1:2006/12/15(金) 21:49:09.44 ID:

カーテンから日差しが差し込んでくる。

徐々に目が覚めていき、体をゆっくりと起こしアクビをした。

('A`)「ふぁ~眠・・・」

朝起きる時間というものは習慣になると目覚ましなどなくても起きれるものだ。

まだ意識が半分眠ったまま、階段を降りながら一階のリビングへと向かう。

・・・煙い。黒い煙がモクモクとこちらまで漂ってくる。

('A`)「・・・って火事!?」

俺は急いで階段を三段抜かしで飛び降り、キッチンを確認する。

2:2006/12/15(金) 21:52:11.21 ID:

ミ,,゚Д゚彡「うぇっうぇ! なんだこのトースター! 爆発しやがった!」

('A`)「ちょっと、何やってんのトーチャン!!」

咳をしながらトーチャンがキッチンから逃げるように出てきた。

そこはまるでちょっとした小火現場のような状態である。

('A`)「トーチャン・・・一体何をしようとしてたの?」

ミ,,゚Д゚彡「いや、オーブンの使い方わかんねぇからフライパンでパンを焼いたんだが・・・」

(;'A`)「・・・」

ミ,,゚Д゚彡「ちぃーっと火力が強すぎたみたいだぜ。ガッハッハ!!」

(;'A`)「だーから料理は俺が作るっていってるのに・・・もう、いいから座ってて」

俺は窓を開け、空気を入れ替えつつ料理(?)の後片付けをする。
4:2006/12/15(金) 21:54:39.64 ID:

(;'A`)「もう今日は時間ないし、インスタントのスープでいい?」

ミ,,゚Д゚彡「おう! 食えりゃなんでもいいぜ!」

適当に朝食を取り、学生服に着替える。

('A`)「っと、いかんいかん」

俺は仏壇の前で手を合わせ、線香を一本添える。

('A`)「・・・よし、行ってきます」

カーチャンに挨拶をし、外に出と眩しいほどの陽射しが俺の眠気を吹き飛ばす。

('A`)「今日も暑くなりそうだな・・・」

見上げると雲ひとつ無い快晴。

今日から新学期、まだまだ夏の陽気は続きそうな気配だった。
5:2006/12/15(金) 21:56:57.42 ID:


('A`)「無事到着っと」

ほぼ1ヶ月ぶりに教室へ入る。

そこには、日焼けした同級生達が夏休みの話で盛り上がっていた。

( ^ω^)「おードクオww久しぶりだお!」

('A`)「お前、夏休み中に何度も短期バイト一緒にやったじゃねぇか・・・」

( ^ω^)「そうだったかお? うーん、そんな気もするおww」

子供の頃から一緒にいるが、ブーンは相変わらず天然なのかワザとやっているのかわからん。

・・・まぁ、たぶん天然だろう。計算してやっているならある意味天才だ。
6:2006/12/15(金) 21:57:46.37 ID:
wktk
7:2006/12/15(金) 21:59:41.75 ID:

('A`)「まぁいいや。それよりブーン、お前数学の宿題やった?」

(;^ω^)「え、ドクオやってないのかお?」

('A`)「ああ、数学だけはどうしても苦手でさ。ブーンのやつ見せてくれないか?」

俺は鞄から数学の宿題を取り出す。

数学が苦手な俺は、最初の3日こそは思考を張り巡らせ問題と格闘したが

やがてそれは諦めへと変わり、当日に仕上げるという作戦になったのだ。

(;^ω^)「ドクオ・・・」

('A`)「ん、なんだよ」

(;^ω^)「あのね・・・」

ブーンが鞄から数学の宿題を取り出す。

妙に小奇麗で、開いた形式すら見当たらない。

・・・嫌な予感が頭を過ぎる。
8:2006/12/15(金) 22:01:31.74 ID:
ペンの人?
違うにしても文才の片鱗を感じるwktk

('A`) ドクオのペンは進まないようです
10:2006/12/15(金) 22:02:36.94 ID:

(;'A`)「もしかして、やってない?」

(;^ω^)「・・・」

ブーンは静かに、首を縦に振った。

(;'A`)「ど、ど、どうすんだよ! これじゃ間に合わねーよ!」

(;^ω^)「おっおww僕はてっきりドクオは全部やってくると思ってたんだお!」

(;'A`)「お、俺が数学苦手なの知ってんだろ!! そこは空気嫁よ!」

(;^ω^)「僕なんて数学どころか全教科苦手だお!」

激しい言い争いが続く。

やがて息切れし、論争が止んだ。

('A`)「や、やめよう。無駄な争いをしている場合じゃない」

( ^ω^)「そ、そうだお・・・誰か、弾持ってこーい!! アテーム!!」
11:2006/12/15(金) 22:04:46.38 ID:
数学の宿題は帰りのホームルームで集めるはずだ。

その前に始業式があるとして、制限時間は30分。

('A`)「そ、そうだ。真面目怪物モナーは!?」

( ^ω^)「そうだお、彼ならきっとやってるはずだお!!」

俺達は同時にモナーの席を見る。

だが、机に鞄がかけられていない。

('A`)「だ、だめだ。あいつ来てねえ・・・」

( ^ω^)「いざというときに役に立たない奴だお!」

('A`)「くそ・・・他にやってそうな奴は・・・」

教室を見回す。

だが、いまいち頭の芳しくない連中しか来ていない。
12:2006/12/15(金) 22:05:46.17 ID:
酷い言い様だなwwww
13:2006/12/15(金) 22:07:57.15 ID:

頭の悪い奴のを写すと間違いだらけで逆に墓穴だ。

正解は重なっても不自然じゃないが、不正解が丸々一緒だと写したことがばれてしまう。

('A`)「・・・ん?」

ふと、教室に入ってきた女子生徒に視線が行く。

(*゚ー゚)「ふぅ」

あれは、確かクラス委員長の・・・しぃ、だっけか?

あまり話したことは無いが、頭の良さは学年トップクラスと何度か耳にしたことがある。

('A`)「おい、しぃさんならやってあるんじゃね?」

( ^ω^)「え、しぃさんかお? ・・・うーん、彼女ならやってはありそうだお」

優等生の見本ともいえる彼女なら、恐らく完璧な模範解答を作り上げているだろう。

この問題数からして、今が間に合うかどうかの瀬戸際だ。

・・・よし、決めるしかねえ。
14:2006/12/15(金) 22:12:24.90 ID:

('A`)「ブーン、しぃさんにみせてもらうぞ」

(;^ω^)「ちょwwwさすがに優等生のしぃさんに宿題写しを頼むのは無謀だおww」

('A`)「大丈夫だ、俺に策がある。・・・お前はちょっと待ってな」

俺はしぃさんの席へさりげなく、なるべく自然に向かう。

そして、優しい口調で話しかける。

('A`)「や、久しぶり」

(*゚ー゚)「あ、ドクオ君久しぶり~」

('A`)「夏休み、どうだった? 俺、すげぇ日焼けしちゃったよ(笑)」

(*゚ー゚)「ほんとだwすごい黒いね~。私は外で絵を描いたりしてたよ」

('A`)「そうなんだーw美術部だもんね。あ、そういえば宿題はやった?」

さりげなく、かつ無駄な話題はカット。

いきなり本題に入るのではなく、布石を置いてから入る。

これは兵法では常識、となんかの本に書いてあった気がする。
15:2006/12/15(金) 22:14:43.56 ID:

(*゚ー゚)「なんとか一昨日に終わらせたよ。ドクオ君は出来た?」

('A`)「もちろん、完璧だよ。ただ、少し確認がしたくてね・・・」

(*゚ー゚)「確認?」

ふふ、餌に食いついた。

やはり優等生。素直というか、人を疑うことをしらぬというか。

('A`)「そう、数学は色んな解き方があるからね。しぃさんの解き方を参考までに見せてくれないか?」

爽やかな笑顔を忘れずに、声はハッキリキッパリ胸張って。

これぞ、嘘を見抜かれずに相手を信じ込ませるコツだ。

(*゚ー゚)「うん、いいよ」

('A`)「ふふ、ありがとう。ちょっと借りるね」

そう言うと、俺はしぃさんの完璧な宿題を手に取り自分の席に戻る。

完璧だ。自分が怖いぜまったく・・・。

まさに悪、いい感じのちょい悪である。
17:2006/12/15(金) 22:18:32.90 ID:

('A`)「ミッションコンプリーツ・・・!」

俺はブーンに向かってこっそり親指を立てる。

( ^ω^)「ドクオsugeeee!! いとも簡単にしぃさんから宿題ゲットだおww」

('A`)「だが、まだ終わりではないのだ・・・! ブーン、俺の後ろに立って話しかける振りをしてくれ」

( ^ω^)「おっおっ?」

('A`)「なるほど・・・とか、こういう解き方かー、とボソボソ言ってくれればいい。頼む!」

( ^ω^)「なるほど・・・おk! 把握したお!」

舞台は揃った。後は、どれだけ時間を短縮できるか。

俺は指を軽く鳴らし、ペンを握った。

('A`)「ハァッ!」

( ^ω^)「は、速い・・・じゃなくて、なるほど! そんな解き方が!」

俺のペンが神速で解答を写していく。
18:2006/12/15(金) 22:19:26.68 ID:
これはwktk
19:2006/12/15(金) 22:21:54.05 ID:

宿題写して16年、ドクオの能力は超人の域に達していた。

(;^ω^)「0歳からやってたのかお・・・?」

('A`)「こら、心情に突っ込むんじゃない・・・ハァッ!」

見る見る内に解答が埋まっていき、そしてチャイムと同時に宿題を閉じる。

見事、解答欄は全て埋まった。

( ^ω^)「み、見事・・・!!」

('A`)「うし、終了。後はこいつを・・・」

俺は宿題を手に取り、しぃさんの方へ向かう。

('A`)「これ、ありがとう。すごい参考になったよ」

(*゚ー゚)「そう? よかったねw どういたしまして」

('A`)「それじゃ、bye-bye」

爽やかに挨拶をし、自分の席に戻る。
20:2006/12/15(金) 22:23:58.62 ID:

始まりも終わりも綺麗スッキリ。

まさに理想的な幕引きであった。

(;^ω^)「って、僕まだ写してねーおww返しちゃいやんww」

('A`)「ばっか、俺の写せばいいだろ。・・・と、言ってももう遅いか」

気づけば、さっきまでポツポツとしかいなかった生徒が集まり始め、

教室はざわざわと人で溢れていた。

( ・∀・)「うぇーし、出席とって体育館行くぞ。席に着けー」

ガラガラ、と教室の扉を開け、先生が入ってくる。

可愛そうだが、これで完全にブーンが宿題を写すことは出来なくなった。

(;^ω^)「うう・・・これは酷いハメですお」

('A`)「ま、せめてもの償いにこれを貸してやろう」

俺は鞄から一冊の本を取り出し、ブーンに渡す。

(;^ω^)「・・・何だお? これ」

('A`)「数学の教科書。・・・まぁ、頑張って自力で解いてくれ」
21:2006/12/15(金) 22:27:42.85 ID:

(;^ω^)「おっおwwこれはひどいww」

そう言うとブーンは席に戻り、必死に問題に取り掛かり始めた。

これはお前のためなんだぜ? ブーン。・・・俺みたいにはなるなよ。

('A`)(ブーン、お前の犠牲は決して無駄にしないぜ・・・!)

俺は色々矛盾しながらも、安心した面持ちで朝のホームルームを迎える。

( ・∀・)「えー、内藤ー。・・・内藤? いないのかー?」

( ^ω^)「い、いますおー」

( ・∀・)「おいおい、今さら宿題をやっているのか。いくらなんでもサボりすぎだろw」

クラスがドッと笑いに包まれる。

が、ブーンは相手をする余裕も無く必死で方程式と格闘していた。

('A`)(ブーン、頑張れ。俺は声援を送ることしかできん・・・くぅ(泣)

(*゚ー゚)(・・・ふぅーん)
24:2006/12/15(金) 22:29:52.82 ID:
またしぃがなにかやりだしそうだなwwwwww
25:2006/12/15(金) 22:31:28.03 ID:


やがて始業式が終わり、帰りのホームルームが始まる。

(;^ω^)「どう見ても間に合いません。本当に(ry」

('A`)「よく頑張った、感動した!」

ブーンは始業式の最中も宿題を持ち込み、こっそり解いていたのだ。

その努力は敬意に値する。ブーンの名誉ある死に勲章を贈りたい気持ちで一杯だ。

( ・∀・)「んじゃ、宿題集めるぞ。名前順に出しにこーい」

1番の生徒から各自、宿題を教卓に提出する。

( ・∀・)「ふむ、おまえ半分しかやってないじゃないか。まったく・・・」

「ふひひwwサーセンww」

( ・∀・)「えー、次は内藤!」

(;^ω^)「おいすー」
26:2006/12/15(金) 22:34:14.21 ID:

( ・∀・)「努力は認めるが、それなら前もってやっておくんだな」

(;^ω^)「ご、ごめんなさいだお」

ブーンの順番が終わり、やがて俺の順番がやってくる。

ブーンには悪いが完璧な内容の宿題だ。

('A`)(なにせ・・・あの優等生のしぃさんの宿題丸写しだからです!)

そう、この宿題は僕にとって特別な存在。

彼もまた、特別な存在だからです。

('A`)「うぃっす、完璧にやってきました」

( ・∀・)「おお、数学の苦手なお前が全てやってくるとは・・・見直したぞ!」

('A`)「まぁ、苦手だからといってやらないのはよくないと思いましてね」

( ・∀・)「うむ。それはいいことだ! みんなもドクオを見習いなさい」

決まった。ふふ、これで2学期も遊んで過ごせるぜ。

数学のテストは赤点ギリギリとれば、問題は無いだろう。
27:2006/12/15(金) 22:37:11.51 ID:

(*゚ー゚)「せんせー!」

( ・∀・)「ん、なんだいしぃ君?」

お、我らが恩人しぃさんだ。

彼女がいなかったら今頃、先生の雷が直撃し・・・

(*゚ー゚)「ドクオ君、私の宿題写してましたー!」

そうそう、君のを写したんだから完璧に決まっている。

・・・ん? なんでそれをここで言う必要があるんだ?

おかしい、何か矛盾して・・・

('A`)「――ってちょ!!!」

振り返ると、先生がこちらを凄い剣幕で睨んでいる。

うん、もうものすごい剣幕で。

( ・∀・)「今の話は本当かね・・・? ドクオ」

(;'A`)「い、いやー、その、なんというか、というか・・・」
29:2006/12/15(金) 22:39:55.35 ID:
いかん、予想外の展開だ。

何か、何かこの状況をひっくり返さなければ!

冷や汗がふつふつと湧き出て、頭の中がぐるぐる回る。

俺の脳内で状況、人物、対策が一気に構成されていき、たった一つ。

この場を乗り切れ得るかもしれない手段が頭に浮かぶ。

こうなったら、これしかない!!


('A`)「俺流のサプライズや!!」


( ・∀・)「・・・」

(;'A`)「・・・」

( ・∀・)「・・・」

(;'A`)「・・・俺流に見逃してくれや」

冷たい視線、凍った空気。

その一言で、凝固した冷気が一気に爆発し熱気に変わった。
31:2006/12/15(金) 22:42:44.16 ID:
もちろん、教師は回収済みだよな。
32:2006/12/15(金) 22:43:04.80 ID:
しぃwwwwww
33:2006/12/15(金) 22:43:09.19 ID:

( ・∀・)「この愚か者が――!! 職員室にこぉい!!」

ゲンコツ一発、ボディに二発♪

三時のおやつまでには帰れそうになかった。

「バロスwwwww」
「やーい、怒られてやんのww」
「いい見本になったぜー♪」

俺はクラスの野次を背に受けながら、ふとしぃさんの方を見る。

・・・そこには、こちらに向かって嬉しそうに手を振るしぃさんの姿があった。

(*゚ー゚)「bye、bye♪」
35:2006/12/15(金) 22:46:47.40 ID:


夕方4時。

グラウンドで活動している運動部のかけ声が校舎まで響く。

窓からは赤くなった夕日が顔を覗かせていた。

('A`)「・・・失礼しました」

俺は職員室で3時間半にも及ぶ説教を受け、ようやく開放された。

('A`)「・・・くそ、初日からこんな目にあうなんて!」

あそこでクラス委員長のしぃがばらしていなければ・・・

まさか裏切りとは予想していなかった。

むしろ、最初からわかっていてそのつもりでわざと?

('A`)「くっそー、はめられた!」

まるで釈迦の上の孫悟空だ。
36:2006/12/15(金) 22:49:57.82 ID:

俺はイライラしながら廊下を歩いていると、美術室の扉が開き、人影が出てくる。

('A`)「あー!! お、お、お前!!」

(*゚ー゚)「ん? なーんだドクオかぁ」

('A`)「な、な、な・・・」

平然と美術室から出てきたのはしぃだった。

しかも俺に会って動揺するわけでもなく、オマケに呼び捨て・・・!?

(*゚ー゚)「意外と終わるの早かったね。あは、これからズルは駄目だよ」

('A`)「ちょ、ちょっと待てイ」

あまりの変貌振りに声が裏返った。

こ、これがしぃ?

あまり話したことが無いとはいえ、イメージと180度違うぞ!?
37:2006/12/15(金) 22:52:16.62 ID:

(*゚ー゚)「ん? 何?」

('A`)「おま・・・あれ、わかっててチクっただろ!」

(*゚ー゚)「うん。え、ていうかあれ本気で騙したつもりだったの?」

('A`)「な・・・」

バカにしたようにしぃは笑う。

腸が煮えくり返るように俺の頭に血が上る。

('A`)「お前、ふざけんなよ・・・!」

(*゚ー゚)「何怒ってるの? 元々悪いのはそっちじゃん。こっちが正論。あんたはチンケな悪者」

('A`)「う、ぐ・・・」

たしかに、そうだ。

すごい腹が立ってるのに反論が思い浮かばない。
39:2006/12/15(金) 22:54:14.71 ID:
ドクオ哀れwwwww
40:2006/12/15(金) 22:56:12.62 ID:

(*゚ー゚)「ま、これに懲りたら少しは勉強すれば? じゃね~」

そう言うと、しぃは鼻歌を歌いながら階段を降りていき、

やがてその姿は見えなくなった。

一人、廊下に残され、やり場の無い苛立ちを内に溜め込む。

('A`)「こんな、こんなに腹が立っちゃうなんて・・・くやしい・・・負けた」

ガクッとうなだれる。夕方の学校にむなしくチャイムが鳴り響いた。

俺はとぼとぼと歩き、駐輪場へ向かうのであった。
41:2006/12/15(金) 22:58:41.20 ID:


学校の駐輪場へ行き、自転車の鍵を外す。

('A`)「はぁ~ぁぁぁ・・・」

ため息しか出ない。

新学期から色々ショックがでか過ぎた。

('A`)「・・・そうだ京都に行こう」

独り言を言っても、この時間、突っ込んでくれる人は誰もいなかった。

ふと、誰もいないのをいいことにギャグが言いたくなってきた。

('A`)「あーらびっくり洗浄機♪」

手を上に突き出しながらジャンプしてみる。

・・・聞こえるのはカラスの声、だけ。

('A`)「シッシッ!! シッハ!」

むなしさと寂しさを吹き飛ばすためにシャドーボクシング開始。

グラウンドにいる運動部の連中はまさかこんなことが起こっているなど想像も出来ないだろう。
43:2006/12/15(金) 23:01:27.74 ID:
('A`)「おーっと、チャンピオンよけて~でました! 黄金の右フック!!」

徐々に体が暖まって、気分が乗ってくる。

さっきまでの苛立ちも少し和らいできた。

('A`)「シッシッ!! ふっ!」

(*゚ー゚)「・・・ねぇ、黄金の右フックって何?

('A`)「そりゃーあの有名な世界チャンピオンの必殺・・・」

ピトッと体を止める。

何か、何か違和感を感じた。

さっきと空気が変わった。うん、恐らく
44:2006/12/15(金) 23:04:19.34 ID:
これは恥ずかしいw
45:2006/12/15(金) 23:04:56.78 ID:

(*゚ー゚)「・・・ぷ、ぷぷ」

('A`)「い、いつからそこに?」

恐る恐る聞く。

しぃは顔を下に向け、必死で口を押さえている。

(*゚ー゚)「あはははwwあーらびっくり洗浄機ってwww」

(;'A`)「そっから!?」

耐え切れなくなったのか、しぃは笑い転げた。

お腹に手を当てて、爆笑、という言葉の通り笑いまくる。

(*゚ー゚)「し、しかもいきなりボクシングし始めるし・・・ww」

しぃは顔を上げて、ファイティングポーズをとる。

(*゚ー゚)「シッシ! シッハ!」

・・・俺の真似だろうか。

そして再びネジが外れたかのように笑い転げる。
46:2006/12/15(金) 23:07:11.47 ID:

(*゚ー゚)「なーに一人でやってんのwwもう最高!」

(;'A`)「う、うううるさい! っていうかいるならせめて声かけろよ!」

(*゚ー゚)「いや、だって面白くて笑いこらえるのに必死で・・・く、くくw」

そしてまた俺の顔を見て噴き出す。

うん、非常に恥ずかしい。穴があったら入りたい。

('A`)「み、見られてたなんて一生の不覚・・・っ!」

(*゚ー゚)「いやー、ごめん面白いよドクオ! 君って人はw」

('A`)「・・・」

しぃは笑いながら肩を叩いてくる。

なんだ、なんか悔しい。すごく負けた気分だ。
47:2006/12/15(金) 23:08:48.58 ID:
ドクオカワユスwwwww
48:2006/12/15(金) 23:09:55.13 ID:

('A`)「・・・もう、帰っていいですか」

(*゚ー゚)「ん、うーん。・・・この事みんなに話していい?」

(;'A`)「ちょ、それだけは!! それだけは勘弁してくれぇ!」

そんなこと、あのクラスで言ったら変なあだ名をつけられてしまう。

「真面目怪物モナー」「変態乳房王ジョルジュ」

あの仲間に・・・は、はいりたくねぇ。

(;'A`)「お願いします! このとーり! 男ドクオ、頭を下げて頼みます!」

(*゚ー゚)「ん~、どーしよっかな~?」

しぃは小悪魔のようにふふ、っと鼻で笑う。

彼女が上、俺が下・・・上下関係は明らかな状況である。
50:2006/12/15(金) 23:13:47.96 ID:

(*゚ー゚)「よし、決めた!」

しぃはぽんっと手を叩く。

('A`)「な、なんですか?」

(*゚ー゚)「スワーティーワンアイス奢ってw」

('A`)「・・・へ?」

俺は頭を上げてしぃを見た。

アイス・・・? あれ、俺生きてる・・・?

('A`)「そ、そんなんでいいの?」

(*゚ー゚)「え? もっとすごいほうがいい?」

('A`)「いやいやいやいやっ! ・・・ぜ、ぜひおごらせてください」

俺は手をすりすりと、ゴマをするように擦る。
51:2006/12/15(金) 23:16:26.18 ID:

(*゚ー゚)「じゃあ、交渉成立! それじゃ行こっか?」

('A`)「え、今から!?」

(*゚ー゚)「当たり前ジャン。駅前のお店が一番近いよね!」

(;'A`)「う、うん」

(*゚ー゚)「ほら、そうと決まれば早く乗った乗った!」

俺はせかされるように自転車に乗る。

すると後ろに重みが増え、肩に手の感触が走る。

('A`)「な、なんでさりげなく後ろに乗ってんの!?」

(*゚ー゚)「ん? だって自転車で行ったほうが楽じゃん」

(;'A`)「いや、まあそうなんですけど・・・」

予想外の展開に頭がついていかない。

俺の肩に乗っていたしぃの手に力が入り、肩を思いっきり握られる。

(*゚ー゚)「ほら、早く出発! もたもたしない!」
52:2006/12/15(金) 23:17:28.15 ID:

(;'A`)「いてぇいてぇ! わかったから力入れんなって!」

ペダルに足を乗せ、ゆっくりと自転車を漕ぐ。

二人分の体重が乗っているせいか、ペダルが重い。

ゆっくり、ゆっくりと自転車が前に進む。

('A`)「お、重・・・」

(*゚ー゚)「ん、なんか言ったぁ?」

('A`)「いで、いででで!! なんでもない、なんでもないから力入れんな!」

俺は妙な客を乗せてフラフラと校門を出て行く。

どうしてこうなったのか、いまだに理解できないままペダルを漕いでいった。
54:2006/12/15(金) 23:20:32.04 ID:


(*゚ー゚)「おいしーwやっぱりスワーティーワンのバニラは最高w」

('A`)「・・・」

俺はレモンアイスを食べながら、ふと思う。

なんで俺はしぃと公園でアイスを食ってるんだろう?

・・・これって、他の奴から見たらデートってやつだよな。

('A`)(いかん、 何を俺は考えているんだ!)

頭を振り、妙な妄想を吹っ切る。

こいつは俺を騙し手に取った悪女だぞ!?

(*゚ー゚)「ねぇ」

('A`)「ふぇ? な、何?」

・・・いきなり話しかけられたから、口がうまく回らなかったじゃないか。

(*゚ー゚)「ドクオって彼女いる?」

('A`)「ぶふぅ!!」
55:2006/12/15(金) 23:22:35.28 ID:
wktk
56:2006/12/15(金) 23:23:00.80 ID:

あまりの唐突な質問に噴いてしまった。

いくらなんでも、その質問がこのタイミングで出るとは・・・

(*゚ー゚)「ねぇ、いるの?」

('A`)「い、いや、今はいねえけど・・・」

今は、というより彼女いない歴=年齢だが。

・・・そんなことはどうでもいい。

それよりも、しぃは何故彼女の有無なんて聞くんだろう?

しぃの顔をチラリと見る。

(*゚ー゚)「あ・・・あのさ」

もじもじと、顔を赤らめて何か言いたそうにしている。

彼女の視線が、俺の目から離れうつむいている。

('A`)(これは、まさか・・・!?)
57:2006/12/15(金) 23:24:16.77 ID:
こんな青春を味わいたかった…('A`)
58:2006/12/15(金) 23:24:34.46 ID:
フラグ…フラグなのか!?
60:2006/12/15(金) 23:25:37.79 ID:

アイスを持った手に力が入る。

生涯で初めての、こ、こ、こ・・・

('A`)「ちょ、ちょいきなりそんな――」

(*゚ー゚)「今日一日だけ、私の彼氏になって!」

彼氏になって・・・彼氏になって・・・

頭の中にその言葉が響き渡る。

やっべ・・・告白じゃん。どうしよう、え、なんて答えれば・・・ん?

('A`)「一日、だけぇ!?」
61:2006/12/15(金) 23:25:44.95 ID:
現役だが、こんな青春、味わえそうにない…
66:2006/12/15(金) 23:29:09.73 ID:

(*゚ー゚)「うん、お願い! なってくれたら今度は私が何かおごるからさ!」

(;'A`)「な、なんじゃそりゃあ!!」

意図がつかめない。

一日だけ彼氏ってなんだそりゃ?

生まれて初めての告白が「一日だけ彼氏になって」ってなんですか?

('A`)「おま、ふざけてんのか!? 俺は帰るぞ!」

(*゚ー゚)「ちょ、ちょっと待ってよ!」

しぃが俺の袖を引っ張る。

俺は無視して足を進めようとするが、引っ張られてるせいで前に進めない。
68:2006/12/15(金) 23:32:54.65 ID:

(;'A`)「だー、離せよ! 俺はそんな遊びに付き合ってる暇はないんだよ!」

(*゚ー゚)「お願い~! ちょっと色々事情があって、今日は彼氏がいなきゃ駄目なの」

(;'A`)「知るかよ! お前おちょくってんなら・・・」

俺はしぃの方を振り返ると、言葉が喉につまった。

しぃは俺の袖を掴みながら、静かに涙を流していた。

(*゚ー゚)「う・・・私、ひっく・・・このままじゃ・・・」

('A`)「お、おい。なんだよ、どうしたんだよ」

(*゚ー゚)「こんなこと・・・ドクオにしか・・・ドクオにしか頼めないんだもん」

しぃは涙目で俺に訴えてくる。

その表情に、ドクン、と心臓が鳴る。

・・・くそ、涙は反則だろ。
69:2006/12/15(金) 23:33:41.23 ID:
ドクオになりてぇ・・・・・・・・
70:2006/12/15(金) 23:35:39.24 ID:

('A`)「わかったよ。わかったから泣くのやめてくれ」

(*゚ー゚)「・・・え?」

('A`)「どんな事情か知らんけど、一日だけ彼氏になるよ」

そう言うと、しぃの顔がぱぁっと明るくなる。

あー、もう、その顔を見るだけで何故かこっちの心も軽くなる。

(*゚ー゚)「ほんと!? ありがとードクオ!」

('A`)「あー・・・もうどうにでもしてください」

(*゚ー゚)「うんうん、かっこいいよドクオ! このお礼は絶対返すからw」

(;'A`)「てか、お前泣き止むのはやっ!」

しぃはすでに涙など流していない。

むしろさっきまで泣いていたとは思えないほど清々しい笑顔。
73:2006/12/15(金) 23:38:57.19 ID:

(*゚ー゚)「ドクオ、涙は女の子の武器なんだよ。ふふw」

しぃは俺の肩を叩き、ニヤリと口だけで笑う。

・・・それって、もしかして――

('A`)「だ、 騙されたぁぁぁ!!」

(*゚ー゚)「あははw気にしない気にしないw」

信じられん。まさか自分が「嘘泣き」なんて古典的な手に引っかかるとは!

いや、それをやってのけるしぃの演技力も恐ろしい・・・。

どうやら、俺はとんでもない小悪魔と契約を交わしてしまった様だ。

待ち構える己の未来を考えれば考えるほど、俺の頭は痛くなっていくのであった。
75:2006/12/15(金) 23:40:37.89 ID:
今日の投下ここまでです。
しぃを相手に書くのは難しい・・・。
次回は明日の夜に投下します。
読んでくれた人、ありがとうございました。
77:2006/12/15(金) 23:43:19.49 ID:
乙!
楽しい展開を期待!
79:2006/12/15(金) 23:44:03.82 ID:
wktkしっぱなし
明日の投下楽しみにしてるよ
82:2006/12/15(金) 23:47:37.31 ID:
ちなみに、世界観やキャラ等は前作品とはまったく異なります。
特にドクオは全然キャラ違いますね('A`)
今作がある意味では一番ドクオっぽいです。
それでは、支援してくれたみなさんありがとうございました。
83:2006/12/15(金) 23:49:21.59 ID:
>>82
ドクオすきなんだなw
この話も短期の予定かい?
84:2006/12/15(金) 23:50:46.31 ID:
>>83
短期作になります。
ドクオの気持ち~よりは長いですのでペンくらいですね。

('A`) ドクオのペンは進まないようです
91:2006/12/16(土) 01:33:12.46 ID:
ドクオ視点の話とは珍しいな
110:2006/12/16(土) 12:20:08.78 ID:


('A`)「んで、一日彼氏って具体的に何するの?」

俺はふと気になったことを口にする。

彼氏という立場すら経験したこと無いのに、一日限定彼氏なんて想像つかない。

(*゚ー゚)「んーっとね。とりあえずウチに来てほしいんだ」

('A`)「エッ!」

いきなり彼女の家庭訪問とは・・・!?

童貞の俺には嬉し・・・いや、荷が重い。

まさか、「一日彼氏」とはそういう意味を指していたのだろうか。
111:2006/12/16(土) 12:23:06.04 ID:

('A`)「あの、しぃ?」

(*゚ー゚)「何?」

(;'A`)「俺、ゴムのつけ方とか知らないけど・・・」

(*゚ー゚)「・・・」

(;'A`)「・・・」

(*゚ー゚)「変なことしたら金的剥ぎ取って殺すから」

(;'A`)「ふぁ、ふぁい!!」

すごく、冷たい目で言われました。

間違いなくそっちの筋の人です、本当にありがとうございました。

('A`)(そ、そうゆう意味じゃなかったのか・・・)
113:2006/12/16(土) 12:26:18.90 ID:


(*゚ー゚)「そこの交差点、右に曲がって」

('A`)「はいよ」

しぃを後ろに乗せて、自転車を漕ぐ。

二人乗りもだいぶ慣れてきた。

平坦な道をすいすいと走り抜ける。

(*゚ー゚)「あ、ここだよ!」

キッ、とブレーキ音を鳴らし、自転車を止める。

('A`)「で、でっかぁぁぁ!!」

目の前にはテレビでしか見たこと無いような大きな家が建っていた。

駐車場には、名前は判らないが高級車が2台ほど止まっている。
114:2006/12/16(土) 12:29:46.84 ID:

(*゚ー゚)「ドクオー、何してるの? 早くー」

しぃは玄関の門を開けながら言う。

(;'A`)「・・・やべ、緊張してきた」

しぃは金持ちのお嬢様だったのか・・・。

まさか、両親に俺の悪態をついて海に沈められたりしないよな?

(;'A`)「まさかね・・・はは」

俺は不安を胸に抱きながら、自転車を降りてしぃの家へ入っていった。
115:2006/12/16(土) 12:30:55.22 ID:


(*゚ー゚)「適当なとこ座ってていいよ。今、紅茶入れるね」

('A`)「お、おう。悪いね」

俺はリビングのソファーに恐る恐る座る。

すごく柔らかくて気持ちいい・・・。

('A`)(てか、いくらすんだよコレ・・・)

(*゚ー゚)「はい、どうぞ」

しぃが紅茶を運んできた。

すごくいい香りが漂っていて、高級品だということがすぐにわかった。
116:2006/12/16(土) 12:38:08.55 ID:

('A`)「うーん、スンバラシイ・・・」

香りを鼻で吸い込むと、爽やかな香りが体をめぐる。

一口飲むと、それはもう体の中に風が吹き通ったかのように爽やかな味だ

('A`)「・・・でさ、結局俺は何のためによばれたわけ?」

(*゚ー゚)「ん、あぁそっか。まだ話してなかったよね」

しぃは紅茶を一口飲み、ティーカップを置いて話し始めた。

(*゚ー゚)「うちってさ・・・見ての通り、お金持ちじゃん?」

('A`)「自分で言うなよ・・・まぁ見てわかるけどさ」

(*゚ー゚)「自慢してるわけじゃなくて、こうお金持ちだと跡取りとか色々面倒なのよ」

(;'A`)「跡取りって・・・お前んち、会社経営してんのかよ」

社長令嬢なんてドラマでしか見たことなかった。

確か、木曜ドラマだと財産を巡って血みどろの殺人事件が・・・というパターンだが。
117:2006/12/16(土) 12:40:33.56 ID:
wktk
118:2006/12/16(土) 12:43:30.13 ID:

('A`)「ま、まて。俺は殺人事件には関与できないぞ!!」

(*゚ー゚)「な、何言ってんの!! 勝手に変な想像しないでよ、もう」

('A`)「なんだ違うのか・・・」

少し、ドキドキしたのは内緒だ。

もちろん犯罪願望なんてこれっぽっちも無いけど。

(*゚ー゚)「それで、さ。この年からお見合いの勧めとか結構されるんだ」

('A`)「お、お見合いって・・・ずいぶん古典的だな」

(*゚ー゚)「そりゃウチは一人っ子だから、社長の息子さんとかと結婚しろって勧められてさぁ・・・」

('A`)「え、マジ? そういうのってドラマだけだと思ってた」

木曜ドラマでは社長令嬢の結婚相手はお得意さんの会社社長の息子だったり

有名な若手政治家だったりするものだ。・・・まぁ、大抵犯人役だけど。

(*゚ー゚)「ウチも例外じゃなくてさ、親があまりにしつこいもんだからつい・・・」

119:2006/12/16(土) 12:48:20.78 ID:


(`・ω・´) 「これでどうだ!! マツビシ物産の息子だ。いい男だぞ!」

(*゚ー゚)「もー、だから私はお見合いで結婚相手決める気はないってば!」

(`・ω・´) 「まったく・・・そんなこと言って彼氏の一人も連れてきたことないじゃないか!」

(*゚ー゚)「か、彼氏くらいいるもんっ!」

(`・ω・´) 「ほう・・・? 初耳だな。ならば今度つれて来て見なさい。ふさわしい男かチェックする」

(*゚ー゚)「え、えっと~・・・」

(`・ω・´) 「ほら、やっぱりデマカセなのだろう? わかったらお見合いに・・・」

(*゚ー゚)「つ、連れて来るもん! 明日、うちに呼んでパパに紹介するから!」


120:2006/12/16(土) 12:51:57.80 ID:

(;'A`)「・・・待った、その流れでいくとさ、すごく嫌な予感するんだけど」

もしや、と思いしぃの目を見る。

僅かな沈黙の後・・・彼女の口が開く。

(*゚ー゚)「ごめん! なんとかパパにお見合いを諦めさせて!」

('A`)「な、なんだってー!?」

頭の中が混乱する。何故に俺?

俺が彼女いない歴=年齢だと言う事を知っているのか!?

('A`)「む、無理だろ!! だって俺は普通の庶民だぜ?」

(*゚ー゚)「庶民でもいいから! ほら、愛とかなんとかいってごまかしてよ!」

(;'A`)「いや無理無理!! てかばれたら俺消される!」

俺としぃが言い争っていると、部屋にインターホンの音が鳴り響く。

その音で、二人の体が一気に固まる。
122:2006/12/16(土) 12:55:34.57 ID:

(*゚ー゚)「パパが帰ってきた・・・!!」

瞬間、俺は必死に窓からの逃走を試みる。

が、鍵が複雑で開かない。さすが金持ち、防犯も一流か・・・。

(*゚ー゚)(ちょっと、逃げないでよ・・・!!)

('A`)(うっせー! 俺はまだ死にたくないぞ!)

小声で話しながら静かな格闘を繰り広げていると、玄関から鍵の開く音。

(*゚ー゚)('A`)「やばっ!」

俺としぃは凄いスピードでソファーに戻り、隣同士に座ってティーカップを手に取る。

そして、各々のポジションについた3秒後、リビングのドアが開かれた。
123:2006/12/16(土) 12:57:06.27 ID:

(`・ω・´) 「あー、失礼するよ」

スーツを着たピシッとした男性がリビングに入ってくる。

いかにもキャリア組、といった感じだ。

(*゚ー゚)「お帰りなさい、パパ。ドクオ君、こちら私のお父様です」

('A`)「どうも初めまして。しぃさんとお付き合いさせて頂いております。ドクオです」

・・・う、敬語ってこれで合ってるのだろうか。

こんなことなら国語の勉強、もっとしっかりやっとけばよかった。

(`・ω・´) 「・・・ふむ」

お父様は、なにやらジロジロと俺のことを見ながら、時折怖い目で見てくる。
124:2006/12/16(土) 12:57:59.57 ID:
wktk
125:2006/12/16(土) 13:01:00.83 ID:

(;'A`)(やべ、冷や汗出てるのばれてないかな?)

顔はにこやかにしているが、心の中は緊急警報の嵐が出ている。

まさに命がけの舞台役者だ。

(`・ω・´) 「よろしい、ドクオ君・・・といったかな? 少しお話をしようか」

(;'A`)「は、はい」

もう逃げることは出来ない。

俺は助け舟を求め、しぃを横目で見る。

(*゚ー゚)(アドリブで 頑張って)

俺は初めて人の心を読んだ。・・・やるっきゃない、か。

やがてお父様は俺の向かいのソファーに豪快に座る。

・・・すごい威圧感感じるんですけど。
126:2006/12/16(土) 13:03:53.32 ID:

(`・ω・´) 「で、君はいつからしぃと付き合っているのかね?」

('A`)「1ヶ月前からお付き合いしています」

(`・ω・´) 「一ヶ月だとぉ!?」

ドォン! とテーブルを拳で叩き大声を上げる。

まずい、地雷踏んじまったか!?

(`・ω・´) 「丁度、男女付き合いが一番楽しい時期だな」

お父様は、不気味に含み笑いをしながら俺の顔を見る。

(*゚ー゚)(たぶん、大丈夫)

しぃとアイコンタクトを交わす。

・・・セーフ、か? だが、間をおかずに次の質問がとんでくる。
127:2006/12/16(土) 13:09:34.90 ID:

(`・ω・´) 「君のご両親は、どんな職業をしているのかな?」

('A`)「あ、父はごく普通の商社に勤めてます」

まぁ、ここは嘘をついても仕方ないだろう。

正直に答える。

(`・ω・´) 「ふむ、なるほどね・・・」

まるでライオンと対峙しているような威圧感だ。

額に汗が浮かんでくる。喉が渇き、心拍数も上がってきた。

(`・ω・´) 「最後に、君は私の娘を本当に好きで付き合ってるのかね?」

('A`)「は・・・」

ここはyesと言っておくべきだ。

なのに、急に緊張が走り顔が赤くなる。

何やってんだ俺、早く答えなきゃ・・・
128:2006/12/16(土) 13:11:22.55 ID:

ふとしぃの方を見ると、しぃも何故か少し顔を赤くしている。

(*゚ー゚)(・・・)

アイコンタクトにも応じる様子は無い。それなら・・・仕方ない。

('A`)「ぼ、僕はしぃさんのことを本気で愛してます。本気で付き合ってるんです」

少し噛んだ。けど、言った。

歯が浮きそうな自分の台詞に恥ずかしくなる。

(`・ω・´) 「そうか、わかった!」

ポン、と手で膝を叩きお父様は立ち上がる。

(`・ω・´) 「しぃ、どうやら君とドクオ君は真剣に付き合っているようだね」

(*゚ー゚)「パパ! それじゃ、認めてくれるの?」

(`・ω・´) 「ふ、まぁ多少幼さは残るが、感じのよい青年じゃないか」

ぱぁっとしぃの顔が明るくなる。

俺はそっとしぃに向かって親指を立てる。
129:2006/12/16(土) 13:14:56.97 ID:

どうやら、なんとか無事終わり・・・

(`・ω・´)「そうだ、動物園のチケットが2枚あるんだ。君達二人でデートにでも行ってきなさい」

(*゚ー゚)「・・・え?」

('A`)「へ・・・」

お父様はポケットからチケットを取り出すと、俺に手渡す。

(`・ω・´)「今週の日曜日なんかいいんじゃないか? ふふ、まぁ楽しんで来なさい」

そう言うとお父様は不適に笑いながらリビングを出て行った。

やがて足音が遠くなり、聞こえなくなった。

(*゚ー゚)「ま、まずいよドクオ!」

('A`)「え、何が!?」

(*゚ー゚)「パパのことだから・・・絶対このままじゃ終わらないよ」
130:2006/12/16(土) 13:16:45.53 ID:
ワークテイカー
131:2006/12/16(土) 13:17:42.24 ID:

(;'A`)「え? あれで終わりじゃないのかよ!」

俺はてっきり公認されたものだと思ってた。

たしかに、あっさりはし過ぎとは思ったけど・・・

(*゚ー゚)「絶対、動物園に監視しに来るよ。・・・ああ、もう」

(;'A`)「それって、行かなきゃマズイってこと?」

(*;゚ー゚)「私達が付き合ってるっていう嘘がばれたら・・・」

(;'A`)「・・・」

想像しただけで、背筋に寒気が走った。

すでに俺達は、檻の中に閉じ込められていたのだ。

(*゚ー゚)「ごめん、一日彼氏って約束だったけど・・・日曜日まで延期していい?」

('A`)「あ、ああ。それが賢明だろ・・・」

俺達の嘘は、明後日の日曜日までもつれこむ。

俺は、溢れる不安にため息を吐くことしかできなかった・・・。
132:2006/12/16(土) 13:19:34.15 ID:


('A`)「それじゃ、俺は帰るわ」

(*゚ー゚)「うん、ほんとごめんね・・・。変なこと巻き込んじゃって」

しぃが珍しく悲しそうな顔をして落ち込む。

俺は、それを見てなんだか無性に調子が狂った。

('A`)「あーっもう、そんな落ち込むなよ。俺は気にしてないし、大丈夫だからさ」

俺はそっとしぃの頭を撫でる。

(*゚ー゚)「あ・・・」

(;'A`)(あれ・・・?)

怒って引っぱたかれると思ってたけど、しぃは素直に俺の手を受け入れた。

・・・なん、だよ。可愛い所もあるじゃん。

急に恥ずかしくなって、赤面してしまう。
133:2006/12/16(土) 13:24:03.58 ID:

心地よい時間がゆっくりと流れる。

(*゚ー゚)「・・・ありがと」

('A`)「元気出たか?」

(*゚ー゚)「うん、もう大丈夫」

しぃと目が合い、見つめ合う。

・・・なんか、こういう雰囲気はドキドキする。

今は彼氏の振りをする必要は無い、けど名残惜しさを感じる。

(*゚ー゚)「なんか、ドクオ彼氏っぽいね・・・w」

('A`)「え、ああ。ちょっと役にはまりすぎちゃったかな」

(*゚ー゚)「あ、そうだ。これ、携帯の番号」

しぃは紙きれを取り出すと、俺に渡した。
135:2006/12/16(土) 13:26:05.94 ID:

(*゚ー゚)「一応、今は私の彼氏なんだから番号くらい知らないと不自然でしょ?」

('A`)「ん、サンキュ。じゃあ後で電話するわ」

(*゚ー゚)「うん。それじゃ、おやすみ」

('A`)「おう、それじゃまたな」

俺は自転車に乗り、ペダルを漕ぎ始める。

振り返らずに、帰路を走る。

心臓の鼓動がまだ音を立てている。

ドクン、ドクンと。

('A`)「あ――もう!!」

何か恥ずかしくなり夜空に向かって大声を上げる。

そして、顔は自然に笑う。

嬉しさと恥ずかしさがごっちゃになって溢れてきた。

136:2006/12/16(土) 13:28:28.11 ID:

・・・なんだろう、この気持ち。

嫌じゃない、むしろ俺は喜んでいるのか?

('A`)「あー、もうわけわからん」

不思議な感覚に包まれつつ、俺は家へとペダルを漕いでいった。

ゆっくりと、空の星を見上げながら――ゆっくりと。
137:2006/12/16(土) 13:29:30.01 ID:


(`・ω・´)「ちくしょう・・・ちくしょううう!!!!」

シャキンはドアを少し開け、中腰で外を覗いていた。

(`・ω・´)「ドクオォォ・・・娘とラブラブしやがってぇ・・・!!」

(`・ω・´)「見ていろ・・・日曜日、お前が本物かどうか試してやる」

シャキンは携帯を取り出し、番号を押す。

(`・ω・´)「あー、もしもし? ミルナ君? 君、たしかムエタイやってたよねぇ・・・」

(`・ω・´)「頼みがあるんだよ・・・。ええ、明後日の日曜日・・・お願いします」
138:2006/12/16(土) 13:30:35.40 ID:
ちょwwww親父殺す気かwwwwwwwwwwwww
139:2006/12/16(土) 13:30:55.26 ID:
これは期待wwwwwwwwwwwwwwwwwwww
140:2006/12/16(土) 13:30:58.49 ID:
親父ヒドスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
141:2006/12/16(土) 13:31:40.58 ID:
オヤジwwww
142:2006/12/16(土) 13:31:54.58 ID:
一応、ここまで溜まっていたので投下しました。
夜と言っておきながら昼間に投下しちゃってすいません。
支援してくれた方ありがとうございました。
また溜まりしだい投下に来ます
143:2006/12/16(土) 13:32:50.15 ID:
乙カレー!
152:2006/12/16(土) 14:49:24.33 ID:
親父めっちゃわらたwwwwwwwww
160:2006/12/16(土) 19:33:26.19 ID:


('A`)「うーん・・・」

俺は、一人部屋で悩んでいた。

目の前には携帯としぃの番号。

('A`)「女の子に電話なんて初めてだし・・・何話せばいいんだ」

やっぱり、今日は楽しかったぜ! とか、電話してみたよ~みたいなノリか?

電話で無愛想っていうのはマズイし、話題切れも気まずいよな・・・。
162:2006/12/16(土) 19:39:54.09 ID:

('A`)「もしもし? あ、俺ドクオ。悪いな、いきなり電話しちゃって・・・」

一人で口に出してみる。

・・・ちょっと女々しいかな?

('A`)「おう、俺だ。電話してやったぜ」

うん、たぶん切られる。

やっぱ悩む前にさっさとかけたほうが・・・うーん、でも・・・

ミ,,゚Д゚彡「なーに一人でブツブツ言ってやがるんだ?」

('A`)「うおっ!!」
163:2006/12/16(土) 19:43:22.14 ID:

ミ,,゚Д゚彡「ふっふっふ・・・女か?」

('A`)「な、なんだよ、なんでもいーじゃねーか! あっちいってろよ」

ミ,,゚Д゚彡「ドクオ、女を落とすときは押して押して押しまくるのがコツだ」

('A`)「もー、いいからでてってくれよトーチャン!」

俺は強引にドアを閉め、トーチャンを部屋から追い出す。

トーチャンは最後までニヤニヤしていた。

・・・聞かれてたのか。は、恥ずかしい。

('A`)「これ以上邪魔が入る前にかけよう・・・」

俺は携帯を開き、番号を押す。
164:2006/12/16(土) 19:50:44.64 ID:

コール音が一回、二回・・・そして、声が聞こえた。

「もしもし?」

('A`)「も、もしもし? 俺ドクオ! い、いきなりわるかったなぁ!」

「・・・え、ドクオ? あ、かけてくれたんだ~」

('A`)「う、うん」

声を聞いたとたん、頭の中の予定なんて吹っ飛ぶ。

電話越しでも、しぃの声だとすぐわかった。

「今日は、ありがとね」

('A`)「え?」

「なんか、ドクオに色々迷惑かけちゃって・・・」
165:2006/12/16(土) 19:56:30.19 ID:

('A`)「だ、だから心配すんなよ。乗りかかった船だ。俺がなんとかするって」

「・・・ありがと。やっぱドクオに頼んでよかった・・・」

('A`)「そ、そんなたいしたことじゃないってw」

女の子にそういう声で頼られると顔がにやけてしまう。

俺は顔をニヤニヤさせながらガッツポーズを決める。

「ドクオ・・・」

('A`)「ん、何?」

また、しぃの声が小さくなる。

「私のこと、嫌いにならないでくれる?」

('A`)「え?」
166:2006/12/16(土) 19:57:04.77 ID:
支援
167:2006/12/16(土) 19:57:41.24 ID:

思いつめたような声。

なんだろう、いつものしぃとは、別人のように感じた。

('A`)「何言ってんだよ、嫌いになんてならないよ」

「そう、ありがとう。・・・それじゃ、また日曜日に電話するね」

('A`)「お、おう」

通話が切れ、俺は携帯を閉じて安堵のため息をつく。

思ったより、電話しちゃえばなんてことなかったな。

('A`)(しぃ・・・)

ベットに寝転び、目を閉じる。

しぃの姿が自然に脳裏に走る。

('A`)「俺、どうしちゃったんだろ・・・」

そのまま、静かに夜は更けていった。
168:2006/12/16(土) 19:59:35.90 ID:


(*゚ー゚)「ふぅ」

携帯を閉じ、そのままベットに倒れこむ。

広い部屋、大型の液晶テレビ、高級なソファーに大きな本棚・・・。

私の知らない物ばかり溢れてる。

この部屋で長いこと一緒にすごしていたのに、私はそれらを知らない。

(*゚ー゚)「ドクオ・・・」

今は、この小さな携帯が一番身近に感じる。

・・・いや、携帯の向こうのドクオだろうか。

たった一つの、外の世界への道。
169:2006/12/16(土) 20:01:08.51 ID:

「しぃ、入るぞ」

ノックが鳴り、パパが部屋へと入ってきた。

(`・ω・´) 「明日のパーティーは3時からだから、ちゃんと準備をしておきなさい」

(*゚ー゚)「・・・はい」

(`・ω・´) 「うむ、それじゃおやすみ」

(*゚ー゚)「おやすみなさい」

・・・またパーティーか。

正直、行きたいとは思わなかった。
170:2006/12/16(土) 20:01:56.67 ID:

また、社長令嬢を演じなければならないと思うと気持ちが沈んだ。

(*゚ー゚)「・・・うう」

泣くな、こんなことで泣いてどうする?

強くなれ。私はもう大人なんだ。

眠れ、そして明日にはいつものように演じるんだ。

・・・だから、今だけは。何も考えずに眠るんだ。

明日は、待ってはくれないのだから。
171:2006/12/16(土) 20:03:58.76 ID:


(;^ω^)「ええーっ!? しぃさんの彼氏役!?」

('A`)「バカ、声がでけぇ。・・・一応、極秘機密だぞ」

土曜日、俺はブーンと近所の喫茶店で落ち合っていた。

明日のこともあるし、色々話す相手が欲しかったのだ。

( ^ω^)「しっかし、しぃさんがそんな大金持ちだったとは知らなかったお」

('A`)「俺も驚いた。・・・で、どうやったらあっちのお父様に認めてもらうかっていう話だ」

( ^ω^)「ふぅ~ん、なるほどだお」

ブーンはオレンジジュースをストローで飲みながら言う。
173:2006/12/16(土) 20:07:00.20 ID:

( ^ω^)「ドクオ・・・しぃさんのこと好きなのかお?」

('A`)「ぶふぅ!」

俺は飲んでいた水を少し噴き出してしまった。

ブーンにそんな質問されるとは・・・

('A`)「何言ってんだ! お、俺は成り行きで・・・」

( ^ω^)「ドクオ、目が泳いでるお」

('A`)「な、な!?」

ブーンはニヤニヤ笑いながら俺を見る。

それはいつものブーンの笑いじゃなく、まるで子猫を見るような目だ。
176:2006/12/16(土) 20:10:25.39 ID:

( ^ω^)「大丈夫、ドクオの正直な気持ちをぶつければしぃのお父さんもわかってくれるおw」

('A`)「おま、だから違うって!」

( ^ω^)「ふひひwwまぁ応援してるおwwむふふww」

気味の悪い笑いをしながら、ブーンは喫茶店を出て行った。

('A`)「なんだそりゃ・・・」

俺は一人喫茶店に残され、ブーンの言ったことを考える。

あいつ、何が言いたかったんだ?

結局、また悩む。だが、考えても何も思いつくものは無かった。
177:2006/12/16(土) 20:12:51.26 ID:
これは期待
178:2006/12/16(土) 20:14:10.70 ID:


高級な服は嫌い。

動きにくいし、何より全体的にキツイ。

( ´ー`)「お飲み物をどうぞ」

(*゚ー゚)「ありがとう」

私はグラスを受け取り、パパの方を見る。

他の会社の社長さんと楽しそうに話している。

・・・まだ終わりそうにないや。
181:2006/12/16(土) 20:18:58.77 ID:

( ゚∀゚)「お嬢さん」

(*゚ー゚)「え?」

私のこと?

ふと声の主を見ると、身なりのいい青年が立っていた。

( ゚∀゚)「初めまして・・・フジサン商社の跡取りのジョルジュと申します」

(*゚ー゚)「あ、どうも。シャキン商社のしぃです」

( ゚∀゚)「おお、あのシャキン商社の・・・どうりでお美しいはずです」

ジョルジュと名乗った男は私の手を取り、握手をする。

ずいぶん積極的。あのフジサン商社の跡取りというだけあって自信に満ち溢れている。
182:2006/12/16(土) 20:21:06.32 ID:

( ゚∀゚)「よろしければ、こちらで一緒にお話でもどうでしょうか?」

(*゚ー゚)「父の用事が終わるまでなら・・・」

( ゚∀゚)「ええ、もちろん。じゃああちらのテーブルへ行きましょう」

ジョルジュは私の手を引いて向こうのテーブルへと連れて行った。

あぁ、面倒くさい・・・。けど、愛想は良くしないと。

私は興味の無いビジネスの話を聞きながら、適当に相槌を打っていた。
183:2006/12/16(土) 20:22:49.57 ID:


翌日

('A`)「おー、ここがVIP動物園かぁ」

電車で30分ほど揺られ、俺達は動物園の前にいた。

(*゚ー゚)「はぁ。私、動物ってあんま好きじゃないんだよね・・・」

(;'A`)「なんだよ、やぶからぼうに・・・」

(*゚ー゚)「だって、猿や像を見ても別におもしろくないじゃない?」

('A`)「ったく、いいから早く入ろうぜ」

文句を垂れながらモタモタしているしぃの手を引っ張る。

(*゚ー゚)「あ・・・」

しぃが何か言おうとしたが、俺はしぃの方を見ずに歩いた。

(;'A`)(手繋ぐのって、こんな感じでいいんだよな・・・)

(*゚ー゚)(結構やるじゃん・・・ふふ)

柔らかい手の感触に緊張しながら、俺達はVIP動物園に入園した。
184:2006/12/16(土) 20:24:25.79 ID:

(*゚ー゚)「キャー! ちょっとすごい! ゴリラだよゴリラ!」

(;'A`)「・・・」

さっきまでうだうだ言っていたのはどこの誰だったのだろうか?

しぃは手すりに掴まり、ゴリラを見ながら大声を出している。

(*゚ー゚)「ほら、ドクオ! 次はキリン見に行こう!」

('A`)「お、おう」

手を繋いだまま、引っ張られるように走る。

まるで子供とその親だ。
185:2006/12/16(土) 20:26:03.11 ID:

('A`)「ふぅ、やれやれ・・・」

でも、喜んでいるしぃの笑顔を見ると安心する。

なんか、こういうのを恋愛っていうのだろうか?

まぁ、今彼氏役だからなんちゃって恋愛だけど。

(*゚ー゚)「キャー! すごい首長ーい! なんでなんで!」

('A`)「キリンは高い木に生えた草を食べるために首が長くなったんだよ」

(*゚ー゚)「へ~。ドクオも草食べればあれくらいの身長になるんじゃない?」

(;'A`)「いや、あそこまで大きくなりたくないし! ってかそれは俺をチビと言ってるのか!?」
186:2006/12/16(土) 20:28:17.48 ID:

(*゚ー゚)「やーい、チビw」

('A`)「なにぃ~! 俺とあんま身長変わらないくせに! うりゃ!」

(*゚ー゚)「きゃっ! もう何すんのよ!」

('A`)「はい、よけた~。当たらないよーだ」

(*゚ー゚)「にゃろめ~・・・待て!」

動物園で走りあう二人。

自然に笑い合い、他人から見れば普通のカップルのように見えるだろう。

壁ω・´) 「う、おのれぇ・・・ミルナ君! ミルナ君!」

( ゚д゚ )「はい、シャキンさん」

(`・ω・´) 「わかってるね。あいつをボコボコにしてかっこ悪い所をしぃに見せるんだ」

( ゚д゚ )「はい、シャキンさん!」
187:2006/12/16(土) 20:30:30.61 ID:
親父キタワァ
wktk
188:2006/12/16(土) 20:30:38.24 ID:



('A`)「お前、二回叩いたろ! 反則!」

(*゚ー゚)「知らないよ~だ」

しぃは子供のように舌を出して逃げる。

運動不足のせいか、追いつけない・・・。

('A`)「ちょ、ちょっとタイム・・・」

(*゚ー゚)「もう、運動不足だなぁ」

乱れた息を整える。

その時、前にいたしぃが誰かとぶつかった。

(*゚ー゚)「いたっ!」

( ,,゚Д゚)「ってぇ!」

大柄な男にぶつかり、しぃがよろける。
189:2006/12/16(土) 20:36:46.54 ID:

(*゚ー゚)「あ、ごめんなさ・・・」

( ,,゚Д゚)「ゴラァ! てめぇどこ見て歩いてんだゴラァ!! あぁ?」

男は大声を張り上げ、威嚇する。

見るからにチンピラ風の男。

まずい、因縁つける気だ。

('A`)「ちょ、ちょっとすいません」

( ,,゚Д゚)「あぁ? なんだゴラァ!!」

怖ぇ! ・・・なんでこんな人が動物園にいるんだ。

俺は見上げるような大男に軽く頭を下げる。

('A`)「ぶつかっちゃってほんとすいません・・・ほら、いこうしぃ」

(*゚ー゚)「う、うん」

俺はしぃを隠すようにその場を立ち去ろうとするが、男はそれを許さない。
190:2006/12/16(土) 20:37:56.86 ID:

( ,,゚Д゚)「はぁ? ふざけてんじゃねぇぞ。ぶつかっといてその態度はなんだぁゴラァ!!」

('A`)「危ない!」

(*゚ー゚)「キャッ!」

男の拳が振り下ろされ、とっさにしぃをかばう。

鈍い音と共に、頬に激痛が走った。

(*゚ー゚)「ドクオ!!」

・・・久しぶりに殴られた。

口に血の味が広がる。
192:2006/12/16(土) 20:39:13.48 ID:
( ゚д゚ )と( ,,゚Д゚)は同一人物……
ではないよな
194:2006/12/16(土) 20:40:03.26 ID:
>>192 手下っしょ。
193:2006/12/16(土) 20:39:37.92 ID:


(`・ω・´) 「ねぇ、誰なのあいつ!? ミルナ君の知り合い!?」

( ゚д゚ )「い、いえ。私の通ってるジムにはあんな男いませんが・・・」

(`・ω・´) 「まずいよ、早くあのチンピラ倒しちゃってよ! しぃが危ない!」

( ゚д゚ )「え、ええ!? 私がですか!? 勘弁してくださいよ! あの男ちょっとでかすぎワロタ!」

(`・ω・´) 「ええい、ムエタイやってるんだろ!! なんとかしろ!」

( ゚д゚ )「はい、先週から始めました」

(`・ω・´) 「・・・」


( ゚д゚ )
195:2006/12/16(土) 20:40:09.78 ID:
ワロタwwwww
197:2006/12/16(土) 20:40:49.80 ID:
ちょwwwwwwwwww
198:2006/12/16(土) 20:40:54.08 ID:
先週からかよw
203:2006/12/16(土) 20:43:06.07 ID:


( ,,゚Д゚)「ゴラァ。黙ってんじゃねえぞ?」

(*゚ー゚)「ドクオ、大丈夫? ねぇ、ドクオ!」

俺はゆっくりと立ち上がり、相手を見る。

・・・怖い。逃げ出したい。

でも、しぃを守らなくちゃ。

('A`)「すんません、これで気はすみましたか?」

( ,,゚Д゚)「あぁん? ふざけんなカス!! すむわけねーだろーが!!」

('A`)「じゃあ、気が済むまで殴ってくださいよ」

俺は一歩前に出る。

・・・近づくと、男との身長差がよくわかる。

まともに殴り合ったら、絶対勝ち目は無い。
206:2006/12/16(土) 20:45:13.29 ID:

('A`)「その代わり、彼女には手ださないでくださいね」

(*゚ー゚)「ドクオ・・・!?」

男の口がにやりと笑う。

( ,,゚Д゚)「じゃあそうさせてもらう、ぜ!!」

男は拳を振り上げ、俺の顔面に向かって振り下ろした。

207:2006/12/16(土) 20:46:46.46 ID:


(*゚ー゚)「ドクオ・・・!」

('A`)「はぁ・・ぶはっ・・・!」

口の中の血の味が、さらに濃くなった。

頭がグラグラと揺れる。もう何発貰っただろう?

( ,,゚Д゚)「はぁはぁ・・・しつこい野郎だゴラァ・・・」

男も息を切らし、疲労している。

絶対、倒れない。喧嘩は殴り合いの強さで勝敗が決まるわけじゃない。

( ,,゚Д゚)「いい加減、寝ろ、よ!!」

大振りなフックが俺の頭を打ち抜く。

一瞬、ふらついたが体勢を立て直し相手を睨みつける。

( ,,゚Д゚)「野郎・・・」
209:2006/12/16(土) 20:47:45.78 ID:
ドクオかっけぇwww
210:2006/12/16(土) 20:47:57.35 ID:
かっけええええ
211:2006/12/16(土) 20:48:17.42 ID:

(*゚ー゚)「もう、もうやめてよドクオ! 死んじゃうよ・・・」

('A`)「黙ってろ・・・しぃ。大丈夫だから」

しぃの涙声も、聞き取るのが精一杯だ。

男の苛立ちが頂点に達したのか、奇声をあげて襲い掛かってくる。

その手には・・・ナイフ?

( ,,゚Д゚)「ゴラァァ!!! ふざっけんな!!」

やばい。刃物は予想してなかった。

避けようにも、もう足に力が・・・
214:2006/12/16(土) 20:49:48.56 ID:
らめぇぇぇ避けてぇぇぇぇ
217:2006/12/16(土) 20:51:14.99 ID:

(`・ω・´)「社長キーーック!!!」

( ,,゚Д゚)「ぶほぅ!?」

突然、横からから現れた人が男にとび蹴りをかます。

あれは、お父様?

(`・ω・´)「このチンピラが!! うちの娘に因縁ふっかけやがってぇぇ!!!」

( ゚д゚ )「そうだそうだ!」

お父様は男に馬乗りになってパンチを何発もぶち込む。

もう一人・・・の人は遠くから見てるだけ。

(*゚ー゚)「ドクオ、ドクオ!! 大丈夫? ねぇ・・・」

('A`)「・・・はは、強ぇや。かなわ・・・ね・・・」
219:2006/12/16(土) 20:52:11.52 ID:
親父wwwww
おせぇよ('A`)
220:2006/12/16(土) 20:52:11.12 ID:
親父TUEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!
222:2006/12/16(土) 20:52:36.48 ID:
親父TUEEEEEならはじめから出て来いよwwwww
227:2006/12/16(土) 20:54:06.14 ID:

(*゚ー゚)「バカ! なんで・・・なんでそんなになるまで!」

しぃの目が涙で溢れる。

('A`)「俺・・・しぃの彼氏だから・・・だから、守らなきゃ・・・」

(*゚ー゚)「!!」

視界が歪み、力が抜けてしぃにもたれかかる。

俺の体はもう、言うことを聞いてはくれなかった。

(*゚ー゚)「・・・バカ。かっこよかったよ・・・ドクオ」

しぃは俺の背中に手を回す。

しぃに抱きしめられたまま、俺は意識を失った。
236:2006/12/16(土) 21:02:46.96 ID:


('A`)「いてて、痛ぇ!」

(*゚ー゚)「ほら、動かない! 今、消毒液塗るから」

(;'A`)「けが人なんだから、もっと大事に扱ってくれよ」

俺は医務室で治療を受ける。

あの後、警備員も駆けつけて大変な騒ぎだったらしい。

男の方が重症だって。・・・娘を想う父は強し。

(*゚ー゚)「はい、終わり!!」

('A`)「いてぇ!!」

しぃは俺の背中をバーン、と叩く。
237:2006/12/16(土) 21:05:34.29 ID:
これはフラグ?
239:2006/12/16(土) 21:08:21.24 ID:

('A`)「ったく、一応、今は彼氏なんだぞ?」

(*゚ー゚)「ばーか、自惚れすぎw」

('A`)「く・・・なんて恩知らずな」

お互いに笑いながら話す。

時計を見ると、もう午後8時になっていた。

・・・ずいぶん長い時間、気絶してたみたいだ。

(*゚ー゚)「ま、でもさ」

しぃはふっと、俺の目を見る。

(*゚ー゚)「今日はありがと・・・かっこよかったよ、ドクオ」

素直にお礼を言われる。

・・・恥ずかしいけど、嬉しい。
240:2006/12/16(土) 21:09:56.49 ID:

('A`)「・・・べ、別に彼氏として当たり前のことしただけだよ」

(*゚ー゚)「へへ、その台詞、なんか嬉しいな」

言った自分も恥ずかしくて赤面する。

・・・なんだろ、俺。しぃとすごく気持ちが通じ合ってる気がする。

('A`)「・・・しぃ、あのさ!」

(*゚ー゚)「ん?」

振り返った、その仕草にすらドキッとする。

俺はしぃともっと一緒にいたい。

もっと知りたい。

ずっと――彼氏でいたい。
241:2006/12/16(土) 21:11:06.50 ID:
ドキドキ........
243:2006/12/16(土) 21:12:11.19 ID:
ムネムネ……
245:2006/12/16(土) 21:12:39.67 ID:

('A`)「俺・・・しぃのことが――

瞬間、唇がふさがれる。

しぃの唇が俺の言葉を、キスという行為で抑える。

(*゚ー゚)「―っぷは」

('A`)「・・・あ」

ファーストキス、しぃに奪われちまった。

(*゚ー゚)「ど、ドクオは私がいないと危なっかしいんだから、こ、これからも・・・」

('A`)「これからも?」

ふっと、しぃが微笑み、言った。

(*゚ー゚)「これからも、私の彼氏としていっぱい愛してもらうんだから!」

オーケイ、契約成立。

色々あったけど、なんだかんだでこうなる運命か。

それなら、喜んで受け入れよう。彼女を、これからの未来を。
248:2006/12/16(土) 21:14:08.42 ID:
なんかこっちまで恥ずかしくなってきた!
249:2006/12/16(土) 21:14:29.78 ID:

('A`)「俺も、いっぱいしぃのこと愛するから、覚悟しろよ!」

(*゚ー゚)「ん――」

そう言って、俺はしぃにキスをする。

愛おしい恋人は、俺のキスを静かに受け入れてくれた。

互いの気持ちが、唇を通して伝わってくる。

俺の、大切な人。

しぃの為なら、俺はどんな壁だって乗り越えられる。

そう、思った――

250:2006/12/16(土) 21:14:58.31 ID:
完成度がたかいな
252:2006/12/16(土) 21:15:50.64 ID:



(*゚ー゚)「いってきまーすw」

(`・ω・´) 「ん、しぃ。どこにいくんだね?」

(*゚ー゚)「今日はドクオとデートする約束してるんだ」

(`・ω・´) 「むぅ、わかっているな。6時までには帰ってきなさいよ!」

(*゚ー゚)「はいはい、それじゃいってきまーす」

ドアを開け、いっぱいの朝日を浴びて外に出る。

約束の時間、向こう側を見ると自転車に乗ったさえない彼氏がやってくる。

('A`)「おっす」

(*゚ー゚)「うん、時間通りでよろしい!」

('A`)「まったく偉そうに・・・ほら、早く後ろ乗って」

(*゚ー゚)「了解!」
253:2006/12/16(土) 21:17:01.38 ID:
ここで告白できるドクオ、まじ度胸すげえwwwwwwwwww

俺絶対無理wwwwwwwwwwwwwwww
255:2006/12/16(土) 21:17:39.69 ID:

自転車の後ろに乗り、ドクオの腰に手を回す。

ドクオがゆっくりとペダルを漕ぎ、自転車は動き始める。

(*゚ー゚)「今日はいっぱい服買うから、ちゃんと似合うの選んでね」

('A`)「また買うの!? もー、荷物持つのすごく大変なんだけど・・・」

(*゚ー゚)「彼氏はそういうこともしなきゃいけません」

('A`)「うう、そんな決まりいつ作ったんだよ・・・」

いつものように話しながら、自転車は道をスイスイと走る。

そのやや後ろに、ゆっくりと追跡してくるバイク。
257:2006/12/16(土) 21:18:51.24 ID:

(`・ω・´) 「まだ私は認めたわけでは無いのだぞ・・・ふふ」

( ゚д゚ )「ショボンさん、どうですこの運転! この間免許取ったばっかなんす!」

(`・ω・´) 「・・・いささか不安だが、このスピードなら君でも大丈夫だろう」

( ゚д゚ )「あ、でもでも。ガソリンがもう無いです。サーセン」

エンジンの音が少しづつ小さくなり、失速していく。

(`・ω・´) 「な、なぜ入れておかないんだーー!!」

( ゚д゚ )(ドクオさん・・・お嬢さん、頑張ってください。サーセンw)

自転車はやがて小さくなっていき、見えなくなる。

夏が終わり、秋の風が吹き始める。

ドクオとしぃを乗せた自転車は、静かに川沿いを走っていった。



fin
260:2006/12/16(土) 21:19:50.19 ID:
(*゚д゚*)
261:2006/12/16(土) 21:19:57.57 ID:
ハッピーエンドかよwwwwwwwwwww






それがいいんだがなwwwwwwwwwwwwwwww
262:2006/12/16(土) 21:19:58.51 ID:
全米が泣いた
264:2006/12/16(土) 21:20:39.89 ID:
一瞬焦った俺ガイル
269:2006/12/16(土) 21:23:32.74 ID:
これで('A`)ドクオが壁を乗り越えるようです は完結です。
読んでくれた方、支援してくれた方、ありがとうございました。
274:2006/12/16(土) 21:25:35.30 ID:
>>269
この、長すぎず短すぎずという感覚が大好きだwww
270:2006/12/16(土) 21:23:52.62 ID:
ここで終わりかー
乙。かなり面白かった
275:2006/12/16(土) 21:25:45.64 ID:
良かった。乙
280:2006/12/16(土) 21:29:46.53 ID:
今回はしぃとの恋愛が書いてみたくて急いで書き上げました。
まぁその分ドクオがかっこよくなってしまって、いつものドックンじゃない!
と思いつつもミルナさんに救われました。
まぁ書き終わってみるとありがちな話でしたが、みなさんの
暇つぶしになってくれれば嬉しいです。
286:2006/12/16(土) 21:38:15.56 ID:

面白かったぜ!
287:2006/12/16(土) 21:38:16.63 ID:
作者乙です!
やっぱりうまいな。
さらっとこういうのが書けるのはカコイイ

('A`) ドクオのペンは進まないようです
('A`)が海へいくようです
('A`)ドクオは新入社員のようです

元スレ: