1:2009/05/09(土) 21:56:40.45 ID:
いわゆるオムニバス形式です。

一応テーマはあると言うか、あからさまです。

いつの話だよってぐらい季節感無視もありますが、ご愛嬌。



全7話の予定です

2:2009/05/09(土) 21:58:02.49 ID:
──01.─────────────────


( ^ω^)「ポテチ開けるお」

('A`)「ん? ああ、構わんぜ」

(´・ω・`)「……ポテチって、1袋に何枚ぐらい入ってるんだろうね」

また始まった。
このしょんぼり面、ショボンはいつもよくわからん事に妙に興味を示す。
そんなのどうでもいいだろと、俺のみならず、普通の人間なら大抵一蹴する様な事にこだわり始める。

何と言うか、神経質、言い過ぎれば偏屈だ。
偏屈なのは俺も同じだが、こいつはこいつで俺とは違う方向に捻じ曲がっている。

普段は温厚で善良なんだけどな、俺と違って。

( ^ω^)「そんなんわからんお。いいから食べるお」

('A`)「ああ、食え食え。だが、1人で全部食うなよ? 誰が買って来たかわかってるよな?」

対照的にこっちのニヤケ面、ブーンは素直で単純な男だ。
こちらを言い過ぎればバカだが、こいつはまあ、裏表なく善良なバカだ。


3:2009/05/09(土) 21:59:35.44 ID:
(´・ω・`)「僕だけどね、買って来たの」

( ^ω^)「コンソメうめぇwww」

('A`)「聞いちゃいねぇ……」

(´・ω・`)「で、さっきの話だけど」

('A`)「さあねえ……数えてみればわかるんじゃね?」

俺は興味なさ気に視線を読みかけの文庫本に戻す。
そんな俺を言い過ぎれば、人付き合いが悪く、捻くれていて偏屈だ。

(´・ω・`)「それも1つの手だね。でも……」

('A`)「でも?」

顔を上げずに言葉だけを返す。
長くなる前に切りたい所だが、既に遅いかもしれない。


4:2009/05/09(土) 21:59:59.24 ID:
面白そうなので支援
6:2009/05/09(土) 22:01:20.12 ID:
(´・ω・`)「袋ごとに多分枚数はバラバラだよね」

('A`)「そりゃそうだろうな。大きさも1枚1枚まちまちだろうし」

( ^ω^)「うお、デケぇのあったwww」

('A`)「……全部食うなよ?」

わかってると返すブーンだが、その手と口は止まる事はない。
せめてしゃべってる時は食うな。破片が飛ぶ。

……後でこいつに掃除させるか。

(´・ω・`)「そうだよね。こういうのって、グラム売りだもんね」

('A`)「そういう言い方をするかはわからんが、内容量で統一されてるな」

(´・ω・`)「じゃあ、こういうのを皆で食べる時って、どうやったら均等に分けられるのかな?」

('A`)「……計ればいいんじゃね?」


8:2009/05/09(土) 22:03:10.97 ID:
やはり遅かったようで、話はどんどん広がって行く。
何で計れば良いか、どんな計り方をすれば良いか、果ては、秤がなかった場合、どうやって計るか等々。

矢継ぎ早に問いかけてくるショボンに、俺は文庫文を諦め、栞を挟んで閉じた。

(´・ω・`)「秤なんてそうそう手元にないよね」

('A`)「台所のある家ならだいたいあるんじゃね?」

(´・ω・`)「こういうのってさ、こう人が集まった場所でわいわいやるもんだし、そんなとこで秤出して計ったりしたら興醒めしないかな?」

('A`)「ドン引きするな」

それが答えだ。
この疑問に意味は無く、答えは何でもいい。
そんな事に延々とこだわるショボン。

性質と言えばそれで済まされるのかもしれないが、ひょっとしたらただの議論好きなだけかもしれない。
こういう無駄な事に熱くなっている時のショボンが、一番生き生きとして見える。
まあ、付き合わされる方はほとほとうんざりするのだが。


10:2009/05/09(土) 22:05:15.27 ID:
('A`)「実際は計る機会も来ない。だから、考えてもしょうがないんだ」

俺はそう言い切り、ポテチの袋に手を伸ばす。
アルミについた油と、小さなクズが指先についた。

('A`)「……おい、ブーン?」

(;^ω^)「な、何だお?」

(#'A`)「てめえ、全部食うなと言ったじゃねーか! 何、1人で食っちまってんだよ!」

(;^ω^)「お、ごめんお。気付いたらなくなってたお」

(#'A`)「気付いたら、じゃねーよ! 食えばなくなるのは当たり前だろうが!」

(´・ω・`)「あらら……僕もまだ食べてなかったんだけどな……」

(;^ω^)「ごめんおー」

(#'A`)「全く……誰が買って来たと思ってんだ……」

(´・ω・`)「うん、僕だけどね」


11:2009/05/09(土) 22:08:08.66 ID:
尚もブーンを責める俺を、ショボンはいつもの事じゃないかと取り成す。
確かにいつもの事だが、そうやってショボンが甘やかすからこいつは一向に懲りないんじゃないかと思う。

(;^ω^)「以後気を付けるお」

('A`)「お前、毎回それ言ってねーか?」

(´・ω・`)「まあまあ、また買ってくればいいさ」

(;^ω^)「申し訳ない。でも、代わりにさっきのショボンの疑問の答えがわかったお」

突然意味不明なことを言い出したブーンに、ショボンは即座に食い付いた。
折角終わりかけてた話題を蒸し返さないで欲しかったが、もう遅い。
それ以前に、ずっと食ってたブーンが俺達の話を聞いてた事の方が驚いた。

(´・ω・`)「答えって? ポテチの分け方?」

( ^ω^)「そうだお。秤がなくても分ける方法だお」

('A`)「ほう……そんな方法あるんなら、是非俺も聞きたいね?」

どうせくだらない答えだろうと高をくくり、ブーンに続きを促す。


12:2009/05/09(土) 22:09:34.88 ID:
支援ー
13:2009/05/09(土) 22:10:22.05 ID:
( ^ω^)「みんなが満足すればいいんだお!」

('A`)

(´・ω・`)

( ^ω^)「お?」

('A`)「あのな……」

( ^ω^)「おー? 何かおかしかったかお?」

('A`)「おかしかったかお? じゃねーだろ。何だよ、そのアバウトな線引きは?」

ある意味期待通りだったが、答になってない答えに、俺はそれ以上何も言う気は起こらなかった。

(´・ω・`)「なるほど……一理あるね」

(;'A`)「おいおい、ショボン、どういうつもりだ?」

あまりにバカバカしいブーンの答えを、事もあろうか理屈人間のショボンが肯定する。
今の答えのどこにショボンが納得する要素があったのか、俺には全くわからなかった。


15:2009/05/09(土) 22:12:27.97 ID:
(´・ω・`)「まあ、確かにね、漠然とし過ぎているよね」

(´・ω・`)「でもさ、結局さ、均等に分けても不満は出るんだよね」

計った所で、ミリグラム単位以下まで統一するのは難しいとショボンは言う。

('A`)「しかし、平等に分ける以外、不満が出ない方法なんてないだろ?」

(´・ω・`)「そうかな? ブーンが言う様に、皆が満足、納得すれば良いんじゃないかな?」

('A`)「そういうものか?」

(´・ω・`)「現に今、ブーンが食べたポテチについては僕たち皆が納得してるじゃないか?」

配分にして10:0:0、これでも僕らは納得してるとショボンは言う。
それは納得していると言うより、呆れて諦めていると言うべきだ。

('A`)「それはそうかもしれんが、俺らみたいなケースは稀だろ?」

(´・ω・`)「うん、そうだよね。でも、僕らはそれで納得出来るから、僕らにはブーンの答えが正解だよ」

('A`)「お前は……」

本当にお人好しだな。
だが、俺も心のどこかで納得してる部分がある。
ショボンがそういうやつで、ブーンがああいうやつ、そして俺が、こういうやつなんだと。


17:2009/05/09(土) 22:15:23.36 ID:
( ^ω^)「お! だお? それであってるおね」

(;'A`)「お前は……」

本当に馬鹿だよな。

でも、まあ、こいつが馬鹿なのも俺はよく知っている。
そして、俺みたいな捻くれ者にも分け隔てなく接してくれた愛すべき馬鹿だという事も。
こいつがいて、俺達は互いが互いの考えに納得出来る仲になれたのだから。

(´・ω・`)「うん、あってるよ、ブーン、ありがとう」

( ^ω^)「お安い御用だお」

(;'A`)「偉そうにすんなよ。答えを出そうがお前が1人でポテチ食っちまった事実は変わらねーんだ」

(;^ω^)「お……」

('A`)「さっさと買って来い。それで許してやる」

(*^ω^)「わかったお! ダッシュで行ってくるお!」


19:2009/05/09(土) 22:17:04.25 ID:
(´・ω・`)「……フフ」

('A`)「何だよ?」

(´・ω・`)「何でもないよ。ただね……」

('A`)「ただ?」

(´・ω・`)「やっぱりブーンの答えで正解かな、ってね」

('A`)「……ショボンはブーンに甘過ぎだ」

そして俺も甘い。
だが、ブーンの言葉通り、俺達はそれで納得してるんだ。
それが俺達の関係、友達ってものなのかねえ……。

(*^ω^)「のりしおうめぇwww」

(;'A`)「早! ってか、また1人で食うんじゃねーよ!」

(´・ω・`)「アハハハハ」


 ──01.ポテチ配分論における僕らの共通見解のようです 了──


20:2009/05/09(土) 22:17:18.14 ID:
しえん
22:2009/05/09(土) 22:19:25.58 ID:
──02.─────────────────


川 ゚ -゚)「ただいま」

ノパ⊿゚)「おかえり、クー姉」

川 ゚ -゚)「ん? シューはどうした? 今日はアイツが食事当番じゃなかったか?」

ノパ⊿゚)「シュー姉はお出かけだぞー。当番は私が変わってやった」

川 ゚ -゚)「……そうか。まあ、こんな日だしな。食事ぐらいしてくるか」

ノパ⊿゚)「今日は帰ってこないって言ってたぞー」

川 ゚ -゚)

ノパ⊿゚)「どうしたー、クー姉?」

川 ゚ -゚)「いや、うん、まあ、そうだな、うん」

川 ゚ -゚)「うん、シューも二十歳越えてるんだ、外泊するぐらい別に普通だよな、うん」

ノパ⊿゚)「クー姉、大丈夫かー? 顔色悪いぞー?」


23:2009/05/09(土) 22:21:11.70 ID:
川 ゚ -゚)「それに今日は女の子にとって大切な日、バレンタインだ。いい年した女子大生に予定があって当然だよな」

ノパ⊿゚)「いい年したOLにも予定があって良いと思うぞー」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「いや、あれだ、その、姉ちゃん決して予定がなかったわけじゃないんだぞー?」

川 ゚ -゚)「数多の誘いを掻い潜り、かわいい妹たちの為に家路を急いだ結果、定時から約30分で帰宅できたんだぞー?」

ノパ⊿゚)「クー姉は今日、チョコとか渡さなかったのかー?」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「渡したよ」

川 ゚ -゚)「渡したともさ」


26:2009/05/09(土) 22:23:52.46 ID:
川 ゚ -゚)「うちの課全員、うちの部署全員の男に」

川 ゚ -゚)「義理だけど」

川 ゚ -゚)「義理だけどちゃんと1つずつ別に包装して、あわよくばと思わせるような義理だけど」

川 ゚ -゚)「ちゃんと渡したさ」

ノパ⊿゚)「そっかー、社会人は大変なんだなー」

川 ゚ -゚)「まあな。付き合いというものがあるからな。仕事を円滑に進めるためには、そういう気配りも必要なんだ」

ノパ⊿゚)「仕事って難しいんだなー」

川 ゚ー゚)「まあ、ヒートにはまだ難しいかな? ヒートは誰にも渡さなかったのか?」

ノパ⊿゚)「私も1個だけ渡したぞー」

川 ゚ー゚)「そうか、友達か? ヒートも、もう高校生だ、仲の良い男友達ぐらい──」


27:2009/05/09(土) 22:26:13.21 ID:
ノパ⊿゚)「彼氏に1個だけだー」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「彼……氏……?」

川 ゚ -゚)「彼……氏……?」

ノパ⊿゚)「2回言うほど大事な事かー?」

川 ゚ -゚)「彼氏……彼氏……彼氏……彼氏……うん……彼氏……そっか……彼氏かー」

ノパ⊿゚)「クー姉大丈夫かー? 真っ青通り越してまっ白だぞー?」

川 ゚ -゚)「ハハハ、ちょっと化粧が濃かっただけだ。濃すぎて公家みたいって言われても姉ちゃん全然平気だぞ、うん、平気」

川 ゚ -゚)「しかし彼氏かー。そっか、ヒートもそんな年頃なんだなー、うん、もう高校生だしな……」

川 ゚ -゚)「まあ、普通だよな、普通、普通」


28:2009/05/09(土) 22:27:55.48 ID:
お菓子えん
30:2009/05/09(土) 22:28:24.00 ID:
ノパ⊿゚)「クー姉も高校の時、彼氏に渡したりしたのかー?」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「時にヒート、いつから彼氏と付き合ってんだ?」

ノパ⊿゚)「半年ぐらい前だー」

川 ゚ -゚)「ほう、もうそんなになるのか」

川 ゚ -゚)「姉ちゃん知らなかったなー」

ノパ⊿゚)「内緒にしてたぞー」

川 ゚ -゚)「まあ、そういうの家族に隠したくなるのはわかるけどな」

川 ゚ -゚)「ただ、ちょっとぐらいは相談して欲しかったなーって、姉ちゃん思ったり思わなんだりしちゃったり?」

ノパ⊿゚)「シュー姉には相談したぞー」

川 ゚ -゚)


31:2009/05/09(土) 22:30:36.18 ID:
川 ゚ -゚)「え? 何でシューに相談? 私じゃなく? え? 何で?」

ノパ⊿゚)「適材適所ってやつだぞー」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「適材適所、その才能に適した地位や任務につけることだな、うん。つまり……」

ノパ⊿゚)「クー姉に相談してもダメそうだったからなー」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「だ、ダメじゃねーよ」

川 ゚ -゚)「姉ちゃん恋愛相談受け付けてるよ? 24時間営業中。エブリシングオールオッケーだぞ?」

ノパ⊿゚)「クー姉、彼氏いないぞー?」

川 ゚ -゚)


32:2009/05/09(土) 22:32:31.84 ID:
川 ゚ -゚) www
33:2009/05/09(土) 22:34:10.28 ID:
川 ゚ -゚)「ああ、いないよ、今は」

川 ゚ -゚)「いないけども、今は」

川 ゚ -゚)「たまたまいないんだよ、今は」

川 ゚ -゚)「いや、出来ないんじゃなくて、あれだよ、作らないんだよ」

川 ゚ -゚)「だって、そういうの面倒じゃん?」

川 ゚ -゚)「自分の時間が大事って言うか、ほら、私ら3人家族じゃん?」

川 ゚ -゚)「私がしっかりしないとダメだからな、そういうのは2人がお嫁に行ってからでいいんだよ」

ノパ⊿゚)「クー姉、いつもありがとなー」

川 ゚ -゚)「な、何だ改まって? 別に、姉ちゃん嫌々面倒見てるわけじゃないからな? 2人が大切だから喜んで面倒見て──」

ノパ⊿゚)つ□「そんなクー姉にプレゼントだー」

川 ゚ -゚)「……プレゼント?」


34:2009/05/09(土) 22:35:20.20 ID:
どどんまい
35:2009/05/09(土) 22:36:30.74 ID:
ノパ⊿゚)「バレンタインだー。あげたのは1個だけど、ちゃんとシュー姉の分とで3つ用意してたんだー」

川 ゚ -゚)「ヒート……」

川*゚ -゚)「ありがとう、ヒート。姉ちゃんすっごく嬉しいよ」

ノハ*゚ー゚)「お礼を言ってるのはこっちなんだぞー? 喜んでもらえて嬉しいぞー」

川*゚ -゚)「そっかー、バレンタインかー。姉ちゃんチョコもらえるなんて思わなかったなー。ホワイトデーのお返しがタオルだった事もあったもんなー」

川*゚ -゚)「早速開けていいかな?」

ノパ⊿゚)「いいぞー」

川*゚ -゚)「どれどれ……」

川*゚ -゚)つ□

川 ゚ -゚)つ□


37:2009/05/09(土) 22:39:56.47 ID:
川 ゚ -゚)「ヒート?」

ノパ⊿゚)「どうかしたかー?」

川 ゚ -゚)「どうかって……いや、これ?」

ノパ⊿゚)「煎餅の詰め合わせだぞー。姉ちゃん、甘い物より煎餅が好きっていつも言ってるじゃないかー」

川 ゚ -゚)「うん、まあ、確かに言ってるね。煎餅好きだよ、うん、むしろ大好き」

川 ゚ -゚)「でも、その、何て言うかね、空気的にと言うか、イベント的にね、こう、ね?」

ノパ⊿゚)「贈り物はその人が一番喜ぶ物がいいかなーと思ったんだー。ダメだったかな?」

川 ゚ -゚)「いやいやいやいや、ダメじゃないよ、姉ちゃんすっごい嬉しい。煎餅大好きだし。年寄り臭いと言われようが煎餅好きだよ、うん」

川 ゚ -゚)「そもそも煎餅は固いんだから、年寄り向きじゃないんだし、煎餅好きって事は、全然若いって事じゃないかと私は常々思うんだよ」

川 ゚ -゚)「煎餅最高」

ノハ*゚ー゚)「そっかー、良かったぞー」


38:2009/05/09(土) 22:42:14.63 ID:
川 ゚ -゚)「……」

川 ゚ー゚)「ああ、大切な家族からもらえて本当に嬉しいよ、ありがとう、ヒート」

川 ゚ー゚)「ちゃんとホワイトデーにはお返しするから期待してろよ?」

ノパ⊿゚)「お返しとか気にしなくていいぞー? これは日頃の感謝の気持ちなんだから」

川 ゚ー゚)「感謝の気持ちなら、姉ちゃんだってあるさ。だから、ちゃんと返させてくれ」

ノハ*゚ー゚)「わかったぞー。クー姉、ありがとな。いつもお疲れ様だぞー」

川 ゚ー゚)

川 ゚ -゚)「さて、晩ご飯にするか。煎餅は食後の茶請けにさせてもらうよ」

ノパ⊿゚)「わかったぞー。おかず温め直すから座って待っててくれー」

川 ゚ -゚)「うん」


39:2009/05/09(土) 22:45:38.97 ID:
川 ゚ -゚)「……」

川 ゚ -゚)「……時にヒート、シューには何をプレゼントするつもりだったんだ?」

ノパ⊿゚)「ライスチョコだー」

川 ゚ -゚)「ライス……チョコ」

川 ゚ -゚)「チョコ……か」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「なあ、ヒート?」

ノパ⊿゚)「なんだー」

川 ゚ -゚)「煎餅チョコってなかった?」


 ──02.姉と煎餅のようです 了──


41:2009/05/09(土) 22:46:19.21 ID:
支援
43:2009/05/09(土) 22:48:24.59 ID:
──03.─────────────────


(-_-)「……売り切れ?」

甘いものは甘く、辛いものは辛く、酸っぱいものは酸っぱく、何事もその本分を全うするのは重要だと思う。

(;-_-)「参ったな……ここになかったらどこに売ってるっていうんだよ……」

しかし、中には2つの要素を組み合わせたものも存在する。
甘辛いとか、苦しょっぱいとかそんな風。

(-_-)「この辺で一番近いのは……」

僕はそういうものが苦手だ。
何が美味しいのかわからない。

(-_-)「三丁目まで歩くか……」

甘い物は好きだ。

チョコレート、美味いよね。
ミルク、ホワイト、ビター、ベースの味だけで様々だ。


45:2009/05/09(土) 22:51:45.62 ID:
(-_-)「……いや、走らないと間に合わないか」

それにアーモンドやピーナッツ、カシューナッツにクッキーやフレーク、色んな物を混ぜ込んでも美味い。

甘い物はチョコだけじゃない。
クッキーやキャラメル、マシュマロにプリン、はたまた羊羹に饅頭と、いくらでもある。

そのどれも、僕は好きだ。

(;-_-)「遠いな、チクショー。流石にキツい……」

酸っぱい物も好きだ。

酸味のきいたフルーツや、酢の物、梅干し、どれも好きで、どれも食べられる。
食べると身が引き締まると言うか、目が覚める。
清々しい気持ちに包まれる。

そういった中で、フルーツの瑞々しさを詰め込んだキャンディが、僕は大好きだ。
口寂しい時や眠気覚ましにも重宝する。


47:2009/05/09(土) 22:54:24.04 ID:
(;-_-)「ようやく三丁目……」

そしてキャンディの中でも、僕はグミキャンディが一番好きだ。
キャンディ特有の、口の中に残る後味のしつこさが薄く、瑞々しさがアップしてる。

あれを初めて食べて時は、衝撃で吐き出してしまった。
いや、美味かったんだけど、ついね。

あれ以来、僕はグミキャンディを愛してる。
いつもポケットに忍ばせている。

でも……

(-_-)「えっと……あった……」

走り回った甲斐もあり、ようやく目的の物を見付ける事が出来た。
見付ける事は出来たのだが……

(-_-)「……やっぱ買わなきゃダメだよな」


48:2009/05/09(土) 22:56:47.81 ID:
見つけたは良いが内心は複雑だ。
自分の中でこれは邪道、忌むべきものだ。

いっそ見付からない方が良かったと思う程に。

(-_-)「グミ……チョコ……」

グミチョコレート。
あろう事か、あの甘いチョコレートと、酸っぱいグミキャンディを合わせてしまった恐怖のお菓子。

僕はこれが大嫌いだ。

僕の好きなチョコレート、そして僕の大好きなグミキャンディに対する冒涜だ。

(-_-)「てか、これ不味いだろ……」

僕はイチゴのグミチョコを手に取り1人ぼやく。

ああ、イチゴのグミキャンディ。
こんな真っ黒の無残な姿にされてしまって。


49:2009/05/09(土) 22:59:39.95 ID:
甘酸っぱいなんて認められない。

甘いなら甘い、酸っぱいなら酸っぱいでいいじゃないか。
何でそれだけで完結してる物を合わせる必要があるのさ?

酢豚にパインとかぶっちゃけありえない。
てか酢豚自体がダメだ。

チキン南蛮? 何だそれ。

チョコ柿の種……これは方向性違うけど、これも不味いと思う。


別々で良いじゃない。



でも……


(-_-)「買うんだけどね……」

「ありがとうございましたー」

・・・・
・・・


51:2009/05/09(土) 23:03:01.00 ID:
僕は悪魔に魂を売り、禁断の果実を手にひた走る。

僕がこれを嫌いでも、世の中にはこれが好きな人がいる。買って来てと頼まれたら、僕はそれを断れない。
脅されてるとかじゃなく、僕自身がそうしたい、頼まれることが嬉しいから。

(;-_-)「ごめん、ちょっと遅れた」

从 ゚∀从「俺様を待たせるとは良い度胸だな。暇過ぎるからどうしてもと頼まれて付き合ってやってんのに」

(;-_-)「わかってるよ、幼馴染のよしみだろ? あ、ほら、約束の物」

从*゚∀从「おお! イチゴ味! 最近見ないんだよな、これ。やるじゃん」

(-_-)「さて、前金は払ったんだから、今日は付き合ってもらうよ」

从 ゚∀从「へーへー、まあ、これを出されちゃ断れんわな。……しっかし、女に荷物持ちなんざ頼むんじゃねーよ」

(-_-)「僕より腕力あるじゃん」

从#゚∀从「──んだと、コラ? もう一遍言ってみやがれ!?」

(;-_-)「イタタタタ! ギブ! ギブ!」

ああ、チクショー、甘酸っぱい。だから甘酸っぱいのは嫌いなんだ。
でも、僕はその内、この甘酸っぱさに毒されそうだ。多分、きっと──


 ──03.グミチョコ从 ゚∀从のようです 了──

52:2009/05/09(土) 23:05:05.60 ID:
──04.─────────────────


ζ(゚ー゚*ζ「プリン買って来てくれた?」
  _
( ゚∀゚)「おう、ちゃんと買って来たぜ、ほれ」

ζ(゚ー゚*ζ「おお、珍しく忘れなかったね、偉い偉い」

ζ(゚ー゚*ζ ガサガサ

ζ(゚ー゚*ζ

ζ(゚-゚*ζ

ζ(゚-゚*ζ「ねえ、長岡君?」
  _
( ゚∀゚)「どうした、改まって? 礼ならいらんぜ、約束してたからな」

ζ(゚-゚*ζ「私、何を買ってきてって頼んでたっけ?」
  _
( ゚∀゚)「何って、プリンじゃなかったっけ?」


53:2009/05/09(土) 23:07:06.46 ID:
読みやすいなあ
54:2009/05/09(土) 23:07:29.52 ID:
U⊂ζ(゚-゚*ζ スッ
  _
( ゚∀゚)つU「ん……?」
  _
( ゚∀゚)「プラスチックケースに黄色い固形物、どっからどう見ても……」
  _,
( ゚∀゚)「茶碗蒸しだな……」

ζ(゚ぺ*ζ「茶碗蒸しだねぇー」
  _
( ゚∀゚)「おお! これ、銀杏入ってんじゃん? 既製品の割には具が──」

ζ(゚-゚#ζ「具が?」
 _
(;゚∀゚)「いや、まあ、今はそんな事どうでもいいな、うん」

ζ(゚-゚#ζ「……」
 _
(;゚∀゚)「ああ、その、なんだ、うん……その……」

ζ(゚-゚#ζ「……」


56:2009/05/09(土) 23:10:23.82 ID:
_
(;゚∀゚)「……ごめん」

ζ(゚-゚#ζ「……」

ζ(-、-*ζ「……ハァ」
 _
(;゚∀゚)「アハハハハ……」

ζ(゚、゚*ζ「全く……どうやったらプリンと茶碗蒸し間違うかなー?」
  _
( ゚∀゚)「見た目とか似てね?」

ζ(゚ー゚;ζ「パッケージとか全然方向性違ってるよね?」
  _
( ゚∀゚)「遠目から見た印象は近いんだよなー」

ζ(゚ー゚;ζ「近くで見ようよ。だいたい、間違うならコンビニとかで買えばいいのに。コンビニなら茶碗蒸し売ってないよね?」
  _
( ゚∀゚)「スーパーの方が安いんじゃん?」

ζ(゚ー゚;ζ「そりゃ安いけどさ、コンビニの方が新製品多いよ」
  _
( ゚∀゚)「スーパーにだって新製品は入るさ。それに、デレはそんなミーハーじゃないだろ?」

ζ(゚、゚*ζ「うん、まあ、美味しければ同じ物でも全然オッケーだけどさ……」


58:2009/05/09(土) 23:12:23.33 ID:
_
( ゚∀゚)「だったら良いじゃねえか、スーパーでも」

ζ(゚、゚*ζ「間違わなきゃね」
  _
( ゚∀゚)「……うん」

ζ(゚、゚*ζ「どうせこだわるなら、ケーキ屋さんで買ってきてくれれば良いのに」
  _
( ゚∀゚)「ケーキ屋のプリンは邪道だ。大体何か乗ってる」

ζ(゚ー゚*ζ「プリンアラモード?」
  _
( ゚∀゚)「違う、プリン・ア・ラ・モードだ」

ζ(゚、゚*ζ「細かいなー。普段大雑把なのに」
  _
( ゚∀゚)「言葉は正しく使わねーと、その意味が正しく伝わらず、すれ違う場合があるからな。細かいとこでもこだわらねーと」

ζ(゚ー゚*ζ「だったら、プリンじゃなくてプティングじゃない?」
  _
( ゚∀゚)「……正しくはカスタード・プティングだ」


59:2009/05/09(土) 23:14:42.88 ID:
ζ(゚、゚*ζ「……」
  _
( ゚∀゚)「……」

ζ(゚、゚*ζ「……ねえ?」
  _
( ゚∀゚)「……うん、言葉も程々に適当でいいよな」

ζ(-、-*ζ「……ハァ」
 _
(;゚∀゚)「深いため息だなー。あれだぞ、ため息ばっか吐いてると、幸せが逃げちまうぞ?」

ζ(゚ぺ*ζ「プリンがなかった時点で私の幸せはなくなりました」
 _
(;゚∀゚)「やっすい幸せだなー」

ζ(-、-*ζ「そんな安い幸せすら与えてくれない男の人ってどうなのかなーって思っちゃったり……」
 _
(;゚∀゚)「すんません、すぐ買って来ますんで、何卒ご容赦を!」

ζ(゚ー゚*ζ「冗談だよ、冗談」


60:2009/05/09(土) 23:15:42.36 ID:
支援
61:2009/05/09(土) 23:17:15.14 ID:
_
(;゚∀゚)「いや、ホント悪い。悪気はなかったんだが……」

ζ(゚ー゚*ζ「わかってるって。ジョルジュがおっちょこちょいなのは今日に始まった事じゃないしね」
 _
(;゚∀゚)「返す言葉も御座いません」

ζ(^ー^*ζ「フフフ、反省はしてくださいね?」

ζ(゚ー゚*ζ「それじゃあ、これ、温めてくるね」
  _
( ゚∀゚)「あれ、結局それ食うの?」

ζ(゚、゚*ζ「食べないわけにもいかないでしょ? それに……」
  _
( ゚∀゚)「それに?」

ζ(゚ー゚*ζ「折角ジョルジュが買ってきてくれたんだしね」
  _
( ゚∀゚)「デレ……。明日はちゃんとプリン買って来るからな」

ζ(^ー^*ζ「うん、楽しみにしてるよ」

・・・・
・・・


62:2009/05/09(土) 23:19:05.58 ID:
_
( ゚∀゚)「おう、デレ、ちゃんとプリン買って来たぜ、ほれ」

ζ(゚ー゚*ζ「ホント? 今日は茶碗蒸しじゃないよね? ありがと、ジョルジュ」

ζ(゚ー゚*ζ ガサガサ

ζ(゚ー゚*ζ

ζ(゚-゚*ζ 「ジョルジュ、これ……?」
  _
( ゚∀゚)「おう! 新製品、バストプリンだ! どうだ、デカいだろ? 何せ──」

ζ(^ー^#ζ
  _
( ゚∀゚)「あれ? デレさん? どうし──」


マトモナプリンカッテコイヤー!!! アッー!


 ──04.プリーズ・プリーズ・プリンのようです 了──


63:2009/05/09(土) 23:22:21.63 ID:
──05.─────────────────


\ミセ*-o-)リ/「ふわ~」

その日の朝は、珍しく快適な目覚めだった。
まあ、既に二桁に到達した時間を朝というのかはさておいて、平日にこんなのんびり起きれるのは、ルーチンワークに嵌め込まれた
社会人に取っては至福な事なんじゃないかと思う。

ミセ*゚ー゚)リ「さてと……」

折角取った有給だ。
有意義な事に使いたい。

まずは……

ミセ*゚ー゚)リ「……」

ミセ;゚ー゚)リ「部屋の掃除かなぁ……」

ハードワーカにとっての自宅が単なる寝床と化するのはある意味仕方がないだろう。
仕事の出来るOLの辛い所だ。


64:2009/05/09(土) 23:25:23.90 ID:
とは言え流石にこれは少しまずいか。
うら若き乙女の部屋に、ゴミ袋から溢れんばかりのカップ麺の容器が垣間見えるのは如何なものだろう。
せめてマンションの1階のゴミ捨て場に置いてくるぐらいはしたい。

ミセ*-へ-)リヾ「まあ、普段通勤の時にやっとけっちゅー話ですよね……」

OLの朝は戦争だ。
着替えにメイクに朝御飯、鮨詰めの満員電車を乗り切るためには朝から妥協は許されない。
ゴミなんかに構っている時間はないのだ。

ミセ*-へ-)リヾ「まあ、その分早起きせいっちゅー話ですよね……」

過ぎたるは及ばざるが如し。
後悔は先に立たず、役にも立たないもんだ。
後悔だけならなんとやら、役に立つのは反省だ。

ミセ;゚ー゚)リ「……ゴミの日だけは10分早起きしよう」

大量のゴミ袋を抱えて階段を往復しながら、私は心に固く誓う。


65:2009/05/09(土) 23:28:36.77 ID:
部屋に戻り、掃除機を掛け食器を洗う。
汗を吸い、少し汚れたジャージを洗濯かごに放り込み、シャワーを浴びる。

洗濯だけは小まめにやってたりはする。
流石に着て行く服がないという事態は避けたい。

ミセ*゚ー゚)リ「ふぃー、サッパリした」

バスタオルだけを巻いたままソファーにダイブ。
暖房すらつけていない2月の室温はかなり冷え込むが、シャワーで火照った身体には心地良い。
まあ、風邪引くと嫌なんですぐ何か着るけど。

ミセ*゚ー゚)リ「……」

先程よりは片付いて綺麗な部屋を見回す。
うん、これなら誰かの突然の来訪があっても大丈夫だ。
なんってたって今日は2月14日。

誰かが推し掛けて来て……何て展開はあっても不思議じゃない。
何てたって、こちとらうら若きピチピチの乙女だ。
職場では出来る女だし、密かに憧れられてても何の不思議もない。


66:2009/05/09(土) 23:31:45.02 ID:
支援
67:2009/05/09(土) 23:31:48.94 ID:
ミセ*゚-゚)リ

まあ、不思議ではないけど、時々そんな不思議が起る事も無きにしも非ず。
現実はそんなにnotスイーツ。
日々企業戦士として闘い続けるキャリアウーマンには恋に恋する時間すらないわけで。

ミセ*゚-゚)リ「鳴らない電話にチャイムと……」

うん、想定の範囲内だけどね。
鳴ってたらもっと早く起きてるね。
それ以前に予定があったら自分でちゃんと起きてるし?
ないから寝てたんだし?

じゃあ、何でこんな日に休みを取ったのかと言えば、有給の消費期限が迫ってただけ。
掃除が終わった時点で、綺麗さっぱりやる事もなくなったわけで。

ミセ*゚-゚)リ「もっかい寝るかな……」

【】< PiPiPi♪


68:2009/05/09(土) 23:35:06.37 ID:
ミセ*゚д゚)リ「うおっと!?」

突然想定外に鳴る電話。
いや、これはある意味当然。
こんな日に私に誰からも誘いがかからないなんてあるわけがなく──

ミセ*゚-゚)リ「……こいつか」
  つ】

ディスプレイに映る文字列を見てため息1つ。
電話の主は残念ながら同性。
高校以来の悪友からだ。

ミセ*-へ-)リ】「はい、ミセリです。ただいま電話に出ることが出来ませんP-という音の後に思う存分ミセリちゃんを褒め称えてください」

【<「基本、絡みにくいですね。後は高校の時、下駄箱に入ってた手紙を散々自慢して開けてみたら隣の──」

ミセ#゚д゚)リ】「褒め称えろよ! 他人様の黒歴史を吹聴すんなよ! つーか絡みにくいって何だよ!? 地味に傷付くわ!」

【<「他には更衣室で──」

ミセ#゚д゚)リ】「だーまーれー!!! 用事ないなら切るぞ!?」


69:2009/05/09(土) 23:39:21.25 ID:
【<「用事はありますよ。会社に電話したら休みと聞きましたので」

ミセ*゚ー゚)リ】「休みって言っても有給だよ? まあ、バレンタインだし? 予定満載で休んでもおかしくなくない?」

【<「……寝起きですか?」

ミセ;゚д゚)リ】「ね、寝起きちゃうわ! ちゃんと掃除したさ!」

【<「予定はどうされましたか?」

ミセ;゚д゚)リ】「ひ、人が来るから片付けたんだよ」

【<「そうですか。では、その来る方の氏名、年齢、貴女との間柄等はどういったものでしょう?」

ミセ;゚-゚)リ】「そ、それは他人に話す必要はないんじゃないかなー?」

【<「……ミセリ?」

ミセ;゚-゚)リ】「な、何だよ……?」

【<「いえ、残念な事に私も本日は暇な物で、折角だから食事ぐらいは豪華にと思い、昨日から色々と仕込んでいたのですが……」


70:2009/05/09(土) 23:42:21.61 ID:
ミセ;゚-゚)リ】「うん……」

【<「少々作り過ぎてしまいまして、良かったらそちらで一緒に食べようかと思ったのですが……まあ、予定があるなら仕方ないですね」

ミセ;゚-゚)リ】「え……料理? 作ったの?」

【<「ええ、軽くパーティー気分で作りました」

ミセ;゚-゚)リ】「豪華なの?」

【<「色々と新機軸にチャレンジしましたので、豪華かは自信がありませんが、新作は多数です」

ミセ;゚-゚)リ】「ない」

【<「はい?」

ミセ;゚-゚)リ】「予定ない。もう終わった。うん、お客さん帰ったから、この後の予定はないです」

【<「……そうですか、では──」

・・・・
・・・


72:2009/05/09(土) 23:45:12.23 ID:
(゚、゚トソン「どうも、お久しぶりです」

ミセ*゚ー゚)リ「いらっしゃい、ご馳走」

(゚、゚;トソン「その呼び方はどうかと……」

それから1時間後ぐらいに電話の主、トソンは私のマンションにやってきた。
トソンは高校の同級生で、今は売り出し中の料理研究家ってとこだ。
当然、料理は上手い。半端なく美味い。
私がこんな日に女だけで過ごす事に踏み切っても、致し方ないというものだ。

ミセ*゚ー゚)リ「まあまあ、ほれ、荷物」

トソンはクーラーバッグやらバスケットやら色々とぶら下げて来た。
何て言うか本格的。すごく期待できる出で立ちだ。
どっちかと言えば、私が出向いた方が効率は良いのだが、トソンは基本在宅なので、こうやって出歩きたがる事もある。

(゚、゚トソン「早速キッチン借りますよ? 意外と綺麗にしてますね。感心感心」

ミセ*゚д゚)リ「意外は失礼だな。ちゃんと掃除してるさ」

時々は。
掃除したの、丁度今日で良かったと思う。


73:2009/05/09(土) 23:47:26.20 ID:
スレタイの「おかしな」、ってのはそういう意味なんですね。
面白い、支援。
75:2009/05/09(土) 23:47:51.41 ID:
□⊂(゚、゚トソン「あ、そうそう、これを」

ミセ*゚ー゚)リつ□「ん? 何これ?」

(゚、゚トソン「こういう日ですので、一応」

そう言って渡された箱の包装紙を剥がし、蓋を開けてみる。
中身は……

ミセ*゚ヮ゚)リ「おー、チョコレートじゃん!」

(゚、゚トソン「断っておきますが、義理ですらありません。試食をお願いしたくて」

ミセ;゚ー゚)リ「そこは義理でいいじゃん。感想はちゃんと言うからさ」

だったら包装いらないじゃん、なんて言うのは野暮だ。
こいつはそういうとこ折り目正しいくせに、何て言うか素直じゃない。
照れ屋なんだとは思うけど、意地の張り所が時々理解出来なかったりする。

ミセ*゚∀゚)リ「うめー。流石料理研究家。何これ、すっごいまろやか」

(゚、゚*トソン「そ、そうですか? 狙った味は出せてる様ですね」


78:2009/05/09(土) 23:51:03.97 ID:
ミセ*゚∀゚)リ「美味い美味い、これなら何個でも入るよ」

(゚、゚トソン「料理もあるんですから、ほどほどでお願いしますよ」

ミセ*゚ー゚)リ「はいはい、残りは後にします」

こうやって褒めておけば、また色々差し入れしてくれる……なんて意地汚い考えを持つまでもなく、滅茶苦茶美味いし、時々料理の腕を振舞ってくれる。
私にとっては口さがない悪友で、掛け替えのない親友だ。

(゚、゚トソン「で?」

ミセ*゚ー゚)リ「で?」

(゚、゚トソン「いえ、こういう日ですので、貴女からは何かないんですか?」

ミセ*゚-゚)リ「私……から……?」

寄越さなくてもいいから、誰かに渡した話とかしてくれればいいと申されますよ、この悪友。
ああ、もう、皆まで言わすな。何も用意してねえよ。
義理すら用意してねえ。渡すの面倒臭いから有給取ったんだよ。

これでおk?


80:2009/05/09(土) 23:53:01.36 ID:
しかし、出来る女はそんな事は口に出さないのであった。

ミセ*゚ー゚)リ「今日の料理に合いそうなのって、どんなワイン?」

(゚、゚トソン「ワインですか? えっと、基本的にはどれも大丈夫だと思いますが、赤なら無難かな?」

ミセ*゚ー゚)リ「オッケー、じゃあ買って来るからさ、お返しはそれね?」

(゚、゚;トソン「お酒は貴女の方が飲むでしょうに……」

私はトソンのぼやきを無視しして、テーブルの上に置いていた財布を引っ掴み、外に飛び出した。
歩いて数分のとこにディスカウントの酒屋がある。

ミセ*゚ー゚)リ「さて、ワインも買ったし、お腹も空いたし──」

lw´‐ _‐ノv

ミセ*゚д゚)リ「お?」

lw´‐ _‐ノv「ん?」

ミセ*゚∀゚)リ「シューじゃん! 久しぶりー!」


81:2009/05/09(土) 23:55:12.29 ID:
lw´‐ _‐ノv「おお、そういう君は──誰だっけ?」

ミセ;゚д゚)リ「ミセリだよ、ミセリ! 高校の時、同じクラスだったでしょうが?」

lw´‐ _‐ノv「おー、ミセリ、ミセリ、そうそう、その顔、ミセリじゃないか、あの暗黒委員長の下僕の」

ミセ;゚д゚)リ「誰が下僕だ!」

酒屋からマンションの帰り道、偶然にも高校の時の同級生に会った。
名前はシュー。
ミス・マイペースで知られる、自他共に認める変わったやつだ。

lw´‐ _‐ノv「こんなとこで何を?」

ミセ*゚ー゚)リ「ん、これ」

そう言って私は、買ったばかりのワインの入った袋を見せる。
家がこの近所だと言い添えて。

lw´‐ _‐ノv「自棄酒?」

ミセ;゚д゚)リ「何でだよ! 自棄酒なら日本酒とか選ぶわ!」

うん、突っ込み所はそこじゃないけども。


83:2009/05/09(土) 23:58:05.96 ID:
独特のペースに翻弄されつつも、この後の予定がないというシューも折角だから誘ってみた。
懐かしい顔もいるからと、ちょっとした同窓会気分で。

lw´‐ _‐ノv「ほほう、ここが君の部屋か。割と良い所に住んでるんだな」

ミセ*゚ー゚)リ「ささ、遠慮なく上がってくれたまえ。たっだいまー」

(゚、゚トソン「随分遅かったですね? もうすぐ出来ますよ? あら、そちらは……?」

lw´‐ _‐ノv

ミセ*゚ー゚)リ「そう、シューだよ。偶然そこで会ってさ、懐かしいでしょー。折角だから誘ったんだ。料理は十分あるよね?」

(゚、゚トソン「ええ、まあ、全然足りると思いますが。どうも、シューさんお久しぶりです」

lw´‐ _‐ノv「申し訳御座いませんでした」

ミセ;゚д゚)リ「何で土下座ー!?」


84:2009/05/09(土) 23:59:08.93 ID:
lw´‐ _‐ノv「まさか暗黒委──都村さんがこちらにお見えとは露知らず。おのれ、ミセリ、謀りおって……」

(゚、゚トソン「まあまあ、面を上げてくださいな。あれはもう、済んだ事じゃないですか」

ミセ;゚д゚)リ「お前らの間に何があったー!?」

いや、まあ、人間、知らない方がいい事もあるから、この件は深く追求せずに流しました。
うん、我ながら賢い選択だよね。

・・・・
・・・

(゚、゚トソン「さて、頂きましょうか」

lw´‐ _‐ノv「では、私奴がお酌を……」

ミセ;゚ー゚)リ「普通にやろうよ……」

ミス・マイペースどこいった。

(゚、゚トソン「では、えっと……何に乾杯します?」

lw´‐ _‐ノv「都村さ──」

ミセ;゚ー゚)リ「それはもういいから。えっと、女の友情とか?」


85:2009/05/09(土) 23:59:39.22 ID:
支援
86:2009/05/10(日) 00:00:08.03 ID:
(゚、゚トソン「バレンタインに女同士で集う喪女に?」

ミセ;゚д゚)リ「それは何か嫌だな……」

lw´‐ _‐ノv「彼氏いるしね」

ミセ*゚-゚)リ(゚、゚トソン

lw´‐ _‐ノv

lw´‐ _‐ノv「あれ、言ってなかったっけ? 今日彼氏が急に法事で田舎に帰ることになって急遽予定が──」

ミセ*゚ー゚)リ「隊長、ホシの荷物の中にチョコを発見しましたであります」

lw´‐ _‐ノv「おい、コラ、私の荷物に何を」

(゚ー゚トソン「よし、没収」

lw´‐ _‐ノv「ちょ、お許しくだせえ、お代官様」

ミセ*゚ー゚)リ「どうせ渡せないんなら、ここで食べちゃおうぜ?」

lw´‐ _‐ノv「いや、後で渡すんだ──」


87:2009/05/10(日) 00:02:15.53 ID:
(゚、゚トソン「おや、クックル堂の新作ですか。これは中々……」

lw´‐ _‐ノv「開けやがった……」

ミセ*゚ー゚)リ「んー……、でも、これならさっきのトソンが作ったやつのほうが美味いなー」

lw´‐ _‐ノv「食いやがった……」

(゚、゚トソン「まあまあ、私が代わりを作ってあげますから」

ミセ*゚ー゚)リ「んじゃ、私にも作ってよー」

(゚、゚トソン「貴女にはさっき渡したじゃないですか?」

ミセ;゚ー゚)リヾ「いやさ、よく考えたらさ、当日休んでも次の日とかに義理持ってかなきゃまずそうじゃん? メンドくさいけど」

lw´‐ _‐ノv「確かに面倒だな、義理は」

(゚ー゚トソン「本命は面倒ではないと」

lw´;‐ _‐ノv「……いや、まあ、その」

ミセ*゚ー゚)リ「コラ、あんまシュー苛めんなよ」


88:2009/05/10(日) 00:04:18.34 ID:
(゚、゚トソン「はいはい、まあ材料がないんで今すぐは無理ですが、食後に板チョコでも買って来て簡単な物でも作りますか」

ミセ*゚ー゚)リ「さっすが料理研究家」

(゚、゚トソン「それでは、改めて乾杯を」

lw´‐ _‐ノv「何にかな?」

ミセ*゚ー゚)リ「裏切り者に死を、乾杯」(゚、゚トソン

lw´;‐ _‐ノv「え……いやー……、乾杯?」


そんなこんなでバレンタインの夜は更けて行く。
出来る女に恋の花が咲く日が来るのは遠そうだけど、私は今日も元気です。

変わらぬ友情に、乾杯。


 ──05.バレンタイン・悪友チョコのようです 了──


91:2009/05/10(日) 00:08:23.76 ID:
──06.─────────────────


( ><)「肝試しに行くんです」

( <●><●>)「こんな真昼間にですか?」

(;><)「よ、夜だと怖いじゃないですか!」

( <●><●>)「怖いから肝試しなんですけどね」

(;><)「ま、まずは初級編なんです」

(;><)「何事も順番があるんです」

( <●><●>)「それには同意しますが、昼に行っても全く怖くない気もしますね」

( ><)「いいから行くんです」

( <●><●>)「ええ、いってらっしゃい」

( ><)


92:2009/05/10(日) 00:10:05.66 ID:
( <●><●>)「どうかしましたか?」

( ><)「兄ちゃんも行くんです!」

( <●><●>)「何故私が?」

(;><)「ひ、1人だと怖いじゃないですか!」

( <●><●>)「怖いから肝試しなんですけどね」

( ><)「初級編は兄ちゃんと一緒なんです」

( <●><●>)「何ですか、それは?」

( ><)「肝試しのルールなんです」

( <●><●>)「それはビロードが勝手に決めたルールでしょう? 私が従う理由がありません」

(;><)「何事も順番があるんです」

( <●><●>)「それはさっきも聞きました」

( <●><●>)「いいから落ち着きなさい、ビロード。肝試しなんてした所で意味がないでしょう?」


93:2009/05/10(日) 00:12:09.59 ID:
( ><)「あるんです! 僕の肝が試されるんです!」

( <●><●>)「開いて見てあげましょうか?」

( ><)

( <●><●>)「冗談ですが」

(;><)「と、とにかく肝試しに行くんです」

( <●><●>)「だから落ち着きなさいと。ああ、そうだ、アイスでも食べましょうか? ひんやりして目も覚めますよ?」

( ><)「アイスなんか食べられないんです!」

( <●><●>)「好きだったのでは、ソーダアイス?」

( ><)「……でも、食べられないんです」

( <●><●>)「と言いますか、別に私じゃなくて友達を誘えば良いのでは?」

( ><)

( <●><●>)「……ああ」

・・・・
・・・


94:2009/05/10(日) 00:14:19.34 ID:
(*><)「というわけで、このお屋敷なんです!」

( <●><●>)「ビロードに友達がいないのはわかってました」

(;><)「い、いないわけじゃないんです! ただ、友達と行く予行演習に──」

( <へ><へ>)「そういうことにしておきましょう」

(;><)「そんな優しさ溢れる生暖かい目で見ないでくださいなんです!」

( <●><●>)「……しかしここは、空き家ですか?」

( ><)「そうなんです。小学校では期待はずれで有名な心霊スポットなんです」

(;<●><●>)「期待外れって、何の為に肝試しに来てるんですか?」

(;><)「何事も順番があるんです」

( <●><●>)「それはもういいです」

( <●><●>)「兎に角、行ってみましょうか。明らかに不法侵入で犯罪行為ですが、小中学生なら少年法で済みますしね」

(;><)「捕まる事前提は止めて欲しいんです」


95:2009/05/10(日) 00:17:13.59 ID:
しえん
96:2009/05/10(日) 00:18:04.97 ID:
( <●><●>)「冗談ですよ。我々が捕まるはずないじゃありませんか」

(;><)「兄ちゃんの冗談は時々よくわかんないんです」

・・・・
・・・

( <●><●>)「……で、屋敷を一回りして来たんですが」

( ><)「見事に何もなかったんです」

( <●><●>)「まあ、初級編でしたからね」

川д川「これといって由緒ある建物ってわけでもないしね」

( <●><●>)「そうですね、造りからして戦後でしょうからそれなりには古いのでしょうが、割と最近まで誰か住んでたようですね」

( ><)

川д川「そうよ、よくわかったわね」

( <●><●>)「埃の積もり具合や庭の草の伸び具合から、何十年も空けたわけではないのはわかってます」

川д川「正しくは3年前ね」


97:2009/05/10(日) 00:20:06.39 ID:
( <●><●>)「何かあったのでしょうか?」

川д川「ほら、今不況じゃない? ここも一応、企業の社長さんの家だったんだけどね、よりによってあれに投資しちゃってさー」

( <●><●>)「あれとは? ひょっとして海外の住宅関連のローンとか……」

川д川「そうそう、それ。馬鹿だよねー、欲に目が眩んじゃってさ……。会社の業績不振も相俟って、負債がもう、雪達磨式」

川д川「挙句の果てに最後は一家心中とか、目も当てられないわね」

( <●><●>)「仰る通り、返す言葉もありませんね」

(((;><)))「あ、あのー……兄ちゃん? そ、その人……」

( <●><●>)「なるほど、それで貴女はその一家心中した家のご令嬢、というわけですかな?」

(;><)「気付いてた!?」

川д川「ううん、ただの通りすがり」

(;><)「違うのかよ!」

川ー川「──の幽霊」

( >< )


105:2009/05/10(日) 00:36:02.88 ID:
(((;><)))「に、にににに兄ちゃん、ほ、本物、本物……」

( <●><●>)「今更幽霊ぐらいで怯える意味がないのはわかってます」

( <●><●>)「幽霊さん?」

川д川「貞子よ」

( <●><●>)「では、貞子さん、こちらで亡くなられたのはどんなご家族でしたか? ご存知なら、お教え願いたい」

川д川「そうね。生前はとっても仲の良い家族だったみたいね」

川д川「ちょっと厳しいけど、頼りになるお父さん。それを支える、心優しいお母さん……」

川д川「頭が良くて、弟思いのお兄ちゃん……」

( <●><●>)

川д川「そして、小さくて泣き虫で、怖がりで友達がいなくて、10歳までおねしょして……」

(;><)「随分具体的なんです!」

川д川「ソーダアイスが好きで、いっぱい食べ過ぎてよくお腹壊して、でも、家族の事が大好きでとっても良い子の弟」

( ><)


107:2009/05/10(日) 00:37:26.21 ID:
なんと
支援
108:2009/05/10(日) 00:38:05.36 ID:
川д川「そんな4人家族だったみたいね」

( ><)「兄……ちゃん……?」

( <●><●>)「……思い出しましたか、ビロード」

( ><)「…………はいなんです」

( <●><●>)「では、逝きましょうか。我々には行くべきとこがあるのはわかってます」

( <●><●>)「貞子さん、お手数をおかけしました」

川д川「ううん、ごめんね、お父さんの事、悪く言っちゃって」

( <●><●>)「……まあ、事実ですからね。それでも、私は尊敬しておりましたが」

川ー川「良いお父さんだったんだね……」

( ><)「……僕達、お父さんとお母さんに会えるんですか?」

川ー川「会えるよ、きっとね」

「天国で……」

・・・・
・・・


110:2009/05/10(日) 00:38:27.35 ID:
なんだって…
111:2009/05/10(日) 00:40:08.28 ID:
ξ゚⊿゚)ξ「終わった?」

川д川「ええ、2人とも成仏したよ」

ξ゚⊿゚)ξ「そう……良かった……」

川ー川「流石、寺生まれのツンさん、優しいね。無理矢理成仏させるのは簡単だったでしょうに」

ξ-⊿-)ξ「別に……ただ、話して済むならその方が楽だと思っただけよ」

川д川「はいはい、そういう事にしときましょ。……それは?」

ξ゚⊿゚)ξ「……お供えよ」

川ー川「そう……。それ、そのままでいいんじゃないかな?」

ξ゚⊿゚)ξ「割らなきゃ食べ辛くない?」

川д川「大丈夫、必要なら自分達で割るでしょ。それよりも、ずっと一緒にいさせてあげたいからね」

ξ゚ー゚)ξ「……そうね」

ξ*-⊿-)ξ「ま、この暑さじゃ、すぐ溶けるでしょうけどね……」

川ー川「……フフフ」


 ──06.2人のソーダアイスのようです 了──

112:2009/05/10(日) 00:40:41.37 ID:
まさかの…
114:2009/05/10(日) 00:40:58.56 ID:
寺生まれのTさんwwwwwwwwwww
115:2009/05/10(日) 00:42:12.57 ID:
──07.─────────────────


カタカタと、キーボードを打つ乾いた音が無音の室内に響く。
音を出している本人が言うのもなんだが、リズミカルとは言えないまばらな音はあまり宜しくない。

音がまばらなのは、筆がノってない証拠なのだから。

(´<_` )「パソコンに打ち込むのに筆というのも変だな……」

文筆、執筆、才筆、早筆、文章を書くことに関連する熟語には筆の字が使われている物が多い。
だが実際、俺がやってる執筆と言われる作業は、筆のふの字も使っていない。
全てコンピュータに打ち込み、データで入稿される。
そして印刷機で出力され、本という形になる。

いつの間にか執筆活動から筆は締め出されてしまっている。

(´<_` )「そもそも筆自体が使われていないんだがな……」

精々鉛筆止まりだ。
書道家や画家でもなければ、筆には触れないだろう。
画家もパソコンという新たなキャンパスに舞台を移している人間も多いから、やはり筆はどんどん姿を見なくなる。


117:2009/05/10(日) 00:44:15.71 ID:
(´<_` )「おっと、そんなどうでもいい事を考えている場合じゃなかったな」

ノートパソコンのモニターに目を落とし、執筆を続ける。
執手や執打はやはり言葉として不自然だから、執筆という言葉を使わざるを得ない。

まだ原稿用紙にして10枚分ほど足りていない。
そして締め切りは明日の昼。
駆け出しの随筆家の俺が、そうそう原稿を落とすわけにもいかない。

仕事自体がそうあるわけではないのだ。
数少ないチャンスを、棒に振るつもりはない。
残り12時間、筆がノっていれば十分いける時間だが、正直な所、今の調子だと厳しいかもしれない。

(´<_` )「……お菓子か」

今回のテーマはお菓子。
どんな切り口にするかは自由らしいが、俺は適当なお菓子に適当なエピソードを付けて物語仕立てにしてみた。
随筆なのか、と聞かれれば多少首を捻らざるをえないが、随筆は気の向くままに記した文章という意味合いもある。
ならば俺の気の向いた文章でもいいのではないか。

社会的な切り口や、仰天ニュース等から書き始める方が一般的で楽だとは思うが、似た様な文章だと埋もれてしまう。
俺みたいな駆け出しは、何処かで気を衒って目を惹かなければ厳しいのだ。


119:2009/05/10(日) 00:46:20.04 ID:
(´<_` )「……もう1話欲しいな」

流石に半分以上は書き上げているのだが、まだ文章量が足りていない。
猶予は2週間以上あったのだから、この段階で書き上げ切れてないのは偏に俺の不徳の致す所だ。
気が進まない仕事という事もあったが、昔から、追い詰められないとエンジンがかからなかった。

(´<_` )「俺はスロースターターなんだよ」

誰に言うでもなく、ぽつりと呟く。
静かだった部屋に俺の声が響く。
実際は響くほどの広さもなく、反響し様もないのだが、その辺りは俺の語彙力のなさの所為で、そう表現せざるを得なかった。

(´<_` )「何だ、雨か……」

先ほどからキーの音に異音が混じると思っていたら、いつの間にか雨が降り出していた。
天気予報は見ていなかったが、きっと予報どおりに降り出したのだろう。
最近の天気予報は本当に優秀だと思う。

(´<_` )「やれやれ、気が滅入るな」

実際は既に滅入り切っていて、これ以上気持ちの沈み様がない。
もちろん、一向に進まない筆、執筆活動の所為だが、進まない理由を雨に結び付けて正当性を持たせようとしたのかもしれない。

無駄な事だが。
そんな事をしても締め切りは延びず、俺の筆力も上がるわけではない。


120:2009/05/10(日) 00:49:08.66 ID:
面白いなあ、支援
121:2009/05/10(日) 00:49:21.89 ID:
カタカタと、リズミカルとは程遠い演奏が鳴り響く。
拙いながらも曲は流れる。
流れた分だけ話が紡がれる。

聴衆のいない独演会。
練習であり、本番。
ここで弾いた曲を、そのまま客に聴かせる事になるのだ。

手は抜けない。抜くつもりはない。
これが、この音が今の俺の唯一の表現手段なのだから。

(´<_` )「……とは言え、流石に疲れたな」

何時間打ち続けたかわからない。
浮かぶ言葉を必死でかき集め、並べ立てる作業に費やした。
無を有に、形に表すという作業に費やした。

それは創作と呼ばれながらも、俺にとっては作業なのだ。

(´<_` )「一息入れ──」


123:2009/05/10(日) 00:50:13.71 ID:
寝るから先に言う、乙!
124:2009/05/10(日) 00:51:28.90 ID:
( ´_ゝ`)「よう、弟者、精が出るな」

(´<_` )「兄者、まだ起きてたのか」

時刻は既に深夜と呼ばれるの相応しい時間だ。
三流とは言え会社勤めの兄者が起きていていい時間ではない。

( ´_ゝ`)「三流は余計だろ」

(´<_` )「心を読むな、兄者よ」

どうやら口に出ていたらしい。
それに気付かぬほど、疲れているという事か。

(´<_` )「して、何の用だ兄者よ? 寝ないと明日の仕事に差し支えるぞ?」

( ´_ゝ`)「ああ、もう寝るよ。だが、寝る前にがんばってる弟者に差し入れだ」

(´<_` )「兄者にしては気がきくじゃないか。ん、コーヒーか? 丁度淹れようかと思ってたんだよ」

( ´_ゝ`)「ああ、コーヒーだ。だが、ただのコーヒーじゃないぞ。疲れてる時は甘い物だからな」

(´<_` )「……俺、ブラックの方が好きなんだが」


125:2009/05/10(日) 00:53:44.12 ID:
( ´_ゝ`)「まあ、そういうな、ほれ」

(´<_` )「いや、好意は有り難く受け取るよ。ありがとう、兄者」

兄者から手渡されたコーヒーカップは、ちゃんとお湯を沸かし直したのか、程よい熱さを保っていた。
兄者にしては気がきき過ぎている。
大方、姉じゃ辺りに突っ込まれながら淹れたのだろう。

(´<_` )「……ん? 何だ、この匂い?」

( ´_ゝ`)「おお、気付いたか? その匂いこそがただのコーヒーではない証明だ」

甘い、と言うより甘ったるい匂いがコーヒーから漂って来る。
どこかで嗅いだ事のある匂いだ。

これは……

(´<_` )「キャラメル?」

(*´_ゝ`)「正解だ、弟者よ。キャラメルマキアートにしてみたんだ」


126:2009/05/10(日) 00:55:46.23 ID:
(´<_` )「……兄者よ」

( ´_ゝ`)「何だ、弟者よ」

(´<_` )「キャラメルマキアートはキャラメルシロップをラテに入れるのであって、固形のキャラメルをそのまま入れるんじゃないぞ?」

( ´_ゝ`)「……溶ければ一緒じゃね?」

(´<_` )「……うん、一緒かもね。そうだね、そういう事にしとくよ。ありがとう兄者」

(;´_ゝ`)「いや、そんなすっごい冷たい目で見ないでくれない? お兄ちゃんちょっと凹むから」

(´<_` )「冗談だよ。感謝してる、わざわざありがとう」

( ´_ゝ`)「この位お安い御用だ。……あんまり根詰めすぎるなよ?」

(´<_` )「ああ、わかってるよ。……あ、そうだ兄者──」

・・・・
・・・


127:2009/05/10(日) 00:58:00.15 ID:
カタカタカタと、先程までよりは幾分テンポアップした曲を奏でる。
案の定、キャラメルマキアートからは程遠い、不思議なコーヒーもどきの味がしたが、お陰さまで変に目が覚めた。
兄者のボケもたまには役に立つ。

(´<_` )「あと3分の1か……」

あれから数時間、キーを叩き続けた。
無心で叩き続けていると、心のどこかで、何の為に、といった様な疑問が浮かび上がる事もある。

そんな事は決まっている。
生きる為だ。

俺はこれで糧をえているのだ。

同時に、違う言葉も浮かび上がる。

自己実現。

今はそれを、表に出せない。
書きたいものを、書ける身分じゃない。

(´<_` )「……甘い」

書きたいものを書けばいい。
そう言う人もいる。
無責任に言う人がいる。


129:2009/05/10(日) 01:00:27.36 ID:
(´<_` )「……甘いな」

兄者から、あのコーヒーもどきに使ったキャラメルの残りをもらった。
眠気覚ましに丁度良いかと思ったから。

ご丁寧にコーヒーキャラメルだ。
最初から、コーヒーに入れるつもりで違和感のないものを買ったんだろう。

兄者らしい。

大本がが間違っているのだが、それでも、その中で最善を尽くそうとする。
兄者はあれでも努力家だ。
俺はそれを知っている。

一方、才能にかまけた俺は努力を疎かにし、夢見るままに気の向くまま、文筆業を選んだ。

そして挫折。

今を生きるのに精一杯だ。

書きたいものは当然あった。

今もあるかはわからない。


130:2009/05/10(日) 01:01:29.06 ID:
支援
132:2009/05/10(日) 01:02:47.33 ID:
忙しい今を言い訳にし、本当に書きたいものからは目を背けている。

誰かがそう言った。

誰かにそう言った。

俺には聞こえなかった。

俺は聞いていなかった。

(´<_` )「……本当に甘いな」

書かない言い訳に書く事を使う。
いい加減、気付いてるはずだった。

(´<_` )「……甘いキャラメルだな」

曲が止んだ。
代わりの曲を空が演奏してくれている。
一定のリズムで響き渡る多重奏。

俺が弾かずとも、誰かが弾いてくれるのだ。


133:2009/05/10(日) 01:05:02.97 ID:
(´<_` )「……甘いのはキャラメルか」

          ctrl + A

(´<_` )「……それとも」

           Del

(´<_` )「……俺自身だろうか」

          ctrl + S

(´<_` )「……書こう」

誰かが書いてくれる原稿ではなく。

(´<_` )「書こう」

俺しか書けない物語を。

(´<_` )「……甘いかな?」

キャラメルは甘いもんだ。
明日はちゃんとしたキャラメルマキアートを兄者に飲ませてやるか。


 ──07.キャラメル奏でる甘い歌のようです 了──


134:2009/05/10(日) 01:06:55.66 ID:
以上、お菓子な話たちでした。

予定より長引いてしまいましたが、夜分に支援等どうもありがとうございました。

特に総括したオチもなくフェードアウトです。
御機嫌よう。

135:2009/05/10(日) 01:07:32.14 ID:
乙!
136:2009/05/10(日) 01:08:05.54 ID:
すっげーよかった!ありがとう!乙!
137:2009/05/10(日) 01:10:49.52 ID:
乙!!
スレタイの弟者は出てこないんじゃないかと思ってた
138:2009/05/10(日) 01:12:48.37 ID:
乙!面白かったよ
139:2009/05/10(日) 01:13:01.77 ID:

オムニバスもたまにはいいなぁ。
140:2009/05/10(日) 01:18:01.04 ID:
よし、読み終わった!乙!
面白かったよ!!
元スレ: