きを読む

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