06673:2007/12/08(土) 23:00:33.91 ID:
第五部・最終章『もう俺は限界かもしれない』









「おはようございます」


この会社に勤めて1年を過ぎ、俺はこの日もいつも通りに出社した。


「マ男くん、おはよう」


藤田さんだ。例の過去話以来、俺と藤田さんはお互いに信頼できる関係を築いていた。
まぁそれでも、俺が藤田さんに依存寄りなのは否めないがな。



「すっかり春ですね。通勤途中、公園で桜が咲いてましたよ」
「そうだね。まぁ、私たちは花見できそうにないけどww」



ごもっともだ。



「そういえばマ男くん、今日は新卒の子が一人、入るみたいだよ」
「え、そうなんです?」



なんでまたこんな会社を新卒で受けちまったんだか・・・。
会社選びは慎重にしないとダメだろう。
10年前後もNEETやってた俺が言えるセリフじゃないがな。



「なんでも専門出で、シスアド持ってるみたいだから、完璧ド素人って訳でもないようだよ」
「珍しいですね。即戦力になりえますかね」
「いや、新卒だからね。正直な話、今の時点では分からないな」


確かにその通りだ。この会社は、知識どうこうの話ではない。
どれだけ早くソルジャーになれるか、どれだけ自力で駆け回れるかが最重要項目なのだ。
それが果たせなければ、新卒という一生に一度だけ手にする事が出来るブランドを失い、世をさまよう事となる。

他人の事ながらも、俺は正直、気の毒にと思えた。



「朝の十時から、応接室で紹介するみたいだから」


十時か。ていうか、紹介あるのね。俺の時は無かったのだが。
しかしどんな子なのだろうか。
どうせ俺の時みたいに、放置されるんだろうな。




そして、十時がやってきた。








679:2007/12/08(土) 23:07:43.27 ID:
珍しく社員全員が出揃い、新卒の子は応接室の入り口に立たされていた。男の子だ。
うーむ、イケメンだ。妻夫木 聡に似ているか。何より若い。色んな可能性を内に秘めているのが伺える。

「じゃ、木村くん、挨拶して」
「はい!」

木村くんか。中々、好感が持てそうだぞ。

「えーと、今日からこの会社に勤める事になりました、木村と申します!
 至らない事が多々あると思いますが、よろしくお願いします!」


と言い、軽くお辞儀する木村くん。
ささやかな拍手が贈られた。


「木村くんは、リーダーのチームに配属だから、みんなよろしく頼むぞ」
「おう、木村よろしくな」
「あ、はい!」


何という爽やかボーイか。こういう子を待っていたんだよ。やはり若いのは良い。


「それと、あと一人。派遣社員の竹中くんだ」


む、派遣社員も来るのか。
今回はどんな人だ? 
中西さんみたいな美人だったら嬉しいのだが。


「うーっす」


・・・。


「ども、派遣の竹中っす。よろしくお願いしまぁす」


こりゃーとんでもないのが来たな。







684:2007/12/08(土) 23:11:47.90 ID:
爆弾が届いたな・・・・で、例の彼は精神科から出てきたのか?








690:2007/12/08(土) 23:21:50.41 ID:
おいリーダーを更正させろwwwwwwww







689:2007/12/08(土) 23:21:48.21 ID:
「マ男さん、よろしくお願いします!」


え!?


「しゃーす」



えぇ!?



「マ男くん、頑張れ」



そ、そりゃ無いですよ藤田さん・・・。俺だって忙しいんですよ・・・。



「所で二人とも、俺が次期リーダーの井出だ。よろしくな」



変な自己主張をするんじゃない。



「よし、それじゃ仕事に戻るぞ」



雰囲気に呑まれ、俺は教育係になってしまった。しかも二人。
いや、竹中くんはバリバリらしいから、こっちは放置で良かろう。
しかし何をすれば良いのか全然わからん。
そりゃそうだ。俺は教育されずに来たわけだから教育方法が分からんのだ。
オマケに初めての後輩と来た。


「マ男さん、まずは何を勉強したら良いですか?」


え、えーと


「マ男さん、俺暇なんでテキトーに読んでていいっすかね?」


待て、勝手に動かないでくれ! あ、おい!



「VBかJAVAで良いですか?」



助けてくれ。







694:2007/12/08(土) 23:28:59.34 ID:
まるで雛鳥を抱えた親鳥だ。
自分の仕事が出来ない。とにかく早く指示を出して、退散するべきだ。


「ひとまず木村くんは、何の言語が得意なの?」
「僕はJAVAですかね。卒業研究でも使いましたので」
「そうか、わかった。じゃあVBの勉強しといて。あ、あとHTMLも。
 WEB系の開発で何かといじると思うから」
「わかりました。ありがとうございます!」


この子は好感が持てるな。


「マ男さん、本ないんすけどぉ」



問題はこの竹中だ。



「何の本?」
「大概の言語はあらかたマスターしてるんで、まぁテキトーに?」


し、知らんがな。何を言いたいのか、イマイチ理解できん。



「得意な言語はあるの?」
「あらかたっすね」



答えになってねぇ・・・。



「とりあえず、JAVAでも勉強しといて」
「メジャーなの行きますね、まぁいいけど?」



な、なんか腹立つな。井出やリーダーと同じ匂いがする・・・。
まさかとは思うが・・・。






704:2007/12/08(土) 23:36:47.70 ID:
指示を出し終え、俺は自分の席に戻り、仕事を再開する。
30分置きぐらいに二人を確認する。
うーむ、木村くんは真剣にやっているようだ。真面目タイプだな、彼は。
一方の竹中は・・・。


「マジかっけぇ」


何かブツブツ独り言を呟いていた。何をやってるのか。
ディスプレイを覗き込む。

壁紙がザクに変更されていた。

何やってんだよ・・・。



「あの、竹中くん」
「マ男さんじゃないっすか。このフォルム、マジイカしますよね?」


それはどうでもいい。


「今は休憩時間じゃないから、真面目にやってくれないかな」
「いや、俺ガチでバリバリなんで。参考書のプログラムとか余裕ですから」


そういう問題じゃない。
大体、参考書のプログラムなんて遊びじゃないか。



「木村くんも真面目にやってるし、竹中くんもやってくれないかな」




「チッ」



こ、こいつ・・・!?








711:2007/12/08(土) 23:40:05.32 ID:
井出臭がプンプンするぜ









708:2007/12/08(土) 23:38:22.17 ID:
もしかするとこの会社に初めて藤田さん以外の常識人が来たのかもしれない
木村君的な意味で







717:2007/12/08(土) 23:44:37.00 ID:
さすがにこれはいかん。報告だけでもしておかないと。


「すいません、リーダー」
「あ?」
「二人の新人なんですけど」
「上原に聞け」


コイツ絶対、これが口癖になってる。


「上原さんは居ませんって」
「知ってるよ」


じゃあ何がしたいんだよ・・・。


「木村くんの方は問題ありませんが、竹中くんがちょっと」
「自分で何とかしろよ」
「元よりそのつもりですが、報告だけしに来ました」
「む・・・そうか。はいはい、わかったよ」


こっちがはいはいだよ。


「マ男くん」


井出だ。





「竹中くん、俺に任せてみないか?」





猛烈にイヤな予感がする件。








721:2007/12/08(土) 23:46:20.83 ID:
まさか井出さん、失恋のショックで・・・うほっ。









724:2007/12/08(土) 23:49:19.17 ID:
井出と竹中のITコンビ結成か!?








726:2007/12/08(土) 23:50:10.30 ID:
>>724誰がうまいことを(ry







725:2007/12/08(土) 23:49:37.13 ID:
「いえ・・・一応、私が教育係となってますし」
「おい、マ男」


なんだ。


「井出に竹中を任せても良いぞ。それに一人で二人だと大変だ。井出に回せ」


いや待て。まだ竹中は修正可能範囲だ(たぶん
ここで井出に任せてみろ、それこそ終わるぞ。
派遣社員だからと言って、ここで諦めるわけには


「オッケー牧場!!」


はいはい、わかったよ・・・。
俺は木村くんに全力を注ぐよ・・・。


「マ男さん」

おっと木村くんだ。


「ん?」
「参考書のここの所なんですけど・・・」


この子は勉強熱心だな。
ただ単に参考書を読んで、そのままプログラミングをするだけじゃなく
自分でオリジナリティを加えて、独自のプログラムを組み込んでいた。

原型は参考書だが、こういう行為を行えるという事実が重要なのだ。
この子は伸びるぞ。


「ありがとうございましたっ!」


若い! 良いなぁ。





「これたまんねぇ!!」

井出の声だ。








729:2007/12/08(土) 23:52:08.16 ID:
>>「これたまんねぇ!!」


何が起こっているのか目に浮かびすぎるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww







741:2007/12/09(日) 00:00:58.86 ID:
何をやってるんだ。竹中のディスプレイを覗き込む。
またザクだ。角がついてる。


「この角付きはリーダー機なんすよ。ザクは小隊を組んでうんたらかんたら」
「ふんふん、それでそれでww」


おい。


「こいつらカラーリングは緑で統一してるんすけど」
「シャアザク!」
「そう、赤い彗星のうんたらこうたら」


おい、井出。


「やっべぇな、懐かしいww 俺もガンダム見てたなぁ。セーラさんが好きで好きで」


おい!!



「ちょ、井出さん」
「おぉ、ここでマ男登場! 主砲ってー!」


アホか、貴様。



「何やってるんですか」
「え? ガンダムの話」




んなこたーわかってるよ・・・orz






744:2007/12/09(日) 00:03:38.94 ID:
俺プログラムが好きでプログラマ目指してたがこのスレ見てるとちょっと考え直したくなるわ
専門学校にいってるんだがどうすればいいやら
趣味の範囲でとどめるか・・






760:2007/12/09(日) 00:11:59.79 ID:
働くなら井出の下のがいいなww










775:2007/12/09(日) 00:20:23.08 ID:
しかし、竹中のあの自信は何なのか。
ホントにバリバリならば、俺としては言うことはない。
勤務態度がアレだが、仕事が関わればそんな事など言ってられる暇など無いのだ。
い、いや、落ち着け。俺が気にするのは木村くんだけだ。
まず彼をソルジャーに育て上げないといかん。
今のうちにぬるま湯につけておくと、後が大変になるぞ。


「マ男さん、すいません」
「ん?」
「ここの所なんですけど、文字を切り出して表示したいんですよ」


substringだ。まだそこまで行ってないのか?


「確かJAVAでも出来たんですけど、コマンド忘れちゃってww」


この笑顔で教えてあげたくなるが、ここは抑える。


「VBでも使えるから、自分で調べてごらん。きっと見つかるよ」


これでどう答えるかだ。


「あ、はいww わかりました!」



素直で良い子だ。
後輩を持つって、こんな感じなんだな。






777:2007/12/09(日) 00:21:44.61 ID:
素直さって大事だなぁ。






792:2007/12/09(日) 00:30:15.59 ID:
昼休憩。

「マ男くん、お昼今日一緒にどうかな?」


藤田さんだ。


「えぇ、良いですよ」


いつもは会社でコンビニ弁当だが、藤田さんの誘いで近くのうどん屋に入る。
時間が惜しいので、極力外食はしないのだが、今回は仕方あるまい。


「どう、後輩とは?」
「うーん、まだ初日なので分からないですね。けど、木村くんは感じが良いですよ」
「そうか、実は私もそう思ってね。彼は私と君を二分割したような性格なんじゃないかな」


それはまだ早計ではないですか、藤田さん。


「そ、そうですかね・・・。私が半分入ってるのはマズイかとも思うんですが」
「ハハハww 良い意味でだよww ただ、木村くんは育て方次第で大きくなると思うよ」


つまり、俺次第でダメにも使えるようになるとも言っている。
まさに原石だと言うことか。


「彼は性格が良い。目上の人間に対して素直に言う事を聞くしね。
 まぁ、それが一概に良いとは言えないが」


確かにそうだ。
井出やリーダーの言う事を素直に聞いてしまうとなると、これまた話が変わってくる。


「そうですね・・・ちょっと様子見という意味でも、放置してみようと思います」
「時期を見誤らないようにね。彼は君とは違って、普通の人生を歩んできた学生だ。
 間違えた時に放置してしまうと、あっという間に潰れてしまうよ」


なんか話が難しくなってきたな。俺にできるのか?






804:2007/12/09(日) 00:36:57.66 ID:
今、木村君の未来はマ男に託されたッ・・・!!






814:2007/12/09(日) 00:40:31.28 ID:
会社に戻る。
木村くんはキーボードをいじっていた。昼飯食ったのか?


「木村くん、今は昼休憩だよ」
「あ、はい。さっきの切り出しが分かったんで、今調子が良い所なんです」


休める時に休んでおかないと、後がマズイ。
昼休憩はあと僅かしかない。


「ウチの会社は休憩時間が厳しいから、休める時に休んだ方が良いよ」
「でもあと時間も少しですし」


自分の信念を曲げないのか?


「ご飯食べないの?」
「たぶん平気です」


これはダメだ。割と頑固な面もありそうだな。
ここは一旦退いて、様子見にしておくか。
時計の針が16時を回った頃・・・



「すいません、マ男さん」
「ん?」
「お腹減ったんですけど・・・」


ほらな。
身体を動かさないから腹は減らない、って考えだったのかもしれん。
身体は使わずとも、頭を使ってるのだから、当然空腹は来るのだ。


「うーん・・・でももう休憩時間終わってるしな・・・」


助けるべきか、助けないべきか。藤田さんの、時期を見誤るな、が頭をよぎる。


「参考書を買いに行くついでに、ご飯食べて来ると良いよ」


新人を育てるのは大変だ・・・。







816:2007/12/09(日) 00:42:01.74 ID:
そして参考書を買いに行ったまま、木村君が戻ることはなかった・・・







824:2007/12/09(日) 00:42:58.62 ID:
これは・・・一歩間違えると・・・ダメになる恐れが出てきたかも試練









836:2007/12/09(日) 00:48:56.67 ID:
木村くんが部屋を出て行く。
ちょま、リーダーに一言ぐらい言わないとダメだろう。
まだまだ、どこか抜けている所があるな。やはり過度の期待は禁物だ。


「すいません、リーダー」
「あ?」
「木村くんなのですが、参考書を買いに行かせましたので」
「いちいち言わんでもいいよ、そんな事。それより仕事しろよ」



まぁ確かに。
席に戻り、仕事を再開する俺。
あれから成長したとは言え、まだまだ分からない所が多すぎる。



人は生涯勉強だな、これは。


「んで、ここがこうなるんだよ」


ん?


「おーなるほどww」


井出と竹中だ。なんだ、仕事もちゃんと教えてるじゃないか。


「所で井出さん」
「ん?」
「『==』と『Equals』の違いってなんすか?」
「一緒だよ」





ち、ちげーよ、バカ!





「なんで分けてるんすかね?」

「英語人のためでしょ」






本当のバカだ。








851:2007/12/09(日) 00:52:09.20 ID:
英語人のためワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww








867:2007/12/09(日) 00:58:24.80 ID:
「ただいま、戻りました」

木村くんが帰ってきた。あれ? 参考書持ってないぞ。


「おい、木村」
「はい」


マズイぞ。


「お前、参考書買いに行ったんだろ?」
「あ、はい」
「買ってねーじゃねーか」
「あ・・・はい」
「何しに行ってたんだ?」
「すいません、ご飯食べに行ってました」


おいおい、ちょっと待て。それはまずいよ。
素直すぎる。言い訳ぐらい用意しておくものだ。
もっとも、即席で作れる言い訳なんて、たかが知れてるがな。


「おい、マ男!」


き、来た。こりゃー面倒なことになりそうだぞ・・・。


「はい」
「お前、うちの休憩時間が厳しいの知ってるだろうが」
「そうですが」
「ですがじゃねぇ! お前、何を新人甘やかしてんだ」


コイツ、会社を刑務所か何かと勘違いしてないか?






875:2007/12/09(日) 00:59:45.88 ID:
木村君甘いな、甘すぎるよ。
行かせたマ男もだが、甘すぎるよ…








878:2007/12/09(日) 01:00:30.36 ID:
素直すぎるのも時には罪なんだな







908:2007/12/09(日) 01:07:36.79 ID:
「すいません、以後」
「リーダー、すいません。僕が、昼休憩にご飯食べなかったのがいけなくて」


木村くん、ホントに良い子だな。俺は少し


「てめぇは良いんだよ。マ男、お前が全部悪い」


何なんだ、この人は・・・。



「はい、すいません」


口答えすると面倒なことになる。
頭を下げるのが一番の得策なのだ。


「でも、本当に僕が」


木村くん、あのね。気持ちは嬉しいんだ。凄く。だけどね


「マ男さん、本当にすいません」


いいよ、許してあげる。


「木村、おまえ良い奴だな」
「すいません、ありがとうございます」




あのリーダーが良い奴!? 

井出タイプの人間じゃないのにか!?


べ、別の意味で凄い新人が入ったぞ。






939:2007/12/09(日) 01:16:13.00 ID:
こうして大した責めも無く解放された俺。
しかし、確かに休憩時間を越えてるのに飯はまずかった。
藤田さんがフォローに回らなかった事からも、それが伺える。次から気をつけねば。

定時が過ぎた。

入社日の俺は、ここで不満を募らせていた。
残業代も出ないのに、何でやらないといけないのかと。
木村くんを見る。
ディスプレイを凝視しているようだ。時計などには目もくれていない。

独走タイプの子なのか? 

確かに自分の世界に入ること、すなわち優れた集中力は、この業種では重要ではあるが
知らず知らずのウチに疲れがたまってたり、瞬きを怠ってドライアイになってしまったりと、弊害も少なからずあるのだ。
この子はあまり目を離さない方が良いな。


「木村くん」
「・・・」
「木村くん」
「あ、はい」


う、うーむ。


「別に仕事じゃないから、今日はもう帰って良いよ」
「はい、キリの良いところで帰ります」


そしてまたディスプレイ。
藤田さん、この子どうなんでしょう?
すると

「あー帰りてぇ」


竹中、お前は帰っていいよ。








964:2007/12/09(日) 01:25:12.67 ID:
うん・・・残業代・・・ね。休憩時間・・・ね。
うん、ありがとう。




「竹中くん、まだ頑張れるでしょ!」

井出だ。無駄だと思うよ。

「いやーもー無理っすよー。目もシパシパしてるし、なんか肩も痛いんすよー」

ほらな。

「じゃあ、ちょっとガンダムの話でもして、それからまた仕事再開しようぜ」
「あ、それいいっすね」

なんだと。


「ギレンってさーあれってハゲなの?」
「知らないっすよww てか髪あるでしょww」
「いや、あれ色的にキテない?」


井出と竹中。相性がかなり良いのか、上手く噛み合っている。
特に井出の竹中の使い方が非常に上手い。
こいつ絶対、店長とかやってたタイプだ(知らんけど


「よし、勉強再開しようか」
「えーもうっすか?」
「でないと、僕ちんも帰れないのー」
「しょうがねーなー。井出さん、俺に感謝してくださいよ」


井出さん、これでよくキレないな。








971:2007/12/09(日) 01:26:38.55 ID:
何故か新人とは全員うまくやっていってるなww
マ男の時はあんな状態だったのに。







34:2007/12/09(日) 01:34:05.48 ID:
残業2時間経過。
俺はもちろん、他の人も当然帰れない。二人の新人は除く。


「よし!」


木村くんだ。キリが良い所まで行ったか。


「マ男さん、ちょうど良い所まで行ったので、今日はこれで失礼しようかなって思うんですけど」
「あぁ、うん。けど、ちょっと待って」


一応、リーダーに聞いておくべきだ。
初日の俺は残業2時間で済まなかったからな。


「すいません、リーダー」
「忙しい」
「木村くんを帰らそうと思ってるんですけど」
「忙しいって言ってるだろうが。勝手に帰らせろよ」


すいません。


「木村くん、OKみたいだから帰って良いよ」
「あ、はい」


荷物をまとめて、席を立つ木村くん。


「では、おつかれさまでした!」
『おつかれさまでした』


木村くんの初日はこれにて終了。

一方の竹中くん、もとい、井出・竹中ペアはどうだ?





37:2007/12/09(日) 01:35:26.81 ID:
なんという爽やかさ
にしてもリーダーの邪険な態度に違和感を感じなくなってきてしまった、どういうことだろう






41:2007/12/09(日) 01:36:07.87 ID:
上原さんいなくてもまわってるのか?wwwwwwwwww






62:2007/12/09(日) 01:43:56.31 ID:
「あーだりぃ」

ですよね。


「よし、これが出来たら帰っていいよ!」
「できないっすよー」


これでどう切り返す、井出さん。


「わかった。じゃあ、30分まで頑張ってみようよ」


コイツ結構上手いな。
今の業種より、こっち関係の仕事に就いたほうが良いのではないか。


「しょうがねーなー。解けたら何かしてくれます?」
「してあげるよ」
「じゃあやります」


意味が分からないが、何だかんだで上手くやっている。
これは学ぶべき所だ。木村くんに使ってみよう・・・って、木村くんは使う必要が無さそうだな・・・。

井出さんも井出さんで、ちゃんとした知識を持ってくれれば良いのだが・・・。
あと空気読んで欲しい・・・。


「うーん」


30分は過ぎている。
しかし、音をあげない竹中。井出さん、あなた結構凄いな。
そして


「できたぁ!」
「げぇ、マジで出来たの?」
「ほら、これ」
「うわ、マジだ。しょうがねぇなぁ」



ハゲチャビンって何だよ。







66:2007/12/09(日) 01:44:55.61 ID:
ハゲチャビンに期待wwwwwwwwwwwwwwwwwwww










71:2007/12/09(日) 01:46:05.20 ID:
井出のことちょっとだけ好きになったwwwwwwwwwwwwww







84:2007/12/09(日) 01:52:00.26 ID:
「ハゲチャビンしてくださいよ」
「わかったよ、しょうがねぇ。男に二言は無い!」

そう言ってデコをマッハでかき上げる井出。


「ハゲチャビン!!」


両手でパァンッ!と手を叩きつける井出。


「ぶわはははwwwwwwww」


爆笑する竹中。

・・・。


ついていけん。何やってんだ、あの二人は。






俺はここで一つの事柄に気付いた。全く相反するタイプの二人の人間。
すなわち、木村くんと竹中だ。
そして教育係の俺と井出。そう、俺と井出も相反するタイプだ。
井出は知らないが、俺は正直な話、井出とは親しくなりたくない(ごめんね

リーダーは計算してやったのかどうかは知らないが、この人選はGJと言わざるを得ない。
そして何より、お互いがお互いの後輩を育て上げる競争、つまり切磋琢磨だ。
この状態に現在なっている。

偶然なのか、計算なのか、それは知らないが、俺は少しリーダーを見直した。






90:2007/12/09(日) 01:53:40.48 ID:
リーダーが・・・・リーダーらしくリーダーをしている・・・!?

あぁ紛らわしいなもう!!










102:2007/12/09(日) 01:59:32.15 ID:
「じゃーおつかれっしたー」
「おーおつかれー」


竹中くん帰宅。これで両新人が帰ったことになる。


「おい井出」
「はい、なんでしょう」
「お前人事やれよ」
「ちょまww」
「まぁ、人事なんてこの会社に居ないけどな」
「しかしリーダー、竹中くんは良いですよww」
「見てりゃ分かるよ。あいつ使えれば正社員として雇いたいと思ってるから、ちゃんとお前育てろよ」
「任せてくださいよ」


うーむ、リーダーは井出さん贔屓だから、リーダーの評価では俺は勝ち目無いぞ。
いや、別に給料に反映されるわけでもないし、何か評価が上がるわけでもないが。

井出に負けるのは納得いかん。

藤田さんに今日の評価を聞きに行く。







123:2007/12/09(日) 02:06:22.46 ID:
派閥
【マ男派】マ男、木村
【井出派】井出、竹中
【リーダー派】リーダー、上原さん




上原さんに頑張ってもらいたい







124:2007/12/09(日) 02:06:24.10 ID:
「すいません、藤田さん。少しよろしいですか?」
「うん?」
「今日の新人教育なんですけど、私の方法で何か問題ありそうでした?」


まずは問題点を聞く。あればそれを改善しなければならない。


「うーん、全部は見てないから分からないけど、休憩時間はまずかったよね」


ですよね・・・。やっぱそうですよね。


「時間は厳守させないと、尾を引いてしまうから、そこんとこは気をつけないとダメだよ」
「はい、すいません」


時間厳守は社会人の基本でした・・・。


「他は良いんじゃないかな。木村くんはマ男くんと相性良いみたいだし、成長株だと思うよ」

なるほど、藤田さんの評価は木村くん寄りという所か。



「ただ、教え方は井出さんの方が上手いね。
 竹中くんの性格をきちんと掴んでるしやる気の出る教え方だと思うよ」





井出に負けた。







153:2007/12/09(日) 02:15:34.03 ID:
うーむ・・・。俺は後輩を育てる才能が無いのだろうか?
おっと、いかんいかん、まだ初日だ。
それに俺にとって始めての後輩なんだ。こんな弱気でどうする。
まずは木村くんの性格を掴むことから始めよう。
今日の時点でいくつか分かったが、ほんの片鱗にしか過ぎないはずだ。
しかし、あの井出の人の性格を読み取る力は何なのか。異常だぞ。
竹中くんと接したのは最初の挨拶ぐらいだったと言うのに。
あいつ何かスタンド持ってるだろう。


「マ男くん」


井出だ。


「はい」
「木村くんはどう?」
「良い子ですよ。私には勿体無いぐらいの後輩です」
「そうかそうか」


ニヤニヤする井出。何を考えている。


「竹中くん、今は使えないけど、すぐに木村くんを追い越すよww」


野郎、言いやがったな。

木村くんの方が優秀だということを見せてやる。




俺と井出の戦いの火蓋が切って落とされた。










165:2007/12/09(日) 02:20:36.14 ID:
竹中はバリバリじゃないのかよww








171:2007/12/09(日) 02:22:30.25 ID:
派遣ってのも、契約によるから。
中西さんはできる人としてきたけど、竹中は育て込み&数合わせっぽい







178:2007/12/09(日) 02:27:00.62 ID:
1日、1日を追っていくとキリが無いので、いつものようにポイントとなる日を選んで書いていこうと思う。


2週間ほど過ぎた頃、ついに二人に仕事が回される事となった。
その間に俺が木村くんに教えたことは、業務知識は元より、欠点と言える部分・・・
時間厳守、どこか抜けていないかの再確認、質問の仕方など、新人には付き物のありがちな失敗部分を入念に教えていた。

これでありがちな失敗はしないだろう。
木村くんは飲み込みも早く、素直な性格がきいて教える立場としてはありがたい限りだ。

各自にスケジュールが配られる。
かなり甘めだが、二人には製造のスケジュールが入っていた。
ここで俺は、俺の時と全然違うじゃねーか、なんだこれ・・・。と密かに怒りに打ち震えた。



「今回は珍しく余裕あるプロジェクトだから、まぁ焦らずに頑張れや」


他人事かよ。


「特に井出とマ男、おまえらは新人抱えての仕事だからな。恥かくなよ」


わかってますよ。



「了解しやしたー」
「そんじゃ席に戻るぞ」


よし、頑張ろう。木村くん。







184:2007/12/09(日) 02:31:10.07 ID:
どんだけマ男は不運なんだよwwwwwwww
いや、ある意味試練のロードマップ的には理想的か?wwwwww






192:2007/12/09(日) 02:35:38.79 ID:
当然、俺も製造のスケジュールが入っている。
俺も甘めに引かれてはいるが、木村くんを抱えながらなので、実際はトントンと言った所か。

「マ男さん」
「ん?」
「僕の作業って修正ですよね。設計書を見つつ、ソースの確認していいです?」



自分から行動する力。これは大事だ。


「うん、いいよ。分からない所があったら聞いて」
「いえ、自分で考えて見ます」


う、うーむ。プライド高いのかな。それとも、行動力がありすぎるのか。


「あぁ、わかった。時々、様子見に行くから、その時に説明とかするよ」
「はい、お願いします」


落ち着け。方法を選べば、何のことはないのだ。


一方の井出・竹中。
「井出さん、俺わかんないんで、ソース見てもらっていいすか?」
「分からないのは当たり前だのクラッカーだよ」
「俺ホントわからんっすよー」
「わかった、わかった。ほら、まずこのメソッドが初期処理でしょ」
「はぁ」
「ここにブレークポイントつけて、処理実行してみ」
「はぁ」


カチャカチャやる竹中。


「あとは、コメントを頼りにしても良いから、大まかに処理を追ってごらんよ」
「なんだ、楽勝じゃん」
「いやいや、ちゃんと俺に説明しないとダメだよwwww」
「わかってますよww」


な、なんだあいつら・・・。
俺勝てる気しないぞ。







194:2007/12/09(日) 02:36:43.40 ID:
IT相性良すぎワロタ








199:2007/12/09(日) 02:39:42.44 ID:
木村→分からない所は聞けばいいのに、なんとか自分で解決しようとしてとんでもない失敗
竹中→バリバリのはずが、ダメダメでスケジュールがwwww






216:2007/12/09(日) 02:47:26.47 ID:
「あーこれ、先週やった処理じゃん。なるほどな」


竹中が独り言を喋っている。何かよく分からんが、とりあえず竹中は欠点は直ってない。
俺が察する限り、井出は竹中の長所(どこが長所か知らん)を伸ばしたということか。


そろそろ木村くんを見に行くか。
「木村くん、どう?」
「あーマ男さん、このReleaseなんですけど、設計書には書いてないんですよ」
「ん? どれどれ」
「うーん、ホントだね。でも、これはReleaseしないと、DBに値が登録されないから」
「します?」
「うん」
「はい、わかりました」
「他に質問ある?」
「いえ、特には」


俺いらなくね?







222:2007/12/09(日) 02:49:31.10 ID:
>>216
スムーズすぎて不気味に感じてしまうのは気のせいか
絶対どっかでバグ発生してるって!







224:2007/12/09(日) 02:50:34.90 ID:
あのリーダーをなだめすかしてた井出の対人スキルさすがだな。
藤田さんは新人教育を通して、マ男に欠けているものを教えてくれているんだな。








237:2007/12/09(日) 02:58:37.55 ID:
こうして、相反する二組はスケジュールを推し進めていく。
俺は基本的に一人でこなしてきたため、自立させようとする意思が強かった。
なので、助けるとは言っていたものの、僅かにヒントを与えるなど、1~10のうち、1~3程度までしか手を貸さないのだ。

これは俺の考え方なので一概には言えないが、この新人時代に10全て教えてやると、後々で教えてくれ癖がついて抜けなくなる。
そうなってしまうと、一人では何も出来なくなり、常に誰かがついてやらないといけない状態になるのだ。


俺はそれを避けるため、言い訳になりえるが、先を見越してこの方法を取っていた。


木村くんとも相性の良い方法のはずだ。
彼は自分の力で成功して始めて快感を得るタイプの子だ。
10全て教えてやると、俺がやる意味ないじゃないか、と放棄してしまう可能性がある。
俺は木村くんの性格を、掴み始めていた。

一方の井出の教育方針は読めないが、あの教え方で良いのか・・・?
確かに竹中の性格からしてみれば、あの教え方しか方法は無いかもしれん。
しかし、あれからどうやって使い物になるよう持って行くのだ。



ていうか、全然バリバリじゃなかったのはどうなんだ。

そして製造2日目。ここで大きな差が出てくる。







238:2007/12/09(日) 02:58:52.17 ID:
まあ新人教育って
要領のいい奴のが向いてるからなww








239:2007/12/09(日) 02:59:45.93 ID:
元ニートで友達もひとりのみのマの対人スキルが高いわけない。
まともに教育できないだろうよ。これマにも重責だわ








260:2007/12/09(日) 03:07:33.16 ID:
「マ男さん、とりあえず修正作業終わったので、確認してもらって良いです?」

む、早いな。明日までスケジュール引いてるのに。
ひとまず見てみる。
うーん・・・。こりゃまずいな。完全に勘違いしている。
既存部分のコピペで十分応用できる所を、何故か自分仕様で新しく作っている。
無駄に行動力がありすぎるな、この子は。
これじゃ設計書と食い違って、使い物にならん。


「うーん、なるほど・・・」
「どうです? 完璧じゃないです?」


確かに目視でやる限りは完璧だが、これじゃダメだ。


「設計書見た?」
「もちろん見ましたよ。だから、ちゃんと動いてるじゃないですか」


うーん。どう言おう。言葉を選ばないとダメなタイプだ。


「何ていえば良いのかな。やっぱりこれはお客さんに納品するプログラムだから
 お客さんの要望をまとめた設計書に則って作成しなくちゃいけないんだけど」
「はぁ」
「木村くんは凄いと思うよ。私は入社当時、こんな余裕なかったからね。
 だけど、これはちょっとマズイね」


説明をする俺。話すのあんま得意じゃないんだ。納得してくれ。


「というわけだから、既存部分を使って作るようにしてくれないかな」
「・・・わかりました」


木村くんの使い方を間違えた。


一方の井出・竹中は・・・






262:2007/12/09(日) 03:08:16.78 ID:
木村案の定やっちまったwwww









291:2007/12/09(日) 03:17:22.08 ID:
「井出さーん、これはこうこうで良いんすよねー?」
「ん? あぁそうだよ」


逐一、報告させる形を取っている。
確かにその方法なら失敗は少ない。
だが、それじゃ成長は望めないだろう。


「井出さーん、これなんすけどぉ」
「どれどれ。あぁ、それは今までの中でやったことあるなww
 教えてあげないよ! じゃんっ!」
「はぁー?」
「大丈夫、ちゃんと見てみろww ほれ、設計書! ほれ、さっきのソースコードのコピー!」
「めんどくせー・・・って、マジだ」


う、上手い。さすがにコミュニケーションの井出だ。こりゃ敵わん。
変な意地を張らずに、井出さんの方法をよく観察するんだ。
そのまま流用は無理だが、どこか変えれば木村くんにも使えるはず。


なるほど。初見では10まで教え、次に同じ質問が来た時、教える要素を減らす。
最終的にはゼロに持っていき、その頃には出来るようになっているというカラクリか。
確かにこれなら効率は悪いが、確実に成長させることができる。

まさしく、竹中専用教育プログラムだ。


これをどうにか木村くんに使えないものか・・・。








298:2007/12/09(日) 03:20:51.99 ID:
>>291
井出の人格微妙に変わってね?マ男のときとえらい違いだ。
やっぱ忙しさのせいだったんかなぁ。







304:2007/12/09(日) 03:22:10.78 ID:
なんか井出がすごいヤツに思えてくる






380:2007/12/09(日) 15:04:46.14 ID:
井出さんの教育方法を観察した俺。
しかし、あのままでは木村くんには使えない。

まず第一に木村くんはあまり質問をして来ない。
なので、俺も一人で出来るなら放置でも大丈夫かも。
という楽観的に構えていた。そして、それが結果となって彼は失敗を招いた。
しかし、第一印象とかなり違って来ているな。勉強期間・・・というか、初日では、ちょくちょく質問に来ていたのに。
うーむ、まだ完全に彼の性格を掴みきれていない。

彼は正社員だ。何とか成長させないと、いつまでも負債となってしまうぞ。

ただ、基礎的な学習能力はあるはずなのだ。つまり、育て方次第で化けるはず。


一見、乗りこなしやすそうに見えて実はじゃじゃ馬だったという木村くん。
俺がこの彼を成長させて行くことが、この第五部において最も重要な点になるのだ。

そして竹中。


力は持っているが、使い方が分からない、もしくは間違っている人間と
力も無く(?)使い方も分からない(?)が、積み重ねで伸びていく人間。


そして、なまじ力を持っているあまり、自信過剰な性格と
面倒くさがりだが、乗せれば諦めない性格。



果たして、どちらが優秀なのか。







390:2007/12/09(日) 15:17:44.17 ID:
今まで部活やバイトの経験も無く、上下関係を知らずに育ってきた俺にとって
目上の人間はともかく、後輩にどのように接すれば良いのか分からなかった。
なので、自分を木村くんの立場に置いて、物事を考えてみた。

まず、プライドが高いという点において、気をつけてみる。
自分が第一だという考えが念頭にあるのかもしれない。ならば、この考えをどう覆すかだ。

俺自身の性格を見てみる。
・・・褒められた性格ではない。自分が尊敬できない相手は、正直な話、相手にもしたくない。

うーむ、木村くんは俺を尊敬していないのかもしれない。確かに、彼は俺の仕事を間近で見た事がない。
訳のわからん男が先輩風吹かせて、俺に指示出してるぞ、という気持ちなのかもしれん。

全ては仮定の上での話だが、彼の今までの行動・性格を振り返る限り、有り得る話でもある。

あまり気持ちは進まないが・・・藤田さんに相談してみよう。







395:2007/12/09(日) 15:23:26.63 ID:
「すいません、藤田さん」
「うん?」
「木村くんの事なのですが」
「あぁ、どうかした?」
「はい、力はあるみたいなんですが、どうも私のやり方がマズイみたいで」
「うーん、彼は鼻を折られた経験が無いんだと思うよ」


挫折経験がないという事か。
そういう人間は扱い辛い。
囲の失敗経験を目の当たりにしていると、さらにそれは肥大化する。


「木村くんが、自分の方が、経験積めばあいつより出来る、と思ってるって可能性は無い?」

有り得る。

「有り得ない話ではないです」
「私が思うに、君は過小評価されてるんじゃないかな。
 まずは、君が仕事が出来る、という部分を見せないと」


教育以前の問題になるな、それは。

「それに彼はカッコいいからなぁww 今までチヤホヤされてきてるって可能性もあると思うよ」

なるほどな。確かに俺は厳しく接しすぎていたのかもしれん。

少し教育方法を変えてみるか。








404:2007/12/09(日) 15:36:28.33 ID:
翌日。

「おい、マ男」
「はい」
「木村はどうだ。スケジュールに間に合いそうか?」


分からん。昨日の時点で、修正がどこまで終わっているかにもよる。


「分かりませんが、間に合わせようとは考えています」
「遅らせるなよ。怠け癖がつくぞ」


正論だ。遅れても、先輩が取り戻してくれるわ。という意識が芽生えると厄介だ。


「あと、来週から上原が復帰するから、おまえはもういいよ」




え!?




「う、上原さんですか?」
「そーだよ。なんだよ」
「い、いえ」


そうか、復帰するのか。
復帰するのはめでたいが、木村くんを彼に渡すのか?


「もういいよ、というのは」
「うるせーな! お前じゃなくて上原に木村を任せるって言ってんだよ」

木村くんは一体どうなるのだ。






409:2007/12/09(日) 15:39:36.93 ID:
上原と木村の組み合わせか…。

もし木村が間男や藤田さんの見解通りの性格なら、酷いことになりそうだ。







414:2007/12/09(日) 15:42:48.03 ID:
なんだかんだ言ってリーダー、上原さんのことすごい信頼してる?






417:2007/12/09(日) 15:45:14.14 ID:
そしてその来週・・・つまり、月曜がやってくる。

俺はその間、木村くんの教育係をしていたが、はっきり言って特に何も変化が無い。
上原さんに木村くんの指導が出来るのか。

てか、何でリーダーは上原さんを選ぶのだ。



「お、お、お」


まさか


「おは、お、お、おは」



き、来た。上原復活。



「おい上原ぁっ!!」



コイツ、これが言いたくて言いたくてしょうがなかったんだろ、絶対。



「おい、木村、竹中」
「はい」
「コイツが先輩の上原だ。何か分からなかったら俺じゃなくて、こいつに聞け」
「あ、あ、よ、よ」



木村くんが奇怪な物を見るような顔をしている。
間違いない、この時点で見下した。


「上原さん、よろしくお願いします」


目があざ笑っている。


「よ、よ、よろ、ろ」



どうでも良いけど、もう少し上原さんに気を使ってあげても良いだろ・・・。







427:2007/12/09(日) 15:56:18.48 ID:
「マ男さん」

木村くんだ。


「ん?」
「僕、リーダーから、今日から上原さんが教育係って聞いたんですが」

その通りだ。すまん、木村くん。俺ではどうしようも出来ん。


「あの人って大丈夫なんです?」


確かに俺も最初はそう思ったが、それを言葉に出しちゃダメだろう。


「仕事は俺より出来るよ」
「へぇ」


何か物凄くイヤな予感がするぞ・・・。
どう考えたって上手く行く訳がない。

例えるなら、ドMの上司にドSの部下だ。

軽い下克上が引き起こされ、部下はふんぞり返る可能性だってある。



「分かりました。とりあえず、少し話してきますね」

いや待て。会話にならない。


「何の話をするの?」
「あの人、今日から復帰ですよね。今の僕の状況を知ってもらおうと思いまして」


この自信たっぷりな態度・・・上原さん気をつけてくれ・・・。





432:2007/12/09(日) 15:59:14.20 ID:
木村君は慇懃無礼なタイプかもね~。








435:2007/12/09(日) 16:03:17.67 ID:
「すいません、上原さん」
「あ、あ、は、は、あ」
「今の僕の状況の説明をしに来たんで、聞いてもらえます?」
「あ」
「えっとですね」


吃音をさえぎる木村くん。
そして説明開始。
上原さんが所々で質問と思われる母音を発するが、それを殺して説明を続行する木村くん。
上原さんは小刻みに顔を震わせている。おそらく頷いているのだろう。
しかし、あの様子じゃたぶん理解できてない。

木村くんは木村くんで、なまじ自分に自信有りなのか、この説明で誰でも理解できるとでも思っている節がある。

これはいかん。態度が悪すぎる。
目上の人に対しての礼儀がひどい。注意が必要だ。



「木村くん、ちょっと良いかな」

む、藤田さんだ。







445:2007/12/09(日) 16:18:00.74 ID:
「君、まだ入社して3ヶ月も経ってないよね?」
「はい」
「別に先輩だから、って理由で言うわけじゃないけど、君はもう少し目上の人に対しての接し方を学んだ方が良い」
「それって今関係ありますか?」


おいおいおいおい


「今後に関係あるよ。君が将来、取引先に出た時にそんな態度じゃ、この会社が危ない」
「はぁ」
「君はまだこの会社にとって負債なんだから、その自覚を持たないとダメだよ」


はっきりと言い放った。藤田さん、それじゃダメですよ。


「どうもすいませんでした」


偉く印象変わったな、木村くん・・・。


その日から、木村くんに変化が起きた。と言っても、微妙な変化だが。


「はぁ・・・」


ため息が非常に多い。
ストレスが溜まってるのか、何か悩み事があるのかは定かではないが
藤田さんに怒られてから何かが変わろうとしていた。






455:2007/12/09(日) 16:21:23.95 ID:
木村君は怒られることに慣れていないのかな。







473:2007/12/09(日) 16:29:01.59 ID:
「マ男くん、ちょっと良いかな」

藤田さんだ。

「あ、はい」

応接室に移動する俺と藤田さん。何の話をするのか。


「木村くんなんだけど、彼は落として上げる方法が良いと思うよ」
「? どういう事ですか?」
「たぶん彼は今、気張りすぎてるんじゃないかなって思うんだよね。
 学生時代がどんな子だったのかは知らないが自分に自信を持ってるタイプの子みたいだし
 私たちのような状況では誰が仕事できるかってのも分からないと思う」


確かに。雰囲気で察することはできるが。


「彼は今落ちてる所だから、君が上手く手を貸してあげなさい。
 今の状況を使って、君の『出来る』という部分を見せる。
 そうすれば、君より仕事の出来る上原さんの事も、見直すんじゃないかな」


上原さんが直接それをやれば一番手っ取り早いが
それは無理だと見越して、俺を中間に持ってくるということか。


「木村くんの教育係を、私に戻したいのですが」
「いや、上原さんのままで良いと思う。
 彼は上げるも下げるも無いし、嫌でも自分でやらないといけないって思わせるから
 自立させるには一番の適任者だよ」


な、なるほど。それで事あるごとにリーダーは上原に聞けなのか。
いや知らんけど。


そして開発室に戻る俺。

「木村くん、大丈夫?」





484:2007/12/09(日) 16:41:21.48 ID:
「大丈夫です」

む。やはりプライドが高い。


「厳しいと思ったら、すぐに言わないとダメだよ」
「はい・・・すいません・・・」


素直な面も覗かせているが、やはりどこかまだ堅い。


「君が潰れたら、私たちも辛い。早めに相談するのが大切だよ」
「はい、ごめんなさい・・・」
「昼休憩、一緒にご飯食べようか」
「はい・・・」


よし、ここまではOKだ。
仕事を再開する俺と木村くん。
今は断然に印象が悪いが、最初は素直で良い子だったんだ。
あのリーダーにも、お前良い奴だな、と言わしめた。

おそらく、やり方がマズイ。

というか、後輩を持ったのが人生初の俺が、一人で頑張りすぎた。
リーダーや、井出さんも含めた先輩たちから、何かしらの意見を貰うべきだったのかもしれん。

人生初(?)の挫折を味わったかのように見える木村くん。
ここが正念場だ。


昼休憩がやってきた。






495:2007/12/09(日) 16:52:49.56 ID:
プログラマってそういうかんじなのか・・・、大変だな。
漏れ、ITじゃなくて建設だからよくわかんなかった、スマン。

普通の感覚だとOJTにはいる前に研修で鼻っ柱折ってから配属されるもんだと思った。
しかし、井出といいリーダーといい、新卒に対しては一応育てる気あるみたいだな。








497:2007/12/09(日) 16:56:42.85 ID:
藤田さんと話をしたうどん屋に入る俺と木村くん。

「仕事どう?」
「・・・あんまり楽しくないです」


やっぱりそうか・・・。


「人間関係は?」



新卒がやめる理由として挙げる要素の一つだ。
こればかりは本当にどうしようもない。
自分だけの力ではどうにもできないのだ。
やめる理由としても十分に成り立ってしまう。説得は困難だぞ。



「そうですね・・・。何なんだろう・・・」

う、うーむ。


「苦手な人は居る?」
「うーん・・・」


居るみたいだな、これは・・・。


「そうですね・・・藤田さんですかね・・・」


な、なんだってー!?


「え、そ、そうなんだ。なんで?」
「あの人、何でも出来そうって雰囲気が出てませんか?」


雰囲気っていうか、何でも出来るんじゃないのか・・・。


「確かに、うちの開発室じゃ一番出来る人だよ」



「うーん・・・僕と同じタイプなのかなぁ」




この小僧、大言を吐きおった。







535:2007/12/09(日) 17:06:54.99 ID:
中西さんがいたら殺されてるよなwwwwwwww








534:2007/12/09(日) 17:06:46.90 ID:
「そ、そうなんだ」

落ち着け。確かに同じタイプに見えんこともない。
そして、そういう者同士は争う事が多い。

三国志にも、孔明と周瑜という二人の天才が居て、最後までお互いが相容れることは無かったではないか。
ちなみに演技しか知らないので、史実は知りません。
とにかく、上手く話を持って行きさえすれば、この子は化けるぞ(たぶん


「他に苦手な人は居るの?」
「居ません」
「そうかぁ・・・。今の教育係は上原さんだけど、あの人はどう?」
「一番やりやすいですよ。何も言ってこないし、結果だけ報告してます」


それまずくないか?



「間違った所とかは指摘してくれてるの?」
「はい。成果物をコピーするなりして、お渡ししてるんです。
 んで、間違った所に印をつけてもらったりとか」

なるほど。確かに上原さん相手なら効率もいいし、賢い方法だ。


「うーん、藤田さんが苦手ってのも珍しいなぁ」
「そうですか? あぁいう人って案外敵が多いと思いますけど」

この子、凄いことをサラサラ言うな。この様子じゃ、苦手というか嫌っているに近い。
しかし、実力は認めているところがある。
藤田さんには悪いが、あなたを使わせて貰います。



「でも逆に、藤田さんを目標にしてみれば良いんじゃないかな」





537:2007/12/09(日) 17:07:58.27 ID:
おいお前ら落ち着け!
同じタイプってだけで同じレベルではないぞ?
万能と器用貧乏は同じようなタイプだけど明らかに違うだろ?






538:2007/12/09(日) 17:08:27.69 ID:
なんていうか海を見せてやれよwwwwww
そのブッチギリ勘違い小僧にはwwwwwwww







551:2007/12/09(日) 17:17:00.97 ID:
「うーん・・・」

嫌いな人間を目標にするには抵抗がある。それは良く分かるが。

「藤田さんは本当に仕事も出来るし、人間的にも立派な人だよ」


当然、過去の部分は伏せる。


「マ男さんはどうなんですか?」


何を言ってるんだ。俺なんかを目標にしたら人生を棒に振るぞ。


「私はやめた方が良い。褒められた人生を歩んでないから。
 藤田さんを目標にしたくないの?」
「いや、しても良いんですけど、何かなぁ・・・」


藤田さんが居なければ、この子はどうなっていただろうか。


「でも、一番仕事が出来るのってのは木村くんも分かってるよね」
「分かってます。だけど、目標ってのは・・・」


言い方が悪い。方向性を変える。



「じゃあライバルってのはどう? 将来的に見たら良い勝負するんじゃないかな」


ここで上げる。


「そうですかね」


ほれ見ろ、食いついた。


「うん。今は藤田さんをよく観察して」


吸収、という言葉を飲み込む。


「盗めるところは盗んだら良いんじゃないかな」
「なるほどね。そうですね」



よし、後は上原さんの元に戻すだけだ。





565:2007/12/09(日) 17:20:58.07 ID:
挫折は勝手にするんじゃないかな。
いやでも、実力不足は実感するだろうし、できなきゃ終わる。
褒めて伸ばしておいたほうがいい。








575:2007/12/09(日) 17:27:36.49 ID:
「所で、竹中くんとはどうなの?」
「あの人って、派遣でしたっけ?」
「そうだよ。君より経験あるんじゃないかな」
「それにしては、僕より出来るとは思えないんですけど」


ダメだ。まだ目上の人間に対しての考え方がなってない。


「あぁいう人は、やる気さえ出したら化けるよ」
「井出さんもどうなんですか? 社会人で坊主頭って・・・。それに独り言多いですよね?」


なんだコイツは。ここは叱るべきだ。


「うーん、木村くん。本音を言えるのは良い事なんだけど、やっぱりここは学校じゃなくて会社だから
 自分より能力が下だと思えても、ちゃんと目上の人だっていう意識は持たないとダメだよ」
「うーん・・・」
「それに、現時点だと君より竹中くんの方がスケジュール進んでるんじゃないかな」
「え、そうなんですか?」



知らないが。明らかに下だと思ってる人間に追い越されれば、火が付くだろう。



「そうだよ。だから、無闇に人を見下したらダメだよ」
「・・・はい」



ホントにじゃじゃ馬だな。だが、これで持ち直すことは出来そうだぞ。






602:2007/12/09(日) 17:41:36.15 ID:
最初は素直で好印象だった木村くん今はかなり・・・







603:2007/12/09(日) 17:42:06.66 ID:
そして会社に戻る俺たち。
とりあえず、木村くんはこれで様子見だ。育つ環境は揃っている。
目標となる人物、競争相手、そしてやる気。
プライドが高いのが難点だが、これも上手く転がせば重要な爆発力に変える事も出来るはずだ。


「竹中ちゃん、すげーじゃん!」


井出だ。



「当たり前じゃないっすか。井出さんと同じにしないでくださいよ」
「バカ野郎wwwwww調子乗るなwwwwww」
「冗談っすよww スケジュール余裕じゃないっすか?」
「余裕だね。俺の仕事もやってよ」
「イヤっすよww」


う、うーむ。このコンビは失敗を覗かせないな。
本当に井出は凄い。並の人間なら、この態度にキレる可能性だってあるぞ。



「チッ」



木村くんが二人を睨みつけていた。
落ち着け、今は我慢の時だ。君は大成する。


今は眠れる獅子なんだよ(たぶん







611:2007/12/09(日) 17:46:11.90 ID:
木村の未来はこのまま行くとプライドの高いニートだろうな






624:2007/12/09(日) 17:53:13.99 ID:
それからの日々は、まぁなんとも平凡だった。
俺は木村くんの教育係から外されたので、スケジュールが余裕なこともあり
8時には退社できていた。まさにゆとりある時間ゲットだぜ。

一方の肝心の木村くんは、上原さんとのデコボココンビで上手くやっていた。
彼自身も言っていたが、介入されるのを嫌うらしい。
介入されない・・・というか、できない上原さんとは、相性も良さそうだ。
後は藤田さんと上手くやってくれれば良いのだが。


「マ男くん、木村くんはどう?」


藤田さんだ。


「一応、話はしておきました。人間関係で問題があったようなので、フォローはしておきましたが」
「そうか。まぁ人間、好き嫌いはあるからね。それでどうなの? 伸びそう?」


あなたが起爆剤ですからね。伸びないわけがない。


「伸びますよ。今は新卒だってのもあって、頼りないですけど、元々力はあると思います」
「なるほど。けど、ようやくって所かな。まぁ彼は気難しい性格してそうだから、扱いには気をつけないと」



ここらへんから、木村くんは急成長を遂げていく。






640:2007/12/09(日) 17:58:22.55 ID:
井出はハゲチャビンとかの方が向いている






642:2007/12/09(日) 17:58:50.00 ID:
リーダー落ち着いてるなww
登場してないだけかもしれんけど。






651:2007/12/09(日) 18:05:31.40 ID:
製造が終了し、テスト作業に入った頃だ。

「マ男さん、今いいですか」

木村くんから声を掛けられた。


「ん?」
「リーダーから、上原さんはテスト作業から外してるとの事なので、マ男さんから教われと聞いたのですが」


うーむ。テスト作業については、正直経験が物を言う作業だ。
しかも、やり方も割かしと固定されている。
木村くんのようなタイプの子では、全然面白くないのではないか。



「うん、わかった。テスト作業って学校では教えてくれるの?」
「いえ、動作確認だけでした」


こりゃ厄介だ。逐一報告形式を採らんといけん。


「井出さーん」


竹中だ。


「ここで俺様参上」
「ここのハードコピーってこれでいいっすかぁ?」
「おっけー牧場!」
「どーもー」


逆に竹中は相性がいい。



「そうだね・・・。うーん。
 とりあえず、テスト仕様書に書いてある事を試して、ハードコピーを取ってみて」
「わかりました」



仕方が無い。時間を見て俺が自分で確認しに行くか。






656:2007/12/09(日) 18:16:37.41 ID:
若いときにしかギャーンとは言わせられないからな







657:2007/12/09(日) 18:16:46.50 ID:
1時間ほど経過して、様子を見に行く。


「どう?」
「竹中さんの成果物を勝手に見ながらやってるんですけど、こんな感じで良いですかね」



おぉ、凄い。完璧だ。
動作がハードコピーだけで分かるように整理されている。



「凄いよ、そんな感じで大丈夫」
「ただ、竹中さんと同じにするのは面白くないので、補足説明入れたりとか
 ダンプDBの値変更されてる部分の背景色を変えたり工夫してるんですけど、問題ないですよね?」


無いよっていうか、むしろGJだよ。
いや、統一性を持たせるために竹中の作業が増えるけど。


「その調子でやっていいよ。てか、この頃の私はこんな発想無かったよ」
「早く藤田さんに追いつかないといけませんから。じゃ、僕は続きやりますので」
「うん」



ここでも藤田さん活躍か。
木村くんは眠れる獅子だったのだ。

何か起爆剤があれば、急激に伸びるタイプでプライドが高い分、負けず嫌いの度合いも激しい。



まずはテスト作業で実力の片鱗を見せた木村くん。
井出&竹中コンビに一度は追い越されたものの、ここから逆転劇が始まる。







672:2007/12/09(日) 18:29:07.98 ID:
このプロジェクトは無事に終わった。
続いて、次のプロジェクトに入る。いつもの通り、スケジュールがこれまた厳しい。

「木村くん、これ出来そう? 厳しいなら言わないとダメだよ」
「大丈夫ですよ」


本当なのか・・・。


「でもこれ、私から見ても厳しいと思うよ。難易度もそこそこ高いし」
「この項目見る限り、上のシステムの補助的な部分ですよね。
 スケジュールもマ男さんが先に作ってくれてるみたいだし
 その部分を流用すれば出来ると思います。
 分からない所があったら、ちゃんと聞きますので」

何だコイツ、人が変わってないか?


「竹中ちゃん頑張ろうぜー」
「いやーこれ無理っすよ。製造2日しか無いじゃないっすか。帰れないっすよ」
「大丈夫だって。危なくなったら俺が何とかしてやるから」
「おい、上原ぁ!!」
「あ、は、は、ああ」
「木村と竹中の面倒、ちゃんと見ろよ」


いや上原さんは無理だ。
デスマフラグがスケジュールの時点で立ってる。


「リーダー、私が見ますよ。上原さんはスケジュール厳しいみたいですから」


藤田さんだ。


「あぁ? まぁお前なら別にいいが」
「あ、あ、あ、あり、あ」


ありがとうございます、だな。すると木村くんが



「僕は一人で大丈夫です」




小僧、また大言を吐きおった。







689:2007/12/09(日) 18:34:58.01 ID:
俺の中で木村ははじめの一歩の板垣のイメージで再生される








691:2007/12/09(日) 18:36:22.86 ID:
「木村くん、そこは礼儀としてありがとうございますって言わないとダメだよ」
「一番出来る藤田さんには教えてもらいたくないんで」
「ハハハww 私も嫌われたなぁ。でも、そのぐらいの意気込みがあれば何だって出来るよ」
「どうも」


なんだってこんな敵視しているんだ。


「よーし、それじゃ仕事するぞ」


こうしてプロジェクトが開始された。
木村くんの作成部分は、俺の作ったものを元に作る内容なため、俺は急いで作り上げる。
しかし、木村くんのアンチ藤田は相当なものだ。藤田さんはスレでも大人気だというのに。

何が彼をそうさせるのかは分からないが、ただ単に不平を述べるだけじゃなく
藤田さんを超えて、黙らせてやる、という強い意志が行動に出ている。
というか、実は嫌いなんじゃなくて、本当は凄いのを認めたくないだけなんじゃないのか?
いや知らんけど・・・。

一人で大丈夫、とは言ったものの、大丈夫なわけがない。
放置しておいたら、勝手に一人で抱え込むタイプなので、俺が自主的に様子を見に行くことにする。



「どう?」
「今、半分ぐらい出来た所です。画面遷移の時に、セッションに値を入れようとうんたらかんたら」



大丈夫だった(たぶん






701:2007/12/09(日) 18:40:51.22 ID:
木村もまあ…職場で目上の人間を相手に、よくそんな態度が取れるもんだ
自分より出来る人間は癪に障るんだろうな
藤田さんは自分すら利用して育てようってつもりなんだろうが、寛大すぎww









707:2007/12/09(日) 18:44:27.12 ID:
まあ、年齢でもかなりの差があるだろうし、まだ木村は子供なんだよな






727:2007/12/09(日) 18:52:53.57 ID:
しかし、ここで完全に大丈夫だと判断するのは早計だ。
このプロジェクト全体で目を配らないと、また失敗してしまうぞ。
彼は挫折すると、起き上がるのに時間が掛かるタイプに思える。


「マ男さん」


む、木村くんだ。


「ちょっと見てもらっていいです?」


どれどれ。


「ここの所なんですけど、このメソッドからこのクラスに飛ぶじゃないですか。んで、この先でうんたらこうたら」


何だコイツ、すでに処理を理解できているぞ。


「そうそう。んで、このクラスの・・・ここか。ここでSQL文を組み込んでるでしょ?」
「はい」
「ここで実行して、値をセットしてるんだよ。んで、これでコミットしてる」
「なるほど、分かりました。後は自分でやってみます」


吸収力が半端無い。
一度聞いたことは、即座に覚える・・・というのは過大評価か。


「所でマ男さん、藤田さんって帰らないですよね?」


そりゃ仕事いっぱいあるからな。
ここみたいに、出来る人が少ないと、その人に仕事がいっぱい行くんだ。


「そりゃね。私の仕事量の倍は受け持ってるんじゃないかな」



誇張表現してみる。


「へぇ。僕も作業を早く終わらせるんで、マ男さんの仕事を少し分けてくれませんかね」




この小僧、またまた大言を吐きおった。








745:2007/12/09(日) 19:01:42.77 ID:
木村調子に乗り過ぎ。
というかそこまで藤田さんが嫌か。









751:2007/12/09(日) 19:03:10.85 ID:
「いや、それは無理だよ。
 私が上の人に頼むならともかく、下の人間に渡してたら
 スケジュールを割り振ってる意味が無くなるから」
「そうですか」


木村くんのやる気が暴走し始めている。ここは抑えないとダメだ。
藤田さんが出来すぎるせいで、常に彼は120%状態だぞ。時には息抜きも必要だ。


「うーん、木村くん大丈夫?」
「何がですか?」
「気張りすぎてない?」
「藤田さんがライバルですから」



いや、それは別にいいんだけどね・・・。
そんな漫画じゃないんだから、1年や2年で追いつけるわけないじゃない・・・。
自分に自信を持ちすぎだよ、君は。



「竹中くんみたいに気楽に構えていいよ」
「僕はあの人は眼中に無いですから」




こ、この小僧!? 

俺の器が小さすぎて、コイツを制御できん・・・!





757:2007/12/09(日) 19:04:47.60 ID:
こういうガキは自身たっぷりで一度落ちるところまで落とされたらなかなか立ち直れなくなるんだよなww







762:2007/12/09(日) 19:06:29.24 ID:
「竹中くんは Out of 眼中です」






888:2007/12/09(日) 21:29:25.23 ID:
これはダメだ。俺のキャパシティをとうに超えている。
藤田さんに相談しよう。平成の孔明なら、俺に何か策を授けてくれるはずだ!


「すいません、藤田さん」
「うん?」
「木村くんについてなんですけど、頑張りすぎてます」
「うーん」
「あのままだと、大きな壁にぶつかった時に潰れるんじゃないかと思うんですが」
「逆に、今の彼を止める方法は思いついてるの?」


無いです。なので、あなたを頼りに来ました。


「私が君の立場なら、逆にどんどん仕事任せるよ」



えぇ!?



「本人はやる気があるわけだから、それを不完全燃焼させる方が良くない。
 しかも、今のところは過失が無いわけでしょ?」


態度と言動が問題だが。



「えぇ」
「だったら、仕事をどんどん渡して、どこまで消化できるかを見た方が良い。
 もちろん、よく見ておかないとダメだよ。
 かつ、限界まで待つ。すぐに手を貸すと、逆に燃え上がって自爆するだろうからね。
 限界と判断したら、君が手を貸すんだ。そうすれば、彼も自分の限界を知って、色々と工夫をこなすだろうし君の株も上がって一石二鳥になる。大切なのは、人の性格を掴む事だよ。
 竹中くんにこの方法を取ってたら、もうこの会社には居ないだろうから」


う、うーむ。なるほど・・・。確かにその通りかもしれん。
しかし、安易にこれやって、とやってると、すぐに潰れてしまうぞ。



「仕事の難易度は少しずつ上げてみると良い。やっちゃいけない事は、一気に上げる事と、以前より下げる事。理由は言わなくても分かるよね」



一気に上げれば、無駄にやる気だけが暴走して、結果的にできませんでした→俺ダメな奴だ→死亡
下げれば、俺って過小評価されてるな→こんな所に居たってつまらん→逃亡
あくまでの俺の仮説。



む、難しい。しかし、育て方さえ間違えなければ、ソルジャーどころの騒ぎじゃなくなるぞ、これは。







895:2007/12/09(日) 21:33:26.19 ID:
届きそうで届かない位置に餌ぶら下げるのって難しいよなぁ・・・









905:2007/12/09(日) 21:53:09.60 ID:
これ以来、俺は藤田さんの言ったことを基礎に、木村くんを教育し始めた。

するとどうだ。

最初はやはり限界値が低く、すぐに限界と見えたので、それなりには手を貸していたが
並の向上心ではない木村くんだ。

次からはやり方を変えてみたり、事前に質問をしてきたりと、自らの限界値を上げていった。
プロジェクト毎に成長・・・とまでは行かないが、竹中と比べると段違いのスピードで伸びていく。

入社半年が経つ頃には、質問の回数は1日に1回あるか無いかになり
1年が経つ頃には、一人で仕事をこなせるようになっていた(要観察)
あとはあの生意気な鼻っ柱をどうにか出来れば文句は無いが、仕方あるまい。


しかし、さすがに藤田さんと言った所か。
まともに接したことなど無いはずなのに、スッパリと教育方針を授けてくれた。
木村くんは俺が藤田さんからアドバイスを受けたことなど知る由も無いだろうな。
君がライバルとしている人は、すでに君を育て上げるプログラムを組んでいたんだよ。

まさに手の平の上で踊る人形だ。



だが、良い調子だ。
しかも木村くんがやってきてから、スケジュールが少しだけ和らいだ。

こうして木村くんは俺の手から離れ、自立した。あと、竹中も正社員として配属された。
俺も3年目を迎え、そろそろ戦力として認識されだしたか。というか、木村くんに追い抜かれそうで怖い。


そして、この3年目で、

スレタイの意味する限界、

藤田さんがリーダーをやらない理由が明かされる事になるのだ・・・。




第五部・最終章『もう俺は限界かもしれない』前編終了




続きは来週。







952:2007/12/09(日) 23:04:44.11 ID:
ハッピーエンドか・・バッドエンドか・・


医龍とガチで1週間の楽しみだぜww

※続き→ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない 完結
元スレ: