1:2015/03/26(木) 20:43:58.38 ID:
桃太郎たちは、村の宝と共に鬼ヶ島へ向かっていました。

いぬ「しかし、これで良かったのでしょうか?」

桃太郎「まだ不安なのか、いぬ」

いぬ「鬼はたくさんの人を殺して、人もたくさんの鬼を殺して」

いぬ「それで」

さる「いまさら和平を結ぶなんて・・・・都合の良い話ってか」

いぬ「は、はい・・・」

桃太郎「いぬの気持ちも分かるよ」

桃太郎「僕だって、鬼と対峙するまでは倒すべき・・・・」

桃太郎「ううん、倒さなくちゃいけない存在だと思ってた」

桃太郎「でも、あの時の、鬼の目は真剣だった」

いぬ「真剣、ですか」

桃太郎「同じ魂が宿っているんだ、って思えた」

いぬ「そ、そうですよね、誰だって争いなんか望んでませんよね!」

桃太郎「ああ、もちろんさ」

さる「それにお互いの宝を入れ替え、保管しあうなんて」


さる「バカげた提案にも乗っかってきたわけだしな」

桃太郎「バカで悪かったな!」

いぬ「あはは」

きじ「バカ言ってる暇があるなら、積み荷を降ろす準備でもしな」

2:2015/03/26(木) 20:44:47.76 ID:
きじ「戻ってくるまでに、持ち運べるようにしとくんだよ」

桃太郎「ああ、分かってるよ」

さる「おみやげよろしくなー」

きじ「ばか」

きじが翼を広げると、羽音が辺りを包み込んだ。

いぬ「・・・・僕もああやって空を飛びたいなぁ」

さる「その耳で?」

いぬ「羽根が欲しいって事ですよ!」

さる「ムキになるこたぁないだろ、冗談だよ」

いぬ「もぅ、人をからかって」

さる「楽しいからいいじゃねぇか」

いぬ「僕は楽しくないですよー」

さる「へへっ、俺様が楽しいからいいんだっての!」

桃太郎「おいおい、人が積み荷を分けてるのに」

桃太郎「ずいぶんと盛り上がってるじゃないか、んん?」

いぬ「あ、ごめんなさい」

さる「へーい、手伝いますよ~っと」

桃太郎「まったく・・・・」

桃太郎「ん?きじがもう戻ってくる・・・?」

きじ「た、大変!鬼が、鬼たちが!」
3:2015/03/26(木) 20:47:46.27 ID:
きじに連れられた桃太郎たちの目の前に、傷つき、倒れている鬼たちがいました。

桃太郎「これは一体、どうして・・・・」

いぬ「あわわわ・・・あわわ」

さる「こいつは、死んでる」

いぬ「ひぃっ!?」

桃太郎「何があったんだ」

きじ「何かしらの争いがあったことは確かね」

桃太郎「そんな・・・やっと分かりあえたと思ったのに」

きじ「でも、大半は気絶してるだけみたい」

さる「お、おい!しっかりしろ!」

鬼「うぅ・・・・・」

桃太郎「気がついた者がいるのか!?」

鬼「ぅ・・・こ、ここは」

桃太郎「しっかりするんだ、一体誰がこんな事を!」

鬼「に、人間!?」

さる「おい、まだ安静にしといたほうが」

鬼「人間!!!殺す!!!」
4:2015/03/26(木) 20:50:26.00 ID:
鬼が拳を天高く突き上げると、それを渾身の力で振り下ろしました。

桃太郎「うわぁ!?」

ブンッ

桃太郎は、身を屈め、これを間一髪かわしました。

桃太郎「あ、危なかった・・・・」

鬼「人間め!人間はやはり殺すべきなのだ!」

いぬ「や、やめてくださいぃ!」

桃太郎「鬼よ!なぜこんな事をする!?」

桃太郎「あの時、お前の目は嘘をついている目ではなかった!」

桃太郎「真に平和を夢見る、無垢な瞳だったはず!」

鬼「皆の者、地に伏している場合ではないぞ!」

鬼「人間に、我らが義を裏切った事を後悔させてやるのだ!」

鬼「う・・・この傷、この死、人間はやはり悪なのだ」

鬼「そうだ、奴らを野放しにはできない」

きじ「鬼たちの目が覚め始めたわ」

鬼「人間を生かしておくわけにはいかん!」

さる「や、やばいんじゃないのか」

桃太郎「どうして・・・・どうして」
5:2015/03/26(木) 20:53:39.61 ID:
いぬ「うわわ、鬼たちが来ますよ!」

さる「くそっ、こんな時は逃げるが勝ちだろ」

きじ「珍しく意見が合うわね、船まで走って!」

桃太郎「どうして戦うんだ、どうして逃げなくちゃいけないんだ」

さる「んな事あとあと!向こうは殺しに来るぞ」

桃太郎「くそっ、逃げるしかないのか」

鬼「者ども!人間をこの島から逃がすな!」

いぬ「船までもうすぐです、頑張って!」

さる「おい!宝はどうすんだ」

きじ「諦めるしかないでしょう!」

桃太郎(村のみんなが出し合ってくれたのに、ごめん)

きじ「足止めくらいならできるから、その間に船を海へ!」

さる「恩にきるぜ!」

いぬ「ありがとうございます!」

桃太郎(こんな事になるなんて、こんな・・・・)

さる「何をぼさっとしてる!船を押すんだよ!」

桃太郎「え?」

いぬ「しっかりしてくださいよ桃太郎さぁん!」

桃太郎(そうだ、今はみんなと共に生きて帰る事に集中しないと)

桃太郎「す、すまない」
6:2015/03/26(木) 20:54:57.90 ID:
桃太郎たちは、船を海へ押し出し鬼ヶ島を脱出しました。

いぬ「ふぅー・・・・こ、怖かったぁ」

さる「間一髪、ってとこだったな」

桃太郎「ああ・・・・・」

さる「そういや、きじは?」

いぬ「きじさんなら上を行ってますよ」

さる「あんなとこにいるのか、おーいお前も休め・・・」

いぬ「どうかしましたか」

さる「きじ、ありゃ落ちてねぇか」

桃太郎「なに!?」

いぬ「あわわ、どどどうしましょう」

さる「海に落ちるだけだが、誰かが助けないと」

いぬ「僕犬かきしかできませんよぉ!」

さる「誰もお前に頼んじゃいねぇよ!」

桃太郎「任せて!」
7:2015/03/26(木) 20:57:05.08 ID:
桃太郎は、海に落ちたきじを抱えて船へ戻りました。

桃太郎「げほっ!げほっ!」

いぬ「大丈夫ですか桃太郎さん」

桃太郎「大丈夫だよ、それよりも」

さる「きじ、足止めの時に・・・・」

いぬ「心配いりません、軽い打撲だけです」

さる「気絶、してるだけだよな」

いぬ「はい、きじさんもそう弱くはありません」

いぬ「手当をして、一時間もしない内にまた元気よく飛べますよ」

さる「そうか、良かった・・・・・」

桃太郎「みんな、本当にごめん」

いぬ「ど、どうしたんですかいきなり」

桃太郎「僕のせいだ、僕のせいで」

さる「おいおい、こいつを忘れられちゃ困るぜ」

いぬ「あ、へへ」

桃太郎「それは・・・・きびだんご」

さる「俺は絆って呼んでる」

いぬ「これをもらった時、どこまでもついていこうって思えたから」

桃太郎「お前たち・・・・・」

さる「大将がそんなでどうすんだ、しゃきっとしろよー」

桃太郎「あ、ああ!」
8:2015/03/26(木) 21:00:08.03 ID:
桃太郎たちを乗せた船は、小さな港にたどり着きました。

さる「ふぃ~、やっと陸に上がれた」

いぬ「きじさん、無理はなさらないでくださいね」

きじ「自分の体の事くらい、分かるってば」

桃太郎「無事に目を覚ましてくれて、安心したよ」

きじ「自分の事じゃないのに、私以上に喜んでる」

桃太郎「ま、まあね」

さる「皆が無事でよかったじゃねぇか」

きじ「・・・・・・・」

桃太郎「きじ?怪我が傷むのか?」

きじ「・・・これ」

いぬ「あ、きびだんご」

さる「へっ、やっぱりお前も持ってたか」

桃太郎「きじも大事に持っていてく」

きじ「返す・・・・返すわ」

桃太郎「へ?」
9:2015/03/26(木) 21:04:34.15 ID:
さる「お、おいおい・・・珍しく冗談でも言ったのか?」

いぬ「冗談ですよね、なーんだもー」

きじ「きびだんごを返す事がどういうことか」

きじ「あなたたちが一番よく分かって?」

さる「なおさら分かんねぇよ、分かるわけないだろ」

いぬ「そ、そうですよ!」

きじ「鬼と人間が再び争おうとしているのよ」

桃太郎「そ、それは」

きじ「今度はどちらかが滅ぶまで・・・死にたくないわ」

さる「死にたくないって、命を懸けてでも守」

きじ「分かってるわよ!!」

さる「なら、どうして!」

きじ「皆が・・・・・皆が!」

きじ「貴方のように強い心を持っているわけじゃない、から」
10:2015/03/26(木) 21:07:38.93 ID:
いぬ「きじさん・・・・」

きじ「ごめんなさい、情けないわよね」

さる「俺は、お前に憧れてたんだ。憧れてたんだぞ」

きじ「私、を?」

さる「いつも冷静で、頼りがいがあって、かっこよくて」

さる「俺、お前の事・・・す、す・・・・好」

きじ「やめて!!!」

さる「!?」

きじ「それ以上は・・・お願いだから」

さる「なんでだよ、お前がいなくなったら俺!」

きじ「・・・・・・」

さる「なんでこっちを見ない、もう見たくもないってか!」

きじ「違う、違うの」

さる「じゃあ・・・・・」

きじ「貴方を見ると、心が・・・・揺らぐから」

さる「きじ・・・お前・・・・」

きじ「さよなら」
11:2015/03/26(木) 21:11:27.89 ID:
桃太郎たちは、きじを見送ると村へ歩みを進めました。

桃太郎「・・・・・」

いぬ「・・・・」

さる「・・・・・」

桃太郎「・・・もうじき日が暮れるな」

いぬ「そ、そうですね」

さる「・・・・・」

桃太郎「さる、お前の気持ちも分かるよ」

さる「・・・・・」

桃太郎「何も辛いのはさるだけじゃない」

いぬ「そ、そうです」

桃太郎「出会いがあれば別れもあるっていうし、さ?」

さる「・・・・桃太郎さん」

桃太郎「おっ、どうした?」

さる「このきびだんご、やっぱりあんたに返すよ」

いぬ「!!」

桃太郎「さ、さる!」

さる「あんたとの日々、楽しかったよ」
12:2015/03/26(木) 21:14:24.80 ID:
桃太郎たちの静止など気にも留めず、さるは森の中へ姿を消しました。

桃太郎「いぬ、もう寝たのか?」

いぬ「・・・・・」

桃太郎「・・・僕は寝れないよ」

桃太郎「家族と、思ってたんだ」

桃太郎「固い絆で結ばれてると思ってて、それで」

いぬ「・・・・」

桃太郎「はは、バカみたい・・・」

いぬ「・・・」

桃太郎「お前がいてくれるだけで嬉しいよ」

桃太郎「帰ったら、たらふく飯を食おうな」

桃太郎「おばあさんの作る飯はすごく美味いんだ」

いぬ「・・・・・」

桃太郎「きびだんごも、おばあさんが作ってくれてさ」

桃太郎「ちょっと心配性なんだけど、それも恋しいよ」

桃太郎「明日に備えてもう寝よう・・・・」

いぬ「・・・・・」

桃太郎「いぬ、ありがとうな」
13:2015/03/26(木) 21:16:30.85 ID:
目を覚ました桃太郎の隣に、きびだんごが一つ、虚しく転がっていた。

桃太郎「いぬ・・・・」

桃太郎「お前も辛かったんだな、分かってやれないで・・・」

桃太郎「こんなだから俺は、ダメなんだな」

桃太郎「皆が去っていくんだな」

桃太郎「・・・・・」

桃太郎「・・・帰ろう、僕には家がある」

桃太郎「そうさ、皆も家に、帰るだけなんだ」

桃太郎「だがら・・・・だから、立ち止まってちゃ」

桃太郎「ぅ・・・・」

桃太郎「泣いちゃだめだ」

桃太郎「泣いだっで・・・皆は戻っでごなぃ」

桃太郎「ぅ・・・うぅ」

桃太郎「会いたいよぉ・・・・なんでみんな・・・・・」
14:2015/03/26(木) 21:18:29.49 ID:
桃太郎は、長い道のりを経て、村へたどり着きました。

桃太郎「・・・あれだけ涙を流しても、乾くのだけは早い」

桃太郎「皆に、おじいさんとおばあさんになんて言えば」

桃太郎「もう、いっそこのまま」

おばあさん「桃太郎!」

桃太郎「お、おばあさん・・・・」

おばあさん「ああ、よく帰ってきてくれたねぇ」

桃太郎「・・・・・・」

おばあさん「さぁさぁ、大変だったろぉ?」

桃太郎「う、うん」

おばあさん「今、火をつけてあげるからねぇ」

おばあさん「おや、薪がもう少ないみたい」

桃太郎「そ、そうなんだ」

おばあさん「おじいさんねぇ、村長になってから忙しくてねぇ」

桃太郎「・・・・・うん」

おばあさん「桃太郎?どうかしたのかい?」

桃太郎「その・・・あの・・・・」

おばあさん「・・・私はいつだって桃太郎の味方だからねぇ」

桃太郎「お、おばあさん・・・・・実は」
15:2015/03/26(木) 21:20:31.59 ID:
桃太郎は、おばあさんにこれまでの事を話しました。

おばあさん「それじゃ、鬼との和平というのは」

桃太郎「・・・・本当にごめん」

おばあさん「・・・・・」

桃太郎「おじいさんにも、村の皆にもこの事」

おばあさん「駄目!」

桃太郎「お、おばあさん・・・?」

おばあさん「そんな事、桃太郎が無事で良かった」

おばあさん「それだけで、幸せだよ」

桃太郎「おばあさん、でも」

おじいさん「おーい、今帰ったぞー」

桃太郎「あ・・・・」

おばあさん「この事は私に任せて、今は旅の疲れを癒しておくれ」

おばあさん「おじいさんには私から言っておきますから」

桃太郎「それじゃ・・・・」

おばあさん「こんな酷い顔、見せられたもんじゃないよ」
16:2015/03/26(木) 21:22:51.42 ID:
月の光に照らされた桃太郎は、ただ時が過ぎるのを待っていた。

おばあさん「眠れないのかい?」

桃太郎「・・・うん」

おばあさん「世の中、そう上手くはいかないもんだねぇ」

桃太郎「うん・・・・」

おばあさん「これ、飲みなさい」

桃太郎「これは?」

おばあさん「若返った様に元気になると、村に伝わる秘薬だそうな」

桃太郎「・・・ありがとう、ごめんね」

桃太郎「本当、どうして」

桃太郎「こんな、生まれてきたんだろう」

おばあさん「桃太郎・・・」

桃太郎「結局、争いを終わらす事ができなくて」

桃太郎「家族と思っていた仲間が去っていって」

桃太郎「僕は、あの時・・・・・」

桃太郎「鬼を皆殺しにするべきだったのかな」

おばあさん「・・・・桃太郎」

おばあさん「桃太郎、私が守ってやる、絶対守ってやる」

おばあさん「だから今は、眠りんさい」
17:2015/03/26(木) 21:24:13.07 ID:
翌朝、桃太郎の姿はそこになく、代わりに赤子がいました。

おじいさん「それじゃ、柴刈りに行ってくる」

おばあさん「はい、気を付けてくださいねぇ」

おばあさん「・・・・桃太郎、行くよ」

おばあさん「お前は、私たちの宝じゃ」

おばあさん「お前さえ・・・・・生きてくれれば」

おばあさん「桃太郎、この桃がお前を鬼から守ってくれる」

おばあさん「愛してる、愛してるよ桃太郎」

おばあさん「どうか、私たちの事を」

おばあさん「忘れないでおくれ・・・・・」

おばあさんの手から離れた大きな桃は

どんぶらこ、どんぶらこと、川を上っていきました。






おしまい
18:2015/03/26(木) 21:25:00.65 ID:
ありがとうございました。
20:2015/03/26(木) 21:53:02.31 ID:
面白かった
21:2015/03/26(木) 21:55:21.33 ID:
(´;ω;`)
22:2015/03/26(木) 22:45:40.25 ID:
おばあちゃん…

乙!
24:2015/03/27(金) 04:11:59.95 ID:
川を上るんかい
26:2015/03/27(金) 20:44:49.26 ID:
おもろかった
25:2015/03/27(金) 10:40:09.12 ID:
逆なだけで面白くなるんだな

面白いのにくだらない(上る)とはこれいかに
元スレ: