1 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 21:55:06 ID:









空を染める 地を染める

それらひとつひとつが 私

自我を持たない 私の一部

この街を染めたのは 私
no title


3 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 21:56:10 ID:
ひら

はら

ひら

はら


私は 染める

街を染める

家々を染める

私は 雪 と  呼ばれている

4 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 21:57:05 ID:
(*><)「わ 雪なんです!!」


とある一軒家の窓に、子供が張り付いている
上を見上げて、何が楽しいのかにこにこしている

ζ(゚―゚*ζ「あーあー 積ってる積ってる」

子どもと並ぶ女性は、母親であろうか
子供とは対照的な顔をしている

道路や庭など、一面を染め上げている雪を見て、億劫そうに顔を曇らせている

私は、子供などにはとても人気がある
対照的に 大人には嫌われる傾向がある
私を退かす手間然り 事故などの危険性然り

無邪気に遊んでいられる子供にとってのみ、私は 友達 として愛着を持たれている

親子が窓辺から消える
私は特に なんとも思わない
そこらじゅうの家で 同じような光景が見えているから

5 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 21:57:28 ID:
しんしんと 降り続けている
音はない

人は 雪は音を吸い取るという
理論的には間違いである気もするが、あながち間違いではない気もする
辺りの空気は張り詰められている

音のない 純白の世界
日が射すまでの 短い世界

今この街は、とても綺麗だった

6 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 21:58:08 ID:
( ><)「いってくるんです!!」

一人の少年が、家を飛び出す
先程の少年だ

ζ(゚―゚*ζ「風邪ひきますよ」

( ><)「子供は風の子なんです!!」

ζ(゚―゚*ζ「待ちなさい 靴下もう一枚はかないと寒いわよ?
それと、スニーカーじゃなくて長靴を履きなさい。」

( ><)「もこもこするんです!」

ζ(゚―゚*ζ「風邪ひいてお注射なんて したくないでしょう?」

(;><)「うぅ…嫌なんです」

ζ(゚―゚*ζ「なら、このマフラーと手袋も大事ね」

( ><)「あわわわわ……」

ζ(^―^*ζ「よし。いってらっしゃい」

(*><)「いってきますなんです!!」

7 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 21:58:55 ID:
お庭だけで遊びなさいよ  という言葉を背中で浴びて、少年は庭へと駆け出す

決して広くはない庭を、大きく一周駆け回る
そして足跡が付いていない 真っ白な部分に身を投げた

彼の白いコートが雪にとける

しばらくすると起き上がり、また別の場所へ背中から飛び込む
それを繰り返す少年
意味は解らないが、とても楽しそうな顔をしていた

庭がまばらに人型で埋まると、少年は次に、雪を丸めはじめた
その作ろうとしてるものを、私は知っている
雪だるま というものだ
二つの雪玉を人型に見立てて人形とする あれだ
私の欠片をかき集めて、せっせと雪玉に貼り付けている

彼より少し小さい塊になった頃、彼は肉づけをやめた

8 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 21:59:19 ID:
少年は庭に私を置き去りにして、玄関へと向かった
向こうで、じゃらじゃらと音がする
そして玄関の音
少年は家に入ってしまったらしい
私は空を眺めている
降りしきる雪を 眺めている


ふと  疑問がわき起こる
はて 私は、空から少年を見ていたはずだったのに…………


もう一度、玄関の開閉音
少年が、こちらへと駆けてくる
あぁ、そんなに走ったらこけてしまいますよ
って、思ったそばから雪に足を取られて転んでしまった
雪の上なので怪我はないでしょうが、とても心配です

( ><)「これくらい、泣かないんです」

少年は力強く立ち上がり、ぐっと拳を握りしめる
強い子だ と、内心褒めてやる

少年は私のすぐ傍に立ち、私の首に大きなハンカチのようなものを巻いた
そして、大きめの黒い敷石を、私の、人で言う目の部分に埋め込んだ

9 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 21:59:42 ID:
( <●><●>)


( ><)「これで完成なんです!」






( <●><●>)は雪だるまさんなようです

10 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:00:35 ID:
少年は にへらっと笑いかけてきた

(*><)「こんにちは なんです」

挨拶は 返すのが礼儀
そのくらい、わかってます

( <●><●>)「こんにちは 初めまして」

( ○ ○)

( <●><●>)「挨拶は礼儀だということくらい わかってます」

( ○Д○)

( <●><●>)「失礼な子ですね」

11 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:01:47 ID:
( ∩∩)゙

( ><)

( <●><●>)

(;><)

( <●><●>)

(;><)「は…初めまして、なんです」

( <●><●>)「はい 初めまして」

(;><)

(;∩∩)゙

(;∩< >。゙

(;><)

( <●><●>)「失礼な子ですね」

(;><)「だって雪だるまがしゃべってるんです」

12 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:02:14 ID:
( ><)「何でしゃべってんですか?わけわかんないんです」

( <●><●>)「私もわけがわかりません」

( ><)「勝手に喋り出しといてわかんないとか意味わかんないんです!」

ヽ( <●><●>)ノ゙「あ、ちなみに動けもしますよ。ほら」 ズーリズーリ

(;><)「あぁ……僕の常識は何処へ……」

( ><)「わかんないことがあったらおっきい大人たちに聞いてみるんです!!」

( <●><●>)「あてがあるのですか?」

( ><)「ちょっとスレ立てしてみるんです!」


( ><)「『うはwww雪だるまが喋り出したwwww』……」



パチコーン( <●><●>)「子供がそんなところで遊ぶんじゃありません」
         ⊂彡☆))><)「痛冷たい!!」

13 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:02:46 ID:
( ><)「生い立ちはともかく、僕が遊びでつくったんです!」

( <●><●>)「ほう」

(*><)「だから、僕と遊ぶんです!」

( <●><●>)「お断りします」


(#><)ペチコーン
 ⊂彡☆))><●>)


(#<○><●>)バチコーン
    ⊂彡☆))><) 「痛怖い!!」

14 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:03:29 ID:
( <●><●>)「型崩れしたらどうするんですか」

(メメ。><)「……だったら遊んでくれたっていいじゃないですか」

( <●><●>)「雪遊びで私に勝てるとでも思っているのですか?」

( ><)「なら中でゲームするんです」

( <●><●>)「家に入ったら溶けてしまうことくらいわかってます」

( ><)「じゃあ、雪だるまさんを置いて一人でゲームやるんです」

( <●><●>)―<))><)「痛い痛い痛い痛い!!」

(:#:><)「なにするんですか」

( <●><●>)「作っておいて、私を置き去りにする気ですか」

( ><)

15 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:03:56 ID:
(*><)「……寂しいんですか?」

( <●><●>) 三 >―( ><)―>・゜。 プス

>―( ><)―>「……」

( <●><●>)「……」

>―( ><)―>「痛いんです」

( <●><●>)「わかってます」

>―( ><)―>「いたいんです」

( <●><●>)「ごめんなさい」

>―( ><)―>「抜いてくださいなんです」

( <●><●>)「わかってます」

( <●><●>)つ>― ″( ><)―> ポキン

( ><)――O>″(<●><●> ) ズルッ

( ><)+

16 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:04:51 ID:
( <●><●>)「シュールですね」

( ><)「タフって言ってほしいんです」

( <●><●>)「はは ワロス」


( <●><●>)「……ところで」

( ><)「なんです?」

( <●><●>)「もう日も暮れてきました。子供はおうちに帰ることを、お勧めします」

雪はとっくにやんでいて、
僅かに出ていた日も とうに山の向こうに消えていた

( ><)「もうこんな時間ですか……うん、帰るんです!」

( ><)「雪だるまさんは、また明日もいるんです?」

( <●><●>)「…………はい、勿論。 日陰に、居ることが出来れば」

そう、日陰に入ることが出来れば

子供には内緒だが、一日中立っていた為、とうに足元は凍りついていた
もう自力で移動することは叶わない

17 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:05:21 ID:
( ><)「なら、雪だるまさんは自分で歩けるから 大丈夫ですね!」

( <●><●>)「えぇ……。また明日、会いましょう」

( ><)「さよなら なんです!」

( <●><●>)「えぇ、さようなら」


すぐ目の前にある家の、玄関へと入っていく
一度だけ振り返り、手を振ってから 完全にドアの向こう側へと消えていった


( <●><●>)「……また明日、ですか」

大気に漂う冷気を かき集めて身に纏った
身体は雪の柔らかみを氷のそれに変えていく
雪だるま から 氷塊 へと姿を変えるが、明朝の日差しに耐えるためには致し方ない

( <●><●>)(跡形もなく消えてしまえるのなら、こんなことをする必要もないのですが……)

曇天の夜空を見上げ、今日出会った小さな子供の笑顔を、思い出していた

18 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:05:47 ID:
目を瞑る

しがらみを解いて、自我を空へ浮かばせるイメージを描く

高く 高く

街を見下ろせる高さまで飛んでいくイメージ

ネオンが小さく小さく瞬くのを見下ろす高さにまで上昇

今までの視線の高さをイメージし、瞼を開ける

そこにはイメージ通りの世界

はるか上空
雲の真下から街を眺めている

あの子供の家は もはやどれだかわからない

19 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:06:21 ID:
私は雪
此処に居る私が 本来の在るべき姿

自我をもたない白い欠片の総意であり
欠片の総称 雪

自我はない
意志はない
空を 地を 屋根を 道を
時には人さえも 白で覆い尽くしてしまう存在

私は雪

私に固定形はなく 常に変動している
気温によって姿を変える結晶の 集合体
その集合体の 群衆
それが私

……の、はずなのに

( <●><●>)(……すっかり、姿が固定化されてしまいましたね)

自分の意識の中に、あの子供が作った自分の姿が
しっかりと植えつけられている

雪だるまさん という名前さえ、定着してしまった

20 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:06:46 ID:
現在も、意識の中にあるこの雪玉の姿を欠片に還元して大気に戻すというイメージを、絶えず頭の中に描いていないと
この空に滞空すらしていられない

私は地上に落ち、姿を与えられ、名称まで与えられてしまった
もう此処にいるのは、不可能なのかもしれない

いくら頭で否定しても、木の枝で出来た手で 少年の頬を突いたり叩いたりした感触は消えない

私が 「雪」 という総意でいるのも、限界かもしれない


過去、 私 という存在の中から地へ発ち、 私 という存在に還ってこなかった存在も、数多くいる

地上を流れる 水 という存在に留まってしまったものもいれば
地上で 雪山 として在り続けている存在もいるらしい

是とも思わなかったが、異とも思わなかった
自然の摂理の中に居るのだから、それもいい と思っていた


まさか、自分もそのような存在に成るとは思ってもいなかったが

21 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:07:20 ID:
( <●><●>)(……私が此処にいる必要はない)

私が 雪 という存在を外れてしまっても、大丈夫
私が居なくなっても、 雪 という存在の総意は、別に生まれてくる
私だけが此処に居座る必要はない

雪とは、結晶の集合体の群衆だ
きっと その中から新しい総意が芽生える

まるで自分に言い聞かせるように、意志を固めていく

少年の側に居られる時間など、たった数日だろう
それ以降は水になり 地に吸われるなり、植物に吸われて植物の一部になるなり
はたまたそのまま、宙へ還るなりするだろう
宙へかえったとしても、雪に戻って来られるとは限らない
雨 や 大気 に成ることだって、十分にあり得るのだ

22 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:07:47 ID:
それでも構わない
そう思えてしまう自分には、既に自我が強く根付いてしまったのだろう
雪だるまさん という安易な名前の、少年に作られた存在の自我が

少年の元へ帰らなければ
少年との約束を果たさなければ
そういった気持ちが、今は強い
「また明日」という他愛のない約束は、こうも自分を突き動かしていた


もうだいぶ、体も消えてしまった
少年の所へ戻りたいと思うなら、早く 下 へ帰らなければならない

23 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:08:11 ID:
総意として 総身としての最後の権限で、次なる総意を選出する

掌に乗る 小さな結晶の集合体
一片の 雪だ

小さく 柔らかそうなその身は、かつての自分と相違ない形をしていた

( <●><●>)「私は地上へ降ります。あとは君に任せました」

( ^ω^)「はいですお。お任せください。 安心して下界を楽しんで来て下さいお」

( <●><●>)「ありがとうございます」

( ^ω^)「ささやかながら、送別の意を込めて、僕が一雪降らせますお。
貴方の下界での身体が、少しでも長く保てるように」

( <●><●>)「厚意、感謝します」

掌に居た新たなる総意は、ふわりと大気に浮かび上がる

24 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:08:38 ID:
( ^ω^)「さぁ、最初の仕事ですお!上手く仕切れるかわかんないけど……いきますお!!」

彼を総意とした大気中の 雪 が、広大な両腕を広げたような気がした

次に 我先にと、祭りの会場に人が雪崩れ込むように
大気中の 雪 の欠片達が、地上へと一斉に降り注いだ
鈍色の雲で覆われた夜空は、一斉に雪で埋め尽くされていった

(;^ω^)「おっおっおっ、ちょっ、みんな落ち着くお。気持ちはわかるけど、そんなに一斉に降ったらまずいお!!」

新しい総意の彼が、慌てふためく
総意が、 雪 という自身を操りきれていない
苦笑を隠せないまま、彼に指導をしに行った

( <●><●>)「発破をかけてどうするのですか。空から雪崩とか、シャレになりませんよ」

(;^ω^)「おっおっ、すいませんお」

( <●><●>)「新しい総意さん 言うとおりにやってみてください。」

( ^ω^)「はいですお」

25 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:09:01 ID:
( <●><●>)「深呼吸。心を落ち着かせてください」

( ^ω^)「ふぅー……」

( <●><●>)「自分好みの、幻想的な降雪風景を思い描いてください」

(*^ω^)「幻想的……」

( <●><●>)「そのイメージに副うよう、現在此処に在る 雪 に指示を出します。
         大丈夫。全ての 雪 は、貴方の一部です。」

( ^ω^)「イメージに副って、指示……」

総意が瞑想する
イメージをトレースし、指示を出す

雪崩はぴたりと止み、緩やかな螺旋を描いて舞っていく

(*^ω^)「おっおっ」

( <●><●>)「上出来です。」

26 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:09:42 ID:
( <●><●>)「では、私は地上へ還ります」

( ^ω^)「お気をつけて」


権威を全て彼に託し、私はまた地上へと落ちていく

少年の元へ、帰らなければ

27 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:10:17 ID:
総意の彼は、緩やかに牡丹雪を舞わせている
藍色の闇に大粒の白が舞う 幻想的な景色

このまま降らせ続ければ、また明朝には一面白で染まるのだろう
手向けにしては、少し多い気もする
新しい総意の彼、相当張り切っているようだ
もう少し制限させることを覚えさせてからの方が良かったかもしれない

人間には申し訳ないが、下界の我が身を思うと頬が綻んでしまう
また、彼の笑顔を見ることが出来る
約束は、破らずに済む

……随分と思考が人間臭くなったものだ
総意である頃は、そんなこと考えもしなかったのに
つい昨日までは、意志どころか自我すらない まっさらな存在だったというのに

苦笑
人間に成れるわけでは、ないというのに


( <●><●>)(朝には、間に合いそうですね)

今、帰りますよ

28 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:10:50 ID:


窓に両手をついて外を眺める少年と、その母親

(*><)「真っ白なんです!!」

ζ(゚―゚*ζ「あらあら……昨日積ったばっかりなのに」

( ><)「僕、雪だるまさんにおはよう言ってくるんです!!」

ζ(゚―゚*ζ「あ!こらビロード待ちなさい!!朝ごはん食べてから!!」

( ><)「あうぅー……」

飛出し損ねて頬を膨らませる少年
その後ろからのっそりと現れる 昨日は見なかった少女

(*-ω‘ *)「ぽー……」

29 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:11:10 ID:
ζ(゚―゚*ζ「あら、おはよう。」

( ><)「お姉ちゃん!おはようなんです!!」

(*-ω- *)「おはようだっぽ……ビロードうるさいっぽ」

(;><)「あうう……」

ζ(゚―゚*ζ「さ、ごはんの支度するから、二人とも顔を洗ってらっしゃい」

( ><)「はーい なんです!」

(*‘ω‘ *)「ぽー」

二人仲良く、部屋の奥へと消えていった
母親もキッチンの奥へ消えていく
レースカーテン越しに、彼らの朝食風景を眺めていることにした

30 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:11:36 ID:
彼が来るまで目を瞑って、先程の朝食シーンを思い出していた

(*)(あれは、何でしょう?)

シャキン と機械から飛び出した、小麦色に焼けた何か
白い牛酪は、それに塗りたくると ゆるゆると黄色い液体に姿を変えた
おそらくは温かい食べ物なのだろう

肉を敷いて焼いた鶏卵は、ドーム状に白い幕をはり、ぷるぷると揺蕩っている
余所で見たことのある鶏卵は、あんなに揺れていたことはなかった
ぽろぽろと黄色い中身を溢すはずの白い幕は、少年が突き破った時、粘性の高い液体を零していた

添えられていた黄味がかった白い食べ物は、もう少し北に行った地方で見たことがあった
芋を蒸かして潰し、白い何かで和えているのを見たことがある
並べられた温野菜も、鮮やかな緑で食卓を飾っていた

大きめのカップに注がれたスープは滑らかな黄色
他国でも子供が好んで飲んでいるところを見たことがある

何処の国にも共通している食べ物は多いのだろうか
世界中を舞い回っているが、食事風景には飽きが来ない


31 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:12:15 ID:
( <●><●>)(……ま、私は食べることが出来ないのですけれど)

腹いせに、後で軽く少年をつつくことにしよう
そう考えると、枝で出来た細腕が鳴るというもので
軽く準備運動をしておこうと庭中を這い回っていると、何処からともなく悲鳴が聞こえた

( <●><●>)「おっと。私は基本動いてはいけないという常識を、すっかり忘れていました」

ぽん と、器用に拳を叩くしぐさをしてみせる

ペチコーン (#><)「言う側から動いてるんです!!」
        ⊂彡☆))><●>)

(#<○><●>)バチコーン
    ⊂彡☆))><) 「おはようございますなんです!!」

(#∩゛><●>)「だから!型崩れしたらどうするんですか!!」

32 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:14:04 ID:
(メメタァ。><)「僕が治してあげますから、おもっきし殴ることないじゃないですかぁ」

( <●><●>)「だまらっしゃい。」

(っ゛メ><)「ところで、日陰にいなくれも平気だったんですか?」

( <●><●>)「昨夜、雪降りましたから。今朝も動けてましたし」

( ><)「……昨日、足元氷ついてましたけど?」

( <●><●>)「…………」

(*><)「やっぱり。夜砕きにきといてよかったんです」

( <●><●>)「夜、来ていたのですか?」

( ><)「話かけても反応なかったから寝てたのかと思ったんです。」

33 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:14:32 ID:
( <●><●>)「わざわざ、来たのですか?」

( ><)「日陰に入れなかったら、溶けちゃうと思ったんです。」

( <●><●>)「…………」

( ><)「雪だるま、さん?」

( <●><●>)「…………いえ」

( ><)「途中おっきい雪降り始めて、大変だったんですよ?」

( <●><●>)「そんなに私と遊びたかったんですか?」

( ><)「だって、約束したんです!」

人の子とはこんなにも純粋なのだろうか
まるで……―――

( ><)「今日も一緒に遊ぶんです。溶けたら、また整えてあげるんです。
      午後にはお姉ちゃんも一緒なんです」


雪みたいに、まっさら

34 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:19:44 ID:
( <●><●>)(……でも、多分昨日の雪が今季で最後なんですよね)

もう三月
人の感覚でいっても、もう春なのだ
隣の庭の、散り始めた梅をちらりと見る
そろそろ冬も御暇しなければいけない
昨日降ったからといって、私の寿命がそうそう延びるわけでもない

( <●><●>)(気休め……なんていったら、失礼ですよね)

新しい総意の厚意を、無下にはできない
少ししかない寿命 精一杯楽しまなければならない

いや、楽しみたい


( <●><●>)「今日は、何をして遊びましょうか?」

35 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:20:12 ID:
***

(*‘ω‘ *)「ぽ!私達の連携技に平伏すがいいっぽ!!」

(;><)「雪玉に石!おねぇちゃんおにちくなんです!!」

( <●><●>)「なんのこれしき……エターナルフォースブリザード!!」

( ><)「相手はww死ぬwwww雪だからってチートなんですwwwwwwww」

(*‘ω‘ *;)「くっ……雪玉を…食ってる……!!」

( <●><●>)「雪だるまです。どこからでも雪玉を吸収出来ることくらいわかって…っぐおあっ!!」

(*‘ω‘ *)「かかったっぽね!雪玉に紛れたお湯風船!!」

(;><)そ「お姉ちゃんせこいんです!雪だるまさん溶けちゃってるんです!!」

36 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:20:37 ID:
(;<○><●>)「くっ……なんのこれしき!!」

(*‘ω‘ *)「ぞーりぞーり♪」

( ><)「いくら雪だるまさんが大きくなったからって、そのお腹を掘ってかまくら作るのはちょっと残酷だと思うんです」

(*‘ω‘ *)「生きたまんま腹を抉られるってどんな気持ち?ねぇどんな気持ち?」

(;><)「おねぇちゃん!!!?」

( <○><○>)

(;。><)「雪だるまさあぁん!!!?」

(*‘ω‘ *)「ほらビロードも手伝うっぽ!」

(;。><)「ぁぅぁぅ」

(*‘ω‘ *)「お前ちょっと此処掘っとけっぽ。お姉ちゃん七輪とみかん持ってくるっぽ」

(;><)「火は大人と一緒につかいましょぉぉぉっ!!」

37 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:21:07 ID:
( ><)「仕方ない……掘るんです……」

(。<●><●>)「お前がっ、お前が私を掘るんですかっ…!?」

(;><)「うぅ……罪悪感なんです……でも掘らないとお姉ちゃんに怒られるんです……」

(。<●><●>)「掘るんですか?掘るんですか?私のお腹の中を空っぽにしたいんですか?」

(;。><)「うわあああああん」

( <●><●>)(面白いなぁ……)

(。<●><●>)「私のお腹のなかを掻きだして空っぽにして空洞にして、
そこで七輪たいて中でぬくぬくしたいんですか?
私の中でぬくぬくしながらみかんが食べたいんですか?
私の中は温かいんですか?ねぇ、ねぇねぇ」

::(。∩∩)::「うああああああああ…………」

38 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:21:34 ID:
ペチコーン(*‘ω‘ *)「なにグズグズしてるんだっぽノロマ!!」
     ⊂彡☆))><) 「ごめんなさいっ」

(。><)「かまくらさんが可哀想なんです……」

( <●><●>)「いつから私はかまくらになったんですか」

(*‘ω‘ *)「これからなるんだっぽ」

( <●><●>)「許さない、絶対にだ」

(*‘ω‘ *)「かまくらのくせにこえーっぽ」

(*‘ω‘ *)「そんなことより、七輪焚き始めるっぽ」

( ><)「大人はいるんですか?」

(*‘ω‘ *)「そこのかまくらだっぽ」

39 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:22:00 ID:
(;><)「おと…な……?」

( <●><●>)「子供ではないことは確かですね」

(*‘ω‘ *)「ならいいっぽ?ビロード」

(;><)「ぁぅぁぅ……」

( <●><●>)「私には同意は求めないんですね」

(*‘ω‘ *)「遠慮はさせないっぽ」

( <●><●>)「固辞 したいんです」

(*‘ω‘ *∩「ぽーっぽっぽっぽっ」 ぼいんっ

( <●><●>)「……ったく」

40 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:44:02 ID:
( <●><●>)「中は如何ですか?」

(*‘ω‘ *)「ケツつめてーっぽ」

( ><)「でも寒くはないんです。不思議なんです!!」

( <●><●>)「そうですか……はぁ、私の体こんなふうにしてくれて……もう移動出来ないじゃないですか」

( ><)「僕が毎日整えてあげるんです!!」

( <●><●>)「…………」

41 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:44:31 ID:
***

辺りは不思議と暗くない
月明かりを雪が反射して、仄白く照らしているのだろう

深夜、子供たちも寝静まった頃、やっと思考を開始した

( <●><●>)(……動けなく、なってしまいました)

見上げた空にちりばめられた星屑はまるで雪の欠片のように
降りてこないまま上空で、きらきらと瞬いていた

明日は雲一つない晴天だろう
雪は、一気に溶けだす
少年はこの雪の体を保つつもりらしいが、明日少年が起きるころにはあらかた溶けてしまった後だろう

補う雪がなくなってしまったら、あの子はどんな顔をするだろうか
悲しむだろうか 泣くだろうか

42 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:44:58 ID:
自分でも保てるよう努力はするつもりであったが、昨日ほどの自信はない
腹にできた空洞
厚さにばらつきのある内壁
重い頭部
ある程度溶けてしまったら、きっとこの体は頭部の重さに耐えきれず崩れ落ちてしまうだろう

( <●><●>)(わかっていたことではありますが……やはり惜しいのでしょうね)

( <―><―>)(……苦しい)


――― ……もっと、ずっと  あの子達と遊んでいたいのに


約束を言い訳に感情でここまで動いてしまった
雪の総意の地位すら擲って地上に留まってみたはいいが、此処にいられる時間はそう長くはない

比喩ではなく、胸にぽっかりと空いた穴にひゅうと風が通り抜け
切ないほどにきゅうと 胸を何かが締め付けられる

43 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:45:18 ID:
――――――― あぁ 夜が明ける

44 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:45:45 ID:
(*‘ω‘ *)「ビロード!起きるっぽ!!」

ぼいんっ

姉が容赦なくダイビングしてくる
スリリングな朝だと、僕は思う

瞼を射す光は太陽のそれ
眩しくて、満足に瞼を持ち上げることが出来ない
きっと今日は、とても天気がいいんだろう
日差しが、温かい


(*‘ω‘ *)「起きろっぽ!!」

今は春休みなんです もう少し寝かせてほしいんで……


(*‘ω‘ *)「かまくらが!!」

45 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:46:41 ID:
跳び起きてリビングまで駆ける
扉を開いて右側に、大きな窓がある
お母さんの「おはよう」も無視して窓に張り付く

窓の向こうは雲一つない快晴で
目に痛いほどの日差し
雪 雪 雪 雪 ……

( <―><―>)

かまくらと化した雪だるまは 背中に小さな穴が開いていた

(;><)「!!」

早く埋めなくちゃ
早く直さなきゃ
早く 早く……

46 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:47:17 ID:
ζ(゚―゚*ζ「ビロード!!」

(;><)そ「はいなんです!!」

ζ(゚―゚*ζ「挨拶くらいちゃんとしなさい。お外出さないよ?」

(;><)「ご、ごめんなさいなんです!おはようなんです!」

ζ(゚―゚*ζ「おはよ。ごはんにするから顔洗ってらっしゃい」

(;><)「……はいなんです……」

早く支度して、直しに行かないと

庭には、かまくらの影になるところにしかきちんとした雪は残っていなくて
他は、草や砂利が覗いていた

(*‘ω‘ *)「ビロード。私はもうごはん終わってるっぽ。先、行ってるっぽよ」

( ><)「お願いします、なんです」

47 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:47:54 ID:
ハニートースト
サラダ
ミルクティー
フルーツヨーグルト

大好きな朝食
でも、味わっていられない

焼きたてのトーストに惜しみなくかけられた蜂蜜を零さないように食べる
サラダにバジルドレッシングをかけて、しゃきしゃきしたレタスにかみつく
ヨーグルトで和えられたフルーツを殆どかまずに飲み込んで、のどに詰まらせる
急いでミルクティーで飲み込んだところ、お母さんに窘められた

ζ(゚―゚*ζ「もっと噛んで食べなさい。おなかびっくりしちゃうわよ?」

(;><)「ごめんなさいなんです。でも、急いでるんです」

ζ(゚―゚*ζ「雪だるまさん?」

(;><)「はいなんです」

48 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:48:18 ID:
ζ(゚―゚*ζ「今日は天気がいいから、結構溶けちゃうんじゃないかしら」

(;><)「いやなんです」

ζ(゚―゚*ζ「あら。でもねビロード、もうそろそろ四月になるのよ?」

( ><)「僕はまだ、一緒に遊びたいんです!ごちそうさま!!」

ζ(゚―゚*ζ「あっこらビロードお皿を片付けなさい!
…………一緒?」

49 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:48:54 ID:
玄関から、勢いよくビロードが飛び出してきた

( <●><●>)「転びますよ」

(;><)「ぅえぶしっ!」

期待を裏切らない展開
小石に足を取られて転んでしまった

(*‘ω‘ *)「あーあー……」

( <●><●>)「大丈夫ですか?」

心配ではあるが、此処から動けない
姉が少年を起こしに行く

(*‘ω‘ *)「だいじょぶかっぽ?」

(。><)「ぃ……痛くないんです、痛くないんです、痛くないんです、痛くないんです……」

(*‘ω‘ *)「よしよしいい子だっぽ。痛くない痛くない」

立たせて雪や汚れを払ってやっている

50 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:49:26 ID:
姉が、少年を私の近くまで連れてきた

( <●><●>)「もう大丈夫ですか?」

( ><)「だいじょうぶなんです」

(*‘ω‘ *)「ほら 私の手袋貸してやるから、さっさとこいつ直すっぽ」

( ><)「了解なんです!」

二人は雪を集めに行った
私は日差しに晒されながら、微笑ましい彼らを眺めていることにする


あぁ、今日は温かいなぁ
目を閉じてみると、聴覚が活きる
木や屋根の上で溶けた雪が下に落ちて、ぴしゃぴしゃ くしゃくしゃ 音がする
あぁ、やはり、溶けてしまうか

( <―><―>)


51 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:49:52 ID:
放送が流れる
昼の音楽
もう正午のようだ

眺めるどころか、寝落ちてしまったらしい
雪だるまに睡眠は必要か?そんなことは知りません
まだ微睡みかけの思考を醒ますように、重たい瞼を持ち上げた

( <―><●>)「……ん…………」

( ><)「あ、かまくらさんおはようなんです!」

(*‘ω‘ *)「雪のくせに居眠りとは、いい度胸だっぽね」

52 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:50:16 ID:
( <●><●>)「かまくらなんて呼ばないでください。せめて雪だるま 雪だるまにしてください」

(*‘ω‘ *)「生意気だっぽね」

(*><)「……最初の名前が気に入ったんですか?」

( <●><●>) 三 >―( ><)―>・゜。 プス

(<●><●> )  >-(>< )―>

(<●><●> )  >―( >< )―>

(*‘ω‘ *)「早く抜けっぽ」

>-O-″( ><)―> ポキン

( ><)―O―>″ズルッ

( ><)+

54 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:52:31 ID:C9D2pAgU0
>>52
とうとう自分で抜くようになったのか…シュール

53 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 22:50:49 ID:
( <●><●>)「ほら、馬鹿やってないで、おうちに入りなさい。もうお昼時でしょう」

( ><)「馬鹿っていわれたんです」

(*‘ω‘ *)「お前ら昨日からこんなことやってたのかっぽ」

(*><)「えへへ……」

( <●><●>)「褒めてませんよ。呆れてますよ。いいからおうちに入りなさい」

(;><)「あ、はいなんです」

(*‘ω‘ *)ノシ「じゃ、また後でっぽ!」

( <●><●>)ノシ

( <●><●>)ノ

( <●><●>)「……さて、と」

55 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:10:38 ID:
背伸びがてらに空を見上げてみると、呆れるほどの快晴
周りの雪は消えてしまっていた

きっと殆どが溶けてしまったのだろう

( <●><●>)(明日まで保たないでしょうねぇ……)

今日保てばいいか そう呟いて、また通りすがりの人間を驚かせてしまった

( <●><●>)(あぁ……動いてはいけないんでしたっけ)

一度 動く ということを覚えてしまってから、どうも動き回りたい衝動にかられてしまってしょうがなかった
人と同じように動き回りたいのだろう
あの子供と追いかけっこなどしたら、きっと楽しいのだろう


(*><)「おーにさんこちらっ!」

ずずずずずずずずずずずずずずずずずっ(ノ<●><●>)ノ

(;><)「っ!」

(;><)「うわあぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

―――――――――――――――――――
( <●><●>)。oO

( <―><―>)(さすがに、なしですかね……)

56 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:11:04 ID:
そんな妄想をしていると、走り回りたくもなるわけで
走り回れませんけど

悶々しているうちに、子供たちは昼食から帰ってきます
で、悲鳴が上がります



(;><)「ゆきだるまさん!!」

(*‘ω‘ *)「かまくら!!」





そういえば 体がだいぶ軽くなった気もします

57 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:11:33 ID:
――― ……ここは何処だ

――― ……私は、何だ




( <―><―>)


( <●><●>)


子供たちの声が聞こえる

58 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:11:58 ID:
「ビロード!氷もっと持ってくるっぽ!!」

「もっ…もうないんです!!」

「じゃあ塩持って来いっぽ!!冷やすんだっぽ!!」


あぁ、頑張っている声がする
あぁ、無理をしている声がする


「あぅっ」


あぁ、あの子が転んだんですね
怪我、してないといいんですが
視界が霞がかっていて、確認が出来ません
動けなくて、確認に行くことも出来ません
あぁ、大丈夫でしょうか
あぁ、心配です

…………

59 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:12:19 ID:
体が溶けていく感覚は決して苦痛ではなく、むしろ心地良いものだった
固まった結晶が溶けて、水になる
水が固まった結晶を解して、溶けるのを促している
流れ落ちた水は地面に吸い込まれ、春を待つ草木達の礎となる

ころり
何かが落ちる音と、子供たちの悲鳴
きっと あの子供が埋め込んだ、目の代わりの小石が落ちたのでしょう

残った片目の下が、じわりと溶ける
塩味のそれは、子供達が悪あがきでかけてくれた塩なのか はたまた、別の物か

知る必要はない
知る術はない
ただ このまま溶け消えてしまうわけにはいかない

子供達に、伝えなければならない
子供達に、お礼を言わなければならない

60 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:12:48 ID:
( 。<●>  )「……もう、大丈夫です」

(*‘ω‘ *)「んなわけないっぽ!」

(。><)「いやなんです!嫌なんです!!」

( 。<●>  )「日が差したら、私はお空へ還らなければならないのですよ」

(。><)「いやなんです!!」

( 。<●>  )「仕方がないのです。聞き分けてください」

(。><)゙「いやなんです…いやなんです……」

(*‘ω‘ *)「この私にしもやけが出来るまで重労働させといて、勝手に消えるのは許さないっぽ」

( 。<―>  )「申し訳ありません。ですが、私は、雪にしか宿ることは出来ません。
        私は、季節を超えることは出来ません」

61 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:13:09 ID:
( ><)「なら、雪が降ればまた会えるんですか?ちゃんと雪だるま作るんです」

( 。<●>  )「ごめんなさい。私は、溶けてしまえば もう 雪ではないのです。
        また体を作ってくれても、それは私ではありません」

(*‘ω‘ *)「一期一会ってやつっぽか?」

( 。<●>  )「そういうことでしょうかね……」

(*‘ω‘ *)「ぽぽぉ……」

( 。<●>  )「お別れです」

(。><)「うぅぅ……」

( 。<●>  )「泣くんじゃありません!この程度のお別れで泣いていては、大きくなった時に涙腺で恥かきますよ!!」

( ><)「雪だるまさんだって泣いてるんです!!」

( 。<●>  )「これは貴方達がかけた塩で水滴が固まってるんですよ!!」

62 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:13:29 ID:
(*‘ω‘ *)「落着けっぽ。動くと崩れ落ちる」

( 。<●>  )「……あぁ……このままどしゃりといっても不思議ではないですね」

( ><)「…………」

( 。<●>  )「……今日は、温かいですね」

(*‘ω‘ *)「明日から四月だっぽ」

( 。<●>  )「なるほど……どうりで」

(*‘ω‘ *)「?」

( 。<●>  )「貴方達の後ろを、よぉく見てください。
        お隣の庭の一番奥の樹……咲いていますよ」


( ><)「?」(*‘ω‘ *) クルッ

「桜の、花が」

63 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:13:54 ID:
(*‘ω‘ *)「うぉあ……こりゃ、温かいわけだっぽ」

( ><)「……もう、春なんです」

( ><)「雪だるまさんは、桜好きなんです…………」 クル




no title



( ><)「…………え?」

64 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:14:35 ID:
( ><)「…………あれ?」

( ><)「ゆきだるま……さん?」

( ><)「エイプリルフールは明日なんです……悪い冗談はやめてほしいんです……」

::(∩ω *)::

( ><)「ゆきだるまさん? ゆきだるまさん?ゆきだるまさん?ゆきだるまさん!?」

::(∩ω *)::「……ビロード…」

( ∩ω *)つ●    (>< )

::( ∩ω *)つ●::    :(><。):: 「……片目…?」

::(∩ω∩ )::「とっとけっぽ……
       次、雪降った時……またそれを目にするんだっぽ……」

65 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:15:15 ID:
●⊂(。><)っ● 「さっき、落ちたやつ……」

(。><)。●●。

::(。∩∩):: 「あ…あ……ううぅ……」

::(。∩∩)::(∩ω∩。):: 「うわぁあああぁぁぁん…………」

ζ(゚―゚*ζ「おやつよー……って!」

ζ(゚―゚*;ζ「ど、どうしたのよ!?二人して!!」

::(。∩∩)::(∩ω∩。)::「ゆぎだるまざん……ゆぎだどぅま゛ざんがぁ……」

ζ(゚―゚*;ζ「え?ゆきだる……あぁあぁ、崩れちゃったのね。
       仕方ないわ 今日は春日和だから」

::(。∩∩)::(∩ω∩。)::「うわああぁぁぁぁぁん……」

ζ(゚―゚*;ζ「えっ?えっ?そんなに?また作ればいいじゃない」

::(。∩∩)::(∩ω∩。)::「うわああぁぁぁぁぁん……」

ζ(゚―゚*;ζ「ちょ、なんなのよ もう……」

66 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:15:44 ID:
春になり 雪はとける
春の息吹が 芽吹きだす
さよならの季節と 新しい始まり
私は土へ 草へ
雨へ 海へ
巡り巡って

また 逢いましょう


( <●><●>)は雪だるまさんなようです        終

67 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:17:55 ID:P1ld4fs2O
乙!読んでて引き込まれた

68 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:25:38 ID:
おおぅ
読んでくれてる人いたのか
ありがとうございます

確認
いくつか、台詞が詰まってて揃ってない
揃ってるところもあるのに 違いは一体…

VIPに投稿する予定で、規制にあいました
なのでレスの分け方が避難所向きではないかもです

急ピッチで仕上げるもんじゃないです
ご粗末さまでした

69 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:34:11 ID:tlMDuJ4A0

俺も読んでたよ
雪だるまと子供達との友情あったぶん、最後は悲しかった
けど、こういう経験を通して成長していくんだろうな。って思えてぐっときた

いいものを見せてもらいました
乙です

71 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/05(火) 23:42:08 ID:puRvrTzgO

幻想的でいいね
切ないけど後味は悪くなかった

73 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/06(水) 02:45:48 ID:IXO9YRW6O


よかったぜ

74 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/06(水) 09:03:12 ID:kZacTIkc0

雰囲気が良かった

75 : 名無しにかわりましてVIPがお送りします : 2011/04/06(水) 16:26:00 ID:HTG3K5kwO
乙!!

凄く面白かった、こういうの大好きです