1:2007/08/26(日) 10:26:56.85 ID:

視界が真っ暗になったり、真っ赤になったりと安定しない。
全身は火が着いたかのように熱いのに、身体の中の内臓は氷でもブチ込まれたかのように冷たい。

痛覚は嫌なくらいに存在しているのに、指一本動かすことが出来ない。

……。

あー、なんだろう、コレ。

周りの状況を確認しようにも、首を回すことすらままならない。

明滅している視界の中、眼球が映し出すのはただ雲ひとつない空しか存在せず、ここがどこであるかすらも理解出来なかった。

いや……ちょっと磯臭いから、海かもしれない。

意識は全然はっきりとして来ないけれど、少しずつ感覚がはっきりとしてきた。

全身が、恐ろしく痛い。

2:2007/08/26(日) 10:30:27.77 ID:

あーなんでこうしてるんだろう?

何があったんだろう、というか、俺ってなんだったっけ?

何も、思い出せない。

目の前の空を無秩序に、不規則に、光景が目の前に現れては消えて、現れていく。

常識で考えて空にそんな光景が浮かんでるってことはありえないだろう。

ああ、もしかしたらこれは走馬灯ってヤツなのかもしれない、死ぬ前に自らの思い出を巡るっていう、アレ。

……あれって記憶喪失状態でも適応するんだ。

しかし、面白いモノで記憶喪失状態で自らの走馬灯を見たところで、なんだかつまらない映画を見たような気分になってしまう。
3:2007/08/26(日) 10:32:18.49 ID:

と、突然大きな振動が起きた。

地震か? と一瞬思ったけれども、どうにも違った。

誰かの声が騒がしく鼓膜を叩いているから、誰かが俺のことを揺さぶっているらしい。

まぁ、その声は何を言っているか聞き取れないのだけれども。

聞き取れないのだけれども。

その声を聞いた瞬間、何か、引き金を引いたような気がした。

変わり続けていた走馬灯がピタリと一つの光景で停止する。

そして、その光景がドンドン拡大して行く。

(*;ー;)「…………!」

耳に鳴り響く声が、徐々に小さくなっていく。

意識が徐々に飛びそうになる。

それは意識がなくなる、という意味合いではなく文字通り『どこかへ』飛んで行きそうになるという意味合い。

今更、どこに行けっていうんだろうか?
4:2007/08/26(日) 10:33:22.02 ID:

声が完全に聞こえなくなってしまう前に、どうしても知っておきたかったことがあった。

俺はその声に全力で耳を傾けた。

全てがノイズのように聞こえるが、その中でもたった一言だけ聞き取ることが出来た。


(*;ー;)「ジョルジュ……!」


そっか。
それが俺の名前らしい。



       ( ゚∀゚)ジョルジュはバトンを渡すようです
6:2007/08/26(日) 10:34:39.79 ID:

ζ(゚ー゚*ζ「じょっ、ジョルジュ」

誰かの声で、俺は目覚めた。
目覚めたというよりは、ワープしたという感じだ。

あれほど激しかった痛みは嘘のように消え去っているし、視界もはっきりしている。
ここはどうにも教室のようだ、。
そして目の前には不安そうにこっちを見つめる一人の少女。

長めの髪、小柄な体躯と控えめな凹凸、制服を着てるから多分中学生か高校生なのだろう。

けど、まるで小学生のように童顔。
瞳は捨てられた子犬のように頼りなさ気で、弱気オーラが全身から滲み出ている。

あー、えっと、誰だろう、この人。
7:2007/08/26(日) 10:35:55.49 ID:

誰だかわからない、そもそも俺は死ぬ寸前だったはずなのに。
外でぶっ倒れていたはずなのにどうしてこんなところにいるのだろう。

自分自身がはっきりとしない、何かが抜け落ちている感じ。
まぁ、抜け落ちているモノは記憶だけれど。

( ゚∀゚)「……」

ζ(゚ー゚*ζ「ダメだよジョルジュ、ちゃんと授業は聞いてなくちゃ」

お前誰だ?
そう伝えようと口を動かした。

( ゚∀゚)「デレ、授業は寝て聞くもんなんだぜ?」

俺は、別の言葉を口に出していた。
すらすらと口から流れる言葉、そこまで来てようやく身体が勝手に動いていることに気が付いた。

意識もはっきりとしているし、感覚もある、。
けれどそれは自分の意思とは関係がない。

……どうなっている?
8:2007/08/26(日) 10:36:41.76 ID:
支援
9:2007/08/26(日) 10:37:59.76 ID:

ジョルジュ。

ここに来る前に聞いた名前。
多分それが俺の名前であることには間違いない。

それは当てはめたピースのようにしっくりと来るからだ。

そして多分この身体も、俺のモノだろう。
なんと言うか、ひどく馴染んでいる。

けれど、言う事を聞かない。

……もしかして、これは俺の走馬灯の中なのではないだろうか?

それならば辻褄が合う。
それはすでに過去の出来事なのだから、俺には修正が出来ないのだ。

まぁ、走馬灯の中に飛ぶ、ってこと自体が非現実的であるが。
多分、夢みたいなものだろう。

デレ、と俺が呼んだ少女はちょっとだけ怒ったような表情をする。

全く怖くないんだけれども。
10:2007/08/26(日) 10:39:26.66 ID:
ζ(゚ー゚*ζ「そっ、そんなことないよ。ちゃんと勉強しなきゃ、大変なんだから」

( ゚∀゚)「何が大変なんだよ」

ζ(゚ー゚*ζ「それはもう……ええっと、とにかく大変なんだよ……将来とか、そういうことが」

( ゚∀゚)「いや、大丈夫だよ。お前、俺が言ってるんだぜ? 大丈夫じゃないわけないだろうが」

ζ(゚ー゚*ζ「それは……そう、かもしれないけど」

おいおい、正しいこと言っているのは俺じゃなくて、お前の方じゃないか。

何で、この子は自分を貫こうとしないんだろう?

俺の言っていることは支離滅裂だ。
俺が言ってるから、なんて何の根拠もない。

それなのに彼女は俺の言っていることをあっさりと受け入れようとしていた。

俺は間違っているのだから、お前が訂正しなければいけないのに――――。

ζ(゚ー゚*ζ「ジョルジュが言うなら、そうなのかな」

( ゚∀゚)「そうそう」
14:2007/08/26(日) 10:41:29.99 ID:

……。

釈然としない。
過去の俺はいったい何をやっているのだろうか?

もやもやとした気持ちが胸の中に広がった。





しばらく記憶を眺めていて、俺のことが少しずつ分かってきた。

この女の子――デレは俺の幼馴染みらしい。
そのせいかどこに行くときも後ろからちょこちょことくっついて来る。
クラスメートからも色々とからかわれるほどだ。

けど、デレには友達が少ない。

人見知りが激しいタイプらしく、誰かと話す時はいつも俺の後ろに隠れていて
俺が常に間に入って意思疎通をしている感じだ。

別段付き合いが悪かったりするわけじゃないので、悪い印象はあまり持たれてないのが救いだけど。
15:2007/08/26(日) 10:42:44.04 ID:

とりあえず俺が感じた印象は……弱いな、というモノだった。

学校の昼休み。
デレはやはり俺の傍で、テレビのCMで見る感じの雑誌を読みながらため息を付く。

ζ(゚ー゚*ζ「はぁ、何で水着ってこんな高いんだろうね」

( ゚∀゚)「明らかに布地の量と値段が反比例してるよな。
     スクール水着でも着れば?」

ζ(゚ー゚*ζ「……それはちょっと、それにもう中学の時の水着なんて入らないよ」

( ゚∀゚)「嘘つけ。絶対スリーサイズ変化してねえだろ」

ζ(゚ー゚*ζ「身長は伸びてるのっ! 身長が変わっても水着は入らなくなるのッ!」

( ゚∀゚)「つまり、スリーサイズは変化してないと」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

( ゚∀゚)「……」

ζ(゚ー゚;ζ「うっ、海に行きたいな~♪」

あっ、話逸らしやがった。
16:2007/08/26(日) 10:43:56.01 ID:
支援
17:2007/08/26(日) 10:44:39.44 ID:

( ゚∀゚)「誰の子を?」

そして俺も壮絶なボケを返していた。

デレは顔を真っ赤に染め上げながら、しばらく口をぱくぱく開閉している。
どうにもあまりのセクハラ発言にすぐさま反応しきれないようである。
まぁ、この発言に即理解出来るのもアレだとは思うけど。

しばらく立って、ようやく喉から声を捻り出す。

ζ(゚ー゚*ζ「海、シーだよ、シー! 泳げる方の海に行って遊びたいなっ! って思ったの!」

( ゚∀゚)「海ねえ……俺、あんまり好きじゃないんだよなぁ」

ζ(゚ー゚*ζ「えっ、そうだったの? まぁ、確かにジョルジュと海って行ったことなかったけど」

( ゚∀゚)「プールは行ったけどな……だって海って砂の処理面倒だし、目開けにくいし、髪パサパサになるし。
     砂の処理が面倒だし、すげえ磯臭くなるし、着替えとかいちいち場所確保するのも面倒だし……。
     特に砂の処理とか面倒だからさ」

ζ(゚ー゚*ζ「砂の処理が三回言うほど嫌なんだね……」

素晴らしいほどにやさぐれ者の理屈である。
だけど、気持ちはとても分かる、というより俺の想いそのままだ。

流石は俺自身というべきなのだろうか。
19:2007/08/26(日) 10:46:13.67 ID:

デレは大きくため息をつきながら、諦めの表情と共に言う。

ζ(゚ー゚*ζ「でも行きたいなぁ」

( ゚∀゚)「嫌だ。そうだな、お前が一人でも頑張れるようになったら行ってやるよ」

ζ(゚ー゚*ζ「……いや、今も普通に頑張ってるから! 勉強とか、何でも一人でやってるから!」

その反論は、至極当然かもしれない。
けれど、多分、俺が言いたいことはそういう意味合いじゃないのだろう。

この子はこのままじゃダメだ。

もしも今、俺がいなくなったら、学校で孤立してしまう。

誰とも話すことも出来ずに、自らの意思も通せずに、常に独りになって、潰れてしまう。

それじゃあ、ダメなんだ。

俺は思う、彼女には……いや、デレには――――。


 『もっと強くなってもらいたい』


20:2007/08/26(日) 10:47:24.32 ID:

想いが、重なった。

それは今の俺と、この記憶上での俺の考えていることが、ピタリと一致したのだと本能的に理解する。
ばらばらになっているジクソーパズルの角を見つけたような、感覚。

同時に、頭の中に映像や情報が一気に押し寄せてきた。
一瞬くらりとするものの、それはすぐに収まる。

これは……記憶?

俺の名前は、そうだ、ジョルジュ。
そして、デレは小さい頃からずっと一緒だったじゃないか。

いつも後ろからくっついて来て、弱気で、いつも俺が守ってあげていたような気がする。

そして俺は思っていたんだ、守りながら、もっとデレには強くなって欲しいって、思っていたんだ。

後は…………ダメだ、思い出せない。
21:2007/08/26(日) 10:48:11.27 ID:

でも、少しだけ記憶を取り戻した。
それは『ジョルジュとデレの過去』の記憶。

( ゚∀゚)「なんで……忘れてたんだろう」

そう、呟いた。
呟くことが出来た。

それは、本来の記憶には、多分在りえない行動。

記憶とは違う行動を行った時点で、その過去の映像は崩壊する。
一瞬、テレビの砂嵐のように視界がぶれて、そのまま俺の視界はブラックアウトしてしまう。

そして、また意識が飛躍する。


……



23:2007/08/26(日) 10:49:38.09 ID:




( ゚∀゚)「俺を呼び出したのは、君か?

今度は外だった。
また他の記憶に飛ばされたらしい。

そこではまた俺は指一つ動かせないし、声も出すことが出来ない。
良く分からないが、まだ記憶を取り戻す必要がある、ということなのだろう。死に際に思い出して何の意味があるのかは不明だが。

(*゚ー゚) 「うん、私が呼び出したの」

( ゚∀゚)「さいですか」

(*゚ー゚)「さいなのです」

どうにも他に人がいたらしく、言葉が返ってきた。
俺は慌てて意識をそちらに向ける。

記憶は巻き戻しが効かない、可能な限り過去の情報を取りこぼすのは避けたいところだ。

考えることは、多分後でも出来るだろうから。
24:2007/08/26(日) 10:50:14.06 ID:
wktk支援wktk
25:2007/08/26(日) 10:51:04.01 ID:

目の前にはまた女の子がいた。
しかし、見た目の印象としてはデレとは対極的。

ボーイッシュな短めの髪、身長は多少高めでスタイルも良い。
顔立ちは整っているもののどこか意思の強さを感じさせる。

……んで、俺は何で呼び出されているんだろうか?
周りを見れば、すぐ近くに建物がある。

どこかの裏庭のようだ。
そして、俺も彼女も制服(デレのと同じものだ)を着ているってことは、また学校か。

(*゚ー゚)「……」

女の子は涼しげな表情をしている、と言いたいところだがどこか挙動がおかしい。
こちらの様子を伺うというか、周りの様子を気にしているというか。

しばらくして、彼女は意を決したようにキッと表情を引き締めた言葉を紡いだ。
26:2007/08/26(日) 10:52:34.24 ID:

(*゚ー゚)「あのさ、あなたとデレさんって付き合ってるの?」

( ゚∀゚)「……は?」

(*゚ー゚)「いや、その、だからね。ジョルジュくんとデレさんってのは恋人同士なのかなって聞いたのよ」

あー。

うん、多分こういう質問は今まで何度もされていたと思う。
俺とデレの普段の行いを見てればそう思われるのも、認めたくはないが、納得だった。

だからなのだろう。
俺の口からはとても言い慣れている言葉が勝手に走り出す。

( ゚∀゚)「違う。アイツは幼馴染みであって、それ以上でもそれ以下でもない」

(*゚ー゚)「ふーん、本当にそう言って切り返すのね」

( ゚∀゚)「……」

なんだろう、この人喧嘩売りに来たのだろうか?

とか思っていたのだが、どうにもその言葉も自らを冷静だと見せるためのフリらしい。
視線はさっきからちょろちょろ動きまくりで、その両手は空気で綾取りをするかの如く、怪しく動いている。

……本気で何なんだろう、この人。
28:2007/08/26(日) 10:54:10.64 ID:

(*゚ー゚)「えっと、それじゃあ、さ」

その言葉を合図に、彼女は感情を隠すのをやめた。
顔は真っ赤に染め上がり、両指先を胸の前で合わせている。

そんな分かりやすい感情を出されたら、流石の俺もこの先の展開を予想せざるを得ない。

(*゚ー゚)「私と――――付き合ってみない?」

( ゚∀゚)「……は?」

(*゚ー゚)「いやー、ちょっと前から気になってたのよね。でもいつもデレさんと一緒だから声かけにくかったというか。
     何かさり気なく優しいところとかすごい格好良いなー、って前から思ってたり」

( ゚∀゚)「……」

(*゚ー゚)「……えっと、出来れば反応を頂きたいのですが」

(;゚∀゚)「あっ、いや、すまん、あまりに突然の出来事で意識が一瞬飛んでた」

その言葉に女の子は不満そうに眉を潜める。

これって、告白だよな……。そう自覚して自らの頬が熱くなる。
記憶が乏しいから分からないけど、多分これが初めての告白なのではないだろうか?

多分そうだ、そうに違いない。
29:2007/08/26(日) 10:55:17.32 ID:

胸の内からこみ上げる嬉しさ。
多分、今の俺と過去の俺はこの瞬間共感しているだろう。

その嬉しさの裏にある、重たい想いすらも。

( ゚∀゚)「あー、嬉しいし、断る理由は本当はないんだけど、やっぱり無理だわ」

恋人とか、作ってられるような立場では、生憎ない。
昔からずっと一緒にいた相棒はあまりにも弱いから、俺が一緒にいてあげなくてはならないから。
そして、彼女を俺が強くしてあげなくちゃいけないから。

それは、独善かもしれない。でも、それは約束だから。

……約束?

誰と、こんなことを約束したんだっけ?

それを思い出そうと記憶の扉を開けようとする前に、彼女が口を開いた。

(*゚ー゚)「あちゃー……やっぱりそうなのね。うん、それじゃあ仕方がないわね」

彼女は。
予想していたと言わんばかりの口ぶりでそう呟いた。

そこに残念そうな表情はない、それどころかむしろ嬉しそうに彼女は微笑んでいた。
31:2007/08/26(日) 10:57:16.85 ID:

(*゚ー゚)「じゃあさ、私と友達になってよ」

( ゚∀゚)「……あ?」

(*゚ー゚)「と・も・だ・ち。あれだよ、人差し指をお互いにつき合わせて認識するヤツ」

(;゚∀゚)「それはどこぞの宇宙人限定だと思うが……」

告白とかされたのは初めてだが、フラれた後に友達になろうなんて普通言うもんだろうか?
漫画とかドラマとかではそんな展開一度も見たことはないのだけれども。

しかし、彼女の笑顔に嘘はなければ裏もあるように見えない。

この後の行動はすでに決まっている出来事であり、俺がどうこうするわけじゃないけど。
別に相手から友達になろうと言われているのならばそれを断る理由はないはずだ。

そして、この笑顔を拒絶する理由だって、だがして見つかるもんじゃない。

ふと、彼女から手が差し伸べられていることに気づく。
良いならば握手をしようということなのだろう。

何をどこまで俺が考えているかは理解出来ない。

けれど、俺の身体はその手を取っていた。
32:2007/08/26(日) 10:58:29.38 ID:

(*゚ー゚)「ん、じゃあこれで私とジョルジュくんはお友達ということね」

( ゚∀゚)「……というか、俺アンタの名前知らないんだが」

(*゚ー゚)「あれ? 言ってなかったかしら?」

言ってない。
聞いてない方もどうかと思うが。

彼女は俺と握った手をそのままぶんぶん振るいながら、笑顔で俺に名前を告げた。

(*゚ー゚)「私の名前はしぃ。これから、よろしくね」

34:2007/08/26(日) 11:01:58.05 ID:
wktk支援
35:2007/08/26(日) 11:02:03.20 ID:




しぃは、本当にデレとは正反対なタイプだった。

これは友人になった後に色々聞いたことなのだが
彼女のクラスでは女子を纏めているリーダー的存在らしく、男子からの人気も結構高い。
知らない人は殆どいないくらいの有名人らしい。

俺は知らなかったみたいだけど。

しかし、俺の相棒の方は知っていたそうで、俺と友人になった時は物凄い驚いてしばらく俺の背中で呆然としていたのであった……。
ちなみに、本人の目の前で。

(*゚ー゚)「……割と傷つくわね」

(;゚∀゚)「うん、素直にゴメン」

とは言え、会わせて欲しいと言ったのはコイツからである。

こちらが謝らなくてはいけない筋はないのだが、多分この状況だったら謝ってしまうだろう。
36:2007/08/26(日) 11:03:40.84 ID:

ζ(゚ー゚*ζ「……」

それにしても、デレの人見知りはひどいものだった。
相手をちらちら見ようとしているのだけど、自ら近づこうとする意思はまるで見られない。

これでは仲良くなんてなりようがない。

俺がフォローすべきなのだろうか?
ここでフォローしていいのだろうか?

自分が考えたところで、ここでの行動はすでに決定している。
だから悩んでも意味がないのだけれど、それでも俺は悩んでいた。

先ほど取り戻した記憶が、そうさせていた。

誰も行動を起こさない一瞬。
初めて動いたのは――――しぃだった。

彼女は俺に見せたような笑顔で彼女に近づいていくと、俺の時と同じように、手を出した。

(*゚ー゚)「初めまして、デレさん」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

(*゚ー゚)「私ね、あなたと友達になりたいの。だからジョルジュくんに紹介してもらったのよ」

ζ(゚ー゚*ζ「…………」
37:2007/08/26(日) 11:04:44.85 ID:

(*゚ー゚)「だからお願い、私と友達になってくれないかな?」

邪気のない、しぃの微笑み。
そこに強制はないし、また彼女も嫌ならば仕方がないと思っていることだろう。

どちらにせよその選択は自らの意思で行わなければいけない。
だから俺は彼女から助けの視線を向けられても徹底的に無視することにしていた。

だけどさ。

この笑顔の傍にいたくないなんて思うヤツが、いるとは俺は思えない。

ζ(゚ー゚*ζ「……うん。わっ、私も、友達になりたいよ」

(*゚ー゚)「よし、これで私とあなたは友達ね」

彼女は、手を取った。

自ら意思でちゃんとその手を取ったのだ。


 『これで、ようやくスタートラインに立った』


38:2007/08/26(日) 11:05:06.07 ID:
青春ドラマ展開期待
39:2007/08/26(日) 11:06:23.05 ID:

そんな想いが、シンクロする。

同時に流れ込んでくる記憶。
次に流れてきたのはかなり途切れ途切れではあるが、彼女との、『しぃとの思い出』だった。

彼女だけじゃなくて、そこにはデレもいる。俺たち三人の記憶だ。

何となく思うけれど、これはきっと『繋がり』だ。

本当に思い出さなければいけない記憶へと向かうために必要な、記憶の架け橋。

……なんか色々と思い出してしまった。

これから俺とデレとしぃはとても仲良くなる。
親友同士といっても差し支えないほどに。

今思い出した記憶に、核心は入ってないけれども、それは楽しすぎた日常の記憶。

死にたくないと、思わせてしまうような記憶だ。
けど、それ以上に。

( ゚∀゚)「思い出せない方が良いなんて、思えるわけないよな。
     こんな楽しかったのに」

世界が、崩壊する。

さあ、取り戻しに行かなければならない。
忘れたくない記憶じゃないくて、思い出さなければいけない記憶を。
41:2007/08/26(日) 11:07:50.54 ID:




ζ(゚ー゚*ζ「こっ、告白されちゃったの!」

目覚めてから最初の発言は驚くべき仰天発言だった。

いかんいかん、驚くと仰天はほぼ被っているな。
ここは驚くべき爆弾発言だった、に言い換えるべきある。

とかそんなことはどうでも良いっつーの。えっと、それでなんだっけ?

(*゚ー゚)「えっと、ごめんデレ。もう一度言ってくれるかしら?」

と、一緒に弁当を食べているらしいしぃが、ウインナーを食べようとしてる状態のまま口を開いていた。

その言葉に俺も多少は冷静になり(慌てたところで喋れないし)周りを確認する。
どうにも昼休みらしく、俺とデレとしぃの三人で固まって弁当を食べている。

そして真っ赤になっているデレ。
42:2007/08/26(日) 11:08:48.50 ID:

彼女は小さくなりながら、もう一度同じ言葉を吐いた。

ζ(゚ー゚*ζ「……だから、告白されたの」

二回も言われれば流石に理解は出来る。
理解出来たといっても、冷静な判断が下せるとは限らない。

(;゚∀゚)(*;゚ー゚)「なっ、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええ!」

どこぞの調査隊のような声を上げる馬鹿二人。

43:2007/08/26(日) 11:09:28.79 ID:
支援
44:2007/08/26(日) 11:10:29.17 ID:

(*゚ー゚)「なるほど、いつの間にかデレも罪を告白されるほどに徳を得たのか」

ζ(゚ー゚*ζ「違うよ! そもそも私キリスト教じゃないし!」

(*゚ー゚)「うん、分かってるわよ。良かったわねデレ、今日はお赤飯炊かないとっ!」

ζ(゚ー゚*ζ「うわーん! こっちのボケはどう突っ込めばいいかも分からないよー!」

しばらくして、冗談を返せるくらいの余裕が出来たらしい。
……まぁ、冷静に考えてみれば告白されたってのもおかしい話ではない。

しぃと付き合うようになって、デレは『人前で』話し、笑うようになった。

それはしぃがやたら目立つため、隠れて会話をするってことが難しくなったからなのだが、まぁ結果オーライだろう。

そのため、多少男子にも『陰気な女の子』から『内気な可愛い女の子』という種別で見られるようになったのだ。
まぁ、その激しい人見知りのせいで告白するヤツは今までいなかったけど。
45:2007/08/26(日) 11:12:17.42 ID:

ζ(゚ー゚*ζ「そっ、それでどうしたら良いかなって皆に聞きたくて」

(*゚ー゚)「ふーん……ねぇねぇジョルジュ。どうすれば良いと思う? だってさ」

何か妙にニヤニヤした表情でこちらに振ってくるしぃ。
それに釣られて必死な表情でこちらを見つめるデレ。

こちらに答えを求めているのか。

ただ、返せる言葉は一つしかないだろう。
間違いなく、ここは守ってやる状況ではない。

( ゚∀゚)「そんなん俺が決めることじゃねえよ。そういうのはデレ自身が決めることだ。
     付き合いたければ付き合えばいいし、付き合いたくなければ付き合わなければいい。
     そうじゃないと相手にも失礼だろうよ」

ζ(゚ー゚*ζ「……そっ、そうだね」

(*゚ー゚)「……」

何で非難染みた視線を向けるんだ、しぃ。

その視線は俺にとって居心地の悪いモノだった。
今の俺でそうなのだから、当時の俺にとっては耐え難いものなのだろう。

その後は、どこか重苦しい雰囲気の中、食事が進んでいった。
47:2007/08/26(日) 11:13:33.69 ID:




(*゚ー゚)「あんな言い方して、良かったの?」

放課後。
デレは告白の返事をすると先に教室を出て行き、俺は日直の仕事をしていたらしぃが来て、そして開口一番にそう言った。

何のことかと言えば、間違いなくそれはアイツのことなんだろう。

俺は軽くため息をつきながら、彼女に答えを返す。

( ゚∀゚)「他に何を言えっていうんだ、悪いが俺はあれがベストの解答だったと思ってる」

(*゚ー゚)「……うん、私もそれは同意。でもそれは、気持ちを無視して、の結果よ」

( ゚∀゚)「気持ち、ね」

誰の気持ちのことだろう。やはりデレの気持ちだろうか。

それとも、俺の気持ちか。

あの時の俺がどういう気持ちでああ言ったかは正確には定かではない。
少なくとも、見ていた俺と同じような気持ちではなかったのだろう。

だけど、同じ俺だから、何となく理解は出来る。
48:2007/08/26(日) 11:15:12.08 ID:

――――期待。

これをきっかけに彼女が更に大きく成長してくれるのではないかという、期待。

どんな切なさよりも、どんな想いよりも、俺の中ではそんな気持ちがもっとも大きかったんだと思う。

( ゚∀゚)「俺はさ、アイツと一緒にいるだけで良いんだ。アイツの成長を見守れれば良いんだ」

(*゚ー゚)「それは……恋心かしら?」

( ゚∀゚)「違うよ、使命感だな。アイツを大切に思っていたヤツとの、約束だから」

(*゚ー゚)「…………デレの、両親?」

( ゚∀゚)「それも違う。ぶっちゃけ約束した相手は覚えてないんだ」

約束の相手は、どうやら記憶を喪失する前に忘れてしまっていたらしい。
では、思い出しようがない。

アイツの両親は、俺たちがまだ小学生になる前に亡くなっていた。
だから、そんな約束していてもおかしくはないかもしれない。

だが、俺がデレと親しくなったのはその両親が死んだ後である。

約束した相手も分からない。
だけど、それだけは守っていかなくてはならない、大切な役目。
49:2007/08/26(日) 11:16:07.88 ID:

しぃはそこまで聞いて諦めたようにため息をついた後、いたずらっ子のような笑みを浮かべて言い放つ。

(*゚ー゚)「……何か格好良いね、その役目私にくれない?」

( ゚∀゚)「残念だけど、この役目だけは譲れないんだわ、これが」

(*゚ー゚)「なるほど、それは至極残念」

全く残念じゃなさそうな声で言いやがるしぃ。
夕焼けに照れされた笑顔を見ていて、思わず俺は見とれてしまう。

その時、俺はあまり興味なさそうな口ぶりで、彼女に質問を放っていた。

( ゚∀゚)「あのさ、聞いちまうけど……俺に告白したのって、俺とデレ、どっちが目的だったんだ?」

(*゚ー゚)「……両方かな」

( ゚∀゚)「さいですか」

(*゚ー゚)「さいなのです」

50:2007/08/26(日) 11:17:00.43 ID:
支援
51:2007/08/26(日) 11:17:53.76 ID:

――――…

しばらく日時が経って、デレが告白された相手と付き合い始めたということを聞いた。

相手のことは知らなかったし、無理に知る気もなかった。
デレから紹介受けるくらいになればいいな、って思ってしまうくらいだ。

とはいえ、先のことは覚えてないけど、付き合い続けるならば一度は会っておかないといけない。
役目を譲ることになるかもしれないから。

しぃは良くデレの相談に乗っているらしい。

デートコースとか、恋人ってどういうことをすればいいかとか、そんな相談。
いかにも年頃の女の子らしいなぁ、と思いつつもあのデレがそんな話をする日が来るなんて予想もしてなかった。
何か、感慨深いモノを感じてしまう。

そんなことを話しているデレは、楽しそうだ。
しかし、彼氏と二人きりの時のデレはその笑顔を見せているのかが、不安になった。

――…
53:2007/08/26(日) 11:19:27.70 ID:

それからまたしばらく経った、とある休日の雨の日。

家で惰眠を貪っている俺の家のインターホンが鳴り響いた。
しばらく俺はそのままにしていたが、今日は家には両親がいないということに気づいたらしく、慌てて玄関に向かう。

ドアの先には、全身を雨で濡らしたデレが立っていた。

( ゚∀゚)「……デレ!? お前傘も差さずに何やってんだ!? トトロかお前は!?」

状況を理解出来ずワケの分からんボケをしている俺。
ってかトトロは傘を差していたような気がする。

しかし、そのボケにツッコミを返すどころか、何も言わないデレ。
俺が顔を覗き見ると、そこには表情はなく、涙と雨がごっちゃになっていて、泣いているのかも分からない状況だった。

何か、あったのか。

( ゚∀゚)「……とりあえず上がれ、このままじゃ風邪引くから、どうにかしよう」

そう言うと、デレは小さく頷いた。

とりあえず彼女にそのまま風呂に入るように指示を出して、何か着替えを探す。
俺が行動している中、思考を巡らせる。
いったい何が起きたのだろうか、と。
54:2007/08/26(日) 11:20:30.84 ID:

考えられるのは……やはりあの彼氏だろうか?

ここからはあまり想像はしたくないが、そういうことが起きてしまったのだろうか?

だとすれば、あの時の俺の判断は大いに間違っていたということになってしまう。
まぁ、何にせよ、デレ自身から聞かなければ本当のことは分からない。

彼女が風呂から出るまで、あまり時間はかからないはずなのに、ひどく長く感じた。



 結論から言えば、俺が予想していたような、最悪ではなかった。
 ただ単純に、彼氏と別れてしまったというだけだった。
 どうして?
 そんな疑問だけが頭に集中する。
 
56:2007/08/26(日) 11:21:41.29 ID:

ζ(゚ー゚*ζ「……一緒にいて、楽しかったよ。すごい楽しかったんだよ、彼と過ごした時間は」

( ゚∀゚)「そっか」

ζ(゚ー゚*ζ「でも私は、あの人のことを好きじゃ、なかったんだ」

( ゚∀゚)「……」

ζ(゚ー゚*ζ「勿論、友達としては好きだったよ? けど、それ以上の想いは見つけられなかったよ。
     だから彼がそれ以上を望んだ時、私は応じることが出来なかったの」

( ゚∀゚)「……」

ζ(゚ー゚*ζ「私は正直に言って、彼もそれを受け入れた。だから、別れたの」

( ゚∀゚)「……そっか」

最後の言葉は飛躍していたが、何となく理解出来る。

相手から友達以上の好意はないと言われれば、恋人の関係を継続しているのは辛いだろう。
それは人それぞれだ、それで別れたって彼を攻めることは出来ないし、デレも攻めることは出来ない。

そして、また。

その後友人としての関係を継続し続けていられる人達ばかりじゃあ、ない。
57:2007/08/26(日) 11:23:22.09 ID:

世の中、しぃみたいなヤツばかりじゃないのだ。
フラれてしまえば、相手と会いたくなくなる気持ちも分かる。

ζ(;ー;*ζ「人と別れるのって、辛いね」

( ゚∀゚)「そうだな。それは恋人だけじゃなくて、友達と別れるのも、とても辛いよ」

ζ(;ー;*ζ「うん、私はいつもジョルジュと一緒だったから、初めて知った」

( ゚∀゚)「そうかもしれないな」

ζ(;ー;*ζ「辛いね……本当に辛い」

( ゚∀゚)「じゃあ、もう誰かと知り合ったり、近づいたりするのは、やめるか?」

それは、
我ながらきわどい言葉だと思う。

もしも、これをデレが肯定してしまったら、彼女はずっと弱いままになるかもしれない。
そんな可能性を秘めている言葉。

しばらく、無言の時間が経過する。
それはとても短くてとても深い時間、デレは小さな声で、けれどはっきりと言った。
58:2007/08/26(日) 11:25:06.31 ID:

ζ(;ー;*ζ「辛いけど……それ以上に楽しかったから」

( ゚∀゚)「そうか、それじゃあ、頑張ろうぜ」

ζ(;ー;*ζ「……」

( ゚∀゚)「まぁ、でも今だけは……とりあえず泣いとけ、そしてまた明日から笑顔で学校だ」

ζ(;ー;*ζ「…………うん」

彼女は、また泣き始めた。
俺がその辺の色男だったりしたら、抱きしめてやったり頭を撫でてあげたり出来るのだろうけど。
俺の役割は彼女と一緒にいることだから、それ以上のことは出来ない。

ただ、そばに居てやる。
彼女が泣き止むまで、ただその傍に居る。

……想いはいつの間にか重なっていたらしく、すでにこの世界で自由に動けるようになっていた。

思い出したのは今過ごした時間の記憶。ここからは記憶そのものを辿って思い出していくらしい。
それじゃあとっとと世界を崩壊させて、先に行こう。

ただ、一言だけデレに向けて言わせて欲しい。

ただ、一言だけ。

( ゚∀゚)「……頑張ったな」
60:2007/08/26(日) 11:28:21.53 ID:




次の記憶は長かった。
何か、三ヶ月分くらいの記憶を過ごし続けていた。

その中で何度か想いが重なることはあったけれど、今までのようにそれで自分を制御出来るようにはならなかった。
どうにも今度は取り戻すべき記憶に、自分で気づかなければいけないらしい。

ある日の教室。
いつものように別のクラスからやって来たしぃが、俺を見て驚いた声を上げる。

(*゚ー゚)「ええ! 携帯電話買ったの!?」

( ゚∀゚)「……なんだ、俺は携帯電話も使えないほどの古代人だと思われてたのか?」

(*゚ー゚)「私とあなたとデレで携帯電話使わない三国同盟だったのに!」

( ゚∀゚)「すまんが、デレも買ってしまったな。悪いが俺たちは三国協商側に移らせてもらうぜ」

(*゚ー゚)「ガーン! えっと、立場が弱くなったので仏伊協商を結びませう」

( ゚∀゚)「ロンドン秘密条約もな」

(*゚ー゚)「ひど! それじゃあ三国同盟が崩壊するじゃないのよ!」
61:2007/08/26(日) 11:30:29.85 ID:

良く分からない三国同盟、終了。

今現在、この場にデレという優秀なツッコミ役がいないので、終わりどころを誤ると話が進まん。
今のでさえ互いに次の会話へのつなぎに悩んでいるし。

そんな中会話を推し進めるのはいつもしぃの仕事だった。

(*゚ー゚)「でも急よね? 何かあったの?」

( ゚∀゚)「ああ、デレがね、みんなが持っているから私も欲しいって言い出して一緒に買いに行った」

(*゚ー゚)「へぇ……みんなが持っているから、ね」

しぃは何か微笑ましいモノでも見るように笑った。
確かに、デレは変わり始めている。

あの日以来、本当に少しずつではあるけれど、デレは他のクラスメート達と話すようになって、
少しずつ相手に自分を出せるようになって来た。

俺がいなくても、誰かと話せるようになった。
62:2007/08/26(日) 11:31:17.20 ID:
支援
63:2007/08/26(日) 11:31:46.50 ID:

……なんだか感慨深いものがある。

嬉しさ半分、寂しさ半分。
成長した娘を見る父親の心境ってのはこういうもんだろうか?

そんな俺を見る、ニヤついた笑みのしぃ。

(*゚ー゚)「今なら私と付き合えるかしら?」

( ゚∀゚)「……アホ抜かせ」

……


(*゚ー゚)「それでさ、運動会の学年対抗リレー、そっちは誰が出るのよ?」

そっちが本題だったようだ。
しかし、それくらいちょっと先生に聞いたり何なりすればすぐに分かることだ。

と、いうことはすでにある程度の予測が付いていて、俺に聞きに来たのだろう。

勿体付ける様子もなく、俺は即答していた。
65:2007/08/26(日) 11:33:24.03 ID:

( ゚∀゚)「俺だ、VIP中のはぐれメタルと呼ばれていた俺を甘く見るんじゃないぞ」

(*゚ー゚)「はぐれメタルって柄でもないでしょうに」

( ゚∀゚)「安心しろ、ファミコン版のドラクエ2仕様だからな」

(*゚ー゚)「なるほど、HPが四十くらいあるのよね。それでいて経験値が千ちょっととかいうアレ」

( ゚∀゚)「ああ、そうだな。ちなみに言っておくが、デレはFF7でいうところのイン&ヤンだな」

(*゚ー゚)「攻撃動作が異常に長いアレよね」

なんでそんな詳しいんだお前は。

まぁ、自慢ではないが俺は運動は出来るほうである。
その分勉強は人並み以下なのだけれども。

それの逆を行っているのがデレ。
勉強はとても出来るけど、正直運動神経は皆無に等しい。

67:2007/08/26(日) 11:35:07.61 ID:

ん、そういや、運動と言えば……。

( ゚∀゚)「お前はどうなんだよ」

(*゚ー゚)「勿論私も出るわよ、私だってVIP二中の赤い彗星と呼ばれた女よ」

( ゚∀゚)「さいですか」

(*゚ー゚)「さいなのです」

そっか、やっぱり運動出来たんだなしぃって。
勉強も出来るらしいし、何気に完璧超人じゃねえか。

何はともあれ、これで俺と彼女は同じチームのメンバーということになるわけだ。

彼女はそのまま手を差し伸べて俺に握手を求めた……と思ったら、その手には何故かトランプ。

(*゚ー゚)「やっぱり、こういう上下関係はしっかりしないとねって私は思うのよ」

( ゚∀゚)「……勝負は?」

(*゚ー゚)「ブラックジャックの一本勝負。負けたら一日語尾に『にゃんぴー☆』と付ける」

( ゚∀゚)「OK」

……


71:2007/08/26(日) 11:38:02.04 ID:

しばらく経って、どこかに行っていたらしいデレが戻ってくる。

彼女は少し慌てた様子で、それでいてどこか喜んでいるような表情で俺たちの所まで走って来ていた。
いったい何をそんなに慌てているのだろう?

ζ(゚ー゚*ζ「今回の学年対抗リレーにジョルジュとしぃが出るの!? 凄いね!」

(*゚ー゚)「……デレ、それはもう時代遅れな話題よ。ちょっと前に終了しちゃったにゃんぴー☆」

ζ(゚ー゚*ζ「……はい?」

ちなみにしぃは三枚連続で絵札を引き当てて敗北した。
二枚の時点で止めておけばいいものの、無用な勝負心は敗北を誘うということが分からないらしい。

それを鼻で笑っている俺は、そのままデレに言った。

( ゚∀゚)「でも恥ずかしいからあまりデカイ声援しないでよにゃんぴー☆」

ζ(゚ー゚*;ζ 「えっ、えええええええええええええええええええ!?」

人の事を笑えないんだけどね。


73:2007/08/26(日) 11:39:41.25 ID:



運動会当日。
学年対抗リレーの俺は第一走者だった。

周りから聞こえてくる声援に比例して鳴り響く心臓の高鳴り、流石にこういう場面では俺も緊張してしまう。

しかし、今の心臓は緊張とは違う原因で高鳴っているようにも感じられた。
それは、そう、身体が何かを急かしているようにも感じられた。

まぁ、しばらくはどうせ記憶の通りに身体が勝手に動いてくれるのだ。
ならば俺はこの異常について考えるのに集中していれば良い。

そう思った瞬間、スタートのピストルが鳴り響いた。

一斉に鼓膜を揺らす足音。俺の視界の中に前を走る他の学年の走者が見える。

あれ?

俺、今、走っていない?

そこでようやく気づいたのだ。
今この身体は自分の意思で動かすことが出来るということに。

( ゚∀゚)「……ああ、そうか」

そうだったそうだった、前に俺自身が理解していたことじゃないか。
77:2007/08/26(日) 11:41:01.78 ID:

――――取り戻すべき記憶に、俺自身が気づかなければならない。
 
自らの意思で、記憶を取り戻すために、俺自身が走り出さなければならないと。

他の走者とは大分遅れて、俺はスタートした。
身体の調子は、今までにないくらいの最高潮だった。

軽い、軽すぎる。

この調子ならばスタートの出遅れくらいは、大したことのないハンデだ。
あまりの速さに、視界がブレ始める。

速さのため? 違う、それは違う。
俺の視界の端にはまだ見ぬ記憶が見え隠れしているじゃないか、これもまた走馬灯だ。

俺が走馬灯の中を駆け巡り、生死をさまよう『今』に近づいている、何よりの証拠。

走れ、走れ。

そしてその手に握り締めているバトンを、次の走者に渡すのだ。

それが、今の俺に課せられた役目なのだから。
78:2007/08/26(日) 11:42:36.81 ID:

( ゚∀゚)「はぁ、ハァ――――ッ!」

走れば走るほど、呼吸が荒くなって、苦しくなって来る。
走れば走るほど、全身が燃えているかのように熱くなる。
走れば走るほど、身体の中の内臓が冷たくなって来る。
走れば走るほど、視界が明滅していく。

だけど、止まれない。
止まることなんて出来るわけがない。
こんなに楽しかった日常を、止めることなんて今の俺には考えられない。

一際大きな歓声が響き渡る。
どうやら、いつの間にか他の走者を抜いていたらしく、俺の目には他の学年の待機中の走者。

そしてスタンバイしているウチの学年の走者がいた。

第二走者、しぃ。

……コイツに渡すのか。まぁ、一番適役ではあるよな。

( ゚∀゚)「しぃ!!」

(*゚ー゚)「オッケー!」

彼女は笑みを浮かべながら、俺からのバトンを受け取ってくれた。

そしてそのまま走り出す。

80:2007/08/26(日) 11:43:36.49 ID:


ζ(゚ー゚*ζ 「しぃ――――ッ! 頑張れ――――ッ!!」


声援が聞こえた。
一際大きな声だ。

周りの応援団とかが呆気に取られて一瞬応援を停止させてしまうほどに。

ばーか、あまり大きな声で応援するなって、言ったじゃないか。
俺が言うことを完全に無視して、自分のやりたいことをしっかりと貫き通して……一人で、頑張ったじゃねえか。

うん、もう大丈夫だ。

そろそろ俺も季節外れの海に向かわなければいけない。


……



83:2007/08/26(日) 11:45:18.18 ID:



そして、俺は『今』へ戻る。
残り少ない時間で、すべきことを為すために。

今まで俺が旅してきた過去の日常は、多分、一瞬にも満たない短い時間の出来事。
頭の中で起きた、夢のような出来事だ。

だけど、俺はそれでしっかりと記憶を取り戻した。
そして、最後に得る記憶は、もっとも最初に近い記憶。

一人の小さな女の子が泣いていた。

両親を失った悲しみに耐え切れずに、一人でずっとずっと泣いていた。

傍に一人の小さな男の子がいた。

彼は、その女の子に何をして良いか分からずに、ただ彼女の傍にずっとずっと立っていた。
 
俺は――――確か、この時に誓ったんだと思う。

今この子は一人になってしまったから、俺がこの子の傍に居てあげようって、自分自身に約束したのだ。

(  ∀ )「そっか……。あれは、俺自身との、約束、だったのか」

視界は暗転する。
けれど脳裏には、ゴールラインに立って、バトンを持っている俺の姿があった。

84:2007/08/26(日) 11:45:20.41 ID:
支援
87:2007/08/26(日) 11:46:51.88 ID:

(*;ー;)「ねぇ! ジョルジュ! ちょっとしっかりしなさいよ! ねぇ! ねぇってば!」

声で、目覚めた。
全身に走るは死ぬほどに激しい痛覚。
その身体は血の海の中に沈んでいるってことに、今初めて俺は気づいた。

……全部思い出した。

俺達三人は季節外れの海へ行ったんだ。
名目は『リレー優勝記念』だったと思う。

その途中でデレを置いて、しぃと飲み物を買いに行って、横断歩道を渡っていたら車が突っ込んできた。

俺は無我夢中でしぃを押し出して、轢かれた。
その衝撃で、記憶を失っていたらしい。

つまるところ、俺を揺さぶって声をかけてくれてるのは一緒にいた、しぃだったのだ。

彼女は初めて見せるような、泣き顔で必死に俺に向けて怒鳴る。

だけど、その顔は今の俺の視界には上手く捉えられないし、声を聞き取るので精一杯で、言葉を返すことも出来ない。
89:2007/08/26(日) 11:48:40.86 ID:

(*;ー;)「死なないでよ! デレとずっと一緒にいるんでしょ!? そう言ったわよね!」

うん、そうだ。
それが俺の役割だ、だからこそ俺は失った記憶を取り戻したのだから。

……やらなきゃ、最後の役目を果たさなきゃ。


全身は貫かれるように痛いけど、腕や足は自分の物ではないように動かないけれど。
心臓があり得ないスピードで鳴っているけど、冷たくて冷たくて今にも死んでしまいそうだけど。
死にたくなくて死にたくなくて泣きたいけど、コイツらと別れることがとてもつもなく辛いけれど。

それでも。

自分との約束だから、役目は果たさないと。
92:2007/08/26(日) 11:50:13.60 ID:

(  ∀ )「……ぐ」

(*;ー;)「ジョルジュ!? ねぇ、大丈夫よね! 絶対に、絶対にいなくなったりしないわよね!?」

右手を、動かす。
一ミリ動くごとに、自分の中の大切な何かが千切れるようなブツンブツンという音が鳴るけれど、気にしない。
鳴る毎に身体の機能が見るからに減っていくけれど、もうどうでも良い。

バトンを――――彼女の目の前に差し出す。

俺が握り締めていたモノは、携帯電話だった。
デレと一緒に買った、デレとお揃いの携帯電話。

これがバトン代わりか、そう考えると何か面白いなぁ、なんて考えてしまう。

今、しぃがどんな表情をしているかも分からない。

笑ってはいないのだろう。

出来れば、笑っていて欲しいのだけど。

(*;ー;)「何……? これがどうしたのよ? ねぇ、何か言ってよ! それじゃないと何も分からないよ!」


(  ∀ )「譲る……から」

96:2007/08/26(日) 11:52:27.95 ID:

(*;ー;)「……え?」

言葉は、思った以上にスルスルと口から出た。
もしかしたら俺がそう思い込んでいるだけかもしれないけど、それでも良い。

このバトンを次の走者に渡せれば、俺はそれで良い。

( ゚∀゚)「デレと一緒に居る役目……お前、欲しいって言ってたろ?
     ……お前に、任せるから」

(*;ー;)「……!」

( ゚∀゚)「頼む……これだけはちゃんとしないと、俺、死んでもまた出てきちゃうかもしれないから」

冗談めかして笑ってみせる、つもりだったけど、表情は上手く動かない。
しぃは顔を俯かせて、俺の手を携帯電話ごと両手で包み込んだ。

それは俺の意図を察してくれたのだろうか?
それとも、ただそうしてくれているだけなのだろうか?

どちらにせよ……嬉しい。ありがとう。

99:2007/08/26(日) 11:53:47.08 ID:
まずその携帯で救急車呼べ
100:2007/08/26(日) 11:53:56.52 ID:

彼女は、喉からどうにか搾り出したような声で、言う。

(*゚ー゚)「……そんなの、私はずっと一緒に受け持っていると思ってたのよ」

( ゚∀゚)「……え?」

(*゚ー゚)「デレと一緒に居る役目は、私とあなたで一緒に受け持っていられるって思ってたの。
     知らなかった?」

一瞬晴れた視界で見れば彼女の顔は、笑顔だった。
涙を堪えるような無理矢理と笑顔だったけれども、それでも胸に染み渡るような素敵な笑顔。

……そっか、しぃは、いつものように別れようとしてくれているのか。

じゃあ、俺もいつものように答えないと。

( ゚∀゚)「……さい、ですか」

(*;ー;)「さいなの、です」

しぃのその言葉を最後に、俺の視界が沈む。

暗闇に沈んでいく。

101:2007/08/26(日) 11:55:27.68 ID:

落ちていく最中に見えるは、走馬灯とは逆の、デレとしぃの未来の幻想だった。

ああ、ちゃんと笑えてるか。
すぐには無理でも、いつか笑える日は必ず来るみたいだ。

そして、最期に流れるは真の走馬灯。

それはとても楽しくて、とても悲しくて、とても辛くて、とても面白くて、とても愉快で、

――――とても大切な思い出。

誰かに譲ることなんて考えられない想いと、何よりも叶えたかった願いが込められた思い出。

うん、最後に確認できて良かった。


(  ∀ )「やっぱり俺は……幸せだったな……」


110:2007/08/26(日) 12:04:45.29 ID:


――――…


俺の視線の先には、美しい衣装を纏った花嫁の姿があった。

本当に幸せそうに、皆から祝福され頬を赤く染めている。

「幸せになれよ。俺の分までさ」

そう、呟く。
だが、言葉は届かない。

わかっていても、言わせてくれよ。
これを言ったら、俺もちゃんと逝けるからさ。



             「大好きだ」


花嫁が、はっとしたように俺の方を見る。

そこには、立派な向日葵が空を見上げていた。



fin
112:2007/08/26(日) 12:06:22.58 ID:
>>110
乙!GJ!
これはいい短編
113:2007/08/26(日) 12:06:42.33 ID:

全俺が泣いた
117:2007/08/26(日) 12:10:18.58 ID:
以上で終わりです。
ショボンメールとジャンルがちょい被ってて泣きたくなった。
ではオツー
120:2007/08/26(日) 12:20:41.02 ID:
>>117
最後にもう一度言わさせてもらおう
GJ
122:2007/08/26(日) 12:55:32.16 ID:
>>1
切なくなるわ……
元スレ: