1 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 09:13:32.60 ID:
短編で終わらせます。
no title


2 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 09:14:36.69 ID:
――思えば、店頭で並んでいた時が一番輝けていたのかも知れない。


キラキラした汚れの無い私の身体を、人間達が舐め回すように見ては隣の子と比べられた。


買われた時は店の人の笑顔が心地よかった。


けど、それも……十年前の記憶だ。


――――

――




子供「アイスーアイスーたーべよ」ガチャ


子供「ホワイトモンブラーン!」バタンッ!!


冷蔵庫「痛ッ!! もっとそっと閉めてよ……」


冷蔵庫「……嬉しそうだからいいか」


冷蔵庫「アイスさんさようなら」

卵「また人間に食べられたね。僕も明日には目玉焼きかな」


冷蔵庫「うん。でも仕方ないよ……そういう運命なんだから」


卵「人間に食べられるだけの運命、か……僕も冷蔵庫さんみたいな物が良かったな」

3 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 09:17:24.23 ID:
――私の立場が羨ましいってなによ。


十年も立ったまま、好き勝手に物を入れられて身体は乱暴に扱われる。


他の、食材と呼ばれる者たちの終の言葉が、ずっと記憶へ上書きされていく。


いっそ、このコードが抜かれて廃棄されたら楽になれるのに……。


冷蔵庫「こんな生き方のなにが羨ましいのよ……」


母「いやー今日は大特価市だからまとめ買いしすぎちゃったわ 入るかしらね」


冷蔵庫「きた……今日は火曜日か。また一杯入れられちゃう」


母「魚とお肉はチルド、あらまだ在ったわね」ギュウギュウ


冷蔵庫「そこ狭いからダメ……もっと優しく……」


母「冷凍食品と……ビールに」ドスッ


冷蔵庫「あうぅ……ひぐっ!」


母「あとは上に適当に詰めときましょ」ギュウギュウ


冷蔵庫「うぶぅ! そんな冷えなくなるぅぅ」


母「あら、氷用の水が全然入ってない。もう! 使ったなら入れといてって言ってるのに」ナミナミ


冷蔵庫「ダメ! そんなのタプタプになる! 冷たい氷が一杯出ちゃうよぉぉ」


母「おしまいっと。さーってテレビを見ましょう。愛人とどうなるのかしら うふふ」


冷蔵庫「ハァハァ……またこんなに入れられた」グスッ


※詰め込みすぎはダメですよ

6 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします : 2013/03/27(水) 12:01:23.70 ID:iO8l8kRm0
なんか冷蔵庫がつかいにくくなる

8 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします : 2013/03/27(水) 19:06:52.78 ID:vFIIoH390
この冷蔵庫に性別はあるのかしら?

9 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 20:42:05.95 ID:
>>8
女性的です。

10 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 20:44:10.47 ID:
~~夕方~~


次男「ただいま」


母親「おかえり。三男と一緒にご飯食べちゃって」


次男「うん」ガチャ


冷蔵庫「今日も表情が暗い。最近ずっとだなこの子」


次男「はぁ」パタン


冷蔵庫「またため息、か」


~~夜~~


父「帰ったぞー」


冷蔵庫「ひっ!!」


母親「おかえりーお疲れさま ビールあるわよ」


父「おう、サンキュー」クパッ


父「ビールはどこだ?」


冷蔵庫「いやああ! 毎日観音開きしたまま見ないで! ビールの位置同じなの!!」


父「あったあった」 パタン


冷蔵庫「初めての日からずっとこの扱い方、慣れない……」

11 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 20:45:54.93 ID:
~~深夜~~


長女「ただいまっても皆寝てるか」


長女「今日は……」ガチャ


長女「これね」パタン


冷蔵庫「なんで長女は毎日野菜持って部屋に行くのかしら」


――――


長女「うふ」テカテカ ガチャ


冷蔵庫「おふ! 化粧マジックパネェ 慣れねぇ すっぴんこえぇ」


――――

――




冷蔵庫「気配がする、奴がいるわね」


ポット「Gの野郎か……」


冷蔵庫「ポットさんこんばんわ 。奴が身体を這う感触は本当におぞましい……退治したいけど出来ない……」


ポット「冷蔵庫の嬢ちゃん……そいつは世界中の家電が思ってるよ……」


G「じょ……」


G(好きで好きで嫌われる為に生まれてきてない……ちくしょう!)


G「あっ、残飯ペロペロ」

12 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 20:47:30.11 ID:
~~翌日~~


冷蔵庫「今日は次男以外いないのか」


次男「……」ガチャ パタン


次男「……」グビグビ


冷蔵庫「珍しい、コーラなんて普段飲まないのに」


次男「……」


冷蔵庫「包丁? 包丁なんて持ってどこに……」


ポット「おい、あいつヤバいんじゃないか?」


電子レンジ「まさか……自殺?」

冷蔵庫「そんな! はっ! コンセントから次男の部屋の家電に!!」


――――


次男部屋パソコン「緊急通信? 誰だ」


冷蔵庫「一階の冷蔵庫です! 次男は次男は大丈夫ですか!?」


パソコン「大丈夫とは言えないな……俺の身体に遺書を打ってやがる」


冷蔵庫「そんな! どうしよう助けないと……」

13 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 20:49:24.27 ID:
ポット「落ち着け冷蔵庫。コンセントから事情は把握した」


冷蔵庫「落ち着いてる場合じゃないよ! 次男は唯一、詰め込みすぎる母親のアフターフォローをしてくれた……賞味期限の確認もしてくれた……三男が溢した牛乳も嫌な顔ひとつしないで拭いて……」


電子レンジ「冷蔵庫ちゃん……」

冷蔵庫「それに!! 入れたら不味くなる芋類をちゃんと取り除いてくれた! 私のことわかってくれてたんだよ!」


ポット「冷蔵庫……」


冷蔵庫「あんな良い子が自殺なんかしていいはずがない!!」


ポット「ああ、そうだな」


電子レンジ「私もそう思う」


エアコン「良い話だ。湿気出しちまいそうだぜ」グスッ


パソコン「おい! ヤバイぞ書き終わっちまう!!」


冷蔵庫「そんな!!」

14 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 20:50:54.95 ID:
??「話はコンセントを伝って聞かせてもらったよ」


??「ええ。私たちの力、冷蔵庫にあげる」


冷蔵庫「あなた達は……」


ポット「おお! テレビに洗濯機!!」


電子レンジ「さ、三種の神器ですって……」


テレビ「さぁ!! 今こそ、国境無き食材を全て包み込み!!」


洗濯機「全てを生かすその偉大な力を解放するのです!!」


冷蔵庫「力が! 力が溢れてくる!! これなら行ける!!」ガターーン!


ポット「冷蔵庫が立った!」


電子レンジ「行きなさい冷蔵庫ちゃん! 貴女自身の願いの為に!!」


冷蔵庫「はい!!」ガタッ ガタガタ ブチブチ ガタガタ

15 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 20:51:57.64 ID:
――――


冷蔵庫「待ってなさい次男! 貴女は死なせない」


ガタガタ ゴンゴン ゴンッ!


冷蔵庫「痛い! 階段の幅で身体が削られる!!」


卵「負けるな! 次男を助けたいんだろ!!」


冷蔵庫「卵さん……うん!!」


――――


次男「なにか音がする? まさか帰って来たのかな」アセアセ


パソコン「いいぞ、そのままいるんだ。お前は死んだらいけない。アダルトサイトすら見ない素直なお前がな」


ドゴーーン


冷蔵庫「次男死んじゃダメ!!」


次男「」


パソコン「ふっ、間に合ったな」

16 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 20:53:16.60 ID:
次男「なにこれ……えっ……えっ」


次男(自殺しようとしたけどまだ何もしてない……まさか死神?)


次男(鎌も刀も持ってないし、なにより冷蔵庫ってなんだよ……アン〇ンマンのマグネット付いてるし、おもっきり家の冷蔵庫だし)


冷蔵庫「死んじゃダメ!!」


次男「し、死んじゃ……うわああああああああ!!」ガシャーン!


パソコン「なんてこった!! 錯乱して窓に突っ込みやがった!!」


冷蔵庫「次男!? あっ、起きて走っていく。意外にタフね」


刺身「ばっかもーん!! はやく後を追わんか!!」


冷蔵庫「でも、二階から飛び降りたら冷凍庫が……」


冷凍食品「かまわねぇ、やりな嬢ちゃん」


アイス「助けたいんでしょ!?」


冷蔵庫「ごめん皆……私は行く!!」フラーーイ!!


冷蔵庫「着地! いてっ! 思ったより大丈夫だ」

17 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 20:54:17.13 ID:
~~街道~~


次男「ハァハァ……思わず逃げたけど…… 痛いっ! ガラスが」


冷蔵庫「見つけた!! 待って!!」


次男「なんでここまで!!」


――――


三男「ねぇねぇ、母さん母さん。あれうちの冷蔵庫?」


母親「」


父「」


<ミロヨ! レイゾウコガハシッテル


<ナンカノサツエイジャネ?


冷蔵庫「待ってよぉぉ!!」

18 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 20:55:41.17 ID:
~~ビル屋上~~


次男「ここまでくれば……」


冷蔵庫「なんでこんなに逃げるの!?」


卵「もしかして……そうか! 謎は全て解けた!!」


卵「パーシャルだ! パーシャル最大にすれば声が次男に届くはず!!」


冷蔵庫「ほ、本当? パーシャル最大!!」ウィーン


冷蔵庫「あっ、あー、聞こえますか? 貴方はそこにいますか?」


次男「冷蔵庫が喋った……もう何も驚かないけどね」


冷蔵庫「良かった! 会話成功!」

19 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 20:57:05.69 ID:
冷蔵庫「パソコンから聞いたよ! いじめが原因なの?」


次男「パソコンも喋るの……? 家電っていったいなんなの」


冷蔵庫「私には次男の気持ちはわからないけど……死んでほしくない」


次男「……家電界にはいじめはないんだね。羨ましいな」


冷蔵庫「ううん。次から次に新しいものが作られて、コンセント越しには古い家電は罵られるよ」


冷蔵庫「スリープ機能もないのかとか、消費電力多すぎとか……」


次男「なんかごめん……いつもうちの食材を守ってくれてたのに……そんなことも知らなくて」


冷蔵庫「いいよ。もう死んだりしない?」


次男「うん。僕のことちゃんと見てくれてる存在がいるのわかったから」


冷蔵庫「良かった……」

20 : ◆F6lbtBSr3A : 2013/03/27(水) 20:59:03.55 ID:
冷蔵庫「次男……本当に良かった」


次男「走ったら喉渇いた、飲み物もらうね」ガチャ


次男「あんなに走ったのに、ちゃんと冷えてる」


冷蔵庫「冷えてるってのは、悪いことじゃないんだよ?」


次男「うん。少し思考がホット過ぎたから凄く美味しく感じる」


冷蔵庫「良かった。帰ろっか」


次男「うん、夕飯の材料がないと母さん大変だしね」


冷蔵庫「うん!」


――――

――




喋れるようになった私を、最初こそ戸惑っていた皆だけど、今は前よりもっと大切にしてくれる。


前から聞きたかった長女の野菜は、母親と父との三人の話し合いになったけどなんだったのかな?


私は、冷蔵庫というカタチに誇りを持って生きてます。


――――


三男「アイスちょうだーい」ガチャ


冷蔵庫「はーい」



終わり

22 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします : 2013/03/29(金) 03:01:29.59 ID:PZFQCep8o
くっ
イイ話じゃねえか

21 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします : 2013/03/27(水) 21:02:02.44 ID:VmwLvfpoo
乙でした

うちの冷蔵庫もしゃべるのかな…