1 : 1/3 : 2006/02/24(金) 04:22:06
おかんが癌で亡くなって6年になる。
癌を見つけたときにはもう余命一年の宣告。親父と相談の上、
おかんには告知しなかった。一年、騙し続けた。

私はその時二番目の子供を妊娠中。大きい腹でおかんの病室に通った。
ある日おかんが私の腹をなでて、まだ見ぬ孫の名をつけて呼んだ。
おかんの死後、丁度一ヶ月の日に娘は生まれた。
母が呼んでくれた名前を娘につけた。
すごく愛しそうに呼んでくれた名前だから、迷わなかった。

母は夢に出てくることも姿を見せることもなかった。妹のところにも。
私は、母を騙し続けたことに、とても罪悪感を感じていた。
例えモルヒネが処方されて「お姉ちゃん(母は私をこう呼んでた)、
この薬は何?」と 聞かれても、ただの鎮痛剤じゃね?とかいって誤魔化してた。
一日ずつ命が減っていく母に、それを悟られまいと必死で嘘ついてた。

母は私を恨んでる。
何の心の準備も出来ず、亡くなったのは私のせいだ。
親父は母の闘病中から娘より若い愛人を作って母のことは
全部私に任せていたので、余計責任を感じてた。
私の所に出てこなくても当たり前だよな、そう思ってた。
no title


2 : /3 : 2006/02/24(金) 04:23:15
先週、娘とお風呂に入っていると、娘がこう言った。
「ママ、私の名前はママのおばあちゃんがつけたんだよね」
ああ、話したことあったかな、と思って、そうだよ、と答えた。

「私、この名前大好きって言ったら、おばあちゃんが嬉しいって言ってたよ」
驚いた。
いつおばあちゃんに会ったの?と、聞くと、
「いっつもいるよ。ミルちゃん、って白いネコさんとお庭とかに」
ミルちゃんは、母の死後すぐに死んだ、母の可愛がってた飼い猫。
写真も家には残ってないし、娘が知る筈もない。

思わず娘に聞いてしまった。
おばあちゃん、ママのこと怒ってるでしょ。って。
娘は「明日聞いてあげるね」って答えた。

娘には見えるけど、私に見えないのが何よりの証拠。
娘のとこには出て、私のとこには夢にすら出ない。
嬉しいけど、悲しかった。

3 : /3 : 2006/02/24(金) 04:25:02
でもその夜、夢を見た。おかんだった。
実家の両親の部屋で、生前座ってた椅子に座ってた。
膝にはミルちゃん。夢の中で、私は母に謝った。
ごめん。騙しててごめん。号泣した。

「……ごめんねぇ、お姉ちゃんつらかったよねぇ」
「お母さん怒ったりしてないよ?毎日病室で色々笑わせてくれて、
 楽しかったよ」

母が手を握ってくれた。
暖かかった。
一層泣けてきて、自分の泣き声で目が覚めた。
起きても母の手の感触が、体温が手に残ってた。

朝起きてきた娘が言った。
「おばあちゃん、ママとお話したんでしょ? おばあちゃんが言ってたよ。
 良かったねママ」

今も娘は母が見えるらしいけど、私には見えないまま。
でもそれでもいい。
母が傍にいることが分かったから。
もうすぐ母の命日が来る。
お墓と仏壇掃除して、母が大好きだった作家の新刊でも供えてやろうと思う。

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