1 : 名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします : 2016/02/15(月) 21:58:42.96 ID:
男(……しまったな、せっかくの休日なのに、いつものように起きてしまったぞ)

男(ふむ、どうしようか)

男(そうだ、たまには散歩でもしようかな)

男(服は……まぁ、適当で良いか)ゴソゴソ

男(……おっと、出かける前に、何か口に入れたいぞ)グー

男(トーストにレタスとハムでも乗せるか。コーヒーも淹れて)

男「ん、うまいうまい」ザクッ

男「よし、準備完了、戸締り良し……」

男(さて、行くか)

no title

2 : 名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします : 2016/02/15(月) 22:18:10.58 ID:
男「今日は良い天気だなぁ」テクテク

男(とは言っても、まだ少し寒いな。マフラーを持ってきて正解だった)

男(へえ、こんな所に椿の花が……盲点だったな)

男(おお、こんな道があったのか)

男(こっちには畑が……)チラ

男(こうして道の行くままに歩いていると、普段では気付かないものがよく見える)

男「――うん、悪くない」

男(寒いが、日差しは暖かい。もう春が近づいているんだなぁ)

男(こうして空を見ていると、子供の頃を思い出す)

男(あの青空に揺蕩う雲になりたいと、よく思っていたなぁ)テクテク

男(あんな風に自由に生きたかった……憧れていたんだ)

男(ぼんやり、のんびり……風に行く先を任せ、ふわふわと)

男(いつからだろうな、こんなに窮屈な世界になったのは)

グー……

男「……あはは」ポリポリ

男(やはり僕には、感傷に浸るのは向いてないようだ)

3 : 名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします : 2016/02/15(月) 22:36:52.42 ID:
男(……)クンクン

男(良い匂いがするな、お、商店街に着いたのか)

男(いいね、何か今の気分に合うものは……)

男(おっ、これだ)

男「出汁巻きとおにぎり、一つ下さい」

「はいよ、熱いお茶サービスしとくね」

男「どうも」ニコ

男(これはありがたい、さて、どこで食べよう……)

男(……まあ、歩いてれば適当な場所に着くだろ)テクテク

男(あれ、狭い道に入っちゃったぞ……お、良い公園発見。とりあえずここで休むか)

男(ふむ、あるのは小さなブランコ、滑り台、木のベンチのみ……良いじゃないか)

男(さて、とりあえず貰ったお茶を……)ゴクッ

男「……はう……温まるなぁ」

男(ん、この出汁巻きうまいな。口の中で出汁の香りがふわっと広がる。葱を散らしてくれてるのも良いね)モグ

男(うむ、おにぎりも美味い。昆布がほっとする味だ)ムシャ

男(そして再びお茶を一口)ゴクッ

男「あ~……うまいなぁ」

チュンチュン!

男(お、あの鳥は……なんていうんだろうな)

男(ま、なんでもいいか)

男(ああ、落ち着くなぁ。時間も気にせず、人も気にせず……)

男(……ふぅ、うまかった。さて、次はあっちの方へ行くか)テクテク

4 : 名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします : 2016/02/16(火) 22:28:51.01 ID:
男(……お、こんな所に和菓子屋が)ガラッ

男「えーと、いちご大福と、最中下さい」

「はいはい、お兄さんはどちらまで?」

男「行くあても無く散歩してる所です」ハハ

男「何か良さそうな所、ありますかね?」

「うーん……少し遠いけど、一キロくらい歩いた所に、温泉があるよ」

男「温泉」

「ちょうどあの道を左にずーっとね……はい、いちご大福と最中ね」

男「ありがとうございます、行ってみます」

男(へえ、地図で調べてみるか……あった、これだな)ピッ

男(ん、久しぶりに和菓子なんて食べたけど、うまいなぁ)モグ

男(いちご大福の白あん、初めて食べた。すごく合うじゃないか!)

男(最中は甘さが抑え目でさっぱりしてる。うまい)パリッ

男(おっと、もう食べ終わった……もっと買えばよかったな)テクテク

男(一キロね……ああ、確かに緑が多くなってきたな)

男「位置情報はっと……おお、なかなかの距離を歩いたな」

男(通りで身体が熱い訳だ。温泉に入ってのんびりしよう)

男(さて、少しペースを上げるか)

5 : 名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします : 2016/02/16(火) 22:49:25.04 ID:
男「……ここだな、やっと着いた」

男(なるほど、こんな所に小さな温泉が……良い所を見つけた)

男「えーと、大人一枚で、それとタオル」

「はい、ごゆっくり」

男(……)キョロキョロ

男(見事に誰も居ないな……平日だし、そりゃそうか)

男(では)ガララッ

男「おお……」

男(こじんまりした所だな。でも、落ち着く)バシャッ

男(さて、と)ザブッ

男「おおおおー……ふうぅ……」

男(あー、こりゃたまらん。風で冷えた身体が癒される……)

男「あ、説明が……なになに……ほうほう、美人の湯ね。僕には関係ないな」

男(うーん、極楽だなぁ……)

男(さて、露天風呂に行きますか!)ガラッ

ヒュウゥウゥッ

男「あああああ寒い! さっむ!!」

男(い、急いで湯に浸からねば)ザブッ

男「……おや?」

男(へえ、さっきよりも温度が低い。ぬるま湯なのか!)

男(ああ……これは良い。何時間でもいられそうだ……)ボー

男「今日も空が綺麗だなぁ……」

男(忙しない日々が続くが、こうして空を綺麗だと思える)

男(それだけでも、僕の心は十分なのではないか)

男「……」

男(まあ、何を良いと思うかは、人それぞれだ)

男(僕の人生には、少しの季節の彩……それさえ確かであれば良い)

男「……なんつってね」

男(湯に移った自分の顔を見て、そんな事を考えている自分が少し恥ずかしくなり)

男(僕は一人、目を逸らした)

6 : 名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします : 2016/02/16(火) 23:04:45.29 ID:
男「ふーっ、良い湯だった!」ゴクゴク

男(ああ、水が冷たいっ! 喉が一気に潤うなぁ)

男(風呂上りに畳で寝転ぶのは、どうしてこんなに気持ちいいんだろう)

男(髪の毛も乾かしてさっぱりした。最高だ……)

男「おお、もう二時半なのか……歩きだし、戻ろうかな」

男(さて、行くか!)

ヒュウゥウゥ!

男(おお、冷たい風が火照った体に心地いい)

男(この道、生えているのは全部桜か。春になると、桜色の道になるんだろうなぁ)

男(桜は好きだ)

男(あんなに綺麗なのに、ほんの一週間ぽっちで花は散ってしまう)

男(そんな儚さも魅力的だ。まさしく諸行無常のシンボルのようで)

男(ああ、早く桜を見たいなぁ)

男(だが、桜が全て散ってしまい、葉桜になった桜も大好きだ)

男(青々とした葉桜を見ると、生命の力強さを感じ――)グウウゥウゥ

男「……」


男「……とりあえず、戻ったらなんか食べるか」

7 : 名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします : 2016/02/16(火) 23:25:57.66 ID:
男「ふう……やっと戻った。たい焼きうめぇ」テクテク

男(今日一日で、どれだけ歩いたんだろうなぁ)

男「……あ、河川敷。帰る前に、たまには寄ってみるか」ザッ

男(犬の散歩をしている人が多いなぁ)テクテク

男(ここも桜の木が多いな。春になると、みんな花見に来るんだよなぁ)

男(……あ、水切りしてる子供たちがいる。寒いのによくやるなぁ)

男(懐かしいなぁ。僕は七回が最高だったっけ)

男(子供の頃は、よくここで遊んだなぁ……)

男(あの頃は、何も不安なんて無かったなぁ。ただひたすら遊んで、遊んで……)テクテク

男(日が暮れてきたら帰って、お腹いっぱいご飯を食べて、テレビを見て、家族と話して、寝て……)

男(ただそれが、ひたすらに楽しかった……)

男(……羨ましいよ、君たちが)

男「……ああ、もう夕暮れか。そろそろ帰ろうかな」ザッ

男(……どうも季節の変わり目は、センチメンタルになっていけないな)

男(まあ、僕がどう思って生きていようと、季節は移り、地球は廻る)

男(そんな世界の中、唯一分かる事は――)


男「あ……蕾が膨らんでる」


男(春は、案外近くにやって来ているらしい)

8 : 名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします : 2016/02/16(火) 23:28:08.17 ID:
短いですが、これで終わりです。

そろそろ和菓子の季節ですね。桜餅が楽しみ……

9 : 名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします : 2016/02/24(水) 16:25:36.84 ID:CbYIMifC0
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