1:2012/02/20(月) 19:10:36.45 ID:
ひーちゃんは中学生の頃に三人殺した
父、母、兄の三人だ
自殺しようと思って、自宅に火をつけた
はた迷惑な野郎だ

そしたらひーちゃんだけが助かってしまった
やっちまった、とひーちゃんは思った
いい人達だったのに燃やしちまった

5:2012/02/20(月) 19:12:26.73 ID:
家が無くなり、家族が全員死んで、
親戚の家で暮らすことになったひーちゃんは、
「いざとなったらもう一回自殺すればいいや」と思い、
そしたらけっこう生きるのが楽になった

火をつけたのがひーちゃんだとは誰も思わなかった

7:2012/02/20(月) 19:14:18.74 ID:
高校は遠い、勉強は難しい、親戚は優しい、
多忙な生活の中で、ひーちゃんはふつうの人間になっていった

「なんで自殺なんかしたんだろう?」と思うようになった
中学の頃の俺は、頭がおかしかったんだ

8:2012/02/20(月) 19:16:31.95 ID:
ひとごろしのひーちゃんは、
奨学金を使って大学へ進学し、一人暮らしを始めた

全ては順調に行っているように見えたが、
春の終わりごろから、寝不足に悩まされるようになった

兄が寝させまいとしてくるのだ

確かに悪いのはひーちゃんの方なので、
そういうことをされても仕方ないとひーちゃんは思った

9:2012/02/20(月) 19:18:13.27 ID:
眠りにつくその瞬間、ふっと目が覚めて、
窓なんかに目をやると、兄がこっちを覗いている
死んだときの姿そのままで

あまり気持ちの良いものではない
率直に言ってびっくりする
正直さいしょは悲鳴をあげた

直接的な何かをしてくるわけではないが、
ひーちゃんは着実に弱っていった

10:2012/02/20(月) 19:21:06.85 ID:
授業中に居眠りをするようになって、
ひーちゃんはある法則を発見した

人前で寝る分には、兄は現れない

教室や食堂など、人の集うところだと、
ひーちゃんは安心して寝られるようになった
一人でもひーちゃんの存在を意識している人がいれば、
ひーちゃんはよく寝ることができた

13:2012/02/20(月) 19:24:24.96 ID:
じゃあ友達に手伝ってもらえば寝られるじゃん!
しかしひーちゃんには友達がいなかった

罪の意識からくる自分への戒めなのか、
単純に人付き合いが苦手なのか分からないが、
とにかくひーちゃんには友達がいなかった

眠くなると、近所のマックやドトールに行って迷惑がられた
それでも睡眠時間はろくにとれなかった

14:2012/02/20(月) 19:27:50.00 ID:
なにこれ怖い

15:2012/02/20(月) 19:27:53.61 ID:
たぶんひーちゃんは寿命が残り少なかった
ひーちゃんもそれを自覚していた

兄は本気でひーちゃんを連れていくつもりだった
ひーちゃんも仕方のないことだとは思った

むしろ、父と母が同じように現れないのが不思議だった
親と言うのは心が広いんだなあ

18:2012/02/20(月) 19:31:25.35 ID:
兄が両親を引き止めていたオチ禁止

19:2012/02/20(月) 19:31:45.23 ID:
一生懸命生きてきて、自分の人生に愛着も湧いていたが
一方で、そんなに生き残りたいとも思わなかった

ただし、積極的に死のうという気もなかった
そのうち目が悪くなり、耳も遠くなってきた
起きてるんだか寝てるんだかも曖昧になってきた
23:2012/02/20(月) 19:35:22.69 ID:
その日もひーちゃんはイオンのフードコートで寝ていた
携帯がガタガタいう音で目が覚めた
そういえば携帯って振動するんだっけ

ひーちゃんが携帯をぱかっと開けると、
なんと着信が五件もきていた
これはひーちゃん的には一年分に相当する

26:2012/02/20(月) 19:39:08.67 ID:
選択科目の授業でペアを組んでいる相手だった
授業のことで何かあったのだろうか
あわててひーちゃんはリダイヤルした
咳払いをして声を整えた

死期が近づいていると分かっていても
相変わらずどうでもいいことが気になる
単位なんてとっても仕方ないのだが

27:2012/02/20(月) 19:41:46.41 ID:
「寝てた」とひーちゃんは言った

「だろうと思った」と相手の子は言った

しょっちゅう隣の席で寝ているから
ひーちゃんがよく寝る人だということは知っていたようだ

ひーちゃんは聞いた、「で、何の用事?」

「ほら、あれ、水曜一限の課題」

「なんかあったっけ?」

「今日の六時までのやつ」

「それ、大事なやつ?」

「はあ?」お怒りの様子だ

28:2012/02/20(月) 19:44:05.09 ID:
「それって、成績に響く?」ひーちゃんは聞いた

「これやんないと単位もらえない、超大事」

「分かった。大学行けばいい?」

「いや、君んちの傍にいる」

「え? 知ってんの?」

「前授業で言ってたじゃん」

「あー。でも俺、今イオンにいる」

「はあ?」

授業の時も、しょっちゅう「はあ?」と言うので、
ひーちゃんはこの子のことを、頭の中で「はーちゃん」と呼んでいた

29:2012/02/20(月) 19:47:06.52 ID:
「早くこっちきてよ」

「三十分くらいかかる」

「はあ? さっさと来てよ」

ひーちゃんは原付を飛ばして帰った
人と話すのは久しぶりだった
自分ってこういう話し方だっけ? と思った

アパートにつく
ドアの前に、はーちゃんが座っていた

明るい髪色で、目がパンダのはーちゃん
ひーちゃんが一番苦手なタイプだった

31:2012/02/20(月) 19:50:50.53 ID:
「ここ、パソコンある?」とはーちゃんが聞いた

「ある。ネットには繋がってないけど」

「じゃあ、ここで作業するよ。もう時間ないし。いいでしょ?」

「いいですよ」

はーちゃんはひーちゃんの部屋に入って
ひととおり物の無さと生活の質素さに驚いて
四回「はあ?」って言ったあと、課題をはじめた

ひとごろしひーちゃんにとって、ここは生活空間ではないのだ

32:2012/02/20(月) 19:55:38.03 ID:
まずいことに、その課題の趣旨は
「相手がこれまでどのように育ってきたか」を
インタビューしてレポートにまとめるというものだった

まずひーちゃんがはーちゃんにインタビューした
三歳からピアノを始めた、小学校から塾に通った
中学は体操部に入った、高校は女子校
はーちゃん、意外とお嬢様だった

33:2012/02/20(月) 19:56:50.36 ID:
これは・・・

34:2012/02/20(月) 19:57:13.54 ID:
ひーちゃんサウナとかスパ銭だと仮眠室あるから
人前で寝れるし迷惑がられないよ
ホモに誘われるかもしんないけど断ればいいよひーちゃん

35:2012/02/20(月) 20:00:38.52 ID:
ひーちゃんは聞いた
「どうしてお嬢様が、そんなんになっちゃったんだ?」
はーちゃんは少し間をおいて答えた
「良い本や良い音楽と巡り合ったから」

はーちゃんの口からそんな言葉を聞くとは思わず
ひーちゃんはなんか久々につぼに入って笑った
実に久しぶりだった

ひーちゃん的には爆笑だったのだが
はーちゃんには薄ら笑いを浮かべてるようにしか見えなかった
はーちゃんはちょっと不機嫌になった

36:2012/02/20(月) 20:01:50.31 ID:
ところがその本や音楽について聞いてみると、
ひーちゃんの趣味と結構似ていた

ひーちゃんがそれらのCDや本を持っていると言うと、
はーちゃんは「知ってるよ。そこにあるやつでしょ」と言った
「はあ?」って言ってもらえなくてひーちゃんがっかりした

38:2012/02/20(月) 20:05:02.78 ID:
>>36
ひーちゃんがっかりした

なんで可愛く言ったの?www

37:2012/02/20(月) 20:04:46.38 ID:
はーちゃんの好きなグールドのCDを流しつつ、
ひーちゃんの人生についての説明が始まった

壮絶過ぎてはーちゃんコメントに困った
もちろん自殺については隠したが

はーちゃんは話題を逸らすことにした

「さっき、電話で『寝てた』って言ったよね?」

「うん。寝てた」

「イオンで寝てたわけ?」

「そういうこと」

はーちゃんますます混乱した

41:2012/02/20(月) 20:07:27.85 ID:
はーちゃんは聞いた、
「君、一日何時間寝てるの?」

「量だけなら、六時間くらい」

「昼夜逆転型なの?」

「特殊な不眠症なんだ」

はーちゃんはひーちゃんの顔を見た
明らかに睡眠不足の顔だった

でこぴんすると二秒遅れて「痛い」と言った
反応速度とかも相当にぶっている
これは重傷だ、とはーちゃんは判断した

43:2012/02/20(月) 20:10:27.97 ID:
互いのインタビューが終わり、二人はレポートを書きはじめた
ひーちゃんが一足先に書き終えた

ひーちゃんは眠気で頭がどうかしているので、
はーちゃんに馴れ馴れしく話しかけた
「早く書けよ、はーちゃん」

「うるさいなー、急いでるよ」

「そっちが終わらないと俺も終わらないんだから」

「てか、はーちゃんって誰だよ」

ひーちゃんはあだ名について説明した
以後、はーちゃんはあんまり「はあ?」って言わなくなった

47:2012/02/20(月) 20:12:42.23 ID:
「あとどれくらいかかる?」とひーちゃんは聞いた

「二十分くらい……」

「寝よ。終わったら容赦なく起こして」

はーちゃんはキーボードを叩く手を止めた
「なんでいっつもそんなに眠いの?」

「人がいるとこでしか寝れないんだよ」

「はあ?」

「信じなくてもいい」、ひーちゃんは笑った

49:2012/02/20(月) 20:14:28.45 ID:
実話?

50:2012/02/20(月) 20:16:05.56 ID:
ひーちゃんは熟睡した
はーちゃんはレポートを仕上げたあと、
喉が渇いたので、外の自販機まで行った
赤い夕焼けで、皆が空を見上げていた

冷たいコーヒーを二つ買って戻ると、
さっきまでいた部屋から、ガラスが割れる音がした

51:2012/02/20(月) 20:18:24.12 ID:
「なに、今の?」戻ってきたはーちゃんは聞いた

「ゴキブリがいたから殺そうとしたんだよ」

ひーちゃんは笑って言った
携帯を投げて窓を割ったらしい

「顔、真っ青だよ?」

「ゴキブリ、苦手なんだ」ひーちゃんは答えた

53:2012/02/20(月) 20:20:04.74 ID:
ガラスを集めながら、はーちゃんは理解した

この人、本当に、人がいるとこでしか寝れないんだ
ていうか、寝れない以上の何かがあるんだろうな
マジあたまおかしーんじゃねーの

「……寝れないなら、友達とか、呼べばいいじゃん」

「見りゃ分かるだろ、友達いないんだよ」

そんで家族は一人もいない、か
はーちゃんはひーちゃんの頭を撫でてあげたかった
でも不気味がられるだろうからやめておいた

54:2012/02/20(月) 20:23:10.23 ID:
変なとこ見られちゃったなあ ひーちゃんはちょっと気まずかった
二人はようやく完成したレポートをメールで送り、
はーちゃんはここにいる理由がなくなった

はーちゃんは立ち上がった
CDをポリーニに換えて戻ってきた

「まだなんかあった?」とひーちゃんが聞くと、

「さっきの話、全部本当だよね?」とはーちゃんは言った

「ゴキブリってのは嘘だ」とひーちゃんは答えた

57:2012/02/20(月) 20:25:17.44 ID:
「ゴキブリってのは嘘だ。俺、ちょっと頭おかしくてさ。
 一人で寝ようとすると、眠りについた瞬間にふっと目が覚めて、
 全身焼けただれた兄がこっちを見てるっていう幻覚を見るんだ」

「……はあ?」

「マジだよ、はーちゃん。おかしいよな」

ひーちゃんが笑った
ひーちゃんが笑うタイミングが、
なんとなくはーちゃんには分かった気がした

60:2012/02/20(月) 20:29:05.48 ID:
はーちゃんはしばらく黙っていた
音楽のおかげで、沈黙は苦痛ではなかった
窓から差し込む西日が部屋を赤く染めた

はーちゃんはひーちゃんを横からどついた
弱っていたひーちゃんはあっさりソファの上に倒れた

「寝なさい」とはーちゃんは言った

ひーちゃんは頷いて眠った

61:2012/02/20(月) 20:30:39.83 ID:
ひーちゃんはびっくりするほどよく眠った。

62:2012/02/20(月) 20:34:09.76 ID:
ひーちゃんが目を覚ました
うつらうつらしているはーちゃんが横にいた

「おはよう」とひーちゃんは言った

「ん? ……ああ、おはよう」

時計を見て、ひーちゃんは驚いた
「七時間、ずっとここにいたんだ?」

「ん、まあ。本もあったし」
はーちゃんは慌てて本を掲げてそれを証明した
本が逆さまであることに関して
ひーちゃんは特に何も言わなかった

63:2012/02/20(月) 20:35:49.35 ID:
重松清系の怖さに近いのかな このテンポと文体が誰かを思い起こさせるんだけど
わかんね

64:2012/02/20(月) 20:36:57.71 ID:
こわいおもしろい
こわいおもしろい

65:2012/02/20(月) 20:37:19.68 ID:
ひーちゃんはお礼を言った
「ありがとう。あと、コーヒーありがとう」

「君、人にちゃんとお礼言えるんだね」
はーちゃんは目を逸らして言った

「言えるよ。君こそ、人に優しくできるんだね」

「別に。あー眠い」

はーちゃんはすぐに眠りだした
ひーちゃんは外に出て、久しぶりに心地よく伸びをした

よく寝たー。

66:2012/02/20(月) 20:39:05.00 ID:
あだ名的にもみーまーっぽい雰囲気

67:2012/02/20(月) 20:40:29.20 ID:
二時間後、はーちゃんが目を覚ました
ひーちゃんのソファを使っていたことに気づき、
気まずそうな顔で丁寧になおした

「寝ちゃった」とはーちゃんは言った

「おはよう」

「おはよう……帰るね」

「ん、じゃあ」

はーちゃんは目をこすりながら出ていった

ひーちゃんはその光景を一生忘れないと思う
もうすぐ死ぬから当たり前と言えば当たり前か

あんまり死にたくないなあ、とひーちゃんは思った
でもそういうわけにもいかないのだ

69:2012/02/20(月) 20:43:23.18 ID:
わふー

ひーちゃん何で死んでしまうん

70:2012/02/20(月) 20:43:31.94 ID:
以来、はーちゃんはときどき手伝ってくれるようになった

「ひーちゃん、ひーちゃん」

「んー?」

「最近寝てる?」

「寝てない」

「寝る?」

「寝さして」

二人でいるときは、いつもどっちかが寝てるから
あんまり言葉を交わすこともなかったが、
ひーちゃんもはーちゃんもその時間がとっても好きになった

71:2012/02/20(月) 20:47:03.20 ID:
はーちゃんいい子
マジいい子

72:2012/02/20(月) 20:47:25.39 ID:
ちなみにこれを書き込んでいるテキストファイル名がヒーハーであることは言うまでもない。

73:2012/02/20(月) 20:48:30.93 ID:
何故今言った

74:2012/02/20(月) 20:49:21.34 ID:
はーちゃんが好きな煙草はキャスターだった

「部屋ん中で煙草吸わないで」

「いいじゃん、どうせもうすぐいなくなるんでしょ、きみ」

「おいしいか、それ?」

「まさか。おいしいわけないじゃん」

「吸うなよ」

「だって私に煙草が似合うんだもん、しょうがないじゃん」

「似合わないよ。あと、髪染めるのも似合わない」

「似合うし」

「化粧濃い」

「うっせー」

はーちゃんの化粧は徐々に薄くなり始めた

76:2012/02/20(月) 20:51:23.75 ID:
はーちゃんは俺の嫁

77:2012/02/20(月) 20:53:09.67 ID:
大学には保育科のためのピアノ練習室があった
講義の合間に、ひーちゃんが眠くなったとき、
はーちゃんはそこにひーちゃんを連れ込んだ

はーちゃんは定番のゴルドベルク変奏曲を弾いて、
ひーちゃんはピアノカバーにくるまって寝た

音楽室は外の音が全く聞こえなかった
はーちゃんはひーちゃんが起きるのを待つ間、
試験範囲をバカにも分かりやすくまとめることにした
自分がそこまでしてあげる理由が分からなかった

78:2012/02/20(月) 20:54:30.94 ID:
セツナイ

80:2012/02/20(月) 20:56:05.67 ID:
はーちゃんがいても兄が現れるようになったことは言わないでおこう。

82:2012/02/20(月) 20:57:50.93 ID:
マジかよ、ひーちゃん終わりじゃねぇか

84:2012/02/20(月) 20:59:22.84 ID:
「なんで自殺しようと思ったの?」

その頃にははーちゃんも、ひーちゃんの自殺未遂で
家族が全員死んじゃったってことを知らされていた

「生きてて楽しくなかったんだ。本当に深い理由はない。
 当時の俺は知的生命体じゃなかったんだよ」

「それで死ぬなんて、馬鹿じゃないの?」

「そう、馬鹿だったんだ。けっこう生きるの楽しいのにな」

そう言った後で、ひーちゃんはちょっと嫌な気持ちになった
ひとごろしのひーちゃんは三人も殺したのだ
楽しい楽しい人生を三つも焼却してしまった
殺されても文句は……あるよな、それでも

85:2012/02/20(月) 21:03:22.18 ID:
「罪ってのは永遠に許されないもんだと思う?」

ある日ひーちゃんは唐突にそう言った

「そうだなあ」とはーちゃんは考えた

どうにもうまい慰めの言葉を思いつけなかった
だって、確かにひーちゃんは悪いやつなのだ

今のひーちゃんは絶対に悪さはしない、
いわゆる「更生した」ひーちゃんだけど、
三人殺してしまったことが許されることはない

86:2012/02/20(月) 21:06:37.40 ID:
困り果てたあげく、はーちゃんは、
「私は君のこと好きだよ」と言った

「はぐらかさないで」とひーちゃんは言った

「そっちこそはぐらかさないで」とはーちゃんも言った

ひーちゃんは眠気で理解力が落ちていて、
はーちゃんが何を言いたいのか分からなかった

87:2012/02/20(月) 21:11:03.47 ID:
はーちゃんはひーちゃんをソファに押し倒した

「気にすんなよ。寝なさい」

でもひーちゃんは目を開けたままだった

はーちゃんはソファに座り、ひーちゃんの頭を膝に乗せた
ひーちゃんますます眠れなくなった

88:2012/02/20(月) 21:12:22.16 ID:
大学生の癖に可愛いやつらめ
90:2012/02/20(月) 21:17:26.25 ID:
はーちゃんはちょっと考えた これ、二人で住んだ方が効率いいよなあ
そうしたらいちいちお互いの家まで来なくて済むし、
家賃も安くなるし、私ひーちゃん好きだし

ようやく寝息を立て始めたひーちゃんの
頭をそっと撫でながら、はーちゃんは決めた
ひーちゃんが起きたら、一緒に暮らそうって言おう

91:2012/02/20(月) 21:19:47.40 ID:
おい…

93:2012/02/20(月) 21:21:36.58 ID:
「おはよう」ひーちゃんが起きた

「おはよう。よく寝れた?」

「正直、緊張してあんまり寝れなかった」

「あはは。だっせー」

「嬉しいけど、こういうのは困る」

「そっか。次もやろうっと」

「暗いから気を付けて帰りなよ」

「うん。じゃあね」

はーちゃんは手を振って家を出た
ひーちゃんはドアが閉まってもしばらく手を振っていた

94:2012/02/20(月) 21:22:06.50 ID:
やめたげて…

95:2012/02/20(月) 21:22:51.10 ID:
はーちゃんが帰ると、ひーちゃんはもう一度眠った。

96:2012/02/20(月) 21:23:28.26 ID:
>>95
エッ

98:2012/02/20(月) 21:24:36.37 ID:
翌日はーちゃんが部屋を訪れると、
ひーちゃんはもういなかった
鍵は開いていたので、はーちゃんは待つことにした

100:2012/02/20(月) 21:27:55.29 ID:
はーちゃんはちょっと寂しかった
十六時間くらいそこで寝たり起きたりした

裸足のまま外に出てみた
虫の声がひりひりきこえた
夏の匂いは濃すぎるくらいだった

「ねえ、映画観に行こうよ。ひーちゃんは寝ててもいいからさ」

はーちゃんはひとりごとを言った

「殺人犯が酷い目にあうやつ。一緒に見に行こうよ」

ひーちゃんがしかめづらをするのを想像して、はーちゃんは笑った

「あと、ついでにさ……こうやって行き来するのも面倒だし、一緒に住みませんか?」

なんで敬語なんだよ、と言われるのを想像して、はーちゃんは笑った

そんで泣いた

102:2012/02/20(月) 21:32:14.23 ID:
だからそれ以来、はーちゃんはしおらしくなった
煙草をやめて、髪も黒くして、化粧も薄くなった
ひーちゃんが見ても、私だと気づかないだろうな

ひーちゃんの部屋から持ち帰ったCDをかけて、
はーちゃんは自室で今日もうつらうつらする

膝に乗せたひーちゃんの頭の重みを思い出しながら、
手に触れる硬い髪の感触を思い出しながら。

103:2012/02/20(月) 21:33:03.06 ID:
以上でひーちゃんとはーちゃんの話、お終い。
最後まで読んでくれた人は暇人。ありがとう暇人。
そして久しぶりの宣伝。
http://fafoo.web.fc2.com/other.htm

101:2012/02/20(月) 21:31:52.00 ID:
なんだろこれ…

泣ける

泣いてる

外なのに…

恥ずかしいわ

104:2012/02/20(月) 21:34:04.04 ID:
ひーちゃん‥‥
107:2012/02/20(月) 21:35:28.52 ID:
>>103


-次回予告-

寝ようとする→ひーちゃんの変死体がこっちを見ている→起きる

108:2012/02/20(月) 21:35:37.70 ID:
スレタイからは想像できなかった
切ない乙

111:2012/02/20(月) 21:37:11.93 ID:
死ぬ前に自ら消えるなんて猫みたいだな

112:2012/02/20(月) 21:37:19.06 ID:
やっぱり岩と縄の人か

これで終わりかよ……残念だ

※参考→「はー い静かに。じゃ、俺が岩と縄を見て思ったことを話します。【読み物】
元スレ: