1: :2008/03/12(水) 13:45:58.70 ID:
3: :2008/03/12(水) 13:46:30.01 ID:
夏休みだった。
俺は6時に起きてラジオ体操に行った後、家に帰って二度寝をした。
朝の涼しいうちに宿題をすませなさい、という母親の小言は覚悟していたが、
それを合図にして起きだそうと思っていた。
俺は6時に起きてラジオ体操に行った後、家に帰って二度寝をした。
朝の涼しいうちに宿題をすませなさい、という母親の小言は覚悟していたが、
それを合図にして起きだそうと思っていた。
6: :2008/03/12(水) 13:47:29.90 ID:
暑くて目が覚めた。
汗で気色悪く濡れたパジャマを脱ぎ散らかしながら時計を見ると、
丁度12時を指していた。
違和感を感じた。母親はいつも必ず、9時には俺を無理矢理起こすはずだった。
静まり返った家の中でしばらく立ちつくす。静か過ぎた。
外から聞こえるセミの声だけがやけに大きく響いていた。
汗で気色悪く濡れたパジャマを脱ぎ散らかしながら時計を見ると、
丁度12時を指していた。
違和感を感じた。母親はいつも必ず、9時には俺を無理矢理起こすはずだった。
静まり返った家の中でしばらく立ちつくす。静か過ぎた。
外から聞こえるセミの声だけがやけに大きく響いていた。
7 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/12(水) 13:48:15.57 ID:9H71iM10O
ちょっと期待
8: :2008/03/12(水) 13:48:35.04 ID: 台所や洗面所、ベランダを探しても母親はいなかった。
弟も見当たらなかったが、どこかに遊びに行ったのだろうとその時は思った。
窓の風鈴がチリンと鳴って、生温かい風が部屋を通り過ぎた。
俺はリビングの椅子に座って、とりあえず母親が帰ってくるのを待つことにした。
弟も見当たらなかったが、どこかに遊びに行ったのだろうとその時は思った。
窓の風鈴がチリンと鳴って、生温かい風が部屋を通り過ぎた。
俺はリビングの椅子に座って、とりあえず母親が帰ってくるのを待つことにした。
9: :2008/03/12(水) 13:49:23.64 ID:
1時間がたった。
朝飯も食べていなかった俺は、かなり空腹を覚えていた。
冷蔵庫を探して、魚肉ソーセージを食べた。
ついでにチューペットを取り出すと、それをくわえたまま家を出た。
朝飯も食べていなかった俺は、かなり空腹を覚えていた。
冷蔵庫を探して、魚肉ソーセージを食べた。
ついでにチューペットを取り出すと、それをくわえたまま家を出た。
11: :2008/03/12(水) 13:50:14.00 ID:
外に出るとむわっとした熱気が俺を包んだ。
遠慮の無い太陽が気に食わなかった。セミの声もうるさくてイラついた。
人通りは無かった。いつもは吠えてくる隣の家の犬も静かだった。
何か違った。
変な世界に俺1人、取り残されたように感じた。
遠慮の無い太陽が気に食わなかった。セミの声もうるさくてイラついた。
人通りは無かった。いつもは吠えてくる隣の家の犬も静かだった。
何か違った。
変な世界に俺1人、取り残されたように感じた。
12: :2008/03/12(水) 13:51:01.80 ID:
遠くの景色が揺らめいて見えた。
だが俺は暑さよりも、ずっと感じている違和感が気になってきていた。
俺の足はいつもの習慣で、幼馴染の家へと向かっていた。
アキラまでいなかったらどうしよう。
嫌な想像だけが段々と大きくなってきていた。
だが俺は暑さよりも、ずっと感じている違和感が気になってきていた。
俺の足はいつもの習慣で、幼馴染の家へと向かっていた。
アキラまでいなかったらどうしよう。
嫌な想像だけが段々と大きくなってきていた。
15: :2008/03/12(水) 13:51:48.54 ID:
学校で見た、戦争のアニメのことを思い出していた。
夜に急に空襲警報が鳴り、町民が皆防空壕に避難する。
その場面を見ているときに俺が思っていたのは、
「俺だけ警報に気付かずに寝ていたらどうしよう」ということだった。
それは滑稽なようでいて、リアルな想像でもあった。
俺はそのことを思うたびに胸がキューッと締め付けられて、
いても立ってもいられない気分になる。
泣きそうになっていた。
夜に急に空襲警報が鳴り、町民が皆防空壕に避難する。
その場面を見ているときに俺が思っていたのは、
「俺だけ警報に気付かずに寝ていたらどうしよう」ということだった。
それは滑稽なようでいて、リアルな想像でもあった。
俺はそのことを思うたびに胸がキューッと締め付けられて、
いても立ってもいられない気分になる。
泣きそうになっていた。
16: :2008/03/12(水) 13:52:34.69 ID:
どの家からも人の気配はしなかった。
幼馴染の家は近づいてきていたが、もう下手な期待はほとんどなくなっていた。
確か母親が、何かあったときの緊急避難所は学校だと言っていた気がする。
だから学校に行ってみようかとも思った。
学校に行ったら皆が集まっていて、「戦争が始まった」などと言う。
それはそれで怖い想像だった。今思い出せば馬鹿だが、そのときは本気で恐怖していた。
幼馴染の家は近づいてきていたが、もう下手な期待はほとんどなくなっていた。
確か母親が、何かあったときの緊急避難所は学校だと言っていた気がする。
だから学校に行ってみようかとも思った。
学校に行ったら皆が集まっていて、「戦争が始まった」などと言う。
それはそれで怖い想像だった。今思い出せば馬鹿だが、そのときは本気で恐怖していた。
18: :2008/03/12(水) 13:53:26.85 ID:
考えているうちに幼馴染の家に着いた。
いつもは鳴らさずに勝手に家に入るくせに、そのときはインターホンを押した。
いくらか期待はした。
アキラが「おう。どうしたん?」と言って扉を開ける。
おばさんが「ほら、はいりはいり」と言って招きいれてくれる。
家の中はクーラーが効いていて、俺とアキラはそこでスーファミをしたり、
計画をたてて裏山に探険に行ったりする。
出来うる限りの日常を想像をした。
返事は無かった。
いつもは鳴らさずに勝手に家に入るくせに、そのときはインターホンを押した。
いくらか期待はした。
アキラが「おう。どうしたん?」と言って扉を開ける。
おばさんが「ほら、はいりはいり」と言って招きいれてくれる。
家の中はクーラーが効いていて、俺とアキラはそこでスーファミをしたり、
計画をたてて裏山に探険に行ったりする。
出来うる限りの日常を想像をした。
返事は無かった。
20 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 : 2008/03/12(水) 13:54:04.12 ID:9H71iM10O
これは怖い
22: :2008/03/12(水) 13:54:41.96 ID: いい加減に鈍い俺も気付きつつあった。
世界から俺とセミ以外の生き物がいなくなっていた。
太陽は相変わらず意味もなく照り付けているのに、
アスファルトは相変わらず熱く焦げているのに、
俺の知っている世界とは似ても似つかない夏の景色がそこにあった。
言葉にならない不安が俺の胸を押し潰そうとしていた。
少しだけ涙が滲んで、それを慌てて拭うと俺は走り出した。
靴の裏を通り越して伝わってくるアスファルトの熱さが、やけに不快だった。
世界から俺とセミ以外の生き物がいなくなっていた。
太陽は相変わらず意味もなく照り付けているのに、
アスファルトは相変わらず熱く焦げているのに、
俺の知っている世界とは似ても似つかない夏の景色がそこにあった。
言葉にならない不安が俺の胸を押し潰そうとしていた。
少しだけ涙が滲んで、それを慌てて拭うと俺は走り出した。
靴の裏を通り越して伝わってくるアスファルトの熱さが、やけに不快だった。
23: :2008/03/12(水) 13:55:29.19 ID:
学校も静まり返っていた。
玄関に立って校庭を振り返ると、広い校庭の上で空気が揺らめいていた。
誰もいない校庭は、いつもよりもでかく感じた。
玄関に立って校庭を振り返ると、広い校庭の上で空気が揺らめいていた。
誰もいない校庭は、いつもよりもでかく感じた。
25: :2008/03/12(水) 13:56:20.71 ID:
玄関は開いていた。
靴箱で上履きに履き替えようかしばらく迷って、結局そのままで廊下に踏み出した。
どうせ夏休みが終われば大掃除をする。
というかどうせ誰もいない。
真っ直ぐに職員室を目指した。
夏休みは、職員室以外の教室には鍵がかかっている。
靴箱で上履きに履き替えようかしばらく迷って、結局そのままで廊下に踏み出した。
どうせ夏休みが終われば大掃除をする。
というかどうせ誰もいない。
真っ直ぐに職員室を目指した。
夏休みは、職員室以外の教室には鍵がかかっている。
26: :2008/03/12(水) 13:57:12.66 ID:
職員室のドアは、予想通り開いていた。
誰もいない。ただ妙なことに、クーラーがかかっていた。
「誰か…いますか?」
恐る恐る出した声は少ししゃがれていた。
ウゥゥゥゥンと室外機の音がかすかに響いている。
先生の机の上には麦茶が入ったコップが置いてあり、
ついさっきまで人がいたような雰囲気があった。
「誰かいるんですか?」
俺はもう一度声を上げた。当然のように反応は無かった。
誰もいない。ただ妙なことに、クーラーがかかっていた。
「誰か…いますか?」
恐る恐る出した声は少ししゃがれていた。
ウゥゥゥゥンと室外機の音がかすかに響いている。
先生の机の上には麦茶が入ったコップが置いてあり、
ついさっきまで人がいたような雰囲気があった。
「誰かいるんですか?」
俺はもう一度声を上げた。当然のように反応は無かった。
28: :2008/03/12(水) 13:58:06.20 ID:
職員室のテレビをつけてみたが、どのチャンネルも砂嵐で映る気配は無かった。
試しに電話をかけようとしてみたが、繋がっていなかった。
いよいよ俺は本格的に泣きそうになっていた。
時計は3時過ぎぐらいを指していたと思う。
いつもなら遊びまわっている時間だった。
どうすればいいのか分からなかった。
俺はしばらく涙をこらえながら立ち尽くした後、職員室を後にした。
試しに電話をかけようとしてみたが、繋がっていなかった。
いよいよ俺は本格的に泣きそうになっていた。
時計は3時過ぎぐらいを指していたと思う。
いつもなら遊びまわっている時間だった。
どうすればいいのか分からなかった。
俺はしばらく涙をこらえながら立ち尽くした後、職員室を後にした。
30: :2008/03/12(水) 13:58:55.39 ID:
外に出て深呼吸をした。
深呼吸をすれば落ち着くというのは嘘だと思った。
学校を出て、フラフラと町を歩いた。
そろばん教室は閉まっていた。図書館は開いていてクーラーまでかかっていたが、
人の気配は無かった。ローソンも同じだった。
商店街は、開いている店と閉まっている店があった。
どの店にも、人がいないということだけ共通していた。
市民プールには浮き輪が数個浮かんでいた。
公園にはサッカーボールが1個、転がっていた。
深呼吸をすれば落ち着くというのは嘘だと思った。
学校を出て、フラフラと町を歩いた。
そろばん教室は閉まっていた。図書館は開いていてクーラーまでかかっていたが、
人の気配は無かった。ローソンも同じだった。
商店街は、開いている店と閉まっている店があった。
どの店にも、人がいないということだけ共通していた。
市民プールには浮き輪が数個浮かんでいた。
公園にはサッカーボールが1個、転がっていた。
35: :2008/03/12(水) 14:00:28.97 ID:
俺は歩き疲れて、駄菓子屋の前に座り込んだ。
その駄菓子屋には来たことが無かった。
駄菓子を貰ってしまおうかと一瞬思ったが、結局やめた。
ふと、駄菓子屋の奥から物音が聞こえる気がした。
恐る恐る、古臭い引き戸を開いてみる。
テレビがついていて、ザーザーと砂嵐を映していた。
俺は嘆息して、もう一度座り込んだ。
目を閉じた記憶は無いが、いつのまにか眠っていた。
その駄菓子屋には来たことが無かった。
駄菓子を貰ってしまおうかと一瞬思ったが、結局やめた。
ふと、駄菓子屋の奥から物音が聞こえる気がした。
恐る恐る、古臭い引き戸を開いてみる。
テレビがついていて、ザーザーと砂嵐を映していた。
俺は嘆息して、もう一度座り込んだ。
目を閉じた記憶は無いが、いつのまにか眠っていた。
36: :2008/03/12(水) 14:01:20.56 ID:
目が覚めると家のリビングで机に突っ伏していた。
慌てて時計を確認すると、12時半。
外はまだ明るくて、セミの声が聞こえていた。
玄関からバタバタと足音が近づいてきて、母親の「ただいまぁ~」という声が聞こえた。
そういえば母親が玄関のドアを開ける音で目が覚めたのだと遅れて理解した。
「起きてる?ごめんごめん、買い物行ったらついつい話し込んで…」
そう言って台所に向かう母親の後姿を見ながら、夢だったのかとぼんやりと考えた。
頬をなぞると跡がついているようだった。
俺はもう一度時計を見た。
12時32分だった。
慌てて時計を確認すると、12時半。
外はまだ明るくて、セミの声が聞こえていた。
玄関からバタバタと足音が近づいてきて、母親の「ただいまぁ~」という声が聞こえた。
そういえば母親が玄関のドアを開ける音で目が覚めたのだと遅れて理解した。
「起きてる?ごめんごめん、買い物行ったらついつい話し込んで…」
そう言って台所に向かう母親の後姿を見ながら、夢だったのかとぼんやりと考えた。
頬をなぞると跡がついているようだった。
俺はもう一度時計を見た。
12時32分だった。
37: :2008/03/12(水) 14:02:08.06 ID:
なんだ夢か・・・・
39: :2008/03/12(水) 14:02:18.19 ID:
昼飯は冷やし中華だった。
宿題はしたのかと言う母親を振り切って、俺はアキラの家へ向かった。
隣の家の犬はギャンギャンと吠えて、何度か人とすれ違った。
アスファルトは熱かったが、何故か不快ではなかった。
インターホンを押すかどうか迷った。
いつもならそのまま玄関を開ける。夢のせいでそれが躊躇われた。
結局インターホンを押した。
「はーい」とインターホンに出たのはアキラでもおばさんでもなくアキラの妹だった。
「俺。アキラいる?」
言うと、妹のケーコは「いるから入り」とだけ言った。
宿題はしたのかと言う母親を振り切って、俺はアキラの家へ向かった。
隣の家の犬はギャンギャンと吠えて、何度か人とすれ違った。
アスファルトは熱かったが、何故か不快ではなかった。
インターホンを押すかどうか迷った。
いつもならそのまま玄関を開ける。夢のせいでそれが躊躇われた。
結局インターホンを押した。
「はーい」とインターホンに出たのはアキラでもおばさんでもなくアキラの妹だった。
「俺。アキラいる?」
言うと、妹のケーコは「いるから入り」とだけ言った。
41: :2008/03/12(水) 14:03:11.96 ID:
アキラの家はいつ来ても大体クーラーがついている。
だから俺たちの遊び場所は大半がアキラの家だった。
いつものように2階に上がり、アキラの部屋の扉を開ける。
「うっす」と声をかけると、アキラはマリカーをしながら「おっす」と答えた。
隣に腰掛けると、2コンを手にとった。
アキラはすかさずリセットして、2人でレースを始めた。
だから俺たちの遊び場所は大半がアキラの家だった。
いつものように2階に上がり、アキラの部屋の扉を開ける。
「うっす」と声をかけると、アキラはマリカーをしながら「おっす」と答えた。
隣に腰掛けると、2コンを手にとった。
アキラはすかさずリセットして、2人でレースを始めた。
42: :2008/03/12(水) 14:04:09.79 ID:
「今日はどっか行かん?」
アキラが言って、俺はしばらく迷ってから「どっかって?」と言った。
「そうやなあ。裏山は飽きたしな」
「飽きたな」
「なんか無いん?」
「うーん…」
俺は夢のことを思い出していた。夢の感触はリアルに残っていて、
そんなことは初めてだった。
人のいない町。最後に辿り着いた駄菓子屋。
「じゃあさあ…」
俺は話し出した。
アキラが言って、俺はしばらく迷ってから「どっかって?」と言った。
「そうやなあ。裏山は飽きたしな」
「飽きたな」
「なんか無いん?」
「うーん…」
俺は夢のことを思い出していた。夢の感触はリアルに残っていて、
そんなことは初めてだった。
人のいない町。最後に辿り着いた駄菓子屋。
「じゃあさあ…」
俺は話し出した。
44: :2008/03/12(水) 14:04:52.84 ID:
アキラは話を聞き終わると、「じゃあ行ってみるか」と言った。
キリのいいところでスーファミの電源を切り、用意をする。
「でもほんまにその駄菓子屋あったらおもろいな。俺も行ったことないし」
アキラが帽子をかぶりながら言った。
俺は「そうやな」と答えた。
夢で泣きそうになったことは話さなかった。
キリのいいところでスーファミの電源を切り、用意をする。
「でもほんまにその駄菓子屋あったらおもろいな。俺も行ったことないし」
アキラが帽子をかぶりながら言った。
俺は「そうやな」と答えた。
夢で泣きそうになったことは話さなかった。
45: :2008/03/12(水) 14:05:39.96 ID:
玄関で靴を履いているとケーコが来て、着いていくと言い出した。
アキラは露骨に嫌な顔をして俺を見たが、俺が笑いながら「別にいいやろ」と言うと
「ええけど泣くなよ」と言った。
チューペットをくわえながら3人で歩いた。
駄菓子屋はどこにあるのかよく分からなかったから、
夢の中で俺が歩いた順に歩くことにした。
まずは学校に向かう。
夢の中であんなに疲れていた足は、嘘のように軽かった。
アキラは露骨に嫌な顔をして俺を見たが、俺が笑いながら「別にいいやろ」と言うと
「ええけど泣くなよ」と言った。
チューペットをくわえながら3人で歩いた。
駄菓子屋はどこにあるのかよく分からなかったから、
夢の中で俺が歩いた順に歩くことにした。
まずは学校に向かう。
夢の中であんなに疲れていた足は、嘘のように軽かった。
46: :2008/03/12(水) 14:06:26.89 ID:
現実でも校庭に人はいなかった。
プールの方から声が聞こえた。学校のプールはタダで解放されているので、
市民プールよりもこちらに来る子供は多い。
「夢やったら職員室に行ったんやけどな。土足で」
「土足かよ。さすがにそれはきついやろ」
アキラが笑いながら言って、上履きに履き替えた。
ケーコもならって履き替えながら、「なー夢って?」と聞いてきた。
説明するのが面倒臭かったので適当に誤魔化した。
プールの方から声が聞こえた。学校のプールはタダで解放されているので、
市民プールよりもこちらに来る子供は多い。
「夢やったら職員室に行ったんやけどな。土足で」
「土足かよ。さすがにそれはきついやろ」
アキラが笑いながら言って、上履きに履き替えた。
ケーコもならって履き替えながら、「なー夢って?」と聞いてきた。
説明するのが面倒臭かったので適当に誤魔化した。
48: :2008/03/12(水) 14:07:13.15 ID:
別に職員室に行く必要は無いとは思ったが、
完璧に夢の通りにしたほうがいいような気もした。
夏休みの学校はそれなりに静かだった。
「職員室に先生いるかな」とケーコが言って、「いるに決まってるやん」とアキラが言った。
俺は、もしいなかったらなんとなく怖いなあ と考えていた。
完璧に夢の通りにしたほうがいいような気もした。
夏休みの学校はそれなりに静かだった。
「職員室に先生いるかな」とケーコが言って、「いるに決まってるやん」とアキラが言った。
俺は、もしいなかったらなんとなく怖いなあ と考えていた。
50: :2008/03/12(水) 14:08:03.81 ID:
職員室のドアを開けると、先生が振り返って「お?どうした?」と声を上げた。
クーラーがかかっていて、先生の手には麦茶の入ったコップが握られていた。
「職員室は涼しいやろなー と思って!」
アキラが言って、ケーコが「ほんまや涼しい~」と調子をあわせた。
先生は1人だけのようだった。プールの方に行っている先生もいるだろうし、
どこか別の場所にいる先生もいるのかもしれない。
夏休みに先生がどんな仕事をしているか知らなかったので、よく分からなかった。
クーラーがかかっていて、先生の手には麦茶の入ったコップが握られていた。
「職員室は涼しいやろなー と思って!」
アキラが言って、ケーコが「ほんまや涼しい~」と調子をあわせた。
先生は1人だけのようだった。プールの方に行っている先生もいるだろうし、
どこか別の場所にいる先生もいるのかもしれない。
夏休みに先生がどんな仕事をしているか知らなかったので、よく分からなかった。
52: :2008/03/12(水) 14:09:05.40 ID:
「涼しいやろ羨ましいか」
先生が笑うのを聞きながら、俺はテレビに近づいた。
少し緊張しながら、電源を入れてみる。NHKの教育番組が流れ出したのを見て、
俺は電源を消した。
「おいおい、何してんのや」
先生が呆れたように言う。俺は説明のしようがなくて、困ってアキラを見た。
「いや、俺も、分からんし…」
アキラも困ったように言った。ケーコは「何なん?」と疑問符を浮かべていた。
先生が笑うのを聞きながら、俺はテレビに近づいた。
少し緊張しながら、電源を入れてみる。NHKの教育番組が流れ出したのを見て、
俺は電源を消した。
「おいおい、何してんのや」
先生が呆れたように言う。俺は説明のしようがなくて、困ってアキラを見た。
「いや、俺も、分からんし…」
アキラも困ったように言った。ケーコは「何なん?」と疑問符を浮かべていた。
54: :2008/03/12(水) 14:09:41.74 ID:
電話をかけようとしたら追い出された。
「そこまで再現することないんちゃうか」とアキラが言って、
俺もそれに同意した。ケーコがいい加減うるさかったので、かいつまんで説明した。
「ほんま変なこと思いつくなあ」とケーコは言った。
「そこまで再現することないんちゃうか」とアキラが言って、
俺もそれに同意した。ケーコがいい加減うるさかったので、かいつまんで説明した。
「ほんま変なこと思いつくなあ」とケーコは言った。
55 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/03/12(水) 14:09:59.01 ID:UNKbevxt0
こういう雰囲気好きだな >>1の文章も淡々としてて読みやすい
58: :2008/03/12(水) 14:11:08.69 ID: 苦労して思い出しながら、夢の通りに歩いた。
夢の記憶ははっきりと残ってはいた。
それはいつも見る夢に比べれば、ということではあったが
本当に段違いなくらいだった。
「もう疲れたぁ」とケーコが言った。「俺も…」とアキラが言った。
正直俺も疲れていたので、公園のベンチに座って休憩した。
俺とアキラはミツヤサイダー、ケーコはバヤリースオレンジを飲んだ。
夢の記憶ははっきりと残ってはいた。
それはいつも見る夢に比べれば、ということではあったが
本当に段違いなくらいだった。
「もう疲れたぁ」とケーコが言った。「俺も…」とアキラが言った。
正直俺も疲れていたので、公園のベンチに座って休憩した。
俺とアキラはミツヤサイダー、ケーコはバヤリースオレンジを飲んだ。
59: :2008/03/12(水) 14:12:00.05 ID:
時刻は夕方に近づきつつあった。どれだけ歩き回っただろう。
公園でサッカーをするやつらを眺めながら、俺はその夢がどれだけ怖かったかを話した。
「そういえばそろばん教室閉まってたな」とアキラが言った。
「商店街の閉まってる店も、たぶん大体同じやった」思い返しながら、俺も言った。
「じゃあどういうこと?正夢?」ケーコが言って、
「正夢ではないやん。だって人は皆いるからな」アキラが答えた。
ケーコは「そうですかー」と言って、そっぽを向いた。
公園でサッカーをするやつらを眺めながら、俺はその夢がどれだけ怖かったかを話した。
「そういえばそろばん教室閉まってたな」とアキラが言った。
「商店街の閉まってる店も、たぶん大体同じやった」思い返しながら、俺も言った。
「じゃあどういうこと?正夢?」ケーコが言って、
「正夢ではないやん。だって人は皆いるからな」アキラが答えた。
ケーコは「そうですかー」と言って、そっぽを向いた。
61: :2008/03/12(水) 14:12:38.18 ID:
駄菓子屋は意外に迷うこともなく見つかった。
いかにも古臭く、周りにある家まで古いように感じた。
店主の姿は外からは見えなかった。
恐る恐る中に入って、とりあえず駄菓子を物色してみる。
いかにも普通の駄菓子屋で、うまい棒からポテトチップス、色付きゼリーまで
品揃えも割と良かった。
いかにも古臭く、周りにある家まで古いように感じた。
店主の姿は外からは見えなかった。
恐る恐る中に入って、とりあえず駄菓子を物色してみる。
いかにも普通の駄菓子屋で、うまい棒からポテトチップス、色付きゼリーまで
品揃えも割と良かった。
62: :2008/03/12(水) 14:13:24.20 ID:
ただ店主がいない。
アキラが奥の扉を開けてみたが、どうやらいないようだった。
「でもなにこれ、テレビついてるぞ」
アキラが言って、俺は眉をひそめた。そういえば夢の中でもテレビがついていた。
そして砂嵐が映っていて、俺はその後目が覚めたのだ。
俺とケーコも奥を覗き込んで、テレビがついているのを確認した。
テレビは夢と同じように、砂嵐だった。
アキラが奥の扉を開けてみたが、どうやらいないようだった。
「でもなにこれ、テレビついてるぞ」
アキラが言って、俺は眉をひそめた。そういえば夢の中でもテレビがついていた。
そして砂嵐が映っていて、俺はその後目が覚めたのだ。
俺とケーコも奥を覗き込んで、テレビがついているのを確認した。
テレビは夢と同じように、砂嵐だった。
64: :2008/03/12(水) 14:14:17.27 ID:
「すいませーん。誰かいませんかー?」
返事は無い。
俺たちは顔を見合わせた。店主はどこかに出かけているのだろうか。
店をほったらかして?ちょっと近くに出ているのかもしれないが…
それにしても店はおかしな雰囲気だった。
返事は無い。
俺たちは顔を見合わせた。店主はどこかに出かけているのだろうか。
店をほったらかして?ちょっと近くに出ているのかもしれないが…
それにしても店はおかしな雰囲気だった。
66: :2008/03/12(水) 14:14:59.19 ID:
ジュースが入っているケースを見ていたケーコが「あれ?」と声を上げた。
「これ、全然冷えてないよ。電源入ってない」
触ってみると、確かに冷えていなかった。
中に入っているチェリオはぬるいままだ。
「これ、全然冷えてないよ。電源入ってない」
触ってみると、確かに冷えていなかった。
中に入っているチェリオはぬるいままだ。
69: :2008/03/12(水) 14:16:15.81 ID:
よく見てみるとおかしなところがまだあった。
うまい棒やポテトチップス、その他駄菓子の賞味期限が全て、
2年近く過ぎていた。
気持ち悪くなって、駄菓子屋の外に出る。
あたりはすっかり夕暮れで、そろそろ帰らなければならない時間だった。
うまい棒やポテトチップス、その他駄菓子の賞味期限が全て、
2年近く過ぎていた。
気持ち悪くなって、駄菓子屋の外に出る。
あたりはすっかり夕暮れで、そろそろ帰らなければならない時間だった。
71: :2008/03/12(水) 14:17:08.58 ID:
今思えば、もう少し駄菓子屋の中を調べてみればよかったかもしれない。
ただその時は、それ以上調べてみようという気力も、時間も無かった。
夕焼けの中を家路についた。
アキラもケーコも口数は少なかった。
よく分からない気味の悪さを、2人とも感じていたのだと思う。
ただその時は、それ以上調べてみようという気力も、時間も無かった。
夕焼けの中を家路についた。
アキラもケーコも口数は少なかった。
よく分からない気味の悪さを、2人とも感じていたのだと思う。
73: :2008/03/12(水) 14:18:18.23 ID:
少し涼しくなった町の中を、ほぼ無言でとぼとぼと3人で歩く。
「夕飯何かな」
ポツリとアキラが呟いて、ケーコが
「たぶんカレー。それかシチュー」
と答えた。台所で材料を見かけたのだろう。
俺はその会話をどうにか膨らませようと考えたが、結局何も言わなかった。
駄菓子屋のことも、もちろん、誰も言い出さなかった。
「夕飯何かな」
ポツリとアキラが呟いて、ケーコが
「たぶんカレー。それかシチュー」
と答えた。台所で材料を見かけたのだろう。
俺はその会話をどうにか膨らませようと考えたが、結局何も言わなかった。
駄菓子屋のことも、もちろん、誰も言い出さなかった。
77: :2008/03/12(水) 14:19:15.04 ID:
「夕飯食べてくか?」と聞かれたが、それを断って、
俺はアキラたちと別れた。
あたりが薄暗くなるにつれて、セミの声はなくなっていった。
アスファルトはすっかり冷めていて、隣の家の犬はどうやら散歩に出かけているようだった。
玄関を開けると、すかさず母親の声が
「靴下脱いでから上がってよー!」
と飛んできた。手洗いとうがいをしてから台所に行き、
「夕飯なに?」と聞くと、
「それより先にただいまは?」と返された。
しょうがないので、俺は言う。
「ただいま」
俺はアキラたちと別れた。
あたりが薄暗くなるにつれて、セミの声はなくなっていった。
アスファルトはすっかり冷めていて、隣の家の犬はどうやら散歩に出かけているようだった。
玄関を開けると、すかさず母親の声が
「靴下脱いでから上がってよー!」
と飛んできた。手洗いとうがいをしてから台所に行き、
「夕飯なに?」と聞くと、
「それより先にただいまは?」と返された。
しょうがないので、俺は言う。
「ただいま」
80: :2008/03/12(水) 14:20:42.20 ID:
その後どれだけ探しても、不思議なことにその駄菓子屋に辿り着くことができなかった。
同じ道を歩いているはずなのに、いつのまにか違う道に出てしまっている。
誰に話しても信じてくれるはずはなかったし、実際にもうどこにも駄菓子屋は無かった。
俺たちの記憶の中にだけある駄菓子屋は、だが確かにあの日、存在していたはずだ。
そのおかげであの夏の日の風景は、俺の中に一際鮮やかに焼きついている。
思い返すと、不思議なことに一番に頭に思い浮かんでくるのは
あの駄菓子屋の古ぼけた看板だ。
そこにはかすれた字で、大きくこう書かれてあった。
「IDの数だけ腹筋な」
おしまい
同じ道を歩いているはずなのに、いつのまにか違う道に出てしまっている。
誰に話しても信じてくれるはずはなかったし、実際にもうどこにも駄菓子屋は無かった。
俺たちの記憶の中にだけある駄菓子屋は、だが確かにあの日、存在していたはずだ。
そのおかげであの夏の日の風景は、俺の中に一際鮮やかに焼きついている。
思い返すと、不思議なことに一番に頭に思い浮かんでくるのは
あの駄菓子屋の古ぼけた看板だ。
そこにはかすれた字で、大きくこう書かれてあった。
「IDの数だけ腹筋な」
おしまい
75: :2008/03/12(水) 14:18:46.47 ID:
前にこのスレ見たぞww
83: :2008/03/12(水) 14:22:35.21 ID:
>>75
やあ
eoの規制が解除された記念だよ
やあ
eoの規制が解除された記念だよ
84: :2008/03/12(水) 14:22:40.82 ID:
俺・・・・生きてきた中で・・・こんなに腸煮えくり返ったの久しぶりだよ
ありがとう
ありがとう
87: :2008/03/12(水) 14:23:18.27 ID:
今回は俺の負けだ
93: :2008/03/12(水) 14:28:06.59 ID:
ここまで完璧に騙されたのは初めてです
96: :2008/03/12(水) 14:30:03.58 ID:
やられたwwwwwwwwww腹筋してくるわwwwwwwwwww
100: :2008/03/12(水) 14:32:01.92 ID:
センセイ、どう考えても7620回は無理す
コメント
コメント一覧 (1)
コメントする