1:2008/09/01(月) 00:12:47.09 ID:
「ドラえもん・・・」
夕暮れで赤く染まる部屋で呟いてみる。

ドラえもんが未来に帰って三年。
野比のび太。17歳。高校生。

6:2008/09/01(月) 00:14:56.05 ID:
三年前、ドラえもんが未来へ帰るといったとき、涙は出なかった。
七年前、ドラえもんが同じことを言ったときと違い、
その時すでに、僕は自分の感情をコントロールする技術と年相応の照れと諦めというものを身に付けていたのだった。

ドラえもんが未来に変えるその晩、家族で夕食を食べた。
机の上には山の様なドラ焼き、でもドラえもんはなかなか手を付けずチラッと僕のほうを見た。
僕は思い出した、急いでドラ焼きで乾杯を交わし、パパやママの温かい目に少しの罪悪感を覚えていた。
とりあえず、一刻も早くこの場から逃げ出さないとむず痒くて頭がおかしくなりそうだった。
7:2008/09/01(月) 00:15:47.44 ID:
その夜、二人で公園まで歩いた。
夜が明けるまで、ずっと話し続けていた。
今はもう忘れてしまったたくさんの話をした。

けど最後まで一番言いたいことは言えなかった。
覚えているのは、それだけだ。
8:2008/09/01(月) 00:16:37.42 ID:
別れのとき。
ドラえもんが涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら引き出しの中に消えるときも、僕の目に涙は無かった。
ドラえもんがいなくなることと同じくらい、いや、それ以上に、そのことが悲しかった。
もちろん僕はとても。胸が痛むほど悲しかった、それは嘘じゃない。神に誓う。
もっとドラえもんと一緒にいたいとも思っていた。
けど、僕は、ドラえもんに「行かないで」って涙を流しながら言えなかった。
言わなかった。
それが、なにより悲しかった。

あれから、三年たった。
もう、いや、たった、三年。

10:2008/09/01(月) 00:18:10.39 ID:
ドラえもんが帰った次の日、未来から「未来警察」のうんたら課のなんちゃらが家に来た。
なんでも、七年前、ドラえもんが過去に未来の道具を置いてきたことが問題となり、検査に来たそうだ。

家中すべからくドラえもんが関連しているものが無いか調べられた、
未来のお菓子の包み紙からドラえもんの書いたメモまで、全て回収された。
11:2008/09/01(月) 00:26:42.42 ID:
期待してるんだが
12:2008/09/01(月) 00:32:56.36 ID:
そして、これはその時初めて知ったのだが、ドラえもんが未来から過去に来た理由である
僕以外の人間からドラえもんにかかわる全ての記憶は、消され、新たにつじつまの合った「記憶」に上書きされるそうである。

今となって、僕はとても悔しく思うと同時に羨ましくも思う。
忘れられたらどんなに楽か。だんだん忘れていく恐怖、その悲しみ。

頭が痛くなる。

13:2008/09/01(月) 00:33:56.07 ID:

「・・・ドラえ・・・もん」



一日何度か僕は必ず彼の名前を口から出して耳に入れる。

恋しくてじゃない。

確かに彼はいた、ということを忘れない、正確には忘れていないことを確認する、そのために。

14:2008/09/01(月) 00:34:57.44 ID:
8月も半ば。

茹だるような暑さ、クーラーの無い部屋で大の字になる。
昼寝は昔と変わらず好きだ。
扇風機を足でこっち側に向ける。その時急にふすまが開いた。


「のびちゃん!またそんなかっこして!だらしない!
夏休みの宿題は?もう2週間しかないのにそんなにだらだらしていいと思ってるの?
だいたい来年は受験がせ・・・」


途中から頭の中で音から日本語への翻訳を止める。
のそのそ起き上がって机に向かう。
まだママは、母さんは機関銃のように言葉を浴びせてくる、そのせいでなお暑くなる。
15:2008/09/01(月) 00:35:58.66 ID:
「分かった。分かったから。おやつソコに置いといて。
勉強するから。もう、あっちいってて。」

力を振り絞って返事をする。

汗がにじむ。

彼女はもう2,3言小言を投げつけ、ふすまをたたきつけるように閉めた。
その衝撃で生じたぬるい風が額に当たり汗を余計に吹かすような、そんな感じがした。
16:2008/09/01(月) 00:37:09.95 ID:
中学校に入り、僕を取り巻く人間関係は少しづつ変わり始めた。
出来杉と、あともう何人かだけが私立に進学したのを除けば基本的にみんな同じ地元の中学校に進学した。

中学の最初こそ小学校の延長線上にあったものの、中学2年あたりから思春期に入るにつれて
しずかちゃんとは疎遠、というほどでもないが、昔ほどの接点はなくなってしまった。
17:2008/09/01(月) 00:38:25.21 ID:
ジャイアンは開始直後はガキ大将だったが、根のやさしさが裏目に出て本物のワルにもなりきれず
徐々にクラスでの立場を失ってしまい、野球部も辞めた。
卒業時にはもはや昔の「ジャイアン」の見る影が無いくらい覇気のない奴になってしまっていた。

その頃だろうか、僕が、いや、みんなが彼を剛田と呼ぶようになったのは。
18:2008/09/01(月) 00:39:22.93 ID:
wktk
20:2008/09/01(月) 00:40:20.18 ID:
一方、スネ夫は持ち前の要領のよさと金銭力の豊富さから
クラスでのポジションは常に一番権力のある誰かの側近として立ち回っていた。
ジャイアンの力が弱まったと察した彼はさっさと違うガキ大将に擦り寄っていった
それ以来ジャイアンと話している姿は見たことが無い。

確かに嫌な、弱い奴であったが、根はそこまで悪くは無かっただろうことが彼を苦しませていた。
彼は明らかに誰よりも神経をすり減らし、必死でクラスでのポジションを守ろうとしていた。
中学3年の夏休み明け、彼は学校に来なくなった。
やつれきり文字通り骨と皮だけのようなガリガリの姿で高そうな時計をクラスの権力者に貢いでいる
それが僕の見た最後の中学時代の骨川スネ夫だった。
21:2008/09/01(月) 00:41:49.63 ID:
僕はといえば、入学当初は他の小学校からの苛めっ子から性質の悪い苛められかたをされていたのを
まだ「ジャイアン」だった彼に助けてもらって以来、
できるだけ波風を立てずになんとかやり過ごしてきた。
22:2008/09/01(月) 00:43:11.30 ID:
途中ジャイアンやスネ夫が壊れていくのを目の当たりにしながらも僕は何もできずにいた。
自分が、いざこざに、面倒なことに巻き込まれたくなかった、ただひたすら嵐が収まるのを待っていた。

ドラえもんがいてくれたら

何度もそう思った。

僕は一人では、何もできなかった。誰も助けることができなかった。
23:2008/09/01(月) 00:43:56.46 ID:
高校に入って、みんなバラバラになった。
剛田は地元の中堅高校に。
スネ夫は都内のお坊ちゃん高校に。
しずかちゃんは出来杉と同じ全国有数の進学校に。
25:2008/09/01(月) 00:49:31.08 ID:
もちろん、それぞれの連絡は無いに等しい。
しずかちゃんとは今でもたまに道端であって話したりもするが、その程度だ。
辛うじて残る親同士の付き合いから聞いてみるに、みんな中学時代よりは楽しい高校生活を送ってるそうだ。
よかった、と思う。心から。
26:2008/09/01(月) 00:50:01.16 ID:
僕は家から遠く離れた中堅、いや上位といっても差し支えない高校に通っている。
そこには中学時代までの僕を知ってる人は誰もいない、みんな忘れてるとはいえドラえもんといた僕を知ってる人もいない。

そこには僕が知ってる人はいない。

それが僕に血のにじむような努力をさせた理由のすべてだ。
28:2008/09/01(月) 00:53:34.73 ID:
今日は徹夜できるから見てやるよ
29:2008/09/01(月) 00:55:28.69 ID:
高校に入って、典型的な燃え尽き症候群へと陥った僕は
喜怒哀楽を失ったかのように毎日淡々と学校に通い授業を受け帰宅する、それを繰り返していた、機械のように。
回りもおとなしいタイプの人間が多く、僕は誰とも深くかかわることもなく、平穏に日々は過ぎていった。

その真綿で首を締め付けられるような毎日さえ平穏と呼べるほど、中学時代の光景は僕にとって地獄のような記憶だったのだ。
あの無力感と絶望感を味わうくらいなら、いっそ退屈に窒息したほうがましだったのだ。
30:2008/09/01(月) 00:56:30.25 ID:
夏休みも終わりに迫ったある日の夕食。

いつも通り、定型のやり取りを終えた後は無言、賑やかな夕食の風景はもはや思い出せなくなっている。
両親はここ数年ぐっと老けた。喧嘩も増えて最近は事務的な用事以外での会話を聞いたことが無い。
父親が家に帰ってくる回数が経れば減るほど、母親の機嫌は悪いほうの峠を越してからはよくなっていった。

息苦しい。久々の家族そろっての食事。

子どもの小さな手で首を絞められているような、息苦しさ。ご飯がのどを通らない。
32:2008/09/01(月) 01:00:06.84 ID:
「ごちそうさま」

手を合わす。

父親のほうを見ると黙々と食事を口に運んでいる。
それはもはや作業と呼ぶほうがふさわしいほど生気がなく、機械の様で不気味だった。
白髪まみれのぼさぼさの髪の毛だけが生々しく人間の名残を残していた。
33:2008/09/01(月) 01:01:09.92 ID:
のび太もっと落ちぶれてほしかったな~
34:2008/09/01(月) 01:03:03.70 ID:
食器を運び上に上がろうとすると、母親が呼び止めた。

「そうそう、のび太。小学校のときの先生からお手紙が届いてたわよ。」

そういって冷蔵庫の上の封筒を指差した。
僕を見ずに、作業を、機械のように続けながら。

36:2008/09/01(月) 01:06:57.13 ID:
----今年で定年退職することになった。
野比、剛田、骨川、源、4人で私の家に遊びに来なさい。会って渡したいものがある。


先生からの手紙の内容はかいつまんで言うとそんなところだった。
37:2008/09/01(月) 01:09:49.03 ID:
出来杉 「どうせ、俺はのけものなんだ」
38:2008/09/01(月) 01:13:55.69 ID:
「はぁ…」

正直めんどくさい。

先生とは小学校卒業以来何年かの年賀状のやり取りがあるくらいで、あまり顔も覚えていない。
夏休みがあけたら試験だ、流石に勉強しなきゃまずい、単位を落としかねない。
そもそもいまさらあの四人でなんて・・・
仕方ないとはいえ先生に対し少し怒りを覚える。

とはいえ、渡したいものがあるというなら行かないわけにはいかないよな、一人で行くか・・・
そう思って手紙を机に投げ捨てる。

まだまだ蒸し暑い夜、扇風機の無機質な音だけが部屋に響いていた。
僕はいつの間にか眠っていた。
42:2008/09/01(月) 01:17:10.01 ID:
夢を見た。

ドラえもんやみんなと宇宙や過去や未来で繰り広げた大冒険の。
ピー助やキー坊やいろんな人のことの。
ドキドキするような、夢だった。
僕が失ってしまった、忘れてしまった全てがあるような、夢だった。

いや、夢じゃない、思い出しただけだ。

だって、僕らは何度も、実際に世界を救ったんだ。
みんなで、力を合わせて。
実際に。

夢なんかじゃない。
41:2008/09/01(月) 01:16:19.79 ID:
ほうほう、それでそれで?
43:2008/09/01(月) 01:17:31.23 ID:
俺も徹夜で支援させてもらうぜ
45:2008/09/01(月) 01:21:06.78 ID:
目を覚ます。

汗だくだった。
いつの間にか扇風機はまったく違う向きを向いていた。

何だかひどく虚しい。
こんな夢を見るのは初めてだった。

心臓の鼓動はかすかに、だけど確かに激しい。
けど目の前の光景は見飽きてしまったいつもの部屋、いつもの家。
47:2008/09/01(月) 01:21:44.10 ID:
ふらふら立ち上がり。
机の引き出しを開ける。

中には無造作に散らかった文房具と数冊の成人雑誌。

思わず自嘲する。
46:2008/09/01(月) 01:21:42.52 ID:
支援
これは面白い
48:2008/09/01(月) 01:23:42.01 ID:
「ドラえもん・・・」


まるでマンガの登場人物のように僕の耳には感じられた。


全ては、夢だった。
もうそれでいい。
それで。




本当に、それで、いいの?






「いいわけ、ないよ・・・」






確かに残る胸の鼓動だけが僕を支えていた。
49:2008/09/01(月) 01:24:51.27 ID:
ちょっと席を空けます。
楽しんでくださっていたら幸いです。
52:2008/09/01(月) 01:30:55.54 ID:
見てるぞ!
57:2008/09/01(月) 01:39:05.40 ID:
これは期待
61:2008/09/01(月) 01:44:20.68 ID:
翌日、僕はなんとか連絡を取り付け4人で先生に会う日取りを決めた。

しずかちゃんは本当にうれしそうだった。
剛田もそうだ、あんな元気な声を聞いたのは本当に久しぶりだった。
スネ夫は、最後まで嫌がってた、ジャイアンと会いたくない、合わせる顔が無い、そういって断ってきた。
しぶしぶオッケーを出したが来なくてもおかしくない。
スネ夫と剛田・・・
大丈夫か心配だが、止めるわけにはいかない、やらないといけない。
62:2008/09/01(月) 01:46:10.03 ID:
待ち合わせは空き地・・・
そういいたいところだがあそこには既にマンションが建っている。
僕らが小学校を卒業した直後だ。
僕はドラえもんとそれを阻止しようとしたが、無理だった。

それから僕らの集まる場所はなくなってしまった。
空き地が今もあったら、もしかしたら違う形に・・・
そう何度も思った。
63:2008/09/01(月) 01:46:50.33 ID:
このままだと本当に会社で花火打ち上げてジャイ子と結婚しそうだな…
64:2008/09/01(月) 01:49:44.39 ID:
この街も変わりつつある。

商店街は駅前のデパートの出現により半数近くが閉店に追い込まれた。
僕が立ち読みしていた本屋も無くなった。
そして、そのあおりを剛田の家も受けた。
彼の店は中学生のときに閉じられた。
そのことは勿論彼の弱体化に無関係ではないだろう。
彼は駅前に来るたびにデパートを憎たらしそうにギッと睨み付けていた。
65:2008/09/01(月) 01:50:18.20 ID:
あの空き地ってマンションが建つくらい広かったっけ?
68:2008/09/01(月) 01:51:48.33 ID:
>>65
かみなりさんも立ち退いたんだよ
69:2008/09/01(月) 01:54:47.63 ID:
裏山の開発も進んでいた。

市民が力を合わせて(裏では僕らが絡んでいたけど)一旦はおじゃんとなったゴルフ場の計画が再浮上した。
信じられないほどあっさりとその開発は進み、山を切り開いたそこにピッカピカのゴルフ場ができた。
僕の母はもはやそのことに関心すら示さず、僕の父は近くにできたゴルフ場に足しげく通った。
裏山にいた木や草は根こそぎ刈られ、今では禿山に近い。

キー坊。ごめん。
当時、僕は謝らずにはいられなかった。
けど今はもうその気持ちをほとんど思い出せない。



待ち合わせは土手。
よく野球をしたあの土手だ。
あそこは何も変わっていないから。
72:2008/09/01(月) 01:57:44.12 ID:
当日。
そわそわしてた僕は15分ほど早めに約束の場所に着いた。
そこには、既に、一人の女の子が夕暮れの中立っていた。

「しずかちゃん!」

「あっ」

こっちを振り向く。
やっぱり、すごく可愛い。
顔立ちが大人びている。
髪の毛はロング、背は僕と同じくらいだ。
少し短めのスカートにドキドキした。
73:2008/09/01(月) 01:58:39.06 ID:
「久しぶり。あ、でもこないだ道であったね。」

「うふふ、そうよ。
野比君、変わってないね。なんか嬉しい。
みんなと会うのはすごい久しぶりでしょ、だからなんか不安で・・・」

心がちくちくする。

「しずかちゃんも変わってないよ。ちょっと大人っぽくなったけど。」

「ほんと?ありがとう。」

よく見ると彼女は薄く化粧をしていた。
76:2008/09/01(月) 02:02:15.75 ID:
約束の時間に遅れること2分。
向こうから大柄な男が歩いてきた。

「よう!」
剛田、いや、ジャイアンの声だった。

「久しぶりだな!のび太、しずかちゃん。
部活の帰りでなちょっと遅れちまった。悪い悪い」

そういって豪快にガハハと笑う。
79:2008/09/01(月) 02:05:20.55 ID:
>>76でなんか泣いた
77:2008/09/01(月) 02:04:06.34 ID:
「剛田は柔道だっけ?」

「おう。あっという間に副部長まで上り詰めたぜ。
来年は部長となって全国まで引っ張る、期待しとけよ。」

もう一回ガハハと響く声で笑う。

ああ、ジャイアンだ。
僕は無性に嬉しくなる。

そして心がまたちくちく痛んだ。
78:2008/09/01(月) 02:04:51.14 ID:
「骨川君来ないね・・・」

既に約束の時間から30分が経過した。
剛田はすっかり黙り込んでる。
携帯にかけるが繋がらない。

42分がすぎたその時、向こうからガリガリの背の高い男がやってきた。

直感的にみんなは彼が「彼」だと分かった。
80:2008/09/01(月) 02:07:27.66 ID:
一度疎遠になるとなかなか会えないもんだよな
81:2008/09/01(月) 02:07:51.63 ID:
「スネ夫!」
僕が駆け寄る。

「よう、のび太・・・変わってないな。」
そう言って軽く微笑んできた。

「骨川君、久しぶり。背、高くなったね。」

「しずかちゃん久しぶり。相変わらず可愛いね」

気障なところは相変わらずだ。
ま、おそらく演技だろうけど。
83:2008/09/01(月) 02:11:39.49 ID:
「・・・」

問題の二人だ。

気まずい沈黙。

その沈黙を破ったのはスネ夫だった。

「ごめんなさい!」

「ごめんなさい!裏切ってごめんなさい!
何度も助けてくれたのに、僕は・・・僕は・・・。
ごめんなさい、ごめんなさい、本当にごめんなさい、なんでもします!
お願い、許してください、ごめんさい、ひぐっ、ごめん、ひっ、ごめ・・・」
85:2008/09/01(月) 02:14:09.18 ID:
何度も地面に額を付けて謝っている。
嗚咽に混じりに大声で。

「顔上げろよ・・・」

「ごめんなさい、う、ご、ごめ、ん、さい、ごめ・・・」

「顔上げろって言ってんだよ!」

「う・・あっ、ひぐっ」
スネ夫は泣きはらした顔を上げて立ち上がった。
87:2008/09/01(月) 02:17:49.72 ID:
バンッ

剛田のパンチがスネ夫を文字通り吹き飛ばした。

「スネ夫!」

「骨川さん!」




「・・・これで、許す」
88:2008/09/01(月) 02:18:25.93 ID:
「ジャイ・・・アン・・・」
スネ夫が身を起こした。

「これで、許す。
全部許してやる。
これで昔どおり、俺とお前は・・・」



「心の友だ」



「う、う、うわぁぁぁぁぁーん」



スネ夫の鳴き声が紅色の空に響いていた。
89:2008/09/01(月) 02:18:58.21 ID:
目にうっすらと涙を浮かべるしずかちゃんの横で僕は、その「感動的な」光景に一人だけ疎外されているような
もどかしさを感じずにはいられなかった。


なんで僕は、泣いていないんだろう?
なんで僕は、スネ夫のように心から謝る気が起こらないんだろう?

なんで僕は、こんなに悲しいんだろう?
92:2008/09/01(月) 02:21:25.31 ID:
しずかちゃんがのび太をのび太さんじゃなく
野比君って呼んだところで、時が経ってるんだなあってしみじみおもた

支援支援
94:2008/09/01(月) 02:26:56.59 ID:
それから先生の家に向かうまで僕らはたくさんの話をした。
久しぶりだった。こんなに人と話したのは。
いつ振りだろう、笑顔が自然にでてくるのなんて。

だが近況の話から思い出話へと話題が変わるに連れて僕の心は不安定になっていった。

僕の知らない話、特に小学校時代、が大半を占めていたからだ。
96:2008/09/01(月) 02:29:45.96 ID:
理由はすぐに気付いた。そりゃ、そうか。当然だ。
彼らの宇宙や恐竜のいた時代に行った際の記憶は、すでに新たな「記録」によって上書きされているのだ。

本当に…?

疑惑。

本当に、僕は、みんなといっしょにいたんだろうか?

「でさ、海行ったとき、のび太の野郎が海パン忘れやがってさー」
「そうそう、それでこいつ泣き出して服着たまま海に突っ込んでさ」
「溺れちゃって大変だったのよねー」

・・・何、それ?
98:2008/09/01(月) 02:30:45.26 ID:
知らない。僕は知らない。
違うよ、僕らは大昔の日本に行ったじゃないか。
そこで少年と出会って、世界を救ったんだ。

違う。
それは嘘だよ。

なんで、なんでなんにも覚えてないんだよ?
なんで、あんな大冒険を忘れてしまったんだよ?
なぁ。
思い出してくれよ。
確かに行ったって言ってくれよ。

なぁ

頼むよ

みんな、僕をひとりにしないでよ
99:2008/09/01(月) 02:30:49.62 ID:
「親友」って言葉より、「心の友」の方が重みがあるなぁ…

藤子先生はこの時に読んでた子供が大人になって思い出した時も考えて「心の友」に…

そんな計算高い、悪い大人で無い事を祈りたい。
100:2008/09/01(月) 02:32:31.49 ID:
てかなんでのび太だけ記憶消されてなかったの?
101:2008/09/01(月) 02:32:39.80 ID:
「・・・君」


僕はひとりぼっちだ・・・


「・・・び太!」


ひとりぼっちだ


「のび太!」


ドラえもん・・・


「おい!」



剛田に腕をつかまれて我に返った。
102:2008/09/01(月) 02:33:31.32 ID:
とりあえず先生が渡したいものが気になって寝れない…

明日会社なのに
103:2008/09/01(月) 02:35:28.44 ID:
「おい。のび太、どうした?ボーっとして。
しっかりしろよ」


「あ、ああ、アハハ。
いや、なんだか寝不足で、僕昔から成長してないなぁ
こんなんじゃまた先生に怒鳴られちゃうよ」

わざとらしくおどける。

しずかちゃんがクスクスと、スネ夫がニヤニヤと笑っている。

「そうだよ、ジャイアン。
こいつは昔からマヌケでどんくさいやつだったじゃないか」

スネ夫はすっかり昔に戻っている。

104:2008/09/01(月) 02:36:17.60 ID:
先生の家に着いた。
呼び鈴を二回鳴らしたところで奥さんと思しき人が扉を開けて居間まで案内してくれた。
立派な家だ。

居間の奥に恰幅のいい男性が座っていた。
おおらかな深い声で僕たちに向かい声を発した。

「おお、よく来た。野比、剛田、骨川、源。
まぁまぁ、そこに掛けなさい」

先生の頭は真っ白になっていたものの顔色にはつやがあり。体全体にはエネルギーがみなぎっていた。
今年で定年する人間にはとても見えない。
自分の両親よりもよっぽど若々しく見えた。
機械とは違う大人。
そんな大人がいるということが僕に少なからず安堵感を与えた。
106:2008/09/01(月) 02:37:18.77 ID:
先生と僕たちも、またたくさんの話をした。

高校生活について。部活。テスト。進路について・・・
中学時代の過ち。
小学校で僕が毎日遅刻や居眠りで廊下に立たされていたこと。

いろんなことを思い出した。

こんなに沢山のことを僕は忘れていたんだ。

でも、その記憶がたとえ捏造されたものであっても、僕はそれを「過去」とせざるを得ない。
一旦忘れてしまったら、たとえ思い出したと思えても、その「過去」が本当に正しい「過去」かなんて分からないのだ。

いや、忘れなくても、過去の記憶なんて脆弱なものだ。
何の証拠も無かったら、こんなにも揺らぐものなんだから。
109:2008/09/01(月) 02:40:34.68 ID:
「先生。渡したいものがあるっておっしゃってましたが・・・」

しずかちゃんが先生に尋ねた。

「おお。おお。そうだった、すっかり忘れておった。
年じゃのう」

そういって奥の引き出しからガサゴソ何かを引っ張り出してきた。

「ほれ、おぼえておるか?
小学校3年から5年まで君たちの担任としてやらせてもらった。
そのとき毎月その月一番楽しかったことを作文にして提出してもらったのを覚えているかね?」
110:2008/09/01(月) 02:42:27.12 ID:
これは…記憶復活フラグ
111:2008/09/01(月) 02:43:53.98 ID:
思い出した。

そうだ。

僕は、僕らは、作文にあの大冒険のことを書いた。

何も知らない人からしたらばかげた作文で、僕はよく叱られていた。
けど僕は屈しなかった、だって一番楽しかったことは紛れも無くあの大冒険に違いなかった。
嘘は書けなかった。

「で、基本的にはみんなそれぞれ文集にして渡しているんだがね。」

「君たちの作文は大抵、いや全てといっていいかもしれない。
同じ内容を書いているんだ」
112:2008/09/01(月) 02:44:47.33 ID:
>>111
これは…
114:2008/09/01(月) 02:45:46.43 ID:
そうだ。
そりゃそうさ。
あんなに楽しかったことだ。
みんなあれを書くに決まっている。

心臓の鼓動がだんだん早くなる。

「だから君たちには集まってもらって一緒に渡したくてね。
ほれ、高校もばらばらだとなかなか会う機会もないだろうから、この際と思ってね。
いい思い出話の肴にしてくれたまえ。
余計なお世話だったかもしれんがね」

そういいながら僕らに文集を手渡した。



僕はお礼も言わず文集のページをめくった。

116:2008/09/01(月) 02:47:05.78 ID:
・・・!




確かに予想はしていた。

未来警察とやらはこんなところにさえ細工を仕掛けていたのだ。

みんなの作文は勿論、僕の作文も書き換えられていた。
ドラえもんという単語が検閲に引っかかったのだろう。

落胆を通り越した。
僕の頭の中で何かが弾けた。

119:2008/09/01(月) 02:47:46.09 ID:
>>116
まあそうだよな…つーか未来警察ありえねえwww
121:2008/09/01(月) 02:49:12.14 ID:

「うわー懐かしいわ。そうそう、みんなで裏山でキャンプしたのよね」

・・・違う。

「確か僕のいとこのヨットで無人島に行ったんだよね」

違う。

「俺こんときカツ重3杯も食べちゃってずっとトイレにこもってたんだよなぁ」

違う!!違う!!違う違う違う!!!!!!
124:2008/09/01(月) 02:50:05.81 ID:
忘れてしまうって怖いよな
125:2008/09/01(月) 02:50:25.22 ID:
「違う!!!!!!!!!」




自分でも驚くぐらいの大声。

みんながこっちを見てる。

「ど、どうしたんだ。野比。」
126:2008/09/01(月) 02:51:04.77 ID:
「違うよ!こんなの嘘だ!
覚えてないの?
嘘。絶対覚えているよね?
確かに海にも行ったよ。
けど!宇宙や、過去や、未来に行ったでしょ?
ピー助。雲の王国。ブリキの迷宮。
ほかにも、たくさん!たくさん!
なんで、なんで忘れちゃうの?
みんなで行ったじゃない?
本当に、なんで?忘れちゃったの?」

みんな僕を見つめている。

「行ったじゃないか!!!!!!!!!
みんなで、みんなで・・・」



「ドラえもんと一緒に!!!!!!!!!!!」
128:2008/09/01(月) 02:52:45.74 ID:
ちょっとすいません。
また席離します。
20~30分ぐらいで戻ってくる予定です。

楽しんでくださってる方申し訳ありません。
129:2008/09/01(月) 02:53:03.73 ID:
明日遅刻したら責任とってくれるんだろうな
>>1さんよぉ
130:2008/09/01(月) 02:54:17.89 ID:
さて…どうするかな
134:2008/09/01(月) 02:56:16.84 ID:
すいません。
バイト中なんです。
店長怒りすぎて、なんか顔が変形してるんです。
すいません。
138:2008/09/01(月) 02:58:47.97 ID:
>>134
とりあえず2~3発殴って元に戻して
141:2008/09/01(月) 02:59:42.35 ID:
>>138
吹いたwwwww
139:2008/09/01(月) 02:59:03.76 ID:
店長にこのスレみせたら解決
これはドラえもん知ってればいける
161:2008/09/01(月) 03:16:57.88 ID:
早く帰ってこいwww
171:2008/09/01(月) 03:25:08.83 ID:
今追いついた
面白すぎるだろこれは
173:2008/09/01(月) 03:26:43.66 ID:
ハァハァ

息が荒れてる。
みんなの前でドラえもんの名前を出したのは帰って以来初めてだった。

「の、のび太。落ち着けよ?
な、夢でも見てたんじゃないか?
ほら、お前ずっと授業中寝てばっかだったし」

剛田のその場を和ませようとした一言が僕に再び火を付けた。

「ふざけるな!」

剛田につかみ掛かる。
174:2008/09/01(月) 03:27:40.59 ID:


「ふざけるな!
なんだ、君はあれが夢だったって言いたいのか?
君は何度も僕を助けてくれたんだ。それさえも、夢だって言うのか?」

「のび太、なにしやがる、落ち着け、手を離せ。」

「ふざけるな。思い出せよ。
ほら、覚えているだろ?
僕がピー助を助けに行くのに着いてきてくれたじゃないか?
嬉しかった。僕本当に嬉しかったんだぞ!
なのに?
夢?
忘れたの?
ねぇ、なんで?
どうして?
思い出せよ!
思い出せよ!おい!」
177:2008/09/01(月) 03:28:34.40 ID:
キターキター
178:2008/09/01(月) 03:28:39.31 ID:

「離せ!」

剛田に突き飛ばされる。

「はぁはぁ、わけわかんねぇのは、お前だ!
せっかくみんなで集まってんのに、何、訳のわかんねぇこといってんだよ!」

「思い出してよ・・・」

「思い出してよ!
なんで覚えてないんだよ!
ハァハァ…
ジャイアン!ジャイアンってば!」

そういって先生の家を飛び出した。
181:2008/09/01(月) 03:30:46.27 ID:
ただでさえ数年ぶりの取っ組み合いのけんかをしたものだからちょっと走っただけで座り込んでしまった。
暗闇の向こうから僕を呼ぶ声がした。

「野比君」

しずかちゃんだった。

合わせる顔が無い。
この集まりを彼女はとても楽しみにしていた。

それを、ぼくはブチ壊してしまったんだ。
183:2008/09/01(月) 03:31:14.39 ID:
なにこの超大作
184:2008/09/01(月) 03:33:48.25 ID:
「ねぇ。実は、私も時々夢を見るの」

「え?」

「なんかね、みんなで冒険する夢。
すごいわくわくする夢なの。
車とね、仲良しになるんだけど。
その車は私を守って壊れちゃうの。
でね、いっつもそこで目が覚めるの。泣いちゃうしね。」

バギーだ。
185:2008/09/01(月) 03:34:23.63 ID:
「他にもね、恐竜とお友達になったり。
動物の星に行ったりするの。すごく楽しくて。
でね、すごく野比君が頼りになるの。」

「・・・」

「私がピンチのときはいっつも助けてくれるの。
不思議な道具を使って。」


「・・・夢じゃないよ。」


「・・・うん」

187:2008/09/01(月) 03:34:56.99 ID:
「夢じゃない。夢じゃないよ。
ドラえもんが、ドラえもんっていうロボットが連れて行ってくれたんだ。」

「猫型ロボット。といってもタヌキみたいだったけど」

「うん」

188:2008/09/01(月) 03:35:17.36 ID:
くそぉwwwwwねらせてくれwwwww
189:2008/09/01(月) 03:35:25.63 ID:
これは映画ドラえもんの新作ですか?
191:2008/09/01(月) 03:36:34.11 ID:
ネカフェ難民の俺がガチ保守

リアルに突き刺さる青春模様
198:2008/09/01(月) 03:39:07.68 ID:
これは映画化されるだろjk
そして期待支援age
199:2008/09/01(月) 03:39:13.72 ID:
「ごめんね。しずかちゃん。今日は、帰るね。みんなに謝っといて。
ごめん。本当にごめん。」

「あ、えっと、の、のび太さん!」

久しぶりの呼ばれ方に思わず振り向く

「え、えへへ、なんだか照れちゃうね。
また、会いましょうね、すぐ」

吸い込まれそうな笑顔。

「・・・うん!」

精一杯の笑顔で返事をした。

203:2008/09/01(月) 03:43:21.21 ID:
それから何日も僕は何もする気が起こらなかった。
母さんの説教ももはや何語か分からなくなるくらい感覚が麻痺し、まさに抜け殻のような、そんな日々を送っていた。

夏休みの最後の日。ついに母さんの堪忍袋の緒が切れた。
朝から父親との喧嘩も会って機嫌が最悪なことも重なって大荒れだった。

僕が昼間で布団にもぐっているのを見るや否や布団をひっぺがし、投げつけた。
僕に向かってありとあらゆるものを投げつけてきた。


文房具から。
椅子から。
漫画から。
何から何まで。


部屋はぼろぼろになった。
ふすまも破れた。
本気で僕は殺されるかと思った。
206:2008/09/01(月) 03:44:51.06 ID:
もういやだ。
なんで、ぼくがこんな目にあわなきゃいけないんだ?
僕は何もしてない。
僕をほっといてよ。

もういやだ。

部屋の片づけをしながらとりあえず押入れの中にものを詰め込む。





椅子が投げつけられて割れた隙間に小さな空間が見えた。

207:2008/09/01(月) 03:45:25.41 ID:
おおおおおおおおおおおおおお
208:2008/09/01(月) 03:46:01.02 ID:
キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!
209:2008/09/01(月) 03:46:05.42 ID:
「何だろ?
・・・う、うわぁぁぁ!!」

いくつかの袋に入った真っ黒な塊。
それがその空間に詰まっていた。

「な、なんだこれ?
き、気持ち悪いな」

よく見るとそれはカビの生えたドラ焼きだった。
210:2008/09/01(月) 03:46:28.36 ID:
神展開キター
211:2008/09/01(月) 03:46:54.75 ID:
「な、なんでこんなところにドラ焼きが?」

思い出した。

それは彼のドラ焼きに違いなかった。

僕がよく盗み食いをしていたもんだから彼はこんな細工をしてまで隠そうとしてたんだ。
あまりに凝りすぎて、彼自身も忘れていたようであるが。

「あ、あはは」

なぜだかとても懐かしい気分になった。
213:2008/09/01(月) 03:47:28.70 ID:
ん?

奥のほうにビスケット箱ぐらいの平べったい赤い箱があった。

埃にまみれたその箱のずっしりとした重さに僕はあの薬のことを思い出さずにいられなかった。

ウソ800。

まさか!と思ってふたを開ける。
214:2008/09/01(月) 03:48:44.90 ID:
バッサァァァ

「・・・何だこれ?」

たくさんの写真。可愛い女の子の写真が出てきた。
彼の好きな当時の売れっ子アイドルの写真だった。

「そういえば・・・」
216:2008/09/01(月) 03:49:23.46 ID:

彼はこのアイドルの追っかけまがいのことをしていて、彼女が出るテレビは録画はもちろん、雑誌の切抜きや時には撮影現場まで行った生写真を大量に取っていたのを思い出した。
今でこそ落ち目になってスキャンダルと暴露話で芸能界を渡っている彼女であったが当時の人気は大変なもので僕も一時期ファンであった。

だから彼は切抜きを大切に、僕に取られないように茶化されないように大事なドラ焼きと一緒にしまっていたのだ。

そういえば写真がなくなったって大騒ぎしてたなぁ。ひみつ道具を使っても見つけられなかったってことはこの空間には特別な措置でも施してあったんだろうか?

その小さな空間にはもう何も無かった。
217:2008/09/01(月) 03:49:25.51 ID:
ワクワク
218:2008/09/01(月) 03:50:31.64 ID:
仕方なく写真を拾い集めていた。

!!!!!!!!!!

心臓が止まりそうになった


その中に一枚だけ


明らかに


人間じゃない


青い


短足の


表情豊かな


機械が


写りこんでいたのだ。
224:2008/09/01(月) 03:52:38.57 ID:
>>218
ついに来たwwwwww
221:2008/09/01(月) 03:51:45.81 ID:
おおぁおお
223:2008/09/01(月) 03:52:26.18 ID:
小さくだが、確かに、アイドルの野次馬の中に。
何故かこっちに手を振って。
満面の笑みで。


頭が真っ白になる。


「どらえも・・・うっ、あっ、え、えぐっ」


大粒の涙が写真に染みを作っていく。

泣いていたのだ。僕が、涙を。

嬉しくて、嬉しくて、もうどうしようもない。
こんなにも確かな、確かなことがまだあったなんて。
226:2008/09/01(月) 03:53:07.64 ID:
力が抜けぼろぼろのふすまに寄りかかる。

「うぐっ、あっ、ど、どらえもん。」

いろんな感情があふれてふすまに叩きつける。

バンバン!
229:2008/09/01(月) 03:53:57.36 ID:
「ドラえもん。夢じゃ、夢じゃない、よ、よね!」

バンバン!

「君は、ずっと、ずっと僕と一緒にいてくれた、よね!」

バンバン!

「ごめんね、疑ってごめんね」

バンバン!

「本当だよね、嘘のわけ、ないよね!」

バン!
230:2008/09/01(月) 03:54:35.45 ID:
「ハァハァ、僕、ね、君がいないとやっぱりだめだよ」

バンバン!

「何もできないよ、何、も助けれないよ、ううっ、げほっ、うがっ」

バッバンバン!
233:2008/09/01(月) 03:55:29.28 ID:
>>1神だな
235:2008/09/01(月) 03:55:36.98 ID:
>>1
ネ申だよあんた!
237:2008/09/01(月) 03:55:56.01 ID:
「会いたいよぉ・・・」

バン!

「帰ってきてよぉ!」

バンバンバンバン!

「行かないでよ!僕を一人にしないでよ!」

バン!バキッ!

「ドラえもんってば!大好きだよ、僕、君のことが!
好き、大好き!
もう忘れないから!絶対に忘れないから!戻ってきてよ!
行かないで!行かないでよ!
また僕といっしょにいてよ!
ずっと、ずっといっしょにいてよぉ!」

バン!

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!!!!!」

「ど、どらえもーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!」

240:2008/09/01(月) 03:57:00.41 ID:


泣きはらした。

涙がかれるまで。

僕のもやもやを綺麗に洗い流すまで。

243:2008/09/01(月) 03:58:01.88 ID:
夕暮れ時。


腫れの引いた顔で道を歩く。


ポケットに手を突っ込んで。


ドラえもんの好きだった、あのアイドルの一番のヒット曲を口ずさみながら。


もう曲のタイトルすら忘れちゃって、勿論歌詞も全然覚えていない。


でも嫌に明るいこのメロディーは忘れない。


あいつもよく歌ってたっけ。

247:2008/09/01(月) 03:59:03.42 ID:
よく二人で歩いた道はまだ変わっていない。


僕のハナウタが2番目のサビに突入しようとしたとき、強い冷たい風がメロディーをさらっていった。


ハックシュン!


あぁ、僕は風邪を引いたかな

248:2008/09/01(月) 03:59:36.89 ID:
ドラえもん


なんとかやってみるよ


僕一人で


いや、みんなで


もう一回やってみる


君がいてくれたっていうだけで


僕は救われるんだ

251:2008/09/01(月) 04:00:07.05 ID:
ねぇ、ドラえもん


もうすぐ秋だよ


夏も、終わりだね


ねぇ、ドラえもん


fin
254:2008/09/01(月) 04:00:57.38 ID:
まさかの fin・・・・・・・・

これから盛り上がるところじゃないの・・・・・・・・
263:2008/09/01(月) 04:02:13.29 ID:
ふ、ふぃん…だ…と…?
253:2008/09/01(月) 04:00:36.57 ID:
>>1乙!!!!
257:2008/09/01(月) 04:01:19.04 ID:
切ない…乙!
258:2008/09/01(月) 04:01:28.25 ID:
>>1超乙!!!
260:2008/09/01(月) 04:01:37.54 ID:
え!!?
おわり?
265:2008/09/01(月) 04:02:19.82 ID:
続編!!!!!続編!!!!!!
269:2008/09/01(月) 04:02:54.85 ID:
ここで終わりです。

こういった終わり方にしようと最初から決めていました。
途中かなり強引なところもありましたが。結構満足しています。

楽しんでくださった皆様ありがとうございました。
279:2008/09/01(月) 04:04:56.59 ID:
>>1
超乙
GJ!!!
278:2008/09/01(月) 04:04:48.14 ID:
いちおつ
感動したぜ
271:2008/09/01(月) 04:03:18.53 ID:
終わり方が物足りないなぁ
まさか店長が書いたんじゃないだろうな?
273:2008/09/01(月) 04:03:26.58 ID:
セカンドシーズンに移行だろ?
283:2008/09/01(月) 04:05:35.36 ID:
では、バイトに戻りますww
もう店長口すらきいてくれないんだもん

セカンドシーズンはないです。
けど書いてくださる方がいるなら僕も楽しみにしています。

でわノシ
281:2008/09/01(月) 04:05:08.20 ID:
これで今の季節とちょうどリンクするのか・・・
ちょっとこの超大作すごすぎる

俺、今まじで涙で枕を濡らしてる

なんかすごく良い気分
282:2008/09/01(月) 04:05:24.73 ID:
俺はこの終わり方嫌いじゃないぜ
夏の終わりにはちょうど良い
363:2008/09/01(月) 13:13:34.30 ID:
まさかの良スレで泣いてしまった…
午後から仕事できないじゃまいか。
402:2008/09/01(月) 22:43:46.21 ID:
こんな涙目になったのは久しぶりだな・・・
1乙
290:2008/09/01(月) 04:07:51.51 ID:
店長の顔は戻ったのか
294:2008/09/01(月) 04:09:24.86 ID:
店長「明日から来なくていいから」
287:2008/09/01(月) 04:07:08.16 ID:
2ちゃん見て泣いたの初めてだわ

本当にありがとう。・゚・(ノД`)・゚・。
334:2008/09/01(月) 04:55:59.53 ID:
>>1

僕たちの夏はまだこれからだ