29:2007/09/09(日) 15:07:46.11 ID:
ある日、遊びの予定がキャンセルになった俺は、秘密の釣り場で夜釣りを楽しむ事にした。

街から少し離れた所にある橋で、静かでよく釣れる俺の穴場。
その日も良く釣れ、しばらくした頃、全身に寒気が。
何か恐いな・・・そう思いつつも、入れ食い状態のその場を離れる気にもならず、夜釣りを楽しんだ。

「あなたも釣りですか?」

後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこにはサラリーマン風の中年男性が。

「えぇ、ここよく釣れるんです」
「えぇそうらしいですね」
「あなたも釣りですか?」
「・・・まぁそうですね」

話していくうちに、段々と俺は違和感を感じた。

29:2007/09/09(日) 15:07:46.11 ID:
男性はどう見てもスーツ姿、とても釣りを楽しむ格好じゃない。こんな所でなにを・・・

「あなた、つらないんですか・・・」

男性の声・・・いやおかしい。明らかに上から聞こえてきた。

「つりましょうよ、あなたも・・・」

俺は恐怖に震えながらも上を見上げた・・・
そこには、今話をしていた男性の首吊り死体が!!
男が言っていたのは、『釣り』ではなく『吊り』だったのだ!!
気が付くと俺の目の前には、無数の人影が「吊ろう・・・一緒に吊ろう・・・」と俺に囁いている。

「そこまでだ」

聞いたことのある声。寺生まれで霊感の強いTさんだ。
影によって今にも吊り上げられそうな俺の前に来ると、
自前の釣竿を振り回し

「破ぁ!!」と叫ぶ。

すると釣竿の糸が眩く光り、振り回した糸が剣のように次々と影を引き裂いてゆく!
ある程度影を振り払うと、Tさんの呪文によって周りには光が走り、アッと言う間に影は全滅した。
「Tさんも夜釣りですか?」
そう尋ねるとTさんは俺を指差し、

「まあな、随分と小物を釣り上げちまったがな・・・」

帰り道で聞いた話によると、あそこは自殺の名所で、首吊りが首吊りを呼ぶ恐怖の橋らしい。
「すっかり日も上がっちまったな。どれ、街で女の子でも釣りに行くか」
そう言って車に飛び乗り、爽やかに笑ってみせるTさんを見て、

寺生まれはスゴイ、俺はいろんな意味で思った。
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