1: :2011/02/06(日) 02:59:34.49 ID:
中学時代。
僕はいじられキャラ。
自虐ネタで笑いをとる。
大勢の中では人気者。
2人っきりだと避けられる。
このジレンマから抜け出したかった。
中学時代。
僕はいじられキャラ。
自虐ネタで笑いをとる。
大勢の中では人気者。
2人っきりだと避けられる。
このジレンマから抜け出したかった。
3: :2011/02/06(日) 03:00:45.24 ID:
乙、いい話だった
4: :2011/02/06(日) 03:01:14.36 ID:
僕には好きな人がいた。
◆陸上部
◆顔は普通
◆黒いブラ
特筆すべきは声。“一聞惚れ”。
人と話すのは苦手だけど、
頑張ってみることにした。
僕には好きな人がいた。
◆陸上部
◆顔は普通
◆黒いブラ
特筆すべきは声。“一聞惚れ”。
人と話すのは苦手だけど、
頑張ってみることにした。
5: :2011/02/06(日) 03:02:48.81 ID:
彼女とはそこそこ仲良くなれた。
楽しく会話もできるようになった……けど、
2人っきりだと続かない。
会話が途切れて脳内からっぽ ((((;゜Д゜)))ア..ア...ア
沈黙パニック。何を話せば喜ぶの……?
なんとも気まずい雰囲気。
このままだと彼女は去ってしまう。
なんとしても引き止めなきゃ!!
彼女とはそこそこ仲良くなれた。
楽しく会話もできるようになった……けど、
2人っきりだと続かない。
会話が途切れて脳内からっぽ ((((;゜Д゜)))ア..ア...ア
沈黙パニック。何を話せば喜ぶの……?
なんとも気まずい雰囲気。
このままだと彼女は去ってしまう。
なんとしても引き止めなきゃ!!
7: :2011/02/06(日) 03:04:17.33 ID:
僕は話題作りのため、ネタを捏造した。
「オ、オレ1000円払って9000円お釣りもらったことあるんだw」
「へぇ、そうなんだ……ちょっとごめんね」ガタン
彼女は楽しそうな別のグループへ行った。
大失敗。嘘つくとか最低。内容も最低。
何でいつもこうなるんだよ……。
彼女とはそこそこ仲良くはなれた。
3人以上いれば彼女はそばにいてくれる……けど、
2人っきりだと避けられる。
僕は話題作りのため、ネタを捏造した。
「オ、オレ1000円払って9000円お釣りもらったことあるんだw」
「へぇ、そうなんだ……ちょっとごめんね」ガタン
彼女は楽しそうな別のグループへ行った。
大失敗。嘘つくとか最低。内容も最低。
何でいつもこうなるんだよ……。
彼女とはそこそこ仲良くはなれた。
3人以上いれば彼女はそばにいてくれる……けど、
2人っきりだと避けられる。
8: :2011/02/06(日) 03:05:40.00 ID:
ある日。
僕の恋が友達にバレた。
バレたというかバラした。
友達が“つまらなそう”だったから
友達を引き止めるために
イジられるのを覚悟で
僕は自分の恋をネタにした。
孤独だけは嫌だから……。
友達は新鮮なネタに喜んだ。
……友達って何なんだ。
ある日。
僕の恋が友達にバレた。
バレたというかバラした。
友達が“つまらなそう”だったから
友達を引き止めるために
イジられるのを覚悟で
僕は自分の恋をネタにした。
孤独だけは嫌だから……。
友達は新鮮なネタに喜んだ。
……友達って何なんだ。
9: :2011/02/06(日) 03:07:52.65 ID:
次の日、背黒板には
≪〇〇は△△が好き≫
みたいな事が書かれていた。
友達は僕の反応を楽しみにしてる。
背黒板とはいえ、サイテーな奴ら。
だが僕の仕事は笑いをとること。
友達を退屈させてはいけない。
黒板消しで“それ”を消すなんて論外。
次の日、背黒板には
≪〇〇は△△が好き≫
みたいな事が書かれていた。
友達は僕の反応を楽しみにしてる。
背黒板とはいえ、サイテーな奴ら。
だが僕の仕事は笑いをとること。
友達を退屈させてはいけない。
黒板消しで“それ”を消すなんて論外。
10: :2011/02/06(日) 03:09:06.89 ID:
「うぉおおおおおいwww」
……と、大声でつっこむ。
クラスのみんなが背黒板に振り向く。
その中には“あの子”もいた。
友達は手を叩いて笑う。
「ハハッwww 大声出したらバレるってwww」
馬鹿。これでいいんだ。
僕はピエロとしての仕事をしただけ。
僕は身を削ってでも笑いをとるんだ。
明るく振舞えばそれは“イジリ”。
俯いてしまえばそれは“イジメ”。
“いじめられっ子”にはなりたくなかった。
「うぉおおおおおいwww」
……と、大声でつっこむ。
クラスのみんなが背黒板に振り向く。
その中には“あの子”もいた。
友達は手を叩いて笑う。
「ハハッwww 大声出したらバレるってwww」
馬鹿。これでいいんだ。
僕はピエロとしての仕事をしただけ。
僕は身を削ってでも笑いをとるんだ。
明るく振舞えばそれは“イジリ”。
俯いてしまえばそれは“イジメ”。
“いじめられっ子”にはなりたくなかった。
11: :2011/02/06(日) 03:10:37.57 ID:
さぁ、自虐ネタを加速しようか。
僕は自分の不幸さをネタに置き換え、
次々と新しいテイストで表現していく。
男子全員、愉快そうに笑っていた。
笑いをとると気持ちいい。
泣きたい気持ちが中和され、
「これでいいんだ」って思えてくる。
一方、“あの子”は耳を赤くして見て見ぬふり。
多分、僕のこと嫌いになったと思う。
僕は恋愛を捨て、友情をとったのだ。
さぁ、自虐ネタを加速しようか。
僕は自分の不幸さをネタに置き換え、
次々と新しいテイストで表現していく。
男子全員、愉快そうに笑っていた。
笑いをとると気持ちいい。
泣きたい気持ちが中和され、
「これでいいんだ」って思えてくる。
一方、“あの子”は耳を赤くして見て見ぬふり。
多分、僕のこと嫌いになったと思う。
僕は恋愛を捨て、友情をとったのだ。
12: :2011/02/06(日) 03:11:38.25 ID:
恋愛自虐ネタのバイタリティは強い。
おかげでハブられることなく、
“卒業式”を迎えることができた。
好きな子を傷つけてでも集団に縋りたかった。
それは孤独が嫌だっただけ。
だから奴らは友達でも何でもない。
僕は高校で“真の友達”を見つけると誓った。
……さて、“最後の仕事”に取り掛かろうか。
悪夢の中学生活から抜け出すために。
◆要求されたミッション◆
“あの子”に告れ。
尚、告白時はケータイを通話状態にすること。
恋愛自虐ネタのバイタリティは強い。
おかげでハブられることなく、
“卒業式”を迎えることができた。
好きな子を傷つけてでも集団に縋りたかった。
それは孤独が嫌だっただけ。
だから奴らは友達でも何でもない。
僕は高校で“真の友達”を見つけると誓った。
……さて、“最後の仕事”に取り掛かろうか。
悪夢の中学生活から抜け出すために。
◆要求されたミッション◆
“あの子”に告れ。
尚、告白時はケータイを通話状態にすること。
13: :2011/02/06(日) 03:13:16.05 ID:
僕はまだ“あの子”のことが好きだった。
だから告白するのは別に構わない……
でもさ、
ケータイの件は納得いかないだろ。
『告白した証明』のためらしいけど、
何でお前らに証明しなきゃならねんだよ。
……でも、僕はピエロ。
客のリクエストにはお応えするよ。
客に見捨てられたくないから。
孤独なステージは嫌だから。
僕はまだ“あの子”のことが好きだった。
だから告白するのは別に構わない……
でもさ、
ケータイの件は納得いかないだろ。
『告白した証明』のためらしいけど、
何でお前らに証明しなきゃならねんだよ。
……でも、僕はピエロ。
客のリクエストにはお応えするよ。
客に見捨てられたくないから。
孤独なステージは嫌だから。
14: :2011/02/06(日) 03:14:46.50 ID:
携帯電話のマイク感度をMAXにして、
僕は“あの子”に声を掛けた。
「ちょっと話いい?」
最後のピエロ・オン・ステージは緊張するぜ。
“あの子”に告白というだけで緊張するのに……。
心臓が爆発しそうで息苦しい。
この場合の“最高のパフォーマンス”とは
【斬新な告白】⇒【大成功】⇒【友達とのハイタッチ】
のシナリオと僕は確信していた。
僕的にも、ピエロ的にも。
携帯電話のマイク感度をMAXにして、
僕は“あの子”に声を掛けた。
「ちょっと話いい?」
最後のピエロ・オン・ステージは緊張するぜ。
“あの子”に告白というだけで緊張するのに……。
心臓が爆発しそうで息苦しい。
この場合の“最高のパフォーマンス”とは
【斬新な告白】⇒【大成功】⇒【友達とのハイタッチ】
のシナリオと僕は確信していた。
僕的にも、ピエロ的にも。
15: :2011/02/06(日) 03:16:16.56 ID:
「3年間ずっと好きだった。オレと付き合って欲しい」
あぁ……なんてこったい。
僕は極めて“普通”の告白をしてしまった。
あまりの緊張にピエロを演じる余裕がなかったのだ。
そして彼女は冷静に答える。
「ごめん」
マジで3文字。僕はショックを隠せず口走った。
「あ…やっぱそうだよねwww 実はコレって命令なんだwww」
あの瞬間、僕は地球上で最もカッコ悪い男だったに違いない。
彼女は何も言わず、その場を後にした。
「3年間ずっと好きだった。オレと付き合って欲しい」
あぁ……なんてこったい。
僕は極めて“普通”の告白をしてしまった。
あまりの緊張にピエロを演じる余裕がなかったのだ。
そして彼女は冷静に答える。
「ごめん」
マジで3文字。僕はショックを隠せず口走った。
「あ…やっぱそうだよねwww 実はコレって命令なんだwww」
あの瞬間、僕は地球上で最もカッコ悪い男だったに違いない。
彼女は何も言わず、その場を後にした。
16: :2011/02/06(日) 03:18:03.77 ID:
ふと、自分の立場を思い出す。
ピエロとしてステージに立っていることを。
僕は様々な感情をこらえて、
「やべぇふられたwwww」
と携帯電話のマイクに叫ぶ。
… … … … …。
携帯のディスプレイには止まった通話時間。
ピエロのスベりっぷりに客は帰ったのだ。
会場には化粧の剥がれたピエロが一人だけ。
その正体は、唯の仮性コミュ障害者だった。
恐れていた孤独が一気に押し寄せる。
僕は目を潤わせながら、早歩きで帰宅した。
ふと、自分の立場を思い出す。
ピエロとしてステージに立っていることを。
僕は様々な感情をこらえて、
「やべぇふられたwwww」
と携帯電話のマイクに叫ぶ。
… … … … …。
携帯のディスプレイには止まった通話時間。
ピエロのスベりっぷりに客は帰ったのだ。
会場には化粧の剥がれたピエロが一人だけ。
その正体は、唯の仮性コミュ障害者だった。
恐れていた孤独が一気に押し寄せる。
僕は目を潤わせながら、早歩きで帰宅した。
17: :2011/02/06(日) 03:19:37.80 ID:
家に到着。叫んだ。号泣した。
奴らからメールが届いていた。
「ドンマイ(^_^;)」
「フラれたからって俺らのせいにすんなよなw」
「残念、次は期待してるぞ!」
「まあ人生辛いこともあるさ」
↑こんな感じのメール。
携帯投げつけて、壁殴って、果てるまで泣き続けた。
集団と孤独、どちらが正解だったのかな。
最初から孤独を選んどけば幸せだったのかな。
家に到着。叫んだ。号泣した。
奴らからメールが届いていた。
「ドンマイ(^_^;)」
「フラれたからって俺らのせいにすんなよなw」
「残念、次は期待してるぞ!」
「まあ人生辛いこともあるさ」
↑こんな感じのメール。
携帯投げつけて、壁殴って、果てるまで泣き続けた。
集団と孤独、どちらが正解だったのかな。
最初から孤独を選んどけば幸せだったのかな。
18: :2011/02/06(日) 03:21:25.34 ID:
高校時代。
知ってる奴のいない高校。
ちょっと遠めの工業高校。
ここから新しい人生が始まるんだ。
でも…僕は気づいていた。
知ってる奴がいないから、
自分から友達を作らなきゃならんわけで。
つまりコミュニケーション能力がうんたらで。
だけど僕は相変わらずの、
人と話すのが嫌い、その上孤独も嫌いという、ワガママ人間だった。
高校時代。
知ってる奴のいない高校。
ちょっと遠めの工業高校。
ここから新しい人生が始まるんだ。
でも…僕は気づいていた。
知ってる奴がいないから、
自分から友達を作らなきゃならんわけで。
つまりコミュニケーション能力がうんたらで。
だけど僕は相変わらずの、
人と話すのが嫌い、その上孤独も嫌いという、ワガママ人間だった。
19: :2011/02/06(日) 03:23:00.22 ID:
僕のクラスには大きく分けて2種類の人間がいた。
≪オタク≫ or ≪リア充≫
それぞれがグループを作り、楽しそうだった。
で、僕はどちらに分類されるかというと、
≪どちらでもなかった≫
アニメは大好きだけど、リアルでオタ扱いはされたくない。
リア充の会話にはついていけるけど、受動的&愛想笑い。
非常に中途半端な人間。
僕のクラスには大きく分けて2種類の人間がいた。
≪オタク≫ or ≪リア充≫
それぞれがグループを作り、楽しそうだった。
で、僕はどちらに分類されるかというと、
≪どちらでもなかった≫
アニメは大好きだけど、リアルでオタ扱いはされたくない。
リア充の会話にはついていけるけど、受動的&愛想笑い。
非常に中途半端な人間。
20: :2011/02/06(日) 03:24:51.86 ID:
僕は“リア充”と友達になろうとした。
しかし他人以上、友達未満の関係が延々と続く。
どうしても友達になって欲しいから、
自宅で明日何を話すか考えたりしてた。
でもやっぱり
2人っきりだと続かない。
2人っきりだと避けられる。
日々ネガティブが悪化するばかり。
やがて2人っきり以外でも発言力を失って、
集団に金魚の糞のようにくっついていく。
リア充達にとって僕の存在はウンコ以下。
靴紐を結び直す間、誰も僕を待ってくれない。
そして限界は早くも訪れた。
Ready。僕は“孤独”を選んだ。
僕は“リア充”と友達になろうとした。
しかし他人以上、友達未満の関係が延々と続く。
どうしても友達になって欲しいから、
自宅で明日何を話すか考えたりしてた。
でもやっぱり
2人っきりだと続かない。
2人っきりだと避けられる。
日々ネガティブが悪化するばかり。
やがて2人っきり以外でも発言力を失って、
集団に金魚の糞のようにくっついていく。
リア充達にとって僕の存在はウンコ以下。
靴紐を結び直す間、誰も僕を待ってくれない。
そして限界は早くも訪れた。
Ready。僕は“孤独”を選んだ。
21: :2011/02/06(日) 03:28:43.94 ID:
リア充A「メシ食いに行こうぜー」
リア充B「おう。今日の定食なんだろなw」
リア充C「やっべぇ。金忘れたッ」
リア充D「しゃーねぇな。貸してやんよ――」
僕「…」
この日、僕は集団に付いて行かなかった。
しかし奴らは至っていつも通りだった。
僕なんか居ても居なくても同じだから。
寧ろいない方が楽しめるんじゃない?
僕は一人で昼食をとった。
初めて自分のペースで食べた。
そして“便所飯”の素晴らしさに感動する。
リア充A「メシ食いに行こうぜー」
リア充B「おう。今日の定食なんだろなw」
リア充C「やっべぇ。金忘れたッ」
リア充D「しゃーねぇな。貸してやんよ――」
僕「…」
この日、僕は集団に付いて行かなかった。
しかし奴らは至っていつも通りだった。
僕なんか居ても居なくても同じだから。
寧ろいない方が楽しめるんじゃない?
僕は一人で昼食をとった。
初めて自分のペースで食べた。
そして“便所飯”の素晴らしさに感動する。
22: :2011/02/06(日) 03:31:18.32 ID:
僕は学校で全く喋らなくなっていた。
一人最高、気楽すぎワロタ。
でも休み時間になると苦しくなる。
リア充の雑談は耳障りで吐きそうだしwww
オタどもの会話もニワカで笑い方キメェしwww
一方、僕は寝たり、寝る格好したりする疲労者っぷり。
5分前には教科書とノートを机の上に用意する優等生っぷり。
毎回ロッカーを整理整頓する几帳面っぷり。
必ずトイレに行って用を足す神経質っぷり。
戻ると僕の席にリア充が座ってたりする大人気っぷり。
自分が座れなくても待っててあげる超寛容っぷり。
そして授業が始まると苦しみは和らぐんだ。
別に寂しくなんかないよ。
僕は学校で全く喋らなくなっていた。
一人最高、気楽すぎワロタ。
でも休み時間になると苦しくなる。
リア充の雑談は耳障りで吐きそうだしwww
オタどもの会話もニワカで笑い方キメェしwww
一方、僕は寝たり、寝る格好したりする疲労者っぷり。
5分前には教科書とノートを机の上に用意する優等生っぷり。
毎回ロッカーを整理整頓する几帳面っぷり。
必ずトイレに行って用を足す神経質っぷり。
戻ると僕の席にリア充が座ってたりする大人気っぷり。
自分が座れなくても待っててあげる超寛容っぷり。
そして授業が始まると苦しみは和らぐんだ。
別に寂しくなんかないよ。
23: :2011/02/06(日) 03:33:28.31 ID:
「2人組作ってください」←「死ね」
「隣の人と相談してください」←「死ね」
「リア充なりてー。リア充爆発しろ」←「死ね」
「研修旅行の班は自由で構いません」←「死ね」
「友達とか彼女、家に連れてきていいのよ」←「死ね」
こんな世界嫌だ。
僕が何をしたっていうんだ。
コミュ障とかいうなら生活保護よこせ。
僕が“生(せい)”を感じる時間は≪ゴールデンタイム≫、
夜9時から夜中2時までの“アニメ”、“ネット”の時間だけだ。
「2人組作ってください」←「死ね」
「隣の人と相談してください」←「死ね」
「リア充なりてー。リア充爆発しろ」←「死ね」
「研修旅行の班は自由で構いません」←「死ね」
「友達とか彼女、家に連れてきていいのよ」←「死ね」
こんな世界嫌だ。
僕が何をしたっていうんだ。
コミュ障とかいうなら生活保護よこせ。
僕が“生(せい)”を感じる時間は≪ゴールデンタイム≫、
夜9時から夜中2時までの“アニメ”、“ネット”の時間だけだ。
24: :2011/02/06(日) 03:35:53.31 ID:
アニメは現実逃避にうってつけ。
アニメの世界は非現実的で興味深く、
目と耳さえあれば誰でも行けるのだ。
口は要らないから喋らなくても生きていける。
そして何よりこの世界では僕が絶対的な神。
電源を切るか切らないかは僕次第。
キャラは常に僕の掌上で生活している。
だから孤独なんてものも感じない。
インターネットも同じである。
用途を限れば口の要らない、目と手だけの世界。
だからコミュニケートも苦ではない。
この2つの世界を徘徊する≪ゴールデンタイム≫。
これがないと僕は死ぬ。
アニメは現実逃避にうってつけ。
アニメの世界は非現実的で興味深く、
目と耳さえあれば誰でも行けるのだ。
口は要らないから喋らなくても生きていける。
そして何よりこの世界では僕が絶対的な神。
電源を切るか切らないかは僕次第。
キャラは常に僕の掌上で生活している。
だから孤独なんてものも感じない。
インターネットも同じである。
用途を限れば口の要らない、目と手だけの世界。
だからコミュニケートも苦ではない。
この2つの世界を徘徊する≪ゴールデンタイム≫。
これがないと僕は死ぬ。
25: :2011/02/06(日) 03:38:11.08 ID:
≪ゴールデンタイム≫が5時間に対して、
≪リアルタイム≫は12時間もある。
学校での孤独感と嘔吐感は日々増すばかりで、
僕は現実に殺されてしまいそうだった。
そんなある日のこと。
VIPが僕を救ってくれた。
とあるスレにて、
『妄想楽し過ぎ』
…と。
≪ゴールデンタイム≫が5時間に対して、
≪リアルタイム≫は12時間もある。
学校での孤独感と嘔吐感は日々増すばかりで、
僕は現実に殺されてしまいそうだった。
そんなある日のこと。
VIPが僕を救ってくれた。
とあるスレにて、
『妄想楽し過ぎ』
…と。
26: :2011/02/06(日) 03:39:19.05 ID:
俺もアニメは見るがこの考え方はなかったわwww
27: :2011/02/06(日) 03:41:01.74 ID:
僕は17才のイケメン高校2年生。不定期通学。
学校生活を味わってみたいという理由で変則編入。
教会育ち。過去にトラウマ有り。
Google、Facebook他の創設者。
数えきれないほどの特許をもつ。
世界一の歌唱力。演奏力。絵画力。料理腕。プログラマー。etc。
数学における予想問題を次々とQ.E.D.。
長者番付、2位に1700億ドル差。
00年以降の神曲と呼ばれるアニソンの6割を作詞作曲。
また、自身もパンクバンドを組んでおり空前絶後の大ヒット。
特技は声帯完全模写。コピーバンドも結成。声優の代替役も。
16リンガル。
如何なる場にも完璧に対応する笑いのセンス。
隔月刊雑誌にて漫画を連載中。空前絶後。
莫大な資産の使い道は、
バーチャル世界創世の研究。
僕は17才のイケメン高校2年生。不定期通学。
学校生活を味わってみたいという理由で変則編入。
教会育ち。過去にトラウマ有り。
Google、Facebook他の創設者。
数えきれないほどの特許をもつ。
世界一の歌唱力。演奏力。絵画力。料理腕。プログラマー。etc。
数学における予想問題を次々とQ.E.D.。
長者番付、2位に1700億ドル差。
00年以降の神曲と呼ばれるアニソンの6割を作詞作曲。
また、自身もパンクバンドを組んでおり空前絶後の大ヒット。
特技は声帯完全模写。コピーバンドも結成。声優の代替役も。
16リンガル。
如何なる場にも完璧に対応する笑いのセンス。
隔月刊雑誌にて漫画を連載中。空前絶後。
莫大な資産の使い道は、
バーチャル世界創世の研究。
28: :2011/02/06(日) 03:43:25.16 ID:
翌日から電車通学中、授業中、休み時間……
ほとんどの≪リアルタイム≫で妄想した。
妄想の世界は想像力だけのロジックワールド。
目を閉じるだけで凄まじい設定の自分がいる。
常に誰かが自分を求めている世界。
皆々僕を尊敬する世界。
でも、0℃の世界。
目を開けると必ず冷たい涙がこぼれてくる。
だけど妄想はやめない。
やめたら死ぬ。
翌日から電車通学中、授業中、休み時間……
ほとんどの≪リアルタイム≫で妄想した。
妄想の世界は想像力だけのロジックワールド。
目を閉じるだけで凄まじい設定の自分がいる。
常に誰かが自分を求めている世界。
皆々僕を尊敬する世界。
でも、0℃の世界。
目を開けると必ず冷たい涙がこぼれてくる。
だけど妄想はやめない。
やめたら死ぬ。
29: :2011/02/06(日) 03:45:18.76 ID:
俺も一歩間違えばこうなってたかもしれない
30: :2011/02/06(日) 03:46:09.82 ID:
大学時代。
僕は隣県の工業大学に進学した。
もちろん妄想癖は続いていた。
言うまでもなく友達は諦めている。
アニメ、ネット、音楽鑑賞で十分。
“孤独”も現代文明の前じゃ怖くねーぜw
そう、怖くない……はずだった。
だが突然あの日、何かが僕を襲ったのだ。
そして僕の日常は劇的に変化する。
大学時代。
僕は隣県の工業大学に進学した。
もちろん妄想癖は続いていた。
言うまでもなく友達は諦めている。
アニメ、ネット、音楽鑑賞で十分。
“孤独”も現代文明の前じゃ怖くねーぜw
そう、怖くない……はずだった。
だが突然あの日、何かが僕を襲ったのだ。
そして僕の日常は劇的に変化する。
31: :2011/02/06(日) 03:49:03.24 ID:
◆大学2年。2010年12月17日(金)◆
その日は恐ろしい夢から始まった。
『声が出なくなる夢』
まあこんな生活してたら
そんな夢をみてもおかしくはないけれど。
苦しいけど誰にも伝えられず、
絶望の果てに声を失い、
結局は殺される。
そんな夢をみた。
◆大学2年。2010年12月17日(金)◆
その日は恐ろしい夢から始まった。
『声が出なくなる夢』
まあこんな生活してたら
そんな夢をみてもおかしくはないけれど。
苦しいけど誰にも伝えられず、
絶望の果てに声を失い、
結局は殺される。
そんな夢をみた。
32: :2011/02/06(日) 03:51:36.73 ID:
僕は仄暗い蝋燭部屋で仰向けに横たわっていた。
『“顎”“舌”“喉”以外』の神経は麻痺しており、死体のごとく動けない。
そして周囲には何本ものクリスマスツリーが飾ってあった。
どこからか、「jingle bell. jingle bell. jingle bell...」と複数の囁きが聞こえてくる。
すると突然、ツリーが次々と光り、目の死んだ異国人達がうっすら現れた。
その正体は異常な雰囲気を漂わせる、イカれたサンタクロース集団だった。
彼らはボソボソと、「jingle bell. jingle bell...」と唱えながら、
僕の眼球や鼻、陰茎、指、内蔵、腎臓をえグリ削ぎ、絶え間なく僕に喰わせてくる。
『“顎”“舌”“喉”以外』は痛みを感じないので、ショック死することもできない。
僕は助けを乞うために、ひたすら自分を味わい、喰らい続けるしかない。
喰い尽くせば、口が解放され、声を出せるから……そして僕は完食した。
だが叫ぼうと“喉”を開いたそのとき、奴らは僕の“のどちんこ”をブチ抜いた。
「ガァァアアアアアアアアアアアアアッッッッ……!!」
僕は“声”を失った。……「jingle bell」とはそういう意味だった。
サンタ達は終焉のベルに満足し、僕の心臓を引きちぎり靴下に放り込んだ。
僕は仄暗い蝋燭部屋で仰向けに横たわっていた。
『“顎”“舌”“喉”以外』の神経は麻痺しており、死体のごとく動けない。
そして周囲には何本ものクリスマスツリーが飾ってあった。
どこからか、「jingle bell. jingle bell. jingle bell...」と複数の囁きが聞こえてくる。
すると突然、ツリーが次々と光り、目の死んだ異国人達がうっすら現れた。
その正体は異常な雰囲気を漂わせる、イカれたサンタクロース集団だった。
彼らはボソボソと、「jingle bell. jingle bell...」と唱えながら、
僕の眼球や鼻、陰茎、指、内蔵、腎臓をえグリ削ぎ、絶え間なく僕に喰わせてくる。
『“顎”“舌”“喉”以外』は痛みを感じないので、ショック死することもできない。
僕は助けを乞うために、ひたすら自分を味わい、喰らい続けるしかない。
喰い尽くせば、口が解放され、声を出せるから……そして僕は完食した。
だが叫ぼうと“喉”を開いたそのとき、奴らは僕の“のどちんこ”をブチ抜いた。
「ガァァアアアアアアアアアアアアアッッッッ……!!」
僕は“声”を失った。……「jingle bell」とはそういう意味だった。
サンタ達は終焉のベルに満足し、僕の心臓を引きちぎり靴下に放り込んだ。
33: :2011/02/06(日) 03:53:17.61 ID:
「ウァァアアアアアアアアアアッッ……!!」
僕は目を覚ました。
そして次の瞬間、“金縛り”に襲われた。
冷や汗が止まらない…。怖い……。
すかさず目を閉じ、「助けて」と声をあげようとする。
しかし声にはならず、すかさず口も閉じた。
ああ……金縛りってやつはどうして
誰かががそこにいるような気がするんだろう。
ソイツはサンタクロースかもしれない。
目を開けたら殺されるかもしれない。
口を開けたら喰わされるかもしれない。
早く、朝になってくれ……。
「ウァァアアアアアアアアアアッッ……!!」
僕は目を覚ました。
そして次の瞬間、“金縛り”に襲われた。
冷や汗が止まらない…。怖い……。
すかさず目を閉じ、「助けて」と声をあげようとする。
しかし声にはならず、すかさず口も閉じた。
ああ……金縛りってやつはどうして
誰かががそこにいるような気がするんだろう。
ソイツはサンタクロースかもしれない。
目を開けたら殺されるかもしれない。
口を開けたら喰わされるかもしれない。
早く、朝になってくれ……。
34: :2011/02/06(日) 03:56:24.48 ID:
■12月17日(金)AM7:10 - 起床■
あぁ…喉がカラカラだ。
気分も悪い。
食欲なんてあるわけない。
今日は講義をサボろう。
でも親には大学へ行く素振りを見せないとダメ。
つまりは外出必須なのだ。
どこへ行こうか。
僕は水をがぶ飲みし、家を出た。
母さんはいつも通り僕を見送る。
毎日、毎日、うぜぇんだよ。
■12月17日(金)AM7:10 - 起床■
あぁ…喉がカラカラだ。
気分も悪い。
食欲なんてあるわけない。
今日は講義をサボろう。
でも親には大学へ行く素振りを見せないとダメ。
つまりは外出必須なのだ。
どこへ行こうか。
僕は水をがぶ飲みし、家を出た。
母さんはいつも通り僕を見送る。
毎日、毎日、うぜぇんだよ。
35: :2011/02/06(日) 03:59:57.47 ID:
本日の天気、雪。
とりあえず電車に乗ることにする。
寝不足で、一刻も早く寝たいからだ。
電車ほど快適なベッドルームはないからな。
そこそこ田舎なので通勤ラッシュの心配もないし。
ある駅を越えると、もはや貸切状態になるし。
……にしても、今日は一段と寒いなぁ。
付加装備に、「ニット」「ヘッドホン」「マフラー」「ダウン」「グローブ」。
モコモコすぎてダサい? まぁオシャレなんてどうでもいいけどね。
とにかく防寒対策は完璧。どこか遠くにでも行こうか。
10分程で駅に到着。
今日はやけに人が多いな。
本日の天気、雪。
とりあえず電車に乗ることにする。
寝不足で、一刻も早く寝たいからだ。
電車ほど快適なベッドルームはないからな。
そこそこ田舎なので通勤ラッシュの心配もないし。
ある駅を越えると、もはや貸切状態になるし。
……にしても、今日は一段と寒いなぁ。
付加装備に、「ニット」「ヘッドホン」「マフラー」「ダウン」「グローブ」。
モコモコすぎてダサい? まぁオシャレなんてどうでもいいけどね。
とにかく防寒対策は完璧。どこか遠くにでも行こうか。
10分程で駅に到着。
今日はやけに人が多いな。
36: :2011/02/06(日) 04:02:25.51 ID:
「本日は電車が遅れてしまい、誠にご迷惑をお掛けしております」
マジかよ。電車で座れなかったらどうすんだ?
電光掲示板を見上げると、次の電車は30分後だった。
遅れすぎだろ……。
寒さで眠気は覚め、同時に腹が減ってきた。
コンビニで惣菜パンと缶コーヒーを購入。
空腹を満たし、音楽を聴いて待っていると
電車がノロノロとやってきた。
「本日は電車が遅れてしまい、誠にご迷惑をお掛けしております」
マジかよ。電車で座れなかったらどうすんだ?
電光掲示板を見上げると、次の電車は30分後だった。
遅れすぎだろ……。
寒さで眠気は覚め、同時に腹が減ってきた。
コンビニで惣菜パンと缶コーヒーを購入。
空腹を満たし、音楽を聴いて待っていると
電車がノロノロとやってきた。
37: :2011/02/06(日) 04:04:37.78 ID:
ガタンゴトン…ガタンゴトン。
車内は混んでいて、座れなかった。
人が多いのは遅延が原因だろう。
電車も止まりがち運転でイライラするぜ。
僕は揺られながらケータイを弄っていた。
なんとなく受信メールBOXを開く。
メルマガや広告が9割をしめ、
残りの1割が母親という、九死に一生、後遺症って感じ。
ついでに送信メールBOXも開く。
高校の頃のメールが余裕で残ってる。
返信のなかったメール達、疑問形で終了もザラ。
ガタンゴトン…ガタンゴトン。
車内は混んでいて、座れなかった。
人が多いのは遅延が原因だろう。
電車も止まりがち運転でイライラするぜ。
僕は揺られながらケータイを弄っていた。
なんとなく受信メールBOXを開く。
メルマガや広告が9割をしめ、
残りの1割が母親という、九死に一生、後遺症って感じ。
ついでに送信メールBOXも開く。
高校の頃のメールが余裕で残ってる。
返信のなかったメール達、疑問形で終了もザラ。
39: :2011/02/06(日) 04:07:00.31 ID:
衝動的に全メールを削除した。
このままどこか遠くへ行きたい。
雪の所為もあり、そんな気分が一層高まる。
今朝の夢は何だったんだろう?
僕から僕への潜在的メッセージだったのかな。
『声が出なくなり』、『助けを乞えず』、『孤独死する』。
……僕にどうしろと。
現実で僕に友達を作れってか?
中学、高校でそれは“不正解”って結論出たろ。
人と接してコミュニケーションとれってか?
もう既に“真性”コミュ障害者だっつーの。
さもないとサンタが“声”を狩りに来るってか?
構わねーよ。いらねんだよ声なんてよ。
僕は今後一切、助けなんて乞わない。
自分が潜在的に“何”を望んでようが、
孤独は僕の背負っていく運命なんだ……。
衝動的に全メールを削除した。
このままどこか遠くへ行きたい。
雪の所為もあり、そんな気分が一層高まる。
今朝の夢は何だったんだろう?
僕から僕への潜在的メッセージだったのかな。
『声が出なくなり』、『助けを乞えず』、『孤独死する』。
……僕にどうしろと。
現実で僕に友達を作れってか?
中学、高校でそれは“不正解”って結論出たろ。
人と接してコミュニケーションとれってか?
もう既に“真性”コミュ障害者だっつーの。
さもないとサンタが“声”を狩りに来るってか?
構わねーよ。いらねんだよ声なんてよ。
僕は今後一切、助けなんて乞わない。
自分が潜在的に“何”を望んでようが、
孤独は僕の背負っていく運命なんだ……。
40: :2011/02/06(日) 04:09:43.31 ID:
「○○。〇〇です。お降りの方は足元に気をつけて――」
いつもこの駅から電車はほぼ貸切になる。
そして今日もリーマン達がゾロゾロと降車していった。
僕は空いた席に座り、外を眺める。
雪って何でこんなに綺麗なんだろ?
汚れを知らない純白、飛び込んだら洗われるかな?
そんなこと考えてる自分に少し酔ったりする。
アニソンを『R-09HR』で再生し、『Edition8』で聴きながら。
僕は大学に入ってから音楽鑑賞の“環境”に興味を持った。
オーディオビギナーとして大学生にしては頑張ってる方だと思うよ♪
プレーヤーとヘッドホン、合わせて20万したんだぜw
※『R-09HR』:プレーヤー(高音質レコーダー)
※『Edition8』:ヘッドホン
「○○。〇〇です。お降りの方は足元に気をつけて――」
いつもこの駅から電車はほぼ貸切になる。
そして今日もリーマン達がゾロゾロと降車していった。
僕は空いた席に座り、外を眺める。
雪って何でこんなに綺麗なんだろ?
汚れを知らない純白、飛び込んだら洗われるかな?
そんなこと考えてる自分に少し酔ったりする。
アニソンを『R-09HR』で再生し、『Edition8』で聴きながら。
僕は大学に入ってから音楽鑑賞の“環境”に興味を持った。
オーディオビギナーとして大学生にしては頑張ってる方だと思うよ♪
プレーヤーとヘッドホン、合わせて20万したんだぜw
※『R-09HR』:プレーヤー(高音質レコーダー)
※『Edition8』:ヘッドホン
41: :2011/02/06(日) 04:11:40.16 ID:
今聴いてるアルバムは『CLANNAD ORIGINAL SOUNDTRACK』。
先日クリアした『CLANNAD』のサントラだ。
もう涙がボロボロ、感動したよっ……!!
他者とのコミュニケーションを嫌っていた主人公が、
ハンデにも負けず真っ直ぐに生きる女の子に出会い、
次第に影響され、共に歩み、変わっていく過程で
家族や友達の大切さに気づき、実感する、そんな作品。
伝わりすぎて泣いた。
『CLANNADは人生』
僕だって分かってるよ。
本来、人生はそうあるべきなんだ。
僕だって本当は……。
今聴いてるアルバムは『CLANNAD ORIGINAL SOUNDTRACK』。
先日クリアした『CLANNAD』のサントラだ。
もう涙がボロボロ、感動したよっ……!!
他者とのコミュニケーションを嫌っていた主人公が、
ハンデにも負けず真っ直ぐに生きる女の子に出会い、
次第に影響され、共に歩み、変わっていく過程で
家族や友達の大切さに気づき、実感する、そんな作品。
伝わりすぎて泣いた。
『CLANNADは人生』
僕だって分かってるよ。
本来、人生はそうあるべきなんだ。
僕だって本当は……。
42: :2011/02/06(日) 04:16:04.75 ID:
僕はそっと目を閉じた。
次に目を覚ます時が電車を降りる時。
例え定期範囲外でも、その駅で降りることにしよう。
『何かを見つけるために』
J-POPによくある抽象的代名詞だな。
正直、ちょっとカッコつけたいだけ……でも、
『孤独が運命』って決め込んでるけど、
心のどこかでまだ諦めてないのだろう。
自分を変える“キッカケ”探しの旅。
行き先はダーツに委ねる。
……僕は目を閉じた。
僕はそっと目を閉じた。
次に目を覚ます時が電車を降りる時。
例え定期範囲外でも、その駅で降りることにしよう。
『何かを見つけるために』
J-POPによくある抽象的代名詞だな。
正直、ちょっとカッコつけたいだけ……でも、
『孤独が運命』って決め込んでるけど、
心のどこかでまだ諦めてないのだろう。
自分を変える“キッカケ”探しの旅。
行き先はダーツに委ねる。
……僕は目を閉じた。
43: :2011/02/06(日) 04:20:28.41 ID:
え、リアル話ぽくて怖い
44: :2011/02/06(日) 04:20:41.62 ID:
ムニャムニャ。
目を覚ますと、窓外には知らない風景が広がっていた。
『まもなく△△駅です』、という電光表示。
聞いたこともない駅名だな。
定期範囲外なのは間違いないみたいだ。
……さぁ、僕の旅は始まった。
「△△。△△です。お降りの方は足元に気をつけて――」
只今9時40分。雪は既に止んでいる。
降車すると、冷たい強風が頬を突き刺した。
風に負け、顔をしからめ、目を細めると、
同時に自分以外にも降車客が“一人”いることに気づく。
そして僕は風の隙間に、
“一人の少女”を見たんだ。
ムニャムニャ。
目を覚ますと、窓外には知らない風景が広がっていた。
『まもなく△△駅です』、という電光表示。
聞いたこともない駅名だな。
定期範囲外なのは間違いないみたいだ。
……さぁ、僕の旅は始まった。
「△△。△△です。お降りの方は足元に気をつけて――」
只今9時40分。雪は既に止んでいる。
降車すると、冷たい強風が頬を突き刺した。
風に負け、顔をしからめ、目を細めると、
同時に自分以外にも降車客が“一人”いることに気づく。
そして僕は風の隙間に、
“一人の少女”を見たんだ。
45: :2011/02/06(日) 04:22:57.92 ID:
隣の車両から降りてきた彼女は、
その小さな体で風を受け止めていた。
セミロングの黒髪が靡いている様は
まさに理想を描いたような美しさだった。
年は僕より2、3年下だろうか。
風が通り過ぎ、彼女の顔が浮かんでくると
僕の中で時間が止まった。
“一目惚れ”は初めてだった。
一般的に大絶賛される程の顔ではないと思う。
少なくとも“ミス日本”における“美しさ”からは程遠い。
飾っていない素朴で自然な美しさ。
整った顔立ち、その愛くるしい童顔からは
どこか田舎っぽさ、懐かしさを感じる。
僕にとっては間違いなく、
この世で最も美しく、可愛い女の子だった。
隣の車両から降りてきた彼女は、
その小さな体で風を受け止めていた。
セミロングの黒髪が靡いている様は
まさに理想を描いたような美しさだった。
年は僕より2、3年下だろうか。
風が通り過ぎ、彼女の顔が浮かんでくると
僕の中で時間が止まった。
“一目惚れ”は初めてだった。
一般的に大絶賛される程の顔ではないと思う。
少なくとも“ミス日本”における“美しさ”からは程遠い。
飾っていない素朴で自然な美しさ。
整った顔立ち、その愛くるしい童顔からは
どこか田舎っぽさ、懐かしさを感じる。
僕にとっては間違いなく、
この世で最も美しく、可愛い女の子だった。
46: :2011/02/06(日) 04:24:59.50 ID:
音楽を止めろ。
冷静に考えろ。
こんな気持ちは何年ぶりだ?
≪リアルタイム≫で心臓の昂りを感じたのは。
彼女は2次元でなく3次元。
未知なる奥行きがあるんだぞ?
何を考える必要があるんだ!?
今後一切、助けを乞わないって誓ったろ!?
いつも通り人と目を合わせるな。
傷つかないよう、隅っこを歩け。
避けられるぐらいなら、避けるのが僕じゃないか。
なのに何でこんなに迷うんだよ……。
『人が迷うのは後悔したくないからである』
そんなのは知ってるって!
音楽を止めろ。
冷静に考えろ。
こんな気持ちは何年ぶりだ?
≪リアルタイム≫で心臓の昂りを感じたのは。
彼女は2次元でなく3次元。
未知なる奥行きがあるんだぞ?
何を考える必要があるんだ!?
今後一切、助けを乞わないって誓ったろ!?
いつも通り人と目を合わせるな。
傷つかないよう、隅っこを歩け。
避けられるぐらいなら、避けるのが僕じゃないか。
なのに何でこんなに迷うんだよ……。
『人が迷うのは後悔したくないからである』
そんなのは知ってるって!
47: :2011/02/06(日) 04:28:21.23 ID:
もしかして、
この僕が女の子に話しかける?
コミュ障害者が
異性と2人っきりで?
できるわけないだろ。
会話が途切れて涙目オチだ。
……でも、僕は何しにココへ来たんだ?
わざわざ遠くまで来た理由は?
まだ知らない何かを探しに来たんだろ?
その“手掛かり”はそこにあるんじゃないのか!?
僕は自分を変えに来たんだろッ!!
もしかして、
この僕が女の子に話しかける?
コミュ障害者が
異性と2人っきりで?
できるわけないだろ。
会話が途切れて涙目オチだ。
……でも、僕は何しにココへ来たんだ?
わざわざ遠くまで来た理由は?
まだ知らない何かを探しに来たんだろ?
その“手掛かり”はそこにあるんじゃないのか!?
僕は自分を変えに来たんだろッ!!
48: :2011/02/06(日) 04:32:24.33 ID:
深呼吸して、何度も咳払いをする。
「あーあーあ…」
良かった、声はまだ出る。
僕は彼女に声をかける!
タイトルを付けるなら、『はじめてのなんぱ』!
孤独が嫌なのは変わってない!
たとえそれが運命なら抗えばいい!!
神を創った人間には、神に逆らう権利があるんだ!!
「あの…!!」
深呼吸して、何度も咳払いをする。
「あーあーあ…」
良かった、声はまだ出る。
僕は彼女に声をかける!
タイトルを付けるなら、『はじめてのなんぱ』!
孤独が嫌なのは変わってない!
たとえそれが運命なら抗えばいい!!
神を創った人間には、神に逆らう権利があるんだ!!
「あの…!!」
49: :2011/02/06(日) 04:37:33.11 ID:
女「!」ポカーン
だ、大丈夫。
今の僕なら言える!
僕「ひ、、一目惚れしましたっ!!」
女「……」
僕「僕と……友達になってくださいッ!!」
女「……」
僕「……」
女「……す、すみません」
彼女は動揺したせいか、
トーンのずれた声で僕に謝った。
中学のフラれた記憶が蘇る。
なんともいえない虚無感が僕を包み込む。
その正体は生きることへの絶望。
弛緩した涙腺からは涙が零れた。
女「!」ポカーン
だ、大丈夫。
今の僕なら言える!
僕「ひ、、一目惚れしましたっ!!」
女「……」
僕「僕と……友達になってくださいッ!!」
女「……」
僕「……」
女「……す、すみません」
彼女は動揺したせいか、
トーンのずれた声で僕に謝った。
中学のフラれた記憶が蘇る。
なんともいえない虚無感が僕を包み込む。
その正体は生きることへの絶望。
弛緩した涙腺からは涙が零れた。
50: :2011/02/06(日) 04:41:27.65 ID:
女「私、耳が聴こえないんです」
え…。
彼女は、≪私は 聴覚障害者 です≫
と大きく記されたカードを僕に提示する。
女「お役に立てなくてすみません……」
やはり少し音程の外れた声。
僕の覚悟と勇気は、届いてすらいなかった?
まさか、そんな――。
女「失礼します……」タタタ
ちょっと待ってよ。
こんな形で失敗するのか?
答えを聞くことすらできないのか?
女(……何であの人、泣いてたんだろう?)
女(ヘッドホンにニット帽ってめずらしい人……)
女「私、耳が聴こえないんです」
え…。
彼女は、≪私は 聴覚障害者 です≫
と大きく記されたカードを僕に提示する。
女「お役に立てなくてすみません……」
やはり少し音程の外れた声。
僕の覚悟と勇気は、届いてすらいなかった?
まさか、そんな――。
女「失礼します……」タタタ
ちょっと待ってよ。
こんな形で失敗するのか?
答えを聞くことすらできないのか?
女(……何であの人、泣いてたんだろう?)
女(ヘッドホンにニット帽ってめずらしい人……)
52: :2011/02/06(日) 04:46:27.13 ID:
「ま……待って…!!」
僕は呼びとめようと叫んだ。
しかし、彼女はどんどん遠ざかる。
聞こえてないのなら当たり前だ。
僕は走って追いかけようと踏み出した。
しかし、“ストーカー”という概念が頭を横切る。
足が急に重くなり、やがて止まった。
嫌われるくらいなら、僕は追いかけない。
……でも、それじゃ昨日までの僕と同じだ。
僕は自分を変えに来たんだろッ!
彼女が遠ざかるにつれ、後悔が近づいてくる。
再び足を動かすと、彼女しか見えなくなった。
走れッ!!
「ま……待って…!!」
僕は呼びとめようと叫んだ。
しかし、彼女はどんどん遠ざかる。
聞こえてないのなら当たり前だ。
僕は走って追いかけようと踏み出した。
しかし、“ストーカー”という概念が頭を横切る。
足が急に重くなり、やがて止まった。
嫌われるくらいなら、僕は追いかけない。
……でも、それじゃ昨日までの僕と同じだ。
僕は自分を変えに来たんだろッ!
彼女が遠ざかるにつれ、後悔が近づいてくる。
再び足を動かすと、彼女しか見えなくなった。
走れッ!!
53: :2011/02/06(日) 04:49:12.58 ID:
悪くない
むしろ良い
むしろ良い
54: :2011/02/06(日) 04:52:05.58 ID:
僕は彼女の肩をポンと叩いた。
女「!」
僕はケータイを取り出して、
文章を打ちこみ、それを彼女に手渡す。
彼女が怪訝そうに受け取ると、
僕はその場から離れた。逃げた。
もう耐えられなかったのだ。
だって女の子を走って追いかけ、
せき止めるという積極的行動に加え、
いきなり自分のケータイを相手に渡すという、
相手にとっては理解不能な出来事だからだ。
……でも、そんなの分かりきってただろ。
その上で行動に移したんだ。自分を変えるために。
なのに僕はギリギリで逃げた。どこまでもヘタレ……。
改札を出ようとすると、“ピーッ”、と警告音が鳴り響く。
同時に僕を逃がすまいと、2枚の板が僕をせき止めた。
僕は彼女の肩をポンと叩いた。
女「!」
僕はケータイを取り出して、
文章を打ちこみ、それを彼女に手渡す。
彼女が怪訝そうに受け取ると、
僕はその場から離れた。逃げた。
もう耐えられなかったのだ。
だって女の子を走って追いかけ、
せき止めるという積極的行動に加え、
いきなり自分のケータイを相手に渡すという、
相手にとっては理解不能な出来事だからだ。
……でも、そんなの分かりきってただろ。
その上で行動に移したんだ。自分を変えるために。
なのに僕はギリギリで逃げた。どこまでもヘタレ……。
改札を出ようとすると、“ピーッ”、と警告音が鳴り響く。
同時に僕を逃がすまいと、2枚の板が僕をせき止めた。
55: :2011/02/06(日) 04:55:34.98 ID:
(何で私にケータイなんか渡したんだろ……?)
(これ私の落し物じゃないよ?)
(誰かと勘違いしてるのかな?)
(でも電車からは私と“ニットホン”さんの2人ぐらいしか降りてないし……)
(それより早く学校に行かないと)
(えーっと…今日は大雪警報のせいで10時スタートだから……)
(あと15分か……ん?)
≪ブー、ブー、ブー、ブー≫
ケータイのバイブレーションが突然鳴り響く。
“ニットホン”さんを見ると、改札の方で慌てふためいていた。
ケータイのディスプレイには、
『From:自分 件名:僕の告白、聞いてください!!』
(何で私にケータイなんか渡したんだろ……?)
(これ私の落し物じゃないよ?)
(誰かと勘違いしてるのかな?)
(でも電車からは私と“ニットホン”さんの2人ぐらいしか降りてないし……)
(それより早く学校に行かないと)
(えーっと…今日は大雪警報のせいで10時スタートだから……)
(あと15分か……ん?)
≪ブー、ブー、ブー、ブー≫
ケータイのバイブレーションが突然鳴り響く。
“ニットホン”さんを見ると、改札の方で慌てふためいていた。
ケータイのディスプレイには、
『From:自分 件名:僕の告白、聞いてください!!』
56: :2011/02/06(日) 04:59:37.24 ID:
(え……? 何かメール来た……)
(送り元が“自分”になってるけど、これって……私に?)
(だから私にこのケータイを渡したの?)
(……告白って何……?)
(私、耳聞こえないって言ったよね……)
(普通、それ聞いたら……避けるもんでしょ……?)
彼女は恐る恐る、メールを開いた。
◆本文◆
初めまして!
一目惚れしました!
思い切って告白しました!
そしたら耳が聞こえないって言われました!
でも、そんなこと一目惚れには関係ないです!
君さえよければ
僕の初めての友達になってください!
根本 優
(え……? 何かメール来た……)
(送り元が“自分”になってるけど、これって……私に?)
(だから私にこのケータイを渡したの?)
(……告白って何……?)
(私、耳聞こえないって言ったよね……)
(普通、それ聞いたら……避けるもんでしょ……?)
彼女は恐る恐る、メールを開いた。
◆本文◆
初めまして!
一目惚れしました!
思い切って告白しました!
そしたら耳が聞こえないって言われました!
でも、そんなこと一目惚れには関係ないです!
君さえよければ
僕の初めての友達になってください!
根本 優
57: :2011/02/06(日) 05:01:28.19 ID:
根本wwww
58: :2011/02/06(日) 05:01:37.62 ID:
(一目……惚れ?)
(私と……友達になりたい?)
(こんな私と……)
改札の方を見ると、彼は乗越精算機の前にいた。
(待ってよ…このケータイ、あなたのでしょ?)
(私なんかと……友達になってくれるんでしょ?)
(じゃあ何で私を置いてっちゃうの?)
(もう……孤独は嫌だよ)
「……根本君ッ!!」
(一目……惚れ?)
(私と……友達になりたい?)
(こんな私と……)
改札の方を見ると、彼は乗越精算機の前にいた。
(待ってよ…このケータイ、あなたのでしょ?)
(私なんかと……友達になってくれるんでしょ?)
(じゃあ何で私を置いてっちゃうの?)
(もう……孤独は嫌だよ)
「……根本君ッ!!」
59: :2011/02/06(日) 05:04:32.57 ID:
僕「…」
機械にお金を入れる手が止まった。
女「こんな私で、君さえ良ければッ…!!」
たかが友達になるという告白のために……。
一時の恥から逃げてしまった僕なんかのために……。
自分に聴こえない声を張り上げてまで……。
女「私と…友達になってくださいッ!!!」
お互いに辛い過去があるのだ。
彼女の叫びで、そう悟った僕は
涙を堪えることができなかった。
僕「…」
機械にお金を入れる手が止まった。
女「こんな私で、君さえ良ければッ…!!」
たかが友達になるという告白のために……。
一時の恥から逃げてしまった僕なんかのために……。
自分に聴こえない声を張り上げてまで……。
女「私と…友達になってくださいッ!!!」
お互いに辛い過去があるのだ。
彼女の叫びで、そう悟った僕は
涙を堪えることができなかった。
60: :2011/02/06(日) 05:06:56.81 ID:
◆初めまして◆
木下 優 っていいます(・∀・)
名前同じで驚きましたッ!!
友達ができて嬉しいです!
いきなりで申し訳ないんですが
あと7分以内に学校に着かなきゃいけません…(´・ω・`)
◆Re:初めまして◆
すげぇ、ほんと一緒だっ。
僕も木下さんに出会えて本当に良かった!
てか学校やばいね。
雪が積もって危ないから送ってってあげるよ!
道案内してくれる?
◆Re:Re:初めまして◆
ほんとですかっ? ありがとうございます!
じゃあ私がナビしますから、
手、お願いしますねっヽ(*`・ ・)
◆初めまして◆
木下 優 っていいます(・∀・)
名前同じで驚きましたッ!!
友達ができて嬉しいです!
いきなりで申し訳ないんですが
あと7分以内に学校に着かなきゃいけません…(´・ω・`)
◆Re:初めまして◆
すげぇ、ほんと一緒だっ。
僕も木下さんに出会えて本当に良かった!
てか学校やばいね。
雪が積もって危ないから送ってってあげるよ!
道案内してくれる?
◆Re:Re:初めまして◆
ほんとですかっ? ありがとうございます!
じゃあ私がナビしますから、
手、お願いしますねっヽ(*`・ ・)
61: :2011/02/06(日) 05:09:03.03 ID:
僕は彼女に違和を感じていた。
それが何かはまだ分からないが。
……まぁ今はとりあえず
差し出された彼女の手を、僕が導かなきゃ。
今までの僕なら女の子に触れるなんて論外だった。
だけど、ここに来てからは僕は変わりつつある。
『女の子を学校まで送る』
こんな凄いことをサラッと言えちゃうんだから。
……何でだろう? まあいいや。
ここに来て本当に正解だった。
僕はグローブ越しに彼女の手を握る。
「行こう!」
その声は彼女には届いていない。
僕は彼女に違和を感じていた。
それが何かはまだ分からないが。
……まぁ今はとりあえず
差し出された彼女の手を、僕が導かなきゃ。
今までの僕なら女の子に触れるなんて論外だった。
だけど、ここに来てからは僕は変わりつつある。
『女の子を学校まで送る』
こんな凄いことをサラッと言えちゃうんだから。
……何でだろう? まあいいや。
ここに来て本当に正解だった。
僕はグローブ越しに彼女の手を握る。
「行こう!」
その声は彼女には届いていない。
62: :2011/02/06(日) 05:13:11.45 ID:
僕は右手に彼女の荷物を、
左手に彼女の右手を握りしめ、銀世界を2人で歩いた。
転ばないように、でも遅刻しないように、若干急ぎ気味で。
「次の角、左です」
「こっちの方が近道ですよ」
「そこ滑りやすいから気をつけてください」
会話は全て一方通行だった。
僕の言葉は彼女には届かない。
それでも僕は、
「了解」
「O.K!」
「木下さんも気をつけて」
と笑顔で言葉を返す。
届かないけど意味はあるはずだ。
僕は右手に彼女の荷物を、
左手に彼女の右手を握りしめ、銀世界を2人で歩いた。
転ばないように、でも遅刻しないように、若干急ぎ気味で。
「次の角、左です」
「こっちの方が近道ですよ」
「そこ滑りやすいから気をつけてください」
会話は全て一方通行だった。
僕の言葉は彼女には届かない。
それでも僕は、
「了解」
「O.K!」
「木下さんも気をつけて」
と笑顔で言葉を返す。
届かないけど意味はあるはずだ。
63: :2011/02/06(日) 05:13:36.64 ID:
3行で
65: :2011/02/06(日) 05:19:47.98 ID:
>>63
コミュ障害者の主人公が
耳の聴こえない女の子に出会うという
おはなし
コミュ障害者の主人公が
耳の聴こえない女の子に出会うという
おはなし
64: :2011/02/06(日) 05:17:43.13 ID:
どうやら学校に着いたようだ。
『○○市立△△養護学校』
普通の学校じゃないみたい。
まあ当然といえば当然か。
先生A「あら、優ちゃん、おはよう」
僕「おはようございます……あっ」
とっさに挨拶をしてしまった。
自分の名前を呼ばれたと思ったからだ。
……メガネを掛けた、リッチマダムって感じの女性。
50歳くらい。先生だろうか?
先生A「今日は雪、大変だったねぇ……あら?」
先生A「あなたはどちら様で?」
僕「いや、あの、その……」
……僕の悪い癖だ。
どうやら学校に着いたようだ。
『○○市立△△養護学校』
普通の学校じゃないみたい。
まあ当然といえば当然か。
先生A「あら、優ちゃん、おはよう」
僕「おはようございます……あっ」
とっさに挨拶をしてしまった。
自分の名前を呼ばれたと思ったからだ。
……メガネを掛けた、リッチマダムって感じの女性。
50歳くらい。先生だろうか?
先生A「今日は雪、大変だったねぇ……あら?」
先生A「あなたはどちら様で?」
僕「いや、あの、その……」
……僕の悪い癖だ。
66: :2011/02/06(日) 05:23:27.89 ID:
女「A先生、おはようございます」
女「彼は私の友達なんです」
木下さんは耳が聴こえないのに、
僕よりそれらしい回答をした。
先生A「あら、そうなの」
先生A「優ちゃんを送ってくれたのね」
僕「あ…は、はい……」
僕「あ、あの木下さんはここの生徒なんですか?」
先生A「いいえ。違いますよ」
先生A「優ちゃんはここでボランティアしてくれてるんです」
僕「ボランティア…ですか?」
女「わたし、皆のところに行ってますね」
女「根本くん、送ってくれてありがとう」
女「A先生、おはようございます」
女「彼は私の友達なんです」
木下さんは耳が聴こえないのに、
僕よりそれらしい回答をした。
先生A「あら、そうなの」
先生A「優ちゃんを送ってくれたのね」
僕「あ…は、はい……」
僕「あ、あの木下さんはここの生徒なんですか?」
先生A「いいえ。違いますよ」
先生A「優ちゃんはここでボランティアしてくれてるんです」
僕「ボランティア…ですか?」
女「わたし、皆のところに行ってますね」
女「根本くん、送ってくれてありがとう」
67: :2011/02/06(日) 05:27:55.17 ID:
先生A「転ばないように気をつけるのよー」
僕「せ、先生は行かなくても大丈夫なんですか?」
僕「もう10時ですけと……」
先生A「ええ、私は大丈夫よ」
先生A「せっかく優ちゃんのお友達が来てくれたんだもの」
僕「はぁ」
先生A「優ちゃんは、今年で20になったんだけどね……」
え……? 僕と……同い年だ……。
先生A「普通の大学に行けないのは分かるでしょ?」
先生A「だから高校を中退してから、ここに通ってるわ」
僕「高校を……中退ですか?」
先生A「転ばないように気をつけるのよー」
僕「せ、先生は行かなくても大丈夫なんですか?」
僕「もう10時ですけと……」
先生A「ええ、私は大丈夫よ」
先生A「せっかく優ちゃんのお友達が来てくれたんだもの」
僕「はぁ」
先生A「優ちゃんは、今年で20になったんだけどね……」
え……? 僕と……同い年だ……。
先生A「普通の大学に行けないのは分かるでしょ?」
先生A「だから高校を中退してから、ここに通ってるわ」
僕「高校を……中退ですか?」
68: :2011/02/06(日) 05:32:31.54 ID:
先生A「耳が聴こえなくなったのが高校2年生の時よ」
先生A「彼女は音声言語獲得後に聴力を失ったの」
先生A「だから読み書き発音は不自由なくできるんだけど……」
僕「どうして……聴こえなくなったんですか?」
先生A「……彼女はここに来るまで、ずっと孤独だったわ……」
先生A「極度のストレスも原因の一つよ……」
先生A「……そしてあの事件……」ボソボソ
僕「あの事件って?」
先生A「何でもないわ」
先生A「せっかくだから中の様子見に来る?」
僕「え? …あ…はい…」
先生A「耳が聴こえなくなったのが高校2年生の時よ」
先生A「彼女は音声言語獲得後に聴力を失ったの」
先生A「だから読み書き発音は不自由なくできるんだけど……」
僕「どうして……聴こえなくなったんですか?」
先生A「……彼女はここに来るまで、ずっと孤独だったわ……」
先生A「極度のストレスも原因の一つよ……」
先生A「……そしてあの事件……」ボソボソ
僕「あの事件って?」
先生A「何でもないわ」
先生A「せっかくだから中の様子見に来る?」
僕「え? …あ…はい…」
69: :2011/02/06(日) 05:35:23.01 ID:
清し この夜 星は光り ~♪
救いの御子は 馬槽の中に ~♪
眠り給う いと安く ~♪
僕「あの……これって一体……」
先生A「あぁ、もうすぐクリスマスでしょう?」
先生A「だからクリスマス会に向けて演奏を練習してるの」
先生A「これは“きよしこの夜”よ」
僕は教室の中を覗く。
障害を抱えてる生徒達が
トーンチャイムでそれを演奏し、
メロディーに合わせて先生方が歌詞をのせていた。
そこには木下さんもいた。
※トーンチャイム:
清し この夜 星は光り ~♪
救いの御子は 馬槽の中に ~♪
眠り給う いと安く ~♪
僕「あの……これって一体……」
先生A「あぁ、もうすぐクリスマスでしょう?」
先生A「だからクリスマス会に向けて演奏を練習してるの」
先生A「これは“きよしこの夜”よ」
僕は教室の中を覗く。
障害を抱えてる生徒達が
トーンチャイムでそれを演奏し、
メロディーに合わせて先生方が歌詞をのせていた。
そこには木下さんもいた。
※トーンチャイム:
70: :2011/02/06(日) 05:38:12.75 ID:
なんて綺麗な音色なんだろう。
ここまで心に残る音楽は初めてだ。
木下さん……君は何でそんな楽しそうな顔してるの?
君にはこの音色が届いてないんだろ?
聴かせてやりたいよ。
過去に辛いことがあったのなら、尚更。
演奏が終わると僕は一人で大きな拍手をした。
恥ずかしかったけど、精一杯気持ちをこめた賛美を贈った。
先生たちも僕につられて拍手する。
生徒達はとても嬉しそうだった。
なんて綺麗な音色なんだろう。
ここまで心に残る音楽は初めてだ。
木下さん……君は何でそんな楽しそうな顔してるの?
君にはこの音色が届いてないんだろ?
聴かせてやりたいよ。
過去に辛いことがあったのなら、尚更。
演奏が終わると僕は一人で大きな拍手をした。
恥ずかしかったけど、精一杯気持ちをこめた賛美を贈った。
先生たちも僕につられて拍手する。
生徒達はとても嬉しそうだった。
71: :2011/02/06(日) 05:41:19.26 ID:
先生B「では2曲目を練習しましょう」
僕「もう1曲あるんですか?」
先生A「ええ。全部で2曲よ」
僕「楽しみだなぁ!」
僕「!」
昨日までは現実に無関心だった。
でも今はこんな小さなコンサートに大興奮している。
この矛盾は……いや、僕は変わってるのか?
木下優に出会って、僕は一つの壁を乗り越えた。
壁を乗り越え続けたら、いつか どこか に出れるのだろうか。
そこには僕の探していた 何か があるのだろうか。
先生B「……では心を込めて演奏しましょう。“ジングルベル”の歌♪」
先生B「では2曲目を練習しましょう」
僕「もう1曲あるんですか?」
先生A「ええ。全部で2曲よ」
僕「楽しみだなぁ!」
僕「!」
昨日までは現実に無関心だった。
でも今はこんな小さなコンサートに大興奮している。
この矛盾は……いや、僕は変わってるのか?
木下優に出会って、僕は一つの壁を乗り越えた。
壁を乗り越え続けたら、いつか どこか に出れるのだろうか。
そこには僕の探していた 何か があるのだろうか。
先生B「……では心を込めて演奏しましょう。“ジングルベル”の歌♪」
72: :2011/02/06(日) 05:44:50.10 ID:
僕「えっ……」
Oh, jingle bells, jingle bells ~♪
Jingle all the way ~♪
Oh, what fun it is to ride ~♪
In a one horse open sleigh ~♪
先生A「私は“ジングルベル”の方が好きだわ」
先生A「だって楽しk…
僕は喉を抑え、その場にしゃがみ込んだ。
同じトーンチャイムの音色が今度は不協和音に聴こえる。
僕「やめて……やめて……」
先生A「どうしたの君?」
僕「ぐ、あ……がっ……たすけ……」バタッ
先生A「C先生! この子、保健室に連れて行くの手伝って!」
僕「えっ……」
Oh, jingle bells, jingle bells ~♪
Jingle all the way ~♪
Oh, what fun it is to ride ~♪
In a one horse open sleigh ~♪
先生A「私は“ジングルベル”の方が好きだわ」
先生A「だって楽しk…
僕は喉を抑え、その場にしゃがみ込んだ。
同じトーンチャイムの音色が今度は不協和音に聴こえる。
僕「やめて……やめて……」
先生A「どうしたの君?」
僕「ぐ、あ……がっ……たすけ……」バタッ
先生A「C先生! この子、保健室に連れて行くの手伝って!」
73: :2011/02/06(日) 05:48:10.14 ID:
■保健室■
目を覚ますと、ベッドに横たわっていた。
隣で木下さんが僕を心配そうに見ている。
僕はケータイを取り出した。
メールを送信すると、僕は彼女に笑顔をみせた。
◆もう大丈夫◆
ちょっと怖い夢のこと思い出しただけだよ。
あぁ…小学生みたいでカッコ悪いなぁ…(´;ω;`)
傍にいてくれてありがとう
◆Re:もう大丈夫◆
そうなんだ、良かったぁ~(> <)
でも、しばらく安静にしててくださいよ!
さっきの拍手、ありがとうございましたッ(*^▽^*)
あんな大きな拍手初めて聞きました。
生徒達、みんな喜んでましたよ!
それでは、そろそろ皆のところに戻りますねヾ(。・ω・。)
■保健室■
目を覚ますと、ベッドに横たわっていた。
隣で木下さんが僕を心配そうに見ている。
僕はケータイを取り出した。
メールを送信すると、僕は彼女に笑顔をみせた。
◆もう大丈夫◆
ちょっと怖い夢のこと思い出しただけだよ。
あぁ…小学生みたいでカッコ悪いなぁ…(´;ω;`)
傍にいてくれてありがとう
◆Re:もう大丈夫◆
そうなんだ、良かったぁ~(> <)
でも、しばらく安静にしててくださいよ!
さっきの拍手、ありがとうございましたッ(*^▽^*)
あんな大きな拍手初めて聞きました。
生徒達、みんな喜んでましたよ!
それでは、そろそろ皆のところに戻りますねヾ(。・ω・。)
74: :2011/02/06(日) 05:50:11.91 ID:
拍手にお礼されるのもなw
ていうか拍手の大きさとか分からんだろうに……。
こんなに優しい所見せられたら、ますます傍に居たくなる。
時計は12時を回っていた。
確かに、腹が減ったな。
でもメシまでお世話になるわけにはいかない。
僕は先生にお礼と用件を伝え、学校を出た。
出たはいいが、ここって田舎驀地だな。
どこかに食処はないのだろうか。
とりあえず雪道を歩いてみることにした。
ざっと1時間程だろうか。僕は一件の古いラーメン屋を見つけた。
【屋号】『うんめーら』
嫌な予感を振り払い、暖簾をくぐった。
拍手にお礼されるのもなw
ていうか拍手の大きさとか分からんだろうに……。
こんなに優しい所見せられたら、ますます傍に居たくなる。
時計は12時を回っていた。
確かに、腹が減ったな。
でもメシまでお世話になるわけにはいかない。
僕は先生にお礼と用件を伝え、学校を出た。
出たはいいが、ここって田舎驀地だな。
どこかに食処はないのだろうか。
とりあえず雪道を歩いてみることにした。
ざっと1時間程だろうか。僕は一件の古いラーメン屋を見つけた。
【屋号】『うんめーら』
嫌な予感を振り払い、暖簾をくぐった。
75: :2011/02/06(日) 05:52:41.58 ID:
ガラガラ。
「みらっそい」
いらっしゃい、くらいちゃんと言えよ。
店員は爺さん一人だけか……。
てか、客が誰一人としていない。
お昼時にこの様じゃ閉店も間近だな。
爺「なんそ?」
僕「え? あ…あの…う…兎ラーメンを…一つ」
この店は“兎ガラ”、つまり“うさぎ”のラーメンしかないみたいだ。
客がいない理由に納得。
あぁ、食べたくない……。
ガラガラ。
「みらっそい」
いらっしゃい、くらいちゃんと言えよ。
店員は爺さん一人だけか……。
てか、客が誰一人としていない。
お昼時にこの様じゃ閉店も間近だな。
爺「なんそ?」
僕「え? あ…あの…う…兎ラーメンを…一つ」
この店は“兎ガラ”、つまり“うさぎ”のラーメンしかないみたいだ。
客がいない理由に納得。
あぁ、食べたくない……。
76: :2011/02/06(日) 05:56:03.31 ID:
古い店ということもあり、
『ボンカレー』の看板や、
『吉永小百合』の若かりし頃のポスターがある。
その中で、僕はとある新聞記事を見つけた。
≪夫婦が行方不明≫
張紙の中では、比較的新しいものだった。
日付は2007年8月8日、3年前だ。
僕が高校2年生の頃か。
ってことは木下さんも……。
……まあ関係ないだろう。
古い店ということもあり、
『ボンカレー』の看板や、
『吉永小百合』の若かりし頃のポスターがある。
その中で、僕はとある新聞記事を見つけた。
≪夫婦が行方不明≫
張紙の中では、比較的新しいものだった。
日付は2007年8月8日、3年前だ。
僕が高校2年生の頃か。
ってことは木下さんも……。
……まあ関係ないだろう。
77: :2011/02/06(日) 05:58:52.51 ID:
爺「おまつど」
うわっ、マズそう。
何か邪悪ものを感じる。
僕「うぅ…いただきます……」
ジュル、ジュルルルルル。
をっぅえ。塩辛ぇえ。
ジュル、ジュルルルルルル。
おうぇ。でも麺は意外と好きかも。
ゴクゴクゴク……。
コクがない癖に、あっさりしないスープ。
それに加えて、喉が異常に乾く。
あぁ、不味かった。
僕「ごちそうさまでした!」
……あれ、嘘だろ。自然に挨拶が出た。
爺「おまつど」
うわっ、マズそう。
何か邪悪ものを感じる。
僕「うぅ…いただきます……」
ジュル、ジュルルルルル。
をっぅえ。塩辛ぇえ。
ジュル、ジュルルルルルル。
おうぇ。でも麺は意外と好きかも。
ゴクゴクゴク……。
コクがない癖に、あっさりしないスープ。
それに加えて、喉が異常に乾く。
あぁ、不味かった。
僕「ごちそうさまでした!」
……あれ、嘘だろ。自然に挨拶が出た。
78: :2011/02/06(日) 06:01:19.84 ID:
ゲテモノを食べきった達成感からか?
それともこの場に他の客がいないからか?
でも爺さんが目の前にいるじゃないか。
やはり僕はココに来てから、徐々に変わってる。
潜在的に望んでいた方向へ、少しずつ……。
爺「……創業後40年間でおめぇが初めてじゃ」
僕「え?(普通に喋れるのかよ)」
爺「兎ラーメンを完食した奴はな」
僕(40年間よく潰れなかったもんだ)
爺「まあ兎ラーメンは3年前からのメニューだがのw」
僕(……3年前?)
ゲテモノを食べきった達成感からか?
それともこの場に他の客がいないからか?
でも爺さんが目の前にいるじゃないか。
やはり僕はココに来てから、徐々に変わってる。
潜在的に望んでいた方向へ、少しずつ……。
爺「……創業後40年間でおめぇが初めてじゃ」
僕「え?(普通に喋れるのかよ)」
爺「兎ラーメンを完食した奴はな」
僕(40年間よく潰れなかったもんだ)
爺「まあ兎ラーメンは3年前からのメニューだがのw」
僕(……3年前?)
79: :2011/02/06(日) 06:01:23.03 ID:
すばらしい
80: :2011/02/06(日) 06:06:04.41 ID:
僕「……あ、あの、もし違ってたら申し訳ないんですが……」
僕「“3年前”ってそこの“新聞記事”と関係あるんですか?」
爺「…」
僕「“兎ラーメン”とか……普通じゃないですよ」
僕「しかもメニューがそれだけなんて……」
爺「……それがどうした?」
僕「いえ、なんとなく……」
爺「じゃあ聞くんじゃねぇ」
僕「……すみません」
爺「さっさと金払って帰りな」
僕「……あ、あの、もし違ってたら申し訳ないんですが……」
僕「“3年前”ってそこの“新聞記事”と関係あるんですか?」
爺「…」
僕「“兎ラーメン”とか……普通じゃないですよ」
僕「しかもメニューがそれだけなんて……」
爺「……それがどうした?」
僕「いえ、なんとなく……」
爺「じゃあ聞くんじゃねぇ」
僕「……すみません」
爺「さっさと金払って帰りな」
81: :2011/02/06(日) 06:08:07.66 ID:
只今の時刻、2時少し前。
雪は相変わらず溶ける気配はない。
さて、今度は違う道を通って学校へ戻ろう。
……3年前か。
一体何があったんだろう。
僕は帰り道、“普通”のラーメン屋を見つけた。
ちくしょう。
行きしなにこの道を選んどけば、
『兎ラーメン』なんて食わずにすんだのにな。
多分完食できたのは、
今朝の夢の所為ってのもある。
自分の肉を喰うよりかマシだからな。
只今の時刻、2時少し前。
雪は相変わらず溶ける気配はない。
さて、今度は違う道を通って学校へ戻ろう。
……3年前か。
一体何があったんだろう。
僕は帰り道、“普通”のラーメン屋を見つけた。
ちくしょう。
行きしなにこの道を選んどけば、
『兎ラーメン』なんて食わずにすんだのにな。
多分完食できたのは、
今朝の夢の所為ってのもある。
自分の肉を喰うよりかマシだからな。
82: :2011/02/06(日) 06:11:16.99 ID:
■PM3:00 - 養護学校着■
教室の中を覗くと、保護者も来ており、生徒は帰る準備をしていた。
腕をぶんぶん振りまわす生徒もいれば、
「あうあう」、と奇声を発する生徒もいる。
ギャーギャーと泣き喚く生徒もいれば、
目と口を開けたまま俯いてる生徒もいる。
そして全員が車椅子に縛られていた。
無性にやるせなく、居た堪れない気持ちになった。
≪“自称”コミュニケーション障害者≫、の自分が許せなくなった。
ただ単に、自分から逃げていただけの自分を。
……僕は絶対に変わらなければならない。
そのために、この地へやって来たんだ。
もはや潜在的ではなく、全身全霊、顕在的にそう感じた。
僕は強く再決心し、木下さんの方を見る。
…え? あれ? 何故…?
彼女は唇を噛み締め、涙目になっていた。
■PM3:00 - 養護学校着■
教室の中を覗くと、保護者も来ており、生徒は帰る準備をしていた。
腕をぶんぶん振りまわす生徒もいれば、
「あうあう」、と奇声を発する生徒もいる。
ギャーギャーと泣き喚く生徒もいれば、
目と口を開けたまま俯いてる生徒もいる。
そして全員が車椅子に縛られていた。
無性にやるせなく、居た堪れない気持ちになった。
≪“自称”コミュニケーション障害者≫、の自分が許せなくなった。
ただ単に、自分から逃げていただけの自分を。
……僕は絶対に変わらなければならない。
そのために、この地へやって来たんだ。
もはや潜在的ではなく、全身全霊、顕在的にそう感じた。
僕は強く再決心し、木下さんの方を見る。
…え? あれ? 何故…?
彼女は唇を噛み締め、涙目になっていた。
83: :2011/02/06(日) 06:14:34.69 ID:
保護者と生徒達が帰ると、
木下さんが大泣きしながら僕に飛び込んできた。
「何で急に居なくなっちゃうんですかぁ!」グスン
「私に一言、言ってくれたっていいじゃないですかぁ!!」
「根本君……保健室に行っても居ないからぁ……!」グスン
「私嫌われて……もう帰っちゃったかと思いましたぁ!!」
「…もう……孤独は嫌……」ヒック
その時、彼女に感じた違和の正体が分かった。
彼女も孤独が嫌で、無理な明るさを演じて僕を引きとめようとしていたのだ。
そう、中学の頃の僕みたいに。
誰も抱きしめたことのない僕が、彼女を無意識に抱きしめた。
保護者と生徒達が帰ると、
木下さんが大泣きしながら僕に飛び込んできた。
「何で急に居なくなっちゃうんですかぁ!」グスン
「私に一言、言ってくれたっていいじゃないですかぁ!!」
「根本君……保健室に行っても居ないからぁ……!」グスン
「私嫌われて……もう帰っちゃったかと思いましたぁ!!」
「…もう……孤独は嫌……」ヒック
その時、彼女に感じた違和の正体が分かった。
彼女も孤独が嫌で、無理な明るさを演じて僕を引きとめようとしていたのだ。
そう、中学の頃の僕みたいに。
誰も抱きしめたことのない僕が、彼女を無意識に抱きしめた。
84: :2011/02/06(日) 06:17:47.35 ID:
僕は嫌われるのが怖くて、“友達”になりませんか、と告白した。
それ以上の距離を求めれば、遠ざかるような気がしたから。
だけど、彼女を抱きしめてみて思った。
大きさは違えど、孤独の苦痛を経験してきた僕らは、
予想以上に近い距離でこの出会いを待ち続けていたのかな。
運命(笑)な僕だったけど、それ以外の言葉が見つからないです。
僕らには言葉はいらないから、探す必要ないけどね。
……ふぅ、何言ってんだ恥ずかし。
でも、これだけは言える。
今この瞬間、僕と彼女の鼓動はぴったり。
僕はケータイを取り出した。
◆◆
僕が彼氏でよければ、
僕の彼女になってください。
◆Re:◆
はい。
喜んで。
僕は嫌われるのが怖くて、“友達”になりませんか、と告白した。
それ以上の距離を求めれば、遠ざかるような気がしたから。
だけど、彼女を抱きしめてみて思った。
大きさは違えど、孤独の苦痛を経験してきた僕らは、
予想以上に近い距離でこの出会いを待ち続けていたのかな。
運命(笑)な僕だったけど、それ以外の言葉が見つからないです。
僕らには言葉はいらないから、探す必要ないけどね。
……ふぅ、何言ってんだ恥ずかし。
でも、これだけは言える。
今この瞬間、僕と彼女の鼓動はぴったり。
僕はケータイを取り出した。
◆◆
僕が彼氏でよければ、
僕の彼女になってください。
◆Re:◆
はい。
喜んで。
85: :2011/02/06(日) 06:21:14.29 ID:
■PM4:00 - △△駅待合室■※“〒≪~≫”:メール内容※
女〒≪“ニットホン”さん改め“ゆーくん”≫
僕〒≪“ニットホン”? ヘッドホンの上にニット被ってるから?≫
女〒≪そうだよ。この辺じゃあんまり見かけないからね≫
僕〒≪…ま、ファッションなんてどーでもいいけど≫
女〒≪だめだよ。今度私がコーディネートしてあげよっか?≫
僕〒≪じゃあ、お願いしようかな。お礼も考えとくよ≫
女〒≪ほんと? 楽しみにしとく♪ それにしても名前も年も同じだったなんてね…≫
僕〒≪運命(笑)?≫
女〒≪ばかにするなぁー! これって凄いことなんだよっ≫
僕〒≪まぁ確かに凄いよね。 でも僕は何て呼べばいい? “優ちゃん”とか?≫
女〒≪ゆーくんには“優”ってよんでほしいな≫
僕〒≪了解≫
■PM4:00 - △△駅待合室■※“〒≪~≫”:メール内容※
女〒≪“ニットホン”さん改め“ゆーくん”≫
僕〒≪“ニットホン”? ヘッドホンの上にニット被ってるから?≫
女〒≪そうだよ。この辺じゃあんまり見かけないからね≫
僕〒≪…ま、ファッションなんてどーでもいいけど≫
女〒≪だめだよ。今度私がコーディネートしてあげよっか?≫
僕〒≪じゃあ、お願いしようかな。お礼も考えとくよ≫
女〒≪ほんと? 楽しみにしとく♪ それにしても名前も年も同じだったなんてね…≫
僕〒≪運命(笑)?≫
女〒≪ばかにするなぁー! これって凄いことなんだよっ≫
僕〒≪まぁ確かに凄いよね。 でも僕は何て呼べばいい? “優ちゃん”とか?≫
女〒≪ゆーくんには“優”ってよんでほしいな≫
僕〒≪了解≫
86: :2011/02/06(日) 06:25:12.76 ID:
“彼女を学校まで送る”
何故こんな凄いことがいきなり出来たのか。
彼女と一緒にいるとその答えが分かってきた。
彼女との空間は、僕の得意な“声のいらない世界”。
強制的に“喋り”を要求されることはない。
コミュニケーション手段の殆どが“メール”,“表情”,“ボディータッチ”。
そして何より、この世界はとても暖かい。
まさしく僕が望んでいた世界なのだ。
……でも甘えてばかりはよくない。
僕は変わりに来たのだから。
向上心を失えば探し物は見つからない。
“彼女を学校まで送る”
何故こんな凄いことがいきなり出来たのか。
彼女と一緒にいるとその答えが分かってきた。
彼女との空間は、僕の得意な“声のいらない世界”。
強制的に“喋り”を要求されることはない。
コミュニケーション手段の殆どが“メール”,“表情”,“ボディータッチ”。
そして何より、この世界はとても暖かい。
まさしく僕が望んでいた世界なのだ。
……でも甘えてばかりはよくない。
僕は変わりに来たのだから。
向上心を失えば探し物は見つからない。
87: :2011/02/06(日) 06:30:33.18 ID:
僕「 ゆう 」
僕は口を精一杯使って、彼女の名前を表現した。
女〒≪…うん、いい感じ。幸せすぎる…。 …でも、本当にこんな私でいいの?≫
僕〒≪それは言わない約束≫
僕〒≪優は僕にとって初めての友達で、初めての恋人なんだ≫
僕〒≪絶対に代わりの利かない、僕にとって一番大切な人だよ≫
女〒≪本当にありがと…。信じていい?≫
僕〒≪約束する。何があっても僕はどこにもいかない≫
僕〒≪誰かに置いてかれる苦痛は誰よりも分かるから≫
女〒≪…うん、絶対だよ? 昼みたいに急に居なくなったら嫌だからねッ≫
僕〒≪はいはいw そうだ、昼で思い出したけど…≫
僕〒≪『うんめーら』ってとこで僕、『兎ラーメン』食べたんだ…(´・ω・il)≫
女「えっ」
僕「ん?」
僕「 ゆう 」
僕は口を精一杯使って、彼女の名前を表現した。
女〒≪…うん、いい感じ。幸せすぎる…。 …でも、本当にこんな私でいいの?≫
僕〒≪それは言わない約束≫
僕〒≪優は僕にとって初めての友達で、初めての恋人なんだ≫
僕〒≪絶対に代わりの利かない、僕にとって一番大切な人だよ≫
女〒≪本当にありがと…。信じていい?≫
僕〒≪約束する。何があっても僕はどこにもいかない≫
僕〒≪誰かに置いてかれる苦痛は誰よりも分かるから≫
女〒≪…うん、絶対だよ? 昼みたいに急に居なくなったら嫌だからねッ≫
僕〒≪はいはいw そうだ、昼で思い出したけど…≫
僕〒≪『うんめーら』ってとこで僕、『兎ラーメン』食べたんだ…(´・ω・il)≫
女「えっ」
僕「ん?」
88: :2011/02/06(日) 06:33:39.47 ID:
支援
89: :2011/02/06(日) 06:34:21.01 ID:
女〒≪“うんめーら”って私のお爺ちゃんの店だよ……≫
僕「えぇェエ!? うそだろっ!?」
僕〒≪もしかして、そこに住んでるとか?≫
女〒≪うん、3年前から。 ごめんね、私のお爺ちゃん変人だったでしょ?≫
3年前、とある夫婦行方不明。
3年前、優は爺さんの家に住み始めた。
3年前、優は音を失った。
3年前、“兎ラーメン”登場。
とある夫婦が優の両親なのは、恐らく間違いないだろう。
なんてこった。繋がってしまった。
女「ゆーくん?」
僕〒≪あのさ……今日、優の家に寄っていいかな?≫
女〒≪“うんめーら”って私のお爺ちゃんの店だよ……≫
僕「えぇェエ!? うそだろっ!?」
僕〒≪もしかして、そこに住んでるとか?≫
女〒≪うん、3年前から。 ごめんね、私のお爺ちゃん変人だったでしょ?≫
3年前、とある夫婦行方不明。
3年前、優は爺さんの家に住み始めた。
3年前、優は音を失った。
3年前、“兎ラーメン”登場。
とある夫婦が優の両親なのは、恐らく間違いないだろう。
なんてこった。繋がってしまった。
女「ゆーくん?」
僕〒≪あのさ……今日、優の家に寄っていいかな?≫
91: :2011/02/06(日) 07:17:23.84 ID:
女「!」
女〒≪そんな、私まだ心の準備ができてないよっ…///≫
僕「ち、違うって! 出会って7時間で、どんだけ急展開だッ!」
女「?」
僕〒≪…優のお爺さんと話したいことがあるんだ≫
女〒≪あ、そうなんだ…。 お爺ちゃんと仲良くなったんだ?≫
僕〒『まあそんな感じw ちょっと切符買いなおしてくるよ』
女〒≪××駅だから320円だからね≫
僕〒≪おk≫
女「!」
女〒≪そんな、私まだ心の準備ができてないよっ…///≫
僕「ち、違うって! 出会って7時間で、どんだけ急展開だッ!」
女「?」
僕〒≪…優のお爺さんと話したいことがあるんだ≫
女〒≪あ、そうなんだ…。 お爺ちゃんと仲良くなったんだ?≫
僕〒『まあそんな感じw ちょっと切符買いなおしてくるよ』
女〒≪××駅だから320円だからね≫
僕〒≪おk≫
92: :2011/02/06(日) 07:21:01.16 ID:
■PM4:30 - 木下家門前■
“うんめーら”の隣には小さな一軒家があった。
表札には“木下”って書いてある。
何でさっき気付かなかったんだろう。
“うんめーら”の戸に掛かっている札が
“商い中”から“仕込み中”に変わっている。
どうやら11時から15時までの営業らしい。
つまり、爺さんは今この家に居るってこった。
僕と優が付き合ってることを報告しなきゃ。
そして彼女には聞くに聞けない、
“3年前”のことを教えてもらうんだ。
■PM4:30 - 木下家門前■
“うんめーら”の隣には小さな一軒家があった。
表札には“木下”って書いてある。
何でさっき気付かなかったんだろう。
“うんめーら”の戸に掛かっている札が
“商い中”から“仕込み中”に変わっている。
どうやら11時から15時までの営業らしい。
つまり、爺さんは今この家に居るってこった。
僕と優が付き合ってることを報告しなきゃ。
そして彼女には聞くに聞けない、
“3年前”のことを教えてもらうんだ。
93: :2011/02/06(日) 07:24:31.25 ID:
ガラガラ……。
優は横開き扉を開いた。
女「ただいまぁ、お爺ちゃん」
爺「…ん?」
爺「何でおめぇがいるんじゃ?」
僕「あ、あの…」
僕「あ、改めまして根本優と申します!」
僕「優さんとお付き合いさせて頂くことになったので…」
僕「その…挨拶とご報告に参りました!」
爺「おめぇが優と?」
爺「何で昼来たとき言わんかった?」
僕「いえ、そのときはまだ……」
僕「それにお爺さんと優さんの関係もついさっき知ったんです…」
爺「……後悔はしないと誓うか?」
僕「はい! もちろんです!!」
爺「あがれ」
ガラガラ……。
優は横開き扉を開いた。
女「ただいまぁ、お爺ちゃん」
爺「…ん?」
爺「何でおめぇがいるんじゃ?」
僕「あ、あの…」
僕「あ、改めまして根本優と申します!」
僕「優さんとお付き合いさせて頂くことになったので…」
僕「その…挨拶とご報告に参りました!」
爺「おめぇが優と?」
爺「何で昼来たとき言わんかった?」
僕「いえ、そのときはまだ……」
僕「それにお爺さんと優さんの関係もついさっき知ったんです…」
爺「……後悔はしないと誓うか?」
僕「はい! もちろんです!!」
爺「あがれ」
94: :2011/02/06(日) 07:26:48.55 ID:
■客間■
僕「…」
爺「そんなに緊張せんでもいい」
爺「堅苦しいのもやめてくれ」
僕「あ、はい」
爺「優のこと、どこまで知ってるんじゃ?」
僕「…過去に辛い思いをし、」
僕「3年前に耳が聞こえなくなって」
僕「現在は養護学校でボランティア活動をしている」
僕「そして両親がいない…」
僕「そこまでしか知りません」
爺「…そうか」
爺「優の父親は、優を虐待していた」
■客間■
僕「…」
爺「そんなに緊張せんでもいい」
爺「堅苦しいのもやめてくれ」
僕「あ、はい」
爺「優のこと、どこまで知ってるんじゃ?」
僕「…過去に辛い思いをし、」
僕「3年前に耳が聞こえなくなって」
僕「現在は養護学校でボランティア活動をしている」
僕「そして両親がいない…」
僕「そこまでしか知りません」
爺「…そうか」
爺「優の父親は、優を虐待していた」
95: :2011/02/06(日) 07:29:13.49 ID:
僕「虐待……」
僕「父親ってお爺さんの子供ですか?」
爺「違う。ワシらの子供は母親の方だ」
爺「そしてその母親も父親に暴力を受けていたんじゃ」
僕「なんて非道い父親だ……」
僕「もちろん離婚したんですよね?」
爺「いや、何度も訴えたんじゃが離婚は認められなかった」
僕「どうしてですか!? 暴力は証拠が残るでしょう!?」
爺「あぁ。現に母親も優も身体はアザだらけじゃったよ」
爺「だが父親は暴力を一向に認めずに…」
爺「自分の家族愛の大きさだけを裁判で力説した」
爺「実際に家族旅行をしたり、プレゼントを与えたりしていたからのう……」
僕「そんなの全く信用できないじゃないですか……!!」
爺「うむ、その通りだ。恐らく賄賂が動いていたんじゃろう」
爺「母親はやがて病気がちになり、行動する気力も無くなっていった」
僕「虐待……」
僕「父親ってお爺さんの子供ですか?」
爺「違う。ワシらの子供は母親の方だ」
爺「そしてその母親も父親に暴力を受けていたんじゃ」
僕「なんて非道い父親だ……」
僕「もちろん離婚したんですよね?」
爺「いや、何度も訴えたんじゃが離婚は認められなかった」
僕「どうしてですか!? 暴力は証拠が残るでしょう!?」
爺「あぁ。現に母親も優も身体はアザだらけじゃったよ」
爺「だが父親は暴力を一向に認めずに…」
爺「自分の家族愛の大きさだけを裁判で力説した」
爺「実際に家族旅行をしたり、プレゼントを与えたりしていたからのう……」
僕「そんなの全く信用できないじゃないですか……!!」
爺「うむ、その通りだ。恐らく賄賂が動いていたんじゃろう」
爺「母親はやがて病気がちになり、行動する気力も無くなっていった」
96: :2011/02/06(日) 07:30:55.07 ID:
僕「警察もダメだったんですか?」
爺「あぁ。いくら取り合っても無駄でのう」
僕「……父親の役職は?」
爺「一応、大手企業の平社員じゃ」
僕「それほど多額の賄賂を、平社員が賄えるはずないですよ」
僕「……恐らく裏で何者かが糸を引いていたと思います」
僕「父親にもそこまでしてDVをする理由があったはずです」
僕「わざわざ家族旅行等のカムフラージュを施すほどの理由が」
爺「…」
僕「と、ところで優の学校生活はどんな感じだったんですか?」
爺「……優は父親からは暴力を受け続け」
爺「放心状態だった母親には甘えることすらできなかったのじゃ」
爺「優は必然的に無口でネガティブな子に育った」
爺「だから学校では友達ができず、優はいつも“孤独”じゃった……」
僕「警察もダメだったんですか?」
爺「あぁ。いくら取り合っても無駄でのう」
僕「……父親の役職は?」
爺「一応、大手企業の平社員じゃ」
僕「それほど多額の賄賂を、平社員が賄えるはずないですよ」
僕「……恐らく裏で何者かが糸を引いていたと思います」
僕「父親にもそこまでしてDVをする理由があったはずです」
僕「わざわざ家族旅行等のカムフラージュを施すほどの理由が」
爺「…」
僕「と、ところで優の学校生活はどんな感じだったんですか?」
爺「……優は父親からは暴力を受け続け」
爺「放心状態だった母親には甘えることすらできなかったのじゃ」
爺「優は必然的に無口でネガティブな子に育った」
爺「だから学校では友達ができず、優はいつも“孤独”じゃった……」
97: :2011/02/06(日) 07:33:20.98 ID:
爺「ワシらに出来たことは“うんめーら”の夜の営業を廃止して」
爺「たまに遊びにくる優との時間を設けてやることぐらいじゃった」
僕「“たまに”ですか……?」
爺「父親が出張の時や、特別に許されたときぐらいじゃ……」
爺「だからワシらは……」
僕「あ、あの!」
爺「……なんじゃ?」
僕「“ワシら”って先刻から仰られてますけど……」
僕「あの、お爺さんの“奥さん”は…?」
爺「…」
爺「記録上では3年前に行方不明になっておる」
僕「えぇェエッ!? お婆さんがですか!?」
爺「あぁ。“記録上”じゃがの」
僕「それってどういう……」
爺「婆さんはずっとこの家にいるよ」
爺「紹介してやるから付いて来な」
爺「ワシらに出来たことは“うんめーら”の夜の営業を廃止して」
爺「たまに遊びにくる優との時間を設けてやることぐらいじゃった」
僕「“たまに”ですか……?」
爺「父親が出張の時や、特別に許されたときぐらいじゃ……」
爺「だからワシらは……」
僕「あ、あの!」
爺「……なんじゃ?」
僕「“ワシら”って先刻から仰られてますけど……」
僕「あの、お爺さんの“奥さん”は…?」
爺「…」
爺「記録上では3年前に行方不明になっておる」
僕「えぇェエッ!? お婆さんがですか!?」
爺「あぁ。“記録上”じゃがの」
僕「それってどういう……」
爺「婆さんはずっとこの家にいるよ」
爺「紹介してやるから付いて来な」
98: :2011/02/06(日) 07:34:54.43 ID:
僕は爺さんに付いて行った。
客間を出て、階段を上る。
2F。
爺さんは突き当たりの押入れを開けて、
奥から何かを取り出そうとしている。
この時僕はアルバムか何かを想像していた。
しかし取り出されたのは大きな箱で、
蓋を開けると砂のようなものがドッサリと詰まっていた。
そして爺さんはその中から
“はちみつ瓶”らしきモノを取り出した。
それを見て僕は口を抑えた。
瓶にはドロドロに液状化した何かが入っている。
僕は爺さんに付いて行った。
客間を出て、階段を上る。
2F。
爺さんは突き当たりの押入れを開けて、
奥から何かを取り出そうとしている。
この時僕はアルバムか何かを想像していた。
しかし取り出されたのは大きな箱で、
蓋を開けると砂のようなものがドッサリと詰まっていた。
そして爺さんはその中から
“はちみつ瓶”らしきモノを取り出した。
それを見て僕は口を抑えた。
瓶にはドロドロに液状化した何かが入っている。
100: :2011/02/06(日) 07:39:58.93 ID:
爺「コイツがワシの女房じゃ」
爺「こんな姿で申し訳ねぇが、勘弁してくれ」
僕「…あ…あ…ぁ…」ガクガク
爺「どうした?」
僕「狂ってる…」ガクガク
爺「あ?」
僕「どうして普通で居られるんですか…」ガクガク
僕「まさか…お爺さんが…」ガクガク
爺「違うわこのボケがッ!」
爺「…この瓶は3年前の8月に送られてきたんじゃ」
爺「コイツがワシの女房じゃ」
爺「こんな姿で申し訳ねぇが、勘弁してくれ」
僕「…あ…あ…ぁ…」ガクガク
爺「どうした?」
僕「狂ってる…」ガクガク
爺「あ?」
僕「どうして普通で居られるんですか…」ガクガク
僕「まさか…お爺さんが…」ガクガク
爺「違うわこのボケがッ!」
爺「…この瓶は3年前の8月に送られてきたんじゃ」
101: :2011/02/06(日) 07:42:11.55 ID:
僕「差出人は…?」
爺「あるわけないじゃろ」
爺「まあ婆さんを殺した犯人じゃろうけどな」
爺「特殊なバイオ消臭剤にこの瓶を埋めて送ってきたわい」
僕「どうして…それが…お婆さんだと分かったんですか?」
爺「今では液状化してしまってるが」
爺「当時は婆さんの『心臓』と『左手』がハッキリ分かるように封入されてて…」
爺「左手の薬指にワシが婆さんへ贈った『結婚指輪』がハメてあったからの」
爺「…ほら、今でも白骨化した左手の薬指にあるじゃろ?」
僕「…見たくないですッ」
爺「まぁワシだってこんな姿の女房をあまり見せたくないからのう」
爺「だから警察にはこの箱と瓶は見せずに」
爺「捜索願だけ出しておいたんじゃ」
爺「警察なんかに“婆さん”を見せたら“没収される”に決まってるじゃろ?」
僕「でもそれじゃ犯人を見逃すことに……」
爺「ワシは警察を信用しとらん」
僕「差出人は…?」
爺「あるわけないじゃろ」
爺「まあ婆さんを殺した犯人じゃろうけどな」
爺「特殊なバイオ消臭剤にこの瓶を埋めて送ってきたわい」
僕「どうして…それが…お婆さんだと分かったんですか?」
爺「今では液状化してしまってるが」
爺「当時は婆さんの『心臓』と『左手』がハッキリ分かるように封入されてて…」
爺「左手の薬指にワシが婆さんへ贈った『結婚指輪』がハメてあったからの」
爺「…ほら、今でも白骨化した左手の薬指にあるじゃろ?」
僕「…見たくないですッ」
爺「まぁワシだってこんな姿の女房をあまり見せたくないからのう」
爺「だから警察にはこの箱と瓶は見せずに」
爺「捜索願だけ出しておいたんじゃ」
爺「警察なんかに“婆さん”を見せたら“没収される”に決まってるじゃろ?」
僕「でもそれじゃ犯人を見逃すことに……」
爺「ワシは警察を信用しとらん」
104: :2011/02/06(日) 08:00:31.18 ID:
僕「お婆さんが最後にココを出たのはいつですか?」
爺「2007年の8月6日だよ」
爺「『ちょっと人に会ってきますね』『遅くても明日には帰るから』」
爺「『心配しないで、お爺さん』…と言い残しての」
僕「それっきり帰って来なかったんですね……」
爺「あぁ。それで夕方に△△養護学校のA先生が来て…」
僕「A先生ですか!?」
爺「知ってるのか?」
僕「えぇ、まぁ。でも何故です?」
爺「その先生が優をこの家に届けてくれたんだ」
僕「お婆さんが最後にココを出たのはいつですか?」
爺「2007年の8月6日だよ」
爺「『ちょっと人に会ってきますね』『遅くても明日には帰るから』」
爺「『心配しないで、お爺さん』…と言い残しての」
僕「それっきり帰って来なかったんですね……」
爺「あぁ。それで夕方に△△養護学校のA先生が来て…」
僕「A先生ですか!?」
爺「知ってるのか?」
僕「えぇ、まぁ。でも何故です?」
爺「その先生が優をこの家に届けてくれたんだ」
105: :2011/02/06(日) 08:01:53.27 ID:
〓〓〓〓〓〓〓〓〓 3年前 8月6日 夜 〓〓〓〓〓〓〓〓〓
先生A「私、△△養護学校のAと申します」
先生A「ご両親からこの子をコチラへ送るように頼まれて…」
爺「そうなんですか。わざわざすみません」
先生A「……優ちゃんをしばらくコチラで預かってほしいそうです」
爺「本当ですか!? やったなぁ、優!!」
爺「……ん、優? 顔色が悪いぞ?」
爺「どうしたんじゃ優!! どうして返事をしないんじゃ!?」
優「…」
先生A「あの…ご両親曰く、優ちゃんは耳が聴こえないそうなんですが…」
先生A「お爺さんはご存知なかったのですか?」
爺「……耳が聴こえない? そんなわけあるかっ」
爺「この前だってちゃんと会話できてたんだぞッ!!」
先生A「私に言われても分かりません……」
先生A「……私はただ、耳の聴こえなくなった優ちゃんをこれから」
先生A「私どもの養護学校に通わせて欲しいと頼まれただけです…」
爺「嘘じゃろ、優? 何があったんじゃ!? 優!! 優!!!」ユサユサ
優「…」
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
〓〓〓〓〓〓〓〓〓 3年前 8月6日 夜 〓〓〓〓〓〓〓〓〓
先生A「私、△△養護学校のAと申します」
先生A「ご両親からこの子をコチラへ送るように頼まれて…」
爺「そうなんですか。わざわざすみません」
先生A「……優ちゃんをしばらくコチラで預かってほしいそうです」
爺「本当ですか!? やったなぁ、優!!」
爺「……ん、優? 顔色が悪いぞ?」
爺「どうしたんじゃ優!! どうして返事をしないんじゃ!?」
優「…」
先生A「あの…ご両親曰く、優ちゃんは耳が聴こえないそうなんですが…」
先生A「お爺さんはご存知なかったのですか?」
爺「……耳が聴こえない? そんなわけあるかっ」
爺「この前だってちゃんと会話できてたんだぞッ!!」
先生A「私に言われても分かりません……」
先生A「……私はただ、耳の聴こえなくなった優ちゃんをこれから」
先生A「私どもの養護学校に通わせて欲しいと頼まれただけです…」
爺「嘘じゃろ、優? 何があったんじゃ!? 優!! 優!!!」ユサユサ
優「…」
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
106: :2011/02/06(日) 08:03:22.64 ID:
僕「そうだったんですか……」
爺「あの後、優の家に行ってみたんじゃが……」
爺「既にもぬけの殻じゃったわい」
爺「それで娘のことが心配になって」
爺「捜索願を出したってわけじゃ」
僕「あの“新聞記事”のことですね」
爺「あぁ」
僕「…それで、“お婆さん”が送られてきたのはいつなんです…?」
爺「翌朝…8月7日の朝には家の前に置いてあったよ…」
僕「そして今度はお婆さんの捜索願を出したわけですね…」
爺「そうじゃ。警察に“またお前か…”って顔されたわい」
僕「その日からずっと優と二人暮らしですか?」
爺「あぁ。……じゃけど優は…」
爺「…ショックで半年以上全く喋らなかった」
僕「そうだったんですか……」
爺「あの後、優の家に行ってみたんじゃが……」
爺「既にもぬけの殻じゃったわい」
爺「それで娘のことが心配になって」
爺「捜索願を出したってわけじゃ」
僕「あの“新聞記事”のことですね」
爺「あぁ」
僕「…それで、“お婆さん”が送られてきたのはいつなんです…?」
爺「翌朝…8月7日の朝には家の前に置いてあったよ…」
僕「そして今度はお婆さんの捜索願を出したわけですね…」
爺「そうじゃ。警察に“またお前か…”って顔されたわい」
僕「その日からずっと優と二人暮らしですか?」
爺「あぁ。……じゃけど優は…」
爺「…ショックで半年以上全く喋らなかった」
107: :2011/02/06(日) 08:06:48.58 ID:
爺「本当に辛かった……」
爺「ワシは何もしてやれなくて……」
僕「…」
爺「分かるかッ!? 自分の声すら聞こえないんじゃぞ!?」
爺「ある日突然、世界から音がゴッソリ消えてしまうんじゃ…」
爺「音を知ってる人間にとって、それがどれだけの苦痛か…」
爺「しかも両親も友達も、唯一仲の良かった婆さんも居ない…」
爺「…“孤独”なんてもんじゃねぇよ」
僕「…」
次元が違いすぎた。
勘違いにも程がある。
“孤独”は僕ごときに許される言葉じゃなかった。
爺「だからワシは精一杯の恨みを込めて“兎ラーメン”を作った」
爺「耳の聴こえない優のために、耳をアピールする“その動物”を…」
爺「何者かに騙された婆さんのために、詐欺の代名詞の“その動物”を…」
爺「行方不明になった娘のために、人を異世界へいざなう“その動物”を…」
爺「皮を剥いだ兎を塩スープでグツグツ煮込むんじゃ」
爺「本当に辛かった……」
爺「ワシは何もしてやれなくて……」
僕「…」
爺「分かるかッ!? 自分の声すら聞こえないんじゃぞ!?」
爺「ある日突然、世界から音がゴッソリ消えてしまうんじゃ…」
爺「音を知ってる人間にとって、それがどれだけの苦痛か…」
爺「しかも両親も友達も、唯一仲の良かった婆さんも居ない…」
爺「…“孤独”なんてもんじゃねぇよ」
僕「…」
次元が違いすぎた。
勘違いにも程がある。
“孤独”は僕ごときに許される言葉じゃなかった。
爺「だからワシは精一杯の恨みを込めて“兎ラーメン”を作った」
爺「耳の聴こえない優のために、耳をアピールする“その動物”を…」
爺「何者かに騙された婆さんのために、詐欺の代名詞の“その動物”を…」
爺「行方不明になった娘のために、人を異世界へいざなう“その動物”を…」
爺「皮を剥いだ兎を塩スープでグツグツ煮込むんじゃ」
108: :2011/02/06(日) 08:12:05.66 ID:
僕はようやく気づいた。
一見普通に会話ができる爺さんだが、
既に精神がボロボロであることを。
娘と孫が暴力被害。
アザができるまで。
しかし離婚失敗。
警察も役立たず。
暴力は続く。
娘、放心状態。
孫、中途失聴。
妻、殺される。
妻、肉片。
娘、行方不明。
孫、孤独。
……だが、黒幕の目星は付いた。
関係ない第三者の癖に、
爺さんすら知らない情報を
その人物は口走っていたからだ。
僕はようやく気づいた。
一見普通に会話ができる爺さんだが、
既に精神がボロボロであることを。
娘と孫が暴力被害。
アザができるまで。
しかし離婚失敗。
警察も役立たず。
暴力は続く。
娘、放心状態。
孫、中途失聴。
妻、殺される。
妻、肉片。
娘、行方不明。
孫、孤独。
……だが、黒幕の目星は付いた。
関係ない第三者の癖に、
爺さんすら知らない情報を
その人物は口走っていたからだ。
109: :2011/02/06(日) 08:15:17.32 ID:
僕「…お爺さん、こういうのはどうです?」
爺「何じゃ?」
僕「兎の代わりに、卵を入れるんですよ!」
僕「“卵”の目玉を取ったらどうなります?」
爺「白身だけ残る」
僕「その通りです」
僕「でも“卵”という漢字にも目玉がありますよ」
僕「人間と同じように2つ…」
爺「…“卯”か」
僕「そうです。いわゆる“うさぎ”のことです」
僕「来年は卯年ですしピッタリだと思いますよ」
爺「なるほどねぇ…」
僕「だから本物の兎を使うのは…もうやめませんか?」
僕「…お爺さん、こういうのはどうです?」
爺「何じゃ?」
僕「兎の代わりに、卵を入れるんですよ!」
僕「“卵”の目玉を取ったらどうなります?」
爺「白身だけ残る」
僕「その通りです」
僕「でも“卵”という漢字にも目玉がありますよ」
僕「人間と同じように2つ…」
爺「…“卯”か」
僕「そうです。いわゆる“うさぎ”のことです」
僕「来年は卯年ですしピッタリだと思いますよ」
爺「なるほどねぇ…」
僕「だから本物の兎を使うのは…もうやめませんか?」
110: :2011/02/06(日) 08:17:12.32 ID:
なにげにwktk
111: :2011/02/06(日) 08:17:53.21 ID:
爺「……じゃが“白身だけ”ってのは手間が掛るのう」
爺「それに“目玉”を取るなんてワシにはできん…」
爺「優の手前じゃ縁起が悪いじゃろ…」
僕「じゃあ目玉を取らなきゃいいだけです」
僕「ラーメンにゆで卵をのせるだけでいいんですよw」
爺「……ぷっ」
爺「ハッハッハ!」
爺「テキトーな奴めw」
僕「(*^ ^)ゞ」
僕「だからお爺さんはもう戦わなくていいんです」
僕「じっくり休んで、後は僕に任せてください」
爺「なんか少し気が楽になったよ」
爺「おめぇ頼りになるな」
僕「……初めて言われました」
爺「意外じゃな。ワシがここまで喋ったのも…」
爺「…お前に魅力があるからじゃと思うぞ」
爺「……じゃが“白身だけ”ってのは手間が掛るのう」
爺「それに“目玉”を取るなんてワシにはできん…」
爺「優の手前じゃ縁起が悪いじゃろ…」
僕「じゃあ目玉を取らなきゃいいだけです」
僕「ラーメンにゆで卵をのせるだけでいいんですよw」
爺「……ぷっ」
爺「ハッハッハ!」
爺「テキトーな奴めw」
僕「(*^ ^)ゞ」
僕「だからお爺さんはもう戦わなくていいんです」
僕「じっくり休んで、後は僕に任せてください」
爺「なんか少し気が楽になったよ」
爺「おめぇ頼りになるな」
僕「……初めて言われました」
爺「意外じゃな。ワシがここまで喋ったのも…」
爺「…お前に魅力があるからじゃと思うぞ」
112: :2011/02/06(日) 08:20:34.55 ID:
正直、ここまで自分が喋れると思わなかった。
この僕が、お爺さんといえど、2人っきりで。
≪余計なことを考えなかったから?≫
こう話したら相手がこう言って~……とか、
何を喋ったら、一番喜んでもらえるか……とか、
僕なんかが喋っても意味がない……とか。
余計なことを考えずに
真剣に相手の話を聞いて、
自分の思いのまま話したから
自然な会話になったんだろうか?
自然な会話は楽しい。
楽しいと自然に会話が続く。
この螺旋こそがリア充への階段なのかもしれない。
もちろん爺さんとの会話の内容は悲惨で許せないものだ。
だから今これに気づくのは少し不謹慎といえる。
でも、今の僕なら“奴”と戦える気がする。
正直、ここまで自分が喋れると思わなかった。
この僕が、お爺さんといえど、2人っきりで。
≪余計なことを考えなかったから?≫
こう話したら相手がこう言って~……とか、
何を喋ったら、一番喜んでもらえるか……とか、
僕なんかが喋っても意味がない……とか。
余計なことを考えずに
真剣に相手の話を聞いて、
自分の思いのまま話したから
自然な会話になったんだろうか?
自然な会話は楽しい。
楽しいと自然に会話が続く。
この螺旋こそがリア充への階段なのかもしれない。
もちろん爺さんとの会話の内容は悲惨で許せないものだ。
だから今これに気づくのは少し不謹慎といえる。
でも、今の僕なら“奴”と戦える気がする。
113: :2011/02/06(日) 08:24:19.73 ID:
■只今の時刻PM7:00 - 天気:大雪■
僕「もう7時か…そろそろお暇します」
爺「おい、外は大雪だぞ。金曜だし泊まっていきな」
僕「いいんですか? …あ、でも優に聞いてみないと……」
爺「…そうか。優も大歓迎じゃと思うが」
■優の部屋(ドア前)■
コンコン…。
あ、ノックは意味ないか。
携帯…。
いや、家では充電中かも…。
…ふぅ…。
ごめん、優!
ガチャッ。
■只今の時刻PM7:00 - 天気:大雪■
僕「もう7時か…そろそろお暇します」
爺「おい、外は大雪だぞ。金曜だし泊まっていきな」
僕「いいんですか? …あ、でも優に聞いてみないと……」
爺「…そうか。優も大歓迎じゃと思うが」
■優の部屋(ドア前)■
コンコン…。
あ、ノックは意味ないか。
携帯…。
いや、家では充電中かも…。
…ふぅ…。
ごめん、優!
ガチャッ。
114: :2011/02/06(日) 08:27:37.61 ID:
女「zZZ…」
着替えてるパターンかと思ったが、
優は布団でスヤスヤと昼寝をしていた。
ほぼ等身大の抱き枕を抱きしめて。
抱き枕は少し湿っていた。
そっか、僕が爺さんとばかり喋ってたから…。
ごめんね…優。
僕は慣れない手付きで彼女の頭を撫でた。
愛情を込めて、何度も何度も。
しばらくすると
彼女は少し目を開けて、
また何も言わずに目を閉じた。
幸せな夢でも見てるのだろうか?
彼女は少し嬉しそうだ。
女「zZZ…」
着替えてるパターンかと思ったが、
優は布団でスヤスヤと昼寝をしていた。
ほぼ等身大の抱き枕を抱きしめて。
抱き枕は少し湿っていた。
そっか、僕が爺さんとばかり喋ってたから…。
ごめんね…優。
僕は慣れない手付きで彼女の頭を撫でた。
愛情を込めて、何度も何度も。
しばらくすると
彼女は少し目を開けて、
また何も言わずに目を閉じた。
幸せな夢でも見てるのだろうか?
彼女は少し嬉しそうだ。
126: :2011/02/06(日) 11:42:42.61 ID:
部屋を見渡してみる。
綺麗に片付けてある机。
ぬいぐるみは10体以上。
優と爺さんと…多分婆さんの3人の写真。
もはやインテリアと化したオーディオコンポ。
ラックには数十枚くらいCDがある。
もしかして音楽好きだったのか?
確かに音楽は孤独を紛らわせてくれるけど……。
だとしたら……悲しすぎる…。
……おっと、お目覚めのようだ。
部屋を見渡してみる。
綺麗に片付けてある机。
ぬいぐるみは10体以上。
優と爺さんと…多分婆さんの3人の写真。
もはやインテリアと化したオーディオコンポ。
ラックには数十枚くらいCDがある。
もしかして音楽好きだったのか?
確かに音楽は孤独を紛らわせてくれるけど……。
だとしたら……悲しすぎる…。
……おっと、お目覚めのようだ。
127: :2011/02/06(日) 11:43:51.10 ID:
彼女はニコリと微笑んだ。
僕もそれに応じたが、胸が苦しかった。
どうして君は、笑うことができるの。
10人中9人は自殺するような境遇で。
その強さの糧は一体何なんだ。
教えてくれよ…。
悲壮感が込み上げ、
僕は彼女を抱きしめた。
涙を見せないように。
彼女は僕を心配し、
背中をさすって慰めてくれた。
泣きたいのは彼女の方なのに。
僕が泣いてどうすんだ…。
僕が励まされてどうすんだ…。
彼女はニコリと微笑んだ。
僕もそれに応じたが、胸が苦しかった。
どうして君は、笑うことができるの。
10人中9人は自殺するような境遇で。
その強さの糧は一体何なんだ。
教えてくれよ…。
悲壮感が込み上げ、
僕は彼女を抱きしめた。
涙を見せないように。
彼女は僕を心配し、
背中をさすって慰めてくれた。
泣きたいのは彼女の方なのに。
僕が泣いてどうすんだ…。
僕が励まされてどうすんだ…。
128: :2011/02/06(日) 11:44:26.14 ID:
>>56の名前が消防のときの友人と同じなんだがまさかな…
129: :2011/02/06(日) 11:46:13.75 ID:
涙を腕で拭って、彼女の肩に手を置く。
「もう大丈夫」、と笑顔を見せた。
そしてメールを送信する。
僕〒≪明日、デートしよっか!≫
女〒≪うん!≫
彼女は満面の笑顔をみせる。
僕〒≪行きたいところある?≫
女〒≪ゆーくんに任せるよ≫
僕〒≪そっか。じゃあ任しといて≫
女〒≪やったー! 楽しみだなぁ~≫
女〒≪今夜はもう遅いし、泊まってってよ≫
僕〒≪ほんと? じゃあお言葉に甘えるよw≫
女〒≪一緒にお風呂入ろっか≫
僕「え…ええぇえあ、え!?」
女〒≪冗談だよw ゆーくん可愛いなぁ~≫
優は笑っていた。なんて強い女の子なんだろう。
涙を腕で拭って、彼女の肩に手を置く。
「もう大丈夫」、と笑顔を見せた。
そしてメールを送信する。
僕〒≪明日、デートしよっか!≫
女〒≪うん!≫
彼女は満面の笑顔をみせる。
僕〒≪行きたいところある?≫
女〒≪ゆーくんに任せるよ≫
僕〒≪そっか。じゃあ任しといて≫
女〒≪やったー! 楽しみだなぁ~≫
女〒≪今夜はもう遅いし、泊まってってよ≫
僕〒≪ほんと? じゃあお言葉に甘えるよw≫
女〒≪一緒にお風呂入ろっか≫
僕「え…ええぇえあ、え!?」
女〒≪冗談だよw ゆーくん可愛いなぁ~≫
優は笑っていた。なんて強い女の子なんだろう。
130: :2011/02/06(日) 11:47:59.65 ID:
僕〒≪明るくなったね、優≫
僕〒≪今朝は無理をしてる感じだったけど≫
僕〒≪今じゃ自然な明るさを感じるよ≫
女〒≪凄いね。…違い、分かるんだ…≫
女〒≪私もゆーくんが初めての友達で…≫
女〒≪最初は“引き止める”ことばかり考えてたの≫
僕〒≪その気持ち、凄く分かる≫
女〒≪でもゆーくんが抱きしめてくれて…≫
女〒≪“傍にいる”って言ってくれて…≫
女〒≪もう、無理しなくていいんだ…って≫
僕〒≪明るくなったね、優≫
僕〒≪今朝は無理をしてる感じだったけど≫
僕〒≪今じゃ自然な明るさを感じるよ≫
女〒≪凄いね。…違い、分かるんだ…≫
女〒≪私もゆーくんが初めての友達で…≫
女〒≪最初は“引き止める”ことばかり考えてたの≫
僕〒≪その気持ち、凄く分かる≫
女〒≪でもゆーくんが抱きしめてくれて…≫
女〒≪“傍にいる”って言ってくれて…≫
女〒≪もう、無理しなくていいんだ…って≫
131: :2011/02/06(日) 11:49:03.55 ID:
僕〒≪優は本当に強いね≫
僕〒≪並の人間じゃ、優みたく真っ直ぐ生きられないよ≫
僕〒≪…優が苦境でも頑張れるその理由、知りたいな≫
女〒≪…明日を信じてるからだよ≫
女〒≪今日頑張れば、明日は良い日になるって信じてるから≫
女〒≪明日は仲の良かったお婆ちゃんが帰ってくるかもしれない…≫
女〒≪明日は元気になったお母さんが戻ってくるかもしれない≫
女〒≪明日は養護学校で皆が笑ってくれるかもしれない…≫
女〒≪明日は素敵な出会いがあるかもしれない…≫
女〒≪…そう信じてるから、今日を頑張れるの≫
女〒≪明日には何度も裏切られたげど、≫
女〒≪明日がある限り、私は信じ続けるよ…≫
……馬鹿。そんなこと、普通できるかよ。
お前はどんだけポジティブ思考なんだ……。
それに、優は婆さんが死んだことを知らないみたいだ。
これだけは、真実を知らない方がいい…な。
僕〒≪優は本当に強いね≫
僕〒≪並の人間じゃ、優みたく真っ直ぐ生きられないよ≫
僕〒≪…優が苦境でも頑張れるその理由、知りたいな≫
女〒≪…明日を信じてるからだよ≫
女〒≪今日頑張れば、明日は良い日になるって信じてるから≫
女〒≪明日は仲の良かったお婆ちゃんが帰ってくるかもしれない…≫
女〒≪明日は元気になったお母さんが戻ってくるかもしれない≫
女〒≪明日は養護学校で皆が笑ってくれるかもしれない…≫
女〒≪明日は素敵な出会いがあるかもしれない…≫
女〒≪…そう信じてるから、今日を頑張れるの≫
女〒≪明日には何度も裏切られたげど、≫
女〒≪明日がある限り、私は信じ続けるよ…≫
……馬鹿。そんなこと、普通できるかよ。
お前はどんだけポジティブ思考なんだ……。
それに、優は婆さんが死んだことを知らないみたいだ。
これだけは、真実を知らない方がいい…な。
132: :2011/02/06(日) 11:50:26.81 ID:
僕〒≪一緒にお風呂入ろっか≫
女「!」
彼女は顔を赤らめて、僕を叩いた。
さっきは自分が誘った癖になw
女〒≪さっきのは冗談ッ!≫
僕〒≪えへへ。良い反応ゲットw さっきのお返しだw(∀)w≫
僕〒≪…でも、隣で寝るのはいいかな?≫
女〒≪もうッ! それも嘘でしょ!?≫
僕〒≪いや、これはホント≫
彼女は僕をじぃ~っと疑う。
女〒≪…何もしない?(-ω- )≫
僕〒≪うん≫
女〒≪…じゃあ、いいよ。私もゆーくんと1秒でも長く居たいからねっ≫
僕〒≪ヤターーーヾ(*ΦωΦ)ノ!!≫
女〒≪…目から理性が感じられないんだけど…≫
僕〒≪一緒にお風呂入ろっか≫
女「!」
彼女は顔を赤らめて、僕を叩いた。
さっきは自分が誘った癖になw
女〒≪さっきのは冗談ッ!≫
僕〒≪えへへ。良い反応ゲットw さっきのお返しだw(∀)w≫
僕〒≪…でも、隣で寝るのはいいかな?≫
女〒≪もうッ! それも嘘でしょ!?≫
僕〒≪いや、これはホント≫
彼女は僕をじぃ~っと疑う。
女〒≪…何もしない?(-ω- )≫
僕〒≪うん≫
女〒≪…じゃあ、いいよ。私もゆーくんと1秒でも長く居たいからねっ≫
僕〒≪ヤターーーヾ(*ΦωΦ)ノ!!≫
女〒≪…目から理性が感じられないんだけど…≫
133: :2011/02/06(日) 11:51:11.38 ID:
■PM8:00■
あれから3人で夜ご飯を食べた。
いつもは優が作るらしいが、
今日は僕がいたから、
買い物に行けなかったらしい。
だから僕が明日のデート帰りに
一緒に買い物しよう、と提案すると、
優は目をキラキラさせて喜んだ。
どーやらそれが長年の夢だったらしい。
その材料で
優の手料理を食べたいとメールすると、
今度は目をウルウルさせて喜んだ。
『絶対おいしいの作るねッ』と、燃えていた。
食卓は、音に関してはそんなに賑やかではなかったが、
3人の心の中では、大盛況パーティーそのものだった。
爺さんも『メール、頑張って覚えてみるかのう…』とか言ってた。
今夜はその爺さんが作った塩ラーメン。
麺も素晴らしかったが、スープが最高においしかった。
■PM8:00■
あれから3人で夜ご飯を食べた。
いつもは優が作るらしいが、
今日は僕がいたから、
買い物に行けなかったらしい。
だから僕が明日のデート帰りに
一緒に買い物しよう、と提案すると、
優は目をキラキラさせて喜んだ。
どーやらそれが長年の夢だったらしい。
その材料で
優の手料理を食べたいとメールすると、
今度は目をウルウルさせて喜んだ。
『絶対おいしいの作るねッ』と、燃えていた。
食卓は、音に関してはそんなに賑やかではなかったが、
3人の心の中では、大盛況パーティーそのものだった。
爺さんも『メール、頑張って覚えてみるかのう…』とか言ってた。
今夜はその爺さんが作った塩ラーメン。
麺も素晴らしかったが、スープが最高においしかった。
134: :2011/02/06(日) 11:53:41.27 ID:
■PM9:00■
風呂から上がって3人でトランプをした。
トランプは耳が聴こえなくても十分楽しめる。
爺さんは意外にも多種類のトランプゲームを熟知していた。
昔から優と一緒にトランプをしていたらしい。
僕らは2時間近くゲームに熱中した。
自然な笑い、自然な驚き、自然な悔しさ。
ゲームは余計なことを忘れさせてくれる。
だから、盛り上がるのかもしれない。
楽しいは作るものではなく、生まれるもの。
トランプ大会は大成功に終わった。
優の性格は明るいが、あまり発言をしたがらない。
恐らく自分の声が聴こえないのが不安だからだろう。
だから僕のメールにメールで返事をするのだ。
……そんな優が不安定な声でこう言った。
「今度はお婆ちゃんとお母さんも一緒にできたらいいねッ!!」
爺さんは笑顔で頷いた。
■PM9:00■
風呂から上がって3人でトランプをした。
トランプは耳が聴こえなくても十分楽しめる。
爺さんは意外にも多種類のトランプゲームを熟知していた。
昔から優と一緒にトランプをしていたらしい。
僕らは2時間近くゲームに熱中した。
自然な笑い、自然な驚き、自然な悔しさ。
ゲームは余計なことを忘れさせてくれる。
だから、盛り上がるのかもしれない。
楽しいは作るものではなく、生まれるもの。
トランプ大会は大成功に終わった。
優の性格は明るいが、あまり発言をしたがらない。
恐らく自分の声が聴こえないのが不安だからだろう。
だから僕のメールにメールで返事をするのだ。
……そんな優が不安定な声でこう言った。
「今度はお婆ちゃんとお母さんも一緒にできたらいいねッ!!」
爺さんは笑顔で頷いた。
135: :2011/02/06(日) 11:55:21.83 ID:
■PM11:00■
母さんにメールしなきゃ。
『今日は友達の家に泊まります』、と。
そして、すぐ返信が来た。
『友達と遊ぶのってめずらしいね』
『お母さん寂しいけど、嬉しいよ』
『またその子のお話聴かせてね』
いつも母さんのメールは流し読みしてたけど、
いつも僕のことを心配してくれてたんだな、と思った。
今までの母さんのメール、消しちゃってごめん…。
でも、このメールは一生大事にするよ。
『いつもありがとう』と、照れくさいが返信した。
■PM11:00■
母さんにメールしなきゃ。
『今日は友達の家に泊まります』、と。
そして、すぐ返信が来た。
『友達と遊ぶのってめずらしいね』
『お母さん寂しいけど、嬉しいよ』
『またその子のお話聴かせてね』
いつも母さんのメールは流し読みしてたけど、
いつも僕のことを心配してくれてたんだな、と思った。
今までの母さんのメール、消しちゃってごめん…。
でも、このメールは一生大事にするよ。
『いつもありがとう』と、照れくさいが返信した。
136: :2011/02/06(日) 11:56:28.07 ID:
受信メールボックスを開くと、
母さんの今のメールが一通。
そして、残りのメールは全て、優のものだった。
≪…僕と優の“会話”は記録に残ってるんだ…≫
いつでも優の言葉を“再生”できる。
過去の言葉に返事をすることもできる。
アルバムのように2人で楽しむこともできる。
……さぁ、そろそろ優の部屋へ行くか。
■優の部屋(ドア前)■
僕〒≪コンコン♪≫
優〒≪どーぞ♪≫
ガチャ。
受信メールボックスを開くと、
母さんの今のメールが一通。
そして、残りのメールは全て、優のものだった。
≪…僕と優の“会話”は記録に残ってるんだ…≫
いつでも優の言葉を“再生”できる。
過去の言葉に返事をすることもできる。
アルバムのように2人で楽しむこともできる。
……さぁ、そろそろ優の部屋へ行くか。
■優の部屋(ドア前)■
僕〒≪コンコン♪≫
優〒≪どーぞ♪≫
ガチャ。
137: :2011/02/06(日) 12:00:13.62 ID:
僕「あれ、布団が1枚しかない…」
女「?」
僕〒≪布団が1枚しかないけど…?≫
女〒≪…うん…布団これ以上無かった≫
女〒≪もしかしたら2階の押入れにあるかもしれないけど≫
女〒≪あそこはお爺ちゃんに近づくなって言われてるから…≫
女〒≪……この布団で一緒に寝よっか≫
僕〒≪えっ、いいの?≫
女〒≪うん。さっき何もしないって約束してくれたしね♪≫
僕〒≪ははw もちろん分かってるよ≫
僕「あれ、布団が1枚しかない…」
女「?」
僕〒≪布団が1枚しかないけど…?≫
女〒≪…うん…布団これ以上無かった≫
女〒≪もしかしたら2階の押入れにあるかもしれないけど≫
女〒≪あそこはお爺ちゃんに近づくなって言われてるから…≫
女〒≪……この布団で一緒に寝よっか≫
僕〒≪えっ、いいの?≫
女〒≪うん。さっき何もしないって約束してくれたしね♪≫
僕〒≪ははw もちろん分かってるよ≫
138: :2011/02/06(日) 12:01:05.35 ID:
僕は優と布団に入った。
流石にちょっと狭いけど、どうでもいい。
優は一つしかない枕を譲るかわりに、
僕の腕枕で寝たいと甘えてきた。
◆おやすみ◆
今日は最高の一日だった。
優と出会えて幸せだ。
これからよろしくね。
大好きだよ、優。
◆Re:おやすみ◆
私もゆーくんと出会えて幸せ。
幸せすぎてちょっぴり怖いよw
生きてて本当に良かった。
ありがと、ゆーくん。
大好き。
僕は優と布団に入った。
流石にちょっと狭いけど、どうでもいい。
優は一つしかない枕を譲るかわりに、
僕の腕枕で寝たいと甘えてきた。
◆おやすみ◆
今日は最高の一日だった。
優と出会えて幸せだ。
これからよろしくね。
大好きだよ、優。
◆Re:おやすみ◆
私もゆーくんと出会えて幸せ。
幸せすぎてちょっぴり怖いよw
生きてて本当に良かった。
ありがと、ゆーくん。
大好き。
139: :2011/02/06(日) 12:02:07.99 ID:
優はケータイを充電器に戻し、
部屋の電気を薄暗いオレンジ色にした。
そして優は僕の腕枕に横になった。
僕は軽く抱きしめる。
優は本当に幸せそうだった。
彼女が寝たのを確認して、
僕も目を閉じ、眠りについた。
優はケータイを充電器に戻し、
部屋の電気を薄暗いオレンジ色にした。
そして優は僕の腕枕に横になった。
僕は軽く抱きしめる。
優は本当に幸せそうだった。
彼女が寝たのを確認して、
僕も目を閉じ、眠りについた。
140: :2011/02/06(日) 12:03:24.62 ID:
■12月18日(土) - 天気:晴れ■
天気は良いが、雪はまだ薄く積もっている。
今日は優との初デートに出かけた。
最初は僕の大学へ。
優は初めて入る大学に、興味深々だった。
休日だが、ちらほらサークルが活動している。
その中に同じ学科のYがいた。
Y「あれ、お前…根本だよな」
僕「うん。同じ学科だよな」
Y「お前、彼女いるんだ。すんげぇ可愛いなw」
僕「昨日出来たんだよ」
Y「マジかよ。死ねよぉ」
僕「超幸せ。んじゃ、デート中っすからw」
Y「今度写メ送れよな」
■12月18日(土) - 天気:晴れ■
天気は良いが、雪はまだ薄く積もっている。
今日は優との初デートに出かけた。
最初は僕の大学へ。
優は初めて入る大学に、興味深々だった。
休日だが、ちらほらサークルが活動している。
その中に同じ学科のYがいた。
Y「あれ、お前…根本だよな」
僕「うん。同じ学科だよな」
Y「お前、彼女いるんだ。すんげぇ可愛いなw」
僕「昨日出来たんだよ」
Y「マジかよ。死ねよぉ」
僕「超幸せ。んじゃ、デート中っすからw」
Y「今度写メ送れよな」
141: :2011/02/06(日) 12:04:37.33 ID:
女〒≪いまの人、友達?≫
僕〒≪違うよ。初めて喋った≫
女〒≪へぇ。何て言ってたの?≫
僕〒≪優が可愛いだって≫
女〒≪え…お爺ちゃん以外に初めて言われた≫
僕〒≪僕も言ったよ≫
女〒≪絶対、言ってないッ!≫
僕〒≪そうだっけ?≫
彼女はポカッと僕を叩いた。
少しふくれた顔の彼女に、
お詫びにお菓子を奢ると約束する。
女〒≪いまの人、友達?≫
僕〒≪違うよ。初めて喋った≫
女〒≪へぇ。何て言ってたの?≫
僕〒≪優が可愛いだって≫
女〒≪え…お爺ちゃん以外に初めて言われた≫
僕〒≪僕も言ったよ≫
女〒≪絶対、言ってないッ!≫
僕〒≪そうだっけ?≫
彼女はポカッと僕を叩いた。
少しふくれた顔の彼女に、
お詫びにお菓子を奢ると約束する。
142: :2011/02/06(日) 12:05:43.59 ID:
大学を出て、近くのケーキ屋に行く。
シュークリームとクレープを買って、
噴水の前のベンチで食べた。
彼女はクレープを食べるのが初めてらしい。
目を丸くして、喜んだ。
あまりにも美味しそうに食べるから、
僕のクレープを半分あげた。
それもペロリと完食。
続けてシュークリームもペロリ。
身体を揺らすほど美味しかったみたいだ。
口周りについたクリームを拭いてやると
彼女は顔を赤くしてショボーンとなった。
それを見て、僕が笑う。
噴水の前で写メをとり、ショッピングモールへ。
大学を出て、近くのケーキ屋に行く。
シュークリームとクレープを買って、
噴水の前のベンチで食べた。
彼女はクレープを食べるのが初めてらしい。
目を丸くして、喜んだ。
あまりにも美味しそうに食べるから、
僕のクレープを半分あげた。
それもペロリと完食。
続けてシュークリームもペロリ。
身体を揺らすほど美味しかったみたいだ。
口周りについたクリームを拭いてやると
彼女は顔を赤くしてショボーンとなった。
それを見て、僕が笑う。
噴水の前で写メをとり、ショッピングモールへ。
143: :2011/02/06(日) 12:06:34.84 ID:
このショッピングモールには、
クロージングストアが結構入っている。
彼女はセンスのない僕に、
一生懸命選んでくれた。
1時間半も服を選ぶなんて僕には考えられない…。
それに服ごときに2万2000円も使ってしまうなんて…。
財布残金は2万6000円。
僕は詳しくないから分からないけど、
彼女は僕の服に満足してるようだ。
まあ、いい買い物だったのかな?
お昼をモール内のイタリアンで済ませ、
僕らは次の場所へ。
このショッピングモールには、
クロージングストアが結構入っている。
彼女はセンスのない僕に、
一生懸命選んでくれた。
1時間半も服を選ぶなんて僕には考えられない…。
それに服ごときに2万2000円も使ってしまうなんて…。
財布残金は2万6000円。
僕は詳しくないから分からないけど、
彼女は僕の服に満足してるようだ。
まあ、いい買い物だったのかな?
お昼をモール内のイタリアンで済ませ、
僕らは次の場所へ。
144: :2011/02/06(日) 12:07:37.23 ID:
ビリヤード。
ゲームセンター。
ペットショップ。
ネタ雑貨ストア。
彼女はどこに行っても新鮮な反応を見せる。
一秒一秒が楽しそうで、笑顔が絶えない。
僕も心の底から彼女とのデートを楽しんだ。
楽しい時間はあっという間に流れ、
街のクリスマス雰囲気を味わいつつ、
僕らは帰路についた。
そして途中、地元のスーパーへ立ち寄る。
女〒≪ゆーくんは何が食べたい?≫
僕〒≪優の一番得意な料理が食べたいな♪≫
女〒≪う~ん…肉じゃがだけど、ちょっと地味かな…?≫
僕〒≪そんなことないよ! 肉じゃが大好きo(≧▽≦)o≫
女〒≪ほんと!? じゃあ肉じゃがに決定~ッ♪≫
ビリヤード。
ゲームセンター。
ペットショップ。
ネタ雑貨ストア。
彼女はどこに行っても新鮮な反応を見せる。
一秒一秒が楽しそうで、笑顔が絶えない。
僕も心の底から彼女とのデートを楽しんだ。
楽しい時間はあっという間に流れ、
街のクリスマス雰囲気を味わいつつ、
僕らは帰路についた。
そして途中、地元のスーパーへ立ち寄る。
女〒≪ゆーくんは何が食べたい?≫
僕〒≪優の一番得意な料理が食べたいな♪≫
女〒≪う~ん…肉じゃがだけど、ちょっと地味かな…?≫
僕〒≪そんなことないよ! 肉じゃが大好きo(≧▽≦)o≫
女〒≪ほんと!? じゃあ肉じゃがに決定~ッ♪≫
145: :2011/02/06(日) 12:08:29.77 ID:
■12月18日(土) - PM6:00 - 木下家■
トントントン…と料理する優の背中。
幸せだなぁ、と染み染み感じる。
爺さんも、今日は3人も客が来たと喜んでいた。
早く40年も続いた人気店に戻れるといいな。
そしたら兎ラーメンで居なくなった常連もきっと戻ってくるよ。
食卓に、白米、味噌汁、焼き魚、そして肉じゃがが並ぶ。
女「召し上がれ~」
僕「いただきまーす♪」
んんッ…うまい…うまい…!!
箸が止まらない。
僕「最高だよッ!! 優!!」
女「(〃⌒ー⌒〃)」
彼女は照れ笑いを見せた。
僕「おかわりッ!!」
■12月18日(土) - PM6:00 - 木下家■
トントントン…と料理する優の背中。
幸せだなぁ、と染み染み感じる。
爺さんも、今日は3人も客が来たと喜んでいた。
早く40年も続いた人気店に戻れるといいな。
そしたら兎ラーメンで居なくなった常連もきっと戻ってくるよ。
食卓に、白米、味噌汁、焼き魚、そして肉じゃがが並ぶ。
女「召し上がれ~」
僕「いただきまーす♪」
んんッ…うまい…うまい…!!
箸が止まらない。
僕「最高だよッ!! 優!!」
女「(〃⌒ー⌒〃)」
彼女は照れ笑いを見せた。
僕「おかわりッ!!」
147: :2011/02/06(日) 12:09:46.66 ID:
■PM8:00■
女〒≪今日は本当に楽しかったよ♪≫
僕〒≪僕も。それに優の肉じゃが、本当に美味しかった!≫
女〒≪良かったぁ~。嬉しいな。また食べてくれる?≫
僕〒≪もちろん。じゃあ…そろそろ帰るね≫
女〒≪本当に泊まっていかないの…?(´・ω・`)≫
僕〒≪うん。でも、ケータイさえあれば会話はできるよ≫
女〒≪……そうだね。今度はいつ会えるかな?≫
僕〒≪大学があるから…次の金曜日かな≫
女〒≪寂しいな…≫
僕〒≪じゃあ今度は二泊していい?≫
彼女は笑顔が戻り、明るくなった。
女〒≪うん!! 楽しみにしてる!≫
■PM8:00■
女〒≪今日は本当に楽しかったよ♪≫
僕〒≪僕も。それに優の肉じゃが、本当に美味しかった!≫
女〒≪良かったぁ~。嬉しいな。また食べてくれる?≫
僕〒≪もちろん。じゃあ…そろそろ帰るね≫
女〒≪本当に泊まっていかないの…?(´・ω・`)≫
僕〒≪うん。でも、ケータイさえあれば会話はできるよ≫
女〒≪……そうだね。今度はいつ会えるかな?≫
僕〒≪大学があるから…次の金曜日かな≫
女〒≪寂しいな…≫
僕〒≪じゃあ今度は二泊していい?≫
彼女は笑顔が戻り、明るくなった。
女〒≪うん!! 楽しみにしてる!≫
149: :2011/02/06(日) 12:23:44.82 ID:
優ちゃんカワユス
151: :2011/02/06(日) 13:00:48.24 ID:
ココに来て、僕は変わった。
コミュニケーションの大切さを本当の意味で理解した。
『何かを探す旅』は大成功に終わったのだ。
僕は帰り道、古い神社の前を通り過ぎる。
すると、どこからか声が聞こえた。
≪何かを見つけたみたいだな≫
僕「え…?」
≪ではどうするべきか、分かるだろう?≫
僕「だ、誰ですか!」
≪お前に『コレ』を授ける≫
僕「『コレ』…って?」
≪『ソレ』をどう使うかは自分で考えろ≫
僕「…『コンナモノ』、信じられない!!」
≪『ソレ』を“信じるか”、“信じないか”は、お前次第だ≫
ココに来て、僕は変わった。
コミュニケーションの大切さを本当の意味で理解した。
『何かを探す旅』は大成功に終わったのだ。
僕は帰り道、古い神社の前を通り過ぎる。
すると、どこからか声が聞こえた。
≪何かを見つけたみたいだな≫
僕「え…?」
≪ではどうするべきか、分かるだろう?≫
僕「だ、誰ですか!」
≪お前に『コレ』を授ける≫
僕「『コレ』…って?」
≪『ソレ』をどう使うかは自分で考えろ≫
僕「…『コンナモノ』、信じられない!!」
≪『ソレ』を“信じるか”、“信じないか”は、お前次第だ≫
152: :2011/02/06(日) 13:01:40.09 ID:
どんどんアチャーになっていく・・・
153: :2011/02/06(日) 13:02:54.34 ID:
……今のって神の声ってやつか?
『コンナモノ』を信じるとか、ふざけてんのか!!
僕は絶対に信じないからな。
クソッ……。
■PM11:00■
僕が家に帰ると、母さんが迎えてくれた。
「ただいま」と言ったことが嬉しかったみたいだ。
「今まで心配掛けてごめん」と謝る。
母さんは素直になった息子の前で、
声をあげて泣き出した。
前の僕は家族に挨拶などしなかった…。
家族揃っての食卓でも、何も喋らなかった…。
食べ終わると、すぐに自分の部屋に閉じこもってた…。
でもこれからは違う。
……今のって神の声ってやつか?
『コンナモノ』を信じるとか、ふざけてんのか!!
僕は絶対に信じないからな。
クソッ……。
■PM11:00■
僕が家に帰ると、母さんが迎えてくれた。
「ただいま」と言ったことが嬉しかったみたいだ。
「今まで心配掛けてごめん」と謝る。
母さんは素直になった息子の前で、
声をあげて泣き出した。
前の僕は家族に挨拶などしなかった…。
家族揃っての食卓でも、何も喋らなかった…。
食べ終わると、すぐに自分の部屋に閉じこもってた…。
でもこれからは違う。
154: :2011/02/06(日) 13:03:41.35 ID:
■12月20日(月)■
大学で僕は積極的に人と関わろうとした。
最初は、「え? 何いきなり…」
みたいな反応だったが、気にしない。
2年間の溝がそう簡単に埋まるはずないけど、
火曜日も水曜日も、僕は自分をハッキリ出した。
無理をせず、思ったことを話す。
やがて、向こうも自然に接してくれるようになり、
学校生活が苦ではなくなってきた。
別にリアルでオタ扱いされても構わない。
楽しけりゃ何だって良いや。
オタクでも明るければリア充だ。
最近はそーいう奴も増えてるんだ。
■12月20日(月)■
大学で僕は積極的に人と関わろうとした。
最初は、「え? 何いきなり…」
みたいな反応だったが、気にしない。
2年間の溝がそう簡単に埋まるはずないけど、
火曜日も水曜日も、僕は自分をハッキリ出した。
無理をせず、思ったことを話す。
やがて、向こうも自然に接してくれるようになり、
学校生活が苦ではなくなってきた。
別にリアルでオタ扱いされても構わない。
楽しけりゃ何だって良いや。
オタクでも明るければリア充だ。
最近はそーいう奴も増えてるんだ。
155: :2011/02/06(日) 13:04:31.55 ID:
■12月23日(木) - 休日■
学校は昨日で冬休みに入った。
今日は祝日で休みらしい。
すっかり忘れてた。
優とどこかへ遊びに行こうとメールしたが、
≪もうお店を手伝う約束しちゃったよ~ヽ(*`д´*)/≫
と、怒った感じで返信がある。
まぁ、楽しみは明日にとっておこう。
……だから今日は“奴”に電話をすることにした。
深呼吸して、受話器を取り上げる。
そして奴の自宅へ電話する。
Prrrrrrrrrr....Prrrrrrrrrrr
先生A℡≪はい、もしもし≫
僕℡≪こんにちは、木下優の友人の、根本です≫
■12月23日(木) - 休日■
学校は昨日で冬休みに入った。
今日は祝日で休みらしい。
すっかり忘れてた。
優とどこかへ遊びに行こうとメールしたが、
≪もうお店を手伝う約束しちゃったよ~ヽ(*`д´*)/≫
と、怒った感じで返信がある。
まぁ、楽しみは明日にとっておこう。
……だから今日は“奴”に電話をすることにした。
深呼吸して、受話器を取り上げる。
そして奴の自宅へ電話する。
Prrrrrrrrrr....Prrrrrrrrrrr
先生A℡≪はい、もしもし≫
僕℡≪こんにちは、木下優の友人の、根本です≫
156: :2011/02/06(日) 13:05:20.50 ID:
先生A℡≪あら、あの時の。電話番号差し上げてましたっけ?≫
僕℡≪いえ、すみません。B先生からお聞きしました≫
先生A℡≪…そうなの。それで何の御用かしら?≫
僕℡≪先生が仰った“事件”のことをお聞きしたくて≫
僕℡≪あの時は聞きそびれてしまったので…≫
先生A℡≪…≫
僕℡≪とぼけるのはダメですよ?≫
先生A℡≪…いいわよ。明日の夜6時、学校に来てくれる?≫
先生A℡≪特別に教えてあげるわ≫
僕℡≪ありがとうございます≫
先生A℡≪あなただけ、特別に教えてあげるんだから≫
先生A℡≪一人で来てくれるわよね?≫
僕℡≪……分かりました。では失礼します…≫ガチャ
先生A℡≪あら、あの時の。電話番号差し上げてましたっけ?≫
僕℡≪いえ、すみません。B先生からお聞きしました≫
先生A℡≪…そうなの。それで何の御用かしら?≫
僕℡≪先生が仰った“事件”のことをお聞きしたくて≫
僕℡≪あの時は聞きそびれてしまったので…≫
先生A℡≪…≫
僕℡≪とぼけるのはダメですよ?≫
先生A℡≪…いいわよ。明日の夜6時、学校に来てくれる?≫
先生A℡≪特別に教えてあげるわ≫
僕℡≪ありがとうございます≫
先生A℡≪あなただけ、特別に教えてあげるんだから≫
先生A℡≪一人で来てくれるわよね?≫
僕℡≪……分かりました。では失礼します…≫ガチャ
157: :2011/02/06(日) 13:06:34.33 ID:
僕「怪しすぎる…」
僕「でも、行くしかない…」
僕の作戦はこうだ。
『R-09HR(>>40)』には“レコード機能”がある。
実は音楽を聴くより、こっちがメインの機能なんだが…
とにかく、24bit/96kHzという最高音質で録音できるのだ。
奴から“事件”の真相を引き出し、
それを録音して、警察へ突き出す。
警察は相手にしてくれないかもしれない。
……それでもやってやるんだ。
僕「怪しすぎる…」
僕「でも、行くしかない…」
僕の作戦はこうだ。
『R-09HR(>>40)』には“レコード機能”がある。
実は音楽を聴くより、こっちがメインの機能なんだが…
とにかく、24bit/96kHzという最高音質で録音できるのだ。
奴から“事件”の真相を引き出し、
それを録音して、警察へ突き出す。
警察は相手にしてくれないかもしれない。
……それでもやってやるんだ。
158: :2011/02/06(日) 13:07:38.29 ID:
■12月24日(金) - PM6:00 - 養護学校、校庭■
先生A「……1人で来たみたいね」
僕「えぇ。クリスマス会の方は大丈夫なんですか?」
先生A「大丈夫よ。クリスマス会は中止にしたから……」
僕「……え?」
僕「生徒達は教室に集まってるじゃないですか」
先生A「ふふっ。“先生達には”、“中止”と伝えたのよ」
僕「……じゃあ優は来てるんですね!?」
先生A「えぇ、教室の奥に縛られてるのが見えるかしら?」
僕「…何ッ…!?」
優は教室でロープに縛られ気絶していた。
僕「クソッ!! やはりお前が優から音を奪った犯人か!!」
■12月24日(金) - PM6:00 - 養護学校、校庭■
先生A「……1人で来たみたいね」
僕「えぇ。クリスマス会の方は大丈夫なんですか?」
先生A「大丈夫よ。クリスマス会は中止にしたから……」
僕「……え?」
僕「生徒達は教室に集まってるじゃないですか」
先生A「ふふっ。“先生達には”、“中止”と伝えたのよ」
僕「……じゃあ優は来てるんですね!?」
先生A「えぇ、教室の奥に縛られてるのが見えるかしら?」
僕「…何ッ…!?」
優は教室でロープに縛られ気絶していた。
僕「クソッ!! やはりお前が優から音を奪った犯人か!!」
159: :2011/02/06(日) 13:08:41.06 ID:
先生A「フフッw そうだけど?w」
僕「てめぇ…自分が何したか分かってんのかッ!?」
先生A「あらやだ。段々言葉が汚くなってるわよ?w」
僕「黙れッ!!!」
先生A「だってムカツクじゃない?w」
僕「何だとぉ…!?」
先生A「篤弘さんの血を継いでるなんてw」
僕「あ? 誰だよソイツ!?」
先生A「…そう、全ては篤弘さんへの復讐なのよwww」
僕「だから誰なんだッ!?」
先生A「フフッw そうだけど?w」
僕「てめぇ…自分が何したか分かってんのかッ!?」
先生A「あらやだ。段々言葉が汚くなってるわよ?w」
僕「黙れッ!!!」
先生A「だってムカツクじゃない?w」
僕「何だとぉ…!?」
先生A「篤弘さんの血を継いでるなんてw」
僕「あ? 誰だよソイツ!?」
先生A「…そう、全ては篤弘さんへの復讐なのよwww」
僕「だから誰なんだッ!?」
160: :2011/02/06(日) 13:09:42.06 ID:
先生A「“うんめーら”っていうラーメン屋を知ってるわよね?」
僕「あぁ……それがどうした!?」
先生A「あそこの店主の木下篤弘はね、私と結婚するはずだったのよ!!」
僕(あの爺さんとコイツが?)
〓〓〓〓〓〓〓〓〓 40年前、うんめーら開店当初 〓〓〓〓〓〓〓〓〓
篤弘「お嬢ちゃん、いつもありがとね」
A「お兄ちゃんの塩ラーメン、おいしーよ」
篤弘「そうかぁ。でも、お客さんが全然来ないんだよ…ハハ」
A「私がいるじゃん!」
篤弘「ありがと。その通りだ…」
A「私、大きくなったらお兄ちゃんと結婚するの…///」
篤弘「ハハハ…じゃあこの店が人気出たらね」
A「やったーッ!」
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
先生A「“うんめーら”っていうラーメン屋を知ってるわよね?」
僕「あぁ……それがどうした!?」
先生A「あそこの店主の木下篤弘はね、私と結婚するはずだったのよ!!」
僕(あの爺さんとコイツが?)
〓〓〓〓〓〓〓〓〓 40年前、うんめーら開店当初 〓〓〓〓〓〓〓〓〓
篤弘「お嬢ちゃん、いつもありがとね」
A「お兄ちゃんの塩ラーメン、おいしーよ」
篤弘「そうかぁ。でも、お客さんが全然来ないんだよ…ハハ」
A「私がいるじゃん!」
篤弘「ありがと。その通りだ…」
A「私、大きくなったらお兄ちゃんと結婚するの…///」
篤弘「ハハハ…じゃあこの店が人気出たらね」
A「やったーッ!」
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
161: :2011/02/06(日) 13:11:54.38 ID:
先生A「篤弘さんが27才で、私が9才のときの話よ」
僕「…それだけか?」
僕「たったそれだけのことで…」
先生A「何よそれだけって!! 私は本気だった!!!」
僕「……まさか、婆さん…篤弘さんの嫁を殺したのもあんたか?」
先生A「えぇ、そうよwww」
先生A「私の“婚約者”を、たった数ヶ月で奪いやがったからwww」
先生A「孫の手前で殺してやったのよwwww」
僕「……孫って優のことか!?」
先生A「そうよw 優の父親を金で操って殺させたわッ!!」
先生A「自分の父親が、大好きなお婆ちゃんを殺してるのを見て…」
先生A「かなりのショックを受けただろうねwww」
先生A「その時の記憶を失うほどにwww」
僕「こいつ…ッ」
先生A「まずはババアの爪を一枚一枚剥がすのよwww」
先生A「その時のババアの悲鳴といったら快感そのものwww」
先生A「そして次は“忌まわしき指輪”を嵌めた『左手』を削ぎ落としたのwww」
先生A「優はその時の断末魔を聞き、多大な精神ダメージを受けただろうねwww」
先生A「耳が聞こえなくなるほどにwww」
先生A「篤弘さんが27才で、私が9才のときの話よ」
僕「…それだけか?」
僕「たったそれだけのことで…」
先生A「何よそれだけって!! 私は本気だった!!!」
僕「……まさか、婆さん…篤弘さんの嫁を殺したのもあんたか?」
先生A「えぇ、そうよwww」
先生A「私の“婚約者”を、たった数ヶ月で奪いやがったからwww」
先生A「孫の手前で殺してやったのよwwww」
僕「……孫って優のことか!?」
先生A「そうよw 優の父親を金で操って殺させたわッ!!」
先生A「自分の父親が、大好きなお婆ちゃんを殺してるのを見て…」
先生A「かなりのショックを受けただろうねwww」
先生A「その時の記憶を失うほどにwww」
僕「こいつ…ッ」
先生A「まずはババアの爪を一枚一枚剥がすのよwww」
先生A「その時のババアの悲鳴といったら快感そのものwww」
先生A「そして次は“忌まわしき指輪”を嵌めた『左手』を削ぎ落としたのwww」
先生A「優はその時の断末魔を聞き、多大な精神ダメージを受けただろうねwww」
先生A「耳が聞こえなくなるほどにwww」
165: :2011/02/06(日) 13:18:18.44 ID:
早くしてくれ
全部読んでるから
全部読んでるから
167: :2011/02/06(日) 14:01:29.75 ID:
先生A「そしたら優は何をしたと思う?w」
先生A「自分の父親を“殺した”のよッwww」
僕「…そんな…馬鹿…な…」
先生A「ありゃ傑作、笑わしてもらいましたよwww」
僕「てめぇ…!!!」
先生A「その後、私は精一杯の“皮肉”を瓶に込めて…」
先生A「篤弘さんにババアの“心臓”と指輪を嵌めた“左手”を送ってやったわwww」
僕「優の父親を多額の金で釣って、優やその母親に暴力をさせたのもアンタだな…」
僕「裁判所や警察に賄賂を渡したのも…」
先生A「あら、知ってたのねwww」
先生A「さぁ、今の気分はどうかしら?」
先生A「愛してる人が殺人犯でも、あなたは愛し続けられるかしらッ!?」
先生A「そしたら優は何をしたと思う?w」
先生A「自分の父親を“殺した”のよッwww」
僕「…そんな…馬鹿…な…」
先生A「ありゃ傑作、笑わしてもらいましたよwww」
僕「てめぇ…!!!」
先生A「その後、私は精一杯の“皮肉”を瓶に込めて…」
先生A「篤弘さんにババアの“心臓”と指輪を嵌めた“左手”を送ってやったわwww」
僕「優の父親を多額の金で釣って、優やその母親に暴力をさせたのもアンタだな…」
僕「裁判所や警察に賄賂を渡したのも…」
先生A「あら、知ってたのねwww」
先生A「さぁ、今の気分はどうかしら?」
先生A「愛してる人が殺人犯でも、あなたは愛し続けられるかしらッ!?」
168: :2011/02/06(日) 14:02:34.97 ID:
僕「僕は優を信じてる」
先生A「ッ!!」
僕「彼女の強さを知ってるから」
先生A「アァァアアアアアッ!! 腹が立つッ!!」
先生A「お前がアイツを捨てれば…」
先生A「またアイツを孤独で苦しめられるのよぉッ!」
先生A「それは篤弘さんへの復讐にもなるッ!!」
先生A「何でいつも思い通りにならないのよッ!!!」
僕(狂ってる…)
先生A「アンタ達、パーティーを始めるわよッ!」
僕「え?」
ガンッ!!
僕は後ろから何者かに殴られ、気を失った。
僕「僕は優を信じてる」
先生A「ッ!!」
僕「彼女の強さを知ってるから」
先生A「アァァアアアアアッ!! 腹が立つッ!!」
先生A「お前がアイツを捨てれば…」
先生A「またアイツを孤独で苦しめられるのよぉッ!」
先生A「それは篤弘さんへの復讐にもなるッ!!」
先生A「何でいつも思い通りにならないのよッ!!!」
僕(狂ってる…)
先生A「アンタ達、パーティーを始めるわよッ!」
僕「え?」
ガンッ!!
僕は後ろから何者かに殴られ、気を失った。
169: :2011/02/06(日) 14:04:48.15 ID:
僕は仄暗い蝋燭部屋で仰向けに横たわっていた。
「ここは…教室?」
周りがよく見えないが、クリスマスツリーがたくさんある。
これらは生徒達がこの日のために飾り付けしたものだ。
自分の両手両足、胴体、首はロープで縛られていた。
ロープの数は全部で18本、身動きが全く取れない。
さらに、何やらボソボソと声が聞こえてくる。
次の瞬間、ツリーが次々と光だした。
目が正気を逸してる、サンタの格好をした生徒達が浮かび上がる。
そしてロープの先は18人の生徒の車椅子へ繋がっていた。
先生A「お目覚めかい?w」
僕「これは一体…」
先生A「ソイツら池沼どもは既に洗脳されているw」
先生A「頭が足りないから、催眠で簡単に玩具にできるのwww」
僕「クソッ! それが教育者の言うセリフかよッ!!」
先生A「黙りなさいw」
先生A「さぁ、クリスマスパーティーを始めるわよッ!」
僕は仄暗い蝋燭部屋で仰向けに横たわっていた。
「ここは…教室?」
周りがよく見えないが、クリスマスツリーがたくさんある。
これらは生徒達がこの日のために飾り付けしたものだ。
自分の両手両足、胴体、首はロープで縛られていた。
ロープの数は全部で18本、身動きが全く取れない。
さらに、何やらボソボソと声が聞こえてくる。
次の瞬間、ツリーが次々と光だした。
目が正気を逸してる、サンタの格好をした生徒達が浮かび上がる。
そしてロープの先は18人の生徒の車椅子へ繋がっていた。
先生A「お目覚めかい?w」
僕「これは一体…」
先生A「ソイツら池沼どもは既に洗脳されているw」
先生A「頭が足りないから、催眠で簡単に玩具にできるのwww」
僕「クソッ! それが教育者の言うセリフかよッ!!」
先生A「黙りなさいw」
先生A「さぁ、クリスマスパーティーを始めるわよッ!」
170: :2011/02/06(日) 14:08:58.57 ID:
「jingle bell... jingle bell...」
「jingle bell... jingle bell...」
奴の開始の合図とともに、
普段会話の難しい生徒たちが、
ひたすらに「jingle bell」と呟き始める。
リズムも滑舌も悪く、殆ど聞き取れない。
だが、もはや「jingle bell」がトラウマな僕にとって、それは拷問。
僕「やめろぉおおおおおおおッ」
先生A「アハハハハwwww 何故かあなたは苦手なようね!」
先生A「先生はこの歌、だあいすきよwwwwwwww」
Oh, jingle bells, jingle bells ~♪
(さぁ、ベルを鳴らせ、鳴らすんだ)
Jingle all the way ~♪
(永遠に鳴り響かせろ)
Oh, what fun it is to ride ~♪
(ああ、楽しさいっぱい)
In a one horse open sleigh ~♪
(一頭立ての馬ソリ遊び)
「jingle bell... jingle bell...」
「jingle bell... jingle bell...」
奴の開始の合図とともに、
普段会話の難しい生徒たちが、
ひたすらに「jingle bell」と呟き始める。
リズムも滑舌も悪く、殆ど聞き取れない。
だが、もはや「jingle bell」がトラウマな僕にとって、それは拷問。
僕「やめろぉおおおおおおおッ」
先生A「アハハハハwwww 何故かあなたは苦手なようね!」
先生A「先生はこの歌、だあいすきよwwwwwwww」
Oh, jingle bells, jingle bells ~♪
(さぁ、ベルを鳴らせ、鳴らすんだ)
Jingle all the way ~♪
(永遠に鳴り響かせろ)
Oh, what fun it is to ride ~♪
(ああ、楽しさいっぱい)
In a one horse open sleigh ~♪
(一頭立ての馬ソリ遊び)
171: :2011/02/06(日) 14:12:20.12 ID:
奴は僕の爪を一枚一枚剥がす。
僕「ぐあああああああああああああああああああッッ」
僕のベルが教室に鳴り響く。
僕「やめろぉオオオオオオオオオオオオッッ」
僕「がぁああああああああああああッッ」
女「いやあああああああああああッッッ」
教室の角で縛られた優が目を覚ます。
彼女は頭を抱え、叫び続ける。
まさか…記憶が蘇ったのか?
婆さんのときに酷似したこの状況を目の当たりにして…。
サンタ達は「jingle bell」と囁き続けている。
トナカイである僕を車椅子というソリに縛り付けて。
先生A「ひゃははははははwwww」
先生A「ソリ遊びの醍醐味はソリチュードの苦しみを与えることwww」
先生A「イカれたサンタどもに囲まれて、一頭のお前は孤独を味わうのwww」
先生A「終焉のベルを鳴らすまで、ひたすら拷問に苦しめばいいわwww」
奴は僕の爪を一枚一枚剥がす。
僕「ぐあああああああああああああああああああッッ」
僕のベルが教室に鳴り響く。
僕「やめろぉオオオオオオオオオオオオッッ」
僕「がぁああああああああああああッッ」
女「いやあああああああああああッッッ」
教室の角で縛られた優が目を覚ます。
彼女は頭を抱え、叫び続ける。
まさか…記憶が蘇ったのか?
婆さんのときに酷似したこの状況を目の当たりにして…。
サンタ達は「jingle bell」と囁き続けている。
トナカイである僕を車椅子というソリに縛り付けて。
先生A「ひゃははははははwwww」
先生A「ソリ遊びの醍醐味はソリチュードの苦しみを与えることwww」
先生A「イカれたサンタどもに囲まれて、一頭のお前は孤独を味わうのwww」
先生A「終焉のベルを鳴らすまで、ひたすら拷問に苦しめばいいわwww」
173: :2011/02/06(日) 14:16:09.44 ID:
この前の夢そのものだ。
声は出せるが、その声は誰にも届かない。
耳が聴こえないという障害。
夢で言うと、自分の肉が声の障害になってる状態だ。
でも、この後少しの希望が生まれるはず。
夢でいうと、自分の肉を完食した瞬間だ。
だがその直後、希望は儚くも絶たれるはず。
夢でいうと、“のどちんこ”をブチ抜かれる悲劇……。
―― いや、誰がそんなこと決めた?
あの夢は、過去の僕の夢。
そう、「声なんていらねぇ」と言っていた頃の僕。
だが、僕は変わったんだ!
今の僕はコミュニケーションの大切さに気づいた。
今の僕は声の大切さに気づいたんだ。
そう、優と出会えたから。
今の僕なら、その幻想をぶち殺せるッ!
この前の夢そのものだ。
声は出せるが、その声は誰にも届かない。
耳が聴こえないという障害。
夢で言うと、自分の肉が声の障害になってる状態だ。
でも、この後少しの希望が生まれるはず。
夢でいうと、自分の肉を完食した瞬間だ。
だがその直後、希望は儚くも絶たれるはず。
夢でいうと、“のどちんこ”をブチ抜かれる悲劇……。
―― いや、誰がそんなこと決めた?
あの夢は、過去の僕の夢。
そう、「声なんていらねぇ」と言っていた頃の僕。
だが、僕は変わったんだ!
今の僕はコミュニケーションの大切さに気づいた。
今の僕は声の大切さに気づいたんだ。
そう、優と出会えたから。
今の僕なら、その幻想をぶち殺せるッ!
174: :2011/02/06(日) 14:21:05.75 ID:
僕「誰かッ!! 助けてくださいッッ!!!!!」
僕「この声が届いたのならッ!!」
僕「この声が聴こえる部屋へ!!」
僕「助けに来てくださいッッッッ!!!!!!」
先生A「ひゃははははははwwww むだむだむだぁwwwww」
ガラガラガラッ!!
警官A「警察だッ、大人しく表へ出ろッ!!!!」
警官B「大丈夫か、君達!!」
先生A「…あら? あなた達、何してるの?w」
先生A「私の夫、○○党の代表なの忘れた?」
先生A「アンタらにどれだけ金払ってるか分かってんの?w」
警官C「何のことだかさっぱり分からないな」
???「あなた3年前に別居してから夫と会ってないみたいね」
???「今朝のニュースを見てないのかしら?」
僕「誰かッ!! 助けてくださいッッ!!!!!」
僕「この声が届いたのならッ!!」
僕「この声が聴こえる部屋へ!!」
僕「助けに来てくださいッッッッ!!!!!!」
先生A「ひゃははははははwwww むだむだむだぁwwwww」
ガラガラガラッ!!
警官A「警察だッ、大人しく表へ出ろッ!!!!」
警官B「大丈夫か、君達!!」
先生A「…あら? あなた達、何してるの?w」
先生A「私の夫、○○党の代表なの忘れた?」
先生A「アンタらにどれだけ金払ってるか分かってんの?w」
警官C「何のことだかさっぱり分からないな」
???「あなた3年前に別居してから夫と会ってないみたいね」
???「今朝のニュースを見てないのかしら?」
175: :2011/02/06(日) 14:24:16.10 ID:
???「警察庁長官が収賄で逮捕されたのよ」
???「そして、あなたの夫も報道に名前が上がったわ」
???「もうあなたを守るものはない」
先生A「!!」
警察A「オラ! 大人しくしろッ!!」
先生A「…何で、何でアンタがいるのよッ!!」
先生A「あの日、ババアを連れて逃げただろうがッ!!」
???「逃げたんじゃないわ、アナタを潰すために動いてたのよ」
???「あれから3年、ようやく収賄の証拠を見つけたわ」
優の母「もう逃げられないわよッ!!」
女「おかあ…さん…?」グスン
母「ゆう…今までごめんね…」
僕「あなたが優さんのお母さん…?」
母「えぇ。優を守ってくれてありがとね」
そして後ろから、左手のないお婆さんが出てきた。
婆「優ちゃん、大きくなったね…」
???「警察庁長官が収賄で逮捕されたのよ」
???「そして、あなたの夫も報道に名前が上がったわ」
???「もうあなたを守るものはない」
先生A「!!」
警察A「オラ! 大人しくしろッ!!」
先生A「…何で、何でアンタがいるのよッ!!」
先生A「あの日、ババアを連れて逃げただろうがッ!!」
???「逃げたんじゃないわ、アナタを潰すために動いてたのよ」
???「あれから3年、ようやく収賄の証拠を見つけたわ」
優の母「もう逃げられないわよッ!!」
女「おかあ…さん…?」グスン
母「ゆう…今までごめんね…」
僕「あなたが優さんのお母さん…?」
母「えぇ。優を守ってくれてありがとね」
そして後ろから、左手のないお婆さんが出てきた。
婆「優ちゃん、大きくなったね…」
176: :2011/02/06(日) 14:25:59.45 ID:
女「お婆ちゃんッ!!」グスン
僕「え…何でお婆さんがッ!?」
婆「アンタは誰だい?」
僕「僕は…根本優っていいます…優の彼女です」
母&婆「まぁ!」
僕「いやそれより、お婆さん生きてたんですか!?」
婆「? 何か勘違いしてるわね?」
僕「だってアイツが…そう言ってたんで…」
僕「それにお爺さんに“心臓”と左手が送られてきたし…」
婆「?」
婆「とりあえず、3年前のこと、教えてあげるわ」
女「お婆ちゃんッ!!」グスン
僕「え…何でお婆さんがッ!?」
婆「アンタは誰だい?」
僕「僕は…根本優っていいます…優の彼女です」
母&婆「まぁ!」
僕「いやそれより、お婆さん生きてたんですか!?」
婆「? 何か勘違いしてるわね?」
僕「だってアイツが…そう言ってたんで…」
僕「それにお爺さんに“心臓”と左手が送られてきたし…」
婆「?」
婆「とりあえず、3年前のこと、教えてあげるわ」
177: :2011/02/06(日) 14:27:12.13 ID:
彼女かそうか
179: :2011/02/06(日) 14:30:32.32 ID:
2007年8月6日。
私と母親、優の3人は父親にある場所へ呼び出されたの。
そこには父親の他に、新しく養護学校の先生になったAがいたわ。
先生とは言っても、学校では金の力で実質トップ。
何せAの夫はあの有名な政治家だったからね。
話を聞くと、Aが父親に娘と孫を虐待させてたそうなの。
父親はその虐待写真をAに送ることにより、多額の報酬を得ていた。
Aの動機は私の夫、篤弘さんを私に取られたから。
私たちが結婚して、
Aはすぐ東京へ転校したらしいわ。
そして例の政治家と結婚して、財力を手に入れた。
その頃、私たちには既に孫がいたわ。
それを知って“虐待”を思いついたらしい。
母親には“欝”を、優には“孤独”を与えることにより、
血の繋がった篤弘さんを復讐として苦しめたの。
2007年8月6日。
私と母親、優の3人は父親にある場所へ呼び出されたの。
そこには父親の他に、新しく養護学校の先生になったAがいたわ。
先生とは言っても、学校では金の力で実質トップ。
何せAの夫はあの有名な政治家だったからね。
話を聞くと、Aが父親に娘と孫を虐待させてたそうなの。
父親はその虐待写真をAに送ることにより、多額の報酬を得ていた。
Aの動機は私の夫、篤弘さんを私に取られたから。
私たちが結婚して、
Aはすぐ東京へ転校したらしいわ。
そして例の政治家と結婚して、財力を手に入れた。
その頃、私たちには既に孫がいたわ。
それを知って“虐待”を思いついたらしい。
母親には“欝”を、優には“孤独”を与えることにより、
血の繋がった篤弘さんを復讐として苦しめたの。
180: :2011/02/06(日) 14:34:29.27 ID:
なるほど、圧力をかけられているなら離婚が認められないのも納得いくな
182: :2011/02/06(日) 15:00:25.38 ID:
そして、私達が呼び出されたその日。
彼女は私に“死”を与えることで、
篤弘さんに最大の復讐をすると言ったわ。
父親はまず、私を苦しめるため私の爪を剥いだ。
本当に痛かったわ、死ぬかと思って叫んだの。
母親は放心状態から目を覚まし、優は泣いていた。
娘達が必死に「やめてッ」と叫ぶ中、彼女は次の命令を下した。
父親は少し迷いながらも、私の左手を切断したわ。
その時の叫びで、優は音を失ったんだと思う。
次に彼女は父親に“殺せ”と命令したのよ。
だけど意外にも父親は「できない」と言った。
何とあの男、血がダメだったのよ。
それに「殺しだけはできない」とかぬかして、私を開放した。
それを見た彼女は発狂したわ。
母親は私を抱えて、
「優、逃げるわよッ!!!」と泣き叫んだ。
そして、私達が呼び出されたその日。
彼女は私に“死”を与えることで、
篤弘さんに最大の復讐をすると言ったわ。
父親はまず、私を苦しめるため私の爪を剥いだ。
本当に痛かったわ、死ぬかと思って叫んだの。
母親は放心状態から目を覚まし、優は泣いていた。
娘達が必死に「やめてッ」と叫ぶ中、彼女は次の命令を下した。
父親は少し迷いながらも、私の左手を切断したわ。
その時の叫びで、優は音を失ったんだと思う。
次に彼女は父親に“殺せ”と命令したのよ。
だけど意外にも父親は「できない」と言った。
何とあの男、血がダメだったのよ。
それに「殺しだけはできない」とかぬかして、私を開放した。
それを見た彼女は発狂したわ。
母親は私を抱えて、
「優、逃げるわよッ!!!」と泣き叫んだ。
183: :2011/02/06(日) 15:06:47.85 ID:
母親は動転していて、左手のない私に精一杯だったよ。
溢れ出る血をハンカチで止めながら、担いで必死に逃げた。
そして、たまたま近くに救急病院があったお陰で、
4時間の手術の末、私は一命を取り留めることができたの。
でも母親は病院で気を失ってたわ。
もう精神的に限界だったのよ。
だから、優が居ないことに気づけなかった。
気づいたときには遅すぎた。
……でも、優が殺されない根拠だけはあったの。
私達がいなくなった今、
優までいなくなると、篤弘さんへの復讐が終わってしまうから。
だから私達はあえて優を一人にした。
優がAに殺されないように。
そして私達はAを潰すべく動き始めたの。
母親は動転していて、左手のない私に精一杯だったよ。
溢れ出る血をハンカチで止めながら、担いで必死に逃げた。
そして、たまたま近くに救急病院があったお陰で、
4時間の手術の末、私は一命を取り留めることができたの。
でも母親は病院で気を失ってたわ。
もう精神的に限界だったのよ。
だから、優が居ないことに気づけなかった。
気づいたときには遅すぎた。
……でも、優が殺されない根拠だけはあったの。
私達がいなくなった今、
優までいなくなると、篤弘さんへの復讐が終わってしまうから。
だから私達はあえて優を一人にした。
優がAに殺されないように。
そして私達はAを潰すべく動き始めたの。
184: :2011/02/06(日) 15:08:16.49 ID:
僕(すげぇな…この親子…)
僕(優が強い理由が分かった気がする…)
婆「優の耳が聴こえなくなったと聞いたときは本当に辛かったわ…」
僕「え? 誰に聞いたんですか?」
婆「B先生よ」
母「今日の夜、優達が危ないって知らせてくれたのも彼女よ」
母「Bは私の昔からの親友で…辛い時は何度も励まされたわ」
先生B「明確な理由無しでクリスマス会が中止って言われたからね…」
先生B「でも、本当に“何か”起こるとは思ってなかったよ…」
母「…でもほんと、無事で良かった…」
女「お母さん!! お婆ちゃん!!」グスン
優は目を潤和せて、2人に飛び込んだ。
母「ゆう…本当に会いたかった……」
母「これからはずっと一緒にいようね…」
婆「…今まで寂しい思いさせてごめんね」
3人は涙をこぼし、抱き合った。
僕(すげぇな…この親子…)
僕(優が強い理由が分かった気がする…)
婆「優の耳が聴こえなくなったと聞いたときは本当に辛かったわ…」
僕「え? 誰に聞いたんですか?」
婆「B先生よ」
母「今日の夜、優達が危ないって知らせてくれたのも彼女よ」
母「Bは私の昔からの親友で…辛い時は何度も励まされたわ」
先生B「明確な理由無しでクリスマス会が中止って言われたからね…」
先生B「でも、本当に“何か”起こるとは思ってなかったよ…」
母「…でもほんと、無事で良かった…」
女「お母さん!! お婆ちゃん!!」グスン
優は目を潤和せて、2人に飛び込んだ。
母「ゆう…本当に会いたかった……」
母「これからはずっと一緒にいようね…」
婆「…今まで寂しい思いさせてごめんね」
3人は涙をこぼし、抱き合った。
185: :2011/02/06(日) 15:09:05.75 ID:
奴は既にパトカーの中に入っている。
警官C「あの、お二人にも事情聴取を受けてもらいたいのですが…」
僕「……すみません、あと10分だけ…9時00分まで待ってもらえますか?」
警官C「……分かりました。我々は車の方で待ってますね」
……僕は優のことが大好きだ。
△△駅で初めて出会った時から、今までずっと。
だからこそ、優には幸せになってもらいたい。
たとえそれが、優を裏切ることになっても。
だから僕は『アレ』を認める。
神様から授かった『コレ』を僕はここで使わせてもらう。
奴は既にパトカーの中に入っている。
警官C「あの、お二人にも事情聴取を受けてもらいたいのですが…」
僕「……すみません、あと10分だけ…9時00分まで待ってもらえますか?」
警官C「……分かりました。我々は車の方で待ってますね」
……僕は優のことが大好きだ。
△△駅で初めて出会った時から、今までずっと。
だからこそ、優には幸せになってもらいたい。
たとえそれが、優を裏切ることになっても。
だから僕は『アレ』を認める。
神様から授かった『コレ』を僕はここで使わせてもらう。
186: :2011/02/06(日) 15:12:50.23 ID:
僕「B先生、お願いがあります」
先生B「……え!? ……了解。ふふ、任せといて♪」
母&婆「?」
僕は優を教室の真ん中に呼び出す。
優はポカンとした表情を浮かべている。
僕はふぅ~っと深呼吸をした。
周りは静まり返っている。
そして彼女に最後のメールを送った。
◆僕の告白、聞いてください!!◆
今から、告白をします。
女「え…?///」
僕「B先生、お願いがあります」
先生B「……え!? ……了解。ふふ、任せといて♪」
母&婆「?」
僕は優を教室の真ん中に呼び出す。
優はポカンとした表情を浮かべている。
僕はふぅ~っと深呼吸をした。
周りは静まり返っている。
そして彼女に最後のメールを送った。
◆僕の告白、聞いてください!!◆
今から、告白をします。
女「え…?///」
187: :2011/02/06(日) 15:17:27.99 ID:
僕は優を抱きしめ、
彼女の唇にキスをした。
彼女は一瞬、驚いた素振りをみせたが、
すぐにリラックスした表情になった。
そして、僕は『ソレ』を使った。
そう。『ソレ』の正体は、『一つだけ願いが叶う魔法』。
その願いは、
『優に音をプレゼントすること』
服を選んでくれたお礼、そしてクリスマスプレゼント。
唇から離れると、僕はこう言った。
「僕と結婚してください」
僕は優を抱きしめ、
彼女の唇にキスをした。
彼女は一瞬、驚いた素振りをみせたが、
すぐにリラックスした表情になった。
そして、僕は『ソレ』を使った。
そう。『ソレ』の正体は、『一つだけ願いが叶う魔法』。
その願いは、
『優に音をプレゼントすること』
服を選んでくれたお礼、そしてクリスマスプレゼント。
唇から離れると、僕はこう言った。
「僕と結婚してください」
188: :2011/02/06(日) 15:19:37.08 ID:
彼女には聴こえただろう。
女「え…私…聴こえる…」
女「ゆーくんの声が…」
女「え…?」
清し この夜 星は光り ~♪
救いの御子は 馬槽の中に ~♪
眠り給う いと安く ~♪
綺麗なトーンチャイムの音色が教室に響く。
その音はきっと彼女にも届いたはずだ。
生徒達も笑顔で演奏している。
女「きれい…」
彼女は涙を零した。
彼女には聴こえただろう。
女「え…私…聴こえる…」
女「ゆーくんの声が…」
女「え…?」
清し この夜 星は光り ~♪
救いの御子は 馬槽の中に ~♪
眠り給う いと安く ~♪
綺麗なトーンチャイムの音色が教室に響く。
その音はきっと彼女にも届いたはずだ。
生徒達も笑顔で演奏している。
女「きれい…」
彼女は涙を零した。
190: :2011/02/06(日) 15:22:53.60 ID:
1分程の演奏が終わり、
彼女は感激のあまり零した涙を拭い、答えた。
「……はい。……喜んで…」
教室にいた全員が拍手を送ってくれた。
……でも、僕は……行かなきゃいけないんだ。
女「…でも何で耳が聴こえるように…?」
僕「…僕は優と出会って、変わることができた」
僕「そしたら神様は僕に……『魔法』が使える力をくれたんだ」
僕「…『一つだけ願いが叶う魔法』を…」
女「…どういうこと?」
1分程の演奏が終わり、
彼女は感激のあまり零した涙を拭い、答えた。
「……はい。……喜んで…」
教室にいた全員が拍手を送ってくれた。
……でも、僕は……行かなきゃいけないんだ。
女「…でも何で耳が聴こえるように…?」
僕「…僕は優と出会って、変わることができた」
僕「そしたら神様は僕に……『魔法』が使える力をくれたんだ」
僕「…『一つだけ願いが叶う魔法』を…」
女「…どういうこと?」
192: :2011/02/06(日) 15:25:15.78 ID:
僕「だから僕は…優の耳を聴こえるように…」グスン
女「何で泣いてるの?」
女「ほら、わたし、耳が聴こえるようになったし…」
女「それにたった今、新たな“根本優”が誕生したんだよ!」
女「あははw 同姓同名の夫婦って凄いよね…!」
女「…ねぇ…何で…泣いてるの?」
僕「…だから魔法を使ってしまったんだ…」
僕「…優を愛してるから…優に幸せになって欲しいから…」グスン
女「わたし幸せだよ? きっと、奇跡が起こったんだって!!」
僕「…僕は魔法の力を借りて、魔法を認めてしまったんだ…」
女「現実でも魔法みたいな奇跡があったっていいじゃない!」
僕「だから僕は…優の耳を聴こえるように…」グスン
女「何で泣いてるの?」
女「ほら、わたし、耳が聴こえるようになったし…」
女「それにたった今、新たな“根本優”が誕生したんだよ!」
女「あははw 同姓同名の夫婦って凄いよね…!」
女「…ねぇ…何で…泣いてるの?」
僕「…だから魔法を使ってしまったんだ…」
僕「…優を愛してるから…優に幸せになって欲しいから…」グスン
女「わたし幸せだよ? きっと、奇跡が起こったんだって!!」
僕「…僕は魔法の力を借りて、魔法を認めてしまったんだ…」
女「現実でも魔法みたいな奇跡があったっていいじゃない!」
193: :2011/02/06(日) 15:27:24.77 ID:
僕「…現実に…魔法なんて存在しないんだ…」
僕「…存在しちゃいけないんだ…」
僕「…だから…魔法を認めるということは…」
僕「…この世界が…“現実じゃない”と認めることで…」グスン
女「ゆーくんが何言ってるか分からないよッ」グスン
僕「…つまり…」
僕「僕はこの世界の住人じゃなかったんだ…」
女「…え?」
僕「…現実に…魔法なんて存在しないんだ…」
僕「…存在しちゃいけないんだ…」
僕「…だから…魔法を認めるということは…」
僕「…この世界が…“現実じゃない”と認めることで…」グスン
女「ゆーくんが何言ってるか分からないよッ」グスン
僕「…つまり…」
僕「僕はこの世界の住人じゃなかったんだ…」
女「…え?」
194: :2011/02/06(日) 15:29:58.26 ID:
え?
197: :2011/02/06(日) 15:32:51.60 ID:
えっ?
202: :2011/02/06(日) 16:01:01.55 ID:
僕「……僕は帰らなきゃならない」
僕「もうすぐ“僕の生きるべき世界”から迎えが来ると思う」
僕「だから……これでお別れだ」
女「何…言ってるの…?」
女「今日と明日は泊まってくれるんじゃないの…?」
女「“5人”でトランプするんじゃないの…?」
女「私と結婚してくれるんじゃないの!?」
女「何があっても、どこにもいかないんじゃないのッ!!?」グスン
僕「ごめん、優には幸せになって欲しかったんだ…」
僕「過去のことなんか忘れてしまうぐらいに……」
僕「だから魔法を使って、耳を聴こえるようにしたんだ…」
僕「でも使っちゃったから、僕は帰らなk…
女「もう聞きあきたよッ!!」グスン
僕「……僕は帰らなきゃならない」
僕「もうすぐ“僕の生きるべき世界”から迎えが来ると思う」
僕「だから……これでお別れだ」
女「何…言ってるの…?」
女「今日と明日は泊まってくれるんじゃないの…?」
女「“5人”でトランプするんじゃないの…?」
女「私と結婚してくれるんじゃないの!?」
女「何があっても、どこにもいかないんじゃないのッ!!?」グスン
僕「ごめん、優には幸せになって欲しかったんだ…」
僕「過去のことなんか忘れてしまうぐらいに……」
僕「だから魔法を使って、耳を聴こえるようにしたんだ…」
僕「でも使っちゃったから、僕は帰らなk…
女「もう聞きあきたよッ!!」グスン
203: :2011/02/06(日) 16:02:36.62 ID:
僕「優のお陰で…僕は変わることができた…本当にありがとう」
女「…そんなの嬉しくないよッ!!」
僕「変わったからこそ、僕はこの世界で甘えてちゃいけないんだ」
僕「ちゃんと“現実”を見つめて、“現実”で生きていかなきゃ」
女「……じゃあ何で結婚しようだなんて……」
僕「この世界は僕の心の中にあるんだ」
僕「だから、離れ離れになるわけじゃないから…」
僕「会えなくても、心の中から僕を支えてて欲しいから…」
女「…置いてかれる……私の身にも…なってよ…」グスン
僕「ごめん。でもお爺さん、お婆さん、お母さんがいる」
僕「それに音も聴こえる。もう優は孤独じゃないんだよ…」
≪…起きて…さい…≫
僕「…迎えが来たようだ」
僕「優のお陰で…僕は変わることができた…本当にありがとう」
女「…そんなの嬉しくないよッ!!」
僕「変わったからこそ、僕はこの世界で甘えてちゃいけないんだ」
僕「ちゃんと“現実”を見つめて、“現実”で生きていかなきゃ」
女「……じゃあ何で結婚しようだなんて……」
僕「この世界は僕の心の中にあるんだ」
僕「だから、離れ離れになるわけじゃないから…」
僕「会えなくても、心の中から僕を支えてて欲しいから…」
女「…置いてかれる……私の身にも…なってよ…」グスン
僕「ごめん。でもお爺さん、お婆さん、お母さんがいる」
僕「それに音も聴こえる。もう優は孤独じゃないんだよ…」
≪…起きて…さい…≫
僕「…迎えが来たようだ」
204: :2011/02/06(日) 16:06:30.71 ID:
女「……私のこと…忘れないでね……」グスン
僕「うん…絶対に…忘れない…!」
≪…起きてください…≫
女「……最後にお願いしていい…?」
僕「いいよ…言ってみて……」グスン
≪…お…さ…起きてください…≫
女「…抱きしめて」
僕「…」ギュッ
≪…お客さ…起きてください…≫
女「…ゆーくん…大好き…」グスン
僕「…」
女「…バイバイ…ゆーくん……」
女「……私のこと…忘れないでね……」グスン
僕「うん…絶対に…忘れない…!」
≪…起きてください…≫
女「……最後にお願いしていい…?」
僕「いいよ…言ってみて……」グスン
≪…お…さ…起きてください…≫
女「…抱きしめて」
僕「…」ギュッ
≪…お客さ…起きてください…≫
女「…ゆーくん…大好き…」グスン
僕「…」
女「…バイバイ…ゆーくん……」
205: :2011/02/06(日) 16:07:29.48 ID:
「お客さん、起きてください!」
僕「…」
「…回送に変わりますので…」
目を開けると冷たい涙が零れてくる。
「あの…大丈夫ですか?」
僕「…はい…大丈夫です」
僕は電車を降りた。
「お客さん、起きてください!」
僕「…」
「…回送に変わりますので…」
目を開けると冷たい涙が零れてくる。
「あの…大丈夫ですか?」
僕「…はい…大丈夫です」
僕は電車を降りた。
206: :2011/02/06(日) 16:08:33.81 ID:
ケータイの画面には、
2010年12月17日(金)11:30。
4時間近く電車に乗ってたみたい。
僕は受信メールボックスを開いた。
―― 受信メールはありません ――
優との会話の記録は消えていた。
送信メールボックスも。
噴水の前で撮った二人の写真も。
ケータイの画面には、
2010年12月17日(金)11:30。
4時間近く電車に乗ってたみたい。
僕は受信メールボックスを開いた。
―― 受信メールはありません ――
優との会話の記録は消えていた。
送信メールボックスも。
噴水の前で撮った二人の写真も。
207: :2011/02/06(日) 16:11:14.24 ID:
雪は溶けていた。
そこはかなりの田舎で、
視界には緑溢れる田畑が広がっている。
空気を名一杯吸込み、誰かに届くように叫ぶ。
「俺は変わったぞおおおおッッッ!!!!」
駅に僅かにいた人間が俺の方をみる。
50メートルは離れた人もこっちを見てる。
何だ、大声出せるじゃん、俺。
雪は溶けていた。
そこはかなりの田舎で、
視界には緑溢れる田畑が広がっている。
空気を名一杯吸込み、誰かに届くように叫ぶ。
「俺は変わったぞおおおおッッッ!!!!」
駅に僅かにいた人間が俺の方をみる。
50メートルは離れた人もこっちを見てる。
何だ、大声出せるじゃん、俺。
208: :2011/02/06(日) 16:12:41.80 ID:
俺は反対車線の電車に乗った。
電池の切れた『R-09HR』に新しい電池を入れる。
電源を入れると、“録音時間が3時間”の謎のオーディオトラックがあった。
少し気になって再生してみる。
『ザァアアアアア……』
雑音が響く、いくら早送りしても変わらない。
「間違えて録音したのかな?」
……削除しようと思ったその時、
2時間50分の辺りから何かが聴こえた。
清し この夜 星は光り ~♪
救いの御子は 馬槽の中に ~♪
眠り給う いと安く ~♪
トーンチャイムのメロディーが全身に染み渡る。
俺は反対車線の電車に乗った。
電池の切れた『R-09HR』に新しい電池を入れる。
電源を入れると、“録音時間が3時間”の謎のオーディオトラックがあった。
少し気になって再生してみる。
『ザァアアアアア……』
雑音が響く、いくら早送りしても変わらない。
「間違えて録音したのかな?」
……削除しようと思ったその時、
2時間50分の辺りから何かが聴こえた。
清し この夜 星は光り ~♪
救いの御子は 馬槽の中に ~♪
眠り給う いと安く ~♪
トーンチャイムのメロディーが全身に染み渡る。
209: :2011/02/06(日) 16:14:47.11 ID:
『きよしこの夜』…それは誕生を祝う歌。
俺は今朝の夢を思い返した。
>>32の夢には矛盾がある。
自分は最初、サンタに“眼球”を抉られた。
その時点で失明してるはずだ。
なのに俺はサンタが“心臓”を“靴下”に放り込むところを“見ている”。
声を奪われ死んだ“僕”と、それを見ていた生きてる“俺”。
そう、あの夢には自分が2人いたんだ。
本当の自分はどっちか。それは生きてる“俺”だろう。
そして靴下とはプレゼントを入れる袋だ。
空っぽの存在だった俺に、サンタは“心臓”を入れてくれた。
俺に生命を与えてくれた。
少し早めのクリスマスプレゼントだった。
『きよしこの夜』…それは誕生を祝う歌。
俺は今朝の夢を思い返した。
>>32の夢には矛盾がある。
自分は最初、サンタに“眼球”を抉られた。
その時点で失明してるはずだ。
なのに俺はサンタが“心臓”を“靴下”に放り込むところを“見ている”。
声を奪われ死んだ“僕”と、それを見ていた生きてる“俺”。
そう、あの夢には自分が2人いたんだ。
本当の自分はどっちか。それは生きてる“俺”だろう。
そして靴下とはプレゼントを入れる袋だ。
空っぽの存在だった俺に、サンタは“心臓”を入れてくれた。
俺に生命を与えてくれた。
少し早めのクリスマスプレゼントだった。
210: :2011/02/06(日) 16:17:10.66 ID:
2010年12月17日(金)
今日は“俺”の誕生日。
帰ったら、「ただいま」と言おう。
そして家族と団欒をしよう。
大学では友達を作ろう。
そして友達との会話を楽しもう。
俺は窓外の空を見上げた。
眩しい太陽の光が俺を照らす。
「そして僕は生まれ変わった」
~fin~
2010年12月17日(金)
今日は“俺”の誕生日。
帰ったら、「ただいま」と言おう。
そして家族と団欒をしよう。
大学では友達を作ろう。
そして友達との会話を楽しもう。
俺は窓外の空を見上げた。
眩しい太陽の光が俺を照らす。
「そして僕は生まれ変わった」
~fin~
212: :2011/02/06(日) 16:18:51.18 ID:
乙
面白かった
面白かった
213: :2011/02/06(日) 16:19:01.03 ID:
少し強引かなあ
215: :2011/02/06(日) 16:20:41.94 ID:
乙
面白かったぜ
面白かったぜ
216: :2011/02/06(日) 16:29:19.34 ID:
8回さるった。
でも皆さんのお陰完走できました。
ありがとうございました。
でも皆さんのお陰完走できました。
ありがとうございました。
218: :2011/02/06(日) 16:34:14.49 ID:
無理に夢オチにしなくても良かったんだぜ?
乙
乙
220: :2011/02/06(日) 16:39:51.32 ID:
後半が多少強引だったけど
面白かった
とにかく乙
面白かった
とにかく乙
221: :2011/02/06(日) 16:42:57.03 ID:
投下速度も中身もいいSSは久しぶりです
223: :2011/02/06(日) 17:02:48.04 ID:
書き忘れてた
爺さんに送られてきた心臓は父親のものです
優でなく、A先生に殺されました
A先生は嘘つきです
爺さんに送られてきた心臓は父親のものです
優でなく、A先生に殺されました
A先生は嘘つきです
224: :2011/02/06(日) 17:17:02.97 ID:
乙
これを書こうとしたきっかけは?似たようなことでもあったのかな
これを書こうとしたきっかけは?似たようなことでもあったのかな
229: :2011/02/06(日) 20:31:35.78 ID:
>>224
オールフィクションです。
何かの役に立てばと思って書きました。
10回目のサルで代行してもらってます。
でも、書ききって良かったです。
隅っこで生きてた僕ですが、
真ん中で生きれるようになりました。
千里の道も一歩から、だと思います。
オールフィクションです。
何かの役に立てばと思って書きました。
10回目のサルで代行してもらってます。
でも、書ききって良かったです。
隅っこで生きてた僕ですが、
真ん中で生きれるようになりました。
千里の道も一歩から、だと思います。
226: :2011/02/06(日) 17:56:27.68 ID:
熱中した
乙!
乙!
228: :2011/02/06(日) 19:22:27.88 ID:
盛大に乙だ~~
227: :2011/02/06(日) 18:09:54.67 ID:
話に引き込まれたわ 乙
またなんかかいてくれ
またなんかかいてくれ
コメント
コメント一覧 (3)
個人的にはこの後現実の優♀(耳は聴こえる)と会って、既視感のようなもので互いに惹かれ合うみたいなエンドだとなお良かったと思う
最後悲しかったけどw
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