315:2014/05/20(火) 00:52:51.17 ID:
魔王「死に逝くものこそ美しい」女勇者「その通りだ」


……暗くも快楽的な感情が腹の底より湧きあがる。

長く味わうことのなかったこの感覚、上位の神が創造した勇者を滅した時でさえこのような感覚はなかった。
あらゆるものにとって、我にとってですら得難き存在、それの崩壊する瞬間が直ぐそばまで来ている。


愉快である。


そうとも、これが、この有り様こそが我が我たる所以である。



魔王「…………目が覚めた」


勇者「そしてこれから眠ることになる」



これからこれを滅ぼすのだ、絶望を与えるのだ。

如何様にして殺してやろうか。

316:2014/05/20(火) 00:54:35.21 ID:


ゆっくり殺そう、会話をしながら、弄りながら、そうとも我は魔王である。これが我である。


犯しながら、おおよそ雌にとって屈辱の極みを味わわせて殺そうか。

生きたまま磔にして世界が滅びゆく様を見せ付けながら殺そうか。


勇者だ、待ち焦がれた、流石は生きとし生ける者全ての希望。魔王たる我にして希望であるか。



魔王「滅ぼすのが楽しみだ」



我はこのように創られた。

我こそ魔王である。

滅びを望む者である。

317:2014/05/20(火) 00:55:35.21 ID:

勇者「……ならさっさと攻撃すれば良かった」

魔王「貴様は自ら攻撃せぬと思っていたのだがな?」

勇者「脅威が目の前にいるのに攻撃を待っているのは間抜けのやること」

魔王「違いない」

勇者「貴方は……」

魔王「そして貴様は未だに我の射程圏内にいることも違いない」

勇者「ッ!?」


小規模の太陽とも形容できる火球を複数個同時に放つ。
人の唱える《核熱》の極大呪文、それを遥かに超える熱量である、避けねば回復呪文など間に合わず即座に蒸発する。
318:2014/05/20(火) 00:57:14.97 ID:


勇者「フンッ!」



発現した魔法の着弾音とは違う甲高い破裂音が鳴り響く。

遠目にて初めて知覚できる勇者の動き。やはり拳での一撃。

技術は無い。振り上げた拳を、そのままに振りぬく、単純な暴力である。



しかし、どういうわけだ。

その一撃で火球はすべて消し飛び



勇者「……ふう」



勇者は全くの無傷である。

人の、否、この星の物質の道理を超えたものである。
319:2014/05/20(火) 00:59:17.48 ID:



魔王「やるな、ではこれではど……」



次いで《暴風》にて部屋ごと吹き飛ばさんとするとした時、



魔王「…………な」

勇者「……遅い」



勇者は目の前で拳を振りかぶっていた。



魔王「チッ!」



僅かに首を傾けそれを回避、出来ない、何故、ニ連撃?この一瞬で?

打擲音と言うには苛烈すぎる強大な音と共に、再び我は壁に磔にされる。



不可解である、いかな勇者とて単純な体力でこうまで動けるものではない。

ましてや我の知るいかなる存在の身体能力であっても不可能だ。

そして何故、物理力のみで我に攻撃を加えられる。
320:2014/05/20(火) 01:00:28.18 ID:


勇者「これで……っ!」

魔王「む……」



弾雨の如く拳撃と蹴撃が降り注ぐ、一発一発が殺意の塊であるかのような錯覚を覚え、直ちに転移で回避する。



勇者「…………」



転移した我に気付き、ゆっくりと振り返る女の眼は常ならぬもの、あの炎は僅かにその双眸で揺らめいている、だが今とあってはそれがむしろ他者を平然と殺戮する冷淡さを放っていた。



魔王「ここまでやるとは思っていなかった」



勇者の背後にある壁の打撃痕はおおよそ打撃でついたものとは言い難いもの。

殴られた場所が丸ごと抉り取られたかのような異様さ、あれは



魔王「浄化の雷をその拳に纏わせるか」


321:2014/05/20(火) 01:03:02.36 ID:



その問いに呼応するように勇者の拳が放電する。



浄化の雷。神の怒りの形容。

その本質は自然現象としての放電や雷撃呪文のそれとはかけ離れている。

浄化とはよく言ったもの、問答無用で相対するものを『消滅させる』、勇者の特権にして、我に傷を負わせる数少ない手段。

担い手によってその発現結果は異なる。炎の柱、雷の槍、絶氷の剣。

この女の場合は『神の鉄槌』というわけだ。



魔王「恩恵の力で一息に殺そうとはしないのか?」

勇者「巡る生命でない貴方に通用するとは思えない」

魔王「で、あろうな。しかし解せぬ、その動き自体はこの世界の理より逸脱している、何故であるか?」

勇者「そう言われてベラベラと種明かしをする間抜けだとでも思っているの?」

魔王「否、少し面白い、それだけだ」
322:2014/05/20(火) 01:04:09.09 ID:


『生命』の恩恵によって何らかの身体強化を行っているのは間違いない。呪文による強化の範囲を明らかに逸脱している。

無手に見せかけ、この女は利用できるものは全て利用し、まさに全霊を以って我を殺さんとしている。


しかし、何にしても、こうすれば良いだけのこと。



魔王「ふむ……」



雷召喚。



勇者「ウアッ!?」



掌より一瞬の雷光、そしてそれで充分すぎる。



魔王「まあ、これを躱すことはかなうまい」



いくら速かろうとも電光より速く動ける生物などこの世に、ましてや神の世界にも存在しない。

神器を身に纏わず、それを無効化する術を持たないのであればそうするまでである。
323:2014/05/20(火) 01:06:27.77 ID:

勇者「グウ……ッ」

魔王「終わりか?つまらない」

勇者「私は……まだ、やれる!」

魔王「そうであろうな?そうでなくては」



雷によって体組織の多くが蒸発したのであろう、蒸気を上げて蠢く様は死に体同然である、が。



勇者「今、止めを刺さなかった事を後悔しなさい……!」



その目に宿る炎が再び燃え盛る。

成程、予想はしていたが。



魔王「やはり傷を塞ぐか、貴様の得た恩恵を考えれば誰にでも予想の付くことであるが」



聞き慣れない異音をあげながら、勇者の傷が瞬く間に塞がる。

長時間の詠唱のもとに行使される高位の法術より遥かに短時間の内にである。
324:2014/05/20(火) 01:10:47.56 ID:



魔王「しかれど徒労よな?」



再度の雷召喚。

しかし。



勇者「もう効かないッ!」

魔王「ッ!?」



直撃する雷撃、だが全く通じていない。



突進の勢いのまま放たれた蹴りが振りぬかれのを視界の端に捉え、同時、首をもがれるような衝撃が襲う。

耳慣れぬ炸裂音が響いたのはその後の事である。


放たれた雷は確かに直撃した、であれば先程と結末は同じであるはず。



魔王「なんと……いかなる術式であるか」



我に地を這わせたのはこの勇者が初めてである、成程、これが屈辱と言うものか。
325:2014/05/20(火) 01:12:52.20 ID:


勇者「……余裕があるようだ」

魔王「初めから解り切ったことであろう、しかし少し面白い」



再び目が覚めた。

この勇者を殺す法などいくらでもある。

しかし、この屈辱、この湧き上がる衝動、ただ殺したのであっては収まりがつかぬ。



魔王「なれば我も貴様の流儀に付き合うとしよう」



絶対的な防御である衣を投げ捨て、拳を構える。

そうすることでこの屈辱は晴れる、我が身は充足する、相手の本領にて正面から駆逐する。

それが我の在り方なのだ。



勇者「その慢心が命取りになる」

魔王「その根拠の無い自信が命取りになる」



次の瞬間。



勇者の拳も、こちらの拳も、互いの顔面に突き刺さっていた。


326:2014/05/20(火) 01:16:08.72 ID:



*************




おかしい、徒手での打撃により勇者やその仲間を骸に変えてやったことなどいくらでもある。

それこそ『拳聖』などと人より賞賛され、拳の一突き、蹴りの一振りで数多の魔を滅ぼしてきた徒手格闘の使い手をだ。

どれも我の前にとって造作も無い者達だった。自分の本領とする領域で散っていった。



勇者「まだ、まだ……どうしたの……?私は、生きてる」



顔面の半分を吹き飛ばされて尚、立ち上がる。

この勇者に技術は無い。あやつらより経験も明らかに不足している。



勇者「……ふう、なんと言えばいいのか、これは」



勇者の傷は瞬く間に塞がり、その闘志もまるで尽きる気配が無い。

しぶとい、それだけのはずである。

だというのに。


327:2014/05/20(火) 01:17:38.02 ID:



勇者「……徒労?」



傷を増やしているのは、我のみである。

絶対防御を外し、生身のまま神の拳を受け続けたこの身は崩壊しつつある。

しかし引き返すことはならぬ、あってはならない。



魔王「何故か、何をした勇者?」

勇者「……生命を知って、歩み寄ることを覚えた貴方なら、何故私に打ち負けるかなんて簡単にわかるはず」

魔王「何だと……?」

勇者「そんなに知りたいなら教えてあげるわ、どうして貴方が私に勝てないか、どうせどうにも出来ないし」

魔王「…………」
328:2014/05/20(火) 01:19:37.31 ID:

勇者「生命ある者はみんな、敗け続けるように出来ていない。みんな戦い方を覚える」

魔王「人間のような虫けらがどれほど強くなろうと同じことだ」

勇者「そうね」

魔王「ならば」



勇者「だから私のこの体は既に人ではない」



魔王「な……」



勇者「生命ある者はそうして生きてきた、強化ではない、これを 進化 というの」


329:2014/05/20(火) 01:25:17.55 ID:

魔王「妄言も大概にしろ女……進化とは世代を重ねて行われるものだ」

勇者「それこそがこの恩恵によるもの、私の足元では幾千、幾万の生と死が繰り返されている……貴方は知らないだろうけど、私の中でも」

魔王「だとしてもやはり馬鹿げたことだ、生物である以上、限度がある」


勇者「そうね、でもこの進化は、それ以上に馬鹿げた貴方達、魔族と、勇者という存在があっての事」


魔王「そんなことがあって……」



勇者「この身は人間の形をしているだけ、でも私はもう人間じゃない、魔族でも無い、魔族の力を無効化して殺す、その一点に進化した体を持ったナニカ」



魔王「化け物め……」



勇者「この力を軽視して諦めた神様も、貴方も、みんな馬鹿だ、馬鹿ばっかりだ」


330:2014/05/20(火) 01:27:01.91 ID:



勇者「この星で『私達』程、殺し合いをしてきた存在はいないというのに」



魔王「調子に乗るな下等生物が……」

勇者「……やはり今日の貴方は少し変、戦闘が始まったころから違和感を感じていた」

魔王「何……?」

勇者「私の知る貴方はそんなに小物ではない」

魔王「愚弄するか人間」

勇者「……『役割』がそうさせているの?」

魔王「『何をわけのわからぬことを』」

勇者「…………」
331:2014/05/20(火) 01:27:49.88 ID:



魔王「戯れはここまでだ……」



勇者「そうして頂戴、そして……」





魔王「では、死ぬがいい……ッ!!」



勇者「あの人を返せ……ッ!!」




335:2014/05/20(火) 09:55:01.05 ID:
ヒロインは魔王様だったか
336:2014/05/20(火) 10:01:56.26 ID:
二人には幸せになってほしい……
337:2014/05/20(火) 11:24:18.39 ID:
完結が楽しみなのに終わって欲しく無い……
343:2014/05/21(水) 23:21:11.55 ID:

生命の恩恵を受ける勇者よ。よくぞここまで我を追い詰めた。

しかし、それすら我にとって余興に過ぎぬ。

己の無力を骨の髄まで味わうが良い。
その眼に宿る忌々しい炎を今ぞ吹き消してやろう。

絶望の末、貴様はここで骸をさらすのだ。



勇者「お前がみんなを殺した!キノコの人も!獣の人も!」



突進。最早、姿を捉えることは叶わない。爆ぜる石床、舞い上がる花弁により、その軌跡が辛うじて解る。


《凍結》


腕の一振りで広大な部屋を白銀の世界に変え、勇者を氷柱に埋める。

絶対零度の前では全ての物質が凍結する。貴様等生命はいつの世も、冬によって死に絶えるのだ。

徒労なり。
344:2014/05/21(水) 23:22:41.89 ID:


勇者「グッ!?ウウウウ……ッ!」

魔王「そうだ、我が滅ぼした、どれも貴様に擦り寄った惰弱な存在ぞ、惨たらしく屍を晒しておった、少し面白い」

勇者「ウ、アアアアアアアァァッ!!」



勇者を捕らえていた氷柱が爆ぜ、周囲の氷雪も氷の結晶となり解け切る。

ここまで早く適応するか、最早この女を縛る呪いや鎖が存在するのか。

しかし徒労なり。


《魔剣召喚》


蒼鈍色の光を放つ魔剣が数百本。
意のままに動くそれを正確無比に勇者を目がけ弾雨の如く射出する。
345:2014/05/21(水) 23:24:18.66 ID:

勇者「お、お前が殺したんだっ、機械の人もっ!妖精の人もっ!」



尚も飛来する魔剣を叩き落し続けるが、目に見えてその動きは緩慢。もはや女の体は針山の如く剣が突き刺さっている。



勇者「クッ……ガッ……!」

魔王「殺したとは妙ぞ?あれらは無機物に曖昧な存在ゆえな。実に味気ないものであった」

勇者「お前は……ッ!あの人じゃない……ッ!」

魔王「動けぬか?ならばそのまま死ぬがいい」



大呪文を避け、あるいは詠唱を妨害し、適応すらしてきたがここまでである。全身が爆ぜればどうにもなるまい。


《空間ばくさ……》


勇者「あの人を……」



何故、目の前に


346:2014/05/21(水) 23:25:23.98 ID:



魔王「な……」


勇者「返せえええぇぇぇっ!!」



反応も許されず、無防備に拳を受け、吹き飛ばされる。
魔剣は物理力で破損するようなやわなものではない。何故、虜の身から脱したか。



勇者「お前なんか、あの人じゃない……ッ!」



魔剣はそのままである。
ただし手に足に、重石の如くぶら下がる石床の破片ごとである。
突き刺さる石床ごと引き抜いてここまで来たと言うか。



魔王「囀るな人間」



どんな呪文も攻撃も適応するのであれば初見の法で即死させるのみ。
広範囲であればかわせまい。


《閃熱》にて蒸発せよ。

347:2014/05/21(水) 23:26:51.76 ID:


勇者「フンッ!!」


突破される。閃熱を潜り抜け、拳をまともに叩き込まれる。
何ゆえか、既に耐性を持つと言うか。



魔王「……妖精王を降した折にか、あれは魔法に長けていた。ならば貴様に属性魔法は効かぬとみた」



単純な殴り合いで打ち負けるも獣王を制覇した為か。ならば通常の法ではこやつは死ぬまい。

いかなる毒も効くまい、菌糸を叩き伏せたのだから。

いかなる防壁も突破するであろう、ゴーレム共を粉砕したのであるから。



魔王「役に立たぬ下等存在共よ、魔の者にあって勇者の血肉となるとはな、早々に殺しておくべきであったわ」

勇者「あの人の口で喋るな!」

魔王「あの人、あの人と、何を先程から世迷いごとを……我は『こういうもの』だ」
348:2014/05/21(水) 23:28:19.00 ID:

勇者「そういう風に創られたのは知ってる、けどあの人はそんなことは言わない、もう歩み寄ることを覚えたもの!」

魔王「生憎覚えが無い、誰のことを申しておるのか」

勇者「だからお前はあの人じゃ無い!あの人は愉悦の為に世界を滅ぼそうとする自分を変えようとしていたもの!簡単に他の人たちを殺したりするものか!」

魔王「ほう?少し面白い、続けてみよ」



勇者「どうやっても抗えない運命がある、あの人にとって『役割』はそうだった、けどあの人自身の感情はそうじゃない」

勇者「最初は定められた役割の元、自分はそういうものだって諦めてた。けど、少しずつ変わっていった、自分は本当は生きたいんだって気付いた」
349:2014/05/21(水) 23:29:35.91 ID:



勇者「春に穏やかな陽光を浴びて、夏に溢れる生命を感じ、秋に散っていった命を忍び、冬の後にまた命が来ることを、巡ることを理解した」

勇者「あの人は、そんな世界が好きだった。散っていった戦士達に対する礼儀を知っていた!それが出来ないお前があの人であるものか!!」



魔王「…………ク」

勇者「…………」


魔王「クハッ、クッハハハハハハッ!!何を言うかと思えばっ!我が!?あのような有象無象共を!?」


勇者「お前……」

魔王「面白い女よ……教えてやろう、この魔王はな」




……貴様等が虫唾が走るほど嫌いであった。




勇者「…………」
350:2014/05/21(水) 23:32:11.26 ID:



魔王「憎悪していた、妬んでいた、羨んでいた」



魔王「人と和合する魔を、魔と共に生きる人を、巡る生命を、輪をつくり生きる者共を」

魔王「力も無く、叡智も無く、限りあるくせに、不完全なくせに、何一つ創るに血反吐を吐き、何一つ滅ぼすのにのた打ち回る」



魔王「それでいて自由を得、楽を知り、満ち足りているのが我には許せん」



魔王「我より弱いくせに、我より脆いくせに、我より矮小なくせに」



魔王「我は……貴様ら生命在る者共が大嫌いだ」



魔王「だから滅ぼす。嫌悪する存在がのた打ち回る様は我が心を満たす。故に死に逝くものこそ美しいのだ……」


351:2014/05/21(水) 23:32:53.66 ID:



勇者「……違う」



魔王「……何だと?」

勇者「あの人は……貴方は、『貴方達』は大好きだった」

魔王「…………」


352:2014/05/21(水) 23:34:34.64 ID:


勇者「愛していた、抱きしめたかった、恋焦がれていた」


勇者「人と歩み寄る自然を、共に生きる世界を、巡る命を、輪をつくり愛し合う人達を」

勇者「力も無く、知恵も無く、限りがあって、不安定で、作物一つ作るのに汗を流して、死が訪れる度に涙を流して」



勇者「不自由で、苦しくて、満たされないけど」



勇者「それでも強くて、逞しくて、どこまでも広大で」



勇者「だからこそ愛せるの」



勇者「だからこそ尊いの、限り在るものこそ、死に逝くものこそ美しいから」


353:2014/05/21(水) 23:36:10.93 ID:


~~~~~~~~~~



『なんにせよ、自分は礼儀を知らないわけではない』

『強制的に当て嵌められた『役割』の為であっても、戦士として自分に挑んできた勇者達には礼儀を持って相手をした』

『ならばこれらにもそれ相応の礼儀を持って報いるのが魔王たる者の在り方である』

魔王『…………『いただきます』』



~~~~~~~~~~



勇者『それが豊かさ、というものよ』

魔王『豊かだと?人間の言うそれは財の有る無しでは無いのか?』

勇者『単純に生きるためもある。けれどおいしいものを食べると心が豊かになる。本当の意味で『いただきます』を言えるようになる』

魔王『粗食に準じるのが貴様等の美徳と聞いた』

勇者『それもその豊かさの為、貧しい食を知ってこそ、食卓に料理が並ぶことの尊さを学ぶことができる、どちらが欠けても豊かとは言えない』

魔王『ほう、少し面白い』



~~~~~~~~~~
354:2014/05/21(水) 23:36:38.46 ID:



魔王「黙れ……」

勇者「そんなにまで世界を憎んだ貴方が、必死になって歩み寄った」

魔王「黙れと言っている!!」

勇者「世界の中で喜びを見つけ、世界と絆をつくろうとした」



355:2014/05/21(水) 23:37:42.19 ID:

~~~~~~~~~~



魔王『やはりか、我はこのように甘く柔らかなものを食したことが無い、言え、これは毒で、貴様は我を殺さんとしたのであろう』

勇者『……気に入ったの?』

魔王『…………毒ではないのか?』

勇者『フフッ……おいしい』

魔王『いや、しかし……』

勇者『食べないの?なら……』

魔王『ならぬ』



~~~~~~~~~~




魔王『今日より貴様は『ヨミ』と名乗るがいい、古の神、宵闇の神の名を冠するのだ』



ニャーン……



魔王『………………フフッ』



~~~~~~~~~~
356:2014/05/21(水) 23:39:36.27 ID:



魔王「黙れええええぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!」



勇者「自分が『そうでない』のに『殺される為に産まれた』のに」

勇者「自分とは真逆なものを理解して愛そうとした」





勇者「貴方こそ本当の勇者だ」





魔王「我は……っ我は違う……っ!貴様等が憎い、妬ましい!滅びよ!それこそが我が望みだ!!」

357:2014/05/21(水) 23:41:25.81 ID:


勇者「今日の貴方は、少し、変……」



魔王「黙れっ!黙れっ!黙れええええぇぇぇっっ!!!!」



勇者「ハラペコで、甘党で、素直じゃない、いつもの、ほうが……良い」



魔王「憎いっ!貴様等皆呪われろっ!殺してやる!滅んでしまえ!!」





勇者「……そんなっ……貴方が……大好きだっ」





魔王「もう良い!我を惑わす淫売めが!亜空の海に消えるが良いっ!!!!」



《亜空転移》






勇者「お願い……自分で創った自分なんかに、敗けないで」





・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



358:2014/05/21(水) 23:42:42.62 ID:
今日はここまで。
359:2014/05/21(水) 23:44:22.49 ID:

次回完結かなぁ・・・
魔王様マジヒロイン
361:2014/05/21(水) 23:46:03.08 ID:
>>359 
完結はもう少し先です。結構気になっている人がいるようなのでお知らせを。
それでダレなければ良いんだけど、よければお付き合いください。
364:2014/05/22(木) 00:07:01.30 ID:

もう少し続くと聞いて嬉しいやら寂しいやら
365:2014/05/22(木) 00:41:05.81 ID:

今回はいつも以上に筆が走ってて迫力あった
ノッてる時に多少の誤植は付き物だから気にせず思いっきり書いて欲しい
366:2014/05/22(木) 00:56:20.41 ID:
随所で鳥肌……
大丈夫、>>1が書きたい長さが丁度いい長さだ
371:2014/05/24(土) 19:53:52.05 ID:


菌糸王『『『さにあらば、私は王として、生命在る者として、全霊を以って貴方を殺すまでです』』』


獣王『我等は最後の一体となっても抗い、戦い往くまで』


機械王『貴方ノ愉悦ヤ、或イハ別ノ感情ノ為ニ今回ノ結末ニナッタノデアッテモ私ハ責メナイ。重要ナノハ『個』トシテ在ル事ダカラダ』


妖精王『だからせめて……なるたけアンタにとって胸糞悪いヤツになって死にたいな。けどね、最後まで抵抗はさせてもらうよ?それが生命ってもんさ』





・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・
372:2014/05/24(土) 19:55:38.25 ID:



魔王「否、否、否ッ!我は我であるッ!万物の破壊者、魔王であるッ!!」



勇者「違う、貴方は真の勇者。自分の宿命と向き合い、それでも戦い続けた本当の戦士」

魔王「これで終わりだッ!!我の眼前より消えて失せろ勇者ァッ!!」

勇者「…………ッ」



きつく目を閉じ、涙を流す女の姿に一層心が乱れる。


何故だ、今更この女に何を思う。

消えよ、さすればその妄言も二度と我には届かぬ。
消えよ、さすればその忌々しい眼も我には視えぬ。
消えよ、さすれば我の心は乱れぬ。



勇者「戦うの……10010001110…抗って…010000100…最後ま…101000010…で……」



消えよ、さすれば我は……


373:2014/05/24(土) 19:57:52.92 ID:



*************



《 ???? 》




1010001101000010010011010010001111000010000101000100100011101010000100101010000


勇者「……ここは?」


1000111010100000101010001101000010010011010010001111000010000101000110100001001



勇者「この数字は……もしかしてこれが『そうであるもの』と『そうでないもの』?」

勇者「なにか見える……あれは……!」
374:2014/05/24(土) 19:59:26.60 ID:



……1010001001000111010100001001010100001001001



ニャーン……


魔王『ヨミよ、我を許せ……』

魔王『これしかないのだ、我が死ねば全てに決着が付く。それがこの世界なのだ』

魔王『我のみが滅びようとも世界の巡る命はそのままである、全ての繁栄が未来にある』

魔王『だが、我は自決を許されぬ……出来ぬのだ』



……1010100001001001101000100100011101010000010



魔王『眷属の恨みと怒りはやがて弾けよう、その時、神はこの星を放棄するであろう』

魔王『その前に決着をつけねばならん、その時、世界は終わりを迎えるのだ』

魔王『我が滅ぼさずとも……『光の一筋も差さぬ暗闇の世界になる』』

魔王『それが幕引きとなってしまうのだ』

375:2014/05/24(土) 20:01:09.64 ID:



……1010001101000010010011010010001111000010000



魔王『そうはさせぬ……その前にアレに、あの女に我を滅ぼさせるのだ』

魔王『神の望む舞台を整えるには、我は城にて待ち望まねばならぬ。その為に、配下共を皆殺しにするは……』

魔王『我としたことが……今は心苦しく思う……』


ニャーン……



……1010001001000111010100001001010100001001001



魔王『『勇者が、魔王を討つ』のだ、それでこの星は生き残る、『そうなっている』のだ、それが皆の望む世界なのだ』

魔王『あの女も、我が配下も、誰も死なせぬ』

魔王『その為に、貴様に術式を書き込む』

376:2014/05/24(土) 20:02:08.50 ID:



……1010100001001001101000100100011101010000010



魔王『この術式はこの世界で我のみが詠唱できる、この世界の根源である。その有様は……『機械仕掛けの神』とはよく言ったものである』

魔王『我が滅べば配下の者は皆復活するよう、貴様に術式を書き込んだ』

魔王『アレ等が再び目覚めた時、アレ等は我に操られていたということになる。それで良い、アヤツ等ならば、我亡き後、人間共に陵辱されることはあるまい』

魔王『そして、あの女が勇者ならば……あの者共が過去に受けた恥辱を再び迎えることも無いであろう』



……1010100001001001101000100100011101010000010



魔王『問題はあの女が我が意図に気付いた時よ』

魔王『己に《思考操作》をかける愚か者は後にも先にも我だけであろう。玉座の間にて、我があの女と会う時、我は我で無くなる』

魔王『さすればアレも我に対し、全霊を以って挑むであろう』

377:2014/05/24(土) 20:02:56.33 ID:



……1010001101000010010011010010001111000010000



ニャーン、ニャーン


魔王『わがままを言うでない、貴様は我が忠実なる下僕であろうが』

魔王『……おそらくそれでもアレが我に勝つことは叶うまい』

魔王『なれば、その時は……貴様が我自身の楔となるのだ』

魔王『やもすれば……我は、貴様を、殺すかもしれん……』



……1010100001001001101000100100011101010000010



魔王『よいな、ヨミよ。我が忠実なる、愛すべき下僕よ』

魔王『案ずるな、貴様は魔王軍最強の存在である』

魔王『頼む……』

378:2014/05/24(土) 20:04:17.77 ID:



1010001101000010010011010010001111000010000101000100100011101010000100101010000



魔王『我が…………ぃ、した世界を』



1000111010100000101010001101000010010011010010001111000010000101000110100001001





勇者「貴方は馬鹿…………本当に、馬鹿っ」




1000111010100000101010001101000010010011010010001111000010000101000110100001001
379:2014/05/24(土) 20:05:40.62 ID:



*************



にゃーん……


魔王「……畜生か?どこより出でた?」


にゃーん、にゃーん


魔王「……汚らわしい、擦り寄るな畜生めが」


にゃーん、にゃーん


魔王「…………消えよ」



何故か酷く不快である。

肉塊へと変じさせるべく、術式を編む。

では消えよ。



《      》


380:2014/05/24(土) 20:07:17.24 ID:


魔王「うむ?」



失敗?有り得ない、この我が詠唱失敗など、これはむしろ《散漫》の術式、それもかなり高度の……



にゃー……1010100001001001101000100100011101010000010


魔王「ッ!?貴様!何故その呪文を!?」


その直後である、ガラスを破砕したような甲高い音、そしてその上に何者かが降り立つ音。



勇者「ッ!!」

魔王「なん……!」



何故だ、事象を操った創造神の勇者ですらこの術式の前に消し飛んだ。
生物が適応できるものではない、この世界の在り方に干渉する術である。



魔王「貴様、いかなる術を持って!?」

勇者「………………このっ!」

381:2014/05/24(土) 20:08:20.51 ID:


魔王「ッ!?」

勇者「大馬鹿ァッ!!!!」



女の眼に宿る黄金の炎がより一層輝く、その一瞬後。

不可避、不可視、何が起こった、何故、我は地を這っているのか、何故血を吐いているのか。頭上からか?叩き伏せられたのか?



魔王「ぐ、お、おお……」

勇者「立てッ!!中にいるその人ごと殴ってやるッ!!」

魔王「人間がっ、図に……!」

勇者「フンッ!!」

魔王「ガハッ!!」



直ちに報復する為立ち上がろうとするところを蹴り上げられ、そのままたたらを踏む。

力が抜ける。

この我が崩壊を迎えようとしている。

382:2014/05/24(土) 20:11:44.99 ID:


魔王「《鎧》よ!」


ことにおいては形振りも構ってはおられぬ、一度脱ぎ捨てた絶対防御を再び纏う。

しかし、



にゃー……1101000010010011010010001111000010



一瞬に霧散する。



魔王「なんだと!?これは《武装かいじ》……ッ!?」

勇者「シッ!!」

魔王「ゴッ!?」



首から上が消し飛んだような錯覚、最早、音すら聴こえない、拳圧で背後の石床がめくれる様を我が知覚しているのはどういうわけだ。



魔王「き、さま……貴様ァッ!!」



存在を消滅させてやる。存在事実から消し飛ばしてやる。

どこより対抗呪文が、その理由は一つしか思い当たらぬ。

383:2014/05/24(土) 20:13:28.15 ID:



魔王「畜生めが……っ!畜生めがぁっ!!」



勇者どころではない、我に匹敵するするほどの呪文の使い手が、真の脅威が目の前にいる。

何故か、新手の神の刺客であるか、あるいは神そのものか、この間にもあの女は我に迫り来る、どうする、いかにしてこやつ等を殺す。



勇者「貴方はヨミに手は出せない、彼女は魔王軍最強の存在、貴方が言っていたこと」



『 ヨ ミ 』

古き神の名。宵闇を、深淵なる夜を支配する神の名。

しかし、我には、それ以上に、何かを、感じて。



魔王「左様なことは無い……あるはずが無い!!」



384:2014/05/24(土) 20:14:54.27 ID:


殺す、滅ぼす、あってはならない、貴様もこの女と同じだ、理解した、我を惑わす、我を無防備とする最も危ぶむべき存在である。



死ね、死ねしね、しねしねしねしねし1110101011000000010101010101010110001


にゃーん……10010011010010001111000010



《塵化》


《散漫》



互いに高高度の密度で編みこまれた術式が発現する。
掌より射出される《塵化》の呪いをその先から分散させる『ヨミ』の術式、しかし我の呪文がより密度が高い。押している。


殺す、コヤツだけは。
例えこの隙を勇者に狙われ、首を刎ねられようと、心臓をもがれようと、コヤツだけは殺さねばならん。
385:2014/05/24(土) 20:16:37.56 ID:



勇者「ヨミッ!!」



にゃーん……0101011000000010……今ぞ……10101010101……やれ……0110001



勇者「ッ!!」



0101011000……我の首を……000010……それで……1010101010101……全て……が……10001001010101010101



勇者「…………馬鹿っ」



101000110……早く……100001……ヨミを……001001101……頼む……00100011110



勇者「馬鹿ァッ!!!!」



110101000001010100……最後に……01101000……プリン……が……010010011010010……心残り……0011110000100001……である……01000110100001001001101


386:2014/05/24(土) 20:17:35.73 ID:



*************




魔王「…………む?」




何故、我は意識がある。

何故、我は生きている。



にゃーん、にゃーん


魔王「……ヨミ?」






瞬間、背筋が凍る。





我に意識があるということは。

我が生きているということは。


387:2014/05/24(土) 20:18:35.93 ID:






勇者「ハ……ッ……カ、ハ……ッ」






苦悶の顔を浮かべ、眼前でのたうつ女。


受けたのか、我の呪文を、遮ったのか、《塵化》であるぞ。再生を無視し、万物を塵と変える術式ぞ。





魔王「この……馬鹿者がァッ!!」





我は、しくじったのだ。




388:2014/05/24(土) 20:20:28.96 ID:

*************

おきのどくですが ぼうけんのしょ 3ばんは きえてしまいました。

*************
391:2014/05/24(土) 20:27:07.45 ID:
おいおい……
392:2014/05/24(土) 20:41:45.11 ID:
1ばん!1ばんをロードさせて!!
393:2014/05/24(土) 22:47:16.74 ID:



*************



《 数日後 勇者の家 》



魔王「1010110000101010……やはりか、間に合わぬ」



世界の行く末を見通す、否、正確には見通すことが出来ない。

あの女が死ねば、直ちに世界は終末の時を迎える。
帳がかかったようにその先が見えぬ、もしくはその帳のような闇こそがこの世界の結末である。


世界は、巡る命はあと数刻もせぬうちに潰えることとなる。

即ち、それがアヤツの寿命である。



魔王「……時間であるか」



術式を中断し、小屋に入る。

大した広さでもない、質素なつくりの家であるが、少しずつ増築したのであろうこの家にも寝室はある。
断りを入れず入室する我を疎んじてあの女が設けたものだ。
394:2014/05/24(土) 22:48:01.50 ID:

しかし我が向かうはその寝室ではない。

ここ数日で立ち入るようになった台所である。



魔王「ふむ、消し炭にするのであれば容易いことであるが、この火加減を覚えるに、この我がここまで時間を要するとはな」



我の目の先、手鍋で煮込まれるのは『ミルク粥』なるもの。

ヨミの食事を我が手ずから用意するため覚えた唯一の料理である。
気まぐれに我も食してみたことがあったが、その味は素朴ながらも溶け込むような味わいであった。



魔王「入るぞ」



ミルク粥を注いだ器を持ち、勇者が寝室を用意した後にするようになった断りをいれ、寝室に入る。
395:2014/05/24(土) 22:49:34.86 ID:


そこには寝台で勇者が横たわっている。

普段の凛然とした様子は見る限りもなく、見るからに弱っている。
苦痛を感じていないのは幸いか、否、我にはそれしか出来なかった。



勇者「どう、だった?」

魔王「ふむ、芳しくは無い。それより食らうが良い、我、手ずからの一品である、恐れ多いであろう」

勇者「そう……ありがとう、いただきます」



《塵化》で即死しなかったのは、この女が受けた恩恵の賜物であろう。

しかし限度がある、呪文の効果は刻一刻と勇者の体を蝕んでいる。
最早、たたかう事も相成らぬ、死を待つのみ、後僅かな時の後、この女は塵と消える。

我にはそれが言えなかった。
396:2014/05/24(土) 22:50:31.92 ID:

魔王「…………」

勇者「……おいしい」

魔王「体力をつけるのだ」

勇者「それは、私が死ねば世界が終わるから?」

魔王「……我を怒らせてどうするつもりだ?」

勇者「なんでもない……冗談よ」

魔王「冗談だと?……何故、あのような真似をした?」

勇者「…………」

魔王「答えよ、この世界の、貴様の、ヨミの、そして我自身の滅びも関わっているのだ」

勇者「…………私の」

魔王「貴様の?」
397:2014/05/24(土) 22:51:42.98 ID:



勇者「ワガママ」



魔王「なんだと?」

勇者「多分、あそこで貴方を殺していたら、私はきっと死にたくなる」

魔王「何を言う、貴様は何としてでも生き抜くのではなかったか」


勇者「そうね、そして……『それでも悩む』の、それが人間、そして魔族も」


魔王「我等が眷属はそのような愚かな真似はしない」

勇者「そう?では私も貴方に、何故あんな事をしたか聴いてもいいの?」

魔王「…………チッ」

勇者「貴方は自分が生き残っても、世界が滅んだのであれば死にたくなる。だからあんな事をした」
398:2014/05/24(土) 22:52:31.45 ID:

魔王「馬鹿な、貴様我をなんだと」

勇者「大切な人」

魔王「何?」

勇者「追放された私を迎え入れてくれて、食事を共にしてくれて、一緒に祭りを楽しんで、私が生きることを望んでくれた大切な人」

魔王「……ただの結果である」

勇者「初めは解らなかった、むしろ嫌なヤツだと思っていた」

魔王「当然である、己と我の立場を考えてみよ」

勇者「そんなものが私に関係ないことは知っているはず」

魔王「む……」

勇者「けど、話していくうち、そうじゃないって解った。孤独な人、けど、自分から変わろうとした勇気のある人、追放されて、逃げた私とは違う」
399:2014/05/24(土) 22:53:20.59 ID:

魔王「逃げることも戦うことの一つだ。出来ぬものを愚者と言う」

勇者「そう、貴方はそんなことが言えるほどに変わった、気付いてなかったの?」

魔王「……フン」

勇者「そう言ってくれたのは嬉しい、けど、やっぱり逃げたことには違いないわ。私は宿命に、この力から逃げたの」



この勇者が弱音を吐いたのは初めて見た。

恩恵の力が発現せぬほどに弱っているのか、いつもの草花は見えない。

その姿が痛ましい。



勇者「貴方は私の憧れ、だから大切な人よ」

魔王「……そうか」
400:2014/05/24(土) 22:54:35.71 ID:

勇者「ゴホッ!ゴホッ、ゴホッ!」

魔王「喋り過ぎたか、もう良い、横になるが良い」

勇者「ゴホッ!……フフッ」

魔王「何を笑う?」

勇者「今日の、最近の貴方は少し変、けど……」

魔王「…………」

勇者「とても優しい、その方が良いと思う」

魔王「馬鹿を申すな、我は魔王なるぞ」

勇者「そうね、いつもハラペコで、甘いモノが大好きで、素直じゃない、そして優しい魔王様」

魔王「……そうか」
401:2014/05/24(土) 22:55:20.27 ID:


勇者「ねえ」


魔王「なんだ?」


勇者「なんでもない」


魔王「そうか」


勇者「そうね」


魔王「…………死ぬな」


勇者「…………死にたくないよ」


魔王「貴様はこの世界の希望であろう」


勇者「そうらしいわね」


魔王「ならば死ぬな、生きよ」

402:2014/05/24(土) 22:57:23.80 ID:

勇者「世界の為とか……そんなこと考えたことは無い」

魔王「なんだと?」

勇者「私は、私の為に生きている。どんな生き物もそれは変わらない。人間だけが、それを歪めている」

魔王「何を申すか、貴様、己が何をしたか解って言っておるのか」

勇者「解っているわ」

魔王「否である、では何故貴様はここで死のうとしている」

勇者「貴方が生きていることが、私に必要だったから」

魔王「な…………」

勇者「私は貴方に恋をしているのだろうか?」

魔王「知らん、が、我も一度はそうかと思った」

勇者「…………あの祭りの時?」

魔王「そうだ、だが違った、それは我等の有り様があまりにも違いすぎるからであろう」
403:2014/05/24(土) 22:58:25.14 ID:

勇者「そう」

魔王「そうだ」

勇者「なら、私は」

魔王「なんだ?」

勇者「次に産まれるときは、魔族になりたいかもしれない」

魔王「奇遇であるな、我とて……」

勇者「知ってるわ」

魔王「なんだと?」

勇者「貴方が生命に、世界に恋をしていたことは知っていた」

魔王「…………」

勇者「そして今はそれを隠さない貴方を、やはり私は好ましいと思う」



魔王「…………死ぬな」

勇者「……死にたくない」


404:2014/05/24(土) 22:59:13.27 ID:

魔王「我には貴様が必要である、世界の希望とならぬとも構わぬ、我の一人の希望となれ」

勇者「それは……」

魔王「我は貴様等が憎かった、嫉んでいた。貴様等、勇者の眼に宿るその炎、『生きることを決意した証』を心底忌み嫌っていた」

勇者「…………」



魔王「やがて恋焦がれた、我もああでありたいと、貴様等と一つになりたいと、口では言わず、心も閉ざした、だが結果はこの通りである。生娘のように貴様等を想い、身を投げ出してもそれでよいと、そうとすら思えた」


魔王「しかし、我は所詮『役割』に振り回された操り人形である、運命に抗い続ける貴様等ほど強くなかったのだ」


魔王「滅びを迎えようとしてるのに……我には、『そういうものだ』と、諦めしか浮かばぬのだ。生きよ、そして我を導け、この世界で、我は生きていけぬ」
405:2014/05/24(土) 23:00:42.90 ID:





勇者「……戦って」




魔王「何だと?」

勇者「戦うの」

魔王「戦うだと?何と戦うというのだ?滅びは一方的にやってくる、世界の在り方が、無へと変ずるのだぞ?」

勇者「私が亜空間でみた『0』と『1』に関係のあること?」

魔王「そうだ、そしてそれすら消える、誰も、何も知覚できない世界だ」

勇者「でも貴方には出来ることがあるはず」

魔王「我に出来ることなどたかが知れておる、多少ならば干渉できると、いつかそう言ったであろう」

勇者「でもそれは貴方の手に武器が握られているということ」

魔王「我には……我には……」
406:2014/05/24(土) 23:02:29.19 ID:

勇者「世界が消えてなくなるなら、貴方が創りなおせばいい」

魔王「貴様、我に神になれというのか?」

勇者「神様よりすごい人になるの」

魔王「そのような理はない、そしてそれすら神の手の内である」

勇者「そんなことは無い、だとしてもその人たちはこの世界の滅びを願っているわけが無い」

魔王「ならば何故こんなに我は苦しい?それは神共が我ののたうつ様をみて愉悦に浸っているからであろう?」


勇者「いいえ、戦って乗り越えることが、例え背を見せても抗い続けることが、生きることがどれだけ美しいかを知っている人達、だからこそ、その人たちは私達を見て満たされる」
407:2014/05/24(土) 23:03:30.77 ID:

魔王「制御された世界をか?無益なり、そして貴様等はなんとする?神の意図の元、箱庭で家畜同然に生きると申すか?それが神共が願う幸福と申すか」



勇者「本当にそう思っているの?」



魔王「何……?」

勇者「この星の全ての生き物が、神様の思い通りに動いているなんて本当にそう思っているの?」

魔王「事実であろう」

勇者「そうは思わない。私達は抗い、進化を続けた、その全てが意図の基につくられたなんてそれこそ無意味、箱庭遊びと同じよ」

魔王「しかし」

勇者「神様は自分の中の何かを満たしたいからこの世界を創った。そう言ったのは貴方。そして結果の知れた遊戯を楽しむ人はいない」

魔王「妄言である」
408:2014/05/24(土) 23:04:02.84 ID:


勇者「土や水にどれだけの小さな命があるか、どんな関係を結んでいるかなんて、きっと神様だって目を廻すくらいの規模。もしかしたら知らない存在だっているかもしれない」


魔王「左様なことがわかるものか」

勇者「貴方だって魔王なのに、魔族の事で知らないことがたくさんあったじゃないか。同じこと、私達は自分の意思で、自分達の為に生きている」

魔王「む……」

勇者「だからきっとなんとか出来るはず、世界の全てが神様の思い通りになっているなんておかしいこと」

魔王「我に……左様なことが……」
409:2014/05/24(土) 23:05:55.38 ID:


勇者「私の眼に炎が宿っていると、『生きることを決意した証』が燃えていると貴方は言った、私には、貴方の眼にもそれが宿っているのが見える」


魔王「……我にもだと?」




勇者「静かな、でも赤い炎より更に熱い蒼の炎」

勇者「戦うの、抗って、最後まで、血の一滴まで」





勇者「私達はみんな、戦士、そして勇者だ」




勇者「それが世界中にいるんだ」




勇者「神様にだって敗けるものか」




412:2014/05/25(日) 00:33:29.42 ID:
なんか…こう…胸が熱くなる展開
続き待ってます
415:2014/05/25(日) 05:26:00.46 ID:
涙が出て来た
416:2014/05/25(日) 08:47:43.39 ID:

魔王「…………」

勇者「…………」

魔王「フン、貴様のその大言壮語も聴き飽きたわ」

勇者「聞き飽きるくらい貴方は私に怒られている。きっと貴方は尻にしかれるタイプ」

魔王「馬鹿を申すな」

勇者「ヨミにも頭があがらない」

魔王「ヨミは我の下僕である、左様なことがあってなるものか」

勇者「でも貴方は、ヨミに食事を用意し、扉を開けて待ち、そうしてたまに撫でることが出来る」

魔王「む……」

勇者「やっぱり尻にしかれるタイプ」

魔王「婦女子が尻、尻と連呼する出ない、慎みを知れ」
417:2014/05/25(日) 08:48:15.93 ID:

勇者「人の胸の事を言う貴方に言われたくない」

魔王「む?やはり貴様」

勇者「死ね」

魔王「このタイミングでそれは止めよ」

勇者「そうね、文字通り、洒落にならない」

魔王「そして我は冗談が好かぬ」

勇者「ねえ……」

魔王「なんだ」

勇者「話をしよう、もっと、もっと、たくさん、私と貴方が会う前の話も」

魔王「……いいだろう」

勇者「たくさん、たくさん話をしよう……」




418:2014/05/25(日) 08:49:01.26 ID:



*************



魔王「なんと、そんなことがあるものか」

勇者「いいえ、残念ながらそうなの、刈りいれの時期を併せないと、一番遅い収穫時期の米は猪に狙われる、だから収穫時期が同じくらいのものにしないといけない」

魔王「獣王に話をつけるべきであったな」

勇者「フフッ、でもあの人たちも闘争をしている、そんなことは出来ない」

魔王「しかし我はその米を食してみたい、冷えても旨いとは摩訶不思議である」

勇者「そう、『サン・ライト』は至高の品種の一つ、私も長らく食べていない」

魔王「全てそれにすれば良い」

勇者「作物が病気にかかれば村は全滅する、だから色んな品種を植えるの」

魔王「成程……」
419:2014/05/25(日) 08:49:45.03 ID:


勇者「…………ねえ」


魔王「…………なんだ?」


勇者「……もう、だめみたい」


魔王「……そうか」


勇者「……そうね」


魔王「悔いはないか?」


勇者「悔しい、わ」


魔王「そうか、言え、叶えてやろう」


420:2014/05/25(日) 08:51:12.56 ID:


魔王「貴様を追放した人間を滅ぼすも、恩恵を与えた神を煉獄に投げ込むも我であれば容易いことぞ」


勇者「そんなの、いらない……」


魔王「ではなにを欲する?言うが良い」





勇者「…………赤ちゃんが、抱きたかったな……」





魔王「……そうか」




魔王「では、我の子を孕むがよい」


421:2014/05/25(日) 08:52:43.94 ID:


魔王「勇者である貴様を母体とした我の子である、この星、最強の存在となるであろう」


魔王「ふむ、そういえば貴様等は子をなせば乳を出すようになるそうではないか」


魔王「丁度良いではないか、さすればその貧相な胸も多少は膨れるのであろう」




魔王「…………」




魔王「……何故、いつものように『死ね』と言わぬ」


魔王「そこは言わねばならぬであろう」





魔王「…………」






魔王「…………忌々しい神々よ、貴様等の刺客は功をなしたぞ」



魔王「我は今ほど、自らの滅びを望んだことは無い」


魔王「誇るが良い」

422:2014/05/25(日) 08:56:20.35 ID:

~~~~~~~~~~


最後の勇者『お前には、一生わからんだろう……』


~~~~~~~~~~



最後に産まれた勇者の末期の言葉、今ならあの者が何故あのような行動をとったのかが解る。

これは衝動であるとも言える、それは原初の欲求なのだ。


物言わぬ女の唇に、この時にあっては、あの祭りの時のように何の逡巡もなく、ためらいもなく、ただ口を重ねた。そうするべきであると感じた。


万が望む絆である。



魔王「理解したとも……認めよう」



直後、『0』と『1』に分解される女の亡骸。

文字通り『塵』となるように消えて失せた。


消えたのだ、もう、あれはいないのだ。


423:2014/05/25(日) 08:57:19.49 ID:


悲嘆はある、心臓を雁字搦めにされたような痛苦も。

しかし、我の体は動く。まだ戦える。


『しんでなければ』戦える。


勇者とはそういうものだ。



魔王「勇者達よ、生きることを、戦うことを決意した、猛々しく、雄雄しい真の星の子達よ」


魔王「認めよう」


魔王「この魔王の敗北であると」


魔王「そしてこの『我』が、貴様等の物語をありのまま語ろう」


魔王「『粛々と滅びを迎え入れるなど虫でもしない』」





魔王「そうであるな?……勇者共よ」




424:2014/05/25(日) 08:57:50.49 ID:

*************

おきのどくですが ぼうけんのしょ 2ばんは きえてしまいました。

*************
426:2014/05/25(日) 09:02:35.79 ID:
ネコ飼ったらヨミって名前つける
427:2014/05/25(日) 10:21:04.32 ID:
白昼堂々ガチ泣きしてるぞ続き待機
428:2014/05/25(日) 11:48:18.62 ID:



*************



外に出れば忠実なる者達が揃っている。即ち、我の従者、そしてハナ。
いずれも何が起きたかを理解しているようであり、一様にうなだれている。

そしてヨミ、流石である、お前はこのような時でも変わらず我に擦り寄るのであるな。



魔王「大儀である」



従者「ハッ、いつでも出陣できます」


クゥーン……



魔王「…………ハナよ、貴様の主人は死んだ、今後は我に仕えるがよい」



ハッハッハッ ワンッ



魔王「従者よ、最後までよくぞ我を補佐した、我、自ら褒め置こう」


従者「勿体無きお言葉」


429:2014/05/25(日) 11:49:20.15 ID:



魔王「この家とハナの守りを任せる」



従者「ハッ!」


魔王「何……我一人で充分である」


従者「魔王様、御自らとあっては神の業などいかほどもございますまい」


魔王「ヨミよ……」


にゃーん……


魔王「貴様は、我に侍ってくれるか?」


にゃーん、にゃーん


魔王「よかろう、では、これより」






魔王「魔王軍最後の進撃である」




430:2014/05/25(日) 11:51:03.65 ID:



*************



転移の呪文にて魔界の頂上、即ち魔王城の天主より世界の果てを望む。




来おったか。




にゃーん……


魔王「心配するでない、ヨミよ」



滅びが迫り来る。


音もなく。

淡々と。

宵闇に染まるのとは違う、ただ闇が世界を埋め尽くす様。

森も、海も、川も、人も、魔も。

一つの悲鳴も上げず、一つの血も流さず。

ここ魔王城を目指し、その周囲を狭める。

そして世界は闇に閉ざされる。

431:2014/05/25(日) 11:53:00.10 ID:



そうはさせぬ。



魔王「神よ、今ぞ知るが良い」



この星に粛々と滅びを迎え入れる軟弱者はおらぬ。



魔王「戦う者こそ、歩み寄るものこそ」



我は生き抜く。戦い続けてみせる。それこそが、その有様こそが。







魔王「死に逝くものこそ美しいのだ」





433:2014/05/25(日) 11:54:44.86 ID:
スレタイ胸熱
432:2014/05/25(日) 11:54:30.81 ID:



指定は極大規模、『全て』である。



魔王「10100011010000100100110100100011110000100001010……」



闇の侵食が止まる。

森が、海が、川が、闇に触れる先、それを拒絶するかのように光を放ち侵食を押し返す。



魔王「11010000100100110100011010000100011110000001010……」



直ちに再構成、抵抗を反撃を繰り返す。

否、止まらぬ。

各地で術式が打ち砕かれる甲高い音が鳴り響く。



魔王「10001111000010001001101001000010011010010011010……」



だからなんだ。


434:2014/05/25(日) 11:55:45.95 ID:


その程度か神よ。


我の口はまだ動いているぞ、この星の者共は誰一人として諦めておらぬぞ。何一つとして悲嘆に暮れておらぬぞ。


知っているか、貴様が今消し飛ばした大地に、億の兆のな那由他の数を遥かに超える小さき虫共がいることを。


貴様等はそれ以下である。



このような大規模魔法を用いねば我等を滅ぼすことすらできぬようではな。

この虫共が共生を止めればその程度の滅びは直ちに訪れる。実に矮小な行為である。



魔王「11101010110000000101010101010010010011010110100……」

435:2014/05/25(日) 11:56:33.64 ID:



貴様等にはできまい、自己が生き残らんが為に、自己を滅ぼしかねぬ相手に歩み寄ることが。


貴様等にはできまい、全く別種の者と共に生き、その垣根を超えて絆を造ることが。


貴様等にはわかるまい、自己が生かされていることを自覚し、食卓に料理が並ぶことの尊さが。


貴様等にはわかるまい、傷つき、血を吐き、のたうち、それでも毒を吐き、牙を剥き、武器を持つ戦士たちの貴さが。


436:2014/05/25(日) 11:57:52.63 ID:



魔王「1010100001001001……ヨミ……10100010010001110101000001010001……」

にゃーん……



我には、我等にはそれが出来るのだ。


見たか、この懐にもぐり、震えながらも全身全霊で我に縋る者を、それでも「我がしくじるはずが無い」と、全身全霊で我を信じる我が下僕を。


これこそがその証である。


見るが良い、我はそのように創られなかったのというのに絆を得たのだ。


この絆があれば全ての者は滅びから免れる。そして絆は死なない。故に我は死なぬのだ。


羨むが良い、嫉むがよい、これこそが貴様等の求めたものであろう。恋焦がれたものであろう。

437:2014/05/25(日) 11:59:19.55 ID:


魔王「10100011010、000100、10011010010001、111000010000、1010……ッ」



貴様等の魔法は実に驚嘆するべきものである。我をして侵攻を緩やかにするが精々である、闇に奪われた生命の再構成が間に合わぬ。

だが見るが良い、知っているか、生命とは巡るものなのだ。



????「※※※※※※※※※※※※※※※※※※ーッ!!!!」



『0』と『1』の羅列に成り果てようとも戦うものはいるということだ、そしてそれがもたらす恩恵を見よ。

貴様等の奪った生命が直ちに蘇る。貴様等の力はその程度なのだ。

438:2014/05/25(日) 12:00:29.44 ID:


貴様等は知るまい、今咲き誇ったその草花の一つ一つに重要な名があり、『魔王』であることなど霞む程に重要な『役割』があるということを。

貴様等は知るまい、それら全てに、生きることを決意した炎が宿っているということを。



なんと儚い、なんと脆い、なんと尊い、なんと雄々しい。




魔王「110100……なんと……0010010011010……美しい……010001101000010……」




見よ、鬼神はおろか、魔王たる我をして涙を流させる。



これが世界である。我等である。


439:2014/05/25(日) 12:02:01.28 ID:



今ならば、貴様等が我等の何を見て、何が満たされるのかが解る。

それならば、我が思うとおりであるのなら、感謝してもよい、祈ってやっても良い。



魔王「10001、1110、00010、01001100110100、00100100001、000、01000……ッ」



食卓を前に……11010110……した時、『いただきます』をする時、貴様……11010101000……等を思ってや……10101000101……らぬ事も無い。

魔王たる……10110……この我が……01101……祈るのである……






少し、面白い。





440:2014/05/25(日) 12:02:35.43 ID:

*************

おきのどくですが ぼうけんのしょ 1ばんは きえてしまいました。

*************
445:2014/05/25(日) 14:54:13.56 ID:
ふっかつのじゅもんはどこだ
446:2014/05/25(日) 22:05:27.53 ID:

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   はじめから

   つづきから








ニア つよくてニューゲーム

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447:2014/05/25(日) 22:06:30.53 ID:


むかし、むかし せかいがまだおわりをくりかえしていたころ。

ひとのはいれない ふかいもり に わるい まおう が すんでいました。


おんなの まおう でした。


まおう は とてもちからがつよく たくさんの まほう を つかえ

とてもつよい めしつかい たちをしたがえていました。

まおう は いつも わるいことをしていました。
448:2014/05/25(日) 22:07:26.48 ID:

たくさんの ひと を ころし。

たくさんの くに を ほろぼし。

たくさんの いのち を おもちゃにしました。


おおくの ゆうしゃ たちが、 まおう に たたかい を いどみました。


けれど まおう は とてもつよかったので おおくの ゆうしゃ たちをころしてしまいました。



そして、さいごの ゆうしゃ もまた、 まおう のまえにたったのでした。



449:2014/05/25(日) 22:08:39.53 ID:



「ぼくは たたかう き はないよ」


さいごの ゆうしゃ は そう、いいました。


「おくびょうものめ わたし が こわいのだろう」


まおう は おどかしました。


「きみなんかこわくない でも ぼく は、 きみ と ごはん が たべたいだけなんだ」


そんなことを いう ゆうしゃ は はじめてで、 まおう は びっくりしました。

450:2014/05/25(日) 22:09:30.41 ID:


「これ を たべてごらん、あまくておいしいよ」


それは まおう が みたこともないたべものでした。



きいろいきじ に、

おうごんのみつ が かかった、

とても やわらかくて あまい たべもの でした。



「おいしい おいしい」


まおう は かんげきして あっというまにそれをたいらげました。
451:2014/05/25(日) 22:10:24.01 ID:


「もうないのか だせ でないと おまえをころしてしまうぞ」


まおう は ゆうしゃ を おどしました。


「こら たべるまえには『いただきます』 たべたあとは『ごちそうさま』をいわないとだめだ」


ゆうしゃ は はっきり いいました。


びっくりした のは まおう です。


いままで おこられたことなんてありません。

けど まおう は また あの きいろいおかし が たべたかったので いうこと を ききました。
453:2014/05/25(日) 22:12:43.84 ID:


「そうだよ たべたものたちに かんしゃ するんだ」

「なぜだ」

「ぼくたちは そのおかげでいきていられるんだ」

「すこし おもしろい つづけろ」



ゆうしゃ の はなしに まおう は むちゅうに なりました。



そしてしりました。



この せかい で どれだけ じぶん が ちいさいか。

この せかい は どれだけ うつくしいか。



そして じぶん だけが その なかま ではないということを。



まおう は かなしくて なみだ を ながしました。うまれてはじめてないたのです。


454:2014/05/25(日) 22:13:28.03 ID:


「なかなくていいよ」


「でも わたし は なかま はずれだ それに たくさん の いのち を ころした」


「いのち は よみがえる」


「そんなこと が あるものか」


「せかい が おわらないかぎり いのち は よみがえるんだ」

455:2014/05/25(日) 22:14:35.08 ID:



やがて まおう は ゆうしゃ に こい を しました。


やがて まおう は せかい に こい を しました。



やがて ゆうしゃ との あいだに こども を うみました。



こども は そだち かみさま と なりました。



そして おわり を くりかえす せかい が おわり、

せかい の きせつ は めぐるようになり、



えいえん に つづく せかい が できたのです。


456:2014/05/25(日) 22:18:12.56 ID:


*************


まずい……


どういうことだ、何故誰も戦わない……


それに、強すぎる……今回の魔王……


破壊神の創った勇者ですら魔王についてしまった……


神が創りだせる勇者は一柱につき一人……


後、残っているのは……


生命の……豊穣の……


ダメだな……


ああ、ダメだ……アイツはまるで戦えない……


この世界は終わり……


我々は巡る命を……


ああ、見捨てざるをえない……


見ろ、ただの少女だ……


*************

457:2014/05/25(日) 22:35:56.46 ID:



*************



《 魔王城 》



???「此度の勇者も無事にこちらについたか」

????「魔王様御自らの誘いとあっては……」

???「神共や人間の王がああまで嫌われているとは」

????「銅の剣と薬草のみを持たされ、大義すらない遠征を強制されれば当然でありましょうや」

???「そんなことより……」

????「は……」



???「つまらない」

????「は、それではなにか余興を……」


458:2014/05/25(日) 22:46:07.42 ID:

???「そうではない、これを見よ、勇者共が持ち込んだこの絵本だ」

????「…………ッ」


???「……我が」

????「……ッ……ッ」





魔王「何故、女となっておるのか」



従者「……ッ!……ッ!……ッ!」



魔王「……貴様、よもや我を嗤っておるのか?」

従者「申し……ワケッ、ありま……せんッ!意味が……わかりッかね……ブフッ!」
459:2014/05/25(日) 22:51:05.99 ID:

魔王「……貴様、この数十億年で随分と変わったな」

従者「魔王様こそ……ッ!随分とッ……グッ!まさかッ……女王様に……ッ!」

魔王「殺すぞ」

従者「は、失礼いたしました」

魔王「まあ、良い」

従者「お望みと在らば、作者を探し出し、息の根を……」

魔王「止めよ、この伝承のお陰で勇者共を懐柔できたのだ」

従者「訪れた男の勇者共は求婚するつもりであったようですが」

魔王「殺すぞ」

従者「は、失礼いたしました」
460:2014/05/25(日) 23:11:51.31 ID:


魔王「維持の勇者はどうしておる?」

従者「魔界に張り巡らせた結界の維持の任に当たっています。付近の魔族との軋轢もないようです」

魔王「僻地勤務は『おきのどくですが』というやつだな」

従者「本人は充実しているようです」


魔王「だが人の心とは弱き者、定期的に人里への一時帰還を奨めよ、必要なら我が直接言おう。創造の神はどうであった?」


従者「凄まじい勢いで開墾を進めております。しかし農作業自体は難しくあるらしく行き詰まっているようです」


魔王「他の領域を害することなかれと厳に伝えよ、農耕は他の生物あってのことなれば、自身の埒外を創造することは叶わぬか、特に『虫』には苦労させられるであろう」


従者「他の勇者の補佐もあります。きっと叶いましょう」
461:2014/05/25(日) 23:18:25.81 ID:
>>460
神様が開墾してる姿想像してほっこりした
462:2014/05/25(日) 23:23:39.12 ID:

魔王「……貴様、この数十億年で随分と変わったな」

従者「……恐れながら魔王様もお変わりになられあそばしました」

魔王「……後は、どの神が造った勇者いる」

従者「……他は末端の神々でありますならば……されど、全てが我等の下へ集っています」

魔王「……そうか」

従者「は……『あの者』以外」

魔王「……そうか」


ワンッ ワンッ ワンッ ワンッ


従者「ハナ、どうした?」

魔王「…………来たか」




463:2014/05/25(日) 23:42:39.06 ID:



***********



謁見の間の大扉を抜け悠然と歩いてくる女を認め、自分の眼が見開かれるのを自覚する。魔王たる自分が、童の如く待ちわびていたその姿が眼前にある。

悠久とも思える時を過ごし、その時が遂に来た。



相変わらず、剣すら佩いていない。
だが知っているぞ、その拳は万を叩き伏せることを。

相変わらず、腕の一振りで周囲を更地にしかねぬ武威もない。
だが知っているぞ、一度『たたかう』ことを選択すれば、更地は愚か消滅することを。

相変わらず、魔力も感じられない。
だが知っているぞ、精霊を従える者にそんなものが必要ないことを。

相変わらず、絆を証明する供はいない。
だが知っているぞ、貴様は誰よりもこの世界と深い絆を持っていることを。



魔王「……こんにちは、勇者殿、私がこの城の主だ」



我はこの者が勇者だと知っている。


464:2014/05/25(日) 23:55:38.14 ID:


そして、遠き昔のあの時を繰り返す、そうしてこそ、あの時に戻れるのだ。


陽光の如く光を放つ金の髪。

月光の如く浮き出る肌。

神が与えた『生命』の恩恵の下、足元で無限の生と死を繰り返す数多の草花。



勇者「……こんにちは」



そして、何度見ても我の心を捉えて離さぬ、眼に宿り揺らめく美しき黄金の炎。

敵は無く、四肢が朽ちようと歩み寄ることを、理解することを選んだ者の瞳。

『英雄』でなく、『勇者』であるその本質。そしてだからこそ。



魔王「会いたかった……」


465:2014/05/25(日) 23:56:29.62 ID:


勇者「いきなりね」

魔王「……『貴様の前』にきた勇者に恋焦がれておってな、それが貴様に似ていたのだ」



そう、だがコヤツはあの女ではない。

我が創りなおした、一巡した世界の、また別の誰かである。

即ちこの言葉が出たのは、我がいかに未熟であるかを知らしめるものであった。



勇者「…………」

魔王「……?何故赤くなる?」

勇者「…………なんでもない、そんなことより」

魔王「なんだ?」

466:2014/05/25(日) 23:57:09.84 ID:



勇者「魔王様は女だと思っていた」


魔王「…………」



従者「…………グッ!」

ハッハッハッハッ……

にゃーん……



おのれ、ヨミまでも、いつの間に帰ってきおったか。



魔王「そんなにその伝承は有名なのか」

勇者「そうね、お祭りもあるくらい」

魔王「ほう、少し面白い」

勇者「…………」

魔王「……?何故笑う?」
467:2014/05/25(日) 23:57:36.13 ID:

勇者「…………なんでもない、この世界の産みの親である魔王様を」

魔王「待て、その魔王様というのを止めよ」

勇者「何故だろうか?」

魔王「むずがゆくてかなわん」

勇者「この伝承は本当の事なの?」

魔王「……屈辱ではあるが、大まかにはその通りである」



従者「…………グッ!ブフッ!」

ハッハッハッハッ……

にゃーん……



貴様等、後で覚えておくが良い。



468:2014/05/25(日) 23:58:36.52 ID:



勇者「そう、ともかく私達のところでは、貴方は始原の神として崇拝される、それを盛大に称える祭りがあるわ」

勇者「それを『魔王祭』と言う」



魔王「なんだその禍々しい祭りの名は……どのように祝うのだ」

勇者「世界中であらゆる料理が振舞われる……そして人々は、意中の相手に料理を送る、そうしてカップルが生まれる」

魔王「なんだと?」


勇者「『胃袋を掴んだもの勝ち』、この話にはそういう陰の教訓がある」


魔王「う、嘘を申すな」

勇者「嘘ではない。私もたくさんもらった。ちなみに元々はプリンを送る日だった。おいしかった」

魔王「なんだと……では、貴様はそれに応えたのか?」




勇者「…………ミルク粥だったらやばかったかもしれない」



469:2014/05/25(日) 23:59:12.75 ID:

魔王「なんだと?」

勇者「なんでもない、私は応えていない。この使命もあったし」

魔王「む……やはり貴様も刺客として放たれたか?」


勇者「そうね、王様と神様はこの豊かな土地をどうしても手に入れたいみたい」

勇者「けど民衆も教会も貴方を崇拝している。だから私達が暗殺者となって送り込まれているの」


魔王「繁栄を求めるは生物の性である。罪ではない」

勇者「そうね、でもそれで破滅を呼び込むのは無知による罪、あの人たちはそれがわかっていない」

魔王「では、何ゆえ貴様はここにいる、我を殺すために来たのではないのか?」
470:2014/05/25(日) 23:59:48.06 ID:


勇者「…………された」


魔王「なんだと?」



勇者「……追放されたのよ」



魔王「……なんだと?」

勇者「……フフッ」

魔王「何故笑う?」

勇者「貴方、さっきからそればっかり」

魔王「馬鹿者、笑い事ではない、何故追放された?話の流れを聴けば、貴様が追放されるような話では無いではないか」




勇者「殴っちゃった」




魔王「…………は?」

勇者「殴っちゃった、王様も神様も、でもあの人たちでは私は殺せない。それで追放された」

魔王「…………」

472:2014/05/26(月) 00:01:59.56 ID:
ごめんなさい。今日はここまでとします。

一気にエピローグといきたいですが、後日談まで書いてたら多分終わらないので、また明日にでも。
474:2014/05/26(月) 00:09:39.95 ID:
乙です
賞讃の言葉は完結まで取っておきます
478:2014/05/26(月) 02:03:59.46 ID:
従者の変わり様に笑った
479:2014/05/26(月) 15:22:53.37 ID:
魔王様が女……!
これは笑う、そりゃ笑う

なにげに最初っから出てる従者、ちょっと影薄いけど好きだわー
485:2014/05/26(月) 23:22:52.53 ID:

勇者「……正確に言うと、命を狙われている。刺客の人を返り討ちにするのは忍びないので逃げてきた」

魔王「大馬鹿者が、何故そんなことをした」

勇者「この侵攻の理由は土地が足りないからではない」

魔王「ほう、何故か?」


勇者「人間の領域は荒れている。無計画な森林伐採、無秩序な工業生産、全部自業自得」

勇者「神様も神様、それで自分を崇める人間がいずれ滅びるかもしれないからといって、自分の産みの親を殺そうとするだなんて許せない」


魔王「だから殴ったのか?」

勇者「殴った、しこたま」

魔王「無計画で無秩序なのは貴様であろうが」
486:2014/05/26(月) 23:24:13.24 ID:

勇者「どうしても許せなかった」

魔王「……それは何故だ」



勇者「……私の知る貴方はこの世界にいないと諦めていたけど」



魔王「…………何?」



勇者「貴方が出した回答を継いだ人を傷つけるなんて、私には見過ごせない。そう思ったの」



魔王「…………貴様、何故」




勇者「……本当に、本当に、久しぶり」




魔王「馬鹿な、何故、記憶が」




勇者「少し……痩せた?」




魔王「………………」
487:2014/05/26(月) 23:25:28.58 ID:

勇者「本当に、世界を創りなおしたのね……」

魔王「……そうだ、今、この時が、再び訪れるよう、戦い続けたのだ」

勇者「つらくなかった?」

魔王「……もう時を数えるのも億劫である。四十億年だぞ?」

勇者「それでも戦い続けた」

魔王「ヨミも、従者も、ハナもだ」

勇者「みんなあの時のまま」

魔王「体だけはな、存在は既に高次のモノだ。我に付き合ってくれると、本当に無理をさせた……」

勇者「皆、久しぶり」



従者「……息災のようでなによりだ」


ワンッ!ワンッ!クゥーン!クゥーン!


にゃー……

488:2014/05/26(月) 23:26:26.68 ID:

魔王「コヤツ等は最早、神の領域である、ヨミとハナなど、獣王共に崇められている」

勇者「そう……みんな、変わったのね」

魔王「貴様は……何故変わっていない?」


勇者「よくわからない、けど……こうして産まれた」


魔王「何?」


勇者「魔界で過ごした記憶と、経験したこと、その記憶だけ引き継いで最初からやり直していた」


魔王「…………」
489:2014/05/26(月) 23:27:41.03 ID:

勇者「でも、世界も、周りで起こったことも少しずつ違っていて、ここは私の知る、貴方がいる世界では無いと思っていた」

魔王「……何故だ?」

勇者「魔王様の伝説。そしてその伝説では魔王は女。この世界に貴方はいないものと思っていた」

魔王「む……」

勇者「もしかして、私達は未だにあの世界を壊した神様の……」



魔王「……ふむ、少し面白い」



勇者「え……?」

魔王「『あの』神共がどうこうしたとは考えづらい。最早、この世界は外の神より放たれている。我が創りなおした故な」

勇者「でも、こんなこと、神様以外じゃ」




魔王「つまり……我は、しくじったらしい」




490:2014/05/26(月) 23:28:41.24 ID:

勇者「……どういうこと?」

魔王「我は貴様の誕生を待ち、巡る命の中で再びまみえようとしていた、それがあるべき姿であると」

勇者「……否定しないわ」



魔王「……そっくりそのまま、再生させてしまったらしい」



勇者「…………え?」




魔王「つまりだな、その、我の中で貴様は、その容姿では無く、有り様であるとか、我との出来事であるとか、その記憶を下に……」

勇者「よくわからない、ハッキリと言って欲しい」

魔王「つまりだ……貴様は新たに生まれたのでなく、有体に言えば……」

勇者「?」
491:2014/05/26(月) 23:29:47.72 ID:

従者「察しの悪い女だ、つまり魔王様は貴様に会いたくて貴様の体を復元させてみたら、うっかり記憶まで……」



魔王「 従 者 ッ !! 」



従者「ハハッ!」

魔王「控えるならばそのニヤケ顔を止めよ、貴様、本当に良い性格になったな」

勇者「で……そんなことが出来るの?」


魔王「…………出来る」

勇者「…………どうして?」


魔王「我を創った神はひねくれ者だったらしい、『役割』が終わった途端、我に不可能なことは無くなった」


勇者「…………」

魔王「…………」

492:2014/05/26(月) 23:30:47.86 ID:

勇者「…………フフッ」

魔王「……笑うが良い、滑稽であろう」

勇者「いいえ、可愛くなったと」

魔王「何を言うか」

勇者「そういえば最初から可愛かったかもしれない」

魔王「何を言うか」

勇者「なにせ女の魔王として伝わるくらい」

魔王「それを言うならば貴様は男として描かれているわけであるが」

勇者「……きっと貴方が女々しいから、とって変わることに」

魔王「その貧相な胸が男と捉えられたのでは」

勇者「死ね」

魔王「死なぬ」
493:2014/05/26(月) 23:31:58.66 ID:

勇者「ずるい……これでは私はいずれ貴方達を置いて死んでしまう」


魔王「今、この時より違う」


勇者「…………え?」


魔王「良いな?ヨミ、従者、ハナよ」



従者「魔王様の決定に逆らうはずもございません」

ワンッ!

にゃーん……



魔王「良きかな、では……11101010110001100……」

勇者「……え?」



対象は我等、術式は呪い。



《堕天》


494:2014/05/26(月) 23:32:41.69 ID:

勇者「なにをしたの?」

魔王「……これで我等も巡る生命である、下僕共は元の鞘に納まったわけであるが」

勇者「どういうこと?」

魔王「これから緩やかに老いていくのだ」

勇者「どうしてそんな事を……」

魔王「決まっているであろう」

勇者「…………」





魔王「死に逝くものこそ美しいからである」





勇者「…………っ」
495:2014/05/26(月) 23:34:49.77 ID:


勇者「…………っ」


魔王「何を泣くことがある」


勇者「貴方は、変わったと、思っていた……」


魔王「…………」



勇者「けど、何も変わっていなかった……それがっ、嬉しくて、とても美しいと……」



魔王「…………さて」


勇者「…………え?」


魔王「一つ言っておかねばならないことがある」


勇者「……聴くわ」


魔王「通例でな?」


勇者「そう……」

496:2014/05/26(月) 23:36:19.82 ID:



魔王「……勇者よ、何ゆえもがき生きるのか?」



勇者「……貴方と出会って、貴方と生きるため」



魔王「っ……滅びこそが我が喜び、死に逝くものこそ美しい」



勇者「……いずれ来るその時に、貴方と共に死ねるならそれこそが私の喜び、そして……その通り、その通りだ」



魔王「…………」



勇者「私は……貴方の腕の中で息絶えたい」



魔王「…………」

勇者「…………」


497:2014/05/26(月) 23:37:59.94 ID:



ハッハッハッハッハッハッハッハッハ……

にゃーん……



従者「貴様、魔王様の言葉を遮るなど無礼であろう!」

魔王「よい、従者よ、下がりおれ」

従者「魔王様はこの言葉を考えるのに文字通り悠久の時を費やし……」

魔王「だから下がりおれと言った!」

勇者「フフッ」

魔王「貴様も何がおかしい、そんなに我が滑稽であるか?」

勇者「今日の貴方はいつもと同じ、相変わらず素直じゃない、そして少し変……けど」

魔王「…………」

勇者「その方が良いと思う」

魔王「そうか……」
498:2014/05/26(月) 23:40:39.96 ID:


………………


むかし、むかし せかいがまだおわりをくりかえしていたころ。

ひとのはいれない ふかいもり で わるい まおう と さいご の ゆうしゃ が であいました。

ゆうしゃ の はなしに まおう は むちゅうに なりました。



「いのち は めぐるんだよ」

「すこし おもしろい つづけろ」



………………

499:2014/05/26(月) 23:41:57.88 ID:


………………



「くさ を むし が たべて、 むし を どうぶつ が たべて、 そして その したい が くさ になるんだ」

「すこし おもしろい つづけろ」

まおう は すこしずつ この せかい の いのち について、しりました。



………………



勇者「ところで」

魔王「なんだ?」

勇者「最後のあの時、なんでも叶えてくれると言って叶えてもらってないことがあった」

500:2014/05/26(月) 23:43:28.95 ID:


………………


ゆうしゃ の はなしに まおう は むちゅうに なりました。



「みんな たたかっているんだ」

「わたし が いちばん つよい」

「でも きみ も ぼく も、 その きみ より よわいものたち が いないと、いきていけないんだよ」

「そんなこと が あるものか」

「きみ が たべた ぷりん は むし や どうぶつ が いないと、つくれないんだ」

「すこし おもしろい つづけろ」



まおう は すこしずつ この せかい が すきになりました。


………………



魔王「…………」

勇者「赤ちゃんが抱きたい」

魔王「……貴様のその妙な雄々しさはなんなのだ?」

勇者「失礼な、私は貞淑な妻となる」

魔王「貞淑な女は自国の王や神を拳で殴らぬ」

501:2014/05/26(月) 23:45:13.06 ID:


………………


ゆうしゃ の はなしに まおう は むちゅうに なりました。


「みんな きずな を つくるんだ」

「それは よわいからだ わたし は つよいから ひとりでもいきていける」

「でも きみ だって ひとり では うまれてこなかったんだよ」

「すこし おもしろい では わたし も おまえ と それができるのか」

「できるさ きっと できる」


まおう は すこしずつ ゆうしゃ に こい を しました。


………………



魔王「何をするか、止めよ」


勇者「貴方はすこし意地が悪くなった」


魔王「魔王ゆえな」


勇者「でも、そのほうが良い……」


502:2014/05/26(月) 23:46:33.47 ID:



魔王「……我も、貴様に願いがあった」

勇者「貴方が?」

魔王「左様である……これを欠かすことまかりならぬ」



………………


ゆうしゃ と せかい に まおう は むちゅうに なりました。


「わたし は おまえ の ことばかりかんがえてしまう いえ どんな まほう を つかった」

「きみ は ぼく の ことが すきなの?」

「わからない けど いっしょにいて たのしい、 あたたかい」

「ぼく は きみ が すきだよ」

「そうか ところで ぷりん は まだか」


………………

503:2014/05/26(月) 23:47:15.59 ID:


魔王「プリンが食べたい」


勇者「…………」


魔王「笑うでない」


勇者「ミルク粥が食べたい」


魔王「…………」


勇者「笑わないで」


504:2014/05/26(月) 23:48:44.61 ID:



従者「……二人とも素直なのかそうでないのか」


にゃーん……


従者「いずれにせよ、童子のような王夫婦だ……好ましいがな」


ハッハッハッハッハ……



従者「ところで、あの絵本、伝承を基に書かれたもの、とのことだが……」

従者「人の入れぬこの魔界の話が、誰の手を渡って伝わったというのか」

従者「ましてや、始原の時の話を……」



従者「……まったく、物好きな傍観者もいたものだ」



にゃーん……

ハッハッハッ ワンッ


505:2014/05/26(月) 23:50:10.06 ID:



これは むかし、むかし の はなし。

せかい が まだおわりをくりかえしていたころの はなし。



魔王「それが良いなら、いつでも、いくらでも作ってやる、しかし」



ひとり の まおう と、



勇者「それでよければ、いつでも、いくらでも作ろう、けど」



ひとり の ゆうしゃ が、





魔王「我と共に生きてくれ」

勇者「私と共に生きて欲しい」







せかい を あいした はなし。






506:2014/05/26(月) 23:51:42.32 ID:



  魔王「死に逝くものこそ美しい」 女勇者「その通りだ」



 
               END



507:2014/05/26(月) 23:54:15.59 ID:
くぅ~疲れました!駄文失礼しました。

後日談も出来れば少しだけ書こうと思いますが、この話は一旦ここで終わりです。

最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

展開に納得がいかなかったり、ゾーマ様のセリフを丸々持ってきたことに憤慨することも多々あったかと思います。
それに関しては誠に申し訳ない。

たくさんのレスありがとうございました。少しでもお楽しみいただけましたようでしたら幸いです。
508:2014/05/26(月) 23:55:10.92 ID:
乙!面白かった!
子供に振り回される魔王の後日談も見たいところ
509:2014/05/26(月) 23:56:17.07 ID:

くそおろしろかった
510:2014/05/26(月) 23:58:19.58 ID:
えんだあああああああ!
乙、久しぶりに続きが気になってしょうがないSSだった
後日談も期待
512:2014/05/27(火) 00:05:13.83 ID:
乙!
最高だった 本当に最高だった
>>1 ありがとう ずっとずっと、何度でも読みたくなる素晴らしい作品でした
516:2014/05/27(火) 00:59:36.22 ID:

久々に更新が楽しみで仕方無いssだった!
プリン食べながら後日談待ってる
519:2014/05/27(火) 01:25:57.36 ID:
乙!
ぽかぽかするいい話だった
520:2014/05/27(火) 01:40:06.04 ID:
久しぶりにSS読んで電気走った
泣いた
528:2014/05/27(火) 22:03:24.30 ID:

想像よりはるかに多い感想のレスに震えが止まらない >>1でございます。

本当にたくさんのレスと感想ありがとうございます。
不肖、私、歓喜に耐えません。

後日談に関しましては、書き溜めてから投下いたしますので、よろしくお願い申し上げます。


魔王・勇者SSは初めてでしたが、書いてよかったなと思ってます。

今週末には投下できればと思いますので、お付き合いいただけるは良しなにお願いいたします。


ありがとうございました。
529:2014/05/27(火) 22:10:33.66 ID:

死に逝くものこそ美しい、良い言葉です
533:2014/05/28(水) 16:10:19.38 ID:
ハッピーでよかった・・・いろいろ考えさせられる作品だった。乙!
541:2014/05/31(土) 20:57:53.45 ID:

*************


ニア エピローグ


*************
542:2014/05/31(土) 20:59:18.94 ID:




《 魔王城 魔王・勇者 結婚式 》




機械王「王ヨ、ソシテ王妃ヨ」

勇者「機械の人!ひさし……いいえ、初めまして、そう、私がこの人の妻」

魔王「機械王よ、良くぞ招きに応じた、この我自ら褒め置こう」

勇者「もう、素直にありがとうと言うべき」

魔王「む……」

機械王「構イマセン、ムシロ私ナドガ来テヨカッタノカ」

魔王「何を言う、貴様、我の婚姻を祝えぬと申すか」

勇者「機械の人、今のは『そんなことは無い、大いに楽しんでくれ』と言っている」

魔王「む……」
543:2014/05/31(土) 21:00:20.89 ID:

機械王「ナント、王妃ハ翻訳デバイスヲ搭載シテオラレルノカ」

勇者「機械の人、その言葉の意味はよく解らないけれど、卑下しなくて良い、私も貴方に祝ってもらえて嬉しいわ」

機械王「ソレハナニヨリ、ダガ私ハアナタ方トハ違イ、交合スルコトデ子ヲナスコトヲ知ラナイ」

勇者「こ……ッ!?」

魔王「言葉を選べ貴様」

機械王「申シ訳アリマセン、シカシ、ソレガ不適切トワカラヌ程ニ、コノ婚姻ノ意味ガ見出セナイノデス」

勇者「機械の人……」

機械王「ソンナ私ガアナタ方ヲ祝ッテモ良イモノカト……」



魔王「……王として貴様を導こう、ゴーレムの長よ」


544:2014/05/31(土) 21:01:22.19 ID:

機械王「魔王様……」

魔王「歩み寄るのだ、我は知っているぞ、巡らぬ生命にあらずとも、我等は理解し合い、歩み寄れることを」

機械王「魔王様、シカシ我等ハ、アマリニモ他ト在リ方ガ違イマス、ソモソモ、コノカラダノ分子構造カラ……」

勇者「体が機械や石なら、いくらでも体を取り替えられるということ」

機械王「王妃ヨ……」



勇者「体の構造が違うなら、私達の体を模して機械で造ればいいじゃないか、そうすれば少しでも歩み寄れる」



機械王「…………ッ!!」



魔王「お前は何を言っておる、出来るはずがあるまい」

勇者「機械の人なら出来る」



機械王「タッタ今、私ニ電流ガ走リマシタ、ア、セン絡シタワケデナク」


この後、ゴーレムの技術を転用し、魔力を原動力とした人造臓器や、人型駆動ゴーレムが魔王軍に編成されたり、

機械王が女性型外殻に仕様変更し、女王になったりしたのはまた別の話。
545:2014/05/31(土) 21:02:48.78 ID:



*************




菌糸王(小)「「「見なさい、ああして我等の眷属が下等種族共を支配する様を」」」

キノコ屍人「アウー」



「酒だぁっ!!酒こっちにまわせぇ、うひゃひゃひゃひゃ!」

  「おい!こっち向くな!吐くなよ!?吐くなよ!?」
  
「うぼろろろろろろ……」

      「馬鹿共がぁっ!今日は控えろって言っただろうが!消し炭にされてーか!?」



菌糸王(小)「「「愉快極まりない、やはり我等こそ至高の種族であると言えましょう」」」

キノコ屍人「アウー、アウー」
546:2014/05/31(土) 21:03:59.39 ID:


魔王「菌糸王……貴様、そのナリはどうした?」

菌糸王「「「これは魔王様、この度のご成婚、お慶び申し上げます」」」

魔王「良い。貴様もよくぞ招きに応じた」

勇者「キノコの人……本当に原木に身を移したの?」

菌糸王「「「これは王妃様、初めまして。私が菌糸を統べるものにして魔王様一の下僕、菌糸王でございます」」」

勇者「相変わら……いえ、丁寧な人ね、今日はわざわざありがとう」

菌糸王「「「いえ……」」」

魔王「この者の功労はまことに優れたものである」

勇者「そうなの?」

菌糸王「「「魔王様……!」」」
547:2014/05/31(土) 21:05:35.06 ID:

魔王「その通りだ、酒精に限らず、人の領域にある万能薬、発酵による食料の長期保存、コヤツの力がなければ為しえなかったことは多い」

勇者「流石はキノコの人ね、貴方の眷属にはいつもお世話になっている」

菌糸王「「「……遂に、遂に証明された、軽視され続けた我が一族が、遂に至高の種族であると!魔王様!王妃様!」」」



魔王「特に 『食卓に並ぶこやつらの多彩さ』 は他の追随を許さぬ」



菌糸王「「「……え?」」」

勇者「成程、でも貴方は知らないだろう、納豆、醤油、味噌、これらはこのキノコの人の眷属がもたらす最高の業と言ってよい」

魔王「む……なんだそれは、察するに発酵させたものか?」

勇者「そう、特に醤油は万能の調味料と言ってよい、あれなくしては料理は語れないほどに」

魔王「なんということだ、我は知らなかった」
548:2014/05/31(土) 21:06:59.94 ID:


魔王「なんということだ、我は知らなかった」

勇者「な、嘆くことは無い……こ、これからは、その、毎日でも作ってあげる……」

魔王「む……そうか」

菌糸王「「「……あの」」」

勇者「いつもありがとう、キノコの人」

菌糸王「「「え、ああ、どうも」」」

勇者「貴方がもたらす豊かさはこの人の言うとおり、他の追随を許さないかもしれない」

菌糸王「「「…………」」」



勇者「 こ れ か ら も よ ろ し く 」



菌糸王「「「……でございましたか?」」」

魔王「……何?」




菌糸王「「「美味でございましたかっ!?」」」



550:2014/05/31(土) 21:08:59.54 ID:



*************



獣王「ハナ様……今日は一段とお美しい毛並みだ、私などの眼には毒でございます」


ハッハッハッ ワンッ


獣王「そ、その、ハナ様は巡る生命にお戻りになられたと聴き及びました……」


ワンッ


獣王「どなたか……つがいになると決められた者がいるのであろうか……」


ハッハッハッ……


獣王「不肖ながら、私は一族の王として最も優れた力を持ちます、知恵も、数多在る獣に属する魔の中で、私を越える者はいません!」


ハッハッハッ……



獣王「わ、私は、あ、貴方様と……っ!」


551:2014/05/31(土) 21:10:18.79 ID:


にゃーん……


獣王「ッ!?ヨ、ヨミ様!?」


ハッハッハッ


にゃーん、にゃーん


獣王「な、なりませぬ、またそのようにお戯れを!ああ、恐れ多いのですが、私の肩に昇らないで頂きたい!」


にゃーん……


獣王「ああ……ヨミ様、なんと、なんとそのような……」


ワンッ! ワンッ!


獣王「ああ!?ハナ様、お待ちください!ハナ様!ハナ様ッ!!」






勇者「…………」

魔王「…………」
552:2014/05/31(土) 21:12:02.36 ID:

勇者「まさか、あんな事になっているとは」


魔王「あの獣王は誇り高くてな、我の言うことでも中々に厳しく『我』を貫くのだが、ハナとヨミには頭が上がらぬ、下がりっぱなしである」


勇者「彼女達はあの人たちにどのように見えているのだろうか」


魔王「後光が差すほどに美しくあるらしい、《堕天》の後でもそれは変わらぬのであろうな、なにせ我と共に四十億の年月を越した獣である」


勇者「彼女達が一番可愛く見えるのは親の贔屓目のようなものであると思っていた」


魔王「親馬鹿というやつか」


勇者「馬鹿とは何事……でも幸せになってほしい」


魔王「我は認めぬぞ」


勇者「貴方こそ親馬鹿」


魔王「馬鹿とは何事か」

553:2014/05/31(土) 21:13:17.85 ID:



*************



妖精王「やーやーお二人さん!元気ー?結婚おめでとー」

魔王「貴様こそ良くぞ我が招きに応じた、褒めて遣わそう」

妖精王「相変わらず可愛い魔王様だねー」

勇者「妖精の人、今日はありがとう」

妖精王「アンタがお嫁さん?羨ましいねー、魔王様はアタシが狙ってたのにさ……でも全然なびかねーの」

魔王「…………」

勇者「そうなの?」

妖精王「そうそう、でもアンタ美人だしさ、大人しく譲ることにするさ……けど」

勇者「……何?」
554:2014/05/31(土) 21:15:31.58 ID:

妖精王「アンタ胸が小さいね?揉んで大きくしてあげよーか?」

勇者「死ね」

妖精王「なんだとぅ!?」

魔王「よさぬか、それより貴様……わかっているのであろうな?」

妖精王「何が……ああ、好きだねー魔王様も……」

勇者「 ? 何のこと?」

妖精王「いやー、伝承にある始原の神にして魔の頂点が実在したと知ったときは驚いたもんだけどまさか、他の伝承まで本当だったとは……」

魔王「疾く、差し出すが良い」

妖精王「はいはい、……オラァ、野郎共!アレを出せッ!!」



妖精族「「「「「 応ッ!! 」」」」」



勇者「……何が始まるの?」


555:2014/05/31(土) 21:17:37.29 ID:



*************



《 魔王城 玉座の間 婚姻の儀 》



女賢者「えーコホン、それでは略式ながら、式を執り行いたいと思います、皆様ご静粛に」



最後に産まれた勇者の連れ合いである賢者が、式の開始を宣言する。

先程までの喧騒が嘘のように静まり返り、数多の魔達は跪き、皆一様にこれから行われる神聖な儀式の行方を見守っていた。

その存在一つで数多の命を統べる各界の王ですら、皆跪く、それは一組の男女に対してである。



始原の神にして魔の頂点に立つ存在。

始原の物語に語り継がれる、生命の恩恵を受けた伝説の勇者。



終わりにして始まりの物語に語り継がれ、その実、遂に結ばれなかった二人は今、共に生を歩む絆を結ぶ。

556:2014/05/31(土) 21:19:19.13 ID:


女賢者「汝、魔の頂点に立つ者よ、汝はいついかなる時も妻となる者を愛し、敬い、死が二人を分かつまで歩みを共にするか」



魔王「是非もなし、四十億の時を我はそうして過ごした。そして否である、我は死して尚この女を愛そう」



誓いを立てる象徴はこの場に無い。人の領域ではそれは、愛の女神像の前で、もしくは絆の神、黒き猫神の神殿で、それぞれの神に対し誓う。

だがこの二人は違う、己に、相手に誓うと心に決めたのだ。



女賢者「汝、生命を知る者よ、眼に炎を宿した真の星の子よ、汝はいついかなる時も夫となる者を愛し、その生を支えることを誓うか」



勇者「誓おう、私はこの人を死んでも愛すると。そしてそれは違う。支えるのではない、共に戦おう、血の一滴まで尽き果てたとしても私は戦い続ける」


557:2014/05/31(土) 21:21:06.23 ID:

あるのはその二人の絆を象徴するもの。
数多の生命の結晶。
天に、地に、海に、あらゆる生命の恩恵を集め創られた、それは最早、塔と言っても過言でもない。


白き巨塔。ただし甘味よって造られた……である。


魔王の勅命によって、長きに渡り甘味を研究し続けた妖精族が技の粋を結集したものである。



女賢者「では、この場の皆に問う。彼の者達の誓いを聴き、異議のある者は?」


「「「「「 無しッ!! 」」」」」


女賢者「……よろしい、それでは二人とも、誓いを……」


558:2014/05/31(土) 21:21:39.93 ID:
>>105の女賢者もちゃんと転生(?)してたのか!
よかった
559:2014/05/31(土) 21:22:46.50 ID:


暗黒の如き黒き装束を纏った男は花嫁のヴェールをたくし上げ、その顔を認める。



男はかつてその眼に宿る炎を忌々しく思った。

嫉妬した。

そして恋焦がれた。

こうして見えることを待ち焦がれた。



眩いばかりの白き装束を纏った女もまた、男の眼に宿る炎を認めた。


女はかつてその炎を灯した。

美しく思った。

そして恋焦がれた。

こうして見えることを待ち焦がれた。



しかし、



560:2014/05/31(土) 21:24:42.17 ID:



魔王「……貴様、今の言葉はなんだ?」


その荘厳な雰囲気の中にあって男は不満を洩らす。


勇者「……貴方こそ今の言葉はどういうつもりだろうか?」


そして女も剣呑な返答を返す。



魔王「まるで貴様が 囚われの姫君を救う英雄 のようではないか、その雄々しさは一体なんなのだ?」

勇者「まるで貴方の方が 恋焦がれた乙女 のようじゃないか、その可愛らしさは一体なに?」



何時までたっても誓いを示さぬ二人の様子を怪訝に伺う参加者達に動揺が走る、あってはならない想像が駆け巡る。


561:2014/05/31(土) 21:25:50.46 ID:


魔王「言うではないか」

勇者「貴方こそ」

魔王「なれば我こそが夫であると証明してやろう」

勇者「やれるものならやってみるといい……『少し面白い』」

魔王「貴様……」



女賢者「あ、あの……」



そして動揺が走る会場を収めるため、当人達の様子を伺う女の賢者の言葉が引き金となった。



魔王「ふむ……っ」

勇者「ん"っ!?」

女賢者「きゃっ……!?」



それはあまりに粗暴、誓いの為のそれとしてはあまりに荒らか。

562:2014/05/31(土) 21:27:45.65 ID:


純白の衣装を破りかねぬほど力強く引き寄せ、
顔をもたげ口を貪る様は会場に居合わすすべての存在の眼を引き寄せ、
同時に満月のごとく丸く変化させ間抜けな顔を晒させる。



魔王「んー……」

勇者「ん"ん"っ!ん"ーっ!?」

女賢者「す、凄い……っ」



ゴクリ、と唾を飲み込んだのは誰のものであろうか。

瞳を潤ませ、新郎の胸を力なく叩く花嫁の腕はやがてダラリと垂れ下がり、
全身に至ってはこのまま引き寄せるために腰に廻した男の腕が離れればへたり込んでしまいかねぬほどに弛緩していた。



魔王「っ……ふむ」

勇者「ぷはっ……」


563:2014/05/31(土) 21:29:03.34 ID:


女賢者「…………」


機械王「…………」


菌糸王(小)「「「…………」」」


獣王「…………」


妖精王「…………」






従者「…………グッ!?…………ブフッ!…………カハッ!?」

ハッハッハッハッハッハッハッハッハ……

にゃーん……





「う…………」



564:2014/05/31(土) 21:29:57.52 ID:



「「「「「ウオオオオオォォォォォォォッッッ!!!!」」」」」



魔王「ふむ……悪くない。もっと早くにこうしておくべきであったな」

勇者「あ、あな、貴方……ッ!?」

魔王「……愛しておるぞ、馬鹿者」

勇者「……は、はいっ」



「「「「「ウオオオオオォォォォォォォッッッ!!!!」」」」」



心を持たぬゴーレムも、その個が満たされたことを祝福した。

つがいの概念を持たない菌糸も、新たな命の兆しを祝福した。

なにより絆の重みを知る獣も、新たなつがいの誕生を祝福した。

性の概念が曖昧な妖精も、二人の深い想いを祝福した。




そして……



565:2014/05/31(土) 21:31:50.65 ID:



*************



《 一年後…… 》



う、ぐうううううううううっ!?痛いいいぃぃぃっ!!

勇者様!頑張って、息を大きく吸って!

意地見せろぃ、人間ッ!もう頭見えてんぞ!!

奥方様!今です、息んで!!





魔王「あれは何故苦しんでおる?我はどうすればよい?何を滅ぼせばよい?」

従者「産みの苦しみを創り出した神でしょうか?直ちに出陣の準備を……」

機械王「愚カナ神共メ、自分達ガナニヲ敵ニ廻シタ理解シテイナカッタラシイ」

菌糸王(小)「「「全力でございますか?天界を我が苗床に変えて差し上げましょう」」」

566:2014/05/31(土) 21:33:23.88 ID:

獣王「待つのだ貴公ら、産みの苦しみは我等の生物の進化による必然で……」

従者・機械王・菌糸王「「「ア"ア"ッ!?」」」



ガチャ



魔王・従者・機械王・菌糸王・獣王「「「「「ッ!?」」」」」



妖精王「うっせぇんだよ!野郎共と種無しがぁっ!!うろたえてんじゃねーッ!!!!」



魔王・従者・機械王・菌糸王・獣王「「「「「……」」」」」


妖精王「次ぃ邪魔しやがったらマジでぶっ殺すぞっ!?」


魔王・従者・機械王・菌糸王・獣王「「「「「……ハイ」」」」」



妖精王「チッ……情けねぇ」

バタンッ



魔王・従者・機械王・菌糸王・獣王「「「「「……」」」」」


567:2014/05/31(土) 21:34:35.82 ID:



魔王「……血が」



従者・機械王・菌糸王・獣王「「「「ッ!?」」」」


魔王「妖精王の服に血が付いておった……アレは死ぬのか?馬鹿な……させぬ、あってはならぬ……」


従者「魔王様……何を?」



魔王「…………」




ウオンッ!!




魔王「……ハナ」


にゃーん にゃーん


魔王「……ヨミ」


568:2014/05/31(土) 21:35:52.14 ID:


我は何を考えていた。

世界を操り、この出産を安楽なものにしようと?

……生命を冒涜する気か?


我はあの女を、これから、否、今まさに産まれんと戦っている、まだ名も無い戦士の最初の戦いを侮辱する気か?

否、否である。



魔王「我が妻はこの星、最強の女である、そして産まれてくる我が子はこの星、最強の存在となる戦士である」

魔王「敗けるはずがあるまい、そうとも、実に容易い戦である」

魔王「我は信じる、我妻を、我が子を。この世界と、運命と戦い、それを降し、アヤツ等の凱旋する姿が見える」

569:2014/05/31(土) 21:36:57.09 ID:

強がりである。

震えが止まらぬ。

この我が恐怖に震えているというのか、他を信じるとは斯様に恐ろしいものなのか。



いつしかの、あの女が塵と消えた記憶が蘇る。

脳に焼き鏝を当てられたような、心臓を抉られたようなあの痛苦を、我は再び味わうのか?

……否、否、否、否である。



魔王「我は信じる。あの共が敗けるはずが無い」



そうとも、我は、もう独りでは無いのだ。

570:2014/05/31(土) 21:39:16.30 ID:



*************



魔王「…………」



う、あああ、あああああああああっ!!

何刻たった?あの女の苦しむ声を聞きだして、どれ程の時が過ぎた?

まだか?

それとも……





……おぎゃぁ!おぎゃぁ!



勇者様!産まれました!産まれましたよ!!

やるじゃねーか人間っ!!よくやったーッ!!

奥方様!お世継ぎですっ!元気なお世継ぎですよッ!!





魔王「ッ!!!!」



571:2014/05/31(土) 21:40:45.15 ID:


蹴破るが如く扉の向こうへと駆け込む。

この時にあっては誰もそれを咎めない。皆一様に慈愛に満ちた表情でこちらを見やる。
済まぬ、貴様等には礼の施しようが無いほどに借りを作った。


女賢者「魔王さんっ、早く、勇者様のところにっ」


だが今この時は、


勇者「…………勝ったよ」

魔王「…………よくやった」


疲れ果てた顔でそう微笑む女。かつて、そして今ですら全てを投げ出しても惜しくない、愛おしい我が妻。


だが、そんな言葉しか出てこなかった。


これが我妻である。

なんと雄々しい、なんと美しい、なんと尊い。

572:2014/05/31(土) 21:41:54.56 ID:



おぎゃぁ!おぎゃぁ!



魔王「……よくぞ勝利した……流石は……我の子である」


侍女「……魔王様っ」



侍女より、布に包まれた我が子を抱き寄せる。




これが我が子である。



573:2014/05/31(土) 21:43:00.07 ID:



魔王「この者は何故泣き喚いておる、病を得ているのか?」

勇者「それが正常なの、泣き叫びながら呼吸をする」


そうしてまで生きようとしているのか。
なんと猛々しい。



魔王「この者は何故はっきりと視えぬ。いかなる幻術を唱えておるのか?」

勇者「貴方の眼が涙で濡れているの。貴方は喜んでいるの」


眼が霞むほどにまでか。
なんと美しい。



魔王「この者は何故このように軽い、空腹であるのか?」

勇者「そうかもしれない、そしてそれは貴方がこの子を大切に思っているからこそ、そう思えるの」


魔王であった、始原より再生させたとはいえ、数多の生命を奪ったこの我がか。
なんと尊い。


574:2014/05/31(土) 21:44:28.72 ID:



魔王「この者は何故、我に似ている、そして何処か貴様にも似ている」


勇者「それはこの子が貴方と私の子だから、そうして……」


魔王「そうして……」




勇者「生命は巡るのよ」




魔王「そうか……そうか……っ」



575:2014/05/31(土) 21:45:39.33 ID:



始原の神と崇められた我にして、全く知らぬ新たな命よ、星の申し子よ、戦士にして勇者である我の子よ。



この我自らが、



貴様に名をくれてやる。



恐れ多いことであろう。



願わくば、この名を持って……




魔王「今日より貴様は 『…………」




576:2014/05/31(土) 21:47:57.03 ID:



  魔王「死に逝くものこそ美しい」 女勇者「その通りだ」

             エピローグ END



577:2014/05/31(土) 21:48:58.91 ID:
感動した
言いたいことはたくさんあるけれどこの感情は言葉に出来ない

盛大な乙を
579:2014/05/31(土) 21:55:47.23 ID:
最大級の乙を>>1に贈ります
ありがとう!!!
582:2014/05/31(土) 22:02:17.39 ID:
このSSは何故はっきりと視えぬ。いかなる幻術を唱えているのか?
583:2014/05/31(土) 22:04:42.80 ID:

新しい生命が生まれて終わりってのはこのSSの終わりにふさわしいと思ったけど
子供生まれるのが挙式から一年後って二人とも頑張りすぎですね

>>583 
ありがとうございます。やっぱり早すぎでしたかね?無理に年数設定しなくてもよかったかもしれません、ありがとう!! 
584:2014/05/31(土) 22:10:50.16 ID:
ヨミとハナはメスだったのか……

良かったぞ乙
586:2014/05/31(土) 22:16:40.25 ID:
>>584 
ありがとうございます。ハナはともかくヨミは名前の元ネタ的にも男の子ですね、このSSではヨミは女の子のつもりでした!
590:2014/05/31(土) 22:35:20.78 ID:
素晴らしく面白かったです
出産のくだりは胸に迫りました
次回作も期待しています
591:2014/05/31(土) 22:41:54.67 ID:
>>1
泣きました。
ありがとうございました。
578:2014/05/31(土) 21:54:09.56 ID:
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
これにてHTML化を依頼しておこうかと思います。


ここ最近あげたのSSで、ここまでレスを頂くことがなく、本当に恐れ多い限りです。

当初、勇者に米談義をさせたいが為にスレを立てたら何故かこうなりました。
本当に不思議な限りです。

設定も中々解消できていないところもあるけれど、書いてて私も楽しく有りました。

また>>1のSSをどこかでご覧になった際は気軽にいじってやってください。


本当にありがとうございました。


599:2014/06/01(日) 00:50:07.55 ID:
乙乙
今まで見てきたssの中でトップクラスの面白さだった
次のssにも期待してる
607:2014/06/01(日) 14:57:03.33 ID:
ほんとなんか、良かったんだけど良すぎて感想の言葉が出てこない。
とにかく感動をありがとう、乙!
612:2014/06/01(日) 20:06:25.16 ID:
今読み終わった
めちゃめちゃ感動した、最高のSSTOP3に入った
そして結婚も悪くないなと思った。ほんっと、ほんっっっっっっっとよかったです!
乙!!
592:2014/05/31(土) 22:42:34.56 ID:
《乙》の極大呪文、それを遥かに超える乙である。

もはや言葉が出ないほど良いSSだった
595:2014/05/31(土) 22:57:47.46 ID:
ありとあらゆる称賛の言葉でも足らないほどの
本当に本当に素晴らしい作品をありがとうございました
胸の深いところに強く響きました
元スレ: