1: :2009/02/20(金) 21:26:38.98 ID:
3: :2009/02/20(金) 21:28:57.34 ID:
内藤ホライゾン、通称ブーン。今年で中学一年生になった13歳。
体型はやや肥満。健康状態極めて良好。
そんな彼の父親が夢にまで見ていた新築の一軒家に引っ越して
きたのは、3ヶ月前の夏休みのことだった。
“新しい家を買ったぞ”父親はそう誇らしげにブーンとブーンの母
親である己の妻に言った。
ブーンはそれまでに住んでいた古い2DKのアパートに愛着があっ
たが、新しい一軒家と自分専用の部屋という魅力に一も二もなく喜んだ。
体型はやや肥満。健康状態極めて良好。
そんな彼の父親が夢にまで見ていた新築の一軒家に引っ越して
きたのは、3ヶ月前の夏休みのことだった。
“新しい家を買ったぞ”父親はそう誇らしげにブーンとブーンの母
親である己の妻に言った。
ブーンはそれまでに住んでいた古い2DKのアパートに愛着があっ
たが、新しい一軒家と自分専用の部屋という魅力に一も二もなく喜んだ。
4: :2009/02/20(金) 21:30:09.35 ID:
ふむ
6: :2009/02/20(金) 21:31:32.30 ID:
しかし、ブーンには父親達にはない問題があった。
学校を転校しなければならないという問題だ。
父親はいい。住む場所が違えど、会社までの通勤時間はさほど変わらず、
むしろ最寄りの駅までが近くなったと両手をあげていた。
母親もいい。それまでに住んでいたアパートには、友人と呼べるような近所
付き合いはなく、やはり買い物をするのに便利になったと両手をあげていた。
しかし、ブーンは違う。
ブーンには駅が近いとか、買い物が便利だとかいう大人の事情は関係ない。
ブーンにとっての一大事は、つまり友人と離れ離れになってしまうという事だ。
みなで作り上げた秘密基地を、みなでカブトムシを採りに行ったブナ林を、
その全てを手放さなければならないという事だった。
学校を転校しなければならないという問題だ。
父親はいい。住む場所が違えど、会社までの通勤時間はさほど変わらず、
むしろ最寄りの駅までが近くなったと両手をあげていた。
母親もいい。それまでに住んでいたアパートには、友人と呼べるような近所
付き合いはなく、やはり買い物をするのに便利になったと両手をあげていた。
しかし、ブーンは違う。
ブーンには駅が近いとか、買い物が便利だとかいう大人の事情は関係ない。
ブーンにとっての一大事は、つまり友人と離れ離れになってしまうという事だ。
みなで作り上げた秘密基地を、みなでカブトムシを採りに行ったブナ林を、
その全てを手放さなければならないという事だった。
8: :2009/02/20(金) 21:33:30.08 ID:
友人たちは涙ながらに別れを惜しんでくれ、ブーンもそれに
やはり涙ながらに応えた。
その別離の辛さに比べれば、広い一軒家や、自室を手に入
れるなどというのは些末な事だと知った。
特に引っ越ししたてはその辛さが顕著だった。
何しろ夏である。夏休みである。
学校もなく友人もいなくなってしまったブーンは、毎日を無為
に過ごしていた。暇を持て余していた。
人生で一番つまらない夏休みだった。
別離を惜しみあった友人に会いにいこうと思うも、2つ隣の県ま
で電車を乗り継いでいくのは今年小学校を卒業したばかりのブー
ンにとっては酷な話だった。
やはり涙ながらに応えた。
その別離の辛さに比べれば、広い一軒家や、自室を手に入
れるなどというのは些末な事だと知った。
特に引っ越ししたてはその辛さが顕著だった。
何しろ夏である。夏休みである。
学校もなく友人もいなくなってしまったブーンは、毎日を無為
に過ごしていた。暇を持て余していた。
人生で一番つまらない夏休みだった。
別離を惜しみあった友人に会いにいこうと思うも、2つ隣の県ま
で電車を乗り継いでいくのは今年小学校を卒業したばかりのブー
ンにとっては酷な話だった。
9: :2009/02/20(金) 21:35:00.26 ID:
幸い以前住んでいた場所よりも若干都会だったため、本屋や
ゲームセンターに通うということも出来たが、それもすぐに飽きた。
なにをするにしろ、楽しみや喜びを共有できる者がいなければ面
白くない。
だけども、とブーンは思った。
だけどもこの茶葉の搾りカスのような夏休みが終わり、学校が始
まれば、自然と友達ができるはずだ。
以前の様に気の置けない仲間たちと楽しい毎日を送れるはずだ。
ゲームセンターに通うということも出来たが、それもすぐに飽きた。
なにをするにしろ、楽しみや喜びを共有できる者がいなければ面
白くない。
だけども、とブーンは思った。
だけどもこの茶葉の搾りカスのような夏休みが終わり、学校が始
まれば、自然と友達ができるはずだ。
以前の様に気の置けない仲間たちと楽しい毎日を送れるはずだ。
10: :2009/02/20(金) 21:35:54.76 ID:
いじめられるとかの話だったら俺は泣く
11: :2009/02/20(金) 21:36:25.46 ID:
いや、それどころか転校生ということで人気者になれるかもしれない。
最初の掴みさえ間違えなければ、彼女を作ることだって夢じゃない。
そう思うと心が弾んだ。始業式よ早く来い。夏、おまえはもういい、終
われ。来年また構ってやるから。
ブーンはおおよその同年代とは反対に、夏休みが一刻も早く終わる
ことを待ち望んでいた。
そして、始業式。全校をあげての式ということで、なかなか厳かな雰
囲気に包まれている。
これから同窓になるかもしれない生徒達がチラチラとこちらを伺っている。
最初の掴みさえ間違えなければ、彼女を作ることだって夢じゃない。
そう思うと心が弾んだ。始業式よ早く来い。夏、おまえはもういい、終
われ。来年また構ってやるから。
ブーンはおおよその同年代とは反対に、夏休みが一刻も早く終わる
ことを待ち望んでいた。
そして、始業式。全校をあげての式ということで、なかなか厳かな雰
囲気に包まれている。
これから同窓になるかもしれない生徒達がチラチラとこちらを伺っている。
12: :2009/02/20(金) 21:38:42.73 ID:
まだだ、まだ焦るな。
今のこの状況ではまだ仲良くなりようがない。勝負はクラスごと
のホームルームに入り、担任が自分のことを同窓生に紹介した時だ。
そこで自分がエスプリの効いたジョークを言う。クラス中が笑いの渦
に包まれる。
完璧だ。
なにせ自分は転校生である。みな自分に興味津々のはずだ。自然と
笑いの沸点も低くなる。よし、予定通りにいけばあと10分足らずで自分
は人気者だ。ブーンはそう算段した。
そしてブーンが振り当てられた1-2のクラス。メガネをかけた神経質
そうな担任に引き連れられ教室に入ってみると、クラスメイトは既に着
席していた。
ブーンは教壇の前に立つ。
今のこの状況ではまだ仲良くなりようがない。勝負はクラスごと
のホームルームに入り、担任が自分のことを同窓生に紹介した時だ。
そこで自分がエスプリの効いたジョークを言う。クラス中が笑いの渦
に包まれる。
完璧だ。
なにせ自分は転校生である。みな自分に興味津々のはずだ。自然と
笑いの沸点も低くなる。よし、予定通りにいけばあと10分足らずで自分
は人気者だ。ブーンはそう算段した。
そしてブーンが振り当てられた1-2のクラス。メガネをかけた神経質
そうな担任に引き連れられ教室に入ってみると、クラスメイトは既に着
席していた。
ブーンは教壇の前に立つ。
14: :2009/02/20(金) 21:39:54.98 ID:
……あれ? おかしい。緊張してきた。あれほど念入りに計画して
いたのに、頭の中が真っ白になる。
担任が言う、「今日からこの学校に転校して来た内藤君だ」と。ブー
ンにはその声がどこか遠くから聞こえてくるように感じられた。
「内藤君、自己紹介しなさい」と促される。よし、今だ。言え。事前に
決めておいた自己紹介をしろ。みなを笑いの渦に巻き込んでやれ。
さぁ、今だ。
……あれ?
何だ? わけがわからない。何で声がでないんだ? 膝が震える
んだ? なぜ?
いたのに、頭の中が真っ白になる。
担任が言う、「今日からこの学校に転校して来た内藤君だ」と。ブー
ンにはその声がどこか遠くから聞こえてくるように感じられた。
「内藤君、自己紹介しなさい」と促される。よし、今だ。言え。事前に
決めておいた自己紹介をしろ。みなを笑いの渦に巻き込んでやれ。
さぁ、今だ。
……あれ?
何だ? わけがわからない。何で声がでないんだ? 膝が震える
んだ? なぜ?
15: :2009/02/20(金) 21:41:17.77 ID:
ブーンの喉からは息が漏れるだけだった。手にじっとりと汗をかく。
およそ80個の瞳に見つめられ、ブーンは自分を見失っていた。
「内藤君?」担任のメガネが不審そうな目で見てくる。うるさい、今
から僕が喋るんだ。黙ってろ。
(;^ω^)「きょ、きょうから、この、クラスに……」
そこまで言って、眩暈を覚える。
思ったとおりに声が出ない。倒れてしまいたくなる。最早計画は破綻
した。
ブーンはそこから先の言葉を継ぐことが出来なかった。
およそ80個の瞳に見つめられ、ブーンは自分を見失っていた。
「内藤君?」担任のメガネが不審そうな目で見てくる。うるさい、今
から僕が喋るんだ。黙ってろ。
(;^ω^)「きょ、きょうから、この、クラスに……」
そこまで言って、眩暈を覚える。
思ったとおりに声が出ない。倒れてしまいたくなる。最早計画は破綻
した。
ブーンはそこから先の言葉を継ぐことが出来なかった。
16: :2009/02/20(金) 21:43:03.92 ID:
やってしまった。
とにかくやってしまった。
最悪だ。人気者になるどころじゃない。
自分を呪った。肝心なところで緊張しやがって、クラスメイトから
の第一印象は最悪だったに違いない。結局、黙り込んだままで、最
終的には担任にまとめてもらっていたじゃないか。何が人気者だ、笑
わせるな。
ブーンは強く自分を叱責した。一時限目の授業中はずっと頭を抱え
ながら自分を罵倒し続けた。
だが、まだ挽回のチャンスはある。
この授業が終わったら、きっとクラスメイトの何人かは自分の席に来
て、質問をしてくるはずだ。そこでさっきの失敗を取り返せばいい。おま
え、本当にこれが最後のチャンスだぞ? ここでしっかりやらなきゃ、こ
の学校での生活が陰鬱なものになると思え。
とにかくやってしまった。
最悪だ。人気者になるどころじゃない。
自分を呪った。肝心なところで緊張しやがって、クラスメイトから
の第一印象は最悪だったに違いない。結局、黙り込んだままで、最
終的には担任にまとめてもらっていたじゃないか。何が人気者だ、笑
わせるな。
ブーンは強く自分を叱責した。一時限目の授業中はずっと頭を抱え
ながら自分を罵倒し続けた。
だが、まだ挽回のチャンスはある。
この授業が終わったら、きっとクラスメイトの何人かは自分の席に来
て、質問をしてくるはずだ。そこでさっきの失敗を取り返せばいい。おま
え、本当にこれが最後のチャンスだぞ? ここでしっかりやらなきゃ、こ
の学校での生活が陰鬱なものになると思え。
18: :2009/02/20(金) 21:43:43.92 ID:
ふむ 支援す
20: :2009/02/20(金) 21:45:11.46 ID:
そう言い聞かせ、休み時間になるのを待った。
そして授業が終わり、全員で教師に礼をする。ブーンに
とってはここからが本番だ。
(*゚―゚)「ねぇねぇ、内藤君」
ほら、来た。最初の会話相手はおとなしそうな女の子だ。
ブーンは座ったまま視線だけをその女の子に合わせる。
( ^ω^)「お?」
(*゚―゚)「内藤君ってどこから転校して来たの? この近くの
学校?」
質問だ。ここは無難でいい。きっちりと答えて、和やかな空
気になったら自分のひょうきんさを見せ付けてやれ。
しかし。
(;^ω^)「おっ、おっ。えっと、お……」
(*゚―゚)「?」
(;^ω^)「あの……」
ダメだ。うまく言葉になってくれない。
そして授業が終わり、全員で教師に礼をする。ブーンに
とってはここからが本番だ。
(*゚―゚)「ねぇねぇ、内藤君」
ほら、来た。最初の会話相手はおとなしそうな女の子だ。
ブーンは座ったまま視線だけをその女の子に合わせる。
( ^ω^)「お?」
(*゚―゚)「内藤君ってどこから転校して来たの? この近くの
学校?」
質問だ。ここは無難でいい。きっちりと答えて、和やかな空
気になったら自分のひょうきんさを見せ付けてやれ。
しかし。
(;^ω^)「おっ、おっ。えっと、お……」
(*゚―゚)「?」
(;^ω^)「あの……」
ダメだ。うまく言葉になってくれない。
21: :2009/02/20(金) 21:47:13.59 ID:
なぜこんな簡単な質問に答えられないんだ。
女の子は怪訝そうな顔をしている。そして相変わらず黙ったまま
でいるブーンを一瞥すると、自分の席に戻ってしまった。
終了。
何もかもが、終了。
ブーンは目の前が真っ暗になった。世界がぐるぐる回っている。吐き
気すらも感じた。
そしてやおらに立ち上がると荷物を掴み、教室を飛び出した。みな不
思議そうな目をしてブーンを見たが、今のブーンはそれすらも気付かない。
ただ、一刻も早くこの場から逃げ出したかった。
女の子は怪訝そうな顔をしている。そして相変わらず黙ったまま
でいるブーンを一瞥すると、自分の席に戻ってしまった。
終了。
何もかもが、終了。
ブーンは目の前が真っ暗になった。世界がぐるぐる回っている。吐き
気すらも感じた。
そしてやおらに立ち上がると荷物を掴み、教室を飛び出した。みな不
思議そうな目をしてブーンを見たが、今のブーンはそれすらも気付かない。
ただ、一刻も早くこの場から逃げ出したかった。
24: :2009/02/20(金) 21:48:47.20 ID:
自室に戻ると、ブーンは荷物を放り投げベッドにうつ伏せに横たわ
り、泣いた。
何で? 何でうまく喋れないんだ? 前は、ここに来る前は普通に
やっていたことじゃないか。普通に気さくに仲間と笑いあっていたじゃ
ないか。それがどうして出来ない?
ブーンは泣いた。もうどうしたらいいのか分からない。友達の作り方
がわからない。
この間まで仲良くしていた奴らとは普通に友達になれていたじゃな
いか。やり方は忘れた。なにせ小学校低学年の話だ。でも、仲良くし
てたって事は、つまり何かしら会話をして友達になったはずだ。それ
がなぜ今できない?
県民性の違い? 転校生だから? 馬鹿馬鹿しい。だって、彼らは
自分から話しかけてくれたじゃないか。お客様扱いだ。すすんで話し
かけに行くよりよっぽど会話を成立させやすいはずだ。ダメだったの
はおまえだ。自分自身だ。
り、泣いた。
何で? 何でうまく喋れないんだ? 前は、ここに来る前は普通に
やっていたことじゃないか。普通に気さくに仲間と笑いあっていたじゃ
ないか。それがどうして出来ない?
ブーンは泣いた。もうどうしたらいいのか分からない。友達の作り方
がわからない。
この間まで仲良くしていた奴らとは普通に友達になれていたじゃな
いか。やり方は忘れた。なにせ小学校低学年の話だ。でも、仲良くし
てたって事は、つまり何かしら会話をして友達になったはずだ。それ
がなぜ今できない?
県民性の違い? 転校生だから? 馬鹿馬鹿しい。だって、彼らは
自分から話しかけてくれたじゃないか。お客様扱いだ。すすんで話し
かけに行くよりよっぽど会話を成立させやすいはずだ。ダメだったの
はおまえだ。自分自身だ。
26: :2009/02/20(金) 21:50:27.68 ID:
ブーンは自分に失望していた。
この間まで友達がいたのは、つまり過去の自分の手柄であって、
今の自分は満足に他人とコミュニケーションをとることすら出来ない
不能野郎。
ぬるぬると優しくしてくれた友人達の陰で、自分はこんなにも他人と
関われない奴になっていたのだ。
おい、昔の自分、小学校にあがる以前の内藤君。友達の作り方を教
えてくれ。他人との関わり方を教えてくれ。頭でも何でも下げるから。
ブーンはそんなことを考えながら、深い眠りに就いていった。
目が覚めたのは母親が夕飯ができたからと起こしに来たときだった。
学校どうだった? と、そんな母親からの質問に胸が痛む。
ブーンはいい子だからもうたくさん友達が出来たんじゃない? と。
ブーンは胃にこみ上げるものを感じ、食欲がないから自室に戻ると母
に告げた。
実際、具合は悪い。
この間まで友達がいたのは、つまり過去の自分の手柄であって、
今の自分は満足に他人とコミュニケーションをとることすら出来ない
不能野郎。
ぬるぬると優しくしてくれた友人達の陰で、自分はこんなにも他人と
関われない奴になっていたのだ。
おい、昔の自分、小学校にあがる以前の内藤君。友達の作り方を教
えてくれ。他人との関わり方を教えてくれ。頭でも何でも下げるから。
ブーンはそんなことを考えながら、深い眠りに就いていった。
目が覚めたのは母親が夕飯ができたからと起こしに来たときだった。
学校どうだった? と、そんな母親からの質問に胸が痛む。
ブーンはいい子だからもうたくさん友達が出来たんじゃない? と。
ブーンは胃にこみ上げるものを感じ、食欲がないから自室に戻ると母
に告げた。
実際、具合は悪い。
27: :2009/02/20(金) 21:51:52.18 ID:
頭は重いし、指先が少し痺れている気がする。
驚いた。自分はここまで弱い人間だったのか。
ブーンは情けないやら寂しいやらで、昼間に学校から早退した
時のように声を殺して再び泣く。
誰かがドアをノックする。母親がドアの向こうで大丈夫? 何か
あったの? と声をかけてきた。
それが申し訳なくて余計悲しくなり、何でもない、と鼻声で答え、
少しして、また眠った。
驚いた。自分はここまで弱い人間だったのか。
ブーンは情けないやら寂しいやらで、昼間に学校から早退した
時のように声を殺して再び泣く。
誰かがドアをノックする。母親がドアの向こうで大丈夫? 何か
あったの? と声をかけてきた。
それが申し訳なくて余計悲しくなり、何でもない、と鼻声で答え、
少しして、また眠った。
28: :2009/02/20(金) 21:52:01.94 ID:
涙ってことは重い話になるのか
29: :2009/02/20(金) 21:53:22.97 ID:
新しい朝が来た。ちっとも希望の朝なんかじゃない。
相変わらず気は重い。でも、とブーン。一晩寝て、少し気分が
落ち着いた。そう、昨日は少し失敗してしまっただけ、大したこと
じゃない。
なあに、今日学校に行って『昨日は急に具合が悪くなっちゃっ
てさ』とおどけて言えばいい。
まだ取り返しのつかない事態じゃないはず。
そう思うとわずかだが気が楽になった。
よし、学校に行こう。まだ通常の登校時間より早いがそわそわして
落ち着かない。
今はなんだか一刻も早くクラスメイトに会って事情を説明したい。
ブーンは覚束ない足取りで学校へと向かった。
相変わらず気は重い。でも、とブーン。一晩寝て、少し気分が
落ち着いた。そう、昨日は少し失敗してしまっただけ、大したこと
じゃない。
なあに、今日学校に行って『昨日は急に具合が悪くなっちゃっ
てさ』とおどけて言えばいい。
まだ取り返しのつかない事態じゃないはず。
そう思うとわずかだが気が楽になった。
よし、学校に行こう。まだ通常の登校時間より早いがそわそわして
落ち着かない。
今はなんだか一刻も早くクラスメイトに会って事情を説明したい。
ブーンは覚束ない足取りで学校へと向かった。
30: :2009/02/20(金) 21:54:27.82 ID:
どうなる
31: :2009/02/20(金) 21:54:39.70 ID:
案の定、クラスにはまだ誰も来ていなかった。
それもそうだ。まだ朝のホームルームまで時間がある。ブー
ンは自分の席についてそわそわしている。
そして、10分ほど待った頃だろうか。一人の男子生徒がガラ
ガラと戸を引き、教室に入ってきた。
その生徒はこんな時間に誰かがいるとは思わなかったのだ
ろう。ブーンに気付くとぎょっ、という驚きの表情をした。
さあ、お待ちかねのクラスメイトが来たぞ。頑張って話し掛け
ろ。もう無理に笑いなんてとろうとするなよ? 無難な会話で地
道に仲良くなっていけ。
それもそうだ。まだ朝のホームルームまで時間がある。ブー
ンは自分の席についてそわそわしている。
そして、10分ほど待った頃だろうか。一人の男子生徒がガラ
ガラと戸を引き、教室に入ってきた。
その生徒はこんな時間に誰かがいるとは思わなかったのだ
ろう。ブーンに気付くとぎょっ、という驚きの表情をした。
さあ、お待ちかねのクラスメイトが来たぞ。頑張って話し掛け
ろ。もう無理に笑いなんてとろうとするなよ? 無難な会話で地
道に仲良くなっていけ。
33: :2009/02/20(金) 21:55:54.06 ID:
(;^ω^)「おっ、おはようだお!」
ブーンはなけなしの勇気を振り絞って挨拶をした。
たかだか挨拶をするだけなのに、こんなに勇気が必要だとは
露にも思わなかった。
(;´∀`)「あ、あぁ、おはよう」
対して男子生徒は気まずそうな歯切れの悪い返事をするだけ。
そこで会話終了。これ以上どう話を膨らましていけばいいのか、
ブーンにはわからない。朝一番から泣きそうだった。
名前も知らない生徒は、やはりブーンと話したくないのだろうか、
ちらりともブーンの方を見ない。
……『名前も知らない生徒』? そうだ、とブーンは閃いた。
そうだ、まず名前を聞いて、それを会話の突破口にしよう。そして
その要領で質問していけば、相手もすぐに心を開いてくれるはずだ。
その考えはブーンにとって天啓に思えた。すがるべき藁に思えた。
ブーンはなけなしの勇気を振り絞って挨拶をした。
たかだか挨拶をするだけなのに、こんなに勇気が必要だとは
露にも思わなかった。
(;´∀`)「あ、あぁ、おはよう」
対して男子生徒は気まずそうな歯切れの悪い返事をするだけ。
そこで会話終了。これ以上どう話を膨らましていけばいいのか、
ブーンにはわからない。朝一番から泣きそうだった。
名前も知らない生徒は、やはりブーンと話したくないのだろうか、
ちらりともブーンの方を見ない。
……『名前も知らない生徒』? そうだ、とブーンは閃いた。
そうだ、まず名前を聞いて、それを会話の突破口にしよう。そして
その要領で質問していけば、相手もすぐに心を開いてくれるはずだ。
その考えはブーンにとって天啓に思えた。すがるべき藁に思えた。
34: :2009/02/20(金) 21:57:12.53 ID:
どちらにしろこのままでは自分の中学生活は暗闇に閉ざされたままになって
しまう。
そんなのはいやだ。ならばいけ。
(;^ω^)「お……」
ブーンが再び話し掛けようとした瞬間、教室に他の生徒が入ってきた。
そして名も知らぬ男子生徒と楽しげに話しだした。
誰もブーンなど見ていない。いや、見てはいるのだが関わろうとしない。
つまり、荒らして欲しくないのだ。
2学期にもなると、だいたいどの生徒もどこかのグループに所属し始める。
小学校から一緒に上がってきた友人や、そのまた友人、全く面識はなかった
が気の合う者、その構成は様々だが、およそ集まるメンツというのも限定されてくる。
みな、自分のテリトリーに入ってきてほしくないのである。ましてや昨日来たばかり
の転校生、それも口下手で、授業中に勝手に早退してしまうようなイレギュラーな奴
には、自分の縄張りを荒らして欲しくないのである。
しまう。
そんなのはいやだ。ならばいけ。
(;^ω^)「お……」
ブーンが再び話し掛けようとした瞬間、教室に他の生徒が入ってきた。
そして名も知らぬ男子生徒と楽しげに話しだした。
誰もブーンなど見ていない。いや、見てはいるのだが関わろうとしない。
つまり、荒らして欲しくないのだ。
2学期にもなると、だいたいどの生徒もどこかのグループに所属し始める。
小学校から一緒に上がってきた友人や、そのまた友人、全く面識はなかった
が気の合う者、その構成は様々だが、およそ集まるメンツというのも限定されてくる。
みな、自分のテリトリーに入ってきてほしくないのである。ましてや昨日来たばかり
の転校生、それも口下手で、授業中に勝手に早退してしまうようなイレギュラーな奴
には、自分の縄張りを荒らして欲しくないのである。
36: :2009/02/20(金) 21:58:25.65 ID:
なるほど、とブーンは思った。
自分は、裸の王様だった。今まで無難に人と関われたのは友人が
いたからで、友人達が自分の言葉をうまく広げ、会話として成立させ
てくれていたのだ。
空虚。
ブーンの胸中は空虚で満たされていった。
そしてその日を境に、ブーンは学校を休みがちになる。
自分は、裸の王様だった。今まで無難に人と関われたのは友人が
いたからで、友人達が自分の言葉をうまく広げ、会話として成立させ
てくれていたのだ。
空虚。
ブーンの胸中は空虚で満たされていった。
そしてその日を境に、ブーンは学校を休みがちになる。
38: :2009/02/20(金) 21:59:53.55 ID:
“友達がいないから学校に行きたくない”とも言えず、親には毎回仮病を
使っていた。
明らかに多い病気の回数についてブーンを問いたださないのは、両親も
薄らと感付いているからなのだろう。
たまに学校に行こうとすると、母は喜んだ。
普段の夕餉よりも豪華と思える弁当をブーンに持たせてくれた。
どんな思いで母は弁当を作ってくれたのか。きっと友人達と輪を作り、談
笑しながらの食事を願って調理してくれたのだろう。
実際はトイレの個室にこもり、物音をたてずに静かに咀嚼しているだけ。
たまに漏れる嗚咽のせいで、最早味などわからなかった。
ブーンは教室での大半を寝て過ごした。机にうつぶせに突っ伏して、眠る。
そうすると時間が早く過ぎていってくれる。
眠くない時ももちろんあったが、他に術がないので同じように机に額をくっつ
けていた。
誰も起こそうとしない。周から談笑が聞こえる。耳に蓋がないことを本気で不
便だと思った。
使っていた。
明らかに多い病気の回数についてブーンを問いたださないのは、両親も
薄らと感付いているからなのだろう。
たまに学校に行こうとすると、母は喜んだ。
普段の夕餉よりも豪華と思える弁当をブーンに持たせてくれた。
どんな思いで母は弁当を作ってくれたのか。きっと友人達と輪を作り、談
笑しながらの食事を願って調理してくれたのだろう。
実際はトイレの個室にこもり、物音をたてずに静かに咀嚼しているだけ。
たまに漏れる嗚咽のせいで、最早味などわからなかった。
ブーンは教室での大半を寝て過ごした。机にうつぶせに突っ伏して、眠る。
そうすると時間が早く過ぎていってくれる。
眠くない時ももちろんあったが、他に術がないので同じように机に額をくっつ
けていた。
誰も起こそうとしない。周から談笑が聞こえる。耳に蓋がないことを本気で不
便だと思った。
39: :2009/02/20(金) 22:00:36.50 ID:
便所飯w
40: :2009/02/20(金) 22:01:27.30 ID:
そして誰も話し掛けてこないのが煩わしくなくて助かると心の中で嘯いた。
嘘だ。
なら、なぜこんなにも胸が苦しい? 本当は人の輪に加わりたいくせに。
そんな考えが頭をよぎるたび、ブーンは瞼の裏が熱くなった。
周囲から聞こえてくる笑い声がまるで呪咀の言葉のように、ブーンの頭の
中にいつまでも響いていた。
そして今日もブーンは自室で泣いていた。
今日は両親がいない。気兼ねなく涙を流すにはうってつけの日だった。
ブーンは昔の地元に戻りたかった。みんなの元に、住み慣れた町に帰りた
かった。
しかしそれは現実的ではない。中学一年生のブーンが一人暮らしをするな
ど、荒唐無稽もいいところだ。
嘘だ。
なら、なぜこんなにも胸が苦しい? 本当は人の輪に加わりたいくせに。
そんな考えが頭をよぎるたび、ブーンは瞼の裏が熱くなった。
周囲から聞こえてくる笑い声がまるで呪咀の言葉のように、ブーンの頭の
中にいつまでも響いていた。
そして今日もブーンは自室で泣いていた。
今日は両親がいない。気兼ねなく涙を流すにはうってつけの日だった。
ブーンは昔の地元に戻りたかった。みんなの元に、住み慣れた町に帰りた
かった。
しかしそれは現実的ではない。中学一年生のブーンが一人暮らしをするな
ど、荒唐無稽もいいところだ。
41: :2009/02/20(金) 22:01:28.46 ID:
カワイソス
43: :2009/02/20(金) 22:03:06.37 ID:
それに、両親にそんな事を言えるはずがない。ブーンが引っ越
したいと言いだせば必ず理由を聞いてくるだろう。
理由を話して泣きながら訴えれば、あるいは聞き入れてくれ、以
前のボロアパートに戻れるかもしれない。
しかし、この新築は父と母の夢だったのだ。せっかく叶えた夢を、
自分のせいで手放させるなんて悪い冗談としか思えない。それで
後に残るのは多額の借金。馬鹿らしい、喜劇にもなりはしない。
つまるところ、どんな形であれブーンはこの土地で生きていくしか
ないのである。
そのことがブーンに重くのしかかる。重くて重くて、また視界がぼ
やけてくる。
――そして、それはいた。
涙が落ち着きを見せ、霞み掛かったような視界が元に戻りつつあ
った時、ブーンの目の前に、それはいた。
(´・ω・`)「やあ」
したいと言いだせば必ず理由を聞いてくるだろう。
理由を話して泣きながら訴えれば、あるいは聞き入れてくれ、以
前のボロアパートに戻れるかもしれない。
しかし、この新築は父と母の夢だったのだ。せっかく叶えた夢を、
自分のせいで手放させるなんて悪い冗談としか思えない。それで
後に残るのは多額の借金。馬鹿らしい、喜劇にもなりはしない。
つまるところ、どんな形であれブーンはこの土地で生きていくしか
ないのである。
そのことがブーンに重くのしかかる。重くて重くて、また視界がぼ
やけてくる。
――そして、それはいた。
涙が落ち着きを見せ、霞み掛かったような視界が元に戻りつつあ
った時、ブーンの目の前に、それはいた。
(´・ω・`)「やあ」
44: :2009/02/20(金) 22:04:23.57 ID:
ショボン・・・か
45: :2009/02/20(金) 22:04:24.06 ID:
猫である。目前に猫がいる。名前は聞いてない。
いやいや、おかしい。ついに狂ったか。
人間は寂しさを極めると、頭がおかしくなるという。そしてありもし
ない音、いもしない物を確かに捉え、まるでそこに誰かがいるかの
ように振る舞うと聞く。
なんてこった。まさか自分が狂うとは。
目の前に猫がいる。
いや、猫がいるだけならいい。いつの間にか部屋に入り込んでいた
とか、強引ながらも納得できる言い訳を自分に出来る。
しかし、この猫はかなり小さいのだ。およそ体高15センチ。二足直立
をしている。
その上、喋った。気さくに挨拶までしてきやがった。
そして、これが一番問題なのだが、猫である。いやいや、猫は猫なの
だが、何というか、アニメチックにデフォルトされた猫である。目はつぶ
らで、その少し上にハの字に垂れ下がった眉毛がある。
いやいや、おかしい。ついに狂ったか。
人間は寂しさを極めると、頭がおかしくなるという。そしてありもし
ない音、いもしない物を確かに捉え、まるでそこに誰かがいるかの
ように振る舞うと聞く。
なんてこった。まさか自分が狂うとは。
目の前に猫がいる。
いや、猫がいるだけならいい。いつの間にか部屋に入り込んでいた
とか、強引ながらも納得できる言い訳を自分に出来る。
しかし、この猫はかなり小さいのだ。およそ体高15センチ。二足直立
をしている。
その上、喋った。気さくに挨拶までしてきやがった。
そして、これが一番問題なのだが、猫である。いやいや、猫は猫なの
だが、何というか、アニメチックにデフォルトされた猫である。目はつぶ
らで、その少し上にハの字に垂れ下がった眉毛がある。
46: :2009/02/20(金) 22:05:41.08 ID:
心情描写が的確で面白いな
しえーん!
しえーん!
47: :2009/02/20(金) 22:05:42.71 ID:
つまり、現実とかなりかけ離れた猫だった。
これを猫と判別できたのは偉大なるイデアのおかげかもしれない。
とにかく、今目の前にいる猫は、ブーンが普段駐車場などで見かけ
るような猫とは全然違っていた。
(;^ω^)「お、おまえ、何だお?」
なんとも要領を得ない質問だが他に聞きようがない。
(´・ω・`)「なにって、君が今流してたろ?」
変な猫は答える。
(;^ω^)「えっと、僕が流してたって?」
(´・ω・`)「僕は君の『涙』さ」
は? 言ってる意味が分からない。本当に分からない。何言ってるんだこの猫。
僕の涙ってどういうことだ? 確かに今、僕は泣いていたけど。
(;^ω^)「涙って、この涙かお?」
ブーンはフローリングに零れ落ちている涙を指す。
これを猫と判別できたのは偉大なるイデアのおかげかもしれない。
とにかく、今目の前にいる猫は、ブーンが普段駐車場などで見かけ
るような猫とは全然違っていた。
(;^ω^)「お、おまえ、何だお?」
なんとも要領を得ない質問だが他に聞きようがない。
(´・ω・`)「なにって、君が今流してたろ?」
変な猫は答える。
(;^ω^)「えっと、僕が流してたって?」
(´・ω・`)「僕は君の『涙』さ」
は? 言ってる意味が分からない。本当に分からない。何言ってるんだこの猫。
僕の涙ってどういうことだ? 確かに今、僕は泣いていたけど。
(;^ω^)「涙って、この涙かお?」
ブーンはフローリングに零れ落ちている涙を指す。
48: :2009/02/20(金) 22:07:04.03 ID:
(´・ω・`)「そう、その涙」
どうやら本当にイカレてしまったらしい。
(;^ω^)「涙の妖精ってことかお?」
(´・ω・`)「妖精? あれはお伽話の中の生き物だろ? 僕は涙だ。今
君が僕を流したんじゃないか」
妖精じゃない? いや、まぁ妖精でもおかしいけど。
(;^ω^)「その涙さんがなんの用だお?」
(´・ω・`)「変なこと聞くなぁ。君は用があって涙を流すのかい?」
頭が痛くなってくる。つまりこいつは自分の涙で、特に用があって出て
きたわけではないらしい。というか自分が勝手に出したのか。
(;^ω^)「何で涙が猫の形をしていて、言葉を喋ってるんだお?」
「知らんがな」と涙は答えた。
どうやら本当にイカレてしまったらしい。
(;^ω^)「涙の妖精ってことかお?」
(´・ω・`)「妖精? あれはお伽話の中の生き物だろ? 僕は涙だ。今
君が僕を流したんじゃないか」
妖精じゃない? いや、まぁ妖精でもおかしいけど。
(;^ω^)「その涙さんがなんの用だお?」
(´・ω・`)「変なこと聞くなぁ。君は用があって涙を流すのかい?」
頭が痛くなってくる。つまりこいつは自分の涙で、特に用があって出て
きたわけではないらしい。というか自分が勝手に出したのか。
(;^ω^)「何で涙が猫の形をしていて、言葉を喋ってるんだお?」
「知らんがな」と涙は答えた。
49: :2009/02/20(金) 22:08:17.27 ID:
(´・ω・`)「君だって何でそんな顔をしていて、言葉を喋れているのか分
からないだろう? 同じことさ。ただそこに在っただけなんだよ」
ブーンは事態を良く飲み込めないでいた。そして現状を打破すべく、あ
る行動にでる。
( ^ω^)「わかったお」
そう言うとティッシュを10枚ほどとり出し、涙と言い張る猫をくるむ。なん
となく直接素手で触るのはいやだった。
(´・ω・`)「あらら」
窓を開け、涙をくるんだティッシュごと外に捨てる。
( ^ω^)「うん、これでもう変なものを見ずに済むお」
ほっと胸を撫で下ろし、後ろを振り返る。
(´・ω・`)「やあ」
力が抜けた。何でまだいるんだ? 今確かに外に捨てたのに。
からないだろう? 同じことさ。ただそこに在っただけなんだよ」
ブーンは事態を良く飲み込めないでいた。そして現状を打破すべく、あ
る行動にでる。
( ^ω^)「わかったお」
そう言うとティッシュを10枚ほどとり出し、涙と言い張る猫をくるむ。なん
となく直接素手で触るのはいやだった。
(´・ω・`)「あらら」
窓を開け、涙をくるんだティッシュごと外に捨てる。
( ^ω^)「うん、これでもう変なものを見ずに済むお」
ほっと胸を撫で下ろし、後ろを振り返る。
(´・ω・`)「やあ」
力が抜けた。何でまだいるんだ? 今確かに外に捨てたのに。
50: :2009/02/20(金) 22:09:00.15 ID:
涙支援
52: :2009/02/20(金) 22:09:30.30 ID:
(´・ω・`)「捨てても無駄だよ。だって、君はまだ泣いているから」
なんてこった。この猫は自分が泣いている限りはいなくならないらしい。
しかし、
(;^ω^)「僕はもう泣いてないお。涙はとまったお」
そうブーンは抗議する。
(´・ω・`)「いや、君はまだ泣いているさ。そうだろう?」
ブーンは言葉に詰まる。確かに、今は猫が現れた驚きで涙は止んだが、
すぐにまた涙は零れ出てくるだろう。
やれやれ、と涙が嘆息した。
(´・ω・`)「君はまた泣いていたんだねぇ。しょうがないなぁ」
また? どういうことだ?
なんてこった。この猫は自分が泣いている限りはいなくならないらしい。
しかし、
(;^ω^)「僕はもう泣いてないお。涙はとまったお」
そうブーンは抗議する。
(´・ω・`)「いや、君はまだ泣いているさ。そうだろう?」
ブーンは言葉に詰まる。確かに、今は猫が現れた驚きで涙は止んだが、
すぐにまた涙は零れ出てくるだろう。
やれやれ、と涙が嘆息した。
(´・ω・`)「君はまた泣いていたんだねぇ。しょうがないなぁ」
また? どういうことだ?
53: :2009/02/20(金) 22:11:04.62 ID:
(´・ω・`)「まぁとにかく、君が本当に泣きやんだら僕はいなくなるからさ」
涙が、すっ、と小さな手を伸ばしてきた。
(´・ω・`)「それまでの間、仲良くやろうぜ」
ブーンはしばらく躊躇していたが、涙の真っ直ぐな視線に負けて、手を伸ばした。
親指と人差し指で涙の手を握り、軽く上下に振ってやる。
涙の手は、ふわふわしていた。
( ^ω^)「ところで、おまえ名前はあるのかお?」
ブーンと涙が出会って1時間ほど。握手したからといって特に何も進展はなかった。
涙はごろごろとテレビを見ている。ブーンは最初こそなんだこいつ、と思ったが、別に
涙にしてもらうような用事はなかったので放っておいた。
(´・ω・`)「あるよ」
( ^ω^)「なんて名前なんだお?」
(´・ω・`)「ショボン」
ショボン? なんてふざけた名前だ。涙だから、ショボン。しかし確かに似合っている。
眉毛もハの字だし。
涙が、すっ、と小さな手を伸ばしてきた。
(´・ω・`)「それまでの間、仲良くやろうぜ」
ブーンはしばらく躊躇していたが、涙の真っ直ぐな視線に負けて、手を伸ばした。
親指と人差し指で涙の手を握り、軽く上下に振ってやる。
涙の手は、ふわふわしていた。
( ^ω^)「ところで、おまえ名前はあるのかお?」
ブーンと涙が出会って1時間ほど。握手したからといって特に何も進展はなかった。
涙はごろごろとテレビを見ている。ブーンは最初こそなんだこいつ、と思ったが、別に
涙にしてもらうような用事はなかったので放っておいた。
(´・ω・`)「あるよ」
( ^ω^)「なんて名前なんだお?」
(´・ω・`)「ショボン」
ショボン? なんてふざけた名前だ。涙だから、ショボン。しかし確かに似合っている。
眉毛もハの字だし。
54: :2009/02/20(金) 22:12:17.81 ID:
(´・ω・`)「君はブーンだろ?」
ショボンがそれまで見ていたテレビからブーンのほうに視線を向ける。
( ^ω^)「知ってるのかお?」
(´・ω・`)「そりゃね。なんたって僕の産みの親だからね」
親という割には随分なれなれしく接してくる。
ブーンは半ば呆れていた。
その時、玄関のほうから「ただいま」という声が家に響く。母が帰ってきたらしい。
( ^ω^)「おっおっ、母ちゃんが帰ってきたお」
(´・ω・`)「みたいだね。お出迎えにいってあげなよ」
( ^ω^)「言われなくてもそうするお。ショボンはおとなしく待ってるんだお」
ショボンはテレビを見ながら生返事を返した。
ショボンがそれまで見ていたテレビからブーンのほうに視線を向ける。
( ^ω^)「知ってるのかお?」
(´・ω・`)「そりゃね。なんたって僕の産みの親だからね」
親という割には随分なれなれしく接してくる。
ブーンは半ば呆れていた。
その時、玄関のほうから「ただいま」という声が家に響く。母が帰ってきたらしい。
( ^ω^)「おっおっ、母ちゃんが帰ってきたお」
(´・ω・`)「みたいだね。お出迎えにいってあげなよ」
( ^ω^)「言われなくてもそうするお。ショボンはおとなしく待ってるんだお」
ショボンはテレビを見ながら生返事を返した。
56: :2009/02/20(金) 22:12:54.24 ID:
面白くなってきた
57: :2009/02/20(金) 22:13:32.10 ID:
階下に行くと母が靴を脱いでいた。
( ^ω^)「母ちゃん、おかえりだお」
J( ‘-`)し「ただいま、ブーン。具合はもういいの?」
(;^ω^)「おっおっ、もう平気だお」
J( ‘-`)し「そう? じゃあ今ご飯の用意するから、ちょっと待っててね」
(;^ω^)「うん……」
ブーンは食事が出来上がるまで、自室で待つことにした。
自室ではやはりショボンがテレビを見ていた。
(´・ω・`)「おかえり」
( ^ω^)「母ちゃんが帰ってきたお」
ショボンはふーんとさして興味もなさそうに返事をした。
( ^ω^)「母ちゃん、おかえりだお」
J( ‘-`)し「ただいま、ブーン。具合はもういいの?」
(;^ω^)「おっおっ、もう平気だお」
J( ‘-`)し「そう? じゃあ今ご飯の用意するから、ちょっと待っててね」
(;^ω^)「うん……」
ブーンは食事が出来上がるまで、自室で待つことにした。
自室ではやはりショボンがテレビを見ていた。
(´・ω・`)「おかえり」
( ^ω^)「母ちゃんが帰ってきたお」
ショボンはふーんとさして興味もなさそうに返事をした。
58: :2009/02/20(金) 22:14:45.20 ID:
しばらくすると母親がブーンを呼ぶ声がした。どうやら食事が出来たようだ。
( ^ω^)「ご飯が出来たみたいだから、行ってくるお」
(´・ω・`)「あぁ、じゃあ僕も行くよ」
(;^ω^)「ショボンもご飯とか食べるお?」
(´・ω・`)「食べるわけないじゃないか。涙にはご飯なんていらないよ。でもまぁ、
やることもないしね」
そう言ってショボンはブーンの手のひらに乗った。しかしどうもポジションが気
に入らないらしい。手から腕、腕から肩、肩から頭へと登っていった。どうやらブ
ーンの頭の上に居場所が落ち着いたらしい。
(;^ω^)「おっおっ、頭の上に乗るなお」
(´・ω・`)「別にいいじゃないか。さぁ行こうよ」
ブーンはショボンに促されしぶしぶと一階に降りる。
リビングには母が席に着いていた。テーブルには二人分の食事が用意されて
いる。
J( ‘-`)し「今日お父さんが遅くなるみたいだから先に食べちゃってってさ」
( ^ω^)「そうかお」
相槌を打ちながらブーンも自分の椅子に着席する。
( ^ω^)「ご飯が出来たみたいだから、行ってくるお」
(´・ω・`)「あぁ、じゃあ僕も行くよ」
(;^ω^)「ショボンもご飯とか食べるお?」
(´・ω・`)「食べるわけないじゃないか。涙にはご飯なんていらないよ。でもまぁ、
やることもないしね」
そう言ってショボンはブーンの手のひらに乗った。しかしどうもポジションが気
に入らないらしい。手から腕、腕から肩、肩から頭へと登っていった。どうやらブ
ーンの頭の上に居場所が落ち着いたらしい。
(;^ω^)「おっおっ、頭の上に乗るなお」
(´・ω・`)「別にいいじゃないか。さぁ行こうよ」
ブーンはショボンに促されしぶしぶと一階に降りる。
リビングには母が席に着いていた。テーブルには二人分の食事が用意されて
いる。
J( ‘-`)し「今日お父さんが遅くなるみたいだから先に食べちゃってってさ」
( ^ω^)「そうかお」
相槌を打ちながらブーンも自分の椅子に着席する。
60: :2009/02/20(金) 22:15:45.69 ID:
このショボンの性格好きだw
61: :2009/02/20(金) 22:16:25.77 ID:
夕飯は魚の煮物だった。あまり好きなメニューではない。気分が重い上、食事が
好物ではないとなると、自然と箸の進みも鈍くなる。
それでも3分の2程たいらげたところ、母が話しかけてきた。
J( ‘-`)し「明日は学校に行けそう?」
(;^ω^)「おっ、う、うん」
ブーンの返事も歯切れが悪い。正直、学校に行く気分になるかどうかは、その日の
朝次第なので今確約は出来ない。
J( ‘-`)し「じゃあ、お弁当作らなきゃね」
(;^ω^)「う、うん」
J( ‘-`)し「ところでさ」
母はずっと気になっていたことを訊いた。
J( ‘-`)し「あんた、頭の上に何乗っけてんの?」
(;^ω^)「えっ」
ブーンは慌てた。まさかショボンが自分以外に見えるとは思わなかったのだ。なんか良
い言い訳はないものか。
(;^ω^)「えっと、これは、ぬいぐるみだお!」
好物ではないとなると、自然と箸の進みも鈍くなる。
それでも3分の2程たいらげたところ、母が話しかけてきた。
J( ‘-`)し「明日は学校に行けそう?」
(;^ω^)「おっ、う、うん」
ブーンの返事も歯切れが悪い。正直、学校に行く気分になるかどうかは、その日の
朝次第なので今確約は出来ない。
J( ‘-`)し「じゃあ、お弁当作らなきゃね」
(;^ω^)「う、うん」
J( ‘-`)し「ところでさ」
母はずっと気になっていたことを訊いた。
J( ‘-`)し「あんた、頭の上に何乗っけてんの?」
(;^ω^)「えっ」
ブーンは慌てた。まさかショボンが自分以外に見えるとは思わなかったのだ。なんか良
い言い訳はないものか。
(;^ω^)「えっと、これは、ぬいぐるみだお!」
62: :2009/02/20(金) 22:17:08.07 ID:
ショボンがかわいいなw
63: :2009/02/20(金) 22:17:48.87 ID:
かなり苦しい言い訳になってしまった。これではなぜ頭に乗せてるのかの説
明を兼ねていない。ブーンもそこは失念していたようだ。
案の定、母は怪訝そうな顔でショボンを見ている。
(;^ω^)「ぼ、僕はもう部屋に戻るお」
そう言ってブーンはバタバタと自室に戻っていく。
部屋に入り、ドアを閉める。当たり前だがここには誰もいない。
(;^ω^)「ショボン、ショボン!」
(´・ω・`)「なんだい?」
( ^ω^)「おまえ、人にも見えるのかお!? 僕だけに見えるんじゃないのか
お!?」
(´・ω・`)「当たり前だろう?」
ショボンは何を当然の事を、といった感じで肩をすくめた。
(´・ω・`)「ブーンは僕を幽霊か何かと勘違いしてないかい? 最初に言ったけ
ど、僕はただの涙だぜ? 普通に見えるし触れるさ」
(;^ω^)「そういう事は先に言えお」
(´・ω・`)「言うまでもないと思ったんだけどね」
明を兼ねていない。ブーンもそこは失念していたようだ。
案の定、母は怪訝そうな顔でショボンを見ている。
(;^ω^)「ぼ、僕はもう部屋に戻るお」
そう言ってブーンはバタバタと自室に戻っていく。
部屋に入り、ドアを閉める。当たり前だがここには誰もいない。
(;^ω^)「ショボン、ショボン!」
(´・ω・`)「なんだい?」
( ^ω^)「おまえ、人にも見えるのかお!? 僕だけに見えるんじゃないのか
お!?」
(´・ω・`)「当たり前だろう?」
ショボンは何を当然の事を、といった感じで肩をすくめた。
(´・ω・`)「ブーンは僕を幽霊か何かと勘違いしてないかい? 最初に言ったけ
ど、僕はただの涙だぜ? 普通に見えるし触れるさ」
(;^ω^)「そういう事は先に言えお」
(´・ω・`)「言うまでもないと思ったんだけどね」
64: :2009/02/20(金) 22:18:46.21 ID:
ワロスwwww
65: :2009/02/20(金) 22:19:02.58 ID:
ショボンにとっては考えるまでもないことかもしれないが、あいにくブ
ーンには涙の常識なんてわからない。
というか存在自体が非常識なのに、それへの対応など知るはずもない。
(´・ω・`)「それよりあんまりお母さんに心配かけるなよ」
まるで他人事のように言うな、とブーンは思った。
( ^ω^)「誰のせいで心配かけたんだと思ってるお。頭に変なもの乗せてた
ら誰だって不審に思うお」
「そうじゃなくて」とショボン。
(´・ω・`)「さっきの話を聞いてる限り、あんまり学校に行ってないんだろ?」
そっちの話か、とブーンは苦笑した。
(´・ω・`)「ちゃんと学校行かなきゃダメだよ。なんで行きたくないんだい?」
言ってしまおうか、とブーンは思った。悩みは誰かに話してしまったほうが楽
になる場合もあるという。しかも親にも相談できなかった程ブーンの胸を痛ませ
ている悩みだ。誰かに言ってしまいたい気持ちはもちろん、ある。
ーンには涙の常識なんてわからない。
というか存在自体が非常識なのに、それへの対応など知るはずもない。
(´・ω・`)「それよりあんまりお母さんに心配かけるなよ」
まるで他人事のように言うな、とブーンは思った。
( ^ω^)「誰のせいで心配かけたんだと思ってるお。頭に変なもの乗せてた
ら誰だって不審に思うお」
「そうじゃなくて」とショボン。
(´・ω・`)「さっきの話を聞いてる限り、あんまり学校に行ってないんだろ?」
そっちの話か、とブーンは苦笑した。
(´・ω・`)「ちゃんと学校行かなきゃダメだよ。なんで行きたくないんだい?」
言ってしまおうか、とブーンは思った。悩みは誰かに話してしまったほうが楽
になる場合もあるという。しかも親にも相談できなかった程ブーンの胸を痛ませ
ている悩みだ。誰かに言ってしまいたい気持ちはもちろん、ある。
66: :2009/02/20(金) 22:20:44.45 ID:
だが、プライドが邪魔して言葉を詰まらせる。
(´・ω・`)「まぁ、言いたくなかったらいいけどさ」
そう言ってショボンはごろりとベッドに横になった。なんだか間抜
けな姿である。どうやらコイツはなかなかの怠け者のようだ。
(´・ω・`)「明日は学校に行くの?」
( ^ω^)「行けるかどうかは分からないけど、多分、行くお。母ちゃ
んとそう約束しちゃったし」
(´・ω・`)「うん、それがいいと思うよ。じゃあ今日は早く寝て、明日
に備えなきゃね」
正直、昼夜関係なく寝起きしていたので自分が眠いかどうかなん
て分からなかった。
しかしショボンの意見ももっともだったので、今日はもう寝ることに
した。
( ^ω^)「じゃあ、お風呂に入ってもう寝るお」
(´・ω・`)「お風呂に入るの? じゃあ僕もご一緒しようかな」
そういうとショボンは食事のときにそうしたように、ブーンの頭上へと登り始めた。
(´・ω・`)「まぁ、言いたくなかったらいいけどさ」
そう言ってショボンはごろりとベッドに横になった。なんだか間抜
けな姿である。どうやらコイツはなかなかの怠け者のようだ。
(´・ω・`)「明日は学校に行くの?」
( ^ω^)「行けるかどうかは分からないけど、多分、行くお。母ちゃ
んとそう約束しちゃったし」
(´・ω・`)「うん、それがいいと思うよ。じゃあ今日は早く寝て、明日
に備えなきゃね」
正直、昼夜関係なく寝起きしていたので自分が眠いかどうかなん
て分からなかった。
しかしショボンの意見ももっともだったので、今日はもう寝ることに
した。
( ^ω^)「じゃあ、お風呂に入ってもう寝るお」
(´・ω・`)「お風呂に入るの? じゃあ僕もご一緒しようかな」
そういうとショボンは食事のときにそうしたように、ブーンの頭上へと登り始めた。
67: :2009/02/20(金) 22:22:09.44 ID:
( ^ω^)「ショボンもお風呂に入るのかお?」
(´・ω・`)「まぁね。僕はこれでも綺麗好きなんだ」
涙の癖に生意気なことを言うやつだな、と苦笑しながらブーンは
浴室に向かった。
浴室に入るとショボンはててて、とブーンから降り、いきなり湯船
につかりだした。
(;^ω^)「あ、こら。いきなり湯船に入る奴があるか。ちゃんと体洗
えお」
(´・ω・`)「だって、面倒くさいんだもん。それに本当は僕、体なんか
洗わなくてもいいんだぜ?」
( ^ω^)「んだよもう」
気持ちよさそうに湯船につかる猫を見ていると、自分も入りたくなっ
てそわそわする。しかし、そこは人間様の尊厳がある。ちゃんと後に
入る人のことも考え、体を洗ってから風呂に入るべきなのだ。
そう思いながらもブーンは湯船に飛び込む。
(´・ω・`)「まぁね。僕はこれでも綺麗好きなんだ」
涙の癖に生意気なことを言うやつだな、と苦笑しながらブーンは
浴室に向かった。
浴室に入るとショボンはててて、とブーンから降り、いきなり湯船
につかりだした。
(;^ω^)「あ、こら。いきなり湯船に入る奴があるか。ちゃんと体洗
えお」
(´・ω・`)「だって、面倒くさいんだもん。それに本当は僕、体なんか
洗わなくてもいいんだぜ?」
( ^ω^)「んだよもう」
気持ちよさそうに湯船につかる猫を見ていると、自分も入りたくなっ
てそわそわする。しかし、そこは人間様の尊厳がある。ちゃんと後に
入る人のことも考え、体を洗ってから風呂に入るべきなのだ。
そう思いながらもブーンは湯船に飛び込む。
68: :2009/02/20(金) 22:23:35.09 ID:
(;´・ω・`)「うわわわ」
ブーンが入ったせいで風呂の湯があふれ出した。そしてそれに合わせ
てショボンも落ちてしまった。
浴室のタイルの上を滑るように流されていく。最後に排水溝の金具に引
っかかり、止まる。ショボンは怒るかと思いきや、きらきらした目でこちらを
見てきた。
(´・ω・`)「面白い」
どうやら湯と一緒に流れ落ちるのが気に入ったようだ。涙としての本能だ
ろうか。
ショボンはもう一度同じ事をするようにブーンにせがんだ。湯が目減りして
しまったので、足し湯をし、もう一度ブーンはお湯をあふれさせてやる。
先ほどと同じようにお湯と一緒にショボンが落ち、流れ、そして排水溝で止
まる。
ショボンはきゃっきゃと嬉しそうだ。もっとしょぼくれた奴かと思いきや、意外
にも子供みたいなことを喜ぶ奴だとブーンは思った。
さすがに3度目をねだられた時は、お湯がもったいないという理由で断った
が。
(´・ω・`)「いやー、お風呂って面白いね」
ブーンが入ったせいで風呂の湯があふれ出した。そしてそれに合わせ
てショボンも落ちてしまった。
浴室のタイルの上を滑るように流されていく。最後に排水溝の金具に引
っかかり、止まる。ショボンは怒るかと思いきや、きらきらした目でこちらを
見てきた。
(´・ω・`)「面白い」
どうやら湯と一緒に流れ落ちるのが気に入ったようだ。涙としての本能だ
ろうか。
ショボンはもう一度同じ事をするようにブーンにせがんだ。湯が目減りして
しまったので、足し湯をし、もう一度ブーンはお湯をあふれさせてやる。
先ほどと同じようにお湯と一緒にショボンが落ち、流れ、そして排水溝で止
まる。
ショボンはきゃっきゃと嬉しそうだ。もっとしょぼくれた奴かと思いきや、意外
にも子供みたいなことを喜ぶ奴だとブーンは思った。
さすがに3度目をねだられた時は、お湯がもったいないという理由で断った
が。
(´・ω・`)「いやー、お風呂って面白いね」
70: :2009/02/20(金) 22:24:52.57 ID:
あんな楽しみ方をする奴なんておまえ以外にいない、という悪態が喉まで
出掛かって、ブーンはそれを飲み込んだ。風呂の楽しみ方なんてそれぞれ
でいいのである。
ショボンとブーンは十分に体が温まったことを確認して、湯船から出た。
今度は体を洗う番だ。
ブーンは頭から綺麗にしていくタイプだったので、まずシャンプーを手に取
り、頭皮をごしごしとやり始めた。硬くつむった目を緩め、薄っすらとショボン
を見てみる。
小さな手で器用に体を洗っている。どうやらショボンは体から洗っていくの
が好きなようだ。そして次に頭。そこでブーンは噴出してしまった。
手が頭に届いていないのである。自分を見てブーンが笑っている事に気付
いたショボンは、つまらなそうにブーンを咎めた。
(´・ω・`)「なんだよ」
( ^ω^)「だって、ショボン、頭に手が届いていないお」
(´・ω・`)「うるさいなぁ」
出掛かって、ブーンはそれを飲み込んだ。風呂の楽しみ方なんてそれぞれ
でいいのである。
ショボンとブーンは十分に体が温まったことを確認して、湯船から出た。
今度は体を洗う番だ。
ブーンは頭から綺麗にしていくタイプだったので、まずシャンプーを手に取
り、頭皮をごしごしとやり始めた。硬くつむった目を緩め、薄っすらとショボン
を見てみる。
小さな手で器用に体を洗っている。どうやらショボンは体から洗っていくの
が好きなようだ。そして次に頭。そこでブーンは噴出してしまった。
手が頭に届いていないのである。自分を見てブーンが笑っている事に気付
いたショボンは、つまらなそうにブーンを咎めた。
(´・ω・`)「なんだよ」
( ^ω^)「だって、ショボン、頭に手が届いていないお」
(´・ω・`)「うるさいなぁ」
71: :2009/02/20(金) 22:26:20.91 ID:
ショボンは心底うるさそうに言うと、頭を洗うことを諦め、それどころか体についた
石鹸を流そうともせずに湯船にむかった。
ブーンはひょい、とショボンを掴むと自分の足元のタイルにおいてやった。
( ^ω^)「せめて体ぐらいは流すお」
そう言ってショボンの体にシャワーを当ててやる。ついでに頭も洗ってやることに
した。
ごしごしと指の先で頭を揉んでやると、ショボンは気持ちよさそうに目をつぶった。
( ^ω^)「どうだお?」
(´‐ω‐`)「いいね」
そう言って目をつむり、されるがままになっているショボンは、どこからどう見ても
猫そのものだった。
ブーンがショボンを洗い終わり、今度こそ自分の番と体をごしごしやっていると、
それまで大人しく湯船につかっていたショボンが外に出たいとぐずりだした。
( ^ω^)「僕ももう終わるから、ちょっとだけ待つお」
(;´・ω・`)「だって、熱いんだよ」
石鹸を流そうともせずに湯船にむかった。
ブーンはひょい、とショボンを掴むと自分の足元のタイルにおいてやった。
( ^ω^)「せめて体ぐらいは流すお」
そう言ってショボンの体にシャワーを当ててやる。ついでに頭も洗ってやることに
した。
ごしごしと指の先で頭を揉んでやると、ショボンは気持ちよさそうに目をつぶった。
( ^ω^)「どうだお?」
(´‐ω‐`)「いいね」
そう言って目をつむり、されるがままになっているショボンは、どこからどう見ても
猫そのものだった。
ブーンがショボンを洗い終わり、今度こそ自分の番と体をごしごしやっていると、
それまで大人しく湯船につかっていたショボンが外に出たいとぐずりだした。
( ^ω^)「僕ももう終わるから、ちょっとだけ待つお」
(;´・ω・`)「だって、熱いんだよ」
72: :2009/02/20(金) 22:26:46.72 ID:
しえんしえん
なぜかわくわくして面白い
なぜかわくわくして面白い
74: :2009/02/20(金) 22:27:59.24 ID:
うるさいやつだなぁ。
ブーンはうだうだ言われるのがいやだったので、シャワーで体を洗い流すの
もそこそこに、ショボンを掴み挙げると脱衣所に移動した。
ショボンはぶるぶると体を震わせ、水分を飛ばしている。
ブーンは人間様のほとんどがそうするように、タオルでしっかりと体を拭い
ていった。
安眠のコツは、風呂から上がったら体が冷え切らないうちに布団に入って
しまうことである。いわゆる湯冷めをしてしまうと、布団に入ってからもなかな
か温まらず、震える思いをしてしまう。ブーンは先人達のその教訓を忠実に守
り、風呂から出てすぐにベッドにもぐりこんだ。ショボンはその布団の上で丸く
なっている。
どうやらうまく眠れそうだ。リモコンで電灯を消す。
(´・ω・`)「おやすみ、ブーン」
( ^ω^)「おやすみだお、ショボン」
そう言って少しすると、ショボンから寝息が漏れてきた。すぐ眠れるなんて羨ま
しい奴だ。ブーンは素直に感心した。
ブーンはうだうだ言われるのがいやだったので、シャワーで体を洗い流すの
もそこそこに、ショボンを掴み挙げると脱衣所に移動した。
ショボンはぶるぶると体を震わせ、水分を飛ばしている。
ブーンは人間様のほとんどがそうするように、タオルでしっかりと体を拭い
ていった。
安眠のコツは、風呂から上がったら体が冷え切らないうちに布団に入って
しまうことである。いわゆる湯冷めをしてしまうと、布団に入ってからもなかな
か温まらず、震える思いをしてしまう。ブーンは先人達のその教訓を忠実に守
り、風呂から出てすぐにベッドにもぐりこんだ。ショボンはその布団の上で丸く
なっている。
どうやらうまく眠れそうだ。リモコンで電灯を消す。
(´・ω・`)「おやすみ、ブーン」
( ^ω^)「おやすみだお、ショボン」
そう言って少しすると、ショボンから寝息が漏れてきた。すぐ眠れるなんて羨ま
しい奴だ。ブーンは素直に感心した。
75: :2009/02/20(金) 22:29:28.60 ID:
それにしても、と思う。今日は随分驚くべき一日だった。なにしろ自称涙のマン
ガ猫が現れ、住み着き始めたのである。信じられないようなことだ。
しかしブーンが一番驚いたのは、そんな非現実を自分が思ったよりもすんなり
と受け入れたことだ。なにが涙だ、くだらない。そう思っていたが、“そんなこともあ
るかな”と変にその状況を享受してしまった自分にびっくりする。
まぁ、いい。別にショボンがいたからといって特に害があるわけではなさそうだし、
それに何だか憎めない奴だ。
何よりも、久しぶりに誰かと会話が出来たことが、ブーンは嬉しくてたまらなかっ
た。
目覚ましの音が聞こえる。そうだ、今日は学校に行くと母に言ってしまったんだ。
のそりと起き上がる。そのとき、ベッドから何かが落ちた。ショボンだ。
忘れていた。そういえば布団の上でショボンが寝ていたんだ。ブーンは慌ててショ
ボンに駆け寄った。しかし、ショボンは動かない。何事もなかったかのようにすやす
やと寝ている。
ブーンは呆れてしまった。この調子では今起こったことも覚えてないに相違ない。
それにしてもねぼすけの涙なんて聞いたことがない。いや、涙が活動するという話
自体聞いたことがないが。ショボンがねぼすけなのか、涙は皆こうなのか、判断し
かねた。
ガ猫が現れ、住み着き始めたのである。信じられないようなことだ。
しかしブーンが一番驚いたのは、そんな非現実を自分が思ったよりもすんなり
と受け入れたことだ。なにが涙だ、くだらない。そう思っていたが、“そんなこともあ
るかな”と変にその状況を享受してしまった自分にびっくりする。
まぁ、いい。別にショボンがいたからといって特に害があるわけではなさそうだし、
それに何だか憎めない奴だ。
何よりも、久しぶりに誰かと会話が出来たことが、ブーンは嬉しくてたまらなかっ
た。
目覚ましの音が聞こえる。そうだ、今日は学校に行くと母に言ってしまったんだ。
のそりと起き上がる。そのとき、ベッドから何かが落ちた。ショボンだ。
忘れていた。そういえば布団の上でショボンが寝ていたんだ。ブーンは慌ててショ
ボンに駆け寄った。しかし、ショボンは動かない。何事もなかったかのようにすやす
やと寝ている。
ブーンは呆れてしまった。この調子では今起こったことも覚えてないに相違ない。
それにしてもねぼすけの涙なんて聞いたことがない。いや、涙が活動するという話
自体聞いたことがないが。ショボンがねぼすけなのか、涙は皆こうなのか、判断し
かねた。
76: :2009/02/20(金) 22:30:41.62 ID:
涙の数だけつよくなれるage
77: :2009/02/20(金) 22:30:41.87 ID:
だが寝ていてくれるなら、それはそれで助かる。ブーンは体調を確かめてみる。良
くはない。けど、何とか学校には行けそうだ。これで母との約束を違えないですむ。
顔を洗って制服に着替える。荷物を持ち、扉の前で深呼吸する。よし、大丈夫。今日
一日寝て過ごせばいい。いつも通りだ。
ブーンが気持ちを落ち着かせ、ドアノブに手を掛けた瞬間。
(´・ω・`)「学校に行くのかい?」
背後からショボンに話しかけられる。
( ^ω^)「起きてたのかお?」
(´・ω・`)「ひどいなぁ」
よっこいしょ、と言いながらショボンは床から起き上がり、ブーンの足元まで来る。
(´・ω・`)「起こしてくれても良かったじゃないか。ブーンは、一人で学校に行くつもりだっ
たの? 僕を置いて?」
当たり前じゃないか、と喉まで出掛かって、その言葉を飲み込む。
くはない。けど、何とか学校には行けそうだ。これで母との約束を違えないですむ。
顔を洗って制服に着替える。荷物を持ち、扉の前で深呼吸する。よし、大丈夫。今日
一日寝て過ごせばいい。いつも通りだ。
ブーンが気持ちを落ち着かせ、ドアノブに手を掛けた瞬間。
(´・ω・`)「学校に行くのかい?」
背後からショボンに話しかけられる。
( ^ω^)「起きてたのかお?」
(´・ω・`)「ひどいなぁ」
よっこいしょ、と言いながらショボンは床から起き上がり、ブーンの足元まで来る。
(´・ω・`)「起こしてくれても良かったじゃないか。ブーンは、一人で学校に行くつもりだっ
たの? 僕を置いて?」
当たり前じゃないか、と喉まで出掛かって、その言葉を飲み込む。
78: :2009/02/20(金) 22:31:54.90 ID:
この部屋で一人ブーンの帰りを待つのは寂しすぎる、そう思った。それに、
いきさつはどうあれブーンがショボンを生み出したのなら、しっかり面倒をみ
る義務がある、とも思った。
足元を見てみるとショボンはブーンの足をよじ登ろうとしている。頭に乗りた
いのだろう。そう察してブーンはショボンを優しく掴み、自分の頭の上に乗せて
やる。
( ^ω^)「悪かったお。置いていかないお」
(´・ω・`)「うん。そうしてくれると僕も嬉しいよ」
そんな会話をして外にでる。
玄関をでるブーンの足取りは、ショボンを乗せて少しは重くなっているはずな
のに、なぜだかいつもよりも軽い気がした。
おおよそ普通の生徒よりも早い登校時間。ブーンはいつもこの時間に学校に
向かう。いつだったかのようにそわそわして、ではない。登校途中の生徒達に会
いたくないのである。
いつだって孤独を感じるのは一人きりよりも群衆の中――。なるほど、確かに
真理だと思う。しかし、その真理を知るための対価としては、この孤独は過払い
に過ぎるのではないのかと思えた。
いきさつはどうあれブーンがショボンを生み出したのなら、しっかり面倒をみ
る義務がある、とも思った。
足元を見てみるとショボンはブーンの足をよじ登ろうとしている。頭に乗りた
いのだろう。そう察してブーンはショボンを優しく掴み、自分の頭の上に乗せて
やる。
( ^ω^)「悪かったお。置いていかないお」
(´・ω・`)「うん。そうしてくれると僕も嬉しいよ」
そんな会話をして外にでる。
玄関をでるブーンの足取りは、ショボンを乗せて少しは重くなっているはずな
のに、なぜだかいつもよりも軽い気がした。
おおよそ普通の生徒よりも早い登校時間。ブーンはいつもこの時間に学校に
向かう。いつだったかのようにそわそわして、ではない。登校途中の生徒達に会
いたくないのである。
いつだって孤独を感じるのは一人きりよりも群衆の中――。なるほど、確かに
真理だと思う。しかし、その真理を知るための対価としては、この孤独は過払い
に過ぎるのではないのかと思えた。
80: :2009/02/20(金) 22:33:12.46 ID:
(´・ω・`)「ねぇねぇ、なんでこんな早くに登校するのさ?」
ショボンが他意なく聞いてくる。
( ^ω^)「人に会いたくないんだお」
ブーンも他意なく答える。
ショボンはふーん、と返事をするとブーンよりも高いであろう目線で景色
を眺め始めた。
興味がないのか、全てを察するにはその一言でよかったのか。どちらに
しろブーンにはありがたいことだった。もし根掘り葉掘り質問されていたら、
平常心を保ったまま答えられる自信はない。自分自身の心臓を、どうぞ、と
言ってさらけ出せるほどブーンは強くなかった。
学校が近付いてきた。心配はないと思うが、一応ブーンはショボンに声を掛
けた。
( ^ω^)「ショボン、学校にいるときは僕の内ポケットにでも隠れてて欲しいお」
(´・ω・`)「また昨日みたいに誰かに見られたら困る、ってことかい?」
ブーンは頷く。
(´・ω・`)「そうか。まぁ僕にとっては歓迎できる提案じゃないけど、そう言うなら
従うよ」
ショボンが他意なく聞いてくる。
( ^ω^)「人に会いたくないんだお」
ブーンも他意なく答える。
ショボンはふーん、と返事をするとブーンよりも高いであろう目線で景色
を眺め始めた。
興味がないのか、全てを察するにはその一言でよかったのか。どちらに
しろブーンにはありがたいことだった。もし根掘り葉掘り質問されていたら、
平常心を保ったまま答えられる自信はない。自分自身の心臓を、どうぞ、と
言ってさらけ出せるほどブーンは強くなかった。
学校が近付いてきた。心配はないと思うが、一応ブーンはショボンに声を掛
けた。
( ^ω^)「ショボン、学校にいるときは僕の内ポケットにでも隠れてて欲しいお」
(´・ω・`)「また昨日みたいに誰かに見られたら困る、ってことかい?」
ブーンは頷く。
(´・ω・`)「そうか。まぁ僕にとっては歓迎できる提案じゃないけど、そう言うなら
従うよ」
81: :2009/02/20(金) 22:34:29.68 ID:
ショボンはブーンの頭から器用に降りてきて、制服である紺色のブレザーの内
ポケットに収まる。
(´・ω・`)「ぴったりだ。ぴったりすぎて窮屈だな」
無駄口を叩くショボンを嗜める意味で、ブーンはブレザーの襟を掴み軽く上下さ
せた。
教室に入ると、ブーンは一目散に自分の席へ向かい、いつもそうしているように
机に突っ伏した。“自分は寝ているぞ”というサインだ。
しかし今日はどうも眠れない日らしい。だからといって体を起こす理由にはなら
ず、息苦しい姿勢のままブーンは今日が早く終わることを祈った。
(´・ω・`)「ねぇ」
体勢のせいか、ショボンの声が近くから聞こえる。どうもショボンのいる内ポケッ
トを覗いている形になっているらしい。
(´・ω・`)「誰か教室に入ってきたよ。挨拶しないの?」
そう聞いてくる。
( ^ω^)「しないお」
ポケットに収まる。
(´・ω・`)「ぴったりだ。ぴったりすぎて窮屈だな」
無駄口を叩くショボンを嗜める意味で、ブーンはブレザーの襟を掴み軽く上下さ
せた。
教室に入ると、ブーンは一目散に自分の席へ向かい、いつもそうしているように
机に突っ伏した。“自分は寝ているぞ”というサインだ。
しかし今日はどうも眠れない日らしい。だからといって体を起こす理由にはなら
ず、息苦しい姿勢のままブーンは今日が早く終わることを祈った。
(´・ω・`)「ねぇ」
体勢のせいか、ショボンの声が近くから聞こえる。どうもショボンのいる内ポケッ
トを覗いている形になっているらしい。
(´・ω・`)「誰か教室に入ってきたよ。挨拶しないの?」
そう聞いてくる。
( ^ω^)「しないお」
83: :2009/02/20(金) 22:35:42.67 ID:
とブーン。確かに人の気配がする。しかしそれを確かめるわけにも行かない。
顔を上げて確かめれば自分が寝ていないことがばれてしまうからだ。
(´・ω・`)「友達じゃないのかい?」
( ^ω^)「友達じゃないお」
“いないお”の間違いだろうと自嘲する。
(´・ω・`)「なんだよ。せっかくクラスメイトになったんだから仲良くしなきゃ」
ショボンの他意がない言葉に、しかしブーンは苛立ちを覚える。
( ^ω^)「人には合う合わないっていうのがあるんだお」
(´・ω・`)「へぇ、そうかい。じゃあさ、俯せになってるのは何でなんだい? 授業
中もそうしてるの?」
嫌味を言っているのか。触れられたくない箇所をまるで撫でるかの如く触れて
くるショボンに嫌気がさす。
( ^ω^)「うるさいな。もう放っておいてくれお」
そう言い放つと、昼休みになるまでブーンは机にへばりついたまま起き上がる
ことはなかった。
顔を上げて確かめれば自分が寝ていないことがばれてしまうからだ。
(´・ω・`)「友達じゃないのかい?」
( ^ω^)「友達じゃないお」
“いないお”の間違いだろうと自嘲する。
(´・ω・`)「なんだよ。せっかくクラスメイトになったんだから仲良くしなきゃ」
ショボンの他意がない言葉に、しかしブーンは苛立ちを覚える。
( ^ω^)「人には合う合わないっていうのがあるんだお」
(´・ω・`)「へぇ、そうかい。じゃあさ、俯せになってるのは何でなんだい? 授業
中もそうしてるの?」
嫌味を言っているのか。触れられたくない箇所をまるで撫でるかの如く触れて
くるショボンに嫌気がさす。
( ^ω^)「うるさいな。もう放っておいてくれお」
そう言い放つと、昼休みになるまでブーンは机にへばりついたまま起き上がる
ことはなかった。
85: :2009/02/20(金) 22:37:17.50 ID:
目を閉じていたからといって寝ていたわけじゃない。
いや、本当は寝てしまいたかったのだ。ただ単純に夢の中に入れる
ときとそうじゃないときがある。今回は後者だったというだけの話だ。
そして寝たふりというのは起きるときに一番神経を使う。自分が寝て
いなかったことを周りの人間に悟られてはいけない。
ブーンはあたかも周りの喧騒によって目を覚ましたかのような気怠い
所作で起き上がると、誰に気付かれることもなく弁当を持ち、彼専用の
“食堂”に向かった。
ブーンの住んでいる地域では、中学校にあがると給食がでない。今と
なってはそれが幸運だった。
この状況で人と机を突き合わせて食事をとるなんてとても耐えられそう
になかったから。
ブーンはいつも通り、使用されていないフロアの男子トイレに駆け込む
と、奥から2番目の個室に歩を進めた。ここがブーンの食堂だった。
ズボンを下げずに洋式トイレの便座に腰掛ける。初めはその妙な感覚
にむず痒さを感じたが、今はもう慣れてしまった。
(´・ω・`)「まさか本当にずっと寝たふりをしたままだとは思わなかったよ」
いや、本当は寝てしまいたかったのだ。ただ単純に夢の中に入れる
ときとそうじゃないときがある。今回は後者だったというだけの話だ。
そして寝たふりというのは起きるときに一番神経を使う。自分が寝て
いなかったことを周りの人間に悟られてはいけない。
ブーンはあたかも周りの喧騒によって目を覚ましたかのような気怠い
所作で起き上がると、誰に気付かれることもなく弁当を持ち、彼専用の
“食堂”に向かった。
ブーンの住んでいる地域では、中学校にあがると給食がでない。今と
なってはそれが幸運だった。
この状況で人と机を突き合わせて食事をとるなんてとても耐えられそう
になかったから。
ブーンはいつも通り、使用されていないフロアの男子トイレに駆け込む
と、奥から2番目の個室に歩を進めた。ここがブーンの食堂だった。
ズボンを下げずに洋式トイレの便座に腰掛ける。初めはその妙な感覚
にむず痒さを感じたが、今はもう慣れてしまった。
(´・ω・`)「まさか本当にずっと寝たふりをしたままだとは思わなかったよ」
86: :2009/02/20(金) 22:38:52.85 ID:
もう隠れている必要がなくなったショボンが、今や定位置になりつつあるブー
ンの頭上から話し掛けた。
( ^ω^)「ショボンがうるさいからだお」
そう言いながら弁当の蓋を開ける。中身はエビのフライ、コロッケ、一口カツ。
コールスローに煮物、鳥の炊き込みご飯だった。揚げ物ばかりだな、と苦笑し
た。
母の気持ちを考えると泣きそうになる。実際、今まで何度も泣きながらの昼食
になった。
今回涙が出なかったのは、ショボンがそばにいたからだろう。誰かがいると涙
は見せられない。
その点は感謝してもよかった――。
(´・ω・`)「ねぇ、なんでみんなと食べないの?」
――うるさい所がなければ。
ブーンはショボンのデリカシーのなさに辟易していた。いい加減質問責めにさ
れるのも面倒だ。もう全てを話してしまおうか。
しかし理由を話してしまえば自分の中にわずかに残った矜持を保てなくなって
しまう気がして、ブーンに二の足を踏ませた。
(´・ω・`)「友達、いないのかい?」
ンの頭上から話し掛けた。
( ^ω^)「ショボンがうるさいからだお」
そう言いながら弁当の蓋を開ける。中身はエビのフライ、コロッケ、一口カツ。
コールスローに煮物、鳥の炊き込みご飯だった。揚げ物ばかりだな、と苦笑し
た。
母の気持ちを考えると泣きそうになる。実際、今まで何度も泣きながらの昼食
になった。
今回涙が出なかったのは、ショボンがそばにいたからだろう。誰かがいると涙
は見せられない。
その点は感謝してもよかった――。
(´・ω・`)「ねぇ、なんでみんなと食べないの?」
――うるさい所がなければ。
ブーンはショボンのデリカシーのなさに辟易していた。いい加減質問責めにさ
れるのも面倒だ。もう全てを話してしまおうか。
しかし理由を話してしまえば自分の中にわずかに残った矜持を保てなくなって
しまう気がして、ブーンに二の足を踏ませた。
(´・ω・`)「友達、いないのかい?」
87: :2009/02/20(金) 22:40:26.75 ID:
いきなり核心を突くショボン。その言葉に動悸が激しくなり、脳を揺さぶられる。
ショボンに気付かれてしまった。
自分から告げるのと相手に感付かれるのではその意味合いが違う。
( ^ω^)「……そういう事だお。だからクラスメイトと挨拶を交わさないし、寝たふ
りをしてるんだお」
なんとか表面上は平静を保てたと思う。
(´・ω・`)「そうか」
( ^ω^)「納得できたかお? できたんなら、もう余計なことは聞かないで欲しいお」
言ってしまった。
もうプライドはズタズタだ。まあ、いい。これでショボンも放っておいてくれるはず。も
う静かに暮らしていきたいんだ。質問されれば、言葉にだしてしまえば孤独を再確認
してしまう。それは凄く辛いことだ。だって、傷口だから。傷をまじまじと見てしまえば、
その痛みを忘れることが出来ない。
そしてブーンが再び弁当に箸をつけようとしたとき、
(´・ω・`)「待った」
ショボンの声。少し何かを考える素振りをして再び口を開いた。
ショボンに気付かれてしまった。
自分から告げるのと相手に感付かれるのではその意味合いが違う。
( ^ω^)「……そういう事だお。だからクラスメイトと挨拶を交わさないし、寝たふ
りをしてるんだお」
なんとか表面上は平静を保てたと思う。
(´・ω・`)「そうか」
( ^ω^)「納得できたかお? できたんなら、もう余計なことは聞かないで欲しいお」
言ってしまった。
もうプライドはズタズタだ。まあ、いい。これでショボンも放っておいてくれるはず。も
う静かに暮らしていきたいんだ。質問されれば、言葉にだしてしまえば孤独を再確認
してしまう。それは凄く辛いことだ。だって、傷口だから。傷をまじまじと見てしまえば、
その痛みを忘れることが出来ない。
そしてブーンが再び弁当に箸をつけようとしたとき、
(´・ω・`)「待った」
ショボンの声。少し何かを考える素振りをして再び口を開いた。
88: :2009/02/20(金) 22:40:44.56 ID:
これ面白い
90: :2009/02/20(金) 22:41:44.60 ID:
(´・ω・`)「じゃあさ、せめて場所を変えようよ。いくらなんでもトイレで食べ
ちゃお母さんが可哀相だ」
( ^ω^)「どこに行くんだお? この学校にはどこにも僕の居場所なんか
ないお」
そう口答えするブーンに、「いいから」と言って顎をしゃくるショボン。仕方
なしに弁当に蓋をして、ショボンの指示する場所へ向かう。
着いたのは階段の最上階踊り場。なるほど、ここなら誰も来ないし、トイ
レよりは気分がいいだろう。
( ^ω^)「確かにここの方が気分がいいお。ありがとう、ショボン」
そう礼を言うブーンに、ショボンは首を振る。
(´・ω・`)「おいおい、ここはまだ目的地じゃないよ」
そしてブーンの頭から飛び降りると、トコトコと歩きだす。向かった先は、
踊り場の横にある屋上へと続く扉。
( ^ω^)「屋上で食べようって言うのかお? そこは立ち入り禁止だお。そ
れに、鍵がかかってるお」
そう制止するブーン。「任せとけ」と胸を叩くショボン。
ちゃお母さんが可哀相だ」
( ^ω^)「どこに行くんだお? この学校にはどこにも僕の居場所なんか
ないお」
そう口答えするブーンに、「いいから」と言って顎をしゃくるショボン。仕方
なしに弁当に蓋をして、ショボンの指示する場所へ向かう。
着いたのは階段の最上階踊り場。なるほど、ここなら誰も来ないし、トイ
レよりは気分がいいだろう。
( ^ω^)「確かにここの方が気分がいいお。ありがとう、ショボン」
そう礼を言うブーンに、ショボンは首を振る。
(´・ω・`)「おいおい、ここはまだ目的地じゃないよ」
そしてブーンの頭から飛び降りると、トコトコと歩きだす。向かった先は、
踊り場の横にある屋上へと続く扉。
( ^ω^)「屋上で食べようって言うのかお? そこは立ち入り禁止だお。そ
れに、鍵がかかってるお」
そう制止するブーン。「任せとけ」と胸を叩くショボン。
93: :2009/02/20(金) 22:43:46.69 ID:
器用に扉をよじ登ると施錠してある南京錠の鍵穴を覗く。どこから取り出したのか、
針金のような棒を二本持ち、鍵穴に挿すとカチャカチャといじくり回す。
そして。
カチャリ、という小気味良い音が聞こえた。
(´・ω・`)「開いたよ」
そう言ってまたブーンの頭に登るショボン。
(;^ω^)「どこでそんなこと覚えたんだお?」
(´・ω・`)「僕は君らより小さいから細かい作業が得意なのさ」
質問の答えになっていない。
(´・ω・`)「そんなことどうでもいいからさ、行こうぜ。さすがにこの扉を開ける
のは僕じゃ無理だよ」
そう促され恐る恐る扉に手を掛けるブーン。おい、いいのか? ここから先は立ち
入り禁止だぞ。見つかったら怒られるぞ。そんな自分の声が聞こえた気がした。
扉を開いてみると、澄み切った秋の青空が頭上に広がっていた。
地上5階。その高さから見上げる天空は、近づいたはずなのにいつもより高く感じた。
針金のような棒を二本持ち、鍵穴に挿すとカチャカチャといじくり回す。
そして。
カチャリ、という小気味良い音が聞こえた。
(´・ω・`)「開いたよ」
そう言ってまたブーンの頭に登るショボン。
(;^ω^)「どこでそんなこと覚えたんだお?」
(´・ω・`)「僕は君らより小さいから細かい作業が得意なのさ」
質問の答えになっていない。
(´・ω・`)「そんなことどうでもいいからさ、行こうぜ。さすがにこの扉を開ける
のは僕じゃ無理だよ」
そう促され恐る恐る扉に手を掛けるブーン。おい、いいのか? ここから先は立ち
入り禁止だぞ。見つかったら怒られるぞ。そんな自分の声が聞こえた気がした。
扉を開いてみると、澄み切った秋の青空が頭上に広がっていた。
地上5階。その高さから見上げる天空は、近づいたはずなのにいつもより高く感じた。
94: :2009/02/20(金) 22:45:06.44 ID:
(´・ω・`)「な? こっちで食べたほうが絶対おいしいって」
空とブーンの間から、声が聞こえる。
( ^ω^)「そうだおね。ありがとう、ショボン」
ブーンは素直に感謝した。少し涼しい風が頬を撫でる。久しぶりに感じる
晴れやかさだった。
(´・ω・`)「お礼なんかいらないよ。その変わり、弁当少しよこせよ。一緒に
食べようぜ」
その言葉を聞いてブーンは昨日の事を思い出した。ショボンは確か、こう
言ったはずだ。“涙に食事なんか必要ない”と。
けれどブーンと一緒に昼食をとる、とショボンは言っているのだ。
そんなショボンの優しさに気付き、ブーンの胸にここ最近感じたことのない
熱が広がる。
( ^ω^)「ありがとう」
ブーンは鼻を赤らめながら礼を言った。
ショボンと二人で食べる弁当は、今まで食べたどんな食べ物よりおいしく感じた。
本当は飲み込むことに必死で味なんかよくわからなかったが、それでもブーン
はこれ以上なく美味に感じた。
空とブーンの間から、声が聞こえる。
( ^ω^)「そうだおね。ありがとう、ショボン」
ブーンは素直に感謝した。少し涼しい風が頬を撫でる。久しぶりに感じる
晴れやかさだった。
(´・ω・`)「お礼なんかいらないよ。その変わり、弁当少しよこせよ。一緒に
食べようぜ」
その言葉を聞いてブーンは昨日の事を思い出した。ショボンは確か、こう
言ったはずだ。“涙に食事なんか必要ない”と。
けれどブーンと一緒に昼食をとる、とショボンは言っているのだ。
そんなショボンの優しさに気付き、ブーンの胸にここ最近感じたことのない
熱が広がる。
( ^ω^)「ありがとう」
ブーンは鼻を赤らめながら礼を言った。
ショボンと二人で食べる弁当は、今まで食べたどんな食べ物よりおいしく感じた。
本当は飲み込むことに必死で味なんかよくわからなかったが、それでもブーン
はこれ以上なく美味に感じた。
96: :2009/02/20(金) 22:46:23.65 ID:
(´・ω・`)「はぁ、美味かった。ごちそうさま。ブーンのお母さんは料理が上手だな」
そう言ってコンクリートの地面に寝転がるショボン。ブーンもそれに倣う。
屋上はそこら辺がすすけて汚かったが、それが些細に思えるほど心は晴れやか
だった。
(´・ω・`)「これからもここで弁当食べような、ブーン」
( ^ω^)「仕方ないお」
ブーンはわかっていた。ショボンが自分に気を遣ってくれたことを。自分が寂しくし
ていた事をわかってくれて、そしてそれを助けてくれようとしている事を。
そのことに感謝していたが、素直になるのも恥ずかしいのでわざとぶっきらぼうに
返事をする。
そして、やおらにむくりと起きだすと、ショボンは口を開いた。
(´・ω・`)「そういえば自己紹介がまだだったね」
( ^ω^)「え」
ブーンは一瞬困惑した。自己紹介なら昨日したではないか。しかしその言葉を飲み
込む。
そう言ってコンクリートの地面に寝転がるショボン。ブーンもそれに倣う。
屋上はそこら辺がすすけて汚かったが、それが些細に思えるほど心は晴れやか
だった。
(´・ω・`)「これからもここで弁当食べような、ブーン」
( ^ω^)「仕方ないお」
ブーンはわかっていた。ショボンが自分に気を遣ってくれたことを。自分が寂しくし
ていた事をわかってくれて、そしてそれを助けてくれようとしている事を。
そのことに感謝していたが、素直になるのも恥ずかしいのでわざとぶっきらぼうに
返事をする。
そして、やおらにむくりと起きだすと、ショボンは口を開いた。
(´・ω・`)「そういえば自己紹介がまだだったね」
( ^ω^)「え」
ブーンは一瞬困惑した。自己紹介なら昨日したではないか。しかしその言葉を飲み
込む。
98: :2009/02/20(金) 22:47:36.56 ID:
(´・ω・`)「僕はショボン」
ショボンが手を伸ばす。
(´・ω・`)「ブーン、君の友達だ」
ブーンは親指と人差し指で差し出されたショボンの手を握る。
ショボンの手は、ふわふわしていて、そして温かかった。
ショボンが手を伸ばす。
(´・ω・`)「ブーン、君の友達だ」
ブーンは親指と人差し指で差し出されたショボンの手を握る。
ショボンの手は、ふわふわしていて、そして温かかった。
99: :2009/02/20(金) 22:48:15.72 ID:
なんか救われる話になってきた
支援
支援
100: :2009/02/20(金) 22:48:34.34 ID:
ちょっと泣きそうだ
102: :2009/02/20(金) 22:49:57.96 ID:
それからブーンは、ブーンの生活は変わった。
毎日ちゃんと学校に通うようになった。もう机に伏せて寝たふりをすることもない。
内ポケットには、いつもショボンがいてくれたから。
ショボンは大抵ぐうぐう眠っていたが、たまに起きだすと小声で他愛もない会話を
してきた。
本当になんでもない、世間話とも呼べないような会話だったが、ブーンはそれさえ
もがたまらなく嬉しかった。
もう、一人ではない。
ブーンはその喜びをひしひしと感じていた。
二人はいつも一緒だった。登校時も下校時も、食事時だって眠る時だって一緒だ
った。
ブーンはショボンの提案通り屋上で昼食をとるようになっていた。
幸いにも誰にも見咎められる事はなく、以前に使っていた“食堂”は、もう立ち寄る
事もなくなっていた。
母親も喜んでくれた。ブーンが明るくなったと、以前のようなブーンに戻ったと快哉を叫んだ。
何もかもが充実しているように思えた。
毎日ちゃんと学校に通うようになった。もう机に伏せて寝たふりをすることもない。
内ポケットには、いつもショボンがいてくれたから。
ショボンは大抵ぐうぐう眠っていたが、たまに起きだすと小声で他愛もない会話を
してきた。
本当になんでもない、世間話とも呼べないような会話だったが、ブーンはそれさえ
もがたまらなく嬉しかった。
もう、一人ではない。
ブーンはその喜びをひしひしと感じていた。
二人はいつも一緒だった。登校時も下校時も、食事時だって眠る時だって一緒だ
った。
ブーンはショボンの提案通り屋上で昼食をとるようになっていた。
幸いにも誰にも見咎められる事はなく、以前に使っていた“食堂”は、もう立ち寄る
事もなくなっていた。
母親も喜んでくれた。ブーンが明るくなったと、以前のようなブーンに戻ったと快哉を叫んだ。
何もかもが充実しているように思えた。
105: :2009/02/20(金) 22:51:31.93 ID:
半ば色褪せて見えた景色に色が着いた。鮮やかな色彩を帯びた。
いつまでもこんな日々が続けばいいと思ったし、続くと思っていた。
季節の変わり目が訪れたある日。
少し肌寒くなって身を縮める人を多く見かけるようになった頃。
その日もショボンはブーンの頭の上に乗っていた。
もうお決まりになっていたショボンの専用席だ。
この時期になると、ブーンは一層ショボンに感謝した。
何しろショボンは猫である。身を裂くような寒い朝は、そのふわふわの毛
皮で暖を取るのが何より心地よかった。
ショボンは「気持ち悪いからやめろ」と苦言を呈したが、ブーンが嫌がるショ
ボンを無理矢理布団の中に引きずりこむ事も度々あった。
そんなショボンだから、頭に乗っていてくれるだけでも多少のぬくもりは感じ
られるように思えた。
( ^ω^)「いっそ首にまいておきたいぐらいだお」
ブーンが楽しげに提案する。
いつまでもこんな日々が続けばいいと思ったし、続くと思っていた。
季節の変わり目が訪れたある日。
少し肌寒くなって身を縮める人を多く見かけるようになった頃。
その日もショボンはブーンの頭の上に乗っていた。
もうお決まりになっていたショボンの専用席だ。
この時期になると、ブーンは一層ショボンに感謝した。
何しろショボンは猫である。身を裂くような寒い朝は、そのふわふわの毛
皮で暖を取るのが何より心地よかった。
ショボンは「気持ち悪いからやめろ」と苦言を呈したが、ブーンが嫌がるショ
ボンを無理矢理布団の中に引きずりこむ事も度々あった。
そんなショボンだから、頭に乗っていてくれるだけでも多少のぬくもりは感じ
られるように思えた。
( ^ω^)「いっそ首にまいておきたいぐらいだお」
ブーンが楽しげに提案する。
108: :2009/02/20(金) 22:52:45.20 ID:
(´・ω・`)「やめてくれよ。僕はここが気に入ってるんだ」
心底迷惑そうに答えるショボン。
いつもと同じ帰り道。ショボンと出会ってから色が着いた帰り道。いつものよう
になんでもないことを話し、そしてそれが心地よい帰り道。
二人で、もうお馴染みになった通学路を帰っていると、空き地のそばでブーン
は突然足を止めた。
(´・ω・`)「おい、なんだよ。行こうぜ」
ショボンが怪訝そうに話し掛ける。
どうやらブーンは何かに目を奪われているようだ。
ショボンもブーンの視線の先に目を向ける。
ブーンと同い年ぐらいの少年たちが3人、空き地で野球をしている。
(´・ω・`)「ははぁ、わかった。ブーン、君、あれに混ざりたいんだろう」
( ^ω^)「そんな事ないお」
そんな事ない事なかった。その証拠に、ブーンの目線は彼らから動かない。
ショボンは知っていた。自分は、ブーンの遊び相手としては力不足だということを。
心底迷惑そうに答えるショボン。
いつもと同じ帰り道。ショボンと出会ってから色が着いた帰り道。いつものよう
になんでもないことを話し、そしてそれが心地よい帰り道。
二人で、もうお馴染みになった通学路を帰っていると、空き地のそばでブーン
は突然足を止めた。
(´・ω・`)「おい、なんだよ。行こうぜ」
ショボンが怪訝そうに話し掛ける。
どうやらブーンは何かに目を奪われているようだ。
ショボンもブーンの視線の先に目を向ける。
ブーンと同い年ぐらいの少年たちが3人、空き地で野球をしている。
(´・ω・`)「ははぁ、わかった。ブーン、君、あれに混ざりたいんだろう」
( ^ω^)「そんな事ないお」
そんな事ない事なかった。その証拠に、ブーンの目線は彼らから動かない。
ショボンは知っていた。自分は、ブーンの遊び相手としては力不足だということを。
109: :2009/02/20(金) 22:53:59.65 ID:
なにしろ体高15センチ。ブーンの身長の10分の1以下である。その体格差でできる
遊びなどあろうはずもない。
そしてブーンが気を遣ってその事を自分に言わないことも。
実際、ブーンは同年代の子たちと走り回って遊びたいのだろう。無理もない。
(´・ω・`)「遊びたいのなら声をかければいいのに」
( ^ω^)「いいんだお。僕にはショボンがいるし……。それに……」
(´・ω・`)「それに?」
( ^ω^)「声のかけ方が、わかんないお」
なるほど、とショボンは納得した。
確かにブーンの心は自分と関わったことで多少救われたかもしれない。しかし、抜本
的な解決になってはいないのだ。
ショボンは何とかしてあげたい、と思った。
この口下手な大きい友人に、自分以外の友人を作ってあげたいと思った。
(´・ω・`)「じゃあ、僕がきっかけを作ってやるよ」
( ^ω^)「え?」
遊びなどあろうはずもない。
そしてブーンが気を遣ってその事を自分に言わないことも。
実際、ブーンは同年代の子たちと走り回って遊びたいのだろう。無理もない。
(´・ω・`)「遊びたいのなら声をかければいいのに」
( ^ω^)「いいんだお。僕にはショボンがいるし……。それに……」
(´・ω・`)「それに?」
( ^ω^)「声のかけ方が、わかんないお」
なるほど、とショボンは納得した。
確かにブーンの心は自分と関わったことで多少救われたかもしれない。しかし、抜本
的な解決になってはいないのだ。
ショボンは何とかしてあげたい、と思った。
この口下手な大きい友人に、自分以外の友人を作ってあげたいと思った。
(´・ω・`)「じゃあ、僕がきっかけを作ってやるよ」
( ^ω^)「え?」
111: :2009/02/20(金) 22:55:47.43 ID:
おまwwww
110: :2009/02/20(金) 22:55:28.44 ID:
“どういう意味だ?”とブーンが尋ねるより早く、ショボンは大きく息を吸い込む
と少年たちに怒声を浴びせた。
(´・ω・`)「オルァァー! このド下手糞共! 特にバッター! ブンブンブンブン
空振りばっかしやがって! 扇風機かテメーは!」
ピクリ、と彼らの動きが止まった。そしてブーンを睨み付ける。明らかな敵意を
込めた視線をうけて、ブーンは竦み上がった。
やがて彼らの一人がこちらにゆっくりと近づいてきた。
(;^ω^)「ショ、ショボン! 何してるんだお!」
(´・ω・`)「何って、“きっかけ”だよ。“きっかけ”」
きっかけもクソもない。これではブーンが彼らに喧嘩を売った形になってしまう。
いや、彼らの中ではもうそういうことになってしまっただろう。
名指しで罵声を浴びせられた少年がブーンのすぐそばまで歩みを進めていた。
半眼になっている目には隠すことなく怒りが宿されている。それでブーンを殴る
つもりだろうか、手にはショボンが扇風機のようだと揶揄した金属バットが握られ
ている。
と少年たちに怒声を浴びせた。
(´・ω・`)「オルァァー! このド下手糞共! 特にバッター! ブンブンブンブン
空振りばっかしやがって! 扇風機かテメーは!」
ピクリ、と彼らの動きが止まった。そしてブーンを睨み付ける。明らかな敵意を
込めた視線をうけて、ブーンは竦み上がった。
やがて彼らの一人がこちらにゆっくりと近づいてきた。
(;^ω^)「ショ、ショボン! 何してるんだお!」
(´・ω・`)「何って、“きっかけ”だよ。“きっかけ”」
きっかけもクソもない。これではブーンが彼らに喧嘩を売った形になってしまう。
いや、彼らの中ではもうそういうことになってしまっただろう。
名指しで罵声を浴びせられた少年がブーンのすぐそばまで歩みを進めていた。
半眼になっている目には隠すことなく怒りが宿されている。それでブーンを殴る
つもりだろうか、手にはショボンが扇風機のようだと揶揄した金属バットが握られ
ている。
112: :2009/02/20(金) 22:56:42.32 ID:
中肉中背、決して体格に恵まれているとは言えなさそうだが、なんというか、
いわゆる“悪”のオーラを身にまとった少年だった。
その目つきはギラギラとしていて、とても自分と同年代ぐらいとは思わせな
い迫力があった。
(;^ω^)「あわ、あわわ」
恐怖に焦るブーン。
(´・ω・`)「じゃあ、後は自分で仲良くなってね」
そう言ってするりとブーンのブレザーの内ポケットに入ってしまったショボン。
いや、確かにショボンを人に見られては困るのだが、それはあんまりなので
はないかとブーンは思った。
_
(#゚∀゚)「おい、お前、何か言ったか?」
もうすでにブーンの目と鼻の先まで来ていた少年が、声変わりもしていないく
せにやたら人を震え上がらせそうなその声でブーンに聞いた。
いわゆる“悪”のオーラを身にまとった少年だった。
その目つきはギラギラとしていて、とても自分と同年代ぐらいとは思わせな
い迫力があった。
(;^ω^)「あわ、あわわ」
恐怖に焦るブーン。
(´・ω・`)「じゃあ、後は自分で仲良くなってね」
そう言ってするりとブーンのブレザーの内ポケットに入ってしまったショボン。
いや、確かにショボンを人に見られては困るのだが、それはあんまりなので
はないかとブーンは思った。
_
(#゚∀゚)「おい、お前、何か言ったか?」
もうすでにブーンの目と鼻の先まで来ていた少年が、声変わりもしていないく
せにやたら人を震え上がらせそうなその声でブーンに聞いた。
113: :2009/02/20(金) 22:56:55.19 ID:
ショボンww
114: :2009/02/20(金) 22:58:12.78 ID:
ちょwwwwwwwwwwww
115: :2009/02/20(金) 22:58:21.01 ID:
(;^ω^)「いや、え、あの」
(´・ω・`)「下手糞って言ったんだよこのエアコンいらず!」
ショボンが内ポケットの中から少年を罵る。
_
(#゚∀゚)「ほー、面白い。どうやらあの世でご先祖様に会いたいようだな」
うまい具合にブーンが悪口を言ったと勘違いしてくれた少年が、ブーンの
襟を掴み自分の眼前へと引き寄せる。やはりバットで殴る気だ。そう思った
らショボンを非難する余裕さえなくなり、ブーンはしどろもどろになった。
(;^ω^)「やめ、やめ……」
(´・ω・`)「やめろ。下手糞に下手糞と言ってしまったことは謝る。ただ、僕の
ほうがよっぽどうまくバットに当てられると思ったんでね」
そうショボンが挑発すると、少年は手に込められていた力を緩め、ブーンを解放した。
_
(#゚∀゚)「やってみろ」
そう一言だけ発言すると、ブーンにバットの柄を差し出す。
ブーンに“打ってみろ”と言っているようだ。
(´・ω・`)「下手糞って言ったんだよこのエアコンいらず!」
ショボンが内ポケットの中から少年を罵る。
_
(#゚∀゚)「ほー、面白い。どうやらあの世でご先祖様に会いたいようだな」
うまい具合にブーンが悪口を言ったと勘違いしてくれた少年が、ブーンの
襟を掴み自分の眼前へと引き寄せる。やはりバットで殴る気だ。そう思った
らショボンを非難する余裕さえなくなり、ブーンはしどろもどろになった。
(;^ω^)「やめ、やめ……」
(´・ω・`)「やめろ。下手糞に下手糞と言ってしまったことは謝る。ただ、僕の
ほうがよっぽどうまくバットに当てられると思ったんでね」
そうショボンが挑発すると、少年は手に込められていた力を緩め、ブーンを解放した。
_
(#゚∀゚)「やってみろ」
そう一言だけ発言すると、ブーンにバットの柄を差し出す。
ブーンに“打ってみろ”と言っているようだ。
116: :2009/02/20(金) 22:59:41.15 ID:
_
( ゚∀゚)「打てなかったら殺す」
静かにそういう少年には、“やるといったらやる”という凄みがあった。
さぁ、困った。なにしろブーンは野球などやったことがない。いや、あるには
あるのだが、お遊びみたいなもので、仲間内のなぁなぁ野球だったのだ。こん
な勝負がかかったバッティングなどしたことがない。
(´・ω・`)「もう賽は振られたんだぜ。やるしかないだろう」
勝手なことを言うショボン。お前が余計な煽りを入れるからこうなったんだろ、
と心中で非難するがそんなことをしてもこの状況は変えられない。
ブーンは震えながらバッターボックスに立つ。するとマウンドに立った不細工
な少年が話しかけてきた。
(‘A`)「おまえ、ジョルジュにつっかかるなんてやるなぁ」
どうやらあのチンピラみたいな少年はジョルジュと言うらしい。そんな○得情
報は今は必要ないが。
(‘A`)「まぁ、俺も手加減はしないぜ。なんたって、“下手糞共”の中には俺も入ってるんだろ?」
( ゚∀゚)「打てなかったら殺す」
静かにそういう少年には、“やるといったらやる”という凄みがあった。
さぁ、困った。なにしろブーンは野球などやったことがない。いや、あるには
あるのだが、お遊びみたいなもので、仲間内のなぁなぁ野球だったのだ。こん
な勝負がかかったバッティングなどしたことがない。
(´・ω・`)「もう賽は振られたんだぜ。やるしかないだろう」
勝手なことを言うショボン。お前が余計な煽りを入れるからこうなったんだろ、
と心中で非難するがそんなことをしてもこの状況は変えられない。
ブーンは震えながらバッターボックスに立つ。するとマウンドに立った不細工
な少年が話しかけてきた。
(‘A`)「おまえ、ジョルジュにつっかかるなんてやるなぁ」
どうやらあのチンピラみたいな少年はジョルジュと言うらしい。そんな○得情
報は今は必要ないが。
(‘A`)「まぁ、俺も手加減はしないぜ。なんたって、“下手糞共”の中には俺も入ってるんだろ?」
117: :2009/02/20(金) 23:01:19.10 ID:
違う、あれはショボンが。言い訳をしたかったが、そういうわけにもいかない。
不細工な少年が大きく振りかぶり、球を投げる。
――速い。
ブーンは身動き一つとれずにいた。白球がキャッチャーのミットに吸い込まれて
いったかのように思えた。
(‘A`)「なんだ、びびって動けなくなっちまったのか? ワンストライクだぜ」
キャッチャーからの返球を受けながら不細工が言う。いや、大したものだ。ブー
ンには野球はよくわからなかったが、素直にそう思った。
この不細工の投げる球はかなり速い。それはブーンにも分かる。なるほど、この
球を打てないことを揶揄されたら頭に血も上ると言うものだ。
ブーンも逆の立場だったら罵声を浴びせた世間知らずに言うだろう。“打ってみろ”と。
(´・ω・`)「なんだい。見送りかい。情けないなぁ」
無責任王ショボンがその名に恥じぬ無責任振りでブーンに話しかける。
(;^ω^)「マジで速いんだお。とても打てないお」
泣き言を言うブーン。
不細工な少年が大きく振りかぶり、球を投げる。
――速い。
ブーンは身動き一つとれずにいた。白球がキャッチャーのミットに吸い込まれて
いったかのように思えた。
(‘A`)「なんだ、びびって動けなくなっちまったのか? ワンストライクだぜ」
キャッチャーからの返球を受けながら不細工が言う。いや、大したものだ。ブー
ンには野球はよくわからなかったが、素直にそう思った。
この不細工の投げる球はかなり速い。それはブーンにも分かる。なるほど、この
球を打てないことを揶揄されたら頭に血も上ると言うものだ。
ブーンも逆の立場だったら罵声を浴びせた世間知らずに言うだろう。“打ってみろ”と。
(´・ω・`)「なんだい。見送りかい。情けないなぁ」
無責任王ショボンがその名に恥じぬ無責任振りでブーンに話しかける。
(;^ω^)「マジで速いんだお。とても打てないお」
泣き言を言うブーン。
118: :2009/02/20(金) 23:02:32.86 ID:
(´・ω・`)「まぁ、とりあえず振るだけ振ってみなよ。ひょっとしたら当たるかもしれないよ」
そんなうまくいくか、と言おうとしたブーンをショボンが制す。
(´・ω・`)「来るぞ」
バッターがバッターボックスに立っている以上、ピッチャーはいつでも投球しても良い。不
細工は既にボールを掴んだ腕を振り下ろすところだった。
白球がブーンにせまる。ブーンは慌ててバットを振る。
しかし、バットは空を切るのみでボールにかすりもしない。
やはり無理だったのだ。恐らくブーンは次の投球が終わるとほぼ同時に、自分が今握って
いるバットで殴られるのだろう。
ブーンは泣き出したくなった。なんでこんな事に。恨むぞ、ショボン。
(‘A`)「おいおい、全然かすりもしねぇじゃねぇか。それでよくジョルジュを馬鹿に出来たもん
だぜ」
不細工は馬鹿にすると言うよりも呆れたように言った。
(´・ω・`)「低い」
ショボンが口を開く。
そんなうまくいくか、と言おうとしたブーンをショボンが制す。
(´・ω・`)「来るぞ」
バッターがバッターボックスに立っている以上、ピッチャーはいつでも投球しても良い。不
細工は既にボールを掴んだ腕を振り下ろすところだった。
白球がブーンにせまる。ブーンは慌ててバットを振る。
しかし、バットは空を切るのみでボールにかすりもしない。
やはり無理だったのだ。恐らくブーンは次の投球が終わるとほぼ同時に、自分が今握って
いるバットで殴られるのだろう。
ブーンは泣き出したくなった。なんでこんな事に。恨むぞ、ショボン。
(‘A`)「おいおい、全然かすりもしねぇじゃねぇか。それでよくジョルジュを馬鹿に出来たもん
だぜ」
不細工は馬鹿にすると言うよりも呆れたように言った。
(´・ω・`)「低い」
ショボンが口を開く。
119: :2009/02/20(金) 23:03:56.89 ID:
(´・ω・`)「君のバットはボールよりかなり低いところを通ってる。今より拳1個
ぶん高く振るんだ。いいかい?」
突然のショボンのアドバイス。ショボンに野球が分かるかどうかも疑問だが、
今のブーンはそれに従うしかない。
(‘A`)「じゃあラストだ。可哀相だけど手加減はしないぜ。まぁ、ジョルジュがや
りすぎないようには注意してやるからよ」
どうやら終わりが近いらしい。
(‘A`)「いくぜ」
不細工が大きく振りかぶって――、
(´・ω・`)「タイミングは僕が教える。君はさっきと同じスピードでスイングするん
だ」
――投げた。
ボールが不細工の手元から放たれた。もう数瞬もしない間にキャッチャーの手
中に納まるだろう。ボールがやけにスローモーションに見える。無理だ。打てない。
(´・ω・`)「今だ!」
ぶん高く振るんだ。いいかい?」
突然のショボンのアドバイス。ショボンに野球が分かるかどうかも疑問だが、
今のブーンはそれに従うしかない。
(‘A`)「じゃあラストだ。可哀相だけど手加減はしないぜ。まぁ、ジョルジュがや
りすぎないようには注意してやるからよ」
どうやら終わりが近いらしい。
(‘A`)「いくぜ」
不細工が大きく振りかぶって――、
(´・ω・`)「タイミングは僕が教える。君はさっきと同じスピードでスイングするん
だ」
――投げた。
ボールが不細工の手元から放たれた。もう数瞬もしない間にキャッチャーの手
中に納まるだろう。ボールがやけにスローモーションに見える。無理だ。打てない。
(´・ω・`)「今だ!」
121: :2009/02/20(金) 23:05:15.58 ID:
叫ぶショボン。その声に体が反応する。不思議とスムーズにバットが振れる。
キン。
バットから高く乾いた音が響く。ボールはどこだ? 打てたのか?
みなが唖然と一点を見つめている。その位置は不細工の後方、遥か空高くだ
った。
打てた。
僕が、あんな速い球を打てた。
恐らく一番びっくりしているのはブーンだったのだろう。自分が打ち取れた喜び、
というよりも面食らったような顔をしていた。
白球は、冬の高い空をいつまでも進んでいった。
キン。
バットから高く乾いた音が響く。ボールはどこだ? 打てたのか?
みなが唖然と一点を見つめている。その位置は不細工の後方、遥か空高くだ
った。
打てた。
僕が、あんな速い球を打てた。
恐らく一番びっくりしているのはブーンだったのだろう。自分が打ち取れた喜び、
というよりも面食らったような顔をしていた。
白球は、冬の高い空をいつまでも進んでいった。
122: :2009/02/20(金) 23:07:16.01 ID:
_
(;゚∀゚)「す……すげぇ」
誰しもが唖然としている中、ようやく口を開いたのはジョルジュと呼ばれていた、
ブーンの胸ぐらを掴んできた少年だった。
_
(;゚∀゚)「何でドクオの渾身の球が打てるんだ?」
ドクオというらしい不細工も、はっ、と我に返ったように首を振った。
(‘A`)「お……おぉ、すげぇじゃねぇか! いや、俺の完敗だよ! ジョルジュなん
て目じゃねぇ!」
“目じゃない”と評されたジョルジュは少し不満げに眉をしかめたが、やがて諦
めたような笑みを浮かべた。
_
( ゚∀゚)「まぁ、確かに俺は空振りばっかだったからな。これなら下手糞って言わ
れてもしょうがねぇ」
(∵)「僕も驚いた。明らかに最初の2振りまでは素人。でも最後はきっちり真芯
に合わせてきた」
キャッチャーをしていた少年が初めて口を開いた。なんだか埴輪みたいな顔
をしている。人間の顔を限界まで簡素化したらこんな造形になるのではないか。
(;^ω^)「あの……」
ブーンもおずおずと口を開く。
(;゚∀゚)「す……すげぇ」
誰しもが唖然としている中、ようやく口を開いたのはジョルジュと呼ばれていた、
ブーンの胸ぐらを掴んできた少年だった。
_
(;゚∀゚)「何でドクオの渾身の球が打てるんだ?」
ドクオというらしい不細工も、はっ、と我に返ったように首を振った。
(‘A`)「お……おぉ、すげぇじゃねぇか! いや、俺の完敗だよ! ジョルジュなん
て目じゃねぇ!」
“目じゃない”と評されたジョルジュは少し不満げに眉をしかめたが、やがて諦
めたような笑みを浮かべた。
_
( ゚∀゚)「まぁ、確かに俺は空振りばっかだったからな。これなら下手糞って言わ
れてもしょうがねぇ」
(∵)「僕も驚いた。明らかに最初の2振りまでは素人。でも最後はきっちり真芯
に合わせてきた」
キャッチャーをしていた少年が初めて口を開いた。なんだか埴輪みたいな顔
をしている。人間の顔を限界まで簡素化したらこんな造形になるのではないか。
(;^ω^)「あの……」
ブーンもおずおずと口を開く。
123: :2009/02/20(金) 23:08:43.65 ID:
(;^ω^)「さっきはごめんだお。変な事言っちゃって」
本当はショボンのせいなのだが、それは言えないのでブーンは素直に
謝った。
_
( ゚∀゚)「あ? あぁ、いいよ。もし口だけの野郎なら殴ってたけど、あそこ
まで気持ち良く実力差を見せ付けられちまったらな」
(‘A`)「おまえ、野球部かなんかか?」
さて、どう答えたものか。正直言ってドクオの球を打てたのもショボンの
おかげだ。しかし、それもやはり言えない。嘘をついて野球経験者とでも
言ってしまうか。いやいや、やはり正直に未経験だと言ってしまうべきだ。
ブーンは二つの選択肢をしばし天秤にかけていたが、最終的には後者
を選んだ。
( ^ω^)「野球部じゃないし、やったこと自体あんまりないお」
_
( ゚∀゚)「え?」
再び彼らの表情が固まる。
しまった、下手をうったか。やはり初心者があの球を長打にすれば、訝し
られて当然だった。
ブーンは心中波立った。
本当はショボンのせいなのだが、それは言えないのでブーンは素直に
謝った。
_
( ゚∀゚)「あ? あぁ、いいよ。もし口だけの野郎なら殴ってたけど、あそこ
まで気持ち良く実力差を見せ付けられちまったらな」
(‘A`)「おまえ、野球部かなんかか?」
さて、どう答えたものか。正直言ってドクオの球を打てたのもショボンの
おかげだ。しかし、それもやはり言えない。嘘をついて野球経験者とでも
言ってしまうか。いやいや、やはり正直に未経験だと言ってしまうべきだ。
ブーンは二つの選択肢をしばし天秤にかけていたが、最終的には後者
を選んだ。
( ^ω^)「野球部じゃないし、やったこと自体あんまりないお」
_
( ゚∀゚)「え?」
再び彼らの表情が固まる。
しまった、下手をうったか。やはり初心者があの球を長打にすれば、訝し
られて当然だった。
ブーンは心中波立った。
124: :2009/02/20(金) 23:10:16.77 ID:
_
(*゚∀゚)「うぉぉー! 初心者!? じゃああのヒットは才能って事!? 半端ねぇ!」
(;‘A`)「マジかよ。俺、素人に打たれたのかよ」
(∵)「それは凄い。普通、あれを打てても初心者では内野ゴロになる」
意外な3人の反応。どうやらブーンの発言をいい意味に捉えてくれたようだ。ブーン
は胸を撫で下ろす。
_
(*゚∀゚)「なぁなぁ、おまえ、俺たちと一緒に野球やらないか?」
突然のジョルジュの提案。
(‘A`)「おー、いいじゃねぇか。俺のピッチングの練習相手になってくれよ」
(∵)「賛成」
同意する2人。
ブーンはちらと内ポケットにいるショボンに目を配らせる。
ショボンはいつもと同じように困ったようなハの字の眉をしていた。
“この3人とならうまくやっていけるよ”
なんだかそう後押しされた気がした。
ブーンは顔を上げる。
(*゚∀゚)「うぉぉー! 初心者!? じゃああのヒットは才能って事!? 半端ねぇ!」
(;‘A`)「マジかよ。俺、素人に打たれたのかよ」
(∵)「それは凄い。普通、あれを打てても初心者では内野ゴロになる」
意外な3人の反応。どうやらブーンの発言をいい意味に捉えてくれたようだ。ブーン
は胸を撫で下ろす。
_
(*゚∀゚)「なぁなぁ、おまえ、俺たちと一緒に野球やらないか?」
突然のジョルジュの提案。
(‘A`)「おー、いいじゃねぇか。俺のピッチングの練習相手になってくれよ」
(∵)「賛成」
同意する2人。
ブーンはちらと内ポケットにいるショボンに目を配らせる。
ショボンはいつもと同じように困ったようなハの字の眉をしていた。
“この3人とならうまくやっていけるよ”
なんだかそう後押しされた気がした。
ブーンは顔を上げる。
126: :2009/02/20(金) 23:11:39.00 ID:
( ^ω^)「わかったお。僕は本当に初心者だけど、一緒に野球をさせて欲しいお」
転校したてとは違う。今はショボンがいるから。
誰かに拒絶されても、もう一人じゃないから。
_
( ゚∀゚)「おし、決まりだ!」
(‘A`)「俺はドクオ。この下手糞がジョルジュ。無機質みたいな奴がビコーズ。よろしくな」
ドクオが握手を求めてくる。
(∵)「君は?」
ドクオの手を握り、ビコーズの質問に答える。
( ^ω^)「内藤ホライゾンだお」
_
( ゚∀゚)「ホライゾン? 言いにくいな。なんか良い呼び方ないのか? 今まで何て呼ばれて
たんだ?」
( ^ω^)「ブーンだお」
_
(*゚∀゚)「ブーン? 何でだよ! 意味わかんねぇ!」
そう言ってジョルジュとドクオは一斉に笑いだした。ビコーズは……よくわからなかった。
転校したてとは違う。今はショボンがいるから。
誰かに拒絶されても、もう一人じゃないから。
_
( ゚∀゚)「おし、決まりだ!」
(‘A`)「俺はドクオ。この下手糞がジョルジュ。無機質みたいな奴がビコーズ。よろしくな」
ドクオが握手を求めてくる。
(∵)「君は?」
ドクオの手を握り、ビコーズの質問に答える。
( ^ω^)「内藤ホライゾンだお」
_
( ゚∀゚)「ホライゾン? 言いにくいな。なんか良い呼び方ないのか? 今まで何て呼ばれて
たんだ?」
( ^ω^)「ブーンだお」
_
(*゚∀゚)「ブーン? 何でだよ! 意味わかんねぇ!」
そう言ってジョルジュとドクオは一斉に笑いだした。ビコーズは……よくわからなかった。
128: :2009/02/20(金) 23:12:57.85 ID:
支援
129: :2009/02/20(金) 23:13:06.62 ID:
(;^ω^)「気が付いたらそう呼ばれてたんだお」
_
( ゚∀゚)「わかったわかった。よろしくな、ブーン。俺たちは今から仲間だ」
ジョルジュがガキ大将のようににかっと笑い、ブーンの肩を叩いた。
_
( ゚∀゚)「じゃあ、新しい仲間の歓迎を兼ねて飯でも食ってくか」
(‘A`)「あー……モスだな」
_
(;゚∀゚)「何でまたモス!? モスばっかじゃん! おまえはモス以外の食い物を知らな
いの!?」
(∵)「ドクオはモス信者」
そんなことを話しながら歩きだす3人。1人出遅れてしまったブーンの方に振り替えると
“早く来いよ”と促してくれた。
ブーンは置いていかれないように駆け出す。
斜陽が、4つの長い影法師を作り出していた。
(;^ω^)「気が付いたらそう呼ばれてたんだお」
_
( ゚∀゚)「わかったわかった。よろしくな、ブーン。俺たちは今から仲間だ」
ジョルジュがガキ大将のようににかっと笑い、ブーンの肩を叩いた。
_
( ゚∀゚)「じゃあ、新しい仲間の歓迎を兼ねて飯でも食ってくか」
(‘A`)「あー……モスだな」
_
(;゚∀゚)「何でまたモス!? モスばっかじゃん! おまえはモス以外の食い物を知らな
いの!?」
(∵)「ドクオはモス信者」
そんなことを話しながら歩きだす3人。1人出遅れてしまったブーンの方に振り替えると
“早く来いよ”と促してくれた。
ブーンは置いていかれないように駆け出す。
斜陽が、4つの長い影法師を作り出していた。
133: :2009/02/20(金) 23:14:39.44 ID:
四人はそれぞれの席に腰を下ろした。
ここはモスバーガーVIP支店。もともとそんなに混雑するような店ではないが、
夕刻、夜の手前という時間帯のせいか中々の盛況ぶりだった。
四人はそれぞれ手にトレイを持っている。トレイには注文した品が乗っていた。
ブーンは焼肉ライスバーガーを注文した。
焼肉ライスバーガー。それは通常のハンバーガーと異なり、パンの代わりに白
米を円形状に固めた物をバンズとして用いり、そのバンズで焼肉風に味付けをし
た牛肉を挟むというなかなか独創性溢れた一品だ。しかしその味はまさに絶品の
一語。もともと米食の民族である私たち日本人にとっては全く抵抗がなく、むしろど
こか望郷の念を思い出させてくれる、今となってはジャパニーズ・ソウルフードと呼
ぶにふさわしい人気メニューだ。
欠点として、やや食べ辛く感じる部分がある。なにしろ米を固めたものであるから
して、咀嚼しようとするとバンズである白米がぼろぼろと零れ落ちてしまうのである。
故に結果的にはハンバーガーとしての体裁を保ったまま食するのは難しく、またハ
ンバーガーであると言う特性上フォークなどの食器を使用しないため、手が汚れて
しまうと言う弱点も持ち合わせている。
とはいえ、上記にある欠点などその美味の前では些細なことであり、やはり至高
にして究極のハンバーガーといえるのである。
四人はそれぞれの席に腰を下ろした。
ここはモスバーガーVIP支店。もともとそんなに混雑するような店ではないが、
夕刻、夜の手前という時間帯のせいか中々の盛況ぶりだった。
四人はそれぞれ手にトレイを持っている。トレイには注文した品が乗っていた。
ブーンは焼肉ライスバーガーを注文した。
焼肉ライスバーガー。それは通常のハンバーガーと異なり、パンの代わりに白
米を円形状に固めた物をバンズとして用いり、そのバンズで焼肉風に味付けをし
た牛肉を挟むというなかなか独創性溢れた一品だ。しかしその味はまさに絶品の
一語。もともと米食の民族である私たち日本人にとっては全く抵抗がなく、むしろど
こか望郷の念を思い出させてくれる、今となってはジャパニーズ・ソウルフードと呼
ぶにふさわしい人気メニューだ。
欠点として、やや食べ辛く感じる部分がある。なにしろ米を固めたものであるから
して、咀嚼しようとするとバンズである白米がぼろぼろと零れ落ちてしまうのである。
故に結果的にはハンバーガーとしての体裁を保ったまま食するのは難しく、またハ
ンバーガーであると言う特性上フォークなどの食器を使用しないため、手が汚れて
しまうと言う弱点も持ち合わせている。
とはいえ、上記にある欠点などその美味の前では些細なことであり、やはり至高
にして究極のハンバーガーといえるのである。
135: :2009/02/20(金) 23:15:45.19 ID:
>>133
お前モス好きすぎだろwwwwwwwwwwww
お前モス好きすぎだろwwwwwwwwwwww
137: :2009/02/20(金) 23:17:17.32 ID:
熱意がwwww
136: :2009/02/20(金) 23:16:29.04 ID:
主ライスバーガー大好きなんだなww
139: :2009/02/20(金) 23:20:13.58 ID:
その焼肉ライスバーガーをブーンはやはりうまく食べられないでいた。
(‘A`)「あー、やっぱそれ綺麗に食べるの難しいよな」
ドクオはロースカツバーガーを口に運びながら、ブーンの零した米粒を注視
する。
(‘A`)「でもやるじゃねぇか。焼肉ライスバーガーを頼むなんて中々の通だぜ。
……おまえとは仲良くなれそうだ」
( ゚∀゚)「なんで焼肉ライスバーガーで仲良くなれるんだよ」
(∵)「変」
ジョルジュとビコーズも注文したチリドッグを頬張りながらドクオにつっこむ。
冗談とはいえ面と向かって仲良くなれそうだなどと言われたブーンはなんだか
気恥ずかしくなり、ぽりぽりと頭を掻く。
( ^ω^)「そういえば、みんな野球部なのかお?」
先ほどのドクオのピッチングは素人とは思えなかったし、その球を正確に捕球
するビコーズも只者とは思えない。
ジョルジュは……空振りしてただけだから何とも言えないが。
(‘A`)「あー、やっぱそれ綺麗に食べるの難しいよな」
ドクオはロースカツバーガーを口に運びながら、ブーンの零した米粒を注視
する。
(‘A`)「でもやるじゃねぇか。焼肉ライスバーガーを頼むなんて中々の通だぜ。
……おまえとは仲良くなれそうだ」
( ゚∀゚)「なんで焼肉ライスバーガーで仲良くなれるんだよ」
(∵)「変」
ジョルジュとビコーズも注文したチリドッグを頬張りながらドクオにつっこむ。
冗談とはいえ面と向かって仲良くなれそうだなどと言われたブーンはなんだか
気恥ずかしくなり、ぽりぽりと頭を掻く。
( ^ω^)「そういえば、みんな野球部なのかお?」
先ほどのドクオのピッチングは素人とは思えなかったし、その球を正確に捕球
するビコーズも只者とは思えない。
ジョルジュは……空振りしてただけだから何とも言えないが。
140: :2009/02/20(金) 23:23:20.96 ID:
_
( ゚∀゚)「いや」
ブーンの質問にジョルジュが答える。
_
( ゚∀゚)「野球部じゃねぇよ。3人共、部活には入ってないし」
( ^ω^)「でもドクオのピッチングは凄かったお? ビコーズだってよくあんな球を
捕れるお」
_
( ゚∀゚)「ドクオは小学生の時、ジュニアに入ってたんだよ。ビコーズは……性格?」
(∵)「ただ球を捕ればいいだけ」
ビコーズは何でもない事かの様に淡々と言う。
_
(;゚∀゚)「え? ていうか何? 俺は凄くないの?」
ブーンはどう返答していいのか言葉に詰まった。なにしろジョルジュのバッティングは
球にかすりもしていなかったのだ。
(;^ω^)「ジョルジュは……スイングスピードが……」
苦し紛れだったがジョルジュはまんざらでもなさそうだ。
( ゚∀゚)「いや」
ブーンの質問にジョルジュが答える。
_
( ゚∀゚)「野球部じゃねぇよ。3人共、部活には入ってないし」
( ^ω^)「でもドクオのピッチングは凄かったお? ビコーズだってよくあんな球を
捕れるお」
_
( ゚∀゚)「ドクオは小学生の時、ジュニアに入ってたんだよ。ビコーズは……性格?」
(∵)「ただ球を捕ればいいだけ」
ビコーズは何でもない事かの様に淡々と言う。
_
(;゚∀゚)「え? ていうか何? 俺は凄くないの?」
ブーンはどう返答していいのか言葉に詰まった。なにしろジョルジュのバッティングは
球にかすりもしていなかったのだ。
(;^ω^)「ジョルジュは……スイングスピードが……」
苦し紛れだったがジョルジュはまんざらでもなさそうだ。
141: :2009/02/20(金) 23:25:13.75 ID:
( ^ω^)「でも、あれだけ上手いんだったら野球部に入ればいいのに」
これ以上ジョルジュを誉めろと言われても困るので、ブーンは話題を変えた。
(‘A`)「野球は今ジョルジュのブームなんだよ」
とドクオ。
( ^ω^)「ブーム?」
とブーン。
(‘A`)「あぁ。コイツその時その時でやりたいことが変わるからさ。今は野球なわけ。
その前はサッカーだっけ?」
(∵)「カバディ」
ビコーズが無表情で答える。
(‘A`)「そうだそうだ。な? 一貫性がないんだよ、コイツ。どうせすぐ飽きるんだから
わざわざ部活に入るまでもないのさ」
そこでドクオがコーラを飲んで喉を潤す。
これ以上ジョルジュを誉めろと言われても困るので、ブーンは話題を変えた。
(‘A`)「野球は今ジョルジュのブームなんだよ」
とドクオ。
( ^ω^)「ブーム?」
とブーン。
(‘A`)「あぁ。コイツその時その時でやりたいことが変わるからさ。今は野球なわけ。
その前はサッカーだっけ?」
(∵)「カバディ」
ビコーズが無表情で答える。
(‘A`)「そうだそうだ。な? 一貫性がないんだよ、コイツ。どうせすぐ飽きるんだから
わざわざ部活に入るまでもないのさ」
そこでドクオがコーラを飲んで喉を潤す。
142: :2009/02/20(金) 23:26:01.91 ID:
カバディワロタ
143: :2009/02/20(金) 23:26:35.47 ID:
ジョルジュいいセンスしてるわ
145: :2009/02/20(金) 23:27:42.18 ID:
(‘A`)「ま、俺も野球は嫌いじゃないから付き合ってるけどさ」
( ^ω^)「なるほどお」
ブーンは得心したように頷いた。そして焼肉ライスバーガーの続きを食べようと
手を伸ばすが、すでに無くなっていた。
いつの間にか食べ切ってしまったのだろうか。
そんな事を考えながらショボンに視線を落とすと、何かをむしゃむしゃと咀嚼して
いる。
……ショボン。食べるのはいいけど、誰かに見られたらどうするんだ。
ブーンはやきもきした。
_
( ゚∀゚)「そういえば、ブーンって中学生だよ……な?」
ジョルジュが少し躊躇しながら尋ねてくる。そういえば名前以外何も自己紹介して
いなかった。
ジョルジュの語尾に勢いがなかったのは、万が一年上だったらどうしよう、という葛
藤ゆえだろう。
ブーンは大きく頷いた。
(‘A`)「ま、俺も野球は嫌いじゃないから付き合ってるけどさ」
( ^ω^)「なるほどお」
ブーンは得心したように頷いた。そして焼肉ライスバーガーの続きを食べようと
手を伸ばすが、すでに無くなっていた。
いつの間にか食べ切ってしまったのだろうか。
そんな事を考えながらショボンに視線を落とすと、何かをむしゃむしゃと咀嚼して
いる。
……ショボン。食べるのはいいけど、誰かに見られたらどうするんだ。
ブーンはやきもきした。
_
( ゚∀゚)「そういえば、ブーンって中学生だよ……な?」
ジョルジュが少し躊躇しながら尋ねてくる。そういえば名前以外何も自己紹介して
いなかった。
ジョルジュの語尾に勢いがなかったのは、万が一年上だったらどうしよう、という葛
藤ゆえだろう。
ブーンは大きく頷いた。
148: :2009/02/20(金) 23:29:34.02 ID:
( ^ω^)「中学生だお。wktk中学の1-2」
そこまで聞いて、ジョルジュは目を丸くした。
_
( ゚∀゚)「マジかよ。隣のクラスじゃねぇか」
今度はブーンが驚く。
( ^ω^)「そうなのかお?」
_
( ゚∀゚)「あぁ。でも俺らブーンの事、見たことないぜ。なぁ?」
ジョルジュはドクオとビコーズに尋ねる。二人もジョルジュに同意する。
( ^ω^)「僕はあんまり学校に来てなかったから」
しまった、と思った。そこまで言ったらその理由まで聞かれるじゃないか。
“友達がいなかったから”なんて言ったらひかれるぞ。せっかく出来た友達なのに。
_
( ゚∀゚)「何で学校に来てなかったんだ?」
そこまで聞いて、ジョルジュは目を丸くした。
_
( ゚∀゚)「マジかよ。隣のクラスじゃねぇか」
今度はブーンが驚く。
( ^ω^)「そうなのかお?」
_
( ゚∀゚)「あぁ。でも俺らブーンの事、見たことないぜ。なぁ?」
ジョルジュはドクオとビコーズに尋ねる。二人もジョルジュに同意する。
( ^ω^)「僕はあんまり学校に来てなかったから」
しまった、と思った。そこまで言ったらその理由まで聞かれるじゃないか。
“友達がいなかったから”なんて言ったらひかれるぞ。せっかく出来た友達なのに。
_
( ゚∀゚)「何で学校に来てなかったんだ?」
150: :2009/02/20(金) 23:31:30.90 ID:
このぐらいの年の男の子は純粋そうなイメージ
151: :2009/02/20(金) 23:31:59.82 ID:
ほら来た、馬鹿め。余計なことは言わなくていいんだ。知らないぞ、今まで友達
がいなかった奴なんて奇異の目で見られたって仕方ないんだ。
ブーンの中で自分をなじる声が響く。
でも、ちゃんと説明したほうがいいのではないか? 確かにせっかく出来た友達
を失うのは辛い。しかし、友達に隠し事をしたまま付き合うのはもっと辛い。
ブーンは一度大きく息を吸った。
( ^ω^)「僕は友達がいなかったから……あんまり学校に行きたくなかったんだお」
_
( ゚∀゚)「そうか」
あっけらかんとしたジョルジュの言葉。そして、
_
( ゚∀゚)「じゃあ明日からは学校に来るのが楽しみじゃん。友達出来たんだから」
そう言葉を継ぐ。
(‘A`)「おまえみたいな友達が出来ても嬉しくないだろ」
ドクオが憎まれ口を叩き、
_
(#゚∀゚)「うっさいボケ」
ジョルジュがドクオの頭を叩く。
ほら来た、馬鹿め。余計なことは言わなくていいんだ。知らないぞ、今まで友達
がいなかった奴なんて奇異の目で見られたって仕方ないんだ。
ブーンの中で自分をなじる声が響く。
でも、ちゃんと説明したほうがいいのではないか? 確かにせっかく出来た友達
を失うのは辛い。しかし、友達に隠し事をしたまま付き合うのはもっと辛い。
ブーンは一度大きく息を吸った。
( ^ω^)「僕は友達がいなかったから……あんまり学校に行きたくなかったんだお」
_
( ゚∀゚)「そうか」
あっけらかんとしたジョルジュの言葉。そして、
_
( ゚∀゚)「じゃあ明日からは学校に来るのが楽しみじゃん。友達出来たんだから」
そう言葉を継ぐ。
(‘A`)「おまえみたいな友達が出来ても嬉しくないだろ」
ドクオが憎まれ口を叩き、
_
(#゚∀゚)「うっさいボケ」
ジョルジュがドクオの頭を叩く。
154: :2009/02/20(金) 23:33:36.89 ID:
そんなやり取りを見て、ブーンは自分の中に生まれた疑問をぶつけたくなる。
(;^ω^)「ひ、ひかないのかお?」
よせばいいのに。せっかくジョルジュが軽く流してくれたのに。自分でわざわざ
重い雰囲気になるようなことを言うな。
しかし。
_
( ゚∀゚)「あ? なんでひくんだよ?」
(;^ω^)「だって、友達がいない奴なんて……気持ち悪くないのかお?」
ジョルジュは『何言ってんだコイツ』という顔をした。
_
( ゚∀゚)「あのなぁ、誰だって最初から友達がいるわけじゃねぇだろ。合う・合わない
もあるしな。そんな事で一々ひくか」
ドクオも苦笑いをして、
(‘A`)「気にしすぎじゃね」
そう言ってくれた。
(∵)「ブーンは繊細」
ビコーズは相変わらず無表情だ。
(;^ω^)「ひ、ひかないのかお?」
よせばいいのに。せっかくジョルジュが軽く流してくれたのに。自分でわざわざ
重い雰囲気になるようなことを言うな。
しかし。
_
( ゚∀゚)「あ? なんでひくんだよ?」
(;^ω^)「だって、友達がいない奴なんて……気持ち悪くないのかお?」
ジョルジュは『何言ってんだコイツ』という顔をした。
_
( ゚∀゚)「あのなぁ、誰だって最初から友達がいるわけじゃねぇだろ。合う・合わない
もあるしな。そんな事で一々ひくか」
ドクオも苦笑いをして、
(‘A`)「気にしすぎじゃね」
そう言ってくれた。
(∵)「ブーンは繊細」
ビコーズは相変わらず無表情だ。
156: :2009/02/20(金) 23:35:17.54 ID:
_
( ゚∀゚)「それになぁ、気持ち悪いってのはコイツの顔みたいなのを言うんだよ」
(#‘A`)「よし、表出ろ」
ジョルジュに指を差され勢いよく席を立つドクオ。なんだか二人で言い争ってい
るようだが、それはブーンの頭の中には入ってこなかった。
代わりに別のことを考えていたから。
――あぁ、ショボン、わかったよ。友達を作るっていうのは、そう難しくないこと
だったんだ。
僕が悩んでいたことなんて些細な事なのかもしれない。
ショボン、君は凄いな。
僕がずっと抱えていた問題を、君は簡単に解決してしまった。
ありがとう、ショボン。
ブーンは2人が作る喧騒をどこか遠くの事のように感じていた。
( ゚∀゚)「それになぁ、気持ち悪いってのはコイツの顔みたいなのを言うんだよ」
(#‘A`)「よし、表出ろ」
ジョルジュに指を差され勢いよく席を立つドクオ。なんだか二人で言い争ってい
るようだが、それはブーンの頭の中には入ってこなかった。
代わりに別のことを考えていたから。
――あぁ、ショボン、わかったよ。友達を作るっていうのは、そう難しくないこと
だったんだ。
僕が悩んでいたことなんて些細な事なのかもしれない。
ショボン、君は凄いな。
僕がずっと抱えていた問題を、君は簡単に解決してしまった。
ありがとう、ショボン。
ブーンは2人が作る喧騒をどこか遠くの事のように感じていた。
158: :2009/02/20(金) 23:36:44.74 ID:
(‘A`)ニコッ
良い友達ができて良かった
良い友達ができて良かった
160: :2009/02/20(金) 23:37:04.51 ID:
ショボンいなくならないで
161: :2009/02/20(金) 23:38:05.63 ID:
ショボンがいればなぁ・・・・・・支援
162: :2009/02/20(金) 23:38:07.52 ID:
_
( ゚∀゚)「じゃあ、また明日な」
ブーンの自宅前でジョルジュとビコーズが手を振る。
あれから段々本気になってきたジョルジュとドクオをビコーズと2人で止
めたのだ。最終的には“ドクオの不細工を悪く言わない”という謎の協定が
ドクオから持ちかけられ一応の解決を見せた。後に言う不細工協定だ。
不細工協定が締結された後も何でもないことを延々と話していた。
野球の事やクラスの事、学年で一番可愛いのは誰かという事やドクオに
彼女が出来るかなど。
とにかく色々な話をした。
ブーンも昔からの友人と話すかのような饒舌さをみせ、気が付けば日が
とっぷりと暮れていた。
みなまだ中学一年生。夜になれば親元に帰らなければいけない。
誰が言い出すでもなく、自然と帰宅することになった。
ドクオが自宅用にモスを買って帰ると言うので、3人は先に帰ることにした。
幸いにも3人共帰る方向が同じだったので、仲良く帰路に着くことにした。
どうやらブーンの家が一番近いらしい。ここで今日はお別れのようだ。
( ゚∀゚)「じゃあ、また明日な」
ブーンの自宅前でジョルジュとビコーズが手を振る。
あれから段々本気になってきたジョルジュとドクオをビコーズと2人で止
めたのだ。最終的には“ドクオの不細工を悪く言わない”という謎の協定が
ドクオから持ちかけられ一応の解決を見せた。後に言う不細工協定だ。
不細工協定が締結された後も何でもないことを延々と話していた。
野球の事やクラスの事、学年で一番可愛いのは誰かという事やドクオに
彼女が出来るかなど。
とにかく色々な話をした。
ブーンも昔からの友人と話すかのような饒舌さをみせ、気が付けば日が
とっぷりと暮れていた。
みなまだ中学一年生。夜になれば親元に帰らなければいけない。
誰が言い出すでもなく、自然と帰宅することになった。
ドクオが自宅用にモスを買って帰ると言うので、3人は先に帰ることにした。
幸いにも3人共帰る方向が同じだったので、仲良く帰路に着くことにした。
どうやらブーンの家が一番近いらしい。ここで今日はお別れのようだ。
164: :2009/02/20(金) 23:40:14.07 ID:
ブーンも今日出来た友人に手を振り見送る。
( ^ω^)「うん、また明日だお」
誰かに別れの挨拶をするなんてどれくらいぶりだろう。
そう考えると寂しいはずの別れもなんだか嬉しくなってしまうから不思議だ。
2人をしばらく見送った後、ブーンは玄関の戸を開いた。
( ^ω^)「ただいま」
J( ‘-`)し「おかえり」
母が出迎えてくれた。
J( ‘-`)し「今日は随分遅いわね。今ご飯作っちゃうから待ってて」
うっかりしていた。ついさっきみんなとバーガーを食べてきた事を思い出す。胃は満
タンだ。とてもこれ以上食事をとるなんて出来そうもない。
( ^ω^)「ごめん、実はご飯食べてきちゃったんだお」
J( ‘-`)し「そうなの? 誰と?」
( ^ω^)「友達と」
そこで母の顔が明るくなる。
( ^ω^)「うん、また明日だお」
誰かに別れの挨拶をするなんてどれくらいぶりだろう。
そう考えると寂しいはずの別れもなんだか嬉しくなってしまうから不思議だ。
2人をしばらく見送った後、ブーンは玄関の戸を開いた。
( ^ω^)「ただいま」
J( ‘-`)し「おかえり」
母が出迎えてくれた。
J( ‘-`)し「今日は随分遅いわね。今ご飯作っちゃうから待ってて」
うっかりしていた。ついさっきみんなとバーガーを食べてきた事を思い出す。胃は満
タンだ。とてもこれ以上食事をとるなんて出来そうもない。
( ^ω^)「ごめん、実はご飯食べてきちゃったんだお」
J( ‘-`)し「そうなの? 誰と?」
( ^ω^)「友達と」
そこで母の顔が明るくなる。
166: :2009/02/20(金) 23:42:26.65 ID:
J( ‘-`)し「あらそう。わかったわ。次からはちゃんと言ってね」
注意している割りには顔が綻んでいる。それだけブーンに友人がいなかった事に
心を痛めていたのだろう。
( ^ω^)「うん、わかったお。これからはちゃんと連絡するお」
それだけ告げて、ブーンは自室に向かった。
バタン。
扉が閉まる音がする。つまりこれでこの部屋は隔絶されたのだ。ブーンとショボン以外誰もいない。
(´・ω・`)「やったな」
ショボンが顔を覗かせる。
(*^ω^)「ショボン! ショボン! 凄いお! 友達が出来たお! それも3人も!」
よっぽど嬉しいのだろうか、ブーンが頬を紅潮させる。
(´・ω・`)「見てたよ。凄かったじゃないか」
(*^ω^)「僕に友達が! また明日って言ってくれたお!」
(´・ω・`)「嬉しいだろう。今まで辛かったもんなぁ」
注意している割りには顔が綻んでいる。それだけブーンに友人がいなかった事に
心を痛めていたのだろう。
( ^ω^)「うん、わかったお。これからはちゃんと連絡するお」
それだけ告げて、ブーンは自室に向かった。
バタン。
扉が閉まる音がする。つまりこれでこの部屋は隔絶されたのだ。ブーンとショボン以外誰もいない。
(´・ω・`)「やったな」
ショボンが顔を覗かせる。
(*^ω^)「ショボン! ショボン! 凄いお! 友達が出来たお! それも3人も!」
よっぽど嬉しいのだろうか、ブーンが頬を紅潮させる。
(´・ω・`)「見てたよ。凄かったじゃないか」
(*^ω^)「僕に友達が! また明日って言ってくれたお!」
(´・ω・`)「嬉しいだろう。今まで辛かったもんなぁ」
169: :2009/02/20(金) 23:44:41.16 ID:
ショボンのその言葉にブーンは黙ってしまう。
(´・ω・`)「偉いぞ」
( ^ω^)「いや……」
(´・ω・`)「偉いよ。よく頑張ったな、ブーン。君は強い奴だったんだなぁ」
ブーンは目頭が熱くなった。
ダメだ、ショボン。そんな事を言わないでくれ。
とても見せられない顔になってしまうから。
ブーンはショボンに背を向けた。
そうしないと、ダムが決壊してしまいそうだったから。
鼻をすすり、俯く。
なんとか震える声を絞りだせた。
( ^ω^)「……ありがとう」
(´・ω・`)「やだなぁ、僕は何もしてないよ。頑張ったのは君じゃないか」
(´・ω・`)「偉いぞ」
( ^ω^)「いや……」
(´・ω・`)「偉いよ。よく頑張ったな、ブーン。君は強い奴だったんだなぁ」
ブーンは目頭が熱くなった。
ダメだ、ショボン。そんな事を言わないでくれ。
とても見せられない顔になってしまうから。
ブーンはショボンに背を向けた。
そうしないと、ダムが決壊してしまいそうだったから。
鼻をすすり、俯く。
なんとか震える声を絞りだせた。
( ^ω^)「……ありがとう」
(´・ω・`)「やだなぁ、僕は何もしてないよ。頑張ったのは君じゃないか」
173: :2009/02/20(金) 23:46:53.44 ID:
そう言うと思った。
でも違う。違うんだよ、ショボン。
僕は君がいなかったら、ずっとこの部屋で泣いていただろう。
ずっと教室の片隅で机に突っ伏していただろう。
君がいてくれたから、今日ジョルジュたちと友達になれた。
君がいてくれたから、僕は潰されずに済んだんだ。
君がそばにいてくれたから、僕は勇気を持てた。安心できた。
――だから、ブーンは何度もショボンに言う。
( ^ω^)「……ありがとう」
(´・ω・`)「だから僕は何もしてないってば」
( ^ω^)「ありがとう」
(;´・ω・`)「しつこい奴だな。気持ち悪いぞ」
ショボンはハの字の眉を更に垂れさせて苦笑した。
言葉こそひどかったが、それがショボンの照れ隠しなのだとブーンはわかっていた。
ブーンはやっと、心が自由になった。
でも違う。違うんだよ、ショボン。
僕は君がいなかったら、ずっとこの部屋で泣いていただろう。
ずっと教室の片隅で机に突っ伏していただろう。
君がいてくれたから、今日ジョルジュたちと友達になれた。
君がいてくれたから、僕は潰されずに済んだんだ。
君がそばにいてくれたから、僕は勇気を持てた。安心できた。
――だから、ブーンは何度もショボンに言う。
( ^ω^)「……ありがとう」
(´・ω・`)「だから僕は何もしてないってば」
( ^ω^)「ありがとう」
(;´・ω・`)「しつこい奴だな。気持ち悪いぞ」
ショボンはハの字の眉を更に垂れさせて苦笑した。
言葉こそひどかったが、それがショボンの照れ隠しなのだとブーンはわかっていた。
ブーンはやっと、心が自由になった。
175: :2009/02/20(金) 23:49:01.32 ID:
――そういえば。
( ^ω^)「そういえばショボン、もし僕がドクオの球を打てなかったらどうする気
だったお?」
(´・ω・`)「ん? あぁ、多分ジョルジュに殴られていただろうな」
(;^ω^)「マジかお」
(´・ω・`)「結果オーライ結果オーライ。結局いい方向に転がったんだからそれで
いいじゃないか。あっはっは」
カラカラと笑うショボン。戦慄するブーン。
ぼそりと、
(;^ω^)「ショボン……恐ろしい子……」
そう呟いた。
( ^ω^)「そういえばショボン、もし僕がドクオの球を打てなかったらどうする気
だったお?」
(´・ω・`)「ん? あぁ、多分ジョルジュに殴られていただろうな」
(;^ω^)「マジかお」
(´・ω・`)「結果オーライ結果オーライ。結局いい方向に転がったんだからそれで
いいじゃないか。あっはっは」
カラカラと笑うショボン。戦慄するブーン。
ぼそりと、
(;^ω^)「ショボン……恐ろしい子……」
そう呟いた。
176: :2009/02/20(金) 23:50:28.40 ID:
翌日の四時限目。ブーンは自分の机に伏せていた。
以前の様に寝たふりをしているわけではない。
ブレザーの内ポケットに隠れたショボンと会話をするために姿勢を低くしているのだ。
( ^ω^)「だからおね? “前提1:A=Bである。前提2:B=Cである。結論:A=Cで
ある”つまり、論理的にこうなるんだお」
(´・ω・`)「んー、わからないよ」
( ^ω^)「論理的に考えたら間違いなくこうなるお」
(´・ω・`)「なんで間違いなく言えるの? 僕もそんなに馬鹿じゃない。A=Bはわかった。
B=Cもわかった。でも、A=B、B=CだったらどうしてA=Cになるの? 何の必然性も
ないじゃない。ちゃんと説明してよ」
( ^ω^)「だから、A=B、B=Cが正しければ、A=Cが成り立つんだってばお!」
(´・ω・`)「そんなこと言ってないじゃないか。そんな前提があるんなら、それをちゃんと追
加してよ」
(;^ω^)「わかったお。仕方ないおね。“前提1:A=Bである。前提2:B=Cである。前提3:
前提1、前提2が正しいとき、A=Cが成り立つ。結論:A=Cである”どうだお? これでわ
かったお?」
翌日の四時限目。ブーンは自分の机に伏せていた。
以前の様に寝たふりをしているわけではない。
ブレザーの内ポケットに隠れたショボンと会話をするために姿勢を低くしているのだ。
( ^ω^)「だからおね? “前提1:A=Bである。前提2:B=Cである。結論:A=Cで
ある”つまり、論理的にこうなるんだお」
(´・ω・`)「んー、わからないよ」
( ^ω^)「論理的に考えたら間違いなくこうなるお」
(´・ω・`)「なんで間違いなく言えるの? 僕もそんなに馬鹿じゃない。A=Bはわかった。
B=Cもわかった。でも、A=B、B=CだったらどうしてA=Cになるの? 何の必然性も
ないじゃない。ちゃんと説明してよ」
( ^ω^)「だから、A=B、B=Cが正しければ、A=Cが成り立つんだってばお!」
(´・ω・`)「そんなこと言ってないじゃないか。そんな前提があるんなら、それをちゃんと追
加してよ」
(;^ω^)「わかったお。仕方ないおね。“前提1:A=Bである。前提2:B=Cである。前提3:
前提1、前提2が正しいとき、A=Cが成り立つ。結論:A=Cである”どうだお? これでわ
かったお?」
177: :2009/02/20(金) 23:52:21.26 ID:
(´・ω・`)「んー、やっぱりさっきと同じだよ。前提1,2,3はそれぞれ理解したよ。でも、
それでなんでA=Cになるのかわからないよ。どうして?」
(#^ω^)「だ・か・ら! 論理的に考えればそうなるお?」
(´・ω・`)「どうして? 論理的だからとかそんなお題目はいいからさ、ちゃんと説明してよ」
(#^ω^)「よく聞けお! “前提1、前提2が正しいとき、A=Cが成り立つ”って、前提3で
言っているだろ!」
(´・ω・`)「なるほどね。前提1と前提2が正しいという条件が付けば、A=Cになるんだね」
( ^ω^)「そうだお」
(´・ω・`)「じゃあそうするとさ、前提1と2と3の全部が正しく成り立つときに、初めてA=Cに
なるって言えるんじゃないの?」
(;^ω^)「う……。ま、まあその通りだお」
(´・ω・`)「さっきと同じだね。そんなこと言ってないじゃないか。ちゃんと厳密にやってよ。そ
れが論理的ということじゃないの?」
そこまで話して――
それでなんでA=Cになるのかわからないよ。どうして?」
(#^ω^)「だ・か・ら! 論理的に考えればそうなるお?」
(´・ω・`)「どうして? 論理的だからとかそんなお題目はいいからさ、ちゃんと説明してよ」
(#^ω^)「よく聞けお! “前提1、前提2が正しいとき、A=Cが成り立つ”って、前提3で
言っているだろ!」
(´・ω・`)「なるほどね。前提1と前提2が正しいという条件が付けば、A=Cになるんだね」
( ^ω^)「そうだお」
(´・ω・`)「じゃあそうするとさ、前提1と2と3の全部が正しく成り立つときに、初めてA=Cに
なるって言えるんじゃないの?」
(;^ω^)「う……。ま、まあその通りだお」
(´・ω・`)「さっきと同じだね。そんなこと言ってないじゃないか。ちゃんと厳密にやってよ。そ
れが論理的ということじゃないの?」
そこまで話して――
178: :2009/02/20(金) 23:54:48.59 ID:
キーンコーンカーンコーン。
――四時限目の終了を告げる鐘が鳴り響く。それは同時に昼休みの始まりを報せる
鐘でもあった。
起立、礼! と学級委員が号令をかけて、昼休みに突入する。
さて、また屋上で弁当を食べるか。今日は天気がいいから気持ち良さそうだ、とブー
ンが伸びをした時。
_
( ゚∀゚)「おー、いたいた! ブーン!」
聞き覚えのある声。声のした方に振り向いてみると、ドアの所にジョルジュが立っていた。
( ^ω^)「ジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「弁当一緒に食おうぜ。ドクオとビコーズもいるからよ」
ブーンは頷くと席を立った。
机の間を縫うようにして歩いていると、クラスメイトからの視線を感じた。昨日まで友達もい
なくて机に伏せてた奴が、何でいきなりジョルジュたちと仲良くなってるんだ? とでも言いた
げな視線だった。
ブーンはその視線が気まずくてジョルジュの元へと急ぐ。
廊下に出ると、ジョルジュたちが弁当を持って待っていてくれた。
――四時限目の終了を告げる鐘が鳴り響く。それは同時に昼休みの始まりを報せる
鐘でもあった。
起立、礼! と学級委員が号令をかけて、昼休みに突入する。
さて、また屋上で弁当を食べるか。今日は天気がいいから気持ち良さそうだ、とブー
ンが伸びをした時。
_
( ゚∀゚)「おー、いたいた! ブーン!」
聞き覚えのある声。声のした方に振り向いてみると、ドアの所にジョルジュが立っていた。
( ^ω^)「ジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「弁当一緒に食おうぜ。ドクオとビコーズもいるからよ」
ブーンは頷くと席を立った。
机の間を縫うようにして歩いていると、クラスメイトからの視線を感じた。昨日まで友達もい
なくて机に伏せてた奴が、何でいきなりジョルジュたちと仲良くなってるんだ? とでも言いた
げな視線だった。
ブーンはその視線が気まずくてジョルジュの元へと急ぐ。
廊下に出ると、ジョルジュたちが弁当を持って待っていてくれた。
179: :2009/02/20(金) 23:55:20.41 ID:
支援
181: :2009/02/20(金) 23:58:24.72 ID:
_
( ゚∀゚)「おー、来たか。じゃあ食いに行こうぜ」
( ^ω^)「どこで食べるお?」
_
( ゚∀゚)「いつもは俺らのクラスで食ってたんだが、それも微妙だしなぁ」
食べる場所はまだ決めあぐねているらしい。
( ^ω^)「じゃあ僕がいい場所を教えるお」
そう言ってブーンは彼らを“食堂”に案内することにした。
(‘A`)「おい、ここって立ち入り禁止じゃないのか?」
屋上への扉を前に、ドクオが言った。
(∵)「鍵もかかってる」
( ^ω^)「大丈夫なんだお。ちょっと待ってて欲しいお」
( ゚∀゚)「おー、来たか。じゃあ食いに行こうぜ」
( ^ω^)「どこで食べるお?」
_
( ゚∀゚)「いつもは俺らのクラスで食ってたんだが、それも微妙だしなぁ」
食べる場所はまだ決めあぐねているらしい。
( ^ω^)「じゃあ僕がいい場所を教えるお」
そう言ってブーンは彼らを“食堂”に案内することにした。
(‘A`)「おい、ここって立ち入り禁止じゃないのか?」
屋上への扉を前に、ドクオが言った。
(∵)「鍵もかかってる」
( ^ω^)「大丈夫なんだお。ちょっと待ってて欲しいお」
184: :2009/02/21(土) 00:00:59.65 ID:
くるりと身を翻し、ドアの前に立つ。3人には見えないように、
( ^ω^)「ショボン、みんなからは見えないように鍵を開けて欲しいお」
そう懇願する。
(´・ω・`)「えー? しょうがないなぁ」
しぶしぶ、といった体でショボンは了承する。ブーンが自分の体でショボンを覆って
やる。こうすれば3人にはショボンが見えないはずだ。
カチャリ。
ブーンにとっては聞きなれたその音――開錠の音がした。
得意げに鉄の扉を開く。眼前に広々とした青空が広がっている。
_
( ゚∀゚)「おぉ! いいじゃねぇか!」
( ^ω^)「これからはみんなここで弁当を食べようお」
(‘A`)「でも大丈夫なのか? 先生とか」
( ^ω^)「おっおっお。僕は今まで誰にも見つかったことがないお。安心するお」
( ^ω^)「ショボン、みんなからは見えないように鍵を開けて欲しいお」
そう懇願する。
(´・ω・`)「えー? しょうがないなぁ」
しぶしぶ、といった体でショボンは了承する。ブーンが自分の体でショボンを覆って
やる。こうすれば3人にはショボンが見えないはずだ。
カチャリ。
ブーンにとっては聞きなれたその音――開錠の音がした。
得意げに鉄の扉を開く。眼前に広々とした青空が広がっている。
_
( ゚∀゚)「おぉ! いいじゃねぇか!」
( ^ω^)「これからはみんなここで弁当を食べようお」
(‘A`)「でも大丈夫なのか? 先生とか」
( ^ω^)「おっおっお。僕は今まで誰にも見つかったことがないお。安心するお」
185: :2009/02/21(土) 00:02:38.10 ID:
じゃあこれからはここで食べるか、と言いながらジョルジュは床に座り、ドクオと
ビコーズもそれに倣う。4人での昼餐だ。ブーンの顔にも笑みが絶えない。
昼食をとっていると、ドクオがぼんやりと景色を眺めていた。
( ^ω^)「ドクオ、何を見ているお?」
(‘A`)「あ? あぁ、ここからだと俺らの小学校が見えるな、と思ってさ」
なるほど、確かに小学校らしきものが見える。やや高台にあるが、この中学校の
屋上のほうが高さがあるので良く見える。
( ^ω^)「3人共同じ小学校なのかお?」
(∵)「僕は違う」
口数の少ないビコーズが短く答える。
(∵)「ドクオとジョルジュは同じ小学校。初対面で喧嘩したらしい」
( ^ω^)「え? 何で喧嘩したんだお?」
ブーンも二人の出会いに興味が沸く。
ビコーズもそれに倣う。4人での昼餐だ。ブーンの顔にも笑みが絶えない。
昼食をとっていると、ドクオがぼんやりと景色を眺めていた。
( ^ω^)「ドクオ、何を見ているお?」
(‘A`)「あ? あぁ、ここからだと俺らの小学校が見えるな、と思ってさ」
なるほど、確かに小学校らしきものが見える。やや高台にあるが、この中学校の
屋上のほうが高さがあるので良く見える。
( ^ω^)「3人共同じ小学校なのかお?」
(∵)「僕は違う」
口数の少ないビコーズが短く答える。
(∵)「ドクオとジョルジュは同じ小学校。初対面で喧嘩したらしい」
( ^ω^)「え? 何で喧嘩したんだお?」
ブーンも二人の出会いに興味が沸く。
187: :2009/02/21(土) 00:06:10.51 ID:
ショボンはまざれないんだよな
寂しいだろうな
寂しいだろうな
188: :2009/02/21(土) 00:06:49.50 ID:
ショボン(´・ω・`)
318: :2009/02/21(土) 20:53:09.20 ID:
_
( ゚∀゚)「くだらねぇ事だよ」
('A`)「コイツが俺に喧嘩を売ってきたんだよ」
ドクオが忌々しげに口を開いた。
_
( ゚∀゚)「喧嘩なんて売ってねぇよ」
('A`)「初対面で『おぉ、不細工な面だな』って言うのは喧嘩売ってんのと同義なんだよ」
(;^ω^)「初対面でそんなこと言うのも凄いお」
_
( ゚∀゚)「そしたらこの馬鹿いきなり殴ってきやがってさ」
('A`)「当たり前だろ。突然そんな事を言われてみろ。殴り合いになるのも当然だ」
( ^ω^)「それで、結局どうなったんだお?」
ジョルジュがフフン、と鼻を鳴らし口の端を持ち上げる。
_
( ゚∀゚)「勝った」
('A`)「悪口は言われるわぼこぼこにされるわで、もう俺涙目ですわ」
_
( ゚∀゚)「不細工の癖に俺に勝とうなんてデボン紀から白亜紀の間ぐらい早ぇ」
(‘A`)「おい、待て。……今なんて言った? 昨日の“不細工協定”を忘れたのか? もう俺の不細工のことは言わない約束だっただろ?」
( ゚∀゚)「くだらねぇ事だよ」
('A`)「コイツが俺に喧嘩を売ってきたんだよ」
ドクオが忌々しげに口を開いた。
_
( ゚∀゚)「喧嘩なんて売ってねぇよ」
('A`)「初対面で『おぉ、不細工な面だな』って言うのは喧嘩売ってんのと同義なんだよ」
(;^ω^)「初対面でそんなこと言うのも凄いお」
_
( ゚∀゚)「そしたらこの馬鹿いきなり殴ってきやがってさ」
('A`)「当たり前だろ。突然そんな事を言われてみろ。殴り合いになるのも当然だ」
( ^ω^)「それで、結局どうなったんだお?」
ジョルジュがフフン、と鼻を鳴らし口の端を持ち上げる。
_
( ゚∀゚)「勝った」
('A`)「悪口は言われるわぼこぼこにされるわで、もう俺涙目ですわ」
_
( ゚∀゚)「不細工の癖に俺に勝とうなんてデボン紀から白亜紀の間ぐらい早ぇ」
(‘A`)「おい、待て。……今なんて言った? 昨日の“不細工協定”を忘れたのか? もう俺の不細工のことは言わない約束だっただろ?」
320: :2009/02/21(土) 20:54:30.72 ID:
_
( ゚∀゚)「んなもんは忘れたわ」
('A`)「あぁ? なんだとこら、ちょっと屋上来いや」
_
( ゚∀゚)「もう屋上だわボケが」
('A`)「屁理屈とか聞きたくないわ。あの時のケリ着けてやるからかかって来いや」
_
( ゚∀゚)「もうとっくに着いてるわ」
あぁ? あんだ? コラ。と睨み合うジョルジュとドクオ。それを見てビコーズがポツリ。
( ∵)「まるでチンピラ」
(;^ω^)「止めなくていいのかお?」
( ∵)「放っておけばいい。それより」
ビコーズはブーンの方を向く。
( ゚∀゚)「んなもんは忘れたわ」
('A`)「あぁ? なんだとこら、ちょっと屋上来いや」
_
( ゚∀゚)「もう屋上だわボケが」
('A`)「屁理屈とか聞きたくないわ。あの時のケリ着けてやるからかかって来いや」
_
( ゚∀゚)「もうとっくに着いてるわ」
あぁ? あんだ? コラ。と睨み合うジョルジュとドクオ。それを見てビコーズがポツリ。
( ∵)「まるでチンピラ」
(;^ω^)「止めなくていいのかお?」
( ∵)「放っておけばいい。それより」
ビコーズはブーンの方を向く。
321: :2009/02/21(土) 20:56:08.35 ID:
( ∵)「君の語尾はかなり特殊。なんでそんな語尾になる?」
(;^ω^)「お? なんだお突然。気がついたらこうなってたお」
( ∵)「普通は『お』は付けない。なんでそうなる?」
(;^ω^)「いや、何でって言われても……。『~じゃん』って言うのと同じなんじゃないかお?」
( ∵)「よくわからない。変」
変なのはお前だろ、とブーンは苦笑いをする。ドクオとジョルジュは相変わらず睨み合っていた。
そこで昼休み終了のチャイムが鳴る。
どうやらジョルジュとドクオは放課後に野球で決着をつける、と言う事で話がまとまったようだ。
_
(#゚∀゚)「てめー首洗って待ってろよ!」
(#'A`)「てめーこそ味噌汁用意しとけコラァ!」
口々にそんな事を言いながら教室に戻って行った。ブーンはやれやれ、と嘆息した。
ビコーズは……やはり無表情だった。
( ∵)「君の語尾はかなり特殊。なんでそんな語尾になる?」
(;^ω^)「お? なんだお突然。気がついたらこうなってたお」
( ∵)「普通は『お』は付けない。なんでそうなる?」
(;^ω^)「いや、何でって言われても……。『~じゃん』って言うのと同じなんじゃないかお?」
( ∵)「よくわからない。変」
変なのはお前だろ、とブーンは苦笑いをする。ドクオとジョルジュは相変わらず睨み合っていた。
そこで昼休み終了のチャイムが鳴る。
どうやらジョルジュとドクオは放課後に野球で決着をつける、と言う事で話がまとまったようだ。
_
(#゚∀゚)「てめー首洗って待ってろよ!」
(#'A`)「てめーこそ味噌汁用意しとけコラァ!」
口々にそんな事を言いながら教室に戻って行った。ブーンはやれやれ、と嘆息した。
ビコーズは……やはり無表情だった。
322: :2009/02/21(土) 20:56:46.37 ID:
俺も小学生の時に転校して、ブーンと同じく性格変わったわ。
保守
保守
323: :2009/02/21(土) 20:58:05.25 ID:
そして放課後、昨日の空き地で――。
(#'A`)「おい、準備はいいか!? ちゃんとケツ拭いたか!?」
_
(#゚∀゚)「いつでもいいわ! さっさとかかってこい!」
ジョルジュとドクオが真っ向から向き合っていた。龍虎相打つ、というやつだ。
ピッチャーはもちろんドクオ。振りかぶり、そして投げる。
ブオン。
空振るジョルジュ。
( ∵)「ストライク」
静かに響き渡るビコーズのジャッジ。
('A`)「へっへっへ。だからおまえじゃ打てないって。いい加減わかれよ」
_
(#゚∀゚)「うっせー! 今のはフェイントだ!」
どうやら今の空振りはフェイントらしい。
しかし次球も見事な空振り。続け様にカウントをとられ早くもツーストライク。
(#'A`)「おい、準備はいいか!? ちゃんとケツ拭いたか!?」
_
(#゚∀゚)「いつでもいいわ! さっさとかかってこい!」
ジョルジュとドクオが真っ向から向き合っていた。龍虎相打つ、というやつだ。
ピッチャーはもちろんドクオ。振りかぶり、そして投げる。
ブオン。
空振るジョルジュ。
( ∵)「ストライク」
静かに響き渡るビコーズのジャッジ。
('A`)「へっへっへ。だからおまえじゃ打てないって。いい加減わかれよ」
_
(#゚∀゚)「うっせー! 今のはフェイントだ!」
どうやら今の空振りはフェイントらしい。
しかし次球も見事な空振り。続け様にカウントをとられ早くもツーストライク。
325: :2009/02/21(土) 21:00:17.76 ID:
('A`)「おい、手加減してやろうか?」
_
(#゚∀゚)「余計なお世話だ! 今からが本番の世界なんだよ!」
なるほど、どうやらジョルジュは本気だ――そう判断し、ドクオの顔も引き締まる。
ギリリ、と歯を食い縛る音が聞こえてきそうな緊迫感の中、ドクオが最後の球を放る。
ジョルジュが足と腕でリズムを取る。地面を強く蹴り、完璧なタイミングでバットを振り抜く――。
――ジョルジュがバットから手を離し、右腕を高く突き上げる――。
( ∵)「ストライク。バッターアウト」
そして響くゲームセットの声。
ジョルジュは三振した。
_
(#゚∀゚)「クソがっ!」
地団駄を踏みながら悔しがるジョルジュ。
('A`)「うへっへ。わかったろ? これでもう俺の不細工を悪く言うなよ?」
_
(#゚∀゚)「待て! 待ってくれ! 最後に一勝負!」
('A`)「まだ無駄だって分からないかね。代打を立てても俺は別に構わんよ」
_
(#゚∀゚)「よし! 代打だ! いけ、ブーン!」
_
(#゚∀゚)「余計なお世話だ! 今からが本番の世界なんだよ!」
なるほど、どうやらジョルジュは本気だ――そう判断し、ドクオの顔も引き締まる。
ギリリ、と歯を食い縛る音が聞こえてきそうな緊迫感の中、ドクオが最後の球を放る。
ジョルジュが足と腕でリズムを取る。地面を強く蹴り、完璧なタイミングでバットを振り抜く――。
――ジョルジュがバットから手を離し、右腕を高く突き上げる――。
( ∵)「ストライク。バッターアウト」
そして響くゲームセットの声。
ジョルジュは三振した。
_
(#゚∀゚)「クソがっ!」
地団駄を踏みながら悔しがるジョルジュ。
('A`)「うへっへ。わかったろ? これでもう俺の不細工を悪く言うなよ?」
_
(#゚∀゚)「待て! 待ってくれ! 最後に一勝負!」
('A`)「まだ無駄だって分からないかね。代打を立てても俺は別に構わんよ」
_
(#゚∀゚)「よし! 代打だ! いけ、ブーン!」
327: :2009/02/21(土) 21:01:41.58 ID:
え? 僕? 突然の指名に困惑するブーン。
_
(#゚∀゚)「昨日やったみたいにあの不細工の面を更に歪ませてやれ!」
(;^ω^)「いやいや、無理だお。昨日は本当にたまたまなんだお。ドクオの球なんて
速すぎて打てないお」
そう、昨日の快打はショボンのアドバイスがあってのこと。それですらも打てたのは
奇跡のようなものだったのだ。もう一度再現しろと言われても困る。
_
(#゚∀゚)「何で!? できるでしょ!? っていうか、やれよ!」
ダメだ。ジョルジュは興奮している。ブーンは一縷の望みを掛けてドクオをちらと見る。
“そんな代打は認められない”と言って欲しいのだ。だが。
('A`)「ブーンか。いいぜ。昨日のはまぐれだって事をきっちり教えてやるよ」
ドクオはやる気満々だ。仕方無しにブーンは代打を受ける。バッターボックスに立ち、
ジョルジュに、
(;^ω^)「打てなくても責めないで欲しいお」
と保険をかけておく。
_
(#゚∀゚)「昨日やったみたいにあの不細工の面を更に歪ませてやれ!」
(;^ω^)「いやいや、無理だお。昨日は本当にたまたまなんだお。ドクオの球なんて
速すぎて打てないお」
そう、昨日の快打はショボンのアドバイスがあってのこと。それですらも打てたのは
奇跡のようなものだったのだ。もう一度再現しろと言われても困る。
_
(#゚∀゚)「何で!? できるでしょ!? っていうか、やれよ!」
ダメだ。ジョルジュは興奮している。ブーンは一縷の望みを掛けてドクオをちらと見る。
“そんな代打は認められない”と言って欲しいのだ。だが。
('A`)「ブーンか。いいぜ。昨日のはまぐれだって事をきっちり教えてやるよ」
ドクオはやる気満々だ。仕方無しにブーンは代打を受ける。バッターボックスに立ち、
ジョルジュに、
(;^ω^)「打てなくても責めないで欲しいお」
と保険をかけておく。
329: :2009/02/21(土) 21:04:03.62 ID:
_
( ゚∀゚)「大丈夫、お前はカブレラだ。カブレラになるんだ!」
(;^ω^)「何でカブレラ……」
まぁ、いいだろう。所詮お遊びみたいなものだ。それに、またショボンのアドバイス
を受ければ、ひょっとしたら打てるかもしれない。
ブーンはショボンにアドバイスを求めようと内ポケットに目をやり……。
(´‐ω‐`)「ぐぅ……ぐぅ……」
寝てる。ダメだこりゃ。
('A`)「ブーン知ってるか? 奇跡は二度と起きないから奇跡って言うんだぜ?」
マウンド上のドクオが何だかかっこいい、しかしよく考えてみると意味の分からない
ことを口走っている。
そしてもうお馴染み、ドクオは大きく振りかぶるとその腕を目いっぱいしならせて球
を投げる。
キン。
と小気味良い音。
白球は昨日よりも高い孤を描きながら青空に吸い込まれていった。
( ゚∀゚)「大丈夫、お前はカブレラだ。カブレラになるんだ!」
(;^ω^)「何でカブレラ……」
まぁ、いいだろう。所詮お遊びみたいなものだ。それに、またショボンのアドバイス
を受ければ、ひょっとしたら打てるかもしれない。
ブーンはショボンにアドバイスを求めようと内ポケットに目をやり……。
(´‐ω‐`)「ぐぅ……ぐぅ……」
寝てる。ダメだこりゃ。
('A`)「ブーン知ってるか? 奇跡は二度と起きないから奇跡って言うんだぜ?」
マウンド上のドクオが何だかかっこいい、しかしよく考えてみると意味の分からない
ことを口走っている。
そしてもうお馴染み、ドクオは大きく振りかぶるとその腕を目いっぱいしならせて球
を投げる。
キン。
と小気味良い音。
白球は昨日よりも高い孤を描きながら青空に吸い込まれていった。
331: :2009/02/21(土) 21:06:32.86 ID:
(;^ω^)「あらら……」
( ∵)「ホームラン」
なんと適当に振り回したはずのバットは、奇跡の所業と思われた昨日のそれよりも大きな弧を
描きながら遥か彼方へと飛んでいった。しかもビコーズからのホームラン宣告のお墨付きだ。
(;'A`)「な、何で……」
_
(*゚∀゚)「うはははは! バーカバーカ! 何が『奇跡は二度と起きないから奇跡』だ、クズが!
キモいキモい! ほれ、ブーン! お前も言ってやれ、不細工って!」
ジョルジュはドクオに一泡吹かせたことが余程嬉しかったのか、テンションをヒートアップさせ、
ドクオを罵倒する。あまつさえブーンにもドクオへの暴言を勧めてきた。
(;'A`)「お、お前に負けたわけじゃないんだからね!」
そう苦し紛れに反論するドクオに対し、ジョルジュは眉を思い切り上げ、目を見開き、あごを
しゃくれさせそして右手を右耳にあて屈みえぐり込むように、
_
( ゚∀゚)「はぁ?」
そう言った。憎たらしさ100倍だった。
(;'A`)「ム、ムカつく……」
げはげはと笑うジョルジュを尻目に、ブーンは自分の掌を見つめていた。
(;^ω^)「あらら……」
( ∵)「ホームラン」
なんと適当に振り回したはずのバットは、奇跡の所業と思われた昨日のそれよりも大きな弧を
描きながら遥か彼方へと飛んでいった。しかもビコーズからのホームラン宣告のお墨付きだ。
(;'A`)「な、何で……」
_
(*゚∀゚)「うはははは! バーカバーカ! 何が『奇跡は二度と起きないから奇跡』だ、クズが!
キモいキモい! ほれ、ブーン! お前も言ってやれ、不細工って!」
ジョルジュはドクオに一泡吹かせたことが余程嬉しかったのか、テンションをヒートアップさせ、
ドクオを罵倒する。あまつさえブーンにもドクオへの暴言を勧めてきた。
(;'A`)「お、お前に負けたわけじゃないんだからね!」
そう苦し紛れに反論するドクオに対し、ジョルジュは眉を思い切り上げ、目を見開き、あごを
しゃくれさせそして右手を右耳にあて屈みえぐり込むように、
_
( ゚∀゚)「はぁ?」
そう言った。憎たらしさ100倍だった。
(;'A`)「ム、ムカつく……」
げはげはと笑うジョルジュを尻目に、ブーンは自分の掌を見つめていた。
332: :2009/02/21(土) 21:08:06.84 ID:
( ^ω^)「僕があの球を打った……」
信じられない、という様子で掌を見つめるブーンにビコーズが駆け寄る。
( ∵)「ブーン、凄かった。君はもっと練習するべき。才能が、ある」
それからのブーンは幸せだった。
大好きな友達が出来ただけではなく、自分が打ち込めるものを見つけた。
野球。
ジョルジュの野球ブームがいつまで続くかは分からないが、しばらくは付き合ってもらおう。
そう決めた。
それだけではない。家に帰ってもショボンがいてくれる。自分を理解し、助けてくれる小さな
友人がいる。
およそ数ヶ月前までは想像すら出来なかった満ち足りた日々。それがすぐそばまで来ている
ことを、ブーンは実感していた。
( ^ω^)「僕があの球を打った……」
信じられない、という様子で掌を見つめるブーンにビコーズが駆け寄る。
( ∵)「ブーン、凄かった。君はもっと練習するべき。才能が、ある」
それからのブーンは幸せだった。
大好きな友達が出来ただけではなく、自分が打ち込めるものを見つけた。
野球。
ジョルジュの野球ブームがいつまで続くかは分からないが、しばらくは付き合ってもらおう。
そう決めた。
それだけではない。家に帰ってもショボンがいてくれる。自分を理解し、助けてくれる小さな
友人がいる。
およそ数ヶ月前までは想像すら出来なかった満ち足りた日々。それがすぐそばまで来ている
ことを、ブーンは実感していた。
333: :2009/02/21(土) 21:09:59.51 ID:
335: :2009/02/21(土) 21:11:14.58 ID:
麻呂が中学生とな
337: :2009/02/21(土) 21:11:25.20 ID:
麻呂wwなんでwwwww
338: :2009/02/21(土) 21:11:59.46 ID:
自宅でも――。
J( ‘-`)し「ブーン、ご飯のときぐらいぬいぐるみを取りなさい」
(;^ω^)「べ、別にいいお!」
(´・ω・`)「……」
またある日の放課後――。
_
( ゚∀゚)「ブーン、カラオケ行こうぜ!」
(;^ω^)「え? 今日は野球じゃないのかお?」
('A`)「コイツ今はカラオケにはまってるんだと。しばらくしたら飽きるだろうから、
そしたらまた野球やろうぜ」
( ∵)「僕はカラオケは……苦手」
J( ‘-`)し「ブーン、ご飯のときぐらいぬいぐるみを取りなさい」
(;^ω^)「べ、別にいいお!」
(´・ω・`)「……」
またある日の放課後――。
_
( ゚∀゚)「ブーン、カラオケ行こうぜ!」
(;^ω^)「え? 今日は野球じゃないのかお?」
('A`)「コイツ今はカラオケにはまってるんだと。しばらくしたら飽きるだろうから、
そしたらまた野球やろうぜ」
( ∵)「僕はカラオケは……苦手」
340: :2009/02/21(土) 21:13:41.11 ID:
ブーンの表情からは笑顔が絶えなかった。
全てがうまくいっているように思えたし、実際そうだった。世の中が自分を
祝福してくれているように感じられた。
ショボンの暖かさに勇気付けられたし、ジョルジュの豪快さに救われた。
ドクオが作り出す空気は居心地が良かったし、ビコーズの無表情に安心できた。
クラスにももうブーンを拒絶するものはいない。みな、ブーンが転校生だった
ことなど忘れてしまったかのように、友情を与えてくれた。特に麻呂のZIPには
何度もお世話になった。
ブーンの表情からは、笑顔が絶えない。まるで、悲しいことなど世界には存在
しないと錯覚してしまうかのように――。
ブーンの表情からは笑顔が絶えなかった。
全てがうまくいっているように思えたし、実際そうだった。世の中が自分を
祝福してくれているように感じられた。
ショボンの暖かさに勇気付けられたし、ジョルジュの豪快さに救われた。
ドクオが作り出す空気は居心地が良かったし、ビコーズの無表情に安心できた。
クラスにももうブーンを拒絶するものはいない。みな、ブーンが転校生だった
ことなど忘れてしまったかのように、友情を与えてくれた。特に麻呂のZIPには
何度もお世話になった。
ブーンの表情からは、笑顔が絶えない。まるで、悲しいことなど世界には存在
しないと錯覚してしまうかのように――。
342: :2009/02/21(土) 21:14:26.51 ID:
おい死亡フラグやめろ
支援
支援
344: :2009/02/21(土) 21:16:00.10 ID:
ある、朝だった。
その日のブーンは中々起きる事が出来ずに、寝坊してしまった。前日にまた新たなブームを
見つけてしまったジョルジュに付き合わされていたのだ。今度はボーリングだった。
さすがに6ゲームもやると腕もパンパンになり、最早頭を掻くことさえ苦痛を伴うほどだった。
なのに、夜に素振りをしてしまった。いや、本心を言うとボーリングではなく野球がしたかった。
なにしろブーンが今一番打ち込んでいることが野球なのだ。
だが、わがままを言うのは自分の役割ではない。ブーンはその熱意をぐっとしまいこんだ。まぁ、
すぐにまた野球が始まるさ、と楽観的だったし、野球好きのドクオがいる以上その読みもあながち
外れているとは思えない。
しかし、どうにもむずむずしてしまう。バットを振りたくなってしまう。だから、振った。夜に500本。
しかし、どうもそれはやりすぎたらしい。既に動かすことさえ億劫だった両腕は更なる倦怠感を纏い、
結果として寝坊してしまうという結果になってしまった。
時計に目をやると、それまでまどろんでいたブーンの脳が急激に目覚めた。
(;^ω^)「もうこんな時間なのかお!?」
慌てて布団をはがし、飛び起きる。朝の空気は凍りつくような冷たさだったが、そんなことは瑣末な
ことだった。なにしろ遅刻をしてしまうかどうかの瀬戸際なのだ。
顔を洗う時間さえもったいない、急いで制服に着替えるためにクローゼットに向かう。
――そこで、違和感に気付いた。
その日のブーンは中々起きる事が出来ずに、寝坊してしまった。前日にまた新たなブームを
見つけてしまったジョルジュに付き合わされていたのだ。今度はボーリングだった。
さすがに6ゲームもやると腕もパンパンになり、最早頭を掻くことさえ苦痛を伴うほどだった。
なのに、夜に素振りをしてしまった。いや、本心を言うとボーリングではなく野球がしたかった。
なにしろブーンが今一番打ち込んでいることが野球なのだ。
だが、わがままを言うのは自分の役割ではない。ブーンはその熱意をぐっとしまいこんだ。まぁ、
すぐにまた野球が始まるさ、と楽観的だったし、野球好きのドクオがいる以上その読みもあながち
外れているとは思えない。
しかし、どうにもむずむずしてしまう。バットを振りたくなってしまう。だから、振った。夜に500本。
しかし、どうもそれはやりすぎたらしい。既に動かすことさえ億劫だった両腕は更なる倦怠感を纏い、
結果として寝坊してしまうという結果になってしまった。
時計に目をやると、それまでまどろんでいたブーンの脳が急激に目覚めた。
(;^ω^)「もうこんな時間なのかお!?」
慌てて布団をはがし、飛び起きる。朝の空気は凍りつくような冷たさだったが、そんなことは瑣末な
ことだった。なにしろ遅刻をしてしまうかどうかの瀬戸際なのだ。
顔を洗う時間さえもったいない、急いで制服に着替えるためにクローゼットに向かう。
――そこで、違和感に気付いた。
347: :2009/02/21(土) 21:17:58.31 ID:
( ^ω^)「……ショボン?」
ショボンが、いない。
( ^ω^)「ショボン?」
もう一度呼び掛けてみる。
しかしやはり返事はなかった。
ブーンは混乱した。なぜショボンはいないのだ?
いつも自分の布団の上で丸くなって寝ていたじゃないか。自分が布団を勢い良くはがすとコロコロと
下に転げ落ちてそれでも寝ていたじゃないか。
そのショボンが、なぜいない?
ブーンは心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
慌ててショボンを探す。
布団をめくり、クローゼットを開け、カーテンの陰に目をやる。
机の下を覗き、本棚の上を見て、タンスを開けてみる。
しかし、どこにもショボンはいなかった。
( ^ω^)「……ショボン?」
ショボンが、いない。
( ^ω^)「ショボン?」
もう一度呼び掛けてみる。
しかしやはり返事はなかった。
ブーンは混乱した。なぜショボンはいないのだ?
いつも自分の布団の上で丸くなって寝ていたじゃないか。自分が布団を勢い良くはがすとコロコロと
下に転げ落ちてそれでも寝ていたじゃないか。
そのショボンが、なぜいない?
ブーンは心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
慌ててショボンを探す。
布団をめくり、クローゼットを開け、カーテンの陰に目をやる。
机の下を覗き、本棚の上を見て、タンスを開けてみる。
しかし、どこにもショボンはいなかった。
349: :2009/02/21(土) 21:20:11.70 ID:
やっぱり・・・
鬱展開支援
鬱展開支援
350: :2009/02/21(土) 21:20:13.93 ID:
ブーンは狼狽した。なぜショボンがいない? なぜ?
もしかして自分に愛想を尽かせて出ていってしまったとか?
まさか。
昨日もいつも通り二人で仲良く暮らしていた。
問題などあろうはずもない。
今まで一度もこんなことはなかった。大体、ショボンがいなくなってしまうなど考えた事さえなかった。
J( ‘-`)し「ブーン? もう学校いく時間でしょ? 遅刻しちゃうわよ?」
息子がいつまで経っても階下にこないことを心配し、母が様子を見に来た。
(;^ω^)「母ちゃん、母ちゃん! ショボン知らないかお!?」
ブーンは母に詰め寄った。
ただ事ではない息子の形相に母は少したじろぐ。
ブーンは狼狽した。なぜショボンがいない? なぜ?
もしかして自分に愛想を尽かせて出ていってしまったとか?
まさか。
昨日もいつも通り二人で仲良く暮らしていた。
問題などあろうはずもない。
今まで一度もこんなことはなかった。大体、ショボンがいなくなってしまうなど考えた事さえなかった。
J( ‘-`)し「ブーン? もう学校いく時間でしょ? 遅刻しちゃうわよ?」
息子がいつまで経っても階下にこないことを心配し、母が様子を見に来た。
(;^ω^)「母ちゃん、母ちゃん! ショボン知らないかお!?」
ブーンは母に詰め寄った。
ただ事ではない息子の形相に母は少したじろぐ。
352: :2009/02/21(土) 21:21:40.42 ID:
J( ‘-`)し「ショボンって何?」
(;^ω^)「僕がいつも頭に乗せてた猫のぬいぐるみだお! まさか捨てたんじゃないおね!?」
J( ‘-`)し「捨てるわけないじゃない」
(;^ω^)「だって、いないんだお! ショボンがどこにもいなくなっちゃったんだお!」
J( ‘-`)し「失くしちゃったんじゃないの?」
(;^ω^)「いなくなるわけないお! 昨日までは確かにいたんだお!」
母は少し怪訝そうな顔をする。
J( ‘-`)し「そんな事言っても、なくなっちゃったんでしょ? しょうがないじゃない」
(;^ω^)「でも……」
J( ‘-`)し「そんな事より早く学校に行きなさい? ぬいぐるみはまた買えばいいじゃない」
そうブーンを促すと、母は1階に降りていった。
( ^ω^)「ショボンの代わりなんていないお……」
ブーンはショボンのいない自室で、そう一人ごちた。
(;^ω^)「僕がいつも頭に乗せてた猫のぬいぐるみだお! まさか捨てたんじゃないおね!?」
J( ‘-`)し「捨てるわけないじゃない」
(;^ω^)「だって、いないんだお! ショボンがどこにもいなくなっちゃったんだお!」
J( ‘-`)し「失くしちゃったんじゃないの?」
(;^ω^)「いなくなるわけないお! 昨日までは確かにいたんだお!」
母は少し怪訝そうな顔をする。
J( ‘-`)し「そんな事言っても、なくなっちゃったんでしょ? しょうがないじゃない」
(;^ω^)「でも……」
J( ‘-`)し「そんな事より早く学校に行きなさい? ぬいぐるみはまた買えばいいじゃない」
そうブーンを促すと、母は1階に降りていった。
( ^ω^)「ショボンの代わりなんていないお……」
ブーンはショボンのいない自室で、そう一人ごちた。
353: :2009/02/21(土) 21:23:35.84 ID:
354: :2009/02/21(土) 21:25:30.07 ID:
だめだww
麻呂みると笑っちまうww
麻呂みると笑っちまうww
355: :2009/02/21(土) 21:25:38.14 ID:
麻呂が挨拶をしてきた。いつもならZIP談義に花を咲かせるところだが、ブーンの心境はそれ
どころではない。
麻呂に浅く会釈すると、自分の席に着いた。
――頼む、ここにいてくれ。
神に祈るような気持ちで、自分の席を見渡す。引き出しの中を覗き込んで――。
――いない。
ここにも、いない。
ブーンは深くため息をついたが、すぐに顔を上げ考え直す。
まだ、まだ探すべきところはあるはずだ。そう、例えば屋上とか。
二人が友達になれたあの場所にショボンがいる可能性は低くないはずだ。今日もジョルジュたちと
昼食をとるはずだから、そのときに確認してみよう。
そう一人決意した。
どころではない。
麻呂に浅く会釈すると、自分の席に着いた。
――頼む、ここにいてくれ。
神に祈るような気持ちで、自分の席を見渡す。引き出しの中を覗き込んで――。
――いない。
ここにも、いない。
ブーンは深くため息をついたが、すぐに顔を上げ考え直す。
まだ、まだ探すべきところはあるはずだ。そう、例えば屋上とか。
二人が友達になれたあの場所にショボンがいる可能性は低くないはずだ。今日もジョルジュたちと
昼食をとるはずだから、そのときに確認してみよう。
そう一人決意した。
356: :2009/02/21(土) 21:27:14.93 ID:
授業とはこんなにも退屈なものだったのか。
教師がなんだかよくわからないことを喋っているように思える。ショボンがいた時はそんなふう
に感じなかったのに。
そうか、とブーンは得心がいく。
ショボンがいた時はショボンと話していたから。二人で授業内容の確認と各々の解釈についての
談義を自然としていたのだ。だから退屈じゃなかったし、より深く理解が出来たのだ。
なんだよ、こんなとこでもショボンのいない弊害があるなんて。
ブーンは心中穏やかではなかった。
あぁ、つまらない。いっそ、寝てしまおうか。
そんなの無理だ、わかっている。
寝ようとしてもそわそわして眠れないだろう、とブーンは理解していた。早く授業が終わって欲しかった。
普段の2倍は長く感じられたのではないだろうか。
苦痛の授業が終わり、昼休みに突入する。それを報せるチャイムとほぼ同時に、ジョルジュたちがブーン
の教室に顔を見せる。
授業とはこんなにも退屈なものだったのか。
教師がなんだかよくわからないことを喋っているように思える。ショボンがいた時はそんなふう
に感じなかったのに。
そうか、とブーンは得心がいく。
ショボンがいた時はショボンと話していたから。二人で授業内容の確認と各々の解釈についての
談義を自然としていたのだ。だから退屈じゃなかったし、より深く理解が出来たのだ。
なんだよ、こんなとこでもショボンのいない弊害があるなんて。
ブーンは心中穏やかではなかった。
あぁ、つまらない。いっそ、寝てしまおうか。
そんなの無理だ、わかっている。
寝ようとしてもそわそわして眠れないだろう、とブーンは理解していた。早く授業が終わって欲しかった。
普段の2倍は長く感じられたのではないだろうか。
苦痛の授業が終わり、昼休みに突入する。それを報せるチャイムとほぼ同時に、ジョルジュたちがブーン
の教室に顔を見せる。
358: :2009/02/21(土) 21:29:06.58 ID:
_
( ゚∀゚)「おーすブーン。飯行こうぜ。飯飯!」
(;^ω^)「うん、行こう行こう」
本当は走り出したいのだ。走って、一刻も早くショボンがいるかどうかを確かめたいのだ。
しかし、ジョルジュたちと一緒に向かっている以上それはできない。もどかしい気持ちを抑えつつ、ブーンは
いつもの“食堂”へと歩を進めた。
途中にしたジョルジュたちとの会話なんて頭に入ってこなかった。
階段の最上階踊り場。そこにブーンたちの“食堂”へと通じる鉄扉がある。
その扉の前で、ブーンは立ち尽くしていた。
――失念していた。
ショボンがいないということは鍵を開けられないということだ。
なんといううかつ。馬鹿め。おまえはショボンがいなければ満足に食事の場所も確保できないんじゃないか。
そして、
_
( ゚∀゚)「ブーン? 早く開けてくれよ」
ジョルジュの催促の声。
( ゚∀゚)「おーすブーン。飯行こうぜ。飯飯!」
(;^ω^)「うん、行こう行こう」
本当は走り出したいのだ。走って、一刻も早くショボンがいるかどうかを確かめたいのだ。
しかし、ジョルジュたちと一緒に向かっている以上それはできない。もどかしい気持ちを抑えつつ、ブーンは
いつもの“食堂”へと歩を進めた。
途中にしたジョルジュたちとの会話なんて頭に入ってこなかった。
階段の最上階踊り場。そこにブーンたちの“食堂”へと通じる鉄扉がある。
その扉の前で、ブーンは立ち尽くしていた。
――失念していた。
ショボンがいないということは鍵を開けられないということだ。
なんといううかつ。馬鹿め。おまえはショボンがいなければ満足に食事の場所も確保できないんじゃないか。
そして、
_
( ゚∀゚)「ブーン? 早く開けてくれよ」
ジョルジュの催促の声。
359: :2009/02/21(土) 21:31:14.72 ID:
そう言われてもブーンにはこの扉を開けることが出来ない。
――ということは。
もしこの扉が開いていれば、ショボンがここにいる可能性が高い、という事になるのではないか?
この鍵はショボンにしか開けられないのだから。
ブーンは若干緊張した面持ちで扉に手を掛ける。
徐々に力を込めると、やがてガラガラと低い音を立て扉が開く――。
――はずだった。いつもならば。
でも、今日はそうじゃない。鍵はしっかりとかかっているし、扉も開くことはない。
思えばショボンはこの扉を一人で開けられないじゃないか。扉が開き放しでもない限り、ショボンは
一人で屋上に行けない。閉まっているということは、つまりそういうことだ。少し考えれば分かる。自明
の理じゃないか。
ショボンがいない、という動揺と、ここにいて欲しい、という希望がブーンの思考を鈍くさせていた。
_
( ゚∀゚)「ブーン? どうしたんだよ? 大丈夫か?」
(;^ω^)「え? あ、あぁ」
ジョルジュの声で現実に引き戻される。
――ということは。
もしこの扉が開いていれば、ショボンがここにいる可能性が高い、という事になるのではないか?
この鍵はショボンにしか開けられないのだから。
ブーンは若干緊張した面持ちで扉に手を掛ける。
徐々に力を込めると、やがてガラガラと低い音を立て扉が開く――。
――はずだった。いつもならば。
でも、今日はそうじゃない。鍵はしっかりとかかっているし、扉も開くことはない。
思えばショボンはこの扉を一人で開けられないじゃないか。扉が開き放しでもない限り、ショボンは
一人で屋上に行けない。閉まっているということは、つまりそういうことだ。少し考えれば分かる。自明
の理じゃないか。
ショボンがいない、という動揺と、ここにいて欲しい、という希望がブーンの思考を鈍くさせていた。
_
( ゚∀゚)「ブーン? どうしたんだよ? 大丈夫か?」
(;^ω^)「え? あ、あぁ」
ジョルジュの声で現実に引き戻される。
361: :2009/02/21(土) 21:36:43.74 ID:
(;^ω^)「ごめん、悪いけど今日は鍵を開けるための針金を忘れちゃったんだお。
だから屋上にはいけない。ごめんだお」
そう言うとしぶしぶ、といった体でジョルジュたちも了承した。
_
( ゚∀゚)「じゃあ今日はどこで飯食おうか?」
('A`)「ここでいいんじゃね? 今から移動してもなぁ」
( ∵)「賛成」
_
( ゚∀゚)「じゃあここで食うか。ブーン、明日は頼むぜ?」
(;^ω^)「う、うん。ごめんだお」
そうして階段の踊り場で昼餐となった。なんだかコンクリートの地面が冷たく感じる。風がある分、
おそらく屋上のほうが寒いだろう。なのに、ここはとても寒い。まるで極寒の土地に裸でいるみたいだ。
食べる場所とショボンがいない、という相違があるだけでなんだかその日の弁当はやけに味気なく思えた。
(;^ω^)「ごめん、悪いけど今日は鍵を開けるための針金を忘れちゃったんだお。
だから屋上にはいけない。ごめんだお」
そう言うとしぶしぶ、といった体でジョルジュたちも了承した。
_
( ゚∀゚)「じゃあ今日はどこで飯食おうか?」
('A`)「ここでいいんじゃね? 今から移動してもなぁ」
( ∵)「賛成」
_
( ゚∀゚)「じゃあここで食うか。ブーン、明日は頼むぜ?」
(;^ω^)「う、うん。ごめんだお」
そうして階段の踊り場で昼餐となった。なんだかコンクリートの地面が冷たく感じる。風がある分、
おそらく屋上のほうが寒いだろう。なのに、ここはとても寒い。まるで極寒の土地に裸でいるみたいだ。
食べる場所とショボンがいない、という相違があるだけでなんだかその日の弁当はやけに味気なく思えた。
366: :2009/02/21(土) 21:49:40.16 ID:
ショボン・・・
367: :2009/02/21(土) 21:50:14.45 ID:
午後の授業中、ブーンは深く深く咨嗟した。自宅にも教室にも屋上にもショボンはいなかった。
あとどこを探せばいいのだ。
頭を抱える思いだった。
頼む、ショボン。今なら許す。冗談だと言ってひょっこり顔を出してくれ。
ブーンがあと探すべき場所など限られている。さしあたって考えられるのは空き地だろうか。
よし、学校が終わったら空き地に行ってみよう。諦めるのはまだ、全然早い。
あと何分で授業は終わりだ? 20分? 長い、早く終われ。
ブーンは一日千秋の思いで授業の終わりを待ち、クラスは帰りのホームルームへと突入する。
ほんのわずかな時間だったが、ブーンは憤りを感じる。
早く、早く終われ。
そして待ち望んだ時が来た。
よし、早く空き地に急ごう。
ブーンは荷物を詰め込んだカバンを荒っぽく持ち上げて、机の乱れもそのままに教室の出口
へと駆け出す。
あとどこを探せばいいのだ。
頭を抱える思いだった。
頼む、ショボン。今なら許す。冗談だと言ってひょっこり顔を出してくれ。
ブーンがあと探すべき場所など限られている。さしあたって考えられるのは空き地だろうか。
よし、学校が終わったら空き地に行ってみよう。諦めるのはまだ、全然早い。
あと何分で授業は終わりだ? 20分? 長い、早く終われ。
ブーンは一日千秋の思いで授業の終わりを待ち、クラスは帰りのホームルームへと突入する。
ほんのわずかな時間だったが、ブーンは憤りを感じる。
早く、早く終われ。
そして待ち望んだ時が来た。
よし、早く空き地に急ごう。
ブーンは荷物を詰め込んだカバンを荒っぽく持ち上げて、机の乱れもそのままに教室の出口
へと駆け出す。
369: :2009/02/21(土) 21:53:09.09 ID:
_
( ゚∀゚)「よぉ、ブーン。ボーリング行こうぜ」
やはりいたジョルジュたち。
普段なら歓迎すべき彼らも、今はブーンの行く手を阻む障害にしか見えない。
('A`)「ブーン、今日もボーリングだってよ。まぁ明日は俺の権限で野球にするから今日は我慢しようぜ」
( ∵)「君にそんな権限があったなんて初耳」
そんなブーンの様子に気付くわけもなく、3人はいつも通りの呑気な会話をしてくる。
(;^ω^)「ごめん! 今日は用事があるから行けないお! じゃあ!」
説明もそこそこにブーンは3人を後にする。
('A`)「なんだぁ? あいつ」
_
( ゚∀゚)「おい、じゃあボーリングどうすんだよ? 3人だとチーム戦できないぞ?」
( ∵)「僕対君たち二人でいい」
('A`)「!?」
( ∵)「かかってこい」
_
( ゚∀゚)「おもしれぇ……」
( ゚∀゚)「よぉ、ブーン。ボーリング行こうぜ」
やはりいたジョルジュたち。
普段なら歓迎すべき彼らも、今はブーンの行く手を阻む障害にしか見えない。
('A`)「ブーン、今日もボーリングだってよ。まぁ明日は俺の権限で野球にするから今日は我慢しようぜ」
( ∵)「君にそんな権限があったなんて初耳」
そんなブーンの様子に気付くわけもなく、3人はいつも通りの呑気な会話をしてくる。
(;^ω^)「ごめん! 今日は用事があるから行けないお! じゃあ!」
説明もそこそこにブーンは3人を後にする。
('A`)「なんだぁ? あいつ」
_
( ゚∀゚)「おい、じゃあボーリングどうすんだよ? 3人だとチーム戦できないぞ?」
( ∵)「僕対君たち二人でいい」
('A`)「!?」
( ∵)「かかってこい」
_
( ゚∀゚)「おもしれぇ……」
370: :2009/02/21(土) 21:55:04.65 ID:
ビコーズそんなに自身あるのか
373: :2009/02/21(土) 21:57:12.28 ID:
ところでビコーズってなんでビコーズなんだ
ずっとしおだと思ってた
ずっとしおだと思ってた
375: :2009/02/21(土) 21:58:44.25 ID:
>>373
∵の意味を考えてみれば簡単だ
∵の意味を考えてみれば簡単だ
371: :2009/02/21(土) 21:55:53.75 ID:
ビコーズが二人を挑発するという意外な一面を見せていた頃、ブーンは風の様に疾走していた。
――早く、早く! 昨日の運動がたたって腕が重い。足だって思うように動かない。しかし、そんな
事は今のブーンにとっては些細なことだった。
とにかくショボンの所在を確かめたかったし、そして安心したかった。
僕は心配したんだぞ、と文句の一つでも言ってやりたかった。
空き地が見えた。あと50メートル程だ。
徐々に速度を緩める。肩で息をしながら空き地の敷地内に入る。
( ^ω^)「ショボン!」
ありったけの声で叫ぶ。自分からこんな大声が出るのか、と驚くほどだ。
( ^ω^)「ショボン!」
辺りを見回しながらもう一度。
( ^ω^)「ショボン! いるのかお!? 出てきて欲しいお!」
しかし、ショボンからの返事はない。
ビコーズが二人を挑発するという意外な一面を見せていた頃、ブーンは風の様に疾走していた。
――早く、早く! 昨日の運動がたたって腕が重い。足だって思うように動かない。しかし、そんな
事は今のブーンにとっては些細なことだった。
とにかくショボンの所在を確かめたかったし、そして安心したかった。
僕は心配したんだぞ、と文句の一つでも言ってやりたかった。
空き地が見えた。あと50メートル程だ。
徐々に速度を緩める。肩で息をしながら空き地の敷地内に入る。
( ^ω^)「ショボン!」
ありったけの声で叫ぶ。自分からこんな大声が出るのか、と驚くほどだ。
( ^ω^)「ショボン!」
辺りを見回しながらもう一度。
( ^ω^)「ショボン! いるのかお!? 出てきて欲しいお!」
しかし、ショボンからの返事はない。
376: :2009/02/21(土) 21:59:05.04 ID:
周囲はしん、と静まり返るのみで、生き物のいる音はおろか気配さえしない。
ブーンは返事を諦めると、辺りに僅かに残った草むらを掻き分けショボンの姿を探した。
( ^ω^)「ショボン……ショボン。どこにいるんだお。……絶対見つけるお」
ブーンも半ば意地になっていた。『ショボンはもう帰ってこないかも』という疑念が頭をよぎるが、
首を振り、無理矢理払拭した。
気が付けば西の空はすでに暗くなっている。空き地はあらかた探してしまったし、この暗さでは
あちらから呼び掛けてでも来ない限り見つけるのは難しいだろう。
断腸の思いで、ブーンは空き地を後にする。
あとどこを探せばいいのだろう。可能性の話をすればそれこそ無限にある。そしてそれを全て行う
のは、事実上不可能だ。これでは見つけるのはもう……少なくとも、今日は……。
――なんだ、諦めるのか。
自分を叱責する声が聞こえる。
――違うんだ。決して諦めたわけじゃない。ただ、今日はもう探すのは困難だと思って――。
誰にするでもなく、そんな言い訳が頭に浮かぶ。いや、恐らく自分自信に対する言い訳なのだろう。
実際、ブーンの心は折れそうだった。
ブーンは返事を諦めると、辺りに僅かに残った草むらを掻き分けショボンの姿を探した。
( ^ω^)「ショボン……ショボン。どこにいるんだお。……絶対見つけるお」
ブーンも半ば意地になっていた。『ショボンはもう帰ってこないかも』という疑念が頭をよぎるが、
首を振り、無理矢理払拭した。
気が付けば西の空はすでに暗くなっている。空き地はあらかた探してしまったし、この暗さでは
あちらから呼び掛けてでも来ない限り見つけるのは難しいだろう。
断腸の思いで、ブーンは空き地を後にする。
あとどこを探せばいいのだろう。可能性の話をすればそれこそ無限にある。そしてそれを全て行う
のは、事実上不可能だ。これでは見つけるのはもう……少なくとも、今日は……。
――なんだ、諦めるのか。
自分を叱責する声が聞こえる。
――違うんだ。決して諦めたわけじゃない。ただ、今日はもう探すのは困難だと思って――。
誰にするでもなく、そんな言い訳が頭に浮かぶ。いや、恐らく自分自信に対する言い訳なのだろう。
実際、ブーンの心は折れそうだった。
377: :2009/02/21(土) 22:01:26.85 ID:
しょぼん・・・
378: :2009/02/21(土) 22:02:48.25 ID:
寒さと寂しさと不安で、もう泣いてしまいたい気分だった。
どこを探せばいいかわからない。
今日、ショボンと所縁のありそうな場所は見てしまった。可能性でいえば、もうめぼしい所は
思い浮かばない。見つけられない。
しかし、ショボンと離れたくない。
自分を助けてくれ、全てを良い方向に導いてくれた友人だ。そんな友人と別れの挨拶もせずに
離れられるわけがない。
そんな相反する感情が、ブーンの中をぐるぐると回り混沌を作る。
ブーンは膝や腹部についた汚れを払うと、家に向かって歩きだした。
心身共に疲れてしまった。だからといってショボンの捜索をやめたわけではない。
無闇に思い浮かんだところを探すのではなく、ちゃんと色々な要素を考慮したうえで捜したほうが
効率がいいと思ったのだ。
帰路の途中にあるゴミ捨て場を、ちらと見てみる。
いない。当たり前だ。母はショボンを捨てていないと言っていたし、仮に捨てていたとしてもショボンは
本物のぬいぐるみとは違う。――帰ってこようと思えば、帰ってこられる。どこからでも。
つまり、ショボンが帰ってこようとしないのは――。
どこを探せばいいかわからない。
今日、ショボンと所縁のありそうな場所は見てしまった。可能性でいえば、もうめぼしい所は
思い浮かばない。見つけられない。
しかし、ショボンと離れたくない。
自分を助けてくれ、全てを良い方向に導いてくれた友人だ。そんな友人と別れの挨拶もせずに
離れられるわけがない。
そんな相反する感情が、ブーンの中をぐるぐると回り混沌を作る。
ブーンは膝や腹部についた汚れを払うと、家に向かって歩きだした。
心身共に疲れてしまった。だからといってショボンの捜索をやめたわけではない。
無闇に思い浮かんだところを探すのではなく、ちゃんと色々な要素を考慮したうえで捜したほうが
効率がいいと思ったのだ。
帰路の途中にあるゴミ捨て場を、ちらと見てみる。
いない。当たり前だ。母はショボンを捨てていないと言っていたし、仮に捨てていたとしてもショボンは
本物のぬいぐるみとは違う。――帰ってこようと思えば、帰ってこられる。どこからでも。
つまり、ショボンが帰ってこようとしないのは――。
379: :2009/02/21(土) 22:07:26.15 ID:
( ^ω^)「ただいま」
こんな沈んだ気持ちで玄関の戸を開けるのは久しぶりだった。
J( ‘-`)し「おかえり」
いつも通り母が出迎えてくれた。
J( ‘-`)し「ご飯出来てるわよ。食べるでしょ?」
( ^ω^)「いらないお」
J( ‘-`)し「どうしたの? 具合いでも悪いの? あら、あんた服が随分汚れてるじゃない」
( ^ω^)「うん……気分がよくないから、部屋で寝ているお」
J( ‘-`)し「そう……」
心配そうに見つめる母の視線をよそに、ブーンは自室に入る。
( ^ω^)「ただいま」
こんな沈んだ気持ちで玄関の戸を開けるのは久しぶりだった。
J( ‘-`)し「おかえり」
いつも通り母が出迎えてくれた。
J( ‘-`)し「ご飯出来てるわよ。食べるでしょ?」
( ^ω^)「いらないお」
J( ‘-`)し「どうしたの? 具合いでも悪いの? あら、あんた服が随分汚れてるじゃない」
( ^ω^)「うん……気分がよくないから、部屋で寝ているお」
J( ‘-`)し「そう……」
心配そうに見つめる母の視線をよそに、ブーンは自室に入る。
382: :2009/02/21(土) 22:10:25.30 ID:
『帰ろうと思えば帰って来られるのに、そうしないって事は』
ブーンは先ほど頭に浮かんだ考えを反芻する。
『つまり、僕の元には帰って来たくないって事だ』
そこに思考が行き着き、ブーンは愕然とした。
どうしてかはわからないが、ショボンは僕と一緒にいたくなかった。だから出ていった。
なぜ? 今までうまくやっていたじゃないか。喧嘩もせず、どこに行くにも一緒で仲良く
やっていたじゃないか。
ここを出ていってどうするんだ? あんなマンガ猫、行く宛てがあるわけない。
という事は、それを踏まえた上でも僕と離れたかったのか。
馬鹿言うな。何度も言うが、ショボンと僕はちゃんと関係が良好だった。僕に愛想が尽きた
ような素振りなんて、少しも見えなかった。
しかし、それは表面上の態度かもしれない。僕が自分の知らないうちにショボンを傷付けて
いた可能性もある。いや、大いにある、と言うべきだろう。なにせショボンがいなければ他人と
付き合うことが出来なかったボンクラなのだ。自分の預かり知らぬところでショボンの反感を
買っていたとしても不思議ではない。
『帰ろうと思えば帰って来られるのに、そうしないって事は』
ブーンは先ほど頭に浮かんだ考えを反芻する。
『つまり、僕の元には帰って来たくないって事だ』
そこに思考が行き着き、ブーンは愕然とした。
どうしてかはわからないが、ショボンは僕と一緒にいたくなかった。だから出ていった。
なぜ? 今までうまくやっていたじゃないか。喧嘩もせず、どこに行くにも一緒で仲良く
やっていたじゃないか。
ここを出ていってどうするんだ? あんなマンガ猫、行く宛てがあるわけない。
という事は、それを踏まえた上でも僕と離れたかったのか。
馬鹿言うな。何度も言うが、ショボンと僕はちゃんと関係が良好だった。僕に愛想が尽きた
ような素振りなんて、少しも見えなかった。
しかし、それは表面上の態度かもしれない。僕が自分の知らないうちにショボンを傷付けて
いた可能性もある。いや、大いにある、と言うべきだろう。なにせショボンがいなければ他人と
付き合うことが出来なかったボンクラなのだ。自分の預かり知らぬところでショボンの反感を
買っていたとしても不思議ではない。
383: :2009/02/21(土) 22:13:57.32 ID:
ブーンは思考の渦にはまっていた。
自分の中で“ショボンがいなくなるはずがない”という考えと“自分なら愛想を尽かされても仕方ない”と
いう考えを交互に繰り返していた。
しかしどちらにせよ、確かなことが一つある。
――ショボンは、もうここにはいない――
それはまごうことなき真実だった。
今日1日捜し回ったのだ。ショボンがいると思しきところはもう全て見て回ったように思える。
つまりもうショボンは戻ってこない。
このガランとしてしまった部屋でこれからの日々を過ごさなくてはならない。
それはブーンにとってとても辛いことだった。
自分を励ましてくれ、元気づけ、友人が出来るよう世話を焼いてくれた。
ショボン自身もよき友人であり、保護者であり、弟のようだった。
その全てを失った。
もう、ショボンは、いない。
自分の中で“ショボンがいなくなるはずがない”という考えと“自分なら愛想を尽かされても仕方ない”と
いう考えを交互に繰り返していた。
しかしどちらにせよ、確かなことが一つある。
――ショボンは、もうここにはいない――
それはまごうことなき真実だった。
今日1日捜し回ったのだ。ショボンがいると思しきところはもう全て見て回ったように思える。
つまりもうショボンは戻ってこない。
このガランとしてしまった部屋でこれからの日々を過ごさなくてはならない。
それはブーンにとってとても辛いことだった。
自分を励ましてくれ、元気づけ、友人が出来るよう世話を焼いてくれた。
ショボン自身もよき友人であり、保護者であり、弟のようだった。
その全てを失った。
もう、ショボンは、いない。
385: :2009/02/21(土) 22:15:21.90 ID:
ショボン・・・
386: :2009/02/21(土) 22:15:47.04 ID:
ショボン・・・
389: :2009/02/21(土) 22:18:49.24 ID:
ブーンの眦に塩気を帯びた水が滲む。
( ;ω;)「あーー、あーー!」
ブーンは泣いた。ベッドに伏せ、まるで子供の様に慟哭した。
階下に母がいるだとか、声が大きいだとか、そんな事に気を回す余裕などない。
ショボンを失ってしまった。
無二の存在をなくした。
これからどうすればいい?
悲しい時、寂しい時、困った時、誰を頼ればいい?
楽しい時、笑顔の時、誰と喜びをわかちあえばいい?
落涙し続けるブーンの目は殴られたかのように腫れあがり、次いでその視界が狭まった。
すっかり日が落ちた冬の住宅街に、ブーンの嗚咽がいつまでも響いていた。
( ;ω;)「あーー、あーー!」
ブーンは泣いた。ベッドに伏せ、まるで子供の様に慟哭した。
階下に母がいるだとか、声が大きいだとか、そんな事に気を回す余裕などない。
ショボンを失ってしまった。
無二の存在をなくした。
これからどうすればいい?
悲しい時、寂しい時、困った時、誰を頼ればいい?
楽しい時、笑顔の時、誰と喜びをわかちあえばいい?
落涙し続けるブーンの目は殴られたかのように腫れあがり、次いでその視界が狭まった。
すっかり日が落ちた冬の住宅街に、ブーンの嗚咽がいつまでも響いていた。
390: :2009/02/21(土) 22:21:24.30 ID:
今ブーン泣いてるし、ショボン出てこいっ
391: :2009/02/21(土) 22:22:14.74 ID:
気が付けば、あたりは暗闇に包まれていた。
真夜中だってこんなに暗くない。もはや上も下もわからぬ程の闇。
暗いというよりは、黒い、と言ったほうがしっくりくると思えるほどの闇の中に、ブーンは
何をするでもなくつっ立っていた。
なぜ自分はこんなところにいるんだ?
記憶を辿ってみるが思い出せない。そもそもこんな場所は知らない。知らない場所に
来れるはずもない。
不思議と恐怖心はなかった。ただ違和感だけが胸中に現れる。そしてブーンは何かに
呼ばれたかのように淡々と歩きだした。
なぜ? と問われても困る。強いて言うならば、そうしなければならない気がした、という
のが一番しっくりくる表現だろう。
歩きだして少し経つと、光が皆無の闇の中で何かが見えた。
それは小さく、輪郭はぼんやりとしていて、まるで幽鬼か何かのようだった。
徐々に近づいてみると、今ははっきりとわかる。ブーンはそれをよく知っていた。
いや、ブーンしか知らない、と言うほうが正確か。
それはブーンが眼前まで迫ると、おもむろに開口した。
真夜中だってこんなに暗くない。もはや上も下もわからぬ程の闇。
暗いというよりは、黒い、と言ったほうがしっくりくると思えるほどの闇の中に、ブーンは
何をするでもなくつっ立っていた。
なぜ自分はこんなところにいるんだ?
記憶を辿ってみるが思い出せない。そもそもこんな場所は知らない。知らない場所に
来れるはずもない。
不思議と恐怖心はなかった。ただ違和感だけが胸中に現れる。そしてブーンは何かに
呼ばれたかのように淡々と歩きだした。
なぜ? と問われても困る。強いて言うならば、そうしなければならない気がした、という
のが一番しっくりくる表現だろう。
歩きだして少し経つと、光が皆無の闇の中で何かが見えた。
それは小さく、輪郭はぼんやりとしていて、まるで幽鬼か何かのようだった。
徐々に近づいてみると、今ははっきりとわかる。ブーンはそれをよく知っていた。
いや、ブーンしか知らない、と言うほうが正確か。
それはブーンが眼前まで迫ると、おもむろに開口した。
393: :2009/02/21(土) 22:25:59.90 ID:
(´・ω・`)「やぁ」
ショボンだった。
いなくなったはずのショボン、いくら探しても見つからなかったショボンがこんな意味不明の
場所にいる。
(;^ω^)「ショボン……こんな所で何してるんだお? 僕は捜し回ったんだお? 勝手にいなく
なって、ひどいお! 何でいなくなっちゃったんだお!」
ブーンは自然と語気が荒くなる。
(´・ω・`)「……ブーン、僕はね。……お別れを言いに来たんだ」
(;^ω^)「お別れ?」
驚きすぎて返事がオウム返しになる。
(´・ω・`)「そう、お別れ」
ショボンはまるでそれが当然だとでも言うように、淡々と言葉を継いだ。
ショボンだった。
いなくなったはずのショボン、いくら探しても見つからなかったショボンがこんな意味不明の
場所にいる。
(;^ω^)「ショボン……こんな所で何してるんだお? 僕は捜し回ったんだお? 勝手にいなく
なって、ひどいお! 何でいなくなっちゃったんだお!」
ブーンは自然と語気が荒くなる。
(´・ω・`)「……ブーン、僕はね。……お別れを言いに来たんだ」
(;^ω^)「お別れ?」
驚きすぎて返事がオウム返しになる。
(´・ω・`)「そう、お別れ」
ショボンはまるでそれが当然だとでも言うように、淡々と言葉を継いだ。
395: :2009/02/21(土) 22:30:16.71 ID:
ショボン行かないで
396: :2009/02/21(土) 22:30:42.26 ID:
(;^ω^)「そんな……何でだお。ひどいお。自分勝手すぎるお。いきなりいなくなって、いきなり現れて、
それで、お別れなんて……ひどいお」
うまく言葉が出てきてくれない。
(´・ω・`)「本当は、何も言わないで別れようと思ったんだ。だけど……。……そうか、君はまた泣いて
いたんだなぁ」
ショボンは困った様に両眉の端を垂れさせた。
(´・ω・`)「僕は君の涙だ」
ショボンは言葉を継ぐ。
(´・ω・`)「最初に言ったろ? 君が本当に悲しいとき、僕が生まれるって。そしてこうも言ったはずだ。
『君が本当に泣き止むまで、僕はいなくならない』って。つまり、僕がいなくなったっていうのはそういう
事なんだ。君は泣き止んだんだ。もう涙は流さなくていいんだよ」
(;^ω^)「そんな!」
思わず抗議の声をあげる。しかし段々とその声は弱々しくなる。
(;^ω^)「そんなのって、ないお。……僕にはまだショボンが必要だし、これからもずっと一緒にいられると
思ってたお。ショボンは僕の涙だお? 僕が泣いていればそばにいてくれるんだお? さっきだってショボンが
いないから、泣いちゃったんだお。最初に会ったときみたいに」
(´・ω・`)「そうみたいだね」
苦笑しながら肯定するショボンに、ブーンは気持ちが明るくなる。
それで、お別れなんて……ひどいお」
うまく言葉が出てきてくれない。
(´・ω・`)「本当は、何も言わないで別れようと思ったんだ。だけど……。……そうか、君はまた泣いて
いたんだなぁ」
ショボンは困った様に両眉の端を垂れさせた。
(´・ω・`)「僕は君の涙だ」
ショボンは言葉を継ぐ。
(´・ω・`)「最初に言ったろ? 君が本当に悲しいとき、僕が生まれるって。そしてこうも言ったはずだ。
『君が本当に泣き止むまで、僕はいなくならない』って。つまり、僕がいなくなったっていうのはそういう
事なんだ。君は泣き止んだんだ。もう涙は流さなくていいんだよ」
(;^ω^)「そんな!」
思わず抗議の声をあげる。しかし段々とその声は弱々しくなる。
(;^ω^)「そんなのって、ないお。……僕にはまだショボンが必要だし、これからもずっと一緒にいられると
思ってたお。ショボンは僕の涙だお? 僕が泣いていればそばにいてくれるんだお? さっきだってショボンが
いないから、泣いちゃったんだお。最初に会ったときみたいに」
(´・ω・`)「そうみたいだね」
苦笑しながら肯定するショボンに、ブーンは気持ちが明るくなる。
397: :2009/02/21(土) 22:30:59.01 ID:
ショボン・・・
398: :2009/02/21(土) 22:34:15.49 ID:
( ^ω^)「じゃあ!」
(´・ω・`)「でも今はあの時と違う」
ショボンはキッパリとブーンの言葉を制す。
(´・ω・`)「確かに君はあの時泣いていて、僕の助けが必要だった。でも今は違う。今は、ジョルジュ達が
いるだろう? 助けてくれる友達がいるだろう?」
(;^ω^)「でも……」
(´・ω・`)「それにクラスメイトともうまくやれてる。ブーン、君はもう一人でも平気なんだよ。……いや、違うな。
君はもう一人じゃないんだよ、ブーン。だから僕の助けは必要ないのさ」
(;^ω^)「それは……」
なんとか喉から声を絞りだす。何か言わないと、このままショボンが消えてしまう気がして。
(;^ω^)「それは違うお、ショボン。僕はまだまだ弱いままだお。これからもショボンに助けていってほしいんだお。
それに、ショボンは僕のことを友達って呼んでくれたお? 友達なら、ずっとそばにいて欲しいお」
ショボンはその小さな手で頭を掻いた。
(´・ω・`)「でも今はあの時と違う」
ショボンはキッパリとブーンの言葉を制す。
(´・ω・`)「確かに君はあの時泣いていて、僕の助けが必要だった。でも今は違う。今は、ジョルジュ達が
いるだろう? 助けてくれる友達がいるだろう?」
(;^ω^)「でも……」
(´・ω・`)「それにクラスメイトともうまくやれてる。ブーン、君はもう一人でも平気なんだよ。……いや、違うな。
君はもう一人じゃないんだよ、ブーン。だから僕の助けは必要ないのさ」
(;^ω^)「それは……」
なんとか喉から声を絞りだす。何か言わないと、このままショボンが消えてしまう気がして。
(;^ω^)「それは違うお、ショボン。僕はまだまだ弱いままだお。これからもショボンに助けていってほしいんだお。
それに、ショボンは僕のことを友達って呼んでくれたお? 友達なら、ずっとそばにいて欲しいお」
ショボンはその小さな手で頭を掻いた。
399: :2009/02/21(土) 22:35:18.54 ID:
(´;ω;`)
402: :2009/02/21(土) 22:37:24.86 ID:
(´・ω・`)「……君は困ったやつだなぁ、ブーン。君はこれからも、大人になってからも僕の助けが必要なのかい?
いいかい? ブーン。誰だって困った時には誰かに傍にいて支えてほしいものなのさ。でも最後はやっぱり自分自身
なんだよ。自分自身に頼っていくしかないのさ」
ショボンはどこまでも真面目な声で、諭すようにブーンに話し掛ける。
(´・ω・`)「今は、今回は僕が役に立てたかもしれない。でも、そうもいかない時だってあるだろう? 大人になって、
社会に出たら、僕が助けてやれない事だってあるだろう? なのに、その時に僕が傍にいるのに助けてあげられないのは、
辛いんだよ、ブーン。友達が困っている傍らで何も出来ないのは、辛いのさ」
わかってくれ、とショボンは願った。
これは去り行く自分からの、友達に送る最後のエールだ、と。
(´・ω・`)「だからブーン。君は僕から離れなきゃいけない。今は一人じゃないけど、一人になってもやっていけるように。
僕に頼ってしまわないように」
どこか苦しそうな表情で、ショボンはブーンに語り掛ける。
(´・ω・`)「もう、涙は止まっただろう?」
何も言わなくなるブーン。その目は虚ろで、何を思っているのか見て取ることは出来ない。
いいかい? ブーン。誰だって困った時には誰かに傍にいて支えてほしいものなのさ。でも最後はやっぱり自分自身
なんだよ。自分自身に頼っていくしかないのさ」
ショボンはどこまでも真面目な声で、諭すようにブーンに話し掛ける。
(´・ω・`)「今は、今回は僕が役に立てたかもしれない。でも、そうもいかない時だってあるだろう? 大人になって、
社会に出たら、僕が助けてやれない事だってあるだろう? なのに、その時に僕が傍にいるのに助けてあげられないのは、
辛いんだよ、ブーン。友達が困っている傍らで何も出来ないのは、辛いのさ」
わかってくれ、とショボンは願った。
これは去り行く自分からの、友達に送る最後のエールだ、と。
(´・ω・`)「だからブーン。君は僕から離れなきゃいけない。今は一人じゃないけど、一人になってもやっていけるように。
僕に頼ってしまわないように」
どこか苦しそうな表情で、ショボンはブーンに語り掛ける。
(´・ω・`)「もう、涙は止まっただろう?」
何も言わなくなるブーン。その目は虚ろで、何を思っているのか見て取ることは出来ない。
404: :2009/02/21(土) 22:39:58.47 ID:
いい話だなー…
405: :2009/02/21(土) 22:40:24.30 ID:
(´・ω・`)「それになぁ」
はにかんだように苦笑するショボン。
(´・ω・`)「涙がいないと困るなんておかしな話だぜ? 涙って悲しい時に出てくるだろう? 悲しみの凝縮さ。
本当なら忌み嫌うべき存在なのに一緒にいたいなんて。おかしな奴だよ、君は」
( ^ω^)「……」
ショボンは自分の足元に視線を落とす。
(´・ω・`)「……だから……」
( ^ω^)「いやだお」
それまでずっと黙っていたブーンが口を開く。
目に溜まった涙が零れ落ちる。
(#;ω;)「いやだ、いやだお!」
(´・ω・`)「ブーン……」
(#;ω;)「いやなんだお! 何でそんな事言うお!? 大人になったらとか、関係ないお!
僕はショボンとずっと友達でいたいお! 一緒にいたいんだ!」
はにかんだように苦笑するショボン。
(´・ω・`)「涙がいないと困るなんておかしな話だぜ? 涙って悲しい時に出てくるだろう? 悲しみの凝縮さ。
本当なら忌み嫌うべき存在なのに一緒にいたいなんて。おかしな奴だよ、君は」
( ^ω^)「……」
ショボンは自分の足元に視線を落とす。
(´・ω・`)「……だから……」
( ^ω^)「いやだお」
それまでずっと黙っていたブーンが口を開く。
目に溜まった涙が零れ落ちる。
(#;ω;)「いやだ、いやだお!」
(´・ω・`)「ブーン……」
(#;ω;)「いやなんだお! 何でそんな事言うお!? 大人になったらとか、関係ないお!
僕はショボンとずっと友達でいたいお! 一緒にいたいんだ!」
406: :2009/02/21(土) 22:41:12.87 ID:
ブーン頑張れ
410: :2009/02/21(土) 22:43:04.90 ID:
半ば発狂したかのように叫ぶブーン。泣いているせいだろうか、うまく呼吸できずに息が荒い。
そして訪れる沈黙。
お互いに譲れないし、どう言葉を発していいかわからない。
ブーンはショボンを睨み付け、ショボンも穏やかな視線をブーン向ける。
(´・ω・`)「……君に」
沈黙を破ったのはショボン。
(´・ω・`)「君に会うのは、実は3度目なんだよ」
( ^ω^)「えっ」
唐突なショボンの述懐にブーンは驚きを隠せない。
(´・ω・`)「3回目は、今。2回目は、この間だ。ブーン、君が秋に部屋で泣いていたときだよ。でもね、
君は小さかったから覚えてないだろうけど、君が4歳ぐらいの時に僕たちは一回会ってるんだよ」
そう言われブーンは記憶探る。しかし、思い出すことは出来なかった。
そして訪れる沈黙。
お互いに譲れないし、どう言葉を発していいかわからない。
ブーンはショボンを睨み付け、ショボンも穏やかな視線をブーン向ける。
(´・ω・`)「……君に」
沈黙を破ったのはショボン。
(´・ω・`)「君に会うのは、実は3度目なんだよ」
( ^ω^)「えっ」
唐突なショボンの述懐にブーンは驚きを隠せない。
(´・ω・`)「3回目は、今。2回目は、この間だ。ブーン、君が秋に部屋で泣いていたときだよ。でもね、
君は小さかったから覚えてないだろうけど、君が4歳ぐらいの時に僕たちは一回会ってるんだよ」
そう言われブーンは記憶探る。しかし、思い出すことは出来なかった。
411: :2009/02/21(土) 22:46:45.06 ID:
(´・ω・`)「やっぱり覚えてないかい? その時もね、ブーン。君は友達が出来ないって
泣いてたんだよ」
そういえば、ショボンは『“また”泣いていたのか』と言っていた。
また――。つまり、ショボンとブーンは以前にも会ったことがあるということだ。そして
ショボンがそこにいたということは、ブーンはその時も涙を流していたという事だ。
(´・ω・`)「君は小さい頃から人とうまく話せなくてね。やっぱり今回と同じように僕が
手助けしてあげたんだよ」
ショボンは「今回みたいに荒っぽくはないけどね」と付け加えた。
――思い出した。
いや、正確には全て思い出したわけではないが。
ブーンは今から10年近く前に、ショボンに導かれ友人をつくった。
確かに疑問には思っていたのだ。口下手な自分がどうやって人と関われていたのか。
この前までは如才なく自力で友人関係を築いていたと思っていたが。
なんのことはない。その時もショボンの力を借りていただけだった。
泣いてたんだよ」
そういえば、ショボンは『“また”泣いていたのか』と言っていた。
また――。つまり、ショボンとブーンは以前にも会ったことがあるということだ。そして
ショボンがそこにいたということは、ブーンはその時も涙を流していたという事だ。
(´・ω・`)「君は小さい頃から人とうまく話せなくてね。やっぱり今回と同じように僕が
手助けしてあげたんだよ」
ショボンは「今回みたいに荒っぽくはないけどね」と付け加えた。
――思い出した。
いや、正確には全て思い出したわけではないが。
ブーンは今から10年近く前に、ショボンに導かれ友人をつくった。
確かに疑問には思っていたのだ。口下手な自分がどうやって人と関われていたのか。
この前までは如才なく自力で友人関係を築いていたと思っていたが。
なんのことはない。その時もショボンの力を借りていただけだった。
414: :2009/02/21(土) 22:50:08.99 ID:
(´・ω・`)「もう、4度目はよしてくれよ」
ショボンは冗談めかしてそう笑う。
――あぁ。
ブーンは思った。
自分が離れたくないというわがままで、この素晴らしい友人をこれ以上困らせてはいけない。
自分がずっとずっと小さい頃から見守っていてくれたこの友達に、これ以上迷惑をかけちゃいけない。
自分が悲しい時、行き詰まった時に二度も背中を押してくれたショボン。
そんなショボンにどんな顔をしてまだ世話を焼いてくれなんて言えるだろう。
幼い頃から面倒を見てきてくれたのだ。いい加減解放してあげなくちゃ。
そしてブーンはもう大丈夫、とショボンが判断したんだ。それを信じるしかないじゃないか。
二度も助けてもらった。それで十分すぎる程だ。
(´・ω・`)「……本当は、今もこうして会うつもりじゃなかったんだ」
そう呟くように言って、ショボンはブーンの頬を指差す。
ショボンは冗談めかしてそう笑う。
――あぁ。
ブーンは思った。
自分が離れたくないというわがままで、この素晴らしい友人をこれ以上困らせてはいけない。
自分がずっとずっと小さい頃から見守っていてくれたこの友達に、これ以上迷惑をかけちゃいけない。
自分が悲しい時、行き詰まった時に二度も背中を押してくれたショボン。
そんなショボンにどんな顔をしてまだ世話を焼いてくれなんて言えるだろう。
幼い頃から面倒を見てきてくれたのだ。いい加減解放してあげなくちゃ。
そしてブーンはもう大丈夫、とショボンが判断したんだ。それを信じるしかないじゃないか。
二度も助けてもらった。それで十分すぎる程だ。
(´・ω・`)「……本当は、今もこうして会うつもりじゃなかったんだ」
そう呟くように言って、ショボンはブーンの頬を指差す。
418: :2009/02/21(土) 22:56:02.22 ID:
(´・ω・`)「涙。――本気で悲しんでくれたんだね。わかるよ。僕がこうして君に会ったことが
……会えたことがその根拠だ」
ブーンは決意したかのように涙をぬぐうと、無理に笑った。
( ^ω^)「おっおっお。もし今会えてなかったら明日も捜すつもりだったお。……明後日も、
その先も、ずっと捜す気だった。……ショボン、今までありがとう。もう、引き止めないお。
ショボンが心配しないように、これ以上、引き止めないお」
悲しいはずなのに、不思議と微笑むことが出来た。
(´・ω・`)「うん、ありがとう。僕はいい友達を持った。ブーン、君に会えて良かった」
( ^ω^)「それはこっちのセリフだお」
ブーンの事を考えてくれたショボン。そのショボンとどうしても離れなくてはいけないのなら、
せめて胸を張らなければいけない。
……会えたことがその根拠だ」
ブーンは決意したかのように涙をぬぐうと、無理に笑った。
( ^ω^)「おっおっお。もし今会えてなかったら明日も捜すつもりだったお。……明後日も、
その先も、ずっと捜す気だった。……ショボン、今までありがとう。もう、引き止めないお。
ショボンが心配しないように、これ以上、引き止めないお」
悲しいはずなのに、不思議と微笑むことが出来た。
(´・ω・`)「うん、ありがとう。僕はいい友達を持った。ブーン、君に会えて良かった」
( ^ω^)「それはこっちのセリフだお」
ブーンの事を考えてくれたショボン。そのショボンとどうしても離れなくてはいけないのなら、
せめて胸を張らなければいけない。
422: :2009/02/21(土) 22:58:22.64 ID:
字が滲んで読めねえよ…しえん
423: :2009/02/21(土) 22:58:59.53 ID:
(´・ω・`)「じゃあ僕は行くよ。もう、一人でも平気だね?」
ショボンからの最終確認。その問いに、ブーンはゆっくり、しかし力強く頷く。
(´・ω・`)「うん、その返事が欲しかった。やっぱり今会って正解だったよ」
( ^ω^)「また会えるのかお?」
今度はブーンからの質問。どうしても答えの欲しい、質問。
(´・ω・`)「わからない」
ショボンは首を振る。
(´・ω・`)「会えるかもしれないし、会えないかもしれない」
( ^ω^)「そうかお……」
「でもなぁ」とショボンは言葉を継ぐ。
(´・ω・`)「さっきも言ったけど、本来なら涙なんて御免被りたいのが普通なんだぜ。なにせ君が
本当に悲しい時しか会いに来ないんだ。君はそんなに悲しい思いをしたいのかい?」
ちょっとからかうようなショボンの口調。
(´・ω・`)「涙を流さないのなら、それが一番なんだ」
ショボンからの最終確認。その問いに、ブーンはゆっくり、しかし力強く頷く。
(´・ω・`)「うん、その返事が欲しかった。やっぱり今会って正解だったよ」
( ^ω^)「また会えるのかお?」
今度はブーンからの質問。どうしても答えの欲しい、質問。
(´・ω・`)「わからない」
ショボンは首を振る。
(´・ω・`)「会えるかもしれないし、会えないかもしれない」
( ^ω^)「そうかお……」
「でもなぁ」とショボンは言葉を継ぐ。
(´・ω・`)「さっきも言ったけど、本来なら涙なんて御免被りたいのが普通なんだぜ。なにせ君が
本当に悲しい時しか会いに来ないんだ。君はそんなに悲しい思いをしたいのかい?」
ちょっとからかうようなショボンの口調。
(´・ω・`)「涙を流さないのなら、それが一番なんだ」
425: :2009/02/21(土) 23:00:01.24 ID:
あれ・・・?おかしいな
モニタが壊れたのか文字がぼやける・・・
モニタが壊れたのか文字がぼやける・・・
427: :2009/02/21(土) 23:00:51.99 ID:
涙の支援
428: :2009/02/21(土) 23:02:21.85 ID:
それに対してブーンは堂々と胸を張る。
( ^ω^)「でも……。僕はそれでも、ショボン。君に会いたいと思うんだお」
(´・ω・`)「僕もだ」
二人は微笑み合って握手を交わす。
ブーンはしっかりショボンの手を握った。
その暖かさに、涙が出そうになる。
(´・ω・`)「さぁ、さよならだ。元気でやれよ」
しかしブーンは手を離さない。いや、離せない。
ぼんやりとしたショボンの輪郭が、さらにその濃度を薄めはじめた。
( ^ω^)「ショボン」
(´・ω・`)「あんまりお母さんに心配かけるなよ。ジョルジュ達と仲良くやるんだぜ? いいね?」
( ^ω^)「ショボン」
(´・ω・`)「それと野球、ちゃんと続けろよ。あれはいいホームランだった、君には才能があるよ」
( ^ω^)「ショボン」
( ^ω^)「でも……。僕はそれでも、ショボン。君に会いたいと思うんだお」
(´・ω・`)「僕もだ」
二人は微笑み合って握手を交わす。
ブーンはしっかりショボンの手を握った。
その暖かさに、涙が出そうになる。
(´・ω・`)「さぁ、さよならだ。元気でやれよ」
しかしブーンは手を離さない。いや、離せない。
ぼんやりとしたショボンの輪郭が、さらにその濃度を薄めはじめた。
( ^ω^)「ショボン」
(´・ω・`)「あんまりお母さんに心配かけるなよ。ジョルジュ達と仲良くやるんだぜ? いいね?」
( ^ω^)「ショボン」
(´・ω・`)「それと野球、ちゃんと続けろよ。あれはいいホームランだった、君には才能があるよ」
( ^ω^)「ショボン」
429: :2009/02/21(土) 23:03:47.53 ID:
(´;ω;`)うぅ…
431: :2009/02/21(土) 23:04:54.19 ID:
ショボン
432: :2009/02/21(土) 23:05:28.24 ID:
掴んでいるはずなのに、しっかりと握っているはずなのに、ブーンの掌に感じるショボンの感触が希薄に
なっていく。
だけれど――。だけれどブーンにはわかった。ショボンが、泣いている。
今まであまり表情を変えてこなかったショボンが、涙のショボンが、泣いている――。
気配でも、視覚でも捉え辛くなったショボン。それでも、ブーンにはわかったのだ。
(´;ω・`)「まぁ、君が笑っていてくれたら、それでいいよ。……僕のことは、気にするな」
( ;ω;)「ショボン! ショボン!」
もうショボンの姿はほとんど見えない。そこにショボンがいる、とわかっていて初めて確認できる程度だ。
(´;ω;`)「最後に一つだけお願いだ」
もう声すらも消え入りそうだった。
(´;ω 「僕のこと、忘れな――」
( ;ω;)「ショボン!」
最後にそう言い残し、ショボンはいなくなってしまった。
目を凝らしてみてもどこにもいない。掌も何も掴んではいない。
なっていく。
だけれど――。だけれどブーンにはわかった。ショボンが、泣いている。
今まであまり表情を変えてこなかったショボンが、涙のショボンが、泣いている――。
気配でも、視覚でも捉え辛くなったショボン。それでも、ブーンにはわかったのだ。
(´;ω・`)「まぁ、君が笑っていてくれたら、それでいいよ。……僕のことは、気にするな」
( ;ω;)「ショボン! ショボン!」
もうショボンの姿はほとんど見えない。そこにショボンがいる、とわかっていて初めて確認できる程度だ。
(´;ω;`)「最後に一つだけお願いだ」
もう声すらも消え入りそうだった。
(´;ω 「僕のこと、忘れな――」
( ;ω;)「ショボン!」
最後にそう言い残し、ショボンはいなくなってしまった。
目を凝らしてみてもどこにもいない。掌も何も掴んではいない。
433: :2009/02/21(土) 23:05:32.97 ID:
行くなよ…
434: :2009/02/21(土) 23:08:02.92 ID:
( ;ω;)「ショボン……」
そう呼びかけても誰も応えない。
ただ一つ、さっきまでショボンの手を握っていた掌に、いつまでもぬくもりが残っていた。
気がつくと、ブーンはベッドにうずくまっていた。どうやら昨日泣いたままの体勢で
寝てしまっていたようだった。
窓の外にはすっかり太陽が昇っており、朝を告げる鳥の声がうるさい。
ではさっきのは、ショボンにあったのは、掌のぬくもりは――夢?
顔をゆっくりと上げる。無理な姿勢で寝ていたため、体がぎしぎしと痛む。ふとベッドに
視線を落とすと、シーツが涙で濡れていた。
そう呼びかけても誰も応えない。
ただ一つ、さっきまでショボンの手を握っていた掌に、いつまでもぬくもりが残っていた。
気がつくと、ブーンはベッドにうずくまっていた。どうやら昨日泣いたままの体勢で
寝てしまっていたようだった。
窓の外にはすっかり太陽が昇っており、朝を告げる鳥の声がうるさい。
ではさっきのは、ショボンにあったのは、掌のぬくもりは――夢?
顔をゆっくりと上げる。無理な姿勢で寝ていたため、体がぎしぎしと痛む。ふとベッドに
視線を落とすと、シーツが涙で濡れていた。
435: :2009/02/21(土) 23:09:40.99 ID:
ショボンがとけた
436: :2009/02/21(土) 23:12:00.02 ID:
( ^ω^)「ショボン」
さっきの出来事は、きっと夢だろう。
でも確かに、ショボンに会って、ちゃんと別れを告げた。
それははっきりとわかる。
なぜ? と聞かれても応える術など持ち合わせていないが、わかるのだ。
ブーンにはわかる。
だって、自分は涙を流していたから。本当に悲しかったから。
だから、ショボンは会いに来てくれた。
心が変に痛む。痛むと言うよりは、からっぽだ。
なのに、変に言い難い充足感があった。
( ^ω^)「忘れるわけないお……」
ブーンは自分の涙で濡れたシーツを見つめ、そう一人ごちた。
さっきの出来事は、きっと夢だろう。
でも確かに、ショボンに会って、ちゃんと別れを告げた。
それははっきりとわかる。
なぜ? と聞かれても応える術など持ち合わせていないが、わかるのだ。
ブーンにはわかる。
だって、自分は涙を流していたから。本当に悲しかったから。
だから、ショボンは会いに来てくれた。
心が変に痛む。痛むと言うよりは、からっぽだ。
なのに、変に言い難い充足感があった。
( ^ω^)「忘れるわけないお……」
ブーンは自分の涙で濡れたシーツを見つめ、そう一人ごちた。
437: :2009/02/21(土) 23:13:00.62 ID:
ショボンありがとう
438: :2009/02/21(土) 23:14:26.33 ID:
久しぶりに本気で泣いた
441: :2009/02/21(土) 23:14:57.12 ID:
ショボンへ――。
ショボン、元気ですか? 僕はそれなりに元気でやっています。
たまに……たまにじゃないけど、冬の朝はショボンで暖をとりたくなったりします。
J( ‘-`)し「ブーン、今日から2年生でしょ? まだ学校行かなくていいの?」
( ^ω^)「今行くとこだお」
J( ‘-`)し「寒いから気をつけてね。お昼はいるの?」
( ^ω^)「多分友達と遊んでくるからいらないお。いってきますお」
僕は今日から2年生です。新しいクラスになるのは楽しみでもあり、不安でもあります。
そんな時に横にショボンがいてくれたら、と思ってしまいます。
(;^ω^)「おわっ、寒いお。もっと着こんで来ればよかったお」
なんだかんだ言って毎日は楽しいけど……。
でも、少し寂しくもあります。
ショボンへ――。
ショボン、元気ですか? 僕はそれなりに元気でやっています。
たまに……たまにじゃないけど、冬の朝はショボンで暖をとりたくなったりします。
J( ‘-`)し「ブーン、今日から2年生でしょ? まだ学校行かなくていいの?」
( ^ω^)「今行くとこだお」
J( ‘-`)し「寒いから気をつけてね。お昼はいるの?」
( ^ω^)「多分友達と遊んでくるからいらないお。いってきますお」
僕は今日から2年生です。新しいクラスになるのは楽しみでもあり、不安でもあります。
そんな時に横にショボンがいてくれたら、と思ってしまいます。
(;^ω^)「おわっ、寒いお。もっと着こんで来ればよかったお」
なんだかんだ言って毎日は楽しいけど……。
でも、少し寂しくもあります。
443: :2009/02/21(土) 23:18:13.93 ID:
_
( ゚∀゚)「おっす、ブーン」
( ^ω^)「おはようだお、ジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「今日から2年生だな。クラス替え楽しみだなおい」
( ^ω^)「うん。みんな一緒のクラスになれるといいお」
ショボンの言葉どおり、ジョルジュたちとは変わらず仲良くやっています。
母ちゃんにも心配はかけていません。……と、思います。
( ´_>`)「えー、校長の兄者です。君たちは新学期を迎えるにあたってうんたらかんたらち○こがま○こに」
(;^ω^)「校長の話し長いお……。意味よくわかんないし」
( ´_>`)「……はい、では校長の話をこれで終わります。各自、振り当てられたクラスに散って下さい。以上」
退屈な全校朝礼や授業中など、話し相手にショボンが欲しいときもあります。
そう思うとショボンの小ささは、不便でもあり便利でもあったのかな? と思います。
( ゚∀゚)「おっす、ブーン」
( ^ω^)「おはようだお、ジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「今日から2年生だな。クラス替え楽しみだなおい」
( ^ω^)「うん。みんな一緒のクラスになれるといいお」
ショボンの言葉どおり、ジョルジュたちとは変わらず仲良くやっています。
母ちゃんにも心配はかけていません。……と、思います。
( ´_>`)「えー、校長の兄者です。君たちは新学期を迎えるにあたってうんたらかんたらち○こがま○こに」
(;^ω^)「校長の話し長いお……。意味よくわかんないし」
( ´_>`)「……はい、では校長の話をこれで終わります。各自、振り当てられたクラスに散って下さい。以上」
退屈な全校朝礼や授業中など、話し相手にショボンが欲しいときもあります。
そう思うとショボンの小ささは、不便でもあり便利でもあったのかな? と思います。
446: :2009/02/21(土) 23:21:12.44 ID:
兄者www
449: :2009/02/21(土) 23:21:30.29 ID:
450: :2009/02/21(土) 23:23:20.48 ID:
ビコーズこっちみんなww
451: :2009/02/21(土) 23:23:45.48 ID:
(;^ω^)「去年1-2だった内藤ホライゾン、通称ブーンですお。よろしくお願いしますお」
クラスメイト「よろしくー」
(;^ω^)「ふぅ、なんとか無難にこなせたお」
_
( ゚∀゚)「なんだよ、つまんねぇ挨拶だったな」
( ^ω^)「あれでいいんだお」
新しいクラスメイトもいい人そうな人たちばかりで、不安もなくなりました。
ジョルジュに挨拶がつまらないといわれましたが、無難が一番だと思います。
クラスメイト「よろしくー」
(;^ω^)「ふぅ、なんとか無難にこなせたお」
_
( ゚∀゚)「なんだよ、つまんねぇ挨拶だったな」
( ^ω^)「あれでいいんだお」
新しいクラスメイトもいい人そうな人たちばかりで、不安もなくなりました。
ジョルジュに挨拶がつまらないといわれましたが、無難が一番だと思います。
453: :2009/02/21(土) 23:26:17.52 ID:
_
( ゚∀゚)「あー、やっぱ初日は午前中で終わっていいなぁ」
( ^ω^)「じゃあこのままみんなで遊ぶお」
('A`)「なにして遊ぶんだ?」
_
( ゚∀゚)「うーんそうだなぁ。今の気分はダー……」
( ^ω^)「野球だお」
('A`)「えー?」
( ∵)「ブーンは野球が好きすぎる」
('A`)「おまえ最近打率よすぎるんだもん。当て馬にされるからいやだ」
( ^ω^)「いいから空き地に行くお。ほら、早く」
ショボンが褒めてくれた野球も、ちゃんと続けています。
今ではもう、ドクオのへぼピッチングなんて目じゃありません。
( ゚∀゚)「あー、やっぱ初日は午前中で終わっていいなぁ」
( ^ω^)「じゃあこのままみんなで遊ぶお」
('A`)「なにして遊ぶんだ?」
_
( ゚∀゚)「うーんそうだなぁ。今の気分はダー……」
( ^ω^)「野球だお」
('A`)「えー?」
( ∵)「ブーンは野球が好きすぎる」
('A`)「おまえ最近打率よすぎるんだもん。当て馬にされるからいやだ」
( ^ω^)「いいから空き地に行くお。ほら、早く」
ショボンが褒めてくれた野球も、ちゃんと続けています。
今ではもう、ドクオのへぼピッチングなんて目じゃありません。
455: :2009/02/21(土) 23:27:55.44 ID:
ブーンには野球部にはいって活躍して欲しいな
456: :2009/02/21(土) 23:28:29.00 ID:
459: :2009/02/21(土) 23:31:55.96 ID:
――ショボン、僕は君のおかげで人生が変わりました。
決して大げさなことを言っているわけではありません。
大人たちはみんな言います。『青春時代が一番楽しかった』と。
僕はまだ子供なのでよくわかりませんが、きっとそういうものなのでしょう。
もしショボンに出会わなければ、そんな大切な青春を泣いて過ごしていたことでしょう。
同時に、明るい未来もなかったんだろうと思います。
今の楽しい生活や、ジョルジュや、ドクオや、ビコーズと仲良く出来ているのも、
全部全部、ショボンのおかげです。
それはつまり、これから起こる人生の幸せの基盤をショボンが作ってくれたということです。
友達だけではありません。
僕は、ショボンから言葉ではとても言い表せない大切なものをもらいました。
それは、勇気だったり、人とつながれる喜びだったり、そのどれもを含んでいて、そのどれとも
ちょっと違う大切なものです。
ショボン、僕はもう泣いていません。
あの時、あのショボンが会いに来てくれた別れの時に、ショボンが僕の涙を奪っていったんでしょう?
僕にはそう思えて仕方ありません。
決して大げさなことを言っているわけではありません。
大人たちはみんな言います。『青春時代が一番楽しかった』と。
僕はまだ子供なのでよくわかりませんが、きっとそういうものなのでしょう。
もしショボンに出会わなければ、そんな大切な青春を泣いて過ごしていたことでしょう。
同時に、明るい未来もなかったんだろうと思います。
今の楽しい生活や、ジョルジュや、ドクオや、ビコーズと仲良く出来ているのも、
全部全部、ショボンのおかげです。
それはつまり、これから起こる人生の幸せの基盤をショボンが作ってくれたということです。
友達だけではありません。
僕は、ショボンから言葉ではとても言い表せない大切なものをもらいました。
それは、勇気だったり、人とつながれる喜びだったり、そのどれもを含んでいて、そのどれとも
ちょっと違う大切なものです。
ショボン、僕はもう泣いていません。
あの時、あのショボンが会いに来てくれた別れの時に、ショボンが僕の涙を奪っていったんでしょう?
僕にはそう思えて仕方ありません。
461: :2009/02/21(土) 23:34:01.19 ID:
たまにショボンに会いたくなるけど、それには涙が必要だから。
悲しくないと会えないなんて厄介だと思うけど、それは仕方のないことなのでしょう。
だから、僕はまだショボンに会いません。会えません。
だって、楽しいから。
ショボンのくれた毎日が、悲しみなんて思い出せないぐらい楽しいから。
ショボンといた毎日が素晴らしすぎたから――。
だから、まだショボンに会えません。
でも、もしまたショボンの助けが必要なときがあったら、情けないけど、また会いに来てくださいね。
では――、涙に体調があるかはわからないけど、お体に気をつけて――。
また会える日を楽しみにして。
1番の親友へ。
1番の親友より。
たまにショボンに会いたくなるけど、それには涙が必要だから。
悲しくないと会えないなんて厄介だと思うけど、それは仕方のないことなのでしょう。
だから、僕はまだショボンに会いません。会えません。
だって、楽しいから。
ショボンのくれた毎日が、悲しみなんて思い出せないぐらい楽しいから。
ショボンといた毎日が素晴らしすぎたから――。
だから、まだショボンに会えません。
でも、もしまたショボンの助けが必要なときがあったら、情けないけど、また会いに来てくださいね。
では――、涙に体調があるかはわからないけど、お体に気をつけて――。
また会える日を楽しみにして。
1番の親友へ。
1番の親友より。
464: :2009/02/21(土) 23:35:18.21 ID:
゜・(ノД`)・゜・
465: :2009/02/21(土) 23:35:32.14 ID:
キン。
(;'A`)「くわー! また打ちやがった! なんなんだよコイツはもう!」
( ^ω^)の涙のようです ~FIN~
キン。
(;'A`)「くわー! また打ちやがった! なんなんだよコイツはもう!」
( ^ω^)の涙のようです ~FIN~
466: :2009/02/21(土) 23:35:53.74 ID:
おつ! よかった
468: :2009/02/21(土) 23:37:07.87 ID:
なんかほっこりだな
>>1乙
>>1乙
472: :2009/02/21(土) 23:37:31.06 ID:
乙!!びしょ濡れ枕を弁償しろ!!
473: :2009/02/21(土) 23:37:34.71 ID:
めっちゃよかった。中学時代を思い出してせつなくなったよ。
482: :2009/02/21(土) 23:39:20.09 ID:
以上で『( ^ω^)の涙のようです』終了です。
二日に分けて投下するのは初めてだったので、
加減がわからず読み辛かったかもしれません。
すみません。
こんな拙い文章を読んで下さった皆様に深く感謝です。
また、自分がいない間保守をしてくれた方、
投下途中に支援してくれた方、
全ての方に感謝します。
二日に分けて投下するのは初めてだったので、
加減がわからず読み辛かったかもしれません。
すみません。
こんな拙い文章を読んで下さった皆様に深く感謝です。
また、自分がいない間保守をしてくれた方、
投下途中に支援してくれた方、
全ての方に感謝します。
485: :2009/02/21(土) 23:40:18.78 ID:
乙、素晴らしかった。
久しぶりに本当に良いものを読んだなあ。
久しぶりに本当に良いものを読んだなあ。
490: :2009/02/21(土) 23:42:53.36 ID:
乙
久しぶりに心があたたかくなったよ
それに2日間楽しかった
久しぶりに心があたたかくなったよ
それに2日間楽しかった
481: :2009/02/21(土) 23:38:58.55 ID:
乙!グッときたわ
屋上の鍵はどうしたんでしょうか?
>>481
屋上へは、もう二度といけませんでした。
それからは、中庭や、クラスで昼食をとっていたと思ってください。
屋上の鍵はどうしたんでしょうか?
>>481
屋上へは、もう二度といけませんでした。
それからは、中庭や、クラスで昼食をとっていたと思ってください。
497: :2009/02/21(土) 23:44:52.80 ID:
予想以上に読んでくれた方が多くて驚きました。
こんなに沢山の乙もいただいて……
悩みながら書いた甲斐がありました。
ほんとうにありがとうございます。
今日会社にいるときに落ちていないか心配でしたし、
何度かさるさんを食らったときもヒヤヒヤしましたが
なんとか無事に終えられて良かったです。
また、いつになるかわかりませんが次回作を書いたときは
ぜひご一読いただけるようお願いします。
こんなに沢山の乙もいただいて……
悩みながら書いた甲斐がありました。
ほんとうにありがとうございます。
今日会社にいるときに落ちていないか心配でしたし、
何度かさるさんを食らったときもヒヤヒヤしましたが
なんとか無事に終えられて良かったです。
また、いつになるかわかりませんが次回作を書いたときは
ぜひご一読いただけるようお願いします。
504: :2009/02/21(土) 23:51:53.28 ID:
いや、マジ泣いた。
感動をありがとう!
感動をありがとう!
515: :2009/02/22(日) 00:13:37.52 ID:
>>1乙!
久しぶりに本物の良い話を見た気がするよ
久しぶりに本物の良い話を見た気がするよ
522: :2009/02/22(日) 00:19:04.38 ID:
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