1:2017/08/30(水) 21:46:07.32 ID:
第一話『ある夫婦』



― 自宅 ―

嫁「あなた、お弁当」

暗殺者「お、サンキュー!」

暗殺者「じゃ、行ってきます」

嫁「行ってらっしゃい」

嫁「あ、そうそう。浮気したら許さないから」

暗殺者「ハハハ、するわけないだろ。こんな職業で」

嫁「…………」

2:2017/08/30(水) 21:49:34.56 ID:
― 電車 ―

ガタンゴトン…… ガタンゴトン……

暗殺者(毎日毎日、満員電車に揺られ……)

暗殺者(お国のために、ひっそりこっそりと暗殺稼業……)

暗殺者(暗殺者もつらいよっと)

暗殺者(お、席空いた!)シュザッ

会社員「うわっ!?」

暗殺者(ラッキー、これで20分は座れる)

会社員(今、この人……メチャクチャ速かったぞ……)
5:2017/08/30(水) 21:52:20.10 ID:
期待
6:2017/08/30(水) 21:52:45.50 ID:
『暗証番号を入力して下さい』

暗殺者「5648、っと……」ピッピッピッピッ

『お入り下さい』

ウイーン…

暗殺者(ったく、なんなんだよ。暗証番号“5648(コロシヤ)”って)

暗殺者(もう何年も変えてないし、そろそろ変えた方がいいんじゃないかな。セキュリティ的に考えて)
7:2017/08/30(水) 21:55:21.92 ID:
― 暗殺組織・本部 ―

暗殺者「おはようございまーす!」

同僚女「おはよ!」

後輩「ちいーっす!」

課長「おはよう」

課長「結婚生活はどうだね?」

暗殺者「ボチボチってとこですかねえ」

後輩「ふひひ、毎晩ベッドの上じゃギシアンッスか?」

暗殺者「うるせえ、ナイフで刺すぞ。だいたいうちはベッド派じゃないしな」

同僚女「あーあ、あたしがアプローチする前に結婚しちゃうなんてなぁ~」

暗殺者「ふん、そんなつもりなかったくせに」

暗殺者(さてと、午前中はこないだの任務の報告書を仕上げるか)
8:2017/08/30(水) 21:58:48.95 ID:
プルルルル…

課長「はい、かしこまりました。すぐ処理いたします」

課長「暗殺者君、仕事を頼まれてくれるかね」

暗殺者「どんな仕事です?」

課長「誘拐犯の暗殺だ」

課長「ある女子大生を長年ストーカーしてたらしいんだが、ついに暴走して誘拐に及んだらしい」

課長「で、今ある雑居ビルの一室にたてこもっているんだ」

暗殺者「そんな奴相手にウチが動くんですか? 警察に任せればいいんじゃ……」

課長「ところがその誘拐犯、体にダイナマイトを巻いてるらしくてな。いつ自爆してもおかしくないんだ」

暗殺者「とんでもない奴ですね……」

暗殺者「分かりました。すぐ行ってきます」ガタッ

課長「下らん仕事だが、殺運を祈ってるよ」
9:2017/08/30(水) 22:01:28.08 ID:
― ビル ―

誘拐犯「さぁ、一緒に天国に旅立とう!」

女子大生「ひいぃ……お願い、あなたと付き合うから、自爆なんかしないで……」

誘拐犯「もう遅いんだよ。ボクとキミは一緒に肉片になる運命だったんだよ!」

女子大生「いやぁぁぁぁぁっ!!!」


ギィィ……


誘拐犯「?」

女子大生「?」

誘拐犯「ドアがひとりでに……? 人の気配はないし、風の仕業か――」スタスタ
10:2017/08/30(水) 22:02:18.90 ID:
いいぞ
11:2017/08/30(水) 22:04:02.52 ID:
ザクッ! ドサッ…



暗殺者(任務完了っと)

暗殺者「助けに来ました! ご無事ですか?」

女子大生「…………!」

女子大生「あ、あ、あ、ありがとうございます! よかったぁ~!」

暗殺者(おおっ、かなり美人じゃないか)

女子大生「私、もうあの男と爆死するしかないと思ってました!」

暗殺者「もう大丈夫ですから。すぐ安全な場所へお連れします」
13:2017/08/30(水) 22:07:30.05 ID:
女子大生「うっ……うっ……」

女子大生「本当に……ありがとうございました……」ガシッ

暗殺者(うおっ、抱きついてきた!)

暗殺者(ま、無理もないか……今の俺はヒーローみたいなもんだからな)

暗殺者(ここは一つ、胸の中で思い切り泣かせてやるか――)


ブブブ…


暗殺者(電話!? なんでこんな時に!?)

暗殺者「ごめん、ちょっと失礼」ササッ

女子大生「え?」

暗殺者「もしもし」

嫁『今晩、ご飯なにがいい?』

暗殺者「なんでもいいよ!」
14:2017/08/30(水) 22:09:28.70 ID:
うむ
15:2017/08/30(水) 22:10:15.24 ID:
― 暗殺組織・本部 ―

暗殺者「終わりました」

課長「ご苦労さん」

課長「女子大生は美人だったかい?」

暗殺者「ええ、まあ。あれならストーカーされるのも無理もない、というぐらいには美人でした」

課長「まさか、変なことしとらんだろうね」

暗殺者「まさか……(いいところで女房から電話きちゃったし)」

課長「ところで、嫁さんには気をつけた方がいいぞぉ~」

暗殺者「?」

課長「なにしろ、君と彼女は職場結婚で、彼女の気配を消す技術は絶品だったからなぁ」

暗殺者「なにいってるんですか、課長」

暗殺者(まさか、な……)
17:2017/08/30(水) 22:14:17.87 ID:
― 自宅 ―

暗殺者「ただいまー」

嫁「お帰りなさい」

暗殺者(いつもと変わった様子はない……思い過ごしだったかな)

嫁「お風呂? それともご飯?」

暗殺者「メシにしてくれ」

嫁「すぐ出すわ」
18:2017/08/30(水) 22:16:10.80 ID:
暗殺者「――――!?」ギョッ

暗殺者「なんで、こんな時期に餅!? しかも、ずいぶん念入りに焼いてるな、これ」

嫁「これが私の気持ち」

暗殺者「気持ちって……」

嫁「ヤキモチよ」

暗殺者(やっぱり……どこかから俺が女子大生に抱きつかれるシーンを見てたのか……)

暗殺者(俺の嫁、恐るべし……!)





おわり
21:2017/08/30(水) 22:21:29.22 ID:
第二話『夫婦喧嘩』



― 居酒屋 ―

四人「カンパーイッ!」カチンッ

課長「みんな、今日もご苦労だった」

後輩「今日もオレの吹き矢が、標的の頸動脈にチクチク命中したッス!」

後輩「標的め、泡吹いてくたばりやがったッスよ!」

同僚女「ふんだ! あたしだって、鉄爪で標的を切り裂いてやったもんね!」

課長「うむ、よくやってくれた」

暗殺者「お前ら……あまりでかい声で、血生臭い武勇伝語るなよな」

後輩「先輩にいわれたくないッスよ」

後輩「昔の先輩はなにかというと、すぐナイフ自慢してたッスからねえ。ほとんどチンピラッスよ」

同僚女「結婚して落ち着いちゃったもんねえ」クスクス

暗殺者「うるさい!」
23:2017/08/30(水) 22:23:19.47 ID:
楽しそう
24:2017/08/30(水) 22:24:07.26 ID:
後輩「ところで先輩」

暗殺者「うん?」

後輩「やっぱり嫁さんと喧嘩とかするんスか?」

暗殺者「そりゃ、まあ、たまにはね」

後輩「するんスか! どんな感じで!? やっぱり殺し合い!?」

同僚女「バカねえ、いくら殺しの仕事しててもそんなわけないでしょ」

暗殺者「…………」

暗殺者「殺し合いだったらどんなに気楽か……」フゥ…

後輩「え?」

…………

……
25:2017/08/30(水) 22:25:33.11 ID:
え?
26:2017/08/30(水) 22:28:26.39 ID:
……

…………

― 自宅 ―

暗殺者「ふんふ~ん」マゼマゼ

嫁「今日はリクエスト通り、お味噌汁よ」

暗殺者「おっ、サンキュー」

暗殺者「……って、あれ? 具は豆腐かぁ~」

嫁「あら、いけなかった?」
27:2017/08/30(水) 22:30:13.79 ID:
嫁「お豆腐、嫌いだったっけ?」

暗殺者「いや、嫌いじゃないけどさ。今日は納豆も食うから」ネバー…

暗殺者「ダブル大豆になっちゃうじゃん。それがちょっとな。あまり俺の主義じゃないっていうか」

嫁「だったら納豆食べなきゃいいじゃない……」

暗殺者「もう混ぜちゃったし、そういうわけにもいかないだろ」

嫁「じゃあ味噌汁から豆腐抜くわ」

暗殺者「そういうわけにもいかないだろ。豆腐もったいないじゃん」

暗殺者「でもやっぱり、ダブル大豆ってのはなぁ……。味噌汁の具が大根とかだったらなぁ……」

嫁「ごめんなさい」ガリッ

暗殺者「は?」
28:2017/08/30(水) 22:33:21.01 ID:
嫁「…………」ドサッ

暗殺者「え……!? 倒れた……!?」

暗殺者(まさか……毒!?)

暗殺者(奥歯に猛毒を仕込んでやがったのか!)

暗殺者(いや、俺が今すぐ口から毒を吸い出して、解毒剤打てば、こいつの生命力なら助かるはず!)

暗殺者「死ぬなァ!」ブチュッ

暗殺者「死ぬなァァァ!」ブチュッ

暗殺者「死ぬなァァァァァ!!!」ブチュゥゥゥゥゥ
29:2017/08/30(水) 22:36:22.60 ID:
嫁「う……ん……」

暗殺者「よかった……目を覚ましたか」

嫁「あなたが助けてくれたの?」

暗殺者「助けてくれたの、じゃないよ! ビックリさせやがって!」

暗殺者「今回のことは俺が全面的に悪かった! 謝る! だからもう、死のうとなんてするなよ!」

嫁「……うん」

…………

……
30:2017/08/30(水) 22:39:28.62 ID:
……

…………

― 居酒屋 ―

課長「なるほどねえ。殺し合いではなく、自害を選ぶとは……」

同僚女「あの人らしいわ……。ここで仕事してた時も、とても責任感強かったし」

後輩「たしかに殺し合いのがまだ気楽かもしれないッスねえ……」

暗殺者「まったくだよ」

暗殺者(しかもあれ以来――)
31:2017/08/30(水) 22:41:06.45 ID:
― 自宅 ―

嫁「ねえ」

暗殺者「ん?」

嫁「…………」ガリッ

暗殺者「あのさ、キスして欲しかったら、普通にそういえばいいから」

嫁「だって照れくさいじゃない」





おわり
33:2017/08/30(水) 22:48:10.39 ID:
おもしろい
32:2017/08/30(水) 22:46:49.49 ID:
第三話『護衛』



― 暗殺組織・本部 ―

暗殺者「姫の護衛?」

課長「うむ、某国の姫が極秘来日するのだが、刺客に狙われてる身らしいんだよ」

課長「なので、彼女がホテルにいる間、護衛してあげて欲しい」

暗殺者「俺らの業務内容は暗殺ですよ? なんで護衛なんか――」

課長「毒をもって毒を制す、というやつだよ」

課長「暗殺者なら敵暗殺者から人を守ることもできるはずだ!」

暗殺者「なんか名バッターなら名ピッチャーにもなれるはず、みたいな理屈ですけど」

課長「これが姫の写真、こっちはホテルの構造図だ。頭によく叩き込んでおくように」

暗殺者「分かりました。全力を尽くします」
34:2017/08/30(水) 22:48:56.76 ID:
― 自宅 ―

暗殺者「今度、姫の護衛をすることになったよ」

嫁「どんな子?」

暗殺者「これが写真だ」

嫁「ふうん、美人ね」

暗殺者「だろ? 母国じゃ結構人気があるみたいで。だからこそ狙われるんだろうけど」

嫁「浮気したら許さないから」

暗殺者「するわけないだろ……。まだ未成年だし、国際問題になっちまうよ」

嫁「…………」
35:2017/08/30(水) 22:53:31.79 ID:
任務当日――

― ホテル ―

暗殺者「はじめまして、姫」

姫「はじめまして!」

暗殺者「本日より、あなたの護衛を担当いたします」

暗殺者「申し訳ありませんが、この部屋に滞在させていただきます」

姫「きゃーっ! あなたみたいなステキな人なら大歓迎よ!」

暗殺者「ど、どうも」

暗殺者(ずいぶん軽い感じの姫だな。ちょっとビックリ)

暗殺者(さてと、ホテルの構造図は全て記憶してある)

暗殺者(敵がこの姫を狙うなら、もしも俺がこの姫を狙うなら――)

暗殺者(ホテルの通路には、護衛兵がいっぱいいるから、正面から来ることはまずありえない)

暗殺者(来るとしたら……構造上スキのある天井裏からだな)チラッ
36:2017/08/30(水) 22:55:35.39 ID:
姫「ふぅ~、暑い暑い」

暗殺者「空調の温度、下げましょうか?」

姫「そんなことしなくていいわ。脱ぐから」ヌギッ

暗殺者「え……」

姫「あ、見ちゃダメ、なんていわないから安心してねー!」ヌギヌギ…

暗殺者「ちょっ(なに考えてんだ、この姫!)」


ゾクッ・・・


暗殺者(……来た)
38:2017/08/30(水) 22:59:42.38 ID:
暗殺者「姫!」

姫「へ?」

暗殺者「私の後ろに隠れて! 絶対に離れないように!」

姫「は、はいっ!」

暗殺者(今一瞬、感じた殺気は二つ!)

暗殺者(一人は大したことなかったが、もう一人はかなりの使い手だ!)

暗殺者(おそらく俺と五分五分……!)

暗殺者(大したことない使い手をオトリに、姫を暗殺しようって手だろうが、そうはいくか!)

暗殺者(さぁ……来い! 俺のナイフで仕留めてやる!)ジャキッ


ババッ!


暗殺者(来た!)
39:2017/08/30(水) 23:02:29.88 ID:
面白いぞ
41:2017/08/30(水) 23:03:49.24 ID:
嫁「あら、あなた」

暗殺者「は!?」

暗殺者「なんでお前がここに……!?」

嫁「あなたが姫と浮気しないかどうか不安だから、天井裏に潜んでたのよ」

暗殺者(俺が感じた二つの殺気のうち、一つはこいつのだったのかよ!)

暗殺者「ちょっと待って? もう一人は? 姫を狙ってる刺客は?」

嫁「ああ、天井裏にいたから私が針でやっつけちゃった。ほら」グイッ

刺客「…………」ピクピク…

暗殺者「あらら……」

嫁「どうする? 殺る?」

暗殺者「いや……いいよ。刺客はこのまま姫の護衛たちに引き渡して、黒幕を吐かせよう」

姫「…………」
42:2017/08/30(水) 23:06:56.52 ID:
― 暗殺組織・本部 ―

暗殺者「護衛任務、完了しました!」

課長「ご苦労だった」

課長「あの刺客は、姫の人気を快く思わない勢力が放った輩だったようだねえ」

暗殺者「内輪揉めだったわけですか。一国の姫というのも大変ですね」

課長「ところで、私も後から知ったのだが、あの姫様はだいぶ惚れっぽい性格のようでねえ」

課長「君も惚れられちゃったんじゃないかね?」

暗殺者「私は大丈夫です。ですが……」

課長「?」
43:2017/08/30(水) 23:09:04.87 ID:
wktk
44:2017/08/30(水) 23:09:13.96 ID:
姫「お願い! 私の国に来て!」

嫁「あらやだ、困ったわ」

姫「お姉様と呼ばせて! 私をずっと守って!」

嫁「あなた、どうしましょ。ずっとこの調子なのよ」


暗殺者(こりゃ説得するのに、だいぶ苦労しそうだな……)





おわり
45:2017/08/30(水) 23:15:11.45 ID:
第四話『特訓』



― 暗殺組織・本部 ―

課長「今度の任務は、ある密輸船の壊滅だ」

課長「君たち三人で、泳いで船に乗り込んでもらうことになる」

暗殺者「分かりました」

後輩「お、スイミングッスね! オレ、中学ん時水泳部だったんスよ! しかも主将!」

暗殺者(意外な過去が明らかに)

同僚女「いい水着、着てっちゃおっと!」

暗殺者(おいおい)

課長「わ、私も参加しようかな……」

暗殺者(このスケベ親父が)


暗殺者(泳いで船に乗り込む、か……)

暗殺者(泳ぎには自信あるけど、水泳の特訓……ちょっとやっといた方がいいかな)
46:2017/08/30(水) 23:18:13.63 ID:
― 自宅 ―

暗殺者「あのさ」

嫁「なに?」

暗殺者「これから近所のプールに行くんだが、付き合ってくれないか?」

嫁「プール? うーん、いいけど……」

暗殺者「?」

暗殺者「行きたくなさそうだな。無理にとはいわないけど」

嫁「いえ、大丈夫。行きましょ」
47:2017/08/30(水) 23:19:40.92 ID:
はよ
48:2017/08/30(水) 23:22:02.98 ID:
― プール ―

暗殺者「……え、泳げない?」

嫁「ええ……だから浮き輪必須なの」

暗殺者「だけど、俺たちの仕事は時には水泳も必要だったろ? どうしてたんだ?」

嫁「課長には前もって話して、そういう任務からは外してもらってたの」

暗殺者「そうだったのか……知らなかった」

嫁「浮き輪を笑ったら、許さないから」

暗殺者「笑うわけないだろ」

暗殺者「そうだ! なら、俺が泳ぎを教えてやるよ。お前ならすぐ泳げるようになるだろ」

嫁「……うん」
49:2017/08/30(水) 23:26:32.68 ID:
嫁「…………」バシャバシャ

暗殺者「おお、いいぞ!」

暗殺者「これでクロールも平泳ぎもバタフライも背泳ぎもバッチリだ!」

暗殺者「大人になってから泳ぎを覚えるのは難しいなんていうけど、さすが俺の嫁!」

嫁「……ありがと」

暗殺者「おいおい、水臭いこというなよ。俺たち夫婦なんだからさ」

暗殺者「おっと、ここは水臭いというよりは塩素臭いよな。アッハッハ」

嫁「…………」

暗殺者「滑ったか……ま、プールサイドは滑りやすいしな」

嫁(本当に嬉しいわ、あなた。だから――)
50:2017/08/30(水) 23:29:44.62 ID:
任務当日――

― 港 ―

暗殺者「船が見えた」

暗殺者「じゃ、乗り込むぞ! 乗り込んだらかたっぱしから乗組員を始末してけ!」

同僚女「はーい!」

後輩「にしても先輩、やけに気合入った海パンッスねえ。どうしたんスか、それ?」

暗殺者「うん、女房からのプレゼントでな……」





おわり
52:2017/08/30(水) 23:31:22.68 ID:
いい嫁さんだ
53:2017/08/30(水) 23:35:18.44 ID:
第五話『痴漢冤罪』



― 電車 ―

ガタンゴトン……

暗殺者(ちっ、今日は座れそうにないな)

ギャル「キャーッ、痴漢!」

暗殺者「え!?」

ギャル「みなさーん! 今アタシ、この人にお尻さわられましたー!」

暗殺者「え、えええ……!?」

ギャル「ちょっとアンタ、次の駅で降りなさいよ!」

ザワザワ……
54:2017/08/30(水) 23:37:32.30 ID:
― 駅 ―

ワイワイ…… ガヤガヤ……

ギャル「今、他のお客さんが駅員呼びに行ってるからね! 逃げんじゃないわよ!」

暗殺者「はい……」

暗殺者(なんか、どんどん俺がさわった方向に話が進んでくぞ!?)

暗殺者(このままじゃ、俺は痴漢にされちまう!)

暗殺者(逃げるのは簡単だ……でも、逃げるのは逃げるようでシャクだし……)

暗殺者(とりあえず、なりゆきに任せるしか……)



嫁「待ってちょうだい」
55:2017/08/30(水) 23:40:39.57 ID:
暗殺者「――――!?」

暗殺者「なんでここに!?」

嫁「あなたは黙ってて」

暗殺者「はい」

嫁「ねえ、この人があなたの体をさわったっていうのはホントなの?」

ギャル「そうよぉ~! 警察にチクられたくなかったら、お金を――」

嫁「そんなことありえないわ」

ギャル「は?」
56:2017/08/30(水) 23:43:37.41 ID:
嫁「だってこの人が私以外の女性の体をさわろうとするなんて、あるわけないもの」

ギャル「ハァ? なにいってんの?」

嫁「考えたくもないことだけど、もしそれが事実だったなら……」

ギャル「え?」

嫁「私……あなたをどうにかしたくなっちゃうかも……」

ギャル「ひぃっ……!」

駅員「あのー、痴漢が出たんですって?」

ギャル「い、いえっ! アタシの勘違い! 勘違いでした! キャハッ、すみませーん!」

駅員「はぁ」

ギャル「それじゃ! ひぃぃぃぃぃっ!」タタタタタッ ステンッ

暗殺者「……あ、こけた」
57:2017/08/30(水) 23:46:27.15 ID:
支援
58:2017/08/30(水) 23:47:24.58 ID:
嫁「じゃ、私は帰るわね」

暗殺者「いやー、助かったよ。俺はどうしていいのか分からなかったもん」

嫁「あの子、きっと適当な男に濡れ衣を着せて、お金をせしめようとしたのよ」

暗殺者「痴漢冤罪ってやつか。俺としたことが、そんなのに引っかかっちまうとはな」

暗殺者「それにしても、ナイス演技だったよ。あの女の子、真っ青になってたし」

嫁「…………」

暗殺者「あの……演技だったんですよね?」

嫁「……どうかしら」





おわり
60:2017/08/30(水) 23:52:09.03 ID:
嫁は強し
59:2017/08/30(水) 23:51:26.12 ID:
第六話『大仕事』



― 暗殺組織・本部 ―

課長「久しぶりの大仕事だ」

課長「近頃、各地で爆破事件などを起こしていたテロ組織のアジトがやっと割れた」

課長「明日、四人で急襲をかけ、構成員全員を始末する」

暗殺者「はい!」

後輩「了解ッス!」

同僚女「は~い」

暗殺者(ん、待てよ? 四人……?)
61:2017/08/30(水) 23:56:50.07 ID:
暗殺者「もしかして課長も出るんですか?」

課長「万が一にも失敗できん任務なのでな」

課長「最悪、君たち三人が死んでも、私一人で任務を達成するぐらいの気持ちで臨む」

暗殺者「…………」

暗殺者(俺たちはまだまだ課長からすれば、100%信頼されてるわけじゃないんだな)

後輩(だけど文句はいえないッス)

同僚女(あたしたち三人束になっても、まだまだ課長にはかなわないもん)

三人(だけど――)

暗殺者「課長に四人分働いてもらうことがないようにしますよ。絶対に」

後輩「そうッス!」

同僚女「課長は自分の仕事を終えたら、休んでて下さい!」

課長「ふっ、期待してるよ」
62:2017/08/30(水) 23:59:34.71 ID:
課長「作戦はシンプルにいこう」

課長「四人でアジトの東西南北から攻め込み、それぞれのエリアの敵を始末する」

課長「敵のリーダーは数々の戦場を渡り歩いたという猛者で、かなりの強敵と予想される」

課長「リーダーは北に陣取っているらしいから、私は北から攻める」

課長「暗殺者君は東、同僚女さんは西、後輩君は南から侵入してくれ。一人たりとも逃がさないように」

暗殺者「はいっ!」

後輩「分かったッス!」

同僚女「あたしの爪がうなるわ!」ジャキッ
63:2017/08/31(木) 00:03:45.58 ID:
翌日――

― 自宅 ―

暗殺者「じゃ、行ってきます」

嫁「行ってらっしゃい。お仕事、頑張ってね」

嫁「お弁当は?」

暗殺者「今日はいいや。もしかしたら食べてるヒマがないかもしれないから」

嫁「…………」
64:2017/08/31(木) 00:06:17.28 ID:
― テロリストアジト付近 ―

課長「これより任務を開始する。各自、位置についてくれ」

課長「では諸君、殺運を祈る」

暗殺者「課長もお気をつけて」

同僚女「じゃ、行くわよ」

後輩「はいッス!」



ザザザッ!
65:2017/08/31(木) 00:11:54.83 ID:
― アジト東側 ―

暗殺者(侵入成功……)

ザシュッ! ズバッ! ザクッ!

テロリストA「な、なんだ!?」

テロリストB「て、敵襲だ! 撃ち殺せ!」

ガガガガガガッ! ガガガガガガッ!

暗殺者(全員……始末する!)

ザシッ! ザクッ!

テロリストA「ぐええっ……!」

テロリストB「ぎゃあっ!」
66:2017/08/31(木) 00:15:04.75 ID:
― アジト西側 ―

同僚女「さ、あとはあなた一人ね」

テロリストC「ま、待ってくれ! 降参だ! 見逃してくれ!」

同僚女「残念ね~、全員消せって命令なのよ」

ズシャッ!



― アジト南側 ―

ガガガガガガッ! ガガガガガガッ!

後輩「下手クソッスねえ、せっかくの銃がもったいないッスよ」フヒュッ フヒュッ フヒュッ

チクッ チクッ チクッ

後輩「オレの吹き矢はマシンガンにも勝るッス!」
67:2017/08/31(木) 00:18:40.10 ID:
― アジト北側 ―

テロリストD「なんだこりゃ……!?」

テロリストD「全員首をねじり切られてる……敵は一体どんな武器を……!?」

課長「武器なんか使ってないよ」ヌウッ

課長「私は昔から不器用でねえ。暗殺も日曜大工も素手でやる方が落ち着くんだよねえ……」

テロリストD「ひいいっ!」

課長「よいしょ」ガシッ

ゴリュッ!

課長(音から察するに、同僚女さんと後輩君ももう終わったようだ。あとは――)
69:2017/08/31(木) 00:19:56.12 ID:
課長やばすぎる
70:2017/08/31(木) 00:20:13.06 ID:
さすが課長
71:2017/08/31(木) 00:23:17.09 ID:
― アジト東側 ―

暗殺者(残るは……ヤツ一人!)

リーダー「クックック、侵入者か」

暗殺者「お前は……このテロ組織のリーダーか!」

リーダー「そのとおり」

暗殺者(マジかよ! なにがリーダーは北に陣取ってるだ! 課長のバカ!)

リーダー「ナイフ一本で武装した部下どもを全滅させるとは大したものだ」

リーダー「しかし私もナイフ術には自信があるんだ。さぁ、始めようか」ジャキッ

暗殺者「……始末してやる!」サッ
72:2017/08/31(木) 00:26:05.72 ID:
リーダー「そらっ!」ヒュバッ

暗殺者「くっ!(速い!)」

暗殺者「このっ!」

キンッ! ギンッ! カキンッ!

リーダー「シイッ!」ブオッ

ドゴォッ!

暗殺者「ぐぁっ!」

暗殺者(ナイフを繰り出してから、即蹴りを……!)ゲホッ

暗殺者(こいつ……強い!)

暗殺者(いくらなんでも、こいつと他のテロリストのレベルが違いすぎる!)

暗殺者「――まさか!」
74:2017/08/31(木) 00:30:41.87 ID:
暗殺者「お前にとって、このテロ組織はただの“試作品”だな?」

リーダー「ほう、察しがいいな。そのとおりだ」

リーダー「このアジトにいた部下達など捨て駒に過ぎん」

リーダー「私の狙いは最初から、国の治安維持の能力を調査すること」

リーダー「特にお前たちのような国に仕える“裏の仕事をこなす連中”の能力を知りたかった」

暗殺者「ある程度調査したら本格的なテロ組織を作って、本命テロを起こす……ってわけか」

リーダー「そんなところだ」

暗殺者「だとしたら、絶対負けられない!」シュバッ

リーダー「無駄だ!」ヒュオッ

ザシュッ! ザシッ!

リーダー「ちっ!」ブシュッ…

暗殺者「ぐっ……!」ブシュッ…

暗殺者(そこまで圧倒的な強さじゃない……命に代えても絶対仕留めてみせる!)
76:2017/08/31(木) 00:35:27.36 ID:
ヒュバババババッ!

リーダー「!?」ガキキキンッ

暗殺者「!」

リーダー「なんだ、これは……! 針……!?」

暗殺者(今だッ! ――首ィ!)

ザクッ!

リーダー「がはっ……!」ブシュゥゥゥゥ…

リーダー「ぐ、ぐう……っ! もう一人、いたか……む、無念……ッ!」



ドサッ……
77:2017/08/31(木) 00:39:01.17 ID:
暗殺者「……いるんだろ? 出てこいよ」

嫁「…………」ヒョコッ

暗殺者「まーたお前に助けられちゃったな」

暗殺者「だけど……ちょっと腹立たしくもある。そんなに俺は信頼できなかったか?」

嫁「なにいってるの? 私はあなたを助けにきたわけじゃないわよ?」

暗殺者「え?」

嫁「お弁当を届けに来たのよ」サッ

嫁「あなたなら……食べるヒマがないなんてありえないって信じてたから」

暗殺者「あ……」
78:2017/08/31(木) 00:41:16.57 ID:
嫁かわ
79:2017/08/31(木) 00:43:30.15 ID:
暗殺者「おっと、課長から電話だ」

課長『終わったかね?』

暗殺者「はい、終わりました」

課長『声からダメージを感じられる。どうやらリーダーと出くわしたようだな』

暗殺者「ええ、課長のいったとおり、かなりの猛者でした」

暗殺者「ところで、課長」

課長『?』

暗殺者「あなた、俺に妻の手助けがあることを読んで」

暗殺者「わざと俺を敵リーダーがいるところに配置したんじゃ……」

暗殺者「そうすれば、俺に強敵との戦いを経験させることもできますから……」

課長『はて、なんのことやら』

課長『我々三人は先に本部に戻ってるから、君たちはゆっくり食事してきたまえ』プッ…

暗殺者「あのタヌキ親父め……」
80:2017/08/31(木) 00:45:27.74 ID:
嫁「電話終わった?」

暗殺者「うん」

嫁「じゃ、弁当食べましょ」

暗殺者「ああ、食べよう!」モグモグ

嫁「どう? おいしい?」

暗殺者「――うまい!!!」





おわり
81:2017/08/31(木) 00:48:38.54 ID:
嫁萌え
82:2017/08/31(木) 00:50:24.22 ID:
最終話『新しい命』



― 自宅 ―

嫁「あなた……」

暗殺者「ん?」

嫁「できちゃったみたい」

暗殺者「な、なんだとォ!?」

暗殺者「やったな! これで俺もついに人の親か!」

嫁「……うん」


暗殺者(とはいえ、少し複雑な気分だ)

暗殺者(妻が新しい命を授かったのは嬉しいけど、親になる俺は人の命を奪う仕事をしてる)

暗殺者(このままでいいのかなぁ……)
83:2017/08/31(木) 00:50:55.16 ID:
とうとう最終話か
84:2017/08/31(木) 00:53:54.76 ID:
暗殺者「…………」ペラ…

嫁「あら、求人誌なんて読んでどうしたの?」

暗殺者「いや、お前の妊娠で俺も色々と思うところがあってさ……」

暗殺者「今の仕事、辞めようかなって思ってるんだ」

暗殺者「そしたら、収入減っちゃうかもしれないけど……」

嫁「好きにして」

暗殺者「!」

嫁「私はあなたが何者になろうと、ついていくから」

暗殺者「……ありがとう」
85:2017/08/31(木) 00:56:43.67 ID:
― 暗殺組織・本部 ―

暗殺者「…………」ボー…

後輩「先輩!」

暗殺者「…………」ボケー…

後輩「先輩!」フヒュッ

チクッ

暗殺者「いってぇ! なにすんだ!」

後輩「なにボケーッとしてるんスか! いつもの先輩ならあんなの軽くよけられたでしょ!」

同僚女「なにか考え事してたの?」

暗殺者「いや、別に……」
86:2017/08/31(木) 01:01:16.16 ID:
プルルルル…

課長「はい、分かりました」

課長「すまんが、誰か一仕事頼まれてくれんかね?」

後輩「どんな仕事ッスか?」

課長「赤ん坊や幼児をさらって、その内蔵を売り払うグループを全員始末して欲しいそうだ」

課長「極めて悪質な上に、逮捕したところで証拠不十分になる可能性が高いらしくてな」

暗殺者「課長……!」

課長「はい!?」ビクッ

暗殺者「俺にやらせて下さい」

課長「う、うむ……殺運を祈ってるよ」



後輩「なんか今、すごい殺気だったッスね。チビりかけたッス」

同僚女「うん……どうしたんだろ? ボーッとしてたのがウソみたい」

課長「私としたことが、ちょっと恐怖してしまったよ」ドキドキ…
87:2017/08/31(木) 01:04:31.42 ID:
― アジト ―

ボス「ひえぇぇぇ……ゆ、許してくれえ……!」ジョボボ…

暗殺者「お前……子供をさらわれた親の気持ちを考えたことあるのか? 反省してるのか?」

ボス「考えたことありましゅっ! 反省してましゅっ!」

暗殺者「そうか、じゃあ心おきなく地獄に落ちろ」

ボス「ふぇぇ!?」

ボス「ま、待――」

ザクッ!



暗殺者(俺の両手は血まみれだけど、俺みたいな奴がいなきゃ守れないものもあるんだよな……)
88:2017/08/31(木) 01:06:41.63 ID:
カッコイイ
89:2017/08/31(木) 01:09:25.78 ID:
― 自宅 ―

暗殺者「ただいま」

嫁「お帰りなさい」

暗殺者「俺さ、やっぱり今の仕事続けるよ」

暗殺者「お腹の中の赤ちゃんのためにも、さ」

嫁「そう、あなたがそう決めたのなら、私はついていくだけよ」

暗殺者「ただし俺の子には、俺みたいな仕事につかないようにしてやりたいけどな……」

………………

…………

……
91:2017/08/31(木) 01:14:17.19 ID:
― 病院 ―

暗殺者「産まれましたか!?」

ナース「はいっ、元気な男の子ですよ!」

暗殺者「ありがとうございます! ありがとうございます!」



赤子「おぎゃあ……! おぎゃあ……!」

暗殺者「よくやったな!」

嫁「うん……ありがと」

暗殺者「俺たちにもついに子供ができたかぁ~! 末は博士か、大臣か……」

暗殺者「なんにせよ、なるべく暗殺とは無縁な仕事に――」
92:2017/08/31(木) 01:18:38.98 ID:
プーン…

暗殺者「ん、蚊だ。しっ、しっ!」

嫁「うっとうしいわね」

赤子「だーっ!」ピシッ

暗殺者「おお……! 飛んでる蚊を一発で叩き落とした……!」

嫁「……才能はありそうね」





おわり
94:2017/08/31(木) 01:21:07.78 ID:
いいはなしだ
96:2017/08/31(木) 01:23:23.23 ID:
アフターストーリーまだー
97:2017/08/31(木) 01:26:20.77 ID:
面白かった乙
将来が楽しみな子供だな
100:2017/08/31(木) 03:21:29.75 ID:
面白かった、乙です
101:2017/08/31(木) 05:28:45.59 ID:
練られてる感じがあって面白かった
元スレ: