315:2008/08/23(土) 06:21:08 ID:
「磨りガラスに映る何か」 

父方の親戚の話です。

そこは、自分からすると判らない、祖母の妹の夫の母の…みたいな遠い親戚も
田舎独特のコミュニティに含まれているような土地柄。
昔ながらの山間の農村そのもので、幼い頃一度しか行った事は無いけれど
道端にある古い幟の立った祠を見て「八つ墓村みたいだなぁ」と思ったのは憶えている。
そんな中、70そこそこの女性の親戚(仮にAさん)が闘病の末に亡くなった。
良くある話だがその人は長男の嫁と折り合いが悪く、かなりやり合っていた事は
あまり近くない親戚の自分にも聞えてくる程だった。
亡くなる原因の病は胃の病で、死ぬ直前は殆ど何も食べられなかったらしい。

Aさんの通夜が終わり、葬式が済み、客が帰った後。
田舎の葬式だけに、やたらと人が多く来るので終わった後はぽっかりと
空洞のようにひっそりとするらしい。
山間だけに、夜中も街灯で明るいという事はなく
一歩家を出ると、都会暮らしには想像がつかないほど異様に暗い。

昔の家なので基本的に和室に障子で、家中の障子が
真ん中にグラデーション状の磨りガラスをはめ込んだ戸になっている。
茶の間と、昔ながらの板の間の台所は隣接していて
茶の間からガラス越しに台所が見えるそうだ。

「磨りガラスに映る何か」【2008年百物語】 →続きを読む