605:03/03/06 00:30 ID:
私の知人Uの体験談を書かせて頂きます。

夏、Uは友人4人と川魚を釣るため、渓谷のコテージに泊まる事になった。
コテージに到着し、管理所でコテージの鍵と調理器具一式を借りていると、管理所のオヤジが、話し掛けてきた。

「あんたら、釣りしに来たのかい?それとも、怪談話かい?」

U達は、「怪談話?」と思いながら、こう答えた。

「釣りだよ。まー、季節が季節だから怪談話もするかも知れねーな。」

オヤジは、更に質問してくる。

「酒は、結構持ってきてるのかい?今夜は飲み明かすのかい?」

U達は皆、大酒のみで缶ビールをワンケースと焼酎を持って来ていた。

「あぁ。結構飲むと思うよ。でも、明日も釣りをするから、早めに寝ると思うけどな。」

その問いにオヤジは「・・・そうかい。ならまぁ・・」と答えた。

どうもオヤジの様子がおかしい。
U達は、気になり、

「なんだい?怪談話をして、遅くまで起きてると、なんかあるのかい?」

とオヤジに聞くと、オヤジは手の甲を胸の前で垂らし、こう答えた。

「いやぁー、男だけで泊まりに来るとなぁ、たまに出るんだよ。
特に怪談話をしていると、出やすいらしい。
それ目的で来る客も多いんだがなぁ。
結構前になるが、知らないで泊まりに来た客が、見ちまってな。
そんで、ショックでぶっ倒れちまって救急車で運ばれちまった。
だから、一応忠告しておこうと思ってな。」

606:03/03/06 00:31 ID:
そして、オヤジは続けてこう言った。

「あんたら、見たいかい?」

Uは、「ちょっと見てみたい。」と思ったが、周りの4人は反対の意見だったようで、

「勘弁してくれ。見たくねーよ。」

と口を揃えて即答されてしまった。それを聞いたオヤジは、

「そうかい。そうかい。見たくないかい。」

そう言うと、少し離れた高台にある小屋を指差した。

「ほら、あそこに小屋があるだろ。あれが共同便所なんだが、あそこで出るんだよ。
何が出るかってーと、“手”が出てきよる。 で、覚えておいて欲しいんだが、夜中に便所に行ったら、必ず便器をにらみ続けてくれ。」

Uは、「へぇ~」と興味津々で便所を見ていた。オヤジは更に話を続ける。

「便器をにらんでれば、その“手”は出てこない。
少しでも目を逸らすと、“手”が出てくるからな。
引きずり込まれないように、にらみ続けるんだよ。」

今まで怪現象の体験をした事がなく、幽霊等には興味津々のUだが、さすがに、
「汲み取り式に落ちるのは、勘弁。」と思ったらしく、オヤジに「気を付けるよ。」
と言い残し、管理所を離れた。
607:03/03/06 00:32 ID:
コテージに着くと、やはり格安だった為、単なる掘っ建て小屋で、便所は付いていなかった。
その日の釣果はそこそこで、持参した食材と釣った魚で飯を食い、あまった魚を肴に酒を飲み始めた。
ビールの利尿作用が聞き始め、Uの仲間4人は便所に行き始めた。
そして、便所から戻るたび同じ事を口にする。

「あの便所こえーよ。マジ出ても不思議じゃねぇー。」

Uは、4人の胆の小ささにゲラゲラ笑っていた。
当のUは、何故かその日は便所が遠く、もよおさなかった。

酒も入り、悪乗りしたUは、

「そんじゃー、そろそろ怪談話でも始めるか!」

と言い出した。
仲間の4人は、慌てて止める。しかし、Uはそんな事お構いなしで、一方的に話し始めた。
Uが話し終わると、仲間の4人も観念したのか、それとも酔っていた為か、怪談話を順番に話し始めた。

一通り怪談話も終わると、「そろそろ寝るか。」という事になった。
ビビりまくっている4人は、床に着く前に「もう、あの便所には行かない。」とコテージ
の周りの草叢で立ちションをした。
しかしUは、寝る前も尿意は無く、結局1回も便所に行かずに寝る事となった。
608:03/03/06 00:32 ID:
深夜Uは、ふと目を覚ました。
起きた瞬間、半端ない尿意が襲ってきた。膀胱が悲鳴をあげている。
「やばい、洩れる!」と布団から飛び起きると、Uはコテージを飛び出し、洩らさないように内股小走りで共同便所へ向かった。

便所に飛び込み、引き戸を閉めた。
さすがに、これは恐い。
裸電球の明かりは揺れ、壁はシミだらけでシミと木目は人の顔の様に見える。
管理所のオヤジが言っていた事をUは思い出し、和式の便器をにらむ。
しかし、Uにはもう余裕がない。
一気にジャージとパンツを膝まで下ろし、膀胱に貯まっていた尿を排泄した。
611:03/03/06 00:34 ID:
「はぁぁ・・・。」

決して、オヤジが言ってた事を忘れたわけではない。
放尿の快感が、気を緩ませたのだろう。いつものクセが、出てしまった。
Uには、放尿中「はぁぁ」と息を吐きながら、うっとりと見上げてしまうクセがあった。

便器から目を離した事に気付き、「あっ、しまった!」と思ったその時。
まどろむ瞳に何かが、映った。

青白いモノ。
女の顔?

Uは、「管理所のオヤジが、驚かせる為に、天井にお面を貼り付けたのか??」と思った。
が、その時、青白い“女の顔”の閉じていた目蓋は開き、ニタニタと笑った。

「あが、あが」

悲鳴をあげたい、なのに口は開いても、悲鳴が喉に詰まり口から外に出てこない。
尿が止まらない!でもジャージを上げなきゃ!そして逃げなきゃ!
右手はジャージを持ち、左手は引き戸にかけた。
「今だ、逃げろ!」と思った矢先、Uの見開いた目と青白い“女の顔”の白内障のような
濁った灰色の瞳と目が合ってしまった。

「あっ」

0コンマ何秒の空白。
いきなり、青白い“女の顔”が、ところてんを押し出すように、どぅるぅんと垂れ落ちてきた。
Uの視界を青白い“女の顔”が塞ぐ。
Uの喉を塞いでいた悲鳴は、固形物のように吐き出され、左手は渾身の力で引き戸を開いた。

「あがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

Uは、獣のような悲鳴を上げながら便所から勢いよく飛び出した。
しかし、ジャージとパンツが膝の動きを封じ足が前に出ない。
Uは、そのまま高台を転げ落ちた。
612:03/03/06 00:35 ID:
朝、管理所のオヤジにUは起こされた。
起きたUは、下半身丸出し、ジャージはびしょ濡れ、そして共同便所から5mほど離れた所で倒れていた。
Uは、慌ててジャージを穿くと、オヤジは笑いながら、

「あーあ、あんだけ念を押したのに。あんた、見ちまったんだろ?」

Uは、がくがくと頭を縦に振り、

「あ・・あ・・あぁ、み・・見た!」

と答えた。

「そーか。
まー安心しろ。
俺も何回か見てるけど、その後、呪われたり恐い思いはしてねーからさ。」

とオヤジは言うと、手を差し伸べ、Uを起こし上げた。
立ち上がったると、体中打ち身や擦りキズが出来ているのか、ズキズキと痛んだ。
Uは、オヤジに、

「あれは何だ?」

と聞くと、オヤジは、

「知らね。 何年か前から、いるんだよ。迷惑だから、お前さんが持って帰ってくれると、良いんだがね。」

と、洒落にならない事を笑って言った。



以上が、知人Uの体験談です。
Uは、この話を私にした後、ぼそりと呟いた。

「この話を聞いて、お前が持って帰ってくれると、良いんだがね。」
613:03/03/06 00:36 ID:
≪って事で≫

この話を聞いて以来、便所の天井を見る事が出来なくなりました。
おまけに、プッチンプリンが「どぅるぅん」を連想させるんで、
カップのまま食うようになりました。しくしく。

(私、かなり思い込みが激しくて、臆病なもので・・・)

なので、天井を見ない私は、Uが最後の一言をネタで私に言ったのか、本当に持ち帰って欲しかったのか判りません。
もし、もしですよ。話を聞いただけで、私が持って帰っていたら、イヤじゃないですか。

と、いう事で、もし私が持ち帰っていたら・・・。
ここでこれを読んだ誰かが、私のを持ち帰ってくれると、良いんだがね。
元スレ: